JP2013189579A - 熱硬化性樹脂組成物、およびこれを用いたプリプレグ、積層板 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物、およびこれを用いたプリプレグ、積層板 Download PDF

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Abstract

【課題】Tg、低熱膨張性、銅箔接着性、耐熱性、耐湿性、難燃性、銅付き耐熱性、低誘電特性、低誘電正接性の全てに優れる熱硬化性樹脂組成物、及びその使用、例えばプリプレグ及び積層板等を提供すること。
【解決手段】(1)末端に水酸基を有するシロキサン樹脂(a)と、1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物(b)と、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(c)とを、反応触媒の有機金属塩(d)を用いて、反応させることにより得られる相容化樹脂、(2)N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン化合物により表面処理(湿式処理)された溶融シリカ、(3)分子構造中にイミダゾール構造を含有する化合物を必須成分とする熱硬化性樹脂組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明の熱硬化性樹脂は、特に優れた低熱膨張性、誘電特性、難燃性、接着性、耐熱性を示し、また、毒性が低く安全性や作業環境に優れる、電子部品等に好適な熱硬化性樹脂組成物に関する。また、この熱硬化性樹脂組成物を用いたプリプレグ、および積層板に関する。
熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂に特有な架橋構造が高い耐熱性や寸法安定性を発現するため、電子部品等の分野において広く使われ、特に銅張積層板や層間絶縁材料においては、近年の高密度化や高信頼性への要求から、高い銅箔接着性や耐熱性、良好な低熱膨張性等が必要とされている。また、近年の環境問題から、鉛フリーはんだによる電子部品の搭載やハロゲンフリーによる難燃化が要求され、そのため従来のものよりも高い耐熱性及び難燃性が必要とされる。さらに、製品の安全性や作業環境の向上化のため、毒性の低い成分のみで構成され、毒性ガス等が発生しない熱硬化性樹脂組成物が望まれている。
熱硬化性樹脂であるシアネート化合物は、低誘電特性、難燃性に優れる樹脂であるが、エポキシ硬化系の熱硬化性樹脂にそのまま使用した場合、耐熱性や強靭性が不足する問題があった。また次世代に対応する低熱膨張性が不足である。特許文献1、2および3等にシアネート化合物と無機充填剤からなり低熱膨張性を発現させる樹脂組成物が開示されているが、これらは低熱膨張性を発現させるため無機充填剤の配合使用量が多く、銅張積層板や層間絶縁材料として使用した場合、ドリル加工性や成形性が不足する。また、特許文献4、特許文献5等にシアネート樹脂とアラルキル変性エポキシ樹脂を必須成分として含有する熱硬化性樹脂に関する事例が開示されているが、必須成分であるシアネート樹脂が靭性や硬化反応性に劣る樹脂であるため、この熱硬化性樹脂の硬化反応性や強靭性の改良が依然不足であり、これらを銅張積層板や層間絶縁材料として使用した場合も、耐熱性や信頼性、加工性等が不足しているという問題があった。
特開2003−268136号 特開2003−73543号 特開2002−285015号 特開2002−309085号 特開2002−348469号
本発明の目的は、低熱膨張性、銅箔接着性、耐熱性、耐湿性、難燃性、銅付き耐熱性、低誘電特性、低誘電正接性の全てに優れる熱硬化性樹脂組成物、及びその使用、例えばプリプレグ及び積層板等を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を進めた結果、末端に水酸基を有するシロキサン樹脂と、シアネート基を有する化合物と、エポキシ基を有する化合物とを反応させて得られる相容化樹脂と、特定の溶融シリカと、イミダゾール構造を有する化合物とを配合した熱硬化性樹脂組成物が、上記のすべての特性を満たすものであることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、(1)(a)下記式(I)で示される構造の水酸基を含有するシロキサン樹脂と、(b)1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物と、(c)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物とを、反応触媒として(d)有機金属塩を用い、芳香族系有機溶媒中でイミノカーボネ−ト化反応、及びトリアジン環化反応させることにより得られる相容化樹脂と、(2)下記式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物により表面処理(湿式処理)された溶融シリカと、(3)分子構造中にイミダゾール構造を含有する化合物とを必須成分とする熱硬化性樹脂組成物に関する。
Figure 2013189579
(式中R1は各々独立に炭素数1〜5の飽和炭化水素基であり、Ar1は各々独立に存在しないか、又は芳香族基であり、mは5から100までの数である)
Figure 2013189579
また、本発明は、上記の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されたプリプレグおよびこのプリプレグを用いて積層形成された積層板に関するものである。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は高いTgを有し、これを基材に含浸、又は塗工して得たプリプレグ、及び該プリプレグを積層成形することにより製造した積層板は、低熱膨張性、銅箔接着性、耐熱性、耐湿性、難燃性、銅付き耐熱性(T−300)、低誘電特性、低誘電正接性に優れ、電子機器用プリント配線板として有用である。
以下、本発明について詳細に説明する。
積層板材料には近年の高密度化や高信頼性への要求から、高い銅箔接着性や耐熱性、良好な低熱膨張性等が必要とされるが、微細配線形成のため銅箔接着性は、銅箔引き剥がし強さが1.0kN/m以上であることが望ましく、1.2kN/m以上であることがより望ましい。
また、高密度化のためビルドアップ材等を用いてより高多層化することも必要であり、高いリフロー耐熱性が必要であるが、リフロー耐熱性評価の指針となる銅付き耐熱性(T−300)は、30分以上ふくれ等が生じないことが望ましい。
さらに、高密度化に伴い基材はより薄型化される方向にあり、熱処理時における基材のそりが小さいことが必要となる。低そり化のためには基材の面方向が低熱膨張性であることが有効であり、その熱膨張係数は7ppm/℃以下であることが望ましく、5ppm/℃以下であることがより望ましい。
さらに、高速応答性の要求も増え続けており、基材の比誘電率は4.7以下、さらには4.5以下であること、また誘電正接は0.010以下、好ましくは0.009以下.さらには0.008以下であることが望ましい。
このような状況の中、鋭意研究により以下に説明する発明に至った。
本発明は、(1)(a)上記の式(I)で示される構造の水酸基を含有するシロキサン樹脂と、(b)1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物と、(c)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物とを、反応触媒として(d)有機金属塩を用い、芳香族系有機溶媒中でイミノカーボネ−ト化反応、及びトリアジン環化反応させることにより得られる熱硬化性の相容化樹脂、(2)下記式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物により表面処理(湿式処理)された溶融シリカ、および(3)分子構造中にイミダゾール構造を含有する化合物を必須成分とする熱硬化性樹脂組成物である。以下、熱硬化性樹脂組成物の成分である相容化樹脂、溶融シリカ、およびイミダゾール構造を含有する化合物について、詳細に説明する。
本発明で熱硬化性樹脂組成物を構成する相容化樹脂(1)を合成する際に用いる成分(a)のシロキサン樹脂は、下記式(I)で示される構造の水酸基を含有するシロキサン樹脂であれば特に限定されない。
Figure 2013189579
(式中R1は各々独立に炭素数1〜5の飽和炭化水素基であり、Ar1は各々独立に存在しないか、又は芳香族基であり、mは5から100までの数である)
このようなシロキサン樹脂としては、例えば両末端がフェノール性水酸基である信越化学工業(株)製、商品名X−22−1821(水酸基価:30KOHmg/g)、商品名X−22−1822(水酸基価:20KOHmg/g)、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名BY16−752A(水酸基価:30KOHmg/g)、及び両末端がアルコール性水酸基である信越化学工業(株)製、商品名X−22−160AS(水酸基価:112KOHmg/g)、商品名KF−6001(水酸基価:62KOHmg/g)、商品名KF−6002(水酸基価:35KOHmg/g)、商品名KF−6003(水酸基価:20KOHmg/g)、商品名X−22−4015(水酸基価:27KOHmg/g)等が挙げられる。これらは信越化学工業(株)や東レ・ダウコーニング(株)等から商業的に入手できる。これらの中で、反応性が良好である点から、両末端がフェノール性水酸基であるシロキサン樹脂が好ましい。
本発明で熱硬化性樹脂組成物を構成する相容化樹脂(1)を合成する際に用いる成分(b)の1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物は、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、ビスフェノールF型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中で、誘電特性、耐熱性、難燃性、低熱膨張性、及び安価である点から、ビスフェノールA型シアネート樹脂、下記式(III)に示すノボラック型シアネート樹脂が特に好ましい。
Figure 2013189579
(mは正の数)
式(III)で示されるノボラック型シアネート樹脂の平均繰り返し数:mは、特に限定されないが、0.1〜30が好ましい。これより少ないと結晶化しやすくなり取り扱いが困難となる場合がある。また、これより多いと硬化物が脆くなる場合がある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を構成する相容化樹脂(1)を合成する際に用いる成分(c)の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物は、例えば、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、ビフェニル系、ノボラック系、多官能フェノール系、ナフタレン系、脂環式系及びアルコール系等のグリシジルエーテル、グリシジルアミン系並びにグリシジルエステル系等のエポキシ樹脂が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中で、高剛性、誘電特性、耐熱性、難燃性、耐湿性及び低熱膨張性の点からナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂等のナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のビフェニル基含有エポキシ樹脂が好ましく、芳香族系有機溶剤への溶解性の点からナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましく、安価であることやエポキシ当量が小さく少量の配合でよいことから、下記式(IV)に示すビフェニル型エポキシ樹脂が特に好ましい。
Figure 2013189579
本発明の熱硬化性樹脂組成物を構成する相容性樹脂(1)を合成する際に反応触媒として用いる成分(d)の有機金属塩は、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸錫、オクチル酸コバルト等が挙げられる。アミン系やイミダゾール系の窒素原子含有反応触媒は得られる樹脂の硬化物が脆くなり、耐熱性や接着性が低下するので好ましくない。
反応に際しては、上記の成分(a)と(b)と(c)の総和100重量部あたりの(a)の使用量を10〜50重量部の範囲とし、(b)の使用量を40〜80重量部の範囲とし、(c)の使用量を10〜50重量部の範囲として、これらを予めトルエン、キシレン、メシチレンから選ばれる溶媒中に均一に溶解し、80℃〜120℃の反応温度でイミノカーボネ−ト化反応、及びトリアジン環化反応させ、(b)のシアネート基を有する化合物の反応率(消失率)を30〜70mol%となるように反応を行う必要がある。ここで、反応溶媒にはトルエン、キシレン、メシチレンから選ばれる芳香族系溶媒が好ましい。必要により少量の他の溶剤を用いてもよいが、所望の反応が遅くなり、耐熱性等が低下する場合がある。また、ベンゼンは毒性が強く、メシチレンよりも分子量の大きい芳香族系溶媒はプリプレグの製造塗工時に残溶剤となりやすいので好ましくない。
反応率が30mol%未満であると、得られる樹脂が相容化されておらず、樹脂が分離、白濁しBステージの塗工布が製造できない。また、反応率が70mol%を超えると、得られる熱硬化性樹脂が溶剤に不溶化し、Aステージのワニス(熱硬化性樹脂組成物)が製造できなくなったり、プリプレグのゲルタイムが短くなり過ぎ、プレスの際に成形性が低下する場合がある。なお、イミノカーボネ−ト化反応は、水酸基とシアネート基の付加反応によりイミノカーボネ−ト結合(−O−(C=NH)−O−)が生成される反応であり、トリアジン環化反応は、シアネート基が3量化しトリアジン環を形成する反応である。また、このシアネート基が3量化しトリアジン環を形成する反応により3次元網目構造化が進行するが、この時(c)である1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物が3次元網目構造中に均一に分散され、これによって(a)成分と(b)成分と(c)成分が均一に分散された相容化樹脂が製造される。
ここで、(a)の使用量が10重量部未満であると、得られる基材の面方向の低熱膨張性が低下する場合があり、また(a)の使用量が50重量部を超えると、耐熱性や耐薬品性が低下する場合がある。(b)の使用量が40重量部未満であると得られる樹脂の相容性が低下する場合があり、また(b)の使用量が80重量部を超えると、得られる基材の面方向の低熱膨張性が低下する場合がある。(c)の使用量が10重量部未満であると、耐湿耐熱性が低下する場合があり、また(c)の使用量が50重量部を超えると、銅箔接着性や誘電特性が低下する場合がある。
また、反応触媒の(d)成分の使用量は、(a)と(b)と(c)の総和100重量部に対して、0.0001〜0.004重量部が好ましい。この範囲であると反応に長時間を要したり、反応速度が速すぎて終点管理が難しくなるようなこともない。ここで、(b)のシアネート基を有する化合物の反応率は、GPC測定により反応開始時の(b)のシアネート基を有する化合物のピーク面積と、所定時間反応後のピーク面積を比較し、ピーク面積の消失率から求められる。
本発明で言う相容化樹脂とは、構成成分が相互に分離せずに均一に混合された樹脂のことである。シロキサン樹脂は低極性のため、シアネート樹脂やエポキシ樹脂とは分離しやすいが、本発明の手法を用いて反応させることで相互に混合された相容化樹脂となり、シロキサン樹脂の有する低熱膨張性が発現する。得られた樹脂溶液を加熱乾燥させて目視で確認し、均一で透明な樹脂硬化物になっていることが相容化の判断基準である。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物を構成する相容化樹脂を合成する際、反応には有機溶媒を使用することが好ましい。この反応で使用される有機溶媒は特に制限されないが、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチルエステルやγ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、溶解性が良好であることや、揮発性が高く残溶剤として残りにくい点、反応触媒の作用を阻害しにくい点からトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤の使用が好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の成分(2)である下記式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物により表面処理(湿式処理)された溶融シリカは、溶融シリカを下記式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物を使用し、表面処理することにより得られる。
Figure 2013189579
成分(2)の製造法の例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤やエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系有機溶剤に、溶融シリカを添加して混合した後、上記式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物を添加して60℃〜120℃で、0.5〜5時間程度攪拌しながら反応(表面処理、いわゆる湿式処理)させることにより得られる。このように、上記式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物を用いて処理することにより、分散性に優れる溶融シリカが得られる。また、成分(2)は、アドマテックス社等から商業的にも入手でき、例えば、アドマテックス社製の商品名SC−2050KNKや、SC−2050HNK等がある。
また、シリカの形状は低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性から球状が好ましい。
その平均粒子径は0.1〜10μmであることが好ましく、0.3〜8μmであることがより好ましい。該溶融球状シリカの平均粒子径を0.1μm以上にすることで、樹脂に高充填した際の流動性を良好に保つことができ、さらに10μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らし粗大粒子起因の不良の発生を抑えることができる。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、ちょうど体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
該成分(2)の使用量は、固形分換算で熱硬化性の相容化樹脂成分(1)100重量部に対し、10〜300重量部とすることが好ましく、100〜250重量部とすることがより好ましく、150〜250重量部とすることが特に好ましい。10重量部以上であると、基材の剛性や、耐湿耐熱性、難燃性が不足するようなことがなく、また、300重量部以下であると成形性や耐めっき液性等の耐薬品性が低下するようなこともない。
本発明の熱硬化性樹脂組成物の成分(3)である分子構造中にイミダゾール構造を含有する化合物は、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中で、耐熱性や保存安定性の点から2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールが好ましく、更に250℃以下の低温で良好な硬化反応性を示す点から、2−メチルイミダゾールが特に好ましい。
また、成分(3)のイミダゾール化合物の配合量は、固形物換算の熱硬化性の相容化樹脂(1)100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましい。0.1質量部以上とすることにより良好な硬化性が得られ、5質量部以下とすることにより良好な保存安定性が得られる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、成分(4)として他の無機充填剤を使用してもよく、例えば、破砕シリカ、マイカ、タルク、ガラス短繊維又は微粉末及び中空ガラス、炭酸カルシウム、石英粉末、金属水和物等が挙げられ、これらの中で、低熱膨張性や高弾性、耐熱性、難燃性の点から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物が好ましく、さらに金属水和物の中でも、高い耐熱性と難燃性が両立する点から熱分解温度が300℃以上である金属水和物、例えばベーマイト型水酸化アルミニウム(AlOOH)、あるいはギブサイト型水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を熱処理によりその熱分解温度を300℃以上に調整した化合物、水酸化マグネシウム等がより好ましく、特に、安価であり、350℃以上の特に高い熱分解温度と、高い耐薬品性を有するベーマイト型水酸化アルミニウム(AlOOH)が特に好ましい。これらの無機充填剤(成分(4))の使用量は、固形分換算の該樹脂成分(1)100重量部に対し、0〜200重量部とすることが好ましく、10〜150重量部とすることがより好ましく、50〜150重量部とすることが特に好ましい。200重量部以下であると、耐めっき液性等の耐薬品性や成形性が低下するようなことがない。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、耐熱性や難燃性、銅箔接着性等の向上化のため硬化促進剤を用いることが望ましく、硬化促進剤の例としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸錫、オクチル酸コバルト等の有機金属塩、イミダゾール類及びその誘導体、第三級アミン類及び第四級アンモニウム塩等が挙げられる。硬化促進剤を使用しないと、耐熱性や難燃性、銅箔接着性等が不足する場合がある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、任意に他の難燃剤の併用ができるが、臭素や塩素を含有する含ハロゲン系難燃剤や熱分解温度が300℃未満である金属水酸化物等は本発明の目的にそぐわない。他の難燃剤の併用の例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、ホスファゼン、赤リン等のリン系難燃剤、三酸化アンチモン、モリブデン酸亜鉛等の無機難燃助剤等が挙げられる。特に、モリブデン酸亜鉛をタルク等の無機充填剤に担持した無機難燃助剤は、難燃性のみならずドリル加工性をも著しく向上化させるので、特に好ましい無機難燃助剤である。モリブデン酸亜鉛の使用量は本発明の相容化樹脂100重量部に対し、5〜20重量部とすることが好ましい。5重量部未満であると難燃性やドリル加工性の向上効果がみられなかったり、また20重量部を超えるとワニスのゲルタイムが短くなり過ぎ、プレスにより積層板を成形する際に成形性が低下する場合がある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、靭性や流動性を改善するため、任意に公知の熱可塑性樹脂、エラストマー、難燃剤、有機充填剤等の併用ができる。
熱可塑性樹脂の例としては、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
エラストマーの例としては、ポリブタジエン、アクリロニトリル、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、フェノール変性ポリブタジエン及びカルボキシ変性アクリロニトリル等が挙げられる。
有機充填剤の例としては、シリコーンパウダー、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、並びにポリフェニレンエーテル等の有機物粉末等が挙げられる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、任意に紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び密着性向上剤等の添加も可能であり、特に限定されない。これらの例としては、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系やスチレン化フェノール等の酸化防止剤、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系等の光重合開始剤、スチルベン誘導体等の蛍光増白剤、尿素シラン等の尿素化合物やシランカップリング剤等の密着性向上剤等が挙げられる。
本発明のプリプレグは、前記した本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工してなるものである。以下、本発明のプリプレグについて詳述する。
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して本発明のプリプレグを製造することができる。本発明の基材として、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物繊維、ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレン等の有機繊維、並びにそれらの混合物等が挙げられる。これらの基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。基材の厚さは、特に制限されず、例えば、約0.03〜0.5mmを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。該基材に対する樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で、20〜90重量%となるように、基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて、本発明のプリプレグを得ることができる。
本発明の積層板は、前述の本発明のプリプレグを用いて、積層成形して、形成することができる。本発明のプリプレグを、例えば、1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅及びアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。金属箔は、電気絶縁材料用途で用いるものであれば特に制限されない。また、成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力2〜100kg/cm2、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。
製造例1:相容化樹脂(1−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset BADCy):600.0gと、下記式(V)に示すシロキサン樹脂(信越化学社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1,600):200.0gと、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名YX−4000、エポキシ当量;186):200.0gと、トルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約110℃で4時間反応を行った。その後、室温に冷却し相容化樹脂(1−1)の溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が68%であった。また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0付近に出現する熱硬化性の相容化樹脂の生成物のピークが確認された。さらに、少量取り出した反応溶液を、メタノールとベンゼンの混合溶媒(混合重量比1:1)に滴下して再沈殿させることにより、精製された固形分を取り出し、FT−IR測定を行ったところ、イミノカーボネート基に起因する1700cm-1付近のピーク、また、トリアジン環に起因する1560cm-1付近、及び1380cm-1付近の強いピークが確認でき、相容化樹脂(1−1)が製造されていることを確認した。また、得られた樹脂が相容化しているものであることの確認は、樹脂の溶液を、熱風乾燥機で170℃、15分乾燥させることで得られる樹脂硬化物を目視で評価し、樹脂硬化物が透明であり分離が生じていないことを確認することにより行った。
Figure 2013189579
(式中のpは平均して35〜40の数)
製造例2:相容化樹脂(1−2)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset PT−15,重量平均分子量500〜1,000):800.0gと、下記式(VI)に示すシロキサン樹脂(信越化学社製;商品名KF−6003、水酸基当量;2800):100.0gと、ナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂(日本化薬社製;商品名NC−7000L、エポキシ当量;230):100.0gと、トルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約110℃で4時間反応を行った。その後、室温に冷却し相容化樹脂(1−2)の溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.1分付近に出現する合成原料のノボラック型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のノボラック型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が43%であった。また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0付近に出現する熱硬化性の相容化樹脂の生成物のピークが確認された。さらに、少量取り出した反応溶液を、メタノールとベンゼンの混合溶媒(混合重量比1:1)に滴下して再沈殿させることにより、精製された固形分を取り出し、FT−IR測定を行ったところ、イミノカーボネート基に起因する1700cm-1付近のピーク、また、トリアジン環に起因する1560cm-1付近、及び1380cm-1付近の強いピークが確認でき、相容化樹脂(1−2)が製造されていることを確認した。
Figure 2013189579
(式中のqは平均して70〜75の数)
製造例3:相容化樹脂(1−3)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset DT−4000,重量平均分子量500〜1,000):400.0gと、下記式(VII)に示すシロキサン樹脂(信越化学社製;商品名X−22−160AS、水酸基当量;500):100.0gと、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製;商品名NC−3000H、エポキシ当量;280):500.0gと、メシチレン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.30g添加し、約110℃で4時間反応を行った。その後、室温に冷却し、相容化樹脂(1−3)の溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.0分付近に出現する合成原料のジシクロペンタジエン型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のジシクロペンタジエン型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が43%であった。また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0付近に出現する熱硬化性の相容化樹脂の生成物のピークが確認された。さらに、少量取り出した反応溶液を、メタノールとベンゼンの混合溶媒(混合重量比1:1)に滴下して再沈殿させることにより、精製された固形分を取り出し、FT−IR測定を行ったところ、イミノカーボネート基に起因する1700cm-1付近のピーク、また、トリアジン環に起因する1560cm-1付近、及び1380cm-1付近の強いピークが確認でき、相容化樹脂(1−3)が製造されていることを確認した。
Figure 2013189579
(式中のrは平均して10〜15の数)
製造例4:相容化樹脂(1−4)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset BADCy):400.0gと、上記式(V)に示すシロキサン樹脂(信越化学社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1,600):500.0gと、ナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学社製;商品名エピクロンHP−4032、エポキシ当量;150):100.0gと、トルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約110℃で4時間反応を行った。その後、室温に冷却し相容化樹脂(1−4)の溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が55%であった。また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0付近に出現する熱硬化性の相容化樹脂の生成物のピークが確認された。さらに、少量取り出した反応溶液を、メタノールとベンゼンの混合溶媒(混合重量比1:1)に滴下して再沈殿させることにより、精製された固形分を取り出し、FT−IR測定を行ったところ、イミノカーボネート基に起因する1700cm-1付近のピーク、また、トリアジン環に起因する1560cm-1付近、及び1380cm-1付近の強いピークが確認でき、相容化樹脂(1−4)が製造されていることを確認した。
製造例5:トリメトキシシラン化合物により表面処理(湿式処理)された溶融シリカ(2−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、溶融シリカ(アドマテックス社製;商品名SO−25R、粒径0.5μm、球状):700.0gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル:1000.0gを配合し、攪拌しながらN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製;商品名KBM−573):7.0gを添加した。次いで80℃に昇温し、80℃で1時間反応を行い溶融シリカの表面処理(湿式処理)を行った後、室温に冷却し、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランにより表面処理(湿式処理)された溶融シリカ(2−1)の分散液を得た。
比較製造例1:(比較1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset BADCy):600.0gと、上記式(V)に示すシロキサン樹脂(信越化学社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1,600):200.0gと、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名YX−4000、エポキシ当量;186):200.0gと、トルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約110℃で1時間反応を行った。その後、室温に冷却し(比較1)の反応溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が18%であった。また、この溶液は翌日結晶化により沈殿物が生じた。
比較製造例2:(比較2)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset BADCy):600.0gと、上記式(V)に示すシロキサン樹脂(信越化学社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1,600):200.0gと、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名YX−4000、エポキシ当量;186):200.0gと、トルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約120℃で6時間反応を行った。その後、室温に冷却し(比較2)の反応溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が76%であった。
比較製造例3:(比較3)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset BADCy):600.0gと、上記式(V)に示すシロキサン樹脂(信越化学社製;商品名X−22−1821、水酸基当量;1,600):200.0gと、トルエン:800.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約110℃で4時間反応を行った。その後、室温に冷却し(比較3)の反応溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が53%であった。
(実施例1〜6、比較例1〜4)
製造例1〜4により得られた成分(1)の相容化樹脂、及び比較製造例1〜3で得られた樹脂、製造例5又は商業的に入手した成分(2)の溶融シリカ、成分(3)の分子構造中にイミダゾール構造を含有する化合物、また、必要により成分(4)の無機充填剤、難燃助剤、硬化促進剤、及び希釈溶剤にメチルエチルケトンを使用して、表1と表2に示した配合割合(重量部)で混合して樹脂分60wt%の均一なワニスを得た。
次に、上記ワニスを厚さ0.2mmのSガラスクロスに含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して樹脂含有量55重量%のプリプレグを得た。次に、このプリプレグを4枚重ね、18μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力25kg/cm2、温度185℃で90分間プレスを行って、銅張積層板を得た。このようにして得られた銅張積層板を用いて、銅箔接着性(銅箔ピール強度)、ガラス転移温度、はんだ耐熱性、線熱膨張係数、難燃性、比誘電率(1GHz)、誘電正接(1GHz)について以下の方法で測定・評価し、表3と表4に評価結果を示した。
(1)銅箔接着性(銅箔ピール強度)の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより1cm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、引張り試験機を用いて銅箔の接着性(90°ピール強度)を測定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、評価基板の面方向の熱膨張特性を観察することにより評価した。
(3)線熱膨張係数の測定
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、評価基板の面方向の30℃〜100℃の線熱膨張率を測定した。
(4)はんだ耐熱性の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5cm角の評価基板を作製し、平山製作所(株)製プレッシャー・クッカー試験装置を用いて、121℃、2atmの条件で4時間までプレッシャー・クッカー処理を行った後、温度288℃のはんだ浴に、評価基板を20秒間浸漬した後、外観を観察することによりはんだ耐熱性を評価した。
(5)銅付き耐熱性(T−300)の評価
銅張積層板から5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、300℃で評価基板の膨れが発生するまでの時間を測定することにより評価した。
(6)難燃性の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板から、長さ127mm、幅12.7mmに切り出した試験片を作製し、UL94の試験法(V法)に準じて評価した。
(7)比誘電率及び誘電正接の測定
得られた銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板を作製し、Hewllet・Packerd社製比誘電率測定装置(製品名:HP4291B)を用いて、周波数1GHzでの比誘電率及び誘電正接を測定した。
Figure 2013189579
Figure 2013189579
表1および表2中の数字は、固形分の重量部により示されている。注書きは、それぞれ
*1:溶融シリカに対し1.0wt%のN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランにより表面処理された溶融シリカ(アドマテック社製;商品名SC−2050KNK、粒径0.5μm、球状、希釈溶剤;メチルイソブチルケトン)
*2:溶融シリカに対し1.0wt%のN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランにより表面処理された溶融シリカ(アドマテック社製;商品名SC−2050HNK、粒径0.5μm、球状、希釈溶剤;シクロヘキサノン)
*3:ベーマイト型水酸化アルミニウム(河合石灰社製;商品名BMT−3L,熱分解温度:400℃)
*4:モリブデン酸亜鉛をタルクに担持した無機難燃助剤(シャーウィン・ウィリアムス社製;商品名 ケムガード1100)
*5:ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液
*6:ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名YX−4000、エポキシ当量;186)
*7:溶融シリカ(アドマテック社製;商品名SO−25R)
を意味する。
Figure 2013189579
Figure 2013189579
表から明らかなように、本発明の実施例は、Tg、銅箔ピール強度、耐熱性、低熱膨張性、難燃性、銅付き耐熱性(T−300)、低誘電特性、低誘電正接性の全てに優れている。一方、比較例は、Tg、銅箔ピール強度、耐熱性、耐湿性、難燃性、銅付き耐熱性(T−300)、低誘電特性、低誘電正接性の全てを満たすものは無く、いずれかの特性に劣っている。

Claims (3)

  1. (1)下記式(I)で示される末端に水酸基を有するシロキサン樹脂(a)と、1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物(b)と、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物(c)とを、反応触媒として有機金属塩(d)を用い、(a)と(b)と(c)の総和100重量部あたりの(a)の使用量を10〜50重量部の範囲とし、(b)の使用量を40〜80重量部の範囲とし、(c)の使用量を10〜50重量部の範囲として、反応させ、(b)のシアネート基を有する化合物の反応率が30〜70mol%である相容化樹脂と、
    Figure 2013189579
    (式中R1は各々独立に炭素数1〜5の飽和炭化水素基であり、Ar1は各々独立に存在しないか、又は芳香族基であり、mは5から100までの数である)
    (2)下記式(II)で示されるトリメトキシシラン化合物により表面処理された溶融シリカと、
    Figure 2013189579
    (3)分子構造中にイミダゾール構造を含有する化合物と、
    を必須成分として含有する熱硬化性樹脂組成物。
  2. 請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されたプリプレグ。
  3. 請求項2記載のプリプレグを用いて積層形成された積層板。
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