JP2013181166A - フェノール樹脂および熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

フェノール樹脂および熱硬化性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】流動性が良好である熱硬化性樹脂組成物を与え、かつ、耐熱性、耐湿性が優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂硬化剤であるフェノール樹脂を提供する。
【解決手段】フェノール類とアセトンを酸性下で反応してなるフェノール性水酸基含有化合物と、窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを反応させて得られる窒素含有フェノール樹脂を必須成分として含むフェノール樹脂。
【選択図】なし

Description

本発明は、流動性が良好である熱硬化性樹脂組成物を与え、かつ、耐熱性、耐湿性が優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂硬化剤であるフェノール樹脂および該フェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物に関するものである。
エポキシ樹脂とフェノール樹脂(硬化剤)を組合せた熱硬化性樹脂組成物は、その硬化物が耐熱性、密着性、および電気絶縁性などに優れることから様々な分野に使用されている。例えば、プリント基板用樹脂組成物やプリント基板および樹脂付き銅箔に使用する層間絶縁材料用樹脂組成物、電子部品の封止材用樹脂組成物、レジストインキ、導電ペースト(導電性充填剤含有)、塗料、接着剤、複合材料などに用いられている。
なかでも、半導体封止材は、製品の小型化、薄型化、微細化のニーズが高まっており、前記熱硬化性樹脂組成物に対しても硬化物(成形品)の更なる耐熱性、耐湿性、難燃性の向上、線膨張係数の低減などが求められている。
その解決手段の一つとして充填剤使用量の増加がある。充填剤量を多くすることにより成形品の線膨張係数の低減や吸湿率の低減、難燃性の向上が可能となるが、一方で充填剤量が多くなることにより配合物の流動性が低下し、成形性が悪くなるという問題が生じるため、樹脂成分の低溶融粘度化が同時に必要となる。
硬化物の耐熱性を向上する手段としては、樹脂成分の官能基数を増やすことにより架橋密度を上げる方法がある。そのためトリフェニルメタン構造を有するエポキシ樹脂或いはフェノール樹脂やテトラキスフェノールエタン構造を有するエポキシ樹脂或いはフェノール樹脂を用いることによって耐熱性の向上が検討されてきた。しかし官能基数が増えるほど樹脂の流動性が低下することから、硬化物の耐熱性と樹脂の流動性を両立させる方法が検討されてきた(特許文献1および2を参照)。
特許文献1では、トリフェニルメタン構造を有するエポキシ樹脂とトリフェニルメタン構造を有するフェノール樹脂を主成分とし、さらに結晶性のエポキシ樹脂を一部配合する発明が記載されている。こうして得られた樹脂組成物は流動性に優れているものの、結晶性エポキシ樹脂の配合により硬化物の耐熱性が低下する。
一方、特許文献2には、フェノール類とジアルデヒド類の縮合物である、テトラキスフェノールエタン構造のフェノール樹脂を含むフェノール樹脂をエポキシ樹脂の硬化剤として使用する発明が記載されている。しかし、特許文献2記載のフェノール樹脂はジアルデヒド類1モルに対してフェノール類が3モル以下縮合した物質の割合を高くすることで流動性を付与していることから、流動性は改善されるものの硬化物の耐熱性の点では不十分である。
特許第3365725号公報 特開2001−48959号公報
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、流動性が良好である熱硬化性樹脂組成物を与え、かつ、耐熱性、耐湿性が優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂硬化剤であるフェノール樹脂および該フェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題が、フェノール類とアセトンを酸性下で反応してなるフェノール性水酸基含有化合物と、窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを反応させて得られる窒素含有フェノール樹脂を必須成分として含むフェノール樹脂をエポキシ樹脂硬化剤として使用した熱硬化性樹脂組成物によって達成されることが見出されたことに基づくものである。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
(1)(A)フェノール類とアセトンを酸性下で反応してなるフェノール性水酸基含有化合物を総フェノール樹脂中に50〜90質量%含み、かつ(B)窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを反応させて得られる窒素含有フェノール樹脂を総フェノール樹脂中に10〜50質量%含むことを特徴とするフェノール樹脂。
(2)(A)成分の合成に用いるフェノール類がレゾルシノールである上記(1)に記載のフェノール樹脂。
(3)窒素含有化合物が、エチレン尿素、プロピレン尿素、ヒダントイン、シアヌル酸、及びピオルル酸から選ばれる1種以上の化合物である上記(1)又は(2)に記載のフェノール樹脂。
(4)窒素含有フェノール樹脂が、窒素含有化合物とフェノール類とがメチレン結合を介して交互に繰り返した構造を有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のフェノール樹脂。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のフェノール樹脂とエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物。
(6)エポキシ樹脂1.0当量に対し、フェノール樹脂が0.6〜1.2当量である上記(5)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(7)充填剤を含む上記(5)又は(6)に記載の熱硬化性樹脂組成物。
(8)上記(5)〜(7)のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
本発明のフェノール樹脂は、耐熱性、耐湿性が優れたエポキシ樹脂硬化物を与えることができる結晶性のフェノール性水酸基含有化合物に窒素含有フェノール樹脂を混合して流動性を付与したものである。
その結果、本発明によれば、流動性が良好である熱硬化性樹脂組成物を与え、かつ、耐熱性、耐湿性が優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂硬化剤であるフェノール樹脂および該フェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のフェノール樹脂は、フェノール類とアセトンを酸性下で反応してなるフェノール性水酸基含有化合物(A)と、窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを反応させて得られる窒素含有フェノール樹脂(B)を必須成分として含有するものである。
ここでフェノール類とは下式(I)で示される化合物を指す。
Figure 2013181166
(式(I)中、R1は、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、フェノールのベンゼン環と一緒になっての縮合環、または炭素数7〜10のヒドロキシアルアルキル基を示し、i は0〜3の整数を示す。)
フェノール類とアセトンを酸性下で反応してなるフェノール性水酸基含有化合物(A)としては、例えば下式(II)で表されるオキシフラバン構造を有する化合物が挙げられる。
Figure 2013181166
(式(II)中、R2、R3は同じでも異なっていてもよく、R2、R3は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基を示し、j、k は1または2の整数を示し、l、m は0〜2の整数を示す。)
前記フェノール性水酸基含有化合物の合成に使用されるフェノール類としては一般的なフェノール樹脂の製造に使用されるものであればよく、例えばフェノール、オルソクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、オルソエチルフェノール、メタエチルフェノール、パラエチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、2,6−キシレノール、オルソブチルフェノール、メタブチルフェノール、パラブチルフェノール、オルソオクチルフェノール、メタオクチルフェノール、パラオクチルフェノール、オルソノニルフェノール、メタノニルフェノール、パラノニルフェノール、オルソフェニルフェノール、メタフェニルフェノール、パラフェニルフェノール、オルソシクロヘキシルフェノール、メタシクロヘキシルフェノール、パラシクロヘキシルフェノール、カテコール、レゾルシノール、2−メチルレゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、ハイドロキノンを、単独又は2種以上混合して使用することができる。これらのうち、アセトンとの反応性が優れるという点でレゾルシノールが実用上好ましい。
アセトンの使用量はフェノール類100質量部に対して15〜250質量部、好ましくは25〜150質量部の割合で用いるのが好ましい。
酸性触媒としては一般的なノボラック樹脂の製造に使用されるものであればよく、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などが挙げられ、単独もしくは2種類以上混合して使用することができる。酸性触媒の使用量は、フェノール類100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜8質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部を適宜使用することができる。
フェノール類とアセトンの反応方法は特に制限はなく、フェノール類、アセトンおよび触媒を一括で仕込み反応させる方法、またはフェノール類および触媒を仕込み、所定の温度にて予め反応させた後、アセトンを滴下して反応する方法などが挙げられる。反応時間も特に制限はなく、アセトンおよび触媒の量、反応温度により調整すればよい。反応後は蒸留により未反応のアセトンや縮合水を除去したり、また必要に応じて水洗して残存触媒や未反応のフェノール類を除去してもよい。更に、減圧蒸留或いは水蒸気蒸留を行って未反応のフェノール類を除去してもよい。
フェノール類としてレゾルシノールを用いた場合、得られるフェノール性水酸基含有化合物は下式(III)で表される構造を含み、その純度が高い場合、200℃を超える融点を持つ結晶となる。一方2量体以上が多くなると融点は200℃以下になるものの、溶融粘度が高いためエポキシ樹脂配合物としての流動性は極めて悪いものとなる。
Figure 2013181166
窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを反応させて得られる窒素含有フェノール樹脂(B)を、フェノール性水酸基含有化合物(A)に混合することでその結晶化を抑制し、半導体封止材用として十分な流動性を付与することができる。
窒素含有化合物としては、フェノール性水酸基含有化合物との相溶性の点で環状ウレイドが好ましく、例えばエチレン尿素、プロピレン尿素、ヒダントイン、シアヌル酸、及びピオルル酸から選ばれる1種以上の化合物であるが、これらに限定されるものではない。窒素含有化合物のジメチロール体としては、環状ウレイド1分子に対して、ホルムアルデヒド系化合物2分子が反応し得る2官能性の化合物であることが好ましく、具体的にはジメチロールエチレン尿素、ジメチロールプロピレン尿素、ジメチロールヒダントイン、ジメチロールシアヌル酸、及びジメチロールピオルル酸である。これらの一種を単独で、もしくは二種以上を併用してもよい。
窒素含有化合物のジメチロール体は窒素含有化合物とホルムアルデヒド系化合物を付加反応させことによって得られる。この反応においては窒素含有化合物1.0モルに対し、ホルムアルデヒド系化合物2.0〜2.1モルが好ましい。ホルムアルデヒド系化合物としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサン(メタホルムアルデヒド)を使用することができる。
反応は水もしくは有機溶媒の存在下、無触媒で、もしくは塩基性触媒の存在下で反応するのがよい。反応温度は45℃から80℃以下、好ましくは45℃から70℃以下、さらに好ましくは45℃から50℃以下で、1時間から10時間程度がよい。反応温度が45℃未満の場合には反応が遅く効率的ではない。また、反応温度が80℃を超えると、反応の制御が困難であり、また副反応が起きることもあり好ましくない。
反応に用いる有機溶媒としては、水のほか、メタノール、エタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、酢酸、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が単独で、もしくは二種以上を併用して使用でき、窒素含有化合物100質量部に対して、0から1,000質量部、好ましくは10から100質量部程度、必要に応じて使用することができる。
反応に用いる塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等反応を促進する目的で適宜使用することができる。半導体封止材等の電気絶縁性を要する場合には、反応終了後に酸で中和後、水洗浄するなどして触媒を除去することが好ましい。
窒素含有フェノール樹脂(B)は、窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを縮合反応させることにより得られる。この反応では窒素含有化合物のジメチロール体1.0モルにフェノール類1.0〜3.0モルを縮合反応することが好ましい。
ここで用いるフェノール類としては一般的なフェノール樹脂の製造に使用されるものであればよく、前記のフェノール類を単独で、もしくは二種以上を併用して使用することができる。
反応は水もしくは有機溶媒の存在下、酸触媒の存在下で反応するのがよい。反応温度は70℃から150℃以下、好ましくは80℃から120℃以下、さらに好ましくは90℃から110℃以下で、1時間から10時間程度がよい。反応温度が70℃未満の場合には反応が遅く効率的ではない。また、反応温度が150℃を超えると、反応の制御が困難であり、また副反応が起きることもあり好ましくない。
酸触媒としては一般的なノボラック樹脂の製造に使用されるものであればよく、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などが挙げられ、単独もしくは2種類以上混合して使用することができる。特に、加熱により分解するシュウ酸が好ましい。酸触媒の使用量は窒素含有化合物のジメチロール体100質量部に対して、0.001〜10質量部、好ましくは0.01〜8質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部を適宜使用することができる。
反応後は、必要に応じて水洗し、加熱減圧して縮合水、及び未反応のフェノール類を除去することができる。樹脂は軟化点を有する固形の樹脂としても得られ、必要により有機溶媒に溶解して樹脂溶液とすることもできる。
本発明の窒素含有フェノール樹脂(B)は上述した方法により得られるが、窒素含有化合物のジメチロール体を得た後に、これとフェノール類を反応させることで窒素含有化合物とフェノール類とがメチレン結合を介して交互に繰り返した構造のオリゴマーが得られる。
本発明のフェノール樹脂では、前記フェノール性水酸基含有化合物(A)を総フェノール樹脂中に50〜90質量%含み、かつ窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを反応させて得られる窒素含有フェノール樹脂(B)を総フェノール樹脂中に10〜50質量%含むことが好ましい。フェノール性水酸基含有化合物の含有量が90質量%を超えるとフェノール樹脂の軟化点が高くなりすぎるため好ましくない。一方、フェノール性水酸基含有化合物の含有量が50質量%未満、または窒素含有フェノール樹脂の含有量が50質量%を超えると、熱硬化性樹脂組成物(エポキシ樹脂組成物)の硬化物の耐熱性が不十分となるため好ましくない。また、窒素含有フェノール樹脂の含有量が10質量%未満では、フェノール性水酸基含有化合物の結晶化を抑制する効果が不十分となるため好ましくない。
本発明のフェノール樹脂において、フェノール性水酸基含有化合物および窒素含有フェノール樹脂が上記範囲内であれば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂など、その他のフェノール樹脂を併用することももちろん可能である。
本発明のフェノール樹脂では、フェノール性水酸基含有化合物(A)および窒素含有フェノール樹脂(B)をそれぞれ別々に配合することができるが、フェノール性水酸基含有化合物は融点/軟化点が高いことから両者を予め有機溶剤中で混合溶解した後、有機溶剤を除去した形で用いることが好ましい。その場合、得られる混合物(フェノール樹脂)の軟化点が125℃以下になるよう、フェノール性水酸基含有化合物、窒素含有フェノール樹脂およびその他フェノール樹脂の配合比率を調整することが好ましい。該フェノール樹脂の軟化点が125℃を超えると、エポキシ樹脂との混合物である熱硬化性樹脂組成物の流動性が低下するため好ましくない。
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、特に限定するものではなく、公知のエポキシ樹脂を使用できる。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂などの二価のフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール変性型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂などの三価以上のフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、有機リン化合物で変性されたエポキシ樹脂などが挙げられる。この中ではトリフェニルメタン型エポキシ樹脂が好ましい。またこれらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の混合割合は、エポキシ樹脂1.0当量に対し、フェノール樹脂が0.6〜1.2当量の範囲、好ましくは0.7〜1.1当量の範囲とする。
この熱硬化性樹脂組成物には、硬化反応を促進する目的で、硬化促進剤を適宜使用することもできる。
そのような硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、有機リン系化合物、第2、3級アミン、オクチル酸スズなどの有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩などが挙げられ、これらは単独で、もしくは二種以上を併用して使用することができる。
上記のうち、イミダゾール系化合物としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4、5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2、4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2、4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。
これらイミダゾール系化合物は、マスク化剤によりマスクされていてもよい。
マスク化剤としては、アクリロニトリル、フェニレンジイソシアネート、トルイジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニルイソシアネート、メラミンアクリレートなどが挙げられる。
有機リン系化合物としては、エチルホスフィン、プロピルホスフィン、ブチルホスフィン、フェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン/トリフェニルボラン錯体、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどが挙げられる。
第2級アミン系化合物としては、モルホリン、ピペリジン、ピロリジン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−アルキルアリールアミン、ピペラジン、ジアリルアミン、チアゾリン、チオモルホリンなどが挙げられる。
第3級アミン系化合物としては、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアミノメチル)フェノールなどが挙げられる。
また本発明の熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、充填剤、改質剤として使用される熱硬化性樹脂および熱可塑性樹脂、顔料、シランカップリング剤、離型剤などの種々の配合剤を目的に応じて添加することができる。
このうち、充填剤としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機充填剤が挙げられる。溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その配合率は適用用途や所望特性によって、望ましい範囲が異なるが、例えば半導体封止材用途に使用する場合は、線膨張係数や難燃性を鑑みれば高い方が好ましく、組成物全体量に対して65質量%以上が好ましく、特に好ましくは80〜90質量%程度である。また導電ペーストや導電フィルムなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉などの導電性充填剤を用いることができる。
改質剤として使用される熱硬化性および熱可塑性樹脂としては公知の種々のものが全て使用できるが、例えばフェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などを、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
シランカップリング剤としては、アミノシラン系化合物、ビニルシラン系化合物、スチレン系シラン化合物、メタクリルシラン系化合物などのシランカップリング剤を挙げることができる。
また、離型剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、およびカルナバワックスなどを挙げることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されることはなく、実施例及び比較例における「部」および「%」は質量基準である。
実施例1(フェノール樹脂の合成)
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、レゾルシノール100g、アセトン26g、パラトルエンスルホン酸0.1gを仕込み、80℃で2時間反応させた。次いでアセトン26gを追加し80℃で2時間反応させた。次いで純水100gで4回洗浄を行い、触媒および未反応のレゾルシノールを除去した。次いで150℃、50mmHgの減圧下で留出分を除去し、白色結晶のフェノール樹脂A−1を76g得た。得られたフェノール樹脂A−1の融点は200℃であった。アセトン95gにフェノール樹脂A−1を76g溶解し、次いで窒素含有化合物としてジメチロールエチレン尿素を使用し、フェノール類としてフェノールを使用した窒素含有フェノール樹脂である窒素含有フェノール樹脂B−1(昭和電工製、ショウノールBRM−5622、軟化点82℃、水酸基当量160)を19g仕込んで溶解させた。次いで150℃、50mmHgの減圧下で留出分を除去し、淡褐色塊状のフェノール樹脂AN1を95g得た。得られたフェノール樹脂AN1の軟化点は112℃であった。
実施例2(フェノール樹脂の合成)
フェノール樹脂A−1を57g、窒素含有フェノール樹脂B−1を38g使用した以外は実施例1と同様に反応を行い、フェノール樹脂AN2を95g得た。得られたフェノール樹脂AN2の軟化点は94℃であった。
実施例3(フェノール樹脂の合成)
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、レゾルシノール100g、アセトン65g、パラトルエンスルホン酸0.1gを仕込み、90℃で5時間反応させた。次いで純水100gで4回洗浄を行い、触媒および未反応のレゾルシノールを除去した。次いで150℃、50mmHgの減圧下で留出分を除去し、淡褐色塊状のフェノール樹脂A−2を94g得た。得られたフェノール樹脂A−2の軟化点は119℃であった。アセトン95gにフェノール樹脂A−2を76g溶解し、次いで窒素含有フェノール樹脂B−1を19g仕込んで溶解させた。次いで150℃、50mmHgの減圧下で留出分を除去し、淡褐色塊状のフェノール樹脂BN1を95g得た。得られたフェノール樹脂BN1の軟化点は104℃であった。
実施例4(フェノール樹脂の合成)
フェノール樹脂A−2を57g、窒素含有フェノール樹脂B−1を38g使用した以外は実施例3と同様に反応を行い、フェノール樹脂BN2を95g得た。得られたフェノール樹脂BN2の軟化点は90℃であった。
実施例5(フェノール樹脂の合成)
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、レゾルシノール70gとフェノール30g、アセトン68g、パラトルエンスルホン酸0.1gを仕込み、90℃で5時間反応させた。次いで純水100gで4回洗浄を行い、触媒および未反応のレゾルシノールを除去した。次いで150℃、50mmHgの減圧下で溜出分を除去し、淡褐色塊状のフェノール樹脂A−3を89g得た。得られたフェノール樹脂Cの軟化点は111℃であった。アセトン95gにフェノール樹脂A−3を89g溶解し、次いで窒素含有フェノール樹脂B−1を19g仕込んで溶解させた。次いで150℃、50mmHgの減圧下で留出分を除去し、淡褐色塊状のフェノール樹脂CNを95g得た。得られたフェノール樹脂CNの軟化点は99℃であった。
比較例1(フェノール樹脂の合成)
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、フェノール100g、サリチルアルデヒド65g、パラトルエンスルホン酸1gを仕込み、100℃で8時間反応させた。次いで、純水100gで4回洗浄を行い、触媒を除去した。次いで、180℃、50mmHgの減圧下で留出分を除去し、フェノール樹脂D96gを得た。得られたフェノール樹脂Dの軟化点は128℃であった。
比較例2(フェノール樹脂の合成)
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、フェノール100g、37%ホルマリン60g、シュウ酸1gを仕込み、100℃で5時間反応後、180℃、50mmHgの減圧下で留出分を除去し、フェノール樹脂E84gを得た。得られたフェノール樹脂Eの軟化点は95℃であった。
実施例1〜5で得られたフェノール樹脂、比較例1、2で得られたフェノール樹脂の特性値を表1に示す。樹脂の分析方法は以下の通りである。
(1)軟化点(℃)
エレックス科学製気相軟化点測定装置EX−719PDを用いて昇温速度2.5℃/分で測定した。
(2)溶融粘度(mPa・s)
リサーチ・イクウィップ社製ICI粘度計を用い、150℃で測定した。
Figure 2013181166
表1から、本発明のフェノール樹脂は、耐熱性が優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂硬化剤とされる比較例1のトリフェニルメタン型フェノール樹脂と比較すると、流動性に優れることがわかる。
実施例6〜14、比較例3、4(熱硬化性樹脂組成物の調製)
実施例1〜5で得られたフェノール樹脂、比較例1、2で得られたフェノール樹脂のそれぞれについて、表2に示す配合で溶融混練して実施例6〜14、比較例3、4の熱硬化性樹脂組成物を得た。
表2の配合は次のように行なった。
主として10部のエポキシ樹脂に対し、表2記載の比率の水酸基当量のフェノール樹脂を混合し、0.1部のトリフェニルホスフィン(硬化促進剤)を添加することで得た樹脂成分に、組成物中80%含有率となるように溶融シリカ(無機充填剤)を混合して熱硬化性樹脂組成物を調製した。
得られた熱硬化性樹脂組成物を金型にて150℃−30分、圧力30kg/cm2で加圧成形する。その後、180℃−5時間後硬化して、テストピースを作成した。
得られたテストピースについてガラス転移温度、吸水率および曲げ強度を次の方法により評価した。
(3)ガラス転移温度
SII社製SSC/5200を使用してTMA法にてガラス転移温度を測定した。昇温速度は10℃/分で行った。
(4)吸水率
株式会社平山製作所製不飽和型高加速寿命試験装置PC−422R8を使用して、温度121℃、湿度100%で20時間保持した後の重量増加率を測定した。
(5)曲げ強度
JIS K−6911に準拠した方法で測定した。
実施例6〜14、比較例3、4について、ガラス転移温度、吸水率および曲げ強度の測定結果を表2に示す。
Figure 2013181166
表2の配合において、エポキシ樹脂、トリフェニルホスフィン、溶融シリカは次のものを用いた。
エポキシ樹脂:三菱化学社製、樹脂H(トリフェニルメタン型エポキシ樹脂)、商品名1032H60
トリフェニルホスフィン:和光純薬工業社製
溶融シリカ:龍森社製、商品名MSR−2212
表2より、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、高いガラス転移温度を発現し、かつ吸水率を低く抑えることができる。すなわち、吸水率はフェノール樹脂D、Eの従来のノボラック樹脂よりもはるかに低い値を示し、かつガラス転移温度や線膨張係数などはそれら従来のノボラック樹脂と同等の物性を示すことがわかる。
以上、本発明により、流動性が良好である熱硬化性樹脂組成物を与え、かつ、耐熱性、耐湿性が優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂硬化剤であるフェノール樹脂および該フェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物を提供することが可能になった。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、良好な流動性を有し、その硬化物は良好な耐熱性、耐湿性、機械的特性、電気絶縁性、金属との接着性などを有する。このため、具体的には電子部品の封止材用樹脂組成物、プリント基板用樹脂組成物、プリント基板および樹脂付き銅箔に使用する層間絶縁材料用樹脂組成物、導電ペースト(導電性充填剤含有)、塗料、接着剤および複合材料などに好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. (A)フェノール類とアセトンを酸性下で反応してなるフェノール性水酸基含有化合物を総フェノール樹脂中に50〜90質量%含み、かつ(B)窒素含有化合物のジメチロール体とフェノール類とを反応させて得られる窒素含有フェノール樹脂を総フェノール樹脂中に10〜50質量%含むことを特徴とするフェノール樹脂。
  2. (A)成分の合成に用いるフェノール類がレゾルシノールである請求項1に記載のフェノール樹脂。
  3. 窒素含有化合物が、エチレン尿素、プロピレン尿素、ヒダントイン、シアヌル酸、及びピオルル酸から選ばれる1種以上の化合物である請求項1又は2に記載のフェノール樹脂。
  4. 窒素含有フェノール樹脂が、窒素含有化合物とフェノール類とがメチレン結合を介して交互に繰り返した構造を有する請求項1〜3のいずれかに記載のフェノール樹脂。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のフェノール樹脂とエポキシ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物。
  6. エポキシ樹脂1.0当量に対し、フェノール樹脂が0.6〜1.2当量である請求項5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 充填剤を含む請求項5又は6に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 請求項5〜7のいずれかに記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
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