JP2013173645A - 結晶成長装置及び結晶成長方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭化珪素の単結晶を液相成長法により継続的に成長させる結晶成長装置及び結晶成長方法を提供する。
【解決手段】炭化珪素(SiC)の単結晶を液相成長法により継続的に成長させる工程において、種結晶21を保持するシードロッド13と坩堝12の壁体12bの間に、シードロッド13の周囲を囲んで、且つ、シードロッド13と離間して筒体14を配置する。また、筒体14の下端は、溶液表面20aよりも下方に位置するように配置する。また、筒体14を、シードロッド13の回転軸と同一の回転軸で、同一の方向に同一の回転速度で回転させる。また、少なくとも結晶を成長させる工程中は、筒体14をヒータ16により加熱する。
【選択図】図3

Description

本発明は、結晶成長技術に関し、特に、炭化珪素(SiC;シリコンカーバイド)の単結晶を液相成長法により成長させる結晶成長装置、及び結晶成長方法に適用して有効な技術に関するものである。
例えば、下記特許文献1や特許文献2には、炭化珪素(SiC)の単結晶を、液相成長法により形成することが記載されている。また、下記特許文献3には、Si(シリコン)‐Cr(クロム)融液にC(炭素)を溶解させたSi−Cr−C溶液に直流磁場を印加して、SiC種結晶上にSiC単結晶を成長させる方法が記載されている。また、下記特許文献4には、チョクラルスキー法によりニオブ酸リチウム等の酸化物単結晶を製造する装置として、原料を加熱する坩堝内に上端が坩堝より高位置に設定され下部に溶液の流通口を有する筒状隔壁を設けた構成が記載されている。
特許第4453348号公報 特許第4419937号公報 特開2009-274887号公報 特開平4−300281号公報
近年、半導体デバイスを構成する材料として、炭化珪素(SiC)が注目されている。SiCから成る半導体基板は、シリコン(Si)から成る半導体基板と比較して、バンドギャップが広い、熱伝導率が高い、及び絶縁破壊電界が大きいという点で優れている。そのため、例えば、パワーデバイスなどの用途に適用する場合には、Siから成る半導体基板よりも有利である。SiCは、一致溶融(固体が溶けてこれと同じ組成をもつ溶液になる現象)しない化合物半導体であるため、SiC単結晶は、一般に、昇華法と呼ばれる方法で形成される。また、昇華法よりも高品質な(例えば結晶中に含まれる多結晶の割合が少ない)結晶を成長させる技術として、液相成長法によりSiC単結晶を形成する方法が検討されている。
本願発明者は、SiC単結晶を、液相成長法により形成する技術について検討し、以下の課題を見出した。すなわち、液相成長法は、昇華法よりも高品質な結晶を成長させることができるが、成長速度が遅いため、単結晶を必要な長さまで成長させるためには、長時間に亘って安定的に結晶成長を継続させる技術が必要となる。
液相成長法では、SiC単結晶の原材料を溶融させた溶液(原料溶液)に浸した種結晶の周囲に溶質(SiC)の過飽和状態を形成し、種結晶の表面にSiCを析出させながら結晶成長させる。また、種結晶の周囲に過飽和状態を形成する方法としては、種結晶の周囲に温度勾配を形成し、この温度勾配を利用して過飽和状態を形成する。詳しくは、原料溶液を収容する容器である坩堝を加熱することで坩堝の壁体や底部の周囲の原料溶液温度を高くする。
一方、種結晶を保持するシードロッドの温度を坩堝の温度よりも相対的に低くすることで、種結晶周囲の熱はシードロッドを介して外部に伝達される。このため、種結晶周囲の原料溶液の温度は坩堝の周囲の原料溶液温度と比較して相対的に低くなり、温度勾配が形成される。この温度勾配により、原料溶液内に対流が生じ、坩堝周囲の高温部で溶け出した炭素が低温部である種基板周辺に運ばれる。この結果、種結晶の周囲では過飽和状態が形成され、種結晶の表面にSiC単結晶が成長する。
ところが、坩堝よりも温度が低いシードロッドを原料溶液に浸すと、表面張力によりシードロッドの周囲に原料溶液が這い上がり結晶化する。この状態で結晶成長を継続すると、シードロッドの周囲に析出された結晶は原料溶液の表面に沿って坩堝の壁体に向かって拡大(成長)する。そして、原料溶液の表面が拡大した結晶に覆われ、その端部が坩堝の壁体に到達すると、シードロッドの回転が阻害され、単結晶を安定的に成長させることが困難になる。さらに、シードロッドの周囲に析出した結晶は、溶液下方にも成長することで種結晶の下方(成長方向)へも拡大し、成長面への回りこみ(ハングオーバ)により単結晶の成長を阻害する要因ともなる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、高品質SiC単結晶を液相成長法により継続的に成長させる結晶成長装置及び結晶成長方法を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る結晶成長装置は、炭化珪素の単結晶を成長させる結晶成長装置であって、単結晶を成長させるための原料を含む原料溶液を収容する収容部、収容部の周囲を取り囲んで配置される壁体、収容部上に形成された開口部、及び開口部の反対側に位置する底部を備える坩堝と、坩堝の前記収容部に配置され、坩堝の収容部に収容される原料溶液の溶液表面よりも種結晶の下端が下方に位置するように当該種結晶を保持する保持面を備える種結晶保持棒と、種結晶保持棒と坩堝の壁体の間に配置され、種結晶保持棒と離間すると共に種結晶保持棒の周囲を囲む筒体と、坩堝を加熱する坩堝加熱部と、筒体を加熱する筒体加熱部と、を有し、筒体の下端は、溶液表面よりも下方に配置され、種結晶保持棒は、溶液表面と交差する第1軸を回転軸として第1方向に第1回転速度で回転可能に設けられており、種結晶保持棒と筒体は、それぞれ第1軸を回転軸として第1方向に第1回転速度で回転することを特徴とする。
一実施形態においては、筒体の下端は、種結晶保持棒に保持される前記種結晶の下端以上の高さに配置されている。
一実施形態においては、坩堝加熱部は、収容部内の原料溶液の温度が、壁体及び底部に隣接する第1領域で第1温度となり、溶液表面で第1温度よりも低い第2温度となるように坩堝を加熱し、筒体加熱部は、筒体の下端の温度が第1温度よりも低く、且つ、第2温度よりも高い第3温度となるように加熱する。
一実施形態においては、坩堝加熱部と筒体加熱部とは独立して制御され、筒体加熱部は、坩堝加熱部よりも筒体に近い位置に配置されている。
一実施形態においては、筒体は、円筒形状を成している。
一実施形態においては、坩堝は、溶液表面と交差する第2軸を回転軸として第2方向に第2回転速度で回転する。
一実施形態においては、坩堝加熱部と筒体加熱部とは独立して制御され、筒体加熱部は、坩堝加熱部よりも筒体に近い位置に配置され、誘導加熱方式で筒体を加熱する加熱装置であり、坩堝の壁体と筒体との間で、且つ、筒体加熱部と溶液表面との間に、溶液表面を覆う蓋体が配置されている。
一実施形態においては、蓋体は、筒体と一体に形成されている。
本発明の一側面に係る結晶成長方法は、炭化珪素の単結晶を成長させるための原料を含む原料溶液を収容する収容部、収容部の周囲を取り囲んで配置される壁体、収容部上に形成された開口部、及び開口部の反対側に位置する底部を備える坩堝を準備して、収容部内の原料溶液を加熱する工程と、種結晶を保持する保持面を備え、保持面に種結晶を保持する種結晶保持棒を、種結晶の下端が原料溶液の溶液表面よりも下方に位置するように坩堝の収容部に配置する工程と、種結晶保持棒と坩堝の壁体の間に、種結晶保持棒から離間した位置で種結晶保持棒の周囲を囲み、且つ、下端が溶液表面よりも下方に位置するように筒体を配置する工程と、種結晶保持棒と筒体のそれぞれを溶液表面と交差する第1軸を回転軸として第1方向に第1回転速度で回転させて、種結晶の表面に炭化珪素の単結晶を成長させる工程と、を含み、単結晶を成長させる工程では、坩堝及び筒体をそれぞれ加熱することを特徴とする。
一実施形態においては、単結晶を成長させる工程では、筒体の下端を種結晶保持棒に保持される種結晶の下端以上の高さに配置して、筒体を回転させる。
一実施形態においては、単結晶を成長させる工程では、収容部内の原料溶液の温度を、壁体及び底部に隣接する第1領域では第1温度とすると共に、溶液表面では第1温度よりも低い第2温度とし、筒体の下端の温度を、第1温度よりも低く、且つ、第2温度よりも高い第3温度とする。
一実施形態においては、単結晶を成長させる工程では、坩堝を、溶液表面と交差する第2軸を回転軸として第2方向に第2回転速度で回転させる。
一実施形態においては、単結晶を成長させる工程では、筒体を誘導加熱方式により加熱し、坩堝の壁体と筒体の間の領域において溶液表面を蓋体により覆う。
一実施形態においては、単結晶を成長させる工程では、種結晶及び種結晶の表面に析出する単結晶を原料溶液に浸漬した状態で成長させる。
本発明によれば、高品質SiC単結晶を液相成長法により継続的に成長させることができる。
本発明の一実施形態に係る結晶成長装置の全体構造を示す要部断面図である。 図1に示す各部材の平面視における形状及び位置関係を示す要部平面図である。 図1に示す坩堝周辺を拡大して示す要部拡大断面図である。 図3に示す構成の変形例である結晶成長装置の構造及び動作を示す拡大断面図である。 図3に示す構成の変形例である結晶成長装置の構造及び動作を示す拡大断面図である。 図3に示す筒体加熱部により筒体を加熱する温度を変化させて、筒体の外面における多結晶の発生状況を確認した実験結果を示す説明図である。 図3に示す構成の変形例である結晶成長装置の構造及び動作を示す拡大断面図である。 図1に示す構成の変形例である結晶成長装置の全体構造を示す要部断面図である。 図8に示す各部材の平面視における形状及び位置関係を示す要部平面図である。 図8に示す坩堝周辺を拡大して示す要部拡大断面図である。 図3に示す構成の変形例である結晶成長装置の構造及び動作を示す拡大断面図である。 図3に示す結晶製造装置に対する比較例である結晶製造装置を示す拡大断面図である。 図12に示すシードロッドの周囲に形成された多結晶を模式的に示す拡大断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
[結晶成長装置の構造概要]
図1は、一実施形態に係る結晶成長装置の全体構造を示す要部断面図、図2は、図1に示す各部材の平面視における形状及び位置関係を示す要部平面図である。図3は、図1に示す坩堝周辺を拡大して示す要部拡大断面図である。図1に示すように本実施形態の結晶成長装置10は、断熱材11で囲まれた結晶成長室内に、坩堝12と、シードロッド(種結晶保持棒)13と、筒体14と、ヒータ(加熱部)15,16、蓋体19とを備えている。
坩堝12は、SiC(炭化珪素)単結晶を成長させるための原料を含む原料溶液20を収容する収容部12aと、収容部12aの周囲を取り囲むように配置される壁体12bと、収容部12a上に形成された開口部12cと、開口部12cの反対側に位置する底部12dとを備えている。図1及び図2に示すように、坩堝12は、円柱形の外形形状を成し、平面視において、壁体12bの内側に収容部12aが配置されている。つまり、坩堝12は、壁体12bと底部12dに囲まれた収容部12aに原料溶液20を収納する収納容器である。坩堝12は、例えば図1及び図3に示すように、ステージ(架台)18上に固定される。
また、坩堝12は、原料溶液20を加熱する加熱容器としての機能を備えている。後述するSiC単結晶22(図11参照)を成長させる工程(結晶成長工程)では、坩堝12内の原料溶液20が、例えば1700℃に以上になるまで加熱する。加熱方法は、図1及び図2に示すヒータ(坩堝加熱部)15により坩堝12を加熱し、坩堝12からの熱伝達により原料溶液20を加熱する。言い換えれば、原料溶液20はヒータ15により、坩堝12を介して加熱される。このため、坩堝12は、原料溶液20の加熱温度(例えば1700℃以上)において耐熱性を有する材料で構成される。
本実施形態では、原料溶液20に炭素を供給する炭素源として坩堝12を利用するため、坩堝12は、炭素を含む耐熱性材料、例えば黒鉛(グラファイト)あるいはSiCで構成される。ただし、原料溶液20に炭素を供給できる耐熱性材料であれば上記の材料に限定されない。また、変形例として原料溶液20に炭素を供給する炭素源を坩堝12とは別に設ける場合には、炭素を含む材料には限定されず、非消耗性(原料溶液中に構成材料が溶け出ることが予定されていない)の材料で坩堝12を構成することができる。この場合の炭素源としては、例えば炭化水素ガスを結晶成長装置10中に導入する方法を用いることができる。また、固体の炭素源を原料として坩堝に投入する場合には、固体の炭素源として、黒鉛のブロックや棒、顆粒、粉体の他、黒鉛以外の非晶質の炭素原料、さらにはSiCや金属炭化物などを利用することができる。
原料溶液20は、少なくとも溶融したSi(シリコン)を含む溶液であり、上記の炭素源(本実施形態では坩堝12の壁体12b及び底部12d)から供給される炭素も含んでいる。また、溶融させる物質はSiのみには限定されず、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び希土類金属などの金属のうち、いずれか一種以上をSiの他に溶融させることができる。
シードロッド13は、結晶成長の基材となる種結晶21を保持する棒状の部材であって、一方の端部(下端)に種結晶21を保持する保持面13aを備える。SiC単結晶22は、種結晶21の下端(下面)21aから下方に向かって成長させるので、単結晶成長中はシードロッド13は、少なくとも種結晶21の下端21aが原料溶液20の溶液表面20aよりも下方に位置するように配置されている。本実施形態では、種結晶21の下端21aを確実に原料溶液20に浸すため、シードロッド13の保持面13aが溶液表面20aよりも下方(例えば、溶液表面20aから2mm程度の深さ)に位置するように配置している。つまり、シードロッド13に保持される種結晶21及びシードロッド13の保持面(下面、下端)13aは、原料溶液20に浸る位置に配置されている。
種結晶21は、SiC単結晶22を結晶成長させるための基材であって、例えば、SiC単結晶から成る。種結晶21を原料溶液20に浸すことにより、原料溶液20中のSi及び炭素が種結晶21の表面に供給され、種結晶21の表面において析出することで、種結晶21の表面にSiC単結晶22が形成される。詳しくは、原料溶液20の温度は、収容部12a内において一様ではなく、シードロッド13に隣接する領域20cの温度は坩堝12の壁体12b及び底部12dと隣接する領域20bの温度よりも低い温度となる。つまり収容部12a内において、原料溶液20に温度勾配が形成され、該温度勾配により原料溶液内に対流が発生し、温度の高い坩堝周囲の原料溶液が、温度の低いシードロッド周辺に運ばれることで、例えばSiを主成分とする原料溶液20に含まれる炭素が過飽和状態となる。この結果、種結晶21の表面にSiC単結晶22が形成される。
シードロッド13は、一部(保持面13a側の端部)が原料溶液20内に浸されるため、原料溶液20の加熱温度において耐熱性を有する材料で構成される。また、シードロッド13は、原料溶液20に含まれる炭素とシードロッド13の構成材料が反応してシードロッド13の一部(原料溶液20に浸漬された部分)が溶融することを抑制する観点から、原料溶液20と反応し難い材料を用いることが好ましい。ただし、積極的には加熱されないシードロッド13と接触する溶液の温度は、上述したように溶液下部の温度よりも低いので、坩堝12と同じ材料をシードロッド13の構成材料として用いることができる。本実施形態では、シードロッド13は、例えば黒鉛(グラファイト)あるいはSiCで構成される。
また、シードロッド13は、保持面13a側の端部から坩堝12の収容部12a上に向かって延びている。本実施形態では、例えば図1に示すようにシードロッド13は断熱材11の外側まで延び、断熱材11の外側で、シードロッド13を冷却する冷却装置17に接続されている。前記冷却装置17としては、例えばシードロッド13内の一部に中空領域を形成し、該中空領域にアルゴン(Ar)やヘリウム(He)などの冷媒ガスを流すことで、シードロッド13を冷却する装置が挙げられる。シードロッド13は、図3に示すように、その一部が原料溶液20に浸され、他部は原料溶液20の溶液表面20aから露出している。
このため、シードロッド13に隣接する領域20cの原料溶液20の熱は、シードロッド13を介して外部に放出されるので、例えばシードロッド13を冷却装置17(図1参照)に接続しなくても、領域20cの温度は領域20bの温度よりも低くなる。しかし、シードロッド13を安定的に冷却する観点からは、図1に示すようにシードロッド13を冷却装置17に接続することが好ましい。シードロッド13を冷却装置17に接続すれば、シードロッド13の温度及びシードロッド13に保持される種結晶21の温度を溶液下部よりも低い温度で容易に維持することができる。このため原料溶液20に温度勾配を形成するための制御を行うことができる。
また、図3に示すようにシードロッド13は、溶液表面20aと交差する軸(第1軸)CL1を回転軸として方向(第1方向)D1に第1回転速度で回転可能な状態で配置されている。図3では、軸CL1は溶液表面20aを平面と見做したときに、溶液表面20aの法線方向に延在している。また、保持面13aに保持された種結晶21は、シードロッド13とともに回転する。このように、シードロッド13を回転させることで、原料溶液20の対流を制御することができる。このとき、第1回転速度は、100rpm以上では対流が乱れるため単結晶の品質が低下する。このため原料溶液20内の対流を制御する観点から100rpm以下が好ましい。
また、シードロッド13の周囲に配置される筒体14は、図1〜図3に示すように、シードロッド13と坩堝12の壁体12bの間に、シードロッド13の周囲を全周に亘って取り囲んで配置されている。本実施形態では、筒体14は円筒形を成している。また、筒体14は、シードロッド13とは接触せず、離間して配置されている。また、筒体14の下端は、シードロッド13側に張り出す蓋体19を有しており、溶液表面20aよりも原料溶液20側に配置されている。言い換えれば、筒体14は、下端部が原料溶液20に浸る位置に配置されている。また、筒体14の周囲には、筒体14を加熱するヒータ(筒体加熱部)16が配置されている。この筒体14は、結晶成長装置10を用いてSiC単結晶22を成長させる際に、継続的に結晶成長行うために設ける部材であるが、その詳細な構造、好ましい態様及び変形例については後で詳細に説明する。
[結晶成長方法]
次に、図1〜図3に示す結晶成長装置10を用いた結晶成長方法について説明する。まず、原料溶液20の調製方法は特に限定されないが、例えば以下の方法で調製する。すなわち、重量を秤量した少なくともSiを含む原料を坩堝12の収容部12a内に投入し、原料が投入された坩堝12を架台18に固定する。そして、ヒータ15(図1参照)により坩堝12内の原料溶液20を所定の温度(例えば、1700℃以上)まで加熱することで、坩堝12内のSiが溶融した原料溶液20が得られる。なお、本実施形態では、上述したように坩堝12を炭素源として用いるので、坩堝12に投入する原料に炭素が含まれることは必須ではない。
シードロッド13及び筒体14は、例えば、それぞれ独立して動作(上下動作)させることができる。ただし、シードロッド13の保持面13aと筒体14の下端の高さの位置関係を維持する観点からは、シードロッド13と筒体14を一括して動作させる駆動源(図示は省略)に接続し、該駆動源により保持面13aと下端の高さの位置関係を維持しながら一括して動作させることが好ましい。
次に、シードロッド13及び筒体14を原料溶液20に向かって(下方に)移動させて、図3に示すように、シードロッド13に保持される種結晶21の下端21a及び筒体14の下端を、それぞれ原料溶液20に浸す。つまり、少なくとも種結晶21の下端21aが原料溶液20の溶液表面20aよりも下方(原料溶液20側)に位置するようになるまでシードロッド13を移動させる。
本実施形態では、上述したように種結晶21の下端21aを原料溶液20に確実に浸すため、シードロッド13の保持面13aが溶液表面20aよりも下方(原料溶液20側、例えば溶液表面20aから2mm程度の深さ)に位置するようにシードロッド13を移動させる。また、筒体14の下端が原料溶液20の溶液表面20aよりも下方(原料溶液20側)に位置するようになるまで移動させる。シードロッド13及び筒体14は、それぞれ独立して移動(下方向に移動)させることもできるが、上述したように保持面13aと下端の高さの位置関係を維持しながら一括して移動させることが好ましい。
種結晶21の下端21aを原料溶液20に浸すと、種結晶21の周囲の原料溶液20の熱は、種結晶21及びシードロッド13を介して外部に伝達されるので、種結晶21の周囲の領域20cの温度が低下する。このため、原料溶液20内の各領域に温度勾配が形成される。そして領域20bよりも温度が低下した領域20cでは原料溶液20中の炭素が過飽和状態となるため、種結晶21の表面にSiC単結晶22が析出する。
図3では、シードロッド13の回転方向の一例として、溶液表面20aの法線方向に延びる軸CL1を回転軸として方向D1(上面視において時計回り)に回転する実施態様を示している。図3に示す構成の変形例として、溶液表面20aに対する回転軸の傾斜角度を90°以外の角度とすることもできるが、坩堝12の収容部12a内で原料溶液20を効率的に対流を制御する観点から傾斜角度は90°とする(すなわち、溶液表面20aの法線方向に延びる軸CL1を回転軸とする)ことが好ましい。また、回転方向は図3に示す方向D1に限定されず、方向D1の反対方向に回転させることもできる。
また、シードロッド13を回転させるタイミングは、種結晶21の下端21aを原料溶液20に浸した後でも良いが、これには限定されず、例えば、種結晶21の下端21aを原料溶液20に浸す前に、予めシードロッド13を回転させ、回転させながら種結晶21の下端21aを原料溶液20に浸すことができる。そして、シードロッド13の回転動作が阻害されなければ、継続的に結晶成長(SiC単結晶22を成長)させることができるので、種結晶21の下端21aから下方に向かって結晶成長させることで、SiC単結晶22が得られる。そして、単結晶の長さは、結晶成長の成長速度及び成長時間により規定されるので、長時間に亘って結晶成長させることで長い単結晶を成長することができる。このように、種結晶21及び種結晶の表面に析出するSiC単結晶22を原料溶液20に浸漬した状態で成長させる方法をディップ法と呼ぶ。
ここで、本願発明者がSiC単結晶22を継続的に成長させる方法について検討して見出した課題について、比較例を用いて説明する。図12は、図3に示す結晶製造装置に対する比較例である結晶製造装置を示す拡大断面図、図13は、図12に示すシードロッドの周囲に形成された多結晶を模式的に示す拡大断面図である。図12に示す比較例の結晶成長装置40は、図3に示す筒体14及びヒータ16が取り除かれている点を除き、本実施形態の結晶成長装置10(図3参照)と同様の構造を有している。
SiC単結晶22を種結晶21の表面に析出させること自体は、筒体14(図3参照)を有していない結晶成長装置40でも可能である。ところが、結晶成長装置40では、以下の問題が生じる。すなわち、シードロッド13の周囲に図13に示すような多結晶41が発生し、多結晶41が成長して坩堝12の壁体12bに到達すると、シードロッド13の回転が阻害されるため結晶成長が継続出来なくなるといった問題が生じる。
原料溶液20は液体なので、種結晶21及びシードロッド13を浸すと表面張力により原料溶液20がシードロッド13の側面に這い上がり、メニスカスを形成する。そしてメニスカスが形成された領域(図12に示す領域20d)では、原料溶液20の体積が小さくなるので、原料溶液20の温度が局所的に急激に冷やされることで、結晶が形成される。この現象は、原料溶液20の組成によらず発生する。
また、この現象により形成される結晶は多結晶となることが多いため、以下ではメニスカスが形成された領域20dで発生した結晶を多結晶41(図13参照)として説明する。シードロッド13の周囲に多結晶41が形成した状態で結晶成長を継続すると、多結晶41は図12に示す原料溶液20の溶液表面20aに沿って坩堝12の壁体12bに向かって拡大(成長)する。そして、原料溶液20の溶液表面20aが拡大した多結晶41(図13参照)に覆われ、その端部が坩堝12の壁体12bに到達すると、シードロッド13の回転方向に対する抵抗成分が大きくなる。つまり、シードロッド13の回転が阻害される原因となる。
また、多結晶41が壁体12bに固着すると、シードロッド13が、多結晶41を介して坩堝12に固定されるため、シードロッド13の回転動作が停止してしまう場合もある。本願発明者は、多結晶41の発生を抑制する方法として、例えば、原料溶液20に直流磁場を印加する方法などについて検討を行ったが、シードロッド13の周囲における多結晶41の発生を完全に防止する事は困難であることが判った。坩堝12の壁体12bのように結晶成長を行う際に加熱される部材の周囲では、加熱温度を調整することにより多結晶41の発生を防止若しくは抑制することができる。
しかしながら、シードロッド13は、領域20cの原料溶液20の熱を外部に放出して、温度勾配を形成するための部材である。このため、シードロッド13を加熱すると温度勾配が形成されず、原料溶液20中における炭素の過飽和状態が維持できなくなるという新たな課題が生じる。つまり、温度勾配を形成するためには、シードロッド13の温度は、坩堝12の壁体12bよりも低い温度とする必要があるため、シードロッド13の周囲における多結晶41の発生を防止することが困難となる。
そこで、本願発明者は、多結晶41が発生した場合であっても、結晶成長を継続させる方法について検討を行い、本実施形態の構成を見出した。すなわち、図4に示すように、シードロッド13と坩堝12の壁体12bの間に、シードロッド13の周囲を全周に亘って囲み、且つ、シードロッド13と離間して筒体14を配置する。また、筒体14の下端は、溶液表面20aよりも下方に位置するように配置する。言い換えれば、筒体14の一部を原料溶液20に浸す。また、筒体14を、シードロッド13の回転軸と同一の回転軸で、同一の方向に同一の回転速度で回転させる。言い換えれば、シードロッド13と筒体14のそれぞれを、溶液表面20aと交差する軸CL1を回転軸として方向D1に第1回転速度で回転させる。また、少なくとも結晶を成長させる工程(結晶成長工程)中は、筒体14をヒータ(筒体加熱部)16により加熱する。
図4に示す本実施形態の結晶成長装置10を用いた結晶成長方法は、シードロッド13の一部(少なくとも種結晶21の下端21a)を原料溶液20に浸す点では図12に示す比較例と同様である。このため、シードロッド13の側面の周囲には原料溶液20が表面張力により這い上がるメニスカスが形成される。また、本実施形態の結晶成長方法は、原料溶液20の熱を、シードロッド13を介して外部に放出し、領域20cの温度を低下させる点で図12に示す比較例と同様である。したがって、シードロッド13の周囲に形成された領域20d(メニスカス領域)の原料溶液20が、急激に冷却されて多結晶41(図13参照)が形成される。
なお、多結晶41を積極的に形成する必要はないが、結晶成長装置10の機構上、原料溶液20の組成によらず形成される。また、シードロッド13の周囲に形成された多結晶41は溶液表面20aに沿って周囲に拡大(成長)し筒体14の内面(シードロッド13側の側面)に到達する。この結果、筒体14とシードロッド13の間の空間では、溶液表面20aが多結晶41で覆われる。
これに対して、本実施形態では、筒体14をヒータ16により加熱することで、筒体14に到達した多結晶41(図13参照)が筒体14の内面(シードロッド13側の側面)に固着することを抑制することができる。また、仮に、筒体14の内面に多結晶が固着した場合であっても、筒体14は、シードロッド13の回転軸と同一の回転軸で、同一の方向に同一の回転速度で回転する。このため、多結晶41はシードロッド13及び筒体14と共に回転することとなり、シードロッド13の回転を阻害する要因とはならない。また、筒体14の外面(壁体12b側の側面)にもメニスカスが形成されるが、筒体14を加熱することで、筒体14の外面に多結晶41が形成されることを防止若しくは抑制することができる。
このため、坩堝12の壁体12bと筒体14の間の空間では、多結晶41の発生を防止若しくは抑制し、シードロッド13及び筒体14を継続的に回転させることができる。つまり、本実施形態によれば、SiC単結晶22を液相成長法により成長させる工程において、シードロッド13の周囲に多結晶41が発生した場合であっても、シードロッド13及び筒体14を継続して回転させることができる。
しかしながら、上記方法において長時間にわたる単結晶成長を行った場合、溶液表面20aでの多結晶41が拡大する問題は解決したが、多結晶41が溶液下方にも成長することで結晶成長面下に回り込み、単結晶成長を阻害するという問題が新たに判明した。この問題を解決するため、図3に示すように、図4の構成に加え、筒体14の下端にシードロッド13方向に突き出した蓋体19を配した。
蓋体19を配した場合、蓋体19のない場合と同様、溶液表面20aと接しているシードロッド13の周囲に多結晶41の発生を確認した。しかし、溶液表面20aより温度の高い筒体14に蓋体19を配すことによって、溶液下方への多結晶41の成長を抑制することができる。さらに、溶液下方へ成長した多結晶41が蓋体19に到達した場合においても、蓋体19が堰き止めるため多結晶41の拡大を止めることができる。
さらに、シードロッド13と筒体14は共に同一の回転軸で、同一の方向に同一の回転速度で回転しているため、多結晶41が溶液表面20aから下方に拡大し蓋体19に到達した場合においても、継続して回転させることができる。このため、高品質SiC単結晶22を継続的に成長させることができる。また、蓋体19のシードロッド側の端部とシードロッド13との距離は1〜2mm程度が望ましい。
次に、上記した結晶成長装置及び結晶成長方法の好ましい態様について、図1〜図3に示す実施態様に対する変形例を参照しながら説明する。
[筒体の配置高さについて]
図5は、図3に示す構成の変形例である結晶成長装置の構造及び動作を示す拡大断面図である。図5に示す結晶成長装置30は、筒体14の下端が種結晶21の下端21aよりも下方(底部12d側)に位置している点を除き、図3に示す結晶成長装置10と同様である。上記したシードロッド13及び筒体14を継続して回転させる効果は、図5に示すように筒体14の下端が種結晶21の下端21aよりも下方に位置する結晶成長装置30でも得られる。
しかし、収容部12a内の各領域において原料溶液20を効率的に対流させる観点からは、図3に示すように、筒体14の下端は、種結晶21の下端21a以上の高さに配置することが好ましい。図5に示すように、筒体14の下端の位置が種結晶21の下端21aの位置に対して下方に配置される場合、原料溶液20の対流が筒体14に阻害され易くなる。例えば、図5に示す例では、壁体12b周辺の領域20bの原料溶液20を領域20cに送るためには、筒体14の下端と底部12dの間の領域を通過させる必要がある。このため、収容部12a内において原料溶液20を効率的に循環させることが難しい。
一方、図3に示すように、筒体14の下端を、種結晶21の下端21a以上の高さに配置すれば、筒体14により対流が阻害され難くなる。特に炭素が高い溶解度で存在する領域20bの原料溶液20を効率的に領域20cに移動させることができる。このため、領域20cにおいてSiC単結晶22を析出させるために必要な過飽和状態を確実に形成することができる。そして、領域20cを過飽和状態とすることにより、種結晶21の表面にSiCの結晶を効率的に成長させることができる。ただし、筒体14の下端が原料溶液20から露出する、言い換えれば筒体14の下端が溶液表面20aよりも上方に配置すると、上記した多結晶41の拡大を筒体14により堰き止めることができなくなる。したがって、筒体の下端を確実に溶液表面20aよりも下方に配置する観点から、例えば溶液表面20aから筒体14の下端までの距離は2mm〜3mm程度とすることが好ましい。
[筒体の加熱温度について]
図6は、図3に示すヒータにより筒体を加熱する温度を変化させて、筒体の外面における多結晶の発生状況を確認した実験結果を示す説明図である。なお、図6では、比較区として、図12に示す結晶成長装置40を用いて同様の実験を行った結果も示している。まず、図6に示す実験におけるSiC単結晶の成長条件について説明する。図6に示す実験では、Si及びチタン(Ti)を含む原料溶液を用いた。
具体的には、原料溶液中のSiとTiの組成比が[Ti]/([Si]+[Ti])=0.23となるように原料溶液を調製し、これを比較区及び各実験区で共通して用いた。また、成長手法は、図3に示すように種結晶21及び種結晶21の表面に析出するSiC単結晶22を原料溶液20に浸漬した状態で成長させるディップ法を用いた。また、浸漬深さ(図3に示す溶液表面20aから保持面13aまでの距離)は3mmとした。なお、上述したようにシードロッド13や筒体14を原料溶液20に浸すと、表面張力により原料溶液20の一部がシードロッド13や筒体14の側面を這い上がる。したがって、浸漬深さの設定に際しては、シードロッド13及び筒体14を原料溶液20に浸す前の溶液表面20aの中心位置(平面視における中心)の高さを基準点とし、該基準点からの距離を浸漬深さとした。
また、溶液表面温度及び溶液最高温度は以下のように設定した。ヒータ15(図1参照)で坩堝12を加熱すると、原料溶液20の温度は一様に上昇する訳ではなく、領域毎に温度分布が発生する。つまり、壁体12b及び底部12dに隣接する領域20bは、熱源である坩堝12に隣接するため温度が高くなる。一方、溶液表面20a(ただし、坩堝12の壁体12bに隣接した領域20bを除く)の温度は領域20bよりも低くなる。このため、図6では、図3に示す領域20bにおける原料溶液20の温度を溶液最高温度(1750℃)、領域20bを除く溶液表面20aにおける原料溶液20の温度を溶液表面温度(1700℃)として示している。
また、筒体温度は、図3に示すヒータ16で加熱した時の溶液表面20a近傍の筒体14の温度を測定した結果を示している。図6では、筒体温度がそれぞれ1650℃、1700℃、1720℃、1750℃となるようにヒータ16による加熱条件を制御し、比較区及び各実験区において、図3に示すシードロッド13周辺、筒体14の外面側(壁体12b側)及び壁体12bの内面側(シードロッド13側)のそれぞれで多結晶41(図13参照)の発生の有無を観察した結果を示している。また、実験終了後に筒体14の状態を確認し、筒体14における欠損(原料溶液20に浸食されて形成された欠損)の有無を確認した結果を筒体欠損として示している。なお、比較区では筒体14を配置せず、実験区1〜実験区4では、筒体14の構成材料としては、黒鉛(グラファイト)を用いた。
図6に示すように、比較区では、壁体12b内面側では多結晶41(図13参照)の発生が認められなかったがシードロッド13周辺では多結晶41の発生が認められた。また、多結晶41は、図12に示す溶液表面20aに沿って壁体12bに向かって拡大し、壁体12bに到達すると、シードロッド13の回転が阻害された。つまり、比較区の結晶成長方法では、長時間に亘って結晶成長を継続させることができないことが判った。
実験区1では、筒体14の外面側に多結晶41の発生が認められたものの、多結晶41が成長して坩堝12の壁体12bに到達するまでの時間は、比較区よりは長かった。また、実験区2では僅かに多結晶41の発生が認められたが、多結晶41の成長速度が遅いため、多結晶41が成長して坩堝12の壁体12bに到達する現象は確認できなかった。上記結果より、筒体14を加熱すれば、筒体14の温度は少なくともシードロッド13の温度よりは高くなるので、単結晶の成長時間を延長する効果が得られることが判った。また、加熱後の筒体14の温度が溶液表面20aの温度以下の場合には、筒体14の外面側に多結晶41が発生する場合があり、単結晶の成長時間をさらに延長するためには、筒体14の温度を溶液表面20aよりも高い温度まで加熱する必要があることが判った。
また、実験区3及び実験区4では、筒体14の外面側に多結晶41が発生しないことを確認した。また、実験区3及び実験区4については、20時間に亘って連続的に結晶成長(SiC単結晶22を成長)させたが、筒体14の外面側には多結晶41の発生は認められなかった。この結果から筒体14の温度を溶液表面20aの温度よりも高い1720℃以上に加熱すれば、筒体14の外面側における多結晶41の発生を防止できるので、結晶成長を継続できることが判った。なお、実験区2では筒体14の外面側に僅かな多結晶41の発生が認められたが、坩堝12の壁体12bに到達するまでの時間が長いことから、実効的には筒体14の温度を溶液表面20aの温度よりも高くすれば、単結晶の成長時間を十分に延長させることができると考えられる。
ただし、20時間に亘って連続的に結晶成長させた後、図6に示す実験区3と実験区4のそれぞれについて筒体14の状態を確認したところ、実験区4では、筒体14の一部が浸食され、欠損していることが判った。これは、筒体14を領域20bの温度と同じ温度まで加熱したことにより、筒体14の構成材料が原料溶液20と反応し、一部が浸食されたためと考えられる。したがって、筒体14の浸食を防止若しくは抑制する観点から、筒体14の加熱温度は、領域20bの温度よりも低くすることが好ましい。つまり、図6に示す結果から、図3に示す結晶成長装置10を用いた結晶成長工程では、筒体14の温度が、溶液表面20aの温度よりも高く、且つ、領域20bの温度よりも低くなるようにヒータ16を制御しながら加熱することが好ましい。
[筒体の形状について]
図2に示すように、本実施形態の結晶成長装置10が備えるシードロッド13は円柱形を成し、筒体14は円筒形となっている。図示は省略するが、図2に対する変形例として例えば、筒体14を角筒形に形成することもできる。シードロッド13の平面形状は、取得するSiC単結晶の要求形状により規定される。ただし、シードロッド13の側面から筒体14の内面(シードロッド13側の側面)までの距離(つまりシードロッド13と筒体14の離間距離)を略一定に保つ観点からは、図2に示すように、シードロッド13を円柱形とし、筒体14を円筒形として、平面視において同心円状に配置することが好ましい。シードロッド13と筒体14の離間距離を略一定に保つことで、加熱された筒体14のシードロッド13に対する輻射熱の影響を制御し易くなる。
[抵抗加熱方式のヒータについて]
図1及び図2に示すヒータ15、16は、抵抗加熱方式の加熱装置を用いている。図示は省略するが、抵抗加熱方式で筒体14を加熱する方法の別の実施態様として、筒体14と図示しない電流供給源を電気的に接続し、筒体14に直接、電流を供給して抵抗熱を発生させる方式が考えられる。ただしこの場合、筒体14を介して原料溶液20に大電流が流れ、その電流により原料溶液20の対流が阻害される懸念がある。したがって、図1から図3に示すように、筒体14の周囲にヒータ16を配置し、ヒータ16により筒体14を加熱することが好ましい。
図1〜図3に示す例では、ヒータ16自体は抵抗加熱方式で加熱するが、筒体14は、ヒータ16から放出される輻射熱により加熱している。このため、筒体14及び筒体14が浸る原料溶液20には電流が流れず、加熱電流により原料溶液20の対流が阻害されることを防止できる。また、ヒータ16の熱により、シードロッド13が過剰に加熱され、シードロッド13の保持面13aやシードロッド13に保持される種結晶21の温度が溶液表面20aの温度よりも高くなることを抑制する観点から、図1に示すようにヒータ16の内面とシードロッド13が対向する領域では、ヒータ16とシードロッド13の間に筒体14を介在させることが好ましい。
これにより、ヒータ16の輻射熱が直接的にシードロッド13に吸収されることを防止できる。また、筒体14を加熱すると、筒体14から発生する輻射熱の一部がシードロッド13に吸収されるが、筒体14はシードロッド13とは離間して配置されるので、その離間距離を大きくすることで筒体14の輻射熱による影響を低減できる。また、図1に示すように、シードロッド13を冷却装置17と接続する場合には、筒体14による輻射熱の影響を考慮してシードロッド13の温度を制御することができるので、筒体14とシードロッド13の離間距離を近づけることができる。
また、図2に示すように、本実施形態の結晶成長装置10が備えるヒータ15、16はそれぞれ円筒形を成すが、変形例として板状のヒータ(図示は省略)を筒体14の周囲及び坩堝12の周囲を囲んで配置することもできる。この場合、汎用のヒータを用いることができるので、装置の部材コストを低減することができる。ただし、それぞれ円筒形を成す筒体14及び坩堝12の壁体12bの温度制御を容易にする観点からは、ヒータ16と筒体14の距離、及びヒータ15と坩堝12の壁体12bの距離をそれぞれ略一定に保つことが好ましい。
このため、図2に示すようにヒータ15、16を円筒形状とすれば、ヒータ16と筒体14の距離、及びヒータ15と坩堝12の壁体12bの距離をそれぞれ略一定に保つことができる点で好ましい。また、例えば図1及び図2に示すヒータ16を配置せず、ヒータ15を坩堝12及び筒体14を加熱する加熱部として兼用することもできる。ただし、図6を用いて説明したように筒体14と坩堝12の温度は異なる温度とすることが好ましく、筒体14と坩堝12の温度を異なる温度で精度良く制御する観点からは、それぞれ独立して制御されるヒータ15、16をそれぞれ設けることが好ましい。つまり、ヒータ15とヒータ16は独立して制御され、ヒータ16は、ヒータ15よりも筒体14に近い位置に配置されることが好ましい。
[坩堝を回転させる構成について]
図7は、図3に示す構成の変形例である結晶成長装置の構造及び動作を示す拡大断面図である。図3に示す結晶成長装置10では、坩堝12を架台18上に固定し、静止させた状態で結晶を成長させる実施態様について説明したが、変形例として図7に示す結晶成長装置31のように坩堝12を回転させながら結晶を成長させることができる。図7に示す結晶成長装置31は、坩堝12が軸(第2軸)CL2を回転軸として方向(第2方向)D2に第2回転速度で回転する点を除き、図3に示す結晶成長装置10と同様である。図7に示す結晶成長装置31を用いた結晶成長方法では、坩堝12を、軸CL2を回転軸として方向D2に第2回転速度で回転させている。
図7に示す変形例をさらに詳しく説明する。まず、坩堝12は架台18に固定され、架台18を、軸CL2を回転軸として方向D2に第2回転速度で回転させることで坩堝12が架台18と共に回転する。また、軸CL2は溶液表面20aを平面と見做した時に、溶液表面20aの法線方向に延びる仮想線であって、図7に示す例では、シードロッド13の回転軸である軸CL1と同じ軸(同軸)となっている。結晶成長装置31のさらなる変形例としては、平面視において軸CL1と軸CL2の位置をずらして配置することもできる。この場合、シードロッド13及び筒体14と、坩堝12は相対的に偏心して回転することとなる。ただし、シードロッド13、筒体14と、坩堝12を、相対的に偏心して回転させる場合、対流の制御が複雑になるため、容易に対流を制御する観点からは、図7に示すように軸CL1と軸CL2を同軸とする(すなわち、平面視において同じ位置に配置する)ことが好ましい。
また、図7に示す例では、坩堝12は、シードロッド13の回転方向である方向D1とは異なる方向(反対方向)である方向D2に回転する。シードロッド13、筒体14と、坩堝12の回転方向を異なる方向とすることにより、対流を制御するためのパラメータが増加するので、対流制御の自由度が向上する。ただし、坩堝12の回転方向を、例えばシードロッド13の回転方向と同じ、方向D1とすることもできる。また、坩堝12の回転方向をシードロッド13の回転方向と同じ、方向D1とした場合に、坩堝12を、シードロッド13の回転速度である第1回転速度とは異なる第2回転速度とすれば、第1回転速度と第2回転速度の相対的な回転速度差を、対流を制御するためのパラメータとして用いることができる。またこのとき、原料溶液20の対流を制御する観点から、第1回転速度と第2回転速度の相対的な回転速度差が100rpm以下となるように制御することが望ましい。
[誘導加熱方式のヒータについて]
図8は、図1に示す構成の変形例である結晶成長装置の全体構造を示す要部断面図、図9は、図8に示す各部材の平面視における形状及び位置関係を示す要部平面図である。また、図10は図8に示す坩堝周辺を拡大して示す要部拡大断面図である。図1〜図3に示す結晶成長装置10では、坩堝12及び筒体14をそれぞれ抵抗加熱方式のヒータ15、16により加熱する実施態様について説明したが、変形例として図8〜図10に示す結晶成長装置32のように誘導加熱方式で加熱することができる。図8〜図10に示す結晶成長装置32は、坩堝12及び筒体14を加熱する方式が誘導加熱方式になっている点、及び坩堝12の壁体12bと筒体14の間に溶液表面20aを覆う蓋体35が配置されている点を除き、図3に示す結晶成長装置10と同様である。
結晶成長装置32は、坩堝12を誘導加熱方式により加熱する坩堝加熱部としてコイル33を、筒体14を誘導加熱方式により加熱する筒体加熱部としてコイル34を有する加熱装置を用いている。誘導加熱方式では、RF(Radio Frequency)コイルに通電して発生させた高周波磁場により被加熱物を加熱するため、被加熱物と離間して配置することができる。このため、坩堝加熱部に誘導加熱方式を適用すると、図8に示すコイル33のように、断熱材11の外側に配置することができる。このため、断熱材11で囲まれた結晶成長室を小型化することができるので、結晶成長室内の温度管理を容易に行うことができる。ただし、筒体14は、上述したように高精度で温度制御を行うことが好ましいので、図8に示すように筒体14を加熱するコイル34を、コイル33とは別に設け、コイル33よりも筒体14に近い位置に配置することが好ましい。
また、筒体14の温度は坩堝12とは異なる温度にすることが好ましいため、コイル34とコイル33はそれぞれ独立して制御することが好ましい。コイル34と筒体14の距離を近づけることにより、コイル34で発生する磁場で筒体14を加熱する際の阻害要因を低減することができる。このため、筒体14を高精度で温度制御することができる。
ところで、コイル34を筒体14に近づけて配置する場合、コイル34で発生する磁場の影響により原料溶液20の対流が乱される懸念が生じる。特に、図8に示すようにコイル34を坩堝12の収容部12a上に配置する場合、磁場の影響が大きくなる。原料溶液20の対流が乱されると、SiC単結晶を安定的に成長させることができなくなる。また、原料溶液20の対流が乱されると、結晶成長により得られる単結晶の品質(結晶性)が低下する。
そこで、コイル34を筒体14に近づけて配置する場合、特に、坩堝12の収容部12a上にコイル34を配置する場合には、コイル34で生じる磁場を遮蔽するシールド材(磁気シールド材)をコイル34と溶液表面20aの間に配置することが好ましい。図8〜図10に示す結晶成長装置32では、坩堝12の壁体12bと筒体14の間で、且つ、コイル34と溶液表面20aの間に、溶液表面20aを覆う蓋体35を設けている。この蓋体35を磁気シールド材として機能させることで、コイル34で発生する磁場の影響により原料溶液20の対流が乱される事を防止若しくは抑制することができる。
ここで、コイル34で発生する磁場の影響を低減する観点からは、坩堝12の壁体12bと筒体14の間の領域では、溶液表面20aが蓋体35により完全に覆われていることが好ましい。ただし、蓋体35により筒体14の回転が阻害されると、結晶成長を行うことができなくなる。したがって、蓋体35と坩堝12の壁体12bの間に、ある程度の隙間(クリアランス)を開けておくことが好ましい。隙間(クリアランス)の幅は、坩堝12、筒体14及び蓋体35の加工精度や、筒体14を回転させる際の精度に応じて規定されるが、例えば、図8〜図10に示す例では、蓋体35は筒体14と一体に形成され、蓋体35と坩堝12の壁体12bの間には、1mm〜2mm程度の隙間が配置されている。
また、蓋体35と筒体14は別体として形成することもできるが、以下の観点から一体に形成することが好ましい。蓋体35と原料溶液20が接触すると蓋体35の温度によっては蓋体35の周囲に既に説明した多結晶41(図13参照)が発生する場合がある。蓋体35と坩堝12の壁体12bの間の隙間は僅かなので、多結晶41が発生すると、すぐに坩堝12の壁体12bまで到達してしまう。また、蓋体35の温度を、筒体14と同様に溶液表面20aよりも高くなるようにすれば、多結晶41の発生を防止できるが、蓋体35と筒体14の温度を同時に管理する必要があるため、制御が煩雑になる。
そこで、図8〜図10に示す結晶成長装置32では、蓋体35と筒体14を一体に形成し、蓋体35は、筒体14の外面(坩堝12の壁体12b側の側面)から壁体12bに向かって張り出した張出形状(羽形状)を成す。このため、筒体14の下端の位置を調整することにより、蓋体35の位置(高さ)を規定することができる。したがって、予め溶液表面20aと接触しない位置に蓋体35を形成することにより、蓋体35と原料溶液20の接触を防止することができる。また、図9に示すように蓋体35は、筒体14の周囲を全周に亘って取り囲んで配置されている。このため、収容部12a上に配置された蓋体35を筒体14と共に収容部12a内に下げることで、筒体14と坩堝12の壁体12bの間の領域において、溶液表面20a(図10参照)の大部分を覆うことができる。
また、図8〜図10に示すように蓋体35と筒体14を一体に形成する場合には、蓋体35は、筒体14と同じ材料で構成されるが、コイル34で発生する磁場を遮蔽するシールド性を向上させる観点から、蓋体35の厚さ(板厚)は、筒体14の厚さ(板厚)以上とすることが好ましい。
次に、図8〜図10に示す結晶成長装置32を用いて、蓋体35を設けたことによるシールド性向上の効果を評価した結果について説明する。コイル34で発生した磁場に対するシールド性の評価は、結晶成長により得られた単結晶における結晶性(結晶中に含まれる多結晶の割合)で評価した。詳しくは、図8〜図10に示す蓋体35を形成しない場合と、図8〜図10に示すように蓋体35を設けた場合で、それぞれSiC単結晶を製造し、得られた単結晶に対してX線回折(XRD:X-ray Diffraction)を用いた結晶構造分析を行った。
より具体的には、X線回折ピーク(回折ピーク)の半値幅を比較することにより、成長した単結晶の結晶性を評価した。結晶性が悪化する程X線回折ピークの半値幅が大きくなるので、これを評価指標として用いることができる。また、試料の調整方法、単結晶の成長条件については、図6に示す実験区3の条件を適用したので図示は省略する。まず、図1〜図3に示す結晶成長装置10を用いて製造した単結晶と、図1〜図3に示すヒータ16を図8〜図10に示すコイル34に置き換えた結晶成長装置(図示は省略)を用いて製造した単結晶を比較すると、コイル34を用いて筒体14を加熱した場合の方が回折ピークの半値幅が大きくなった。これは、上述したように、コイル34で発生した磁場の影響で原料溶液20の対流が乱されたためと考えられる。次に、図8〜図10に示す結晶成長装置32を用いて製造した場合は、回折ピークの半値幅は図1〜図3に示す結晶成長装置10を用いて製造した場合と同等であった。つまり、蓋体35を配置することで、成長した単結晶の結晶性を向上させる効果を実験的に確認した。
[成長手法の変形例について]
図11は、図3に示す構成の変形例である結晶成長装置の構造及び動作を示す拡大断面図である。図1〜図3に示す結晶成長装置10では、ディップ法により結晶を成長させる結晶成長方法について説明したが、変形例として図11に示す結晶成長装置36のように結晶成長の程度に応じてシードロッド13を徐々に引き上げながら成長させる、いわゆる引き上げ法に適用することができる。図11に示す結晶成長装置36は、引き上げ法により結晶を成長させる点を除き、図1〜図3に示す結晶成長装置10と同様である。
結晶成長装置36を用いた結晶成長方法では、シードロッド13を回転させながら、坩堝12の収容部12aの上方に徐々に引き上げる。引き上げる速度は、結晶成長の速度により規定され、図11に示すように、少なくとも種結晶21の表面(下面)に形成されたSiC単結晶22の下面(下端)を原料溶液20と継続的に接触させた状態で引き上げることにより、SiC単結晶22を成長させることができる。このような引き上げ法の場合でも、結晶成長の開始時には、図3に示すように種結晶21の下端21aが溶液表面20aよりも下方に位置するように配置するため、多結晶41がシードロッド13の周囲に形成される。したがって、図1〜図10を用いて説明した実施態様を適用することで、SiC単結晶22を液相成長法により継続的に成長させることができる。
ただし、引き上げ法の場合、シードロッド13を引き上げるため、多結晶41が筒体14の内面(シードロッド13側の側面)に固着した場合には、筒体14をシードロッド13と同じ速度で上方に引き上げなければ、結晶成長を阻害する原因となる。また、筒体14をシードロッド13とともに引き上げる場合、引き上げ距離(結晶成長の開始の高さから終了時の高さまでの距離)が長くなれば、筒体14の下端が溶液表面20aから露出してしまう場合がある。より確実に結晶成長を継続させるためには、筒体14の下端を露出させないことが好ましい。また、筒体14の下端の露出を防止するためには、結晶成長の開始時に筒体14の下端を引き上げ距離に応じて深く浸漬する必要がある。このため、結晶成長の開始時には筒体14の下端が種結晶21の下端21aよりも下方に配置される場合がある。したがって、上記のような制約条件を設けることなく、安定的に、且つ、長時間に亘って結晶成長を行う観点からは、ディップ法の方が好ましい。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることはいうまでもない。
例えば、上記した各変形例は、図1〜図3に示す結晶成長装置10の変形例として説明したが、各変形例の構成要素を組み合わせて適用することができる。また、例えば図8〜図10に示す結晶成長装置32では、坩堝12を加熱する坩堝加熱部と、筒体14を加熱する筒体加熱部をそれぞれ誘導加熱方式とした変形例を説明したが、坩堝加熱部と筒体加熱部を別体として形成する場合には、一方を抵抗加熱方式、他方は誘導加熱方式とすることもできる。このように、上記した各変形例の構成要素の一部を組み合わせて適用することができる。
10,30,31,32,36,40…結晶成長装置、11…断熱材、12…坩堝、12a…収容部、12b…壁体、12c…開口部、12d…底部、13…シードロッド、13a…保持面、14…筒体、15…ヒータ(坩堝加熱部)、16…ヒータ(筒体加熱部)、17…冷却装置、18…架台、19…蓋体、20…原料溶液、20a…溶液表面、20b,20c,20d…領域、21…種結晶、21a…下端、22…SiC単結晶、33…コイル(坩堝加熱部)、34…コイル(筒体加熱部)、35…蓋体、41…多結晶、CL1,CL2…軸、D1,D2…回転方向。

Claims (14)

  1. 炭化珪素の単結晶を成長させる結晶成長装置であって、
    前記単結晶を成長させるための原料を含む原料溶液を収容する収容部、前記収容部の周囲を取り囲んで配置される壁体、前記収容部上に形成された開口部、及び前記開口部の反対側に位置する底部を備える坩堝と、
    前記坩堝の前記収容部に配置され、前記坩堝の前記収容部に収容される前記原料溶液の溶液表面よりも種結晶の下端が下方に位置するように当該種結晶を保持する保持面を備える種結晶保持棒と、
    前記種結晶保持棒と前記坩堝の前記壁体の間に配置され、前記種結晶保持棒と離間すると共に前記種結晶保持棒の周囲を囲む筒体と、
    前記坩堝を加熱する坩堝加熱部と、
    前記筒体を加熱する筒体加熱部と、
    を有し、
    前記筒体の下端は、前記溶液表面よりも下方に配置され、
    前記種結晶保持棒は、前記溶液表面と交差する第1軸を回転軸として第1方向に第1回転速度で回転可能に設けられており、
    前記種結晶保持棒と前記筒体は、それぞれ前記第1軸を回転軸として前記第1方向に前記第1回転速度で回転することを特徴とする結晶成長装置。
  2. 前記筒体の前記下端は、前記種結晶保持棒に保持される前記種結晶の下端以上の高さに配置されていることを特徴とする請求項1記載の結晶成長装置。
  3. 前記坩堝加熱部は、前記収容部内の前記原料溶液の温度が、前記壁体及び前記底部に隣接する第1領域で第1温度となり、前記溶液表面で前記第1温度よりも低い第2温度となるように前記坩堝を加熱し、
    前記筒体加熱部は、前記筒体の前記下端の温度が前記第1温度よりも低く、且つ、前記第2温度よりも高い第3温度となるように加熱することを特徴とする請求項2記載の結晶成長装置。
  4. 前記坩堝加熱部と前記筒体加熱部とは独立して制御され、
    前記筒体加熱部は、前記坩堝加熱部よりも前記筒体に近い位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の結晶成長装置。
  5. 前記筒体は、円筒形状を成していることを特徴とする請求項1記載の結晶成長装置。
  6. 前記坩堝は、前記溶液表面と交差する第2軸を回転軸として第2方向に第2回転速度で回転することを特徴とする請求項1記載の結晶成長装置。
  7. 前記坩堝加熱部と前記筒体加熱部とは独立して制御され、
    前記筒体加熱部は、前記坩堝加熱部よりも前記筒体に近い位置に配置され、誘導加熱方式で前記筒体を加熱する加熱装置であり、
    前記坩堝の前記壁体と前記筒体との間で、且つ、前記筒体加熱部と前記溶液表面との間に、前記溶液表面を覆う蓋体が配置されていることを特徴とする請求項1記載の結晶成長装置。
  8. 前記蓋体は、前記筒体と一体に形成されていることを特徴とする請求項7記載の結晶成長装置。
  9. 炭化珪素の単結晶を成長させるための原料を含む原料溶液を収容する収容部、前記収容部の周囲を取り囲んで配置される壁体、前記収容部上に形成された開口部、及び前記開口部の反対側に位置する底部を備える坩堝を準備して、前記収容部内の前記原料溶液を加熱する工程と、
    種結晶を保持する保持面を備え、前記保持面に前記種結晶を保持する種結晶保持棒を、前記種結晶の下端が前記原料溶液の溶液表面よりも下方に位置するように前記坩堝の前記収容部に配置する工程と、
    前記種結晶保持棒と前記坩堝の前記壁体の間に、前記種結晶保持棒から離間した位置で前記種結晶保持棒の周囲を囲み、且つ、下端が前記溶液表面よりも下方に位置するように筒体を配置する工程と、
    前記種結晶保持棒と前記筒体のそれぞれを前記溶液表面と交差する第1軸を回転軸として第1方向に第1回転速度で回転させて、前記種結晶の表面に前記炭化珪素の単結晶を成長させる工程と、を含み、
    前記単結晶を成長させる工程では、前記坩堝及び前記筒体をそれぞれ加熱することを特徴とする結晶成長方法。
  10. 前記単結晶を成長させる工程では、前記筒体の前記下端を前記種結晶保持棒に保持される前記種結晶の下端以上の高さに配置して、前記筒体を回転させることを特徴とする請求項9記載の結晶成長方法。
  11. 前記単結晶を成長させる工程では、
    前記収容部内の前記原料溶液の温度を、前記壁体及び前記底部に隣接する第1領域では第1温度とすると共に、前記溶液表面では前記第1温度よりも低い第2温度とし、
    前記筒体の前記下端の温度を、前記第1温度よりも低く、且つ、前記第2温度よりも高い第3温度とすることを特徴とする請求項10記載の結晶成長方法。
  12. 前記単結晶を成長させる工程では、前記坩堝を、前記溶液表面と交差する第2軸を回転軸として第2方向に第2回転速度で回転させることを特徴とする請求項9記載の結晶成長方法。
  13. 前記単結晶を成長させる工程では、前記筒体を誘導加熱方式により加熱し、前記坩堝の前記壁体と前記筒体の間の領域において前記溶液表面を蓋体により覆うことを特徴とする請求項9記載の結晶成長方法。
  14. 前記単結晶を成長させる工程では、前記種結晶及び前記種結晶の表面に析出する前記単結晶を前記原料溶液に浸漬した状態で成長させることを特徴とする請求項9記載の結晶成長方法。
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