JP5051179B2 - 温度勾配炉を用いた単結晶の製造方法 - Google Patents

温度勾配炉を用いた単結晶の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、柱状ワークにその長手方向の温度勾配を付与する温度勾配炉を用いて溶液からの析出により連続的に単結晶を製造する方法に関する。
半導体材料等としての高品位の単結晶の製造においては、モザイシティーや転位などの欠陥を極力少なくする必要がある。欠陥は結晶成長の安定性と密接な関係があるため、結晶の物質に応じた適正な析出速度を維持することが重要である。そのため、析出の駆動力となる結晶析出部と析出物質供給部(気相、液相)の間で結晶成長方向に沿った温度勾配の制御が不可欠である。
従来の代表的な単結晶成長技術として、CZ法(チョクラルスキ−法)、FZ法(帯溶融法)、ブリッジマン法、TSSG法(溶融引上げ法)等が挙げられる。
いずれの方法においても、ワークの一部を加熱し他を雰囲気解放として温度勾配を実現しており、温度勾配の制御は加熱源温度、加熱源形状、ワーク(坩堝)形状、加熱源とワークとの相対的位置関係等の調整などにより行なっている。
このような従来の方法には下記の点で問題があった。
1)所望の温度勾配を実現することが困難である。上述したように温度勾配の制御因子すなわち変動因子が多様であるため、各因子を最適状態に安定して維持することが至難である。
2)ワーク(坩堝)形状や原料の仕込み量といった、装置以外の因子によって温度勾配が変動する。このように、装置因子だけでなく装置外因子も温度勾配制御に関与してくるため、所望の温度勾配を実現するためには、設計段階での計算と、実物の測温を繰り返す試行錯誤が必要である。
3)結晶成長方向に垂直な面内の温度分布の均一化が困難である。これは、この垂直面に対する熱流の向きが面内で一定しないためである。
また、高バンドギャップを有する半導体材料として注目を浴びている炭化珪素(SiC)等の化合物半導体は、調和融解しない(それ自体で溶融状態を持たない)ため、上記のような融液から析出させる単結晶成長法を適用できない。
融液を用いない方法として、昇華法または溶液法がある。昇華法は、高温部で昇華させた単結晶原料物質を低温部に配した種結晶上に気相から析出させる方法である。しかし、希薄相からの析出であるため単結晶成長速度が小さく、種結晶の螺旋転位周辺部のステップから渦巻き状に成長するフランク機構であるため原理上マイクロパイプの形成を回避し難い、といった問題がある。一方、溶液法は、高温部で単結晶原料物質を溶媒に十分溶解させ、低温部に配して種結晶上で過飽和状態を現出させて析出させる方法である。溶媒濃度の調整により前述の昇華法の問題点は克服することができるが、やはり上記1)〜3)の問題があって析出部位により温度勾配が変動してしまうため、均質で高品位の単結晶を得ることが極めて困難であった。
そこで、他の元素との共存により融液を形成する方法として、特許文献1(特開2000−264790号公報)には、遷移金属のうち少なくとも1種の金属と、Siと、Cとを含む原料を加熱により溶融させて融液を形成し、この融液を冷却することにより炭化珪素(SiC)の単結晶を析出成長させる方法が提案されている。しかしこの方法では、単結晶を連続的に成長させるには、加熱源を連続的に移動させる必要があり、それに伴う機械的な振動の影響により同時多発的に核発生して多結晶化してしまうという問題があった。
特開2000−264790号公報(特許請求の範囲)
本発明は、温度勾配炉を用いて、加熱源の移動を必要とせずに単結晶の成長に適した所望の温度勾配を形成し、かつ、成長方向に対して垂直な面内の温度分布も均一化し、連続的に単結晶を製造する方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の単結晶製造方法は、柱状ワークにその長手方向の温度勾配を付与する温度勾配炉を用いて溶液からの析出により単結晶を製造する方法であって、上記温度勾配炉として、上記柱状ワークの外周を取り囲む断熱壁と、加熱用サセプタを介して該柱状ワークの下端を加熱する加熱部と、冷却用サセプタを介して該柱状ワークの上端を冷却する冷却部とを備えた温度勾配炉を用い、
上記炉内に下から順に原料棒と、溶媒と、支持棒の下端に支持された種結晶とを積層して上記柱状ワークを構成して、該原料棒の下端を該柱状ワークの下端として上記加熱部により加熱させると共に該支持棒の上端を該柱状ワークの上端として上記冷却部により冷却させることにより、上記溶媒の下端面に対して上端面が低温になるように上記柱状ワーク内に温度勾配を形成し、
上記柱状ワーク下端の加熱温度を漸減させることにより、上記種結晶を起点として下方へ連続的に単結晶を成長させる方法において、
上記柱状ワーク下端の加熱温度の降下に同期させて、上記柱状ワーク上端の温度を降下させることにより、上記長手方向の温度勾配を常時一定に維持することを特徴とする。
本発明の方法においては、原料棒の単結晶原料物質が溶媒の下端高温部に溶解し溶媒の上端低温部で析出することにより単結晶が下方へ成長する。柱状ワーク下端の加熱温度を降下させるのに伴い、柱状ワーク内の温度勾配線の位置が全体として降下する。同時に、原料棒上端の溶媒中への溶解による原料棒上端位置の降下と種結晶(または成長中の単結晶下端=成長端)への析出による単結晶成長端の下方への伸長とに伴い、原料棒と種結晶(成長端)とに挟まれた溶媒の位置が降下する。この結晶成長による溶媒位置の降下と同期するように、柱状ワーク下端の加熱温度を漸減させて温度勾配線の位置を降下させる。これにより、加熱源を機械的に移動させることなく、溶媒位置(=原料から単結晶への転換場所)の降下により連続的に単結晶を成長させることができる。
特に、温度勾配を常時一定に維持することにより、後に詳述する理由で正常な単結晶成長を確保できる。
図1は、本発明の方法に用いる温度勾配炉の一実施形態を示す断面図およびプロセスを説明するグラフである。 図2は、本発明の方法に用いる温度勾配炉の他の実施形態を示す断面図である。 図3は、本発明の方法に用いる温度勾配炉のもう1つ実施形態を示す断面図である。 図4は、本発明の方法に用いる温度勾配炉の更にもう1つの実施形態を示す断面図である。 図5は、本発明の方法により測定した柱状ワークの電気抵抗の経時変化を示すグラフである。 図6は、本発明の方法により柱状ワーク端およびサセプタ端での半径方向温度分布を示すグラフである。
図1を参照して、温度勾配炉を用いて単結晶を製造する本発明の方法の原理を説明する。
先ず、本発明の方法に用いる温度勾配炉の構成例を説明する。図示した温度勾配炉100は、円筒形胴体を有し、図の上下方向に沿って円筒形胴体の中心軸があり、図はこの中心軸を含む面における縦断面図である。円筒形胴体104は断熱材料で作られており、その中空部106が実効的な炉空間を構成している。
円柱形の中空部106内に、原料棒10、溶媒12、種結晶14、支持棒16から成る円柱形ワークWが上端および下端を中空部106の底面および天井面にそれぞれ密着保持された状態で収容される。これによりワークWの外周を介した熱流は実質的に遮断され、上端および下端を介してのみ熱流が流れ得る。
これにより、柱状ワークWの下端(=原料棒10の下端=加熱端)を最高温点とし、柱状ワークWの上端(=支持棒16の上端=冷却端)を最低温点とする温度勾配すなわち柱状ワークWの下方から上方へ向けて単調に温度低下する温度勾配が、柱状ワークWの長手方向に沿って形成される。
円柱状ワークWの下端面(原料棒10の下端面)WBは円形平面であり、下方にある誘導加熱コイル108によって加熱される。誘導加熱コイル108とワークWの下端面WBとの間に介在する加熱用サセプタ110は、柱状ワークWの下端面WBに密着する円板状フランジ部110Aと、誘導加熱により加熱される円柱部110Bとから成る。誘導加熱コイル108は、サセプタ110の円柱部110Bを取り巻いて配置される。このような構造とすることにより、サセプタ110を単純な円板状とした構造に比べて、到達温度が高まり、かつ、面内温度分布の均一性も更に向上する。
また、円柱部110Bはフランジ部110Aの直近部位以外を中空にした実質的に円筒状にしてある。円柱部110Bが全体的に中実であると、誘導コイル108で直接加熱される円柱部110Bの外周部が高温になり、この外周部からの熱伝導のみで加熱される円柱部110Bの芯部が低温になる傾向があり、横断面内温度分布の均一性確保に望ましくない。本実施例のように、フランジ部110A直近部位以外を中空とすることにより、面内温度分布の均一性を更に高めることができる。
このように誘導加熱コイル108とワーク下端面WBとの間には、介在する加熱用サセプタ110によって、抵抗加熱コイル108からワーク下端面WBへの熱流が均等化され、ワーク下端面WB全体が均等に加熱される。加熱用サセプタ110は、高い加熱効率を確保するために銅等の良伝熱性金属の円板で作製する。
円柱状ワークWの上端面WTも円形平面であり、これと対向配置した円形冷却平面を持つ水冷式冷却器112によって冷却される。冷却器112は銅等の良熱伝導性金属で作製された冷却ジャケットの形態であり、図示の例では上端に冷却水の流入口CLIと流出口CLOが開口しており、他の部位は水密構造である。冷却器112とワーク上端面WTとの間に介在する冷却用サセプタ114によって、ワーク上端面WTから冷却器112への熱流が均等化され、ワーク上端面WB全体が均等に冷却される。冷却用サセプタ114は、過度の急冷を防止し必要な緩冷却が可能となるように、適度な抜熱作用を確保する必要があるため、耐熱性と適度な断熱性を持つ黒鉛等で作製する。
冷却器112は、図中の両頭矢印Xで示したように上下に移動可能であり、これによりサセプタ114との間隔Δtを必要に応じて適宜調節して、必要な抜熱量に設定できるようになっている(図示の例ではΔt=0で、両者密着状態)。
加熱されるワーク下端面WBの温度Tbは、加熱コイル108および加熱用サセプタ110の中心を貫通するパイプT1を通して、外部からパイロメータにより観測する(観測光路:矢印PB)。この観測温度値に基づいて、誘導加熱コイル108の出力を調整することにより、加熱温度を制御する。
冷却されるワーク上端面WTの温度Ttは、冷却器112および冷却用サセプタ114の中心を貫通するパイプT2を通して、外部からパイロメータにより観測する(観測光路:矢印PT)。この観測値に基づいて、水冷式冷却器112へ供給する冷却水の温度および流量を調整することにより、抜熱量(冷却強度)を調整することができる。
以上のように柱状ワークWの下端WBでの加熱と上端WTでの冷却をそれぞれ加熱用サセプタ110と冷却用サセプタ114を用いて行なうことにより、柱状ワークの全長について、横断面(長手方向に対して垂直な面)を通過する熱流を一定にできると同時に横断面内の熱流分布を均一にできるので、柱状ワークWの下方から上方へ単調に温度低下する温度勾配に極めて高い直線性を付与することができると同時に横断面内の温度分布を均一にできる。
次に、この温度勾配炉100を用いて、本発明により単結晶を連続的に成長させる方法の原理を説明する。
本発明の方法においては、単結晶原料物質が原料棒10から溶媒12を介して種結晶(または結晶成長先端)に析出することにより結晶成長する。これは、上記で説明したように柱状ワークWの下方から上方へ向けて単調かつ直線的に温度低下する温度勾配の下では、溶媒12の下端に接触している原料棒10の上端の方が、溶媒12の上端に接触している種結晶(結晶成長先端)よりも常に一定温度幅だけ高温に維持されることによる。これを以下の説明中で詳述する。
先ず操業準備として、下端に種結晶14を装着した支持棒16の上端を炉天井に固定し、新しい原料棒10の下端を炉底に固定し、原料棒10と種結晶14との間隙に、溶媒12として用いる物質の固体を密着させて挿入する。
誘導加熱コイル108および冷却器112を作動させ、柱状ワークWの下方から上方へ向かって単調かつ直線的に温度低下する温度勾配を柱状ワークWの長手方向に沿って形成させる。その際に、液状の溶媒12が形成され、原料棒10の上端と種結晶14の下端との間に表面張力によって保持される。これは従来の帯溶融法における溶融帯の状態と同様である。
結晶成長の開始時点(経過時間j=0)では、原料棒10の上端と溶媒12との界面は高さZ10にあって、まだ媒質を含んでいないフレッシュな溶媒12に高温T1での高い溶解度に対応した濃度まで原料棒10から原料物質が溶解する。溶解した原料物質は溶媒12中を拡散して、溶媒12と種結晶14の下端との界面(高さZ20)に到達して、高温T1に対して温度勾配で決まる温度幅ΔTだけ低い低温T2での低い溶解度に対応した濃度を超える過飽和分の結晶原料物質が溶媒12から種結晶14の下端面に析出して、結晶成長が開始する。
なお、柱状ワークWの加熱端(下端)WBと冷却端(上端)WTの初期温度を設定するには、誘導加熱コイル108の出力を調整した状態で、所定温度の冷媒を流通させた冷却器112の高さを調整して冷却用サセプタ114との間隔Δtを空けた状態(Δt=Δt0≠0)に保持し、両端の温度が安定するまで待つ。
結晶成長開始したら、誘導加熱コイル108の出力を連続的に下げて下端WBの温度を連続的に降下させ、これと同期させて、冷却器112を連続的に降下させることにより冷却用サセプタ114との間隔Δtを初期値Δt0から連続的に減少させ、上端WTの温度を連続的に低下させる。これにより、温度勾配を初期設定値に維持したまま、温度勾配線を全体として低温寄りに連続移動させ、すなわち温度勾配線を全体として柱状ワークWの下端WBよりに連続移動させる。この温度勾配線の連続移動の速度は、原料物質の溶解および析出による結晶成長の速度と一致するように設定する。両者の関係は予め実験によって求めておく。
このように温度勾配線の連続降下に伴い、原料物質の溶解と析出の場である溶媒12も同速度で連続降下し、単結晶が種結晶を起点として下方へ連続的に成長を続ける。これを図1で説明すると、結晶成長開始から経過時間j1の時点においては、温度勾配線は初期位置D0からD1に平行移動し、同時に溶媒位置は、〔下端高さ/上端高さ〕で表すと、初期の〔Z10/Z20〕から時刻j1における〔Z11/Z21〕に移動する。ただし溶媒12の下端・上端間の温度差は初期値ΔTに維持されている。
図示したように、初期温度勾配線D0は初期の下端温度/上端温度〔Tb0/Tt0〕で規定され、時刻j1での温度勾配線D1は時刻j1での下端温度/上端温度〔Tb1/Tt1〕で規定されている。温度勾配線D0、D1はいずれも直線であり、上端・下端温度差は常に一定である。
このようにして、温度勾配の平行移動に同期して溶媒位置が降下することにより、機械的な移動を必要とせずに連続して単結晶を成長させることができる。
溶媒12としては、単結晶原料物質の融点または分解・昇華温度より低い融点を有するものを用いる。溶媒12の温度帯(溶解端T1〜析出端T2)が高いと、炉100の許容操業温度範囲によって溶媒の移動範囲が制限されてしまう。溶媒温度を極力低くすることにより、連続成長可能な単結晶長さが大きくなる。
原料棒10として、単結晶原料物質の緻密質焼結体から成り、焼結助剤としてドーパントを含有するものを用いることができる。このようにすると、製造段階で結晶にドーピングが可能になる。原料棒が多孔質であると、溶媒が吸収されたり、表面の凹凸の存在により支持棒側面部に溶媒が登っていったりして、溶媒の減少や消失を誘引し、操業停止の恐れがあるため、原料棒は緻密質とする。
柱状ワークWを耐熱性材料から成る円筒内に配置することが望ましい。断熱材104の内周面で規定される炉壁と、柱状ワークWの外周面との間には間隙が存在する。そのため、柱状ワークWの外周面からの輻射による熱損失が発生して、温度勾配の変動や横断面内温度分布の均一性低下の原因になる。この傾向は柱状ワークが大径化するほど顕在化する。その結果、析出状態が不均一になって転位等の欠陥の導入や、著しい場合には多結晶化が発生する。柱状ワークを耐熱性材料製円筒内に配置することで、柱状ワークの外周回りに一定かつ小さな空隙を形成し、温度勾配の安定および横断面内の温度分布均一性が確保され、欠陥導入や多結晶化を防止して高品質な単結晶を成長させることができる。
柱状ワークを耐熱性材料から成る密閉容器内に配置することが望ましい。これにより更に温度勾配安定化および横断面内温度均一性が確保される。
上記円筒または密閉容器を構成する耐熱材料として、黒鉛焼結体、アルミナ焼結体、ジルコニア焼結体および窒化硼素焼結体から成る群から選択した1種を用いることができる。このうち、特にアルミナ焼結体、ジルコニア焼結体および窒化硼素焼結体は低輻射率であり、輻射損失の低減に有効である。
密閉容器を用いる場合、その内部に溶媒供給源を配置することが望ましい。溶媒の種類や操業の温度条件によっては、長時間の操業において揮発による溶媒の減少が顕著になり、製造可能な単結晶長さが制限される場合がある。そのような場合には、柱状ワークを収容した密閉容器内に溶媒供給源を配置することにより、容器内に溶媒蒸気圧を飽和状態に容易に維持できるため、溶媒の揮発損失を防止して長時間操業により長尺の単結晶を製造することができる。
柱状ワークの上端と下端との間の電気抵抗を測定し、この測定値に基づいて単結晶成長長さを検出することができる。成長させる単結晶に比べて、支持棒および原料棒に用いる焼結体は存在する粒界の電気抵抗により全体としての電気抵抗が高い。そのため、柱状ワークの軸方向の電気抵抗は単結晶の成長に伴い減少する。これを利用して単結晶の成長長さを常時検出することができる。また電気抵抗の変化率から、溶媒帯域範囲での成長速度(=溶媒位置の降下速度)を求められ、これを利用して溶媒位置移動速度と温度勾配線移動速度とを一致させることができる。
電気抵抗の測定を、冷却用サセプタの上端と加熱用サセプタの下端との間で行なうこともできる。成長させる単結晶が大径の場合や操業温度が高温の場合には、測定端子の設置による温度場の乱れの影響により、横断面内の温度分布均一性が低下する場合がある。そのような場合には、柱状ワークの上端・下端ではなく、面内温度均一性の高いサセプタを介して測定することにより、温度場の乱れによる擾乱を回避することができる。
溶媒の温度を溶媒の沸点直下に設定することが望ましい。結晶成長速度は過飽和度によって決まる。そして過飽和度は、温度勾配と、溶質(単結晶原料物質)の溶解度の温度による差とによって制御できる。溶解度は温度依存性があり、温度の上昇により増加し、その増加率も温度上昇により増加する。したがって、溶媒の温度を溶媒の沸点直下、すなわち用いる溶媒で使用可能な最高温度とすることにより、その溶媒で達成可能な最大の過飽和度が得られ、結晶成長速度を最大化できる。
ここで、上記で図1を参照した説明においては、単結晶の成長開始時点で冷却器112と冷却用サセプタ114との間に間隙Δtを設け、柱状ワークWの下端WBの加熱温度Tbの降下に同期させて冷却器112を降下させて間隙Δtを減少させることで、常時一定の温度勾配を維持した。ただし、これに限定する必要はなく、柱状ワークWの下端WBの加熱温度の降下に同期させて冷却器112に供給する冷媒の温度を降下させることにより常時一定の温度勾配を維持することもできる。
温度勾配を常時一定に維持できないと、下記の理由で正常な単結晶成長が行なえなくなる。
例えば、冷却器112の冷却能を一定として上端WTの温度を一定としたまま、下端WBの温度設定を変えれば当然のことながら温度勾配は変化する。特に長尺の単結晶を製造する際には温度勾配の変化が大きくなる。本発明においては、温度勾配が実質的な意味を持つのは、原料物質の溶解および析出の場となる溶媒の存在帯域である。上端WTでの温度Tt=一定の条件下では、下端WBの温度Tbを成長開始時温度Tb0から成長終了時温度Tb1まで低下させると、Tb−Ttの温度差に基づいて形成される温度勾配は、成長開始時の最大値から単調に減少して成長終了時に最小値になる。
一般に、単結晶はその構成物質が異なれば成長に最適な過飽和度が異なる。したがって、上記のように温度勾配が漸減する条件下では、成長終了時の小さい温度勾配による小さい過飽和度を最適成長条件とする物質の場合には、成長開始時の大きい温度勾配による大きい過飽和度では過剰に過ぎてしまい、不均一核生成が促進されて多結晶化してしまう。逆に、成長開始時の大きい過飽和度を最適成長条件とする物質の場合には、一定速度で降下する下端温度Tbの降下速度に溶解・析出が追いつかず、溶媒降下速度が低下し、更には原料棒下端(柱状ワーク下端WB)に至る前に溶媒が凝固してしまう。
また、種結晶を、支持棒の下端に形成された円錐状凹部の尖端部に生成させることができる。大型の単結晶を成長させるためには、成長の核となる種結晶が必要である。ただし物質によっては種結晶自体の入手が困難な場合がある。そのような場合には、上記のように支持棒下端に円錐座繰り部を設け、先ずその先端部で核生成させた後、この小さな核に連続的に析出させて横断面全体をカバーするサイズの種結晶を形成することが可能である。その際、不均一核生成による多結晶化を防止するために、支持棒下端に設ける円錐座繰り面は鏡面に加工し、更に先端はR面として緩やかに変化する形状とすることが重要である。
〔実施例1〕
図1、図2に示した温度勾配炉100、200を用いて、種々の条件にてSiC単結晶の製造実験を行なった。図2の温度勾配炉200は、柱状ワークWを収容する耐熱材料製円筒202を炉内に備えている点以外は、図1の温度勾配炉100と同じ構成である。図1に示した部位と対応する部位には図1中と同じ参照符号を付した。炉の胴体部を構成する断熱性円筒104は内径φ110mm、耐熱材料製円筒202は内径φ50mmである。耐熱性円筒202の材質としては、等方性黒鉛焼結体およびBN焼結体の2種類を用いた。
原料棒10および支持棒16は円柱状のSiC焼結体(焼結助剤としてB添加。密度99.5%TD)とした。いずれも、直径はφ12mm、φ20mm、φ35mmの3種類とし、長さは原料棒78mm、支持棒20mmとした。溶媒12として高純度シリコンを用い、直径がφ10mm、φ18mm、φ32mmの3種類で厚さがt1.5mmのペレット状に加工して供した。種結晶14は支持棒16と同径とし、厚さ0.4mmの円板状に加工し、カーボン接着剤で支持棒16の下端に取付けた。
初期状態として、柱状ワークWの下端WBの温度Tbを1800℃に設定し、上端WTの温度TtはΔtの初期設定により1400℃とした。温度勾配は常時4℃/mmに維持した。また、上端温度Ttの制御は、冷媒のシリコンオイルの温度を一定にした場合と、下端温度Tbの降下に同期して変化させた場合の2種類の形態で行なった。下端温度Tbの降温速度は1.6、3.2、6.0、10.0℃/hの4水準とし、1780℃まで降温させた。製造条件と得られた単結晶長さを表1に示す。この実験の諸条件下では、溶媒12の移動長さ限界である30mmが単結晶成長長さの上限になる。
Figure 0005051179
成長速度0.4mm/hの場合を比較すると、断熱円筒なし(図1)の場合には柱状ワーク径φ12mmで長さ30mmの高品質なSiC単結晶が得られた。
また黒鉛製断熱円筒202(図2)を用いることにより柱状ワーク径φ20mmでも長さ30mmのSiC単結晶を成長させることが可能であった。更に、断熱円筒202(図2)の材質をBNとすることで柱状ワーク径φ35mmでも成長長さ30mmのSiC単結晶が得られた。
また、冷却器112の冷媒シリコンオイルの温度を一定にした場合には、BN製の断熱円筒202を用いた場合でも、φ35mmの柱状ワーク径では30mmの成長長さを得られる成長速度は1.5mm/hまでであった。これに対して、冷媒シリコンオイルの温度を下端温度Tbに同期して変化させた場合には、成長速度を2.5mm/hまで高速にしても長さ30mmの高品質なSiC単結晶が得られた。
〔実施例2〕
図1、図2、図3に示した温度勾配炉100、200、300を用いてSiC単結晶成長を行なった。図3の温度勾配炉300は、柱状ワークWを収容する耐熱材料製密閉容器204を炉内に備え、かつ溶媒供給源として溶媒容器206を炉底に配置した点以外は、図1の温度勾配炉100と同じ構成である。図1に示した部位と対応する部位には図1中と同じ参照符号を付した。密閉容器204は等方性黒鉛焼結体を用いた。なお、図3の温度勾配炉300については、溶媒容器206を配置しない場合についても実験を行なった。
柱状ワーク径φ12mm、溶媒ペレット径φ7mm×厚さt0.6mm、柱状ワーク下端WBの初期設定温度2100℃、降温速度0.4℃/h(成長速度0.1mm/h)とし、長時間の操業で溶媒が揮発して成長が停止するまでのSiC単結晶成長長さを測定した。他の諸条件は実施例1に準ずる。結果を表2に示す。密閉容器204を用いかつ溶媒容器206を配置した場合に最も長時間の操業が可能になることが分かる。
Figure 0005051179
〔実施例3〕
実施例1と同様な装置構成において、SiC単結晶成長過程における柱状ワークWの下端WBと上端WTとの間の電気抵抗率を測定した。結果を図5に示す。なお実施条件は表1に示した諸条件のうち、降温速度10.0℃/h、成長速度2.5mm/h、柱状ワーク径(成長単結晶径)φ35mm、BN製断熱円筒使用の場合である。
柱状ワークWの下端WB、上端WTをそれぞれ測定端とした場合(図5(a))は、結晶の成長と共に電気抵抗値が直線的に低下し、成長途中の変曲点(矢印)は、時間の対応から見て多結晶化の開始時点と一致しており、単結晶成長過程での異常発生が明瞭に検出されている。また上下のサセプタ114,110を測定端とした場合(図5(a))でも、同様に異常点が明瞭に検出されている。
また、径φ35mm×長さL100mmの黒鉛中実棒をダミーワークとして、各測定点でのワーク下端面の半径方向の温度分布を測定した。測定は、ダミーワークの下面から1mmの位置に穿孔した測定孔に、φ5mmのW−Re熱電対を挿入して行なった。結果を図6に示す。上下のサセプタを測定端とすることで面内温度分布の均一性が確保されることが分かる。
〔実施例4〕
図4に示す温度勾配炉400を用いてSiC単結晶の析出による種結晶の作製を行なった。温度勾配炉400は、図3の温度勾配炉300において種結晶14を用いず、その代わりに支持棒16の下端に円錐形の座繰り凹部208を設け、この凹部先端から単結晶を核生成させ、これを種結晶として長尺の単結晶を成長させるための構成である。表3に示す諸条件で処理を行なった結果、支持棒下端から約1mm(円錐座繰り先端部から7mm)の長さの高品質のSiC単結晶を得ることができ、すなわち装置内部でSiC種結晶を創製することができた。
Figure 0005051179
本発明によれば、温度勾配炉を用いて、加熱源の移動を必要とせずに単結晶の成長に適した所望の温度勾配を形成し、かつ、成長方向に対して垂直な面内の温度分布も均一化し、連続的に単結晶を製造する方法が提供される。
100、200、300、400 温度勾配炉
104 胴体部
106 中空部
108 誘導加熱コイル
110 加熱用サセプタ
112 冷却器
114 冷却用サセプタ
10 原料棒
12 溶媒
14 種結晶
16 支持棒
W ワーク
WT ワーク上端面(冷却端面)
WB ワーク下端面(加熱端面)

Claims (13)

  1. 柱状ワークにその長手方向の温度勾配を付与する温度勾配炉を用いて溶液からの析出により単結晶を製造する方法であって、上記温度勾配炉として、上記柱状ワークの外周を取り囲む断熱壁と、加熱用サセプタを介して該柱状ワークの下端を加熱する加熱部と、冷却用サセプタを介して該柱状ワークの上端を冷却する冷却部とを備えた温度勾配炉を用い、
    上記炉内に下から順に原料棒と、溶媒と、支持棒の下端に支持された種結晶とを積層して上記柱状ワークを構成して、該原料棒の下端を該柱状ワークの下端として上記加熱部により加熱させると共に該支持棒の上端を該柱状ワークの上端として上記冷却部により冷却させることにより、上記溶媒の下端面に対して上端面が低温になるように上記柱状ワーク内に温度勾配を形成し、
    上記柱状ワーク下端の加熱温度を漸減させることにより、上記種結晶を起点として下方へ連続的に単結晶を成長させる方法において、
    上記柱状ワーク下端の加熱温度の降下に同期させて、上記柱状ワーク上端の温度を降下させることにより、上記長手方向の温度勾配を常時一定に維持することを特徴とする温度勾配炉を用いた単結晶の製造方法。
  2. 単結晶の成長開始時点で上記冷却部と上記冷却用サセプタとの間に間隙を設け、上記柱状ワーク下端の加熱温度の降下に同期させて該冷却部を降下させて該間隙を減少させることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 上記柱状ワーク下端の加熱温度の降下に同期させて上記冷却部に供給する冷媒の温度を降下させることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 上記溶媒が、上記単結晶原料物質の融点または分解・昇華温度より低い融点を有することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
  5. 上記原料棒が、上記単結晶原料物質の緻密質焼結体から成り、焼結助剤としてドーパントを含有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
  6. 上記柱状ワークを耐熱性材料から成る円筒内に配置することを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
  7. 上記柱状ワークを耐熱性材料から成る密閉容器内に配置することを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
  8. 上記耐熱性材料が、黒鉛焼結体、アルミナ焼結体、ジルコニア焼結体および窒化硼素焼結体から成る群から選択した1種から成ることを特徴とする請求項6または7記載の方法。
  9. 上記密閉容器内に溶媒供給源を配置することを特徴とする請求項7記載の方法。
  10. 上記柱状ワークの上端と下端との間の電気抵抗を測定し、この測定値に基づいて単結晶成長長さを検出することを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
  11. 上記冷却用サセプタの上端と上記加熱用サセプタの下端との間の電気抵抗を測定することを特徴とする請求項10記載の方法。
  12. 上記溶媒の温度を該溶媒の沸点直下に設定することを特徴とする請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
  13. 上記種結晶を、上記支持棒の下端に形成された円錐状凹部の尖端部に生成させることを特徴とする請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
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