JP2013169158A - 非タンパク性アミノ酸生産乳酸菌及びその用途 - Google Patents

非タンパク性アミノ酸生産乳酸菌及びその用途 Download PDF

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Abstract

【課題】D-アミノ酸やGABA、或いはL-オルニチンなど、その生理機能に注目が集まる非タンパク性アミノ酸を製造する手段及びその用途を提供することを課題とする。
【解決手段】すぐき漬けより単離された、ラクトバチルス・ブレビス又はラクトバチルス・ファーメンタムが提供される。
【選択図】なし

Description

本発明は非タンパク性アミノ酸を高生産する新規乳酸菌及びその用途などに関する。
アミノ酸にはL体とD体という二つの鏡像異性体が存在する。L-アミノ酸についてはタンパク質を構成するという重要な役割を果たすことに加え、生体内において様々な生理活性を発揮することが知られている。一方のD-アミノ酸は細胞壁の構成成分として細菌の生育に必須であることが知られている。最近になって、D-アミノ酸が真核生物においても重要な生理作用を有することが分かってきた。例えば、D-セリンについては、哺乳動物の脳に遊離状態で存在し、NMDA受容体のコアゴニストとして作用すること(非特許文献1)、統合失調症患者の脳脊髄液又は血清ではD-セリン含量が有意に低下しているとともに全セリン含量に占めるD-セリン含量の割合(D-セリン含量/全セリン含量)も有意に低下していること(非特許文献2、3)、さらにはアルツハイマー病患者の血清では全セリン含量に占めるD-セリン含量の割合(D-セリン含量/全セリン含量)が有意に低下していること(非特許文献4)等が報告されており、特に神経疾患との関係が注目されている。一方、D-セリンと同様に哺乳類体内で見出されるD-アスパラギン酸については、メラトニンの合成や分泌、テストステロンの産生などに関与することが知られている。D-アスパラギン酸には美肌効果があることも報告されている。また、D-アミノ酸と同様に非タンパク性アミノ酸であるγ−アミノ酪酸(GABA)は脳内神経物質として知られている。GABAは血圧降下作用、利尿作用、精神安定作用、脳機能改善作用などの生理活性も示し、食品ないし医薬素材として利用が図られている。
最近になって特に注目されている非タンパク性アミノ酸の一つがオルニチンである。オルニチンはオルニチン回路を構成する重要な成分であり、アンモニアの解毒に関与する。オルニチンについては、疲労改善作用、基礎代謝改善作用、成長ホルモン分泌促進作用、免疫機能改善作用など、様々な生理機能を有することも知られており、機能性食品やサプリメントの有効成分として利用されている。
非タンパク性アミノ酸の製法としては、微生物由来の酵素を利用してD-アミノ酸を製造する方法(例えば特許文献1〜3)、乳酸発酵によりGABAを製造する方法(例えば特許文献4〜8)、微生物を用いてL-オルニチンを製造する方法(例えば特許文献9〜12)等が知られている。
特開平1−2594号公報 特開平1−55193号公報 特開昭63−198997号公報 特許第3426157号公報 特許第3172150号公報 特開2001−352940号公報 特開2003−70462号公報 特許第2704493号公報 特公昭43−8712号公報 特開平02−283290号公報 特開2011−15641号公報 特開2009−112205号公報
Lesson, P.D., and Iverson, L.L.(1994) J. Med. Chem. 37, 4053-4067. Hashimoto et al. (2003) Arch. Gen. Psychiatry 60, 572 Hashimoto et al. (2005) Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry 29, 767 Hashimoto et al. (2004) Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 28, 385-8.
非タンパク性アミノ酸の生理機能や有用性が次々に報告され、食品素材或いは医薬品素材等としての利用・応用が図られつつある中、非タンパク性アミノ酸を製造する手段に対するニーズは極めて高い。そこで本発明は、D-アミノ酸やGABA或いはL-オルニチンなど、その生理機能に注目が集まる非タンパク性アミノ酸を製造する手段及びその用途を提供することを課題とする。
上記課題に鑑み本発明者らは、京都の伝統的な漬け物の一つである「すぐき漬け」に注目し、非タンパク性アミノ酸の生産能に優れた新規乳酸菌を単離することを試みた。多種のすぐき漬けを用いた網羅的なスクリーニングの結果、非タンパク性アミノ酸を高生産する乳酸菌を単離することに成功した。単離した乳酸菌の菌種について16SリボソームRNA遺伝子(16S rDNA)の配列に基づき同定したところ、6種中の4種がラクトバチルス・ブレビスであり、残りの2種はラクトバチルス・プランタラムとラクトバチルス・ファーメンタムであった。尚、今後の利用・応用が大いに期待される非タンパク性アミノ酸を高生産する乳酸菌をすぐき漬けから単離できた事実は、すぐき漬けが有用乳酸菌の宝庫であること、即ち、すぐき漬けが有用乳酸菌をスクリーニングする際の優れたソースであることを意味する。
以下に列挙する本発明は主として上記成果に基づくものである。
[1]非タンパク性アミノ酸を高生産する乳酸菌であって、ラクトバチルス・ブレビス又はラクトバチルス・ファーメンタムである乳酸菌。
[2]受託番号がNITE P−1169又はNITE P−1171である、[1]に記載の乳酸菌。
[3]16SリボソームRNA遺伝子の配列が、配列番号1〜6のいずれかに示す配列を含む、[1]に記載の乳酸菌。
[4]すぐき漬け由来である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の乳酸菌。
[5]非タンパク性アミノ酸がD-アミノ酸、γ-アミノ酪酸又はL-オルニチンである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の乳酸菌。
[6]D-アミノ酸がD-アスパラギン酸である、[5]に記載の乳酸菌。
[7][1]〜[6]のいずれか一項に記載の乳酸菌を培養するステップを含む、非タンパク性アミノ酸の製造方法。
[8]前記培養を培地中又は食品原料中で行う、[7]に記載の製造方法。
[9]前記ステップによって得られた培養物から、非タンパク性アミノ酸を分離するステップを更に含む、[7]に記載の製造方法。
[10][7]〜[9]のいずれか一項に記載の製造方法による製造物を含有した組成物。
[11]医薬組成物、医薬部外組成物、化粧料組成物又は食品組成物である、[10]に記載の組成物。
[12]以下のステップ(1)〜(4)を含む、非タンパク性アミノ酸を高生産する乳酸菌のスクリーニング方法:
(1)すぐき漬けから生菌を分離するステップ;
(2)分離した生菌を培養するステップ;
(3)生じたコロニーから菌を採取するステップ;
(4)採取した菌の非タンパク性アミノ酸生産能を評価し、非タンパク性アミノ酸生産能が高い菌を選抜するステップ。
[13]非タンパク性アミノ酸がD-アミノ酸、γ-アミノ酪酸又はL-オルニチンである、[12]に記載のスクリーニング方法。
[14]D-アミノ酸がD-アスパラギン酸である、[13]に記載のスクリーニング方法。
[15]ステップ(2)の培養を好気的条件下又は嫌気的条件下で行う、[12]〜[14]のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
好気的に単離した乳酸菌の培養液中のアミノ酸濃度を示す表。各乳酸菌が培養液中に生産(蓄積)する非タンパク性アミノ酸の濃度(μM)を比較した。コントロールは未植菌のMRS培地。nd:検出限界以下 嫌気的に単離した乳酸菌の培養液中のアミノ酸濃度を示す表。各乳酸菌が培養液中に生産(蓄積)する非タンパク性アミノ酸の濃度(μM)を比較した。コントロールは未植菌のMRS培地。nd:検出限界以下 すぐき漬けから単離された新規乳酸菌の16S rDNA(一部)の配列。乳酸菌1b(配列番号1)及び4bの配列(配列番号2)を示す。乳酸菌1bの配列はラクトバチルス・ブレビスATCC 367株(Accession CP000416、604-1394、V5途中からV9を含む領域)の配列と100%の同一性を示した。乳酸菌4bの配列についてもラクトバチルス・ブレビスATCC 367株(Accession CP000416、595-1394、V5途中からV9を含む領域)の配列と100%の同一性を示した。 すぐき漬けから単離された新規乳酸菌の16S rDNA(一部)の配列。乳酸菌4c(配列番号3)及び2eの配列(配列番号4)を示す。乳酸菌4cの配列はラクトバチルス・プランタラムWCFS1株(Accession AL935263、667-1400、V6からV9を含む領域)の配列と100%の同一性を示した。乳酸菌2eの配列についてはラクトバチルス・ブレビスATCC 367株(Accession CP000416、609-1394、V5途中からV9を含む領域)の配列と100%の同一性を示した。 すぐき漬けから単離された新規乳酸菌の16S rDNA(一部)の配列。乳酸菌2f(配列番号5)及び4fの配列(配列番号6)を示す。乳酸菌2fの配列はラクトバチルス・ブレビスATCC 367株(Accession CP000416、611-1394、V5途中からV9を含む領域)の配列と100%の同一性を示した。乳酸菌4fの配列についてはラクトバチルス・ファーメンタムCECT 5716株(Accession CP002033、624-1401、V5途中からV9を含む領域)の配列と100%の同一性を示した。
<新規乳酸菌>
本発明の第1の局面は非タンパク性アミノ酸の生産能に優れた新規乳酸菌を提供する。「非タンパク性アミノ酸」とは、タンパク質を構成するアミノ酸以外のアミノ酸のことである。本発明では特にD-アミノ酸(例えばD-アラニン、D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸)、GABA及びL-オルニチンに注目し、これらのアミノ酸の中の少なくとも一つを高生産する乳酸菌を提供する。後述の実施例に示す通り、本発明者らは非タンパク性アミノ酸の生産能に優れた6種の乳酸菌を単離することに成功した。以下、各乳酸菌の主な特徴を示す。
(1)乳酸菌1b
好気的条件下での培養、スクリーニングによって見出された乳酸菌であり、16S rRNA遺伝子(16S rDNA)の解析結果より、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)であると同定された。乳酸菌1bの16S rDNAの一部の塩基配列を配列番号1に示す。乳酸菌1bは特にGABA、D-アラニン及びD-アスパラギン酸を高生産することができ、これらのアミノ酸を高濃度で培養液中に蓄積する。D-アラニンの生産能は極めて高い。乳酸菌1bは以下の通り所定の寄託機関に寄託されており、容易に入手可能である。尚、これまでにGABAを蓄積するラクトバチルス・ブレビスの報告はあるが、D-アスパラギン酸を蓄積するものは報告されていない。
寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)
寄託日:2011年12月1日
受託番号:NITE P−1169
(2)乳酸菌4b
好気的条件下での培養、スクリーニングによって見出された乳酸菌であり、16S rRNA遺伝子(16S rDNA)の解析結果より、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)であると同定された。乳酸菌4bの16S rDNAの一部の塩基配列を配列番号2に示す。乳酸菌4bは特にD-アラニンを高生産することができ、当該アミノ酸を高濃度で培養液中に蓄積する。
(3)乳酸菌4c
好気的条件下での培養、スクリーニングによって見出された乳酸菌であり、16S rRNA遺伝子(16S rDNA)の解析結果より、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)であると同定された。乳酸菌4cの16S rDNAの一部の塩基配列を配列番号3に示す。乳酸菌4cは特にL-オルニチンを高生産することができ、当該アミノ酸を高濃度で培養液中に蓄積する。
(4)乳酸菌2e
嫌気的条件下での培養、スクリーニングによって見出された乳酸菌であり、16S rRNA遺伝子(16S rDNA)の解析結果より、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)であると同定された。乳酸菌2eの16S rDNAの一部の塩基配列を配列番号4に示す。乳酸菌2eは特にGABAを高生産することができ、当該アミノ酸を高濃度で培養液中に蓄積する。
(5)乳酸菌2f
嫌気的条件下での培養、スクリーニングによって見出された乳酸菌であり、16S rRNA遺伝子(16S rDNA)の解析結果より、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)であると同定された。乳酸菌2fの16S rDNAの一部の塩基配列を配列番号5に示す。乳酸菌2fは特にGABA、D-アラニン、D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸及びL-オルニチンを高生産することができ、これらのアミノ酸を高濃度で培養液中に蓄積する。GABA、D-アラニン及びL-オルニチンの生産能は極めて高い。
(6)乳酸菌4f
嫌気的条件下での培養、スクリーニングによって見出された乳酸菌であり、16S rRNA遺伝子(16S rDNA)の解析結果より、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)であると同定された。乳酸菌4fの16S rDNAの一部の塩基配列を配列番号6に示す。乳酸菌4fは特にD-アスパラギン酸、D-グルタミン酸及びL-オルニチンを高生産することができ、これらのアミノ酸を高濃度で培養液中に蓄積する。D-グルタミン酸とL-オルニチンの生産能は極めて高い。乳酸菌4fは以下の通り所定の寄託機関に寄託されており、容易に入手可能である。
寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)
寄託日:2011年12月1日
受託番号:NITE P−1171
D-アミノ酸の生産能の程度(高低)については、対応するL-アミノ酸の生産能を基準として表現することができる。例えば、最も高いD-アラニン生産能を示す乳酸菌2fは、L-アラニンの生産量の60%以上に相当する生産量でD-アラニンを生産することができる(後述の実施例に示す培養条件及び測定条件の場合)。同様に、最も高いD-アスパラギン酸生産能を示す乳酸菌4fは、L-アスパラギン酸の生産量の50%以上に相当する生産量でD-アスパラギン酸を生産することができる(後述の実施例に示す培養条件及び測定条件の場合)。また、最も高いD-グルタミン酸生産能を示す乳酸菌4fは、L-グルタミン酸の生産量の75%以上に相当する生産量でD-グルタミン酸を生産することができる(後述の実施例に示す培養条件及び測定条件の場合)。
尚、上記6種の乳酸菌についてD-アスパラギン酸生産能、GABA生産能及びL-オルニチン生産能を比較すると次の通りである。
(1)D-アスパラギン酸の生産能
乳酸菌4f>乳酸菌1b>乳酸菌2f>>乳酸菌4b,乳酸菌4c,乳酸菌2e
(2)GABAの生産能
乳酸菌2f>乳酸菌1b>乳酸菌2e>>乳酸菌4b,乳酸菌4c,乳酸菌4f
(3)L-オルニチンの生産能
乳酸菌4f>乳酸菌2f>乳酸菌4c>>乳酸菌1b,乳酸菌4b,乳酸菌2e
後述の実施例に示す通り、本発明の乳酸菌は「すぐき漬け」から単離された。従って、「すぐき漬け由来である」との要件によって、本発明の乳酸菌を更に特徴付けることができる。すぐき漬けは、アブラナ科の二年草である「すぐき菜」を塩で漬け込み乳酸発酵させる、京都の伝統的な漬け物である。柴漬、千枚漬と並んで京都の三大漬物と呼ばれている。通常、室や樽の中に住み着いている乳酸菌による発酵により独特の風味が形成される。
本発明の乳酸菌は、後述の実施例に示すスクリーニング方法ないし単離方法により、或いは諸条件(出発材料、生育状態など)に応じてこれらの方法に必要な修正を加えた方法により、単離した状態に調製することができる。また、寄託された乳酸菌については、所定の手続によって、寄託機関から分譲を受けることができる。
<新規乳酸菌の用途>
本発明の第2の局面は本発明の乳酸菌の用途に関する。第1の用途として非タンパク性アミノ酸の製造方法が提供される。本発明の製造方法では本発明の乳酸菌を培養するステップを行う。本発明の乳酸菌が生育可能であり、且つ培養に伴い非タンパク性アミノ酸が生産(蓄積)される限りにおいて培養条件は特に限定されない。以下、培養に使用される培地及びその他の培養条件について説明する。
乳酸菌用の公知の培地を使用することができる。培地の例を挙げると、MRS培地(例えば関東化学株式会社が提供する)、ロゴサ培地(例えば関東化学株式会社が提供する)、オレンジセーラム培地(例えば関東化学株式会社が提供する)、LBS培地(例えば和光純薬工業株式会社が提供する)、GYP培地(例えば、1% Glucose, 1% Yeast extract, 0.5% Polypeptone, 0.2% Na-acetate・3H2O, 20ppm MgSO4・7H2O, 1ppm MnSO4・4H2O, 1ppm FeSO4・7H2O, 1ppm NaCl, 50ppm Tween 80の組成からなるもの)、FYP培地(例えば、1% fructose, 1% Yeast extract, 0.5% Polypeptone, 0.2% Na-acetate・3H2O, 20ppm MgSO4・7H2O, 1ppm MnSO4・4H2O, 1ppm FeSO4・7H2O, 1ppm NaCl, 50ppm Tween 80の組成からなるもの)、GAM培地(日水製薬株式会社製)である。
目的物(非タンパク性アミノ酸)の生産を促すため、培地中にアルギニン(オルニチンはアルギニンデイミナーゼ経路によりアルギニンからシトルリンを経て合成されていると予想される)、L-アスパラギン酸(アスパラギン酸ラセマーゼの基質)等を添加するとよい。目的物がGABAの場合には、グルタミン酸脱炭酸酵素の基質であるグルタミン酸又はその塩類を添加するとよい。
培地に乳酸菌を接種して培養を開始するが、必要に応じて前培養を行っても良い。培養に供する乳酸菌として2種類以上の乳酸菌を併用することにしてもよい。培養は好気的条件下又は嫌気的条件下で行われる。例えば、乳酸菌1b、乳酸菌4b又は乳酸菌4cを培養するのであれば好気的条件を採用することが好ましく、他方、乳酸菌2e、乳酸菌2f又は乳酸菌4fを培養するのであれば嫌気的条件を採用することが好ましい。
培養温度は、良好な生育を促すために、例えば15℃〜40℃であり、好ましくは25℃〜37℃である。培養液のpHは例えば4.8〜6.8であり、好ましくは6.0〜6.5である。培養時間については、目的とする収量、培養条件、培養スケールなどを考慮して決定すればよいが、例えば20時間〜3日である。
以上の培養によって培養液中又は菌体内に目的物が生産(蓄積)される。生産された目的物は必要に応じて回収、精製、濃縮、乾燥などの処理に供される。培養液から目的物を回収する場合には、例えば培養上清をろ過、遠心処理等することによって菌体等の不溶物を除去した後、限外ろ過膜による濃縮、硫安沈殿等の塩析、透析、各種クロマトグラフィーなどを適宜組み合わせて分離、精製を行うことにより目的物を得ることができる。他方、菌体内から回収する場合には、例えば菌体を加圧処理、超音波処理などによって破砕した後、上記と同様に分離、精製を行うことにより目的物を得ることができる。尚、ろ過、遠心処理などによって予め培養液から菌体を回収した後、上記一連の工程(菌体の破砕、分離、精製)を行ってもよい。
以上のように回収等の処理を行えば、純度の高い目的物が得られる。一方、本発明の一態様では、目的物が蓄積された培養液をそのまま、或いはろ過、濃縮及び/又は乾燥させた後、各種利用に供する。
上記製造方法では、培地に乳酸菌を接種して培養することにしたが、食品原料中で培養を行うことにしてもよい。当該方法によれば、非タンパク性アミノ酸を含有する又は非タンパク性アミノ酸の含量が増大した食品(例えば、ヨーグルト、チーズ、乳酸菌飲料などの発酵乳食品、ビール、発泡酒などの酒類、納豆、漬け物など)又は食品素材を得ることができる。
食品原料は、使用する乳酸菌が生育可能な限り特に限定されない。食品原料の例を挙げると、乳類(生乳、加工乳、ヨーグルト等)、野菜類(トマト、ピーマン、人参、キャベツ、レタス、大根、ほうれん草など)、キノコ類(椎茸、シメジ、エノキダケなど)、果実類(リンゴ、オレンジ、グレープフルーツ、ブドウ、パイナップルなど)、穀類(米、小麦、大麦、ライ麦など)、芋類(ジャガイモ、サツマイモ、ナガイモなど)、豆類(大豆、エンドウ、小豆など)、肉類(牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉等)、魚介類(アジ、鯖、サンマ、マグロ、アサリ、シジミなど)である。これらの食品原料は、必要に応じて、洗浄、粉砕、圧搾、加熱、混合等の前処理に供される。二種類以上の食品原料を組み合わせて用いることにしてもよい。乳酸菌の接種に際して或いは培養中において、乳酸菌の生育又は非タンパク性アミノ酸の生産を促す成分(糖、ビタミン、塩類、各種エキスなど)を添加することにしてもよい。乳酸菌の接種後の培養については、専用の培養工程を設けても良いし、通常の加工プロセスの中で培養が行われるようにしてもよい。
本発明の製造方法によって食品素材が得られる場合のその最終形態は特に限定されない。例えば、粉末状、顆粒状、粒状、ゲル状、ペースト状、液状又は固形状に成形される。
本発明の製造方法によって得られた非タンパク性アミノ酸は各種用途に利用可能である。そこで本願は、更なる発明として、本発明の製造方法によって得られた非タンパク性アミノ酸を含有する組成物を提供する。本発明の組成物の用途は特に限定されないが、好ましくは、医薬、医薬部外品、化粧料又は食品である。即ち、本発明は好ましい態様として、本発明の製造方法によって得られた非タンパク性アミノ酸を有効成分として含有する医薬組成物、医薬部外品組成物、化粧料組成物及び食品組成物を提供する。
本発明の医薬組成物及び医薬部外品組成物の製剤化は常法に従って行うことができる。製剤化する場合には、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)を含有させることができる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。無痛化剤としてはベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としては塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等と用いることができる。
製剤化する場合の剤型も特に限定されず、例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及び座剤などとして本発明の医薬組成物又は医薬部外品組成物を提供できる。
本発明の医薬組成物には、期待される治療効果や予防効果を得るために必要な量(即ち治療上有効量)の有効成分が含有される。同様に本発明の医薬部外品組成物には、期待される改善効果や予防効果等を得るために必要な量の有効成分が含有される。本発明の医薬組成物又は医薬部外品組成物に含まれる有効成分量は一般に剤型や形態によって異なるが、所望の投与量を達成できるように有効成分量を例えば0.1重量%〜99重量%の範囲内で設定する。
本発明の医薬組成物及び医薬部外品組成物はその剤型・形態に応じて経口又は非経口(静脈内、動脈内、皮下、筋肉、又は腹腔内注射、経皮、経鼻、経粘膜、塗布など)で対象に適用される。ここでの「対象」は特に限定されず、ヒト及びヒト以外の哺乳動物(ペット動物、家畜、実験動物を含む。具体的には例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、サル、ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ニワトリ、ウズラ等である)を含む。好ましい一態様では、適用対象はヒトである。
本発明の医薬組成物及び医薬部外品組成物の投与量・使用量は、期待される効果が得られるように設定される。有効な投与量の設定においては一般に適用対象の症状、年齢、性別、体重などが考慮される。尚、当業者であればこれらの事項を考慮して適当な投与量を設定することが可能である。投与スケジュールとしては例えば一日一回〜数回、二日に一回、或いは三日に一回などを採用できる。投与スケジュールの作成においては、適用対象の症状や有効成分の効果持続時間などを考慮することができる。
上記の通り本発明の一態様は、本発明の製造方法によって得られた非タンパク性アミノ酸を有効成分として含有する化粧料組成物である。例えば、本発明の化粧料組成物は、本発明の製造方法によって得られた非タンパク性アミノ酸と、化粧料に通常使用される成分・基材(例えば、各種油脂、ミネラルオイル、ワセリン、スクワラン、ラノリン、ミツロウ、変性アルコール、パルミチン酸デキストリン、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール、パラベン、カンフル、メントール、各種ビタミン、酸化亜鉛、酸化チタン、安息香酸、エデト酸、カミツレ油、カラギーナン、キチン末、キトサン、香料、着色料など)を配合することによって得ることができる。
化粧料組成物の形態として、フェイス又はボディー用の乳液、化粧水、クリーム、ローション、エッセンス、オイル、パック、シート、洗浄料などを例示できる。化粧料組成物における非タンパク性アミノ酸の添加量は特に限定されない。例えば0.1重量%〜10重量%となるように非タンパク性アミノ酸を添加するとよい。
上記の通り本発明の一態様は、本発明の製造方法によって得られた非タンパク性アミノ酸を含有する食品組成物である。本発明での「食品組成物」の例として一般食品(穀類、野菜、食肉、生乳、乳製品(例えばヨーグルト、加工乳、チーズ)などの各種加工食品、菓子類、清涼飲料水、アルコール飲料等)、栄養補助食品(サプリメント、栄養ドリンク等)、食品添加物、愛玩動物用食品、愛玩動物用栄養補助食品を挙げることができる。栄養補助食品又は食品添加物の場合、粉末、顆粒末、タブレット、ペースト、液体等の形状で提供することができる。食品組成物の形態で提供することによって、本発明の有効成分(本発明の製造方法によって得られた非タンパク性アミノ酸)を日常的に摂取したり、継続的に摂取したりすることが容易となる。
本発明の食品組成物には、治療的又は予防的効果が期待できる量の有効成分が含有されることが好ましい。添加量は、それが使用される対象となる者の病状、健康状態、年齢、性別、体重などを考慮して定めることができる。
<乳酸菌のスクリーニング方法>
本発明の第3の局面は、すぐき漬けが有用乳酸菌の宝庫であるとの知見に基づくスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法では以下のステップ(1)〜(4)を行い、非タンパク性アミノ酸を高生産する乳酸菌をスクリーニングする。
(1)すぐき漬けから生菌を分離するステップ
(2)分離した生菌を培養するステップ
(3)生じたコロニーから菌を採取するステップ
(4)採取した菌の非タンパク性アミノ酸生産能を評価し、非タンパク性アミノ酸生産能が高い菌を選抜するステップ
ステップ(1)では、すぐき漬けを用意し、そこに含まれる生菌を分離する。現在、各種すぐき漬けが市販されている。本発明のスクリーニング方法では、このような市販のすぐき漬けを用いることができる。市販品ではなく、新たに製造したものを用いることにしてもよい。スクリーニング効率を高めるために、由来(典型的には製造元)の異なる2種類以上、好ましくは5種類以上、更に好ましくは10種類以上のすぐき漬けを用意し、各々から生菌を分離するとよい。
すぐき漬けから生菌を分離するためには、例えば、用意したすぐき漬けと水(好ましくは滅菌水)を混合した後、滅菌水の一部を採取すればよい。すぐき漬けを水(好ましくは滅菌水)ですすぐことで付着している生菌を分離することにしてもよい。分離操作の後、顕微鏡観察などによって生菌の存在を確認することが好ましい。
続いて、分離した生菌を培養する(ステップ(2))。ここでの培養条件は、乳酸菌が生育可能な限り特に限定されず、本発明の第1の局面における乳酸菌の培養条件に準ずる。即ち、乳酸菌を選択的に培養するために、MRS培地、ロゴサ培地、オレンジセーラム培地、LBS培地等の乳酸菌用の培地を用い、乳酸菌の生育に適した温度条件及びpH条件で培養する。培養時間は例えば2時間〜48時間とする。好気的条件、嫌気的条件のいずれを採用してもよい。好気的条件を採用した培養と、嫌気的条件を採用した培養を並行して行うことにすれば、より多種多様な乳酸菌がスクリーニングされ得る。
次に、培養によって生じたコロニーから菌を採取する(ステップ(3))。複数のコロニーが認められる場合には、コロニーの形状、色、サイズ等を考慮し、菌種が異なると予想される複数のコロニーについて、それぞれ菌の採取を行うとよい。
続いて、採取した菌の非タンパク性アミノ酸生産能を評価し、非タンパク性アミノ酸生産能が高い菌を選抜する(ステップ(4))。ここでの非タンパク性アミノ酸はD-アミノ酸、γ-アミノ酪酸又はL-オルニチンである。D-アミノ酸の種類は特に限定されない。好ましいD-アミノ酸の一つとしてD-アスパラギン酸を例示することができる。
D-アミノ酸の定量は公知の方法で行うことができる。D-アミノ酸の定量方法として、D-アミノ酸酸化酵素(DAO: EC 1.4.3.3)やD-アスパラギン酸酸化酵素(DDO: EC 1.4.3.1)等のD-アミノ酸特異的な酵素を利用した方法、クロマトグラフィー又は電気泳動によりD-アミノ酸を分離して定量する方法(Nimura, N., Fujiwara, T., Watanabe, A., Sekine, M., Furuchi, T., Yohda, M., Yamagishi, A., Oshima, T., & Homma, H. (2003) Anal. Biochem.,315,262-269.; Long, Z., Nimura, N., Adachi, M., Sekine, M., Hanai, T., Kubo, H., & Homma, H.(2001)J. Chromatogr. B ., 761, 99-106.; Song, Y., Feng, Y., LeBlanc, M.H., Zhao, S., & Liu, Y. M. (2006)Anal. Chem.,78,8121-8128.; Miao, H., Rubakhin, S.S., & Sweedler, J.V. (2005) Anal. Chem.,77,7190-7194.等を参照)などが知られている。クロマトグラフィーによりD-アミノ酸を分離して定量する方法としては、高速液体クロマトグラフィーを用いた方法が一般的である。当該方法の一つでは、アミノ酸を蛍光ジアステレオマーへと誘導体化した後、ODSカラムなどを用いてHPLCにて分離・定量する。D-セリンについては、本発明者らの研究グループによって開発された方法(WO/2008/047802)を利用することもできる。GABA及びL-オルニチンの定量についても常法で行えばよく、例えば高速液体クロマトグラフィーを用いた方法を採用すればよい。
非タンパク性アミノ酸生産能の評価によって選抜された菌の中から、生育性(増殖性)、栄養要求性、培養条件(温度等で極端な条件を要しないこと)等の基準に基づき優良な菌を更に選抜することにしてもよい。
選抜された菌については、その菌種を同定するとよい。菌種の同定は常法で行えばよい。即ち、形成するコロニーの形状・形態、菌体の形状・形態、生育性、栄養要求性、グラム染色性、糖の資化性、酵素活性、16S rRNA遺伝子(16S rDNA)の配列等に基づき、菌種を同定することができる。
スクリーニングによって選抜された菌は非タンパク性アミノ酸の生産能に優れるものであり、本発明の乳酸菌と同様の用途に適用可能である。
京都の伝統的な漬け物の一つであるすぐき漬けに注目し、非タンパク性アミノ酸の生産能に優れた新規乳酸菌を単離することを試みた。具体的には、京都市内で販売されている約10種のすぐき漬けを収集し、D-アミノ酸の生産能を指標として、乳酸菌を単離した。以下に単離方法(1.)及びD-アミノ酸の定量方法(2.)を示す。
1.漬物(京漬物、すぐき漬け)からの乳酸菌の単離方法
以下の操作はクリーンベンチ内において無菌的に行った。
(1)漬物0.5g程度および滅菌水500μLをマイクロチューブに入れ混合した。
(2)混合した滅菌水を一部採取し、顕微鏡観察により生菌の存在を確認した。
(3)混合した滅菌水をMRS寒天培地(下記のMRS培地に1.5% agarを添加した寒天培地)に塗布した。1プレートあたりに50〜200個程度コロニーが生える量を目安に(およそ30〜200μL)。
(4)植菌した寒天培地を30℃で好気条件下又は嫌気条件下で24〜48時間培養した。嫌気培養は密封容器を窒素で充填し、嫌気培養パウチ(三菱ガス化学社製のアネロパウチ(登録商標)ケンキ、脱酸素および炭酸ガス放出)を同封して培養した。
(5)寒天培地に生えたシングルコロニーを再度MRS寒天培地に塗布し、シングル化を行った(30℃で好気及び嫌気条件下で24〜48時間培養)。この際、コロニーの形状、色、サイズ等を観察し、菌種が異なると予想されるコロニーを採取した(1プレートから3〜5個程度)。
(6)シングル化したコロニーをMRS液体培地に植え継ぎ、30℃で24時間培養し、グリセロールストックを作成し-80℃で保存した。この際、好気的に単離した菌は振盪培養し、嫌気的に単離した菌は静置培養した。
MRS培地(peptone 10g, meat extract 10g, yeast extract 5g, glucose 20g, Tween80 1g, K2HPO4 2g, sodium acetate 5g, diammonium hydrogencitrate 2g, MgSO4・7H20 0.2g, MnSO4・nH2O 0.05g, distilled water 1 L, pH 6.2)
2.単離した乳酸菌のD-アミノ酸生成能の検討
(1)MRS液体培地にて30℃で24時間培養(好気的に単離した菌は振盪培養し、嫌気的に単離した菌は静置培養)した。
(2)培養液を遠心分離(20,000 g, 10 min, 4℃)し、培地と菌体を分離した。
(3)除タンパク質のため、培地に等量の10% TCAを加え、氷上で15分間インキュベートした。その後、遠心分離(20,000 g, 15 min, 4℃)し、上清を得た。
(4)次いで、TCAを除去するためジエチルエーテル処理を3回繰り返した。ジエチルエーテル処理方法は次の通り:サンプルと等量の水飽和ジエチルエーテルを混合した後、5分間攪拌し、遠心分離(10,000 g, 5 min, 4℃)した後上層のジエチルエーテルを除去する。
(5)その後、アミノ酸を蛍光ジアステレオマーへと誘導体化(試薬:BOC-Cys-OHとOPA)した後に、HPLCにて分離・定量する(使用カラムはODSカラム)。
以上の方法で新規乳酸菌の単離を試みた結果、特に有用な乳酸菌として、好気培養で3株(1b、4b、4c)、嫌気培養でも3株(2e、2f、4f)を取得できた。各乳酸菌のアミノ酸生産能を比較した結果を図1(好気的に単離した乳酸菌についての比較)及び図2(嫌気的に単離した乳酸菌についての比較)に示す。尚、有用アミノ酸として注目されているGABA及びL-オルニチンの生産能についても比較した。GABA及びL-オルニチンの定量は上記方法(2.)に準じた。
図1に示すように、乳酸菌1bは特にGABA、D-アラニン及びD-アスパラギン酸を高生産する。D-アラニンの生産能は極めて高い。乳酸菌4bは特にD-アラニンを高生産する。また、乳酸菌4cは特にL-オルニチンを高生産する。尚、乳酸菌1bは寒天培地上にて白色円形のコロニーを形成する。乳酸菌4cも同様に、寒天培地上にて白色円形のコロニーを形成する。
一方、図2に示すように、乳酸菌2eは特にGABAを高生産する。乳酸菌2fは特にGABA、D-アラニン、D-アスパラギン酸、D-グルタミン酸及びL-オルニチンを高生産する。乳酸菌4fは特にD-アスパラギン酸、D-グルタミン酸及びL-オルニチンを高生産する。尚、乳酸菌4fは寒天培地上にて白色円形のコロニーを形成する。
単離に成功した乳酸菌株の菌種を以下の方法(3.)で同定することにした。尚、乳酸菌株1b、4fについては、2011年12月1日付けで独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託されている。
3.漬物(京漬物、すぐき漬け)から単離した乳酸菌種の同定方法
(1)MRS液体培地にて30℃で24時間培養した後、遠心分離(20,000 g, 2 min, 4℃)により菌体を回収した。
(2)ISOPLANT II(ニッポンジーン)を用いて回収した菌体からゲノムを抽出した。
(3)抽出したゲノムを鋳型として、各菌の16S rDNAの一部をPCRにより増幅した。その際、次のプライマーを用いた。520F: 5'-gtgccagcmgccgcgg-3'(配列番号7)および 1400R: 5'-acgggcggtgtgtrc-3'(配列番号8)
(4)増幅したDNA断片をアガロースゲル電気泳動した後、NucleoSpin(登録商標) Extract II(MACHEREY-NAGEL)を用いてゲルから抽出した。
(5)抽出したDNA断片を鋳型として塩基配列を解析し、ゲノムデータベースと比較することで菌種の同定をした。
結果、各乳酸菌は以下の通り同定された。尚、各乳酸菌の16S rDNA(一部)の配列を図3〜5に示す。
乳酸菌1b:ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)
乳酸菌4b:ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)
乳酸菌4c:ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)
乳酸菌2e:ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)
乳酸菌2f:ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)
乳酸菌4f:ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)
<まとめ>
すぐき漬けから、非タンパク性アミノ酸(D-アミノ酸、GABA、L-オルニチン)を高生産する乳酸菌を単離及び同定することに成功した。これらの乳酸菌は非タンパク性アミノ酸の生産菌として有用である。非タンパク性アミノ酸を高生産する乳酸菌をすぐき漬けから単離できた事実は、すぐき漬けが有用乳酸菌をスクリーニングする際の優れたソースであることを意味する。
本発明の乳酸菌は非タンパク性アミノ酸の生産に優れる。D-アミノ酸、GABA、L-オルニチンの製造、又はこれらの非タンパク性アミノ酸を含む食品、化粧料、医薬の製造等への利用が期待される。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。

Claims (15)

  1. 非タンパク性アミノ酸を高生産する乳酸菌であって、ラクトバチルス・ブレビス又はラクトバチルス・ファーメンタムである乳酸菌。
  2. 受託番号がNITE P−1169又はNITE P−1171である、請求項1に記載の乳酸菌。
  3. 16SリボソームRNA遺伝子の配列が、配列番号1〜6のいずれかに示す配列を含む、請求項1に記載の乳酸菌。
  4. すぐき漬け由来である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の乳酸菌。
  5. 非タンパク性アミノ酸がD-アミノ酸、γ-アミノ酪酸又はL-オルニチンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の乳酸菌。
  6. D-アミノ酸がD-アスパラギン酸である、請求項5に記載の乳酸菌。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の乳酸菌を培養するステップを含む、非タンパク性アミノ酸の製造方法。
  8. 前記培養を培地中又は食品原料中で行う、請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記ステップによって得られた培養物から、非タンパク性アミノ酸を分離するステップを更に含む、請求項7に記載の製造方法。
  10. 請求項7〜9のいずれか一項に記載の製造方法による製造物を含有した組成物。
  11. 医薬組成物、医薬部外組成物、化粧料組成物又は食品組成物である、請求項10に記載の組成物。
  12. 以下のステップ(1)〜(4)を含む、非タンパク性アミノ酸を高生産する乳酸菌のスクリーニング方法:
    (1)すぐき漬けから生菌を分離するステップ;
    (2)分離した生菌を培養するステップ;
    (3)生じたコロニーから菌を採取するステップ;
    (4)採取した菌の非タンパク性アミノ酸生産能を評価し、非タンパク性アミノ酸生産能が高い菌を選抜するステップ。
  13. 非タンパク性アミノ酸がD-アミノ酸、γ-アミノ酪酸又はL-オルニチンである、請求項12に記載のスクリーニング方法。
  14. D-アミノ酸がD-アスパラギン酸である、請求項13に記載のスクリーニング方法。
  15. ステップ(2)の培養を好気的条件下又は嫌気的条件下で行う、請求項12〜14のいずれか一項に記載のスクリーニング方法。
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