JP5940780B2 - 石川県の伝統発酵食品から分離した乳酸菌、その培養物及びその利用 - Google Patents
石川県の伝統発酵食品から分離した乳酸菌、その培養物及びその利用 Download PDFInfo
- Publication number
- JP5940780B2 JP5940780B2 JP2011188552A JP2011188552A JP5940780B2 JP 5940780 B2 JP5940780 B2 JP 5940780B2 JP 2011188552 A JP2011188552 A JP 2011188552A JP 2011188552 A JP2011188552 A JP 2011188552A JP 5940780 B2 JP5940780 B2 JP 5940780B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- lactic acid
- culture
- acid bacteria
- nite
- accession number
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Landscapes
- Coloring Foods And Improving Nutritive Qualities (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
Description
このように、ある種の乳酸菌の機能性については報告があるものの、石川県の伝統発酵食品に含まれる乳酸菌の機能性については、未だ知られていない。
〔1〕あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離した乳酸菌1種又は2種以上の培養物であって、下記1)〜3)の少なくも1つの機能を有することを特徴とする乳酸菌の培養物。
1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、2)DPPHラジカル消去能、及び3)L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能
〔2〕乳酸菌が、表1に示される少なくとも1種の乳酸菌である前記〔1〕に記載の培養物。
〔3〕乳酸菌を、大豆由来タンパク質又は哺乳類の乳由来タンパク質を含む培地で培養して得られ、1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、又は2)DPPHラジカル消去能を有する前記〔1〕又は〔2〕に記載の培養物。
〔4〕Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、Enterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)及びLactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌を、哺乳類の乳由来タンパク質を含む培地で培養して得られ、アンジオテンシン転換酵素阻害活性能を有するものである前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の培養物。
〔5〕乳酸菌がLactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、Lactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)、Lactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)、Lactobacillus brevis (AN2-2、AN3-5、AN4-5、ANP7-6又はSB109)、Enterococcus gilvus SB102、Carnobacterium divergens SB104、Weissella hellenica SB101及びWeissella hellenica SB105(受託番号:NITE P-1128)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌であり、L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能を有するものである前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の培養物。
〔6〕あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離され、その培養物が下記1)〜3)の少なくも1つの機能を有することを特徴とする乳酸菌。
1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、2)DPPHラジカル消去能、及び3)L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能
〔7〕表1に示される少なくとも1種の乳酸菌である前記〔6〕に記載の乳酸菌。
〔8〕Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、Enterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)及びLactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)からなる群より選択される少なくとも1種であって、哺乳類の乳由来タンパク質を含む培地で培養して得られる培養物が、アンジオテンシン転換酵素阻害活性能を有するものである前記〔6〕又は〔7〕に記載の乳酸菌。
〔9〕Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、Lactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)、Lactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)、Lactobacillus brevis (AN2-2、AN3-5、AN4-5、ANP7-6又はSB109)、Enterococcus gilvus SB102、Carnobacterium divergens SB104、Weissella hellenica SB101及びWeissella hellenica SB105(受託番号:NITE P-1128)からなる群より選択される少なくとも1種であって、培養物が、L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能を有するものである前記〔6〕又は〔7〕に記載の乳酸菌。
〔10〕Lactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)、Lactobacillus brevis (AN3-5、AN4-5、ANP7-6又はSB109)、又はLactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)であって、pH3付近の酸性条件培養下で乳酸発酵能を有する前記〔9〕に記載の乳酸菌。
〔11〕前記〔6〕、〔7〕、及び〔9〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の乳酸菌の少なくとも1種を、L−グルタミン酸を含有する培地で培養することを特徴とするγ−アミノ酪酸を含有する乳酸菌培養物の製造方法。
〔12〕前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の培養物、又は前記〔6〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の乳酸菌の、1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、若しくは2)DPPHラジカル消去能を有する、及び/又は3)γ−アミノ酪酸を含有する飲食品製造のための使用。
〔13〕1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、若しくは2)DPPHラジカル消去能が強化された、及び/又は3)γ−アミノ酪酸を含有する発酵食品の製造方法であって、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の培養物、又は前記〔6〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の乳酸菌を添加して発酵させる工程を含むことを特徴とする製造方法。
本発明の乳酸菌の培養物は、あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離した乳酸菌1種又は2種以上の培養物であって、下記1)〜3)の少なくも1つの機能を有するものである。
1)アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害活性能、2)DPPHラジカル消去能、及び3)L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能
このように培養した培養液又は培養上澄みを、培養物として使用することができる。
前記発酵食品から分離した乳酸菌を、大豆由来タンパク質又は哺乳類の乳由来タンパク質を含む培地で培養して得られ、1)ACE阻害活性能、又は2)DPPHラジカル消去能を有する培養物は、本発明の好ましい態様の1つである。培養物のACE阻害活性能及びDPPHラジカル消去能は、公知の方法(例えば、ACE阻害活性能であれば、Nakanoらの方法(Biosci. Biotechnol. Biochem., 70, 1118-1126, 2006)等)により確認できる。
表1に示される乳酸菌のうち、ラクトバチラス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri) AN1-1、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN1-5、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei) KP7-11、ラクトバチラス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri) SB21、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis) SB103、及びワイセラ・ヘレニカ(Weissella hellenica) SB105は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託申請し、以下の受託番号で受託された。
Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)(受託日:2011年8月30日)
Enterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)(受託日:2011年8月12日)
Weissella hellenica SB105(受託番号:NITE P-1128)(受託日:2011年8月12日)
このような乳酸菌は、例えばポリ乳酸の原料となる乳酸の製造等、高濃度の乳酸を製造する場合等に有用である。例えば、ポリ乳酸の原料となる乳酸発酵では乳酸の生成に伴い、pHの低下による乳酸菌の生育抑制が起こり、乳酸生成能が低下するために、高濃度の乳酸を生産するのが困難になっている。そのために中和剤として炭酸カルシウム等を添加しているが、培養液が固形化して攪拌や培養継続が困難になるというデメリットが生じる。前記乳酸菌はpH3付近の酸性条件培養下で乳酸発酵能を有することから、乳酸の生成に伴い培地のpHが低下しても中和剤を添加する必要がなく、効率よく高濃度の乳酸溶液を製造することができる。また、これらの乳酸菌は発酵食品から分離されたものであるため、安全性が高いものであり、乳酸発酵を利用する発酵食品の製造等にも有用である。
1−1 乳酸菌の分離及び培養のための培地
「かぶらずし」及び「あじなれずし」等の発酵食品からの乳酸菌の分離には、MRS培地(市販品、Difco社製)55gを最終液量が1Lとなるような濃度に純水で溶解し、これに終濃度2%になるように寒天を添加して作製したプレートを使用した。
分離した乳酸菌の液体培養培地にはMRS培地(市販品、Difco社製)を使用した。
乳酸菌を純粋培養する最初の基本培養は次の方法で行った。4 ml容バイアルとMRS液体培地を別々に120℃、20分オートクレーブし、冷却後、MRS液体培地4 mlをバイアルに分注した。滅菌したつまようじを用いて、乳酸菌コロニー又は冷凍保存液を一掻きMRS液体培地の入ったバイアルにシードし、30℃で2〜3日間培養した。この培養液をそれぞれの目的に応じて使用した。
販売のために仕込まれた「かぶらずし」(四十萬谷本舗(株))及び「あじなれずし」(柳田食産(株))の仕込み樽より滲出してくる液を経時的にサンプリングし、滅菌した0.85%生理食塩水(10 ml/試験管)で適宜、希釈後、その0.1 mlをMRS寒天培地に塗布し、30℃で2〜3日間培養し、コロニーを形成させた。その際、特別に嫌気条件にはしなかった。コロニー数をカウントすることによって原液サンプルのml当たりの菌数を算出した。最終製品については米麹又は蒸し米部分の約1 gを計量し、生理食塩水10 mlで懸濁し、その懸濁液から同じようにコロニーを形成させた。
<乳酸菌よりゲノムDNAの調製>
Wizard(登録商標)Genomic DNA Purification Kit (Promega社製)を使用して、乳酸菌よりゲノム DNAを調製した。
前記で抽出したゲノムDNAから、PCRにより16SrDNA断片を増幅した。PCRはEx Taq(登録商標)DNA Polymerase (タカラバイオ社)を用いて行い、16SrDNA用プライマーとして以下の配列のプライマーを用いた。
[7-F (プライマー名)]
5’-AGAGTTTGATYMTGGCTCAG-3’ (配列番号1)
[1510-R (プライマー名)]
5’-ACGGYTACCTTGTTACGACTT-3’ (配列番号2)
配列番号1及び2中、Yは、C(シトシン)又はT(チミン)、Mは、A(アデニン)又はC(シトシン)である。
96℃、2分→(96℃、15秒→50℃、15秒→72℃、1分30秒)を25サイクル→4℃で保温
96℃、1分→(96℃、10秒→50℃、5秒→60℃、4分)を30サイクル
四十萬谷本舗(株)にて販売のために仕込まれた「かぶらずし」仕込み樽より滲出してくる液を仕込みから1日目、3日目、5日目、7日目にそれぞれサンプリングした。サンプル毎に8株の生菌を単離して16SrRNA遺伝子の部分塩基配列(約700bp)の解析による菌株の属種の同定を行ったところ、1日目は7株中6株がスタフィロコッカス・カルノーサス(Staphylococcus carnosus)で、乳酸菌ではない菌の割合が多くみられた。しかし、Staphylococcus carnosusは3日目では検出されず、多様な乳酸菌叢がみられた。最終製品である7日目についてはかぶらずしの米麹の部分の約1 gを計量し、生理食塩水10 mlで懸濁し、その懸濁液からコロニーとして単離して20株の菌種同定を行った。発酵が進むにつれて、特定の菌が多くなり、7日目では、大多数がラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)という結果になった。かぶらずし滲出液(発酵中の経時サンプル)から単離された菌種の例について、結果を図1に示す。
柳田食産(株)にて販売のために仕込まれた「あじなれずし」仕込み樽より滲出してくる液を仕込みから7日目、12日目、19日目、26日目、33日目、41日目にそれぞれサンプリングした。サンプル毎にコロニー分離法で8株の生菌を単離して、16SrDNAの部分塩基配列(約700bp)の解析による菌株の属種の同定を行った。最終製品である48日目については、あじなれずしの蒸し米部分の約1 gを計量し、生理食塩水10 mlで懸濁し、その懸濁液からコロニーとして単離し、前記と同じ方法で菌種同定を行った。7日目から48日目まで、同定された菌は主にラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)であった。48日目では、発酵途中の滲出液から見出されていないラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)が分離された。最終的に分離された菌株はLactobacillus brevis 、Lactobacillus plantarum 、Lactobacillus caseiであった(図3)。あじなれずし滲出液(発酵中の経時サンプル)から単離された菌種の例について、結果を図3に示す。
さらに「かぶらずし」や「あじなれずし」と同じ分離方法にて、以下のその他の分離源より乳酸菌の単離、同定を同じように行った。
実施例1において発酵食品から単離して、以下の実施例で、1)ACE阻害活性能、2)DPPHラジカル消去能、及び3)L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能のいずれかの機能性を検討した菌種を表1にまとめた。
Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)(受託日:2011年8月30日)
Enterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)(受託日:2011年8月12日)
Weissella hellenica SB105(受託番号:NITE P-1128)(受託日:2011年8月12日)
DPPHラジカル消去活性能の検討
2−1 使用菌株
石川県の発酵食品から単離された表1に示す乳酸菌を用いた。
培養液としてMRS培地、寒天培地はOxoid社のものを使用した。アネロパック・ケンキ(商品名)は三菱ガス化学(株)のものを使用した。DPPHラジカル消去活性測定において、発色剤であるOPA(o-フタルアルデヒド)は和光純薬工業(株)のものを使用した。
(菌の培養及び保存)
培養:−80℃で冷凍保存されていた菌株を解凍し、15mlプラスチックチューブにMRS液体培地9ml、及び乳酸菌1mlを入れて、35℃に設定したインキュベータで2〜3日培養した。
前記のプラスチックチューブをインキュベータから取り出し、MRS寒天培地に塗り付けて、アネロパック・ケンキ(商品名)を使って、37℃で24〜48時間、嫌気培養した。
保存:前記の方法でMRS寒天培地上にできたコロニーを拾い上げ、新たなMRS寒天培地に塗り付けて、35℃でインキュベートした。この操作は1ヶ月おきに行った。
MES(2-Morpholineethane sulfonic acid) 4.26gを純水(DW)に溶かし、NaOH溶液でpH 6.0に調整後、100mlにメスアップした。次いで下記表2に示すように、このMESバッファー300μlとDW300μl、50%エタノール(1200μl(サンプル0μl(ブランク))、1100μl(サンプル100μl)、900μl(サンプル300μl)、又は600μl(サンプル600μl))を混合し、最後にDPPH溶液(DPPH3.94mg/50mlエタノール)600μlを加え、2分後に、この溶液のAbs.520nmの吸光度を測定した。またDPPHラジカル活性は以下のように算出した。表2に、DPPHラジカル消去活性測定のために調製したブランク(No.1)及び試験溶液(No.2〜4)の組成を示す。表2中の数値の単位はμlである。
DPPHラジカル活性(%)
=(ブランクの吸光度−試験溶液の吸光度)/ブランクの吸光度 ×100
各試験溶液のDPPHラジカル消去活性は、サンプル(発酵食品から分離した乳酸菌を乳タンパク質培地又は大豆タンパク質培地で培養した培養上澄み)100μl添加では活性がほとんど見られなかったが、サンプル600μl添加でDPPHラジカル消去活性が認められたものがあった。各種乳酸菌培養物のDPPHラジカル消去活性の測定値を表3に示す。
ACE阻害活性能の検討
3−1 使用菌株
石川県の発酵食品から単離された表1に示す乳酸菌を用いた。
培養液、寒天培地、及びアネロパック・ケンキ(商品名)は実施例2と同じものを使用した。ACE阻害活性能測定における基質(N-Hippuryl-His-Leu hydrate)と酵素(ウサギ肺由来のアンジオテンシン変換酵素(ACE))はシグマアルドリッチジャパン社のものを使用した。
菌の培養及び保存は、実施例2と同じ方法で行った。サンプル(乳酸菌を、乳タンパク質培地、又は大豆タンパク質培地で培養した上澄み)調製も、実施例2と同じ方法で行った。ACE阻害活性能の試験溶液にはこのサンプル(上澄み)を1/10倍希釈したものを使用した。
C1(control 1)…ACEありコントロールの蛍光強度
C2(control 2)…ACEなしコントロールの蛍光強度
S1…ACEあり試験溶液の蛍光強度
S2…ACEなし試験溶液の蛍光強度
表4に、ACE阻害活性測定のために調製した各コントロール及び試験溶液の組成を示す。
表5に示すように大豆タンパク質培地での培養物は総じて高い活性を示したが、乳タンパク質培地での培養物は菌種によってばらつきがみられた。DPPHラジカル消去活性の結果も含め、これらの菌種間で両培地の違いによって活性の違いがみられたのは、菌種によってプロテアーゼの種類が異なるために、培地タンパク質の種類によって生成されるペプチドの種類が異なってくるからと思われた。
γ−アミノ酪酸(GABA)生成能の検討
4−1 使用菌株
石川県の発酵食品から単離された表1に示す乳酸菌を用いた。
培養液、寒天培地、及びアネロパック・ケンキ(商品名)は実施例2と同じものを使用した。グルタミン酸含有量測定には、ヤマサ醤油(株)のヤマサL−グルタミン酸測定キットIIを使用した。GABA含有量測定に用いたDTT(ジチオスレイトール)、2-ケトグルタル酸はナカライテスク(株)のものを使用した。またNADP+はオリエンタル酵母(株)のもの、Gabaseはシグマ社のものを使用した。乳酸含有量測定はMerck Chemicals JapanのLactic Acid testを用いて行った。マイクロプレートはBio-Rad社のものを使用した。
菌の培養及び保存は、実施例2と同じ方法で行った。
ヤマサ醤油(株)のグルタミン酸測定キットを用いて行った。下記表7に示すようにマイクロプレートのwellに分注し、室温で20分間インキュベートした後、各反応溶液の600nmの吸光度(A、S、R及びB)を測定した。なおL−グルタミン酸量の計算式は以下の通りである。
L-グルタミン酸(g/L)=(A-B-R)/(S-R) ×100×希釈倍率
Tsukataniらの方法(Analytica Chimica Acta,540,293-297,2005)を用いて行った。すなわち2.9gのTrisに300mlのDWを加え、Tris-HClバッファーを調製した。硫酸ナトリウム10.65g、DTT 0.15g、α-ケトグルタル酸20.45mgをTris-HClバッファー100mlに溶かした。この溶液10mlにNADP+14.8mgを加え、ボルテックスミキサーでよく混合した(1)。
GABA10mg/ml DWを希釈し、8、6、4、2、1、0.8…と0.06mg/ml DWの標準液を作製した(2)。
Merck Chemicals Japanの乳酸測定キットを用いて行った。すなわち、キットに付属されている試験紙の先端部にサンプル溶液を染み込ませ、キットの測定部位にセットし、5分間反応させた。5分後、測定終了の合図音が鳴ると測定画面に乳酸量が表示されるのでその値を記録した。
実施例1〜4の単離された乳酸菌の機能性評価に基づき、さらに詳しく追及するためには、菌種を絞り込む必要がある。そこで、DPPHラジカル消去活性、ACE阻害活性及びGABA産生能評価結果から、有能であると思われる表9に示した10種類の乳酸菌を選別し、以後の実験を行った。すなわち、乳酸菌の発酵度合いを調べる乳酸量測定に加え、グルタミン酸量測定、グルタミン酸からどれだけのGABAが生成されるかを調べるGABA量測定を行った。なお、前記成分の測定は培地のpHを変化させた条件下で経時的に行った。また、ACE阻害活性能についても再度検討を行った。
ACE阻害活性能の再検討結果
実施例5で選別された10種類の乳酸菌(表9)を実施例3と同様の方法により培養し、培養後12時間、48時間、96時間のサンプル(培養上澄み)のACE阻害活性を、実施例3と同様の方法により測定した。
大豆タンパク質培地においては培養時間に関係なく総じて高い活性がみられたが、乳タンパク質培地では96時間培養したもの以外、活性はみられなかった。
図6及び図7に、10種類の乳酸菌の培地別の培養物のACE阻害活性の経時変化を示す。図6は、各乳酸菌を乳由来タンパク質培地で培養した場合の培養物のACE阻害活性の経時変化であり、図7は、各乳酸菌を大豆タンパク質培地で培養した場合の培養物のACE阻害活性の経時変化である。図6及び図7中、白のバーは培養12時間後、黒のバーは培養48時間後、灰色のバーは培養96時間後のサンプルの阻害活性を示す。
Claims (6)
- あじなれずしより分離されたLactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、あじなれずしより分離されたLactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)、かぶらずしより分離されたLactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、あじなれずしより分離されたLactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)、いか麹漬けより分離されたEnterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)、及びいか黒造りより分離されたWeissella hellenica SB105(受託番号:NITE P-1128)からなる群より選択される乳酸菌1種又は2種以上の培養物であって、下記1)〜3)の少なくも1つの機能を有することを特徴とする乳酸菌の培養物。
1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、2)DPPHラジカル消去能、及び3)L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能 - あじなれずしより分離されたLactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、あじなれずしより分離されたLactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)、かぶらずしより分離されたLactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、あじなれずしより分離されたLactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)、いか麹漬けより分離されたEnterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)、及びいか黒造りより分離されたWeissella hellenica SB105(受託番号:NITE P-1128)からなる群より選択される乳酸菌であって、その培養物が下記1)〜3)の少なくも1つの機能を有することを特徴とする乳酸菌。
1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、2)DPPHラジカル消去能、及び3)L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能 - Lactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)又はLactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)であって、pH3付近の酸性条件培養下で乳酸発酵能を有する請求項2に記載の乳酸菌。
- 請求項2又は3に記載の乳酸菌の少なくとも1種を、L−グルタミン酸を含有する培地で培養することを特徴とするγ−アミノ酪酸を含有する乳酸菌培養物の製造方法。
- 請求項1に記載の培養物、又は請求項2又は3に記載の乳酸菌の、1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、若しくは2)DPPHラジカル消去能を有する、及び/又は3)γ−アミノ酪酸を含有する飲食品製造のための使用。
- 1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、若しくは2)DPPHラジカル消去能が強化された、及び/又は3)γ−アミノ酪酸を含有する発酵食品の製造方法であって、請求項1に記載の培養物、又は請求項2又は3に記載の乳酸菌を添加して発酵させる工程を含むことを特徴とする製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011188552A JP5940780B2 (ja) | 2011-08-31 | 2011-08-31 | 石川県の伝統発酵食品から分離した乳酸菌、その培養物及びその利用 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011188552A JP5940780B2 (ja) | 2011-08-31 | 2011-08-31 | 石川県の伝統発酵食品から分離した乳酸菌、その培養物及びその利用 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2013048586A JP2013048586A (ja) | 2013-03-14 |
JP5940780B2 true JP5940780B2 (ja) | 2016-06-29 |
Family
ID=48011229
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2011188552A Active JP5940780B2 (ja) | 2011-08-31 | 2011-08-31 | 石川県の伝統発酵食品から分離した乳酸菌、その培養物及びその利用 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP5940780B2 (ja) |
Families Citing this family (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6052485B2 (ja) * | 2012-02-16 | 2016-12-27 | 国立大学法人金沢大学 | 免疫活性化乳酸菌組成物及び免疫活性化乳酸発酵食品 |
JP6028962B2 (ja) * | 2012-02-16 | 2016-11-24 | 国立大学法人金沢大学 | ウイルス感染予防乳酸菌組成物及びウイルス感染予防乳酸発酵食品 |
JP5968655B2 (ja) * | 2012-03-21 | 2016-08-10 | 石川県公立大学法人 | 石川県の伝統発酵食品から分離した乳酸菌及びその培養物の機能性とその利用 |
JP2014000026A (ja) * | 2012-06-18 | 2014-01-09 | Kanazawa Univ | 消化管免疫調節乳酸菌組成物及び消化管免疫調節乳酸発酵食品 |
JP6343817B2 (ja) * | 2014-02-27 | 2018-06-20 | 石川県公立大学法人 | 石川県の伝統水産発酵食品に由来する乳酸菌を含有するヨーグルト |
CN107118885B (zh) * | 2017-05-17 | 2020-07-07 | 中国食品发酵工业研究院有限公司 | 一种利用耐乙醇片球菌生产含gaba发酵酒的方法 |
CN109182162B (zh) * | 2018-08-17 | 2021-10-26 | 哈尔滨美华生物技术股份有限公司 | 一株具有抗氧化能力的植物乳杆菌及应用 |
CN116042483B (zh) * | 2023-02-17 | 2023-07-18 | 佛山科学技术学院 | 一株具有产γ-氨基丁酸的乳酸肠球菌FSUH-1及其应用 |
-
2011
- 2011-08-31 JP JP2011188552A patent/JP5940780B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2013048586A (ja) | 2013-03-14 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5940780B2 (ja) | 石川県の伝統発酵食品から分離した乳酸菌、その培養物及びその利用 | |
Ruiz Rodríguez et al. | Diversity and functional properties of lactic acid bacteria isolated from wild fruits and flowers present in Northern Argentina | |
König et al. | Lactic acid bacteria | |
Dhakal et al. | Production of GABA (γ-aminobutyric acid) by microorganisms: a review | |
Barla et al. | The γ-aminobutyric acid-producing ability under low pH conditions of lactic acid bacteria isolated from traditional fermented foods of Ishikawa Prefecture, Japan, with a strong ability to produce ACE-inhibitory peptides | |
Thwe et al. | Isolation, characterization, and utilization of γ-aminobutyric acid (GABA)-producing lactic acid bacteria from Myanmar fishery products fermented with boiled rice | |
JP5968655B2 (ja) | 石川県の伝統発酵食品から分離した乳酸菌及びその培養物の機能性とその利用 | |
JP5910978B2 (ja) | 非タンパク性アミノ酸生産乳酸菌及びその用途 | |
CN106754472B (zh) | 一株果蔬发酵用植物乳杆菌grx15及其应用 | |
Liu et al. | Screening and application of lactic acid bacteria and yeasts with l‐lactic acid‐producing and antioxidant capacity in traditional fermented rice acid | |
Yu et al. | Isolation and characterization of lactic acid bacteria strains with ornithine producing capacity from natural sea salt | |
KR20140051543A (ko) | 락토바실러스 플랜타룸 k154를 이용한 gaba 증진 발효 식물 추출물 제조방법 | |
CN116286468A (zh) | 一株具有抗氧化功能的发酵粘液乳杆菌lf-onlly及其在发酵食品中的应用 | |
Ajayi et al. | Production of fermented sweet potato flour using indigenous starter cultures | |
JP2013201936A (ja) | 乳酸発酵におけるアミン生成制御方法 | |
JP2013208071A (ja) | 魚醤から分離した乳酸菌、その培養物及びその利用 | |
CN106479923B (zh) | 一株同时降解精氨酸和尿素的发酵乳杆菌 | |
WO2006013736A1 (ja) | 酵母変異株、グルタチオン高含有酵母の製造方法、その培養物、その分画物、酵母エキスおよびグルタチオン含有飲食品 | |
CN110250270B (zh) | 一种利用植物乳杆菌提高发酵乳叶酸含量的方法 | |
CN110257306A (zh) | 一株植物乳杆菌及其应用 | |
Anekella et al. | Characterization of robust Lactobacillus plantarum and Lactobacillus pentosus starter cultures for environmentally friendly low‐salt cucumber fermentations | |
JP5519960B2 (ja) | 乳酸菌検出用培地及び検出法 | |
CN109423467A (zh) | 一种乳酸高产的植物乳杆菌及其在食品和饲料领域的用途 | |
KR101481794B1 (ko) | 오르니틴 생산능력이 있는 페디오코커스 펜토사세우스 ayo-1 균주를 이용한 오르니틴을 함유하는 요구르트 제조방법 | |
Hutahaean et al. | Characterisation of lactic acid bacteria from Dengke Naniura of common carp (Cyprinus carpio) with α-glucosidase inhibitory activity |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20140811 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20151006 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20151203 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20160426 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20160519 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 5940780 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |