JP5940780B2 - 石川県の伝統発酵食品から分離した乳酸菌、その培養物及びその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、抗酸化作用、アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、又はL−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能の機能を有する乳酸菌の培養物、該培養物を生成する乳酸菌、及びこれらの利用に関する。
石川県は全国的にまれにみる発酵食品の宝庫であり、石川県能登及び加賀地域では、豊かな農産・海産資源を活かした発酵食品が伝統的に多種製造されている。その中でもとりわけ著名なのが、かぶらずし、あじなれずしである。
かぶらずしは、塩漬けにしたカブに塩漬けしたブリの薄切りを挟み込み、細く切った人参などと一緒に、麹をまぶしながら樽に仕込み、低温で通常1週間〜10日ほど発酵させて作られる発酵食品で、加賀地方を中心として口能登から加賀までと富山の西部地方までの範囲で作られている。かぶらずしの発酵は麹を添加することで促醸を行うものである。麹の他に野菜が魚などの抑臭のために用いられている。
あじなれずしは、あじを塩と酢で下漬けし、米飯、あじ、山椒・トウガラシを順に桶に敷き詰め、何層も繰り返し最後にご飯を敷き、蓋をして重りを載せ、冷暗所に置き、通常4週間以上発酵させ作られる。このようななれずしの発酵は米飯の乳酸発酵によるもので、これによって保存性が付与され、特有の臭いや酸味が醸される。
乳酸発酵とは乳酸菌が糖を代謝(発酵)してその大部分を乳酸に変える反応である。発酵の形式には二通りあり、一つはホモ発酵と呼ばれ、1モルのブドウ糖(グルコース)から2モルの乳酸が生成される。この発酵を行うことが知られている主な乳酸菌はLactobacillus delbrueckii、Lactobacillus casei、Lactobacillus bulgaricus、Streptococcus lactisなどである。もう一つはヘテロ発酵と呼ばれ、1モルのブドウ糖から1モルの乳酸のほかにエチルアルコール、酢酸、グリセリン、炭酸ガスなどが生成される。この発酵を行うことが知られている主な乳酸菌はLactobacillus brevis、Lactobacillus buchneri、Leuconostoc mesenteroides、Lactobacillus pentoaceticusなどである。
乳酸菌は古来より醸造食品や漬物中に多く含まれ、その乳酸発酵により食品に風味を付与してきた。石川県では酒、味噌、醤油等のいわゆる醸造食品の他に、先に述べたかぶらずし、なれずし等の多くの固有の伝統発酵食品があり、それらに乳酸菌が関与している。乳酸菌が関与する発酵食品中には、様々な生理活性を有する機能性物質が含まれており、乳酸菌が作り出す機能性物質、及びその機能が明らかにされつつある。
例えば、乳酸菌のもつ機能性の一つとして、γ−アミノ酪酸(GABA)生成能を有する乳酸菌が報告されている(特許文献1〜3)。GABAは生物界に広く分布している非タンパク質性アミノ酸で生体内では抑制性の神経伝達物質であり、血圧降下作用や利尿作用、ストレス低減作用などが報告されている。また、ある種の乳酸菌について、乳酸発酵に伴いアンジオテンシン変換酵素(ACE)活性の阻害作用を示すペプチドが生産されることが報告されている(特許文献4)。アンジオテンシン変換酵素(ACE)は、強い血圧上昇活性を有するアンジオテンシンIIの産生に関与する酵素であるため、該酵素を阻害する作用を有する物質は、血圧降下機能を有することが期待される。
ある種の乳酸菌の乳酸発酵による抗酸化作用も報告されている(特許文献5)。鉄が酸化によってさびるのと同様に人間の体が酸化状態に置かれることによって細胞が劣化するのを防ぐことを抗酸化作用という。体の細胞が劣化するのは人間が摂取した酸素が体内で変質してできる活性酸素が原因である。活性酸素は体内の毒物や細菌、ウイルスを解毒、消去するために必要だが、活性酸素の量が多いと体内で処理できず正常な細胞まで攻撃してしまう。これが酸化であり、体の細胞が劣化するという現象である。この厄介者の活性酸素を取り除くのが抗酸化物質である。
このように、ある種の乳酸菌の機能性については報告があるものの、石川県の伝統発酵食品に含まれる乳酸菌の機能性については、未だ知られていない。
特開2011−4723号公報 特許4605299号公報 特開2004−357535号公報 特開2008−133251号公報 特開2004−154055号公報
本発明は、石川県の伝統的な発酵食品に含まれる機能性を有する乳酸菌又はその培養物、より具体的には、抗酸化作用、アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害活性能、及びL−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能のいずれかの機能を有する乳酸菌の培養物、このような培養物を生成する乳酸菌、並びにその用途等を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために本発明者らは研究を重ね、石川県の伝統発酵食品から乳酸菌を単離してその菌種を同定し、さらにその機能性について検討した。その結果、単離された乳酸菌の培養物が、ACE阻害活性能、L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸(GABA)への変換能、又は抗酸化作用の指標となるDPPHラジカル消去能を示すことを見出した。さらに、単離された乳酸菌の中には、pH3付近という通常乳酸菌が乳酸発酵を行わない酸性条件下でも乳酸発酵を行うものや、該酸性条件下でもL−グルタミン酸の存在下で培養すると、培養物中にGABAを生成するものがあることを見出した。
このような乳酸菌やその培養物は、機能性を有する発酵食品等の開発に非常に有用なものである。例えばこのような乳酸菌やその培養物を使用することにより、ACE阻害活性能又は抗酸化作用を有する飲食品や医薬品、GABAを多量に含有する組成物等を製造することができる。例えば、分離した乳酸菌をスターターとして接種して、かぶらずし、あじなれずし、ヨーグルト等の乳酸発酵食品の製造を行うことにより、おいしさとともに機能性が付与された乳酸発酵食品を提供することができる。また、該乳酸菌をスターターとして使用し、発酵食品を製造することで、発酵過程の管理が容易になるとともに、最終製品の安定性、機能性が増大するという効果が得られる。さらに、pH3付近で乳酸発酵を行う乳酸菌は、例えばポリ乳酸の原料となる乳酸の製造等、高濃度の乳酸を製造する場合等にも有用である。
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下の乳酸菌培養物、乳酸菌、γ−アミノ酪酸を含有する乳酸菌培養物の製造方法、発酵食品の製造方法等を提供する。
〔1〕あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離した乳酸菌1種又は2種以上の培養物であって、下記1)〜3)の少なくも1つの機能を有することを特徴とする乳酸菌の培養物。
1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、2)DPPHラジカル消去能、及び3)L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能
〔2〕乳酸菌が、表1に示される少なくとも1種の乳酸菌である前記〔1〕に記載の培養物。
〔3〕乳酸菌を、大豆由来タンパク質又は哺乳類の乳由来タンパク質を含む培地で培養して得られ、1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、又は2)DPPHラジカル消去能を有する前記〔1〕又は〔2〕に記載の培養物。
〔4〕Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、Enterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)及びLactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌を、哺乳類の乳由来タンパク質を含む培地で培養して得られ、アンジオテンシン転換酵素阻害活性能を有するものである前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の培養物。
〔5〕乳酸菌がLactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、Lactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)、Lactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)、Lactobacillus brevis (AN2-2、AN3-5、AN4-5、ANP7-6又はSB109)、Enterococcus gilvus SB102、Carnobacterium divergens SB104、Weissella hellenica SB101及びWeissella hellenica SB105(受託番号:NITE P-1128)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌であり、L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能を有するものである前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の培養物。
〔6〕あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離され、その培養物が下記1)〜3)の少なくも1つの機能を有することを特徴とする乳酸菌。
1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、2)DPPHラジカル消去能、及び3)L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能
〔7〕表1に示される少なくとも1種の乳酸菌である前記〔6〕に記載の乳酸菌。
〔8〕Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、Enterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)及びLactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)からなる群より選択される少なくとも1種であって、哺乳類の乳由来タンパク質を含む培地で培養して得られる培養物が、アンジオテンシン転換酵素阻害活性能を有するものである前記〔6〕又は〔7〕に記載の乳酸菌。
〔9〕Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、Lactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)、Lactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)、Lactobacillus brevis (AN2-2、AN3-5、AN4-5、ANP7-6又はSB109)、Enterococcus gilvus SB102、Carnobacterium divergens SB104、Weissella hellenica SB101及びWeissella hellenica SB105(受託番号:NITE P-1128)からなる群より選択される少なくとも1種であって、培養物が、L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能を有するものである前記〔6〕又は〔7〕に記載の乳酸菌。
〔10〕Lactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)、Lactobacillus brevis (AN3-5、AN4-5、ANP7-6又はSB109)、又はLactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)であって、pH3付近の酸性条件培養下で乳酸発酵能を有する前記〔9〕に記載の乳酸菌。
〔11〕前記〔6〕、〔7〕、及び〔9〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の乳酸菌の少なくとも1種を、L−グルタミン酸を含有する培地で培養することを特徴とするγ−アミノ酪酸を含有する乳酸菌培養物の製造方法。
〔12〕前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の培養物、又は前記〔6〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の乳酸菌の、1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、若しくは2)DPPHラジカル消去能を有する、及び/又は3)γ−アミノ酪酸を含有する飲食品製造のための使用。
〔13〕1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、若しくは2)DPPHラジカル消去能が強化された、及び/又は3)γ−アミノ酪酸を含有する発酵食品の製造方法であって、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の培養物、又は前記〔6〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の乳酸菌を添加して発酵させる工程を含むことを特徴とする製造方法。
本発明の乳酸菌の培養物又は乳酸菌を用いると、アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、抗酸化作用等の機能を有する発酵食品等の飲食品及び医薬、γ−アミノ酪酸を含有する飲食品及び医薬等を製造することができる。さらに、本発明の乳酸菌をスターターとして使用し、発酵食品を製造することで、発酵過程の管理が容易になるとともに、最終製品の安定性、機能性が増大するという効果も得られる。
図1は、かぶらずし(発酵中の経時サンプル)より単離された菌種の例を示す図である。 図2は、かぶらずしの仕込み樽の滲出液中の生菌の増殖曲線(生菌数の推移)を示す図である。 図3は、あじなれずし(発酵中の経時サンプル)より単離された菌種の例を示す図である。 図4は、あじなれずしの仕込み樽の滲出液中の生菌の増殖曲線(生菌数の推移)を示す図である。 図5は、最少培地で培養した各種乳酸菌培養物のACE阻害活性を示す図である。 図6は、10種類の乳酸菌を乳由来タンパク質を含有する培地で培養した培養物のACE阻害活性の経時変化を示す図である。 図7は、10種類の乳酸菌を大豆タンパク質培地を含有する培地で培養した培養物のACE阻害活性の経時変化を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の乳酸菌の培養物は、あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離した乳酸菌1種又は2種以上の培養物であって、下記1)〜3)の少なくも1つの機能を有するものである。
1)アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害活性能、2)DPPHラジカル消去能、及び3)L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能
本発明における乳酸菌は、あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離された乳酸菌であり、その培養物が前記1)〜3)の少なくも1つの機能を有する乳酸菌であればよい。このような乳酸菌も、本発明に包含される。
前記乳酸菌の分離源であるあじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けは、いずれも石川県の伝統的な発酵食品であり、市販されている。また、既知の方法により製造することもできる。乳酸菌の分離及び同定は、自体公知の方法により行うことができる。
本発明における乳酸菌の培養物は、通常、前記乳酸菌を培地で培養した培養液若しくは培養上澄み、又はその処理物である。培養物には、乳酸菌が含まれていてもよい。乳酸菌は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。培養液又は培養上澄みの処理物として、該培養液又は培養上澄みの希釈液又は濃縮液、該培養液又は培養上澄みを乾燥させて得られる乾燥物、該培養液若しくは培養上澄みの粗精製物若しくは精製物、又はその乾燥物等が挙げられる。粗精製又は精製の方法は、本発明の効果を奏することになる限り特に限定されず、公知の手法により行うことができる。
乳酸菌の培養物は、公知の手法により得られる。例えば、後述するような前記発酵食品から分離した乳酸菌を、培地中で通常の条件で培養する方法が挙げられる。培地は、乳酸菌の培養に通常使用される炭素源、窒素源、ミネラル等を含むものであればよく、天然培地又は合成培地等を用いることができる。好ましくは、液体培地を用いる。培養物を得るための培養は、例えば、培養温度は、約5〜45℃とすることが好ましく、約25〜37℃とすることがより好ましい。培地のpHは、例えば約4〜8とすることが好ましく、約6〜7とすることがより好ましい。同時にpHを制御してもよく、酸又はアルカリを用いてpHの調整を行うことができる。また、後述するpH3付近で乳酸生成能を有する菌については、培地のpHを3付近とすることもできる。培養時間は、通常約24時間以上が好ましく、より好ましくは約48〜96時間である。培養は、好気条件下で行ってもよく、嫌気条件下で行ってもよい。好ましくは嫌気条件下で行う。
このように培養した培養液又は培養上澄みを、培養物として使用することができる。
炭素源としては、例えばグルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ラクトース、スクロース、セロビオース、廃糖蜜、グリセロール等が挙げられ、好ましくはグルコース、スクロース等である。窒素源としては、無機態窒素源では、例えばアンモニア、アンモニウム塩等、有機態窒素源では、例えば尿素、アミノ酸、タンパク質等をそれぞれ単独もしくは2種以上を混合して用いることができ、好ましくはアンモニウム塩、アミノ酸等である。またミネラル源として、おもにK、P、Mg、Sなどを含む、例えばリン酸一水素カリウム、硫酸マグネシウム等を用いることができる。この他にも必要に応じて、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸やビオチン、チアミン等の各種ビタミン等の栄養素を培地に添加することもできる。培地中の炭素源、窒素源等の濃度は、乳酸菌が生育できる通常の濃度であればよく、特に限定されない。通常、培養開始時の炭素源濃度は0.1〜15%(wt)程度が好ましく、より好ましくは1〜10%(wt)程度である。培養開始時の窒素源の濃度は、通常0.1〜15%(wt)程度、好ましくは1〜15%(wt)程度、より好ましくは1〜10%(wt)程度とすればよい。
培養物を得るための培地は、例えば、前記1)ACE阻害活性能、又は2)DPPHラジカル消去能を有する培養物を得る場合には、窒素源としてタンパク質を含むことが好ましい。タンパク質は特に限定されないが、例えば、植物性タンパク質、動物性タンパク質等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。植物性タンパク質として、例えば、コメ、コムギ、オオムギ、ライムギ、トウモロコシ等の穀類由来のタンパク質;大豆、空豆、インゲン豆等の豆類由来のタンパク質が好適であり、中でも、大豆由来のタンパク質を好適に用いることができる。大豆由来のタンパク質として、脱脂大豆粉等を好適に使用できる。動物性タンパク質としては、肉エキス、哺乳類の乳由来のタンパク質等が挙げられ、哺乳類の乳由来のタンパク質が好ましい。哺乳類の乳としては、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ヒト等の乳が挙げられ、ウシの乳が好ましい。乳由来のタンパク質として、例えば、スキムミルク等が好適に使用できる。
前記タンパク質は、培地中に培養開始時の濃度として5〜15%(wt)程度とすることが好ましく、8〜10%(wt)程度とすることがより好ましい。
前記発酵食品から分離した乳酸菌を、大豆由来タンパク質又は哺乳類の乳由来タンパク質を含む培地で培養して得られ、1)ACE阻害活性能、又は2)DPPHラジカル消去能を有する培養物は、本発明の好ましい態様の1つである。培養物のACE阻害活性能及びDPPHラジカル消去能は、公知の方法(例えば、ACE阻害活性能であれば、Nakanoらの方法(Biosci. Biotechnol. Biochem., 70, 1118-1126, 2006)等)により確認できる。
前記3)L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能を有する培養物を得る場合には、L−グルタミン酸、又はL−グルタミン酸ナトリウム等のL−グルタミン酸の塩を含む培地を用いることが好ましい。L−グルタミン酸又はその塩の濃度は特に限定されず、適宜設定することができる。
本発明における前記発酵食品から分離した乳酸菌として、後記の表1に示される乳酸菌等が好ましい。
表1に示される乳酸菌のうち、ラクトバチラス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri) AN1-1、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN1-5、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei) KP7-11、ラクトバチラス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri) SB21、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis) SB103、及びワイセラ・ヘレニカ(Weissella hellenica) SB105は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託申請し、以下の受託番号で受託された。
Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)(受託日:2011年8月30日)
Enterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)(受託日:2011年8月12日)
Weissella hellenica SB105(受託番号:NITE P-1128)(受託日:2011年8月12日)
表1に示す乳酸菌の中でも、例えば、Lactobacillus buchneri(AN1-1又はSB21)、Enterococcus faecalis SB103、Lactobacillus sakei KP7-11、Lactobacillus brevis (AN1-5、AN2-2、AN3-5、AN4-5、ANP7-6又はSB109)、エンテロコッカス・ギルブス(Enterococcus gilvus) SB102、カーノバクテリウム・ディバーゲンス(Carnobacterium divergens) SB104、Weissella hellenica (SB101又はSB105)等が好ましい。より好ましくは、Lactobacillus buchneri (AN1-1又はSB21)、Lactobacillus brevis (AN1-5、AN2-2、AN3-5、AN4-5、ANP7-6又はSB109)、Weissella hellenica (SB101又はSB105)等であり、さらに好ましくは、Lactobacillus buchneri (AN1-1又はSB21)、Lactobacillus brevis AN1-5、Lactobacillus sakei KP7-11、Enterococcus faecalis SB103、Weissella hellenica SB105等である。
ACE阻害活性能を有する乳酸菌の培養物として、表1に示される乳酸菌を、例えば大豆由来タンパク質又は哺乳類の乳由来タンパク質を含む培地で培養して得られ、ACE阻害活性能を有する培養物が好ましい。乳酸菌としては、Lactobacillus buchneri AN1-1、Enterococcus faecalis SB103、Lactobacillus sakei KP7-11等の1種又は2種以上が好ましい。
ACE阻害活性能を有する乳酸菌の培養物として、Lactobacillus buchneri AN1-1、Enterococcus faecalis SB103及びLactobacillus sakei KP7-11からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌を、哺乳類の乳由来タンパク質を含む培地で培養して得られ、ACE阻害活性能を有する乳酸菌の培養物がより好ましい。
乳酸菌の培養物がL−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能を有するとは、該乳酸菌をL−グルタミン酸を含む培地中で培養した場合に、該培地中のL−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸が生成することを意味する。培地に生成したγ−アミノ酪酸含有量は、公知の方法(例えば、Tsukataniらの方法(Analytica Chimica Acta,540,293-297,2005)等)により確認できる。
L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能を有する培養物として、例えば、表1に示されるLactobacillus buchneri(AN1-1又はSB21)、Lactobacillus brevis(AN1-5、AN2-2、AN3-5、AN4-5、ANP7-6又はSB109)、Enterococcus gilvus SB102、Carnobacterium divergens SB104、Weissella hellenica (SB101又はSB105)等を、L−グルタミン酸を含む培地で培養して得られる培養物が好ましい。このような乳酸菌1種又は2種以上の培養物は、L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への高い変換能を有するものであるため好ましい。
前記L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能を有する培養物を生成する乳酸菌の中で、例えば、Lactobacillus brevis(AN1-5、AN3-5、AN4-5、ANP7-6又はSB109)、Lactobacillus buchneri SB21等は、pH3付近の酸性条件培養下で乳酸発酵能を有するものであるため好ましい。pH3付近の酸性条件培養下で乳酸発酵能を有するとは、pH3付近の培地で乳酸菌を培養した場合の乳酸生成量が、培地pH以外の培養条件は同じとしてpH4〜6付近の培地で該乳酸菌を培養した場合の乳酸生成量の約30%以上(好ましくは50%以上)であることをいう。pH3付近とは、通常pH約2.5〜3.4、好ましくは約2.8〜3.2である。
pH3付近の酸性条件培養下で乳酸発酵能を有するLactobacillus brevis(AN1-5、AN3-5、AN4-5、ANP7-6又はSB109)、又はLactobacillus buchneri SB21も、本発明に包含される。
このような乳酸菌は、例えばポリ乳酸の原料となる乳酸の製造等、高濃度の乳酸を製造する場合等に有用である。例えば、ポリ乳酸の原料となる乳酸発酵では乳酸の生成に伴い、pHの低下による乳酸菌の生育抑制が起こり、乳酸生成能が低下するために、高濃度の乳酸を生産するのが困難になっている。そのために中和剤として炭酸カルシウム等を添加しているが、培養液が固形化して攪拌や培養継続が困難になるというデメリットが生じる。前記乳酸菌はpH3付近の酸性条件培養下で乳酸発酵能を有することから、乳酸の生成に伴い培地のpHが低下しても中和剤を添加する必要がなく、効率よく高濃度の乳酸溶液を製造することができる。また、これらの乳酸菌は発酵食品から分離されたものであるため、安全性が高いものであり、乳酸発酵を利用する発酵食品の製造等にも有用である。
前記乳酸菌の培養物、及び前記乳酸菌は、発酵食品から分離された乳酸菌及びその培養物であることから、安全性が高いものである。このような培養物及び乳酸菌は、1)ACE阻害活性能若しくは2)DPPHラジカル消去能を有する、及び/又は3)γ−アミノ酪酸を含有する機能性食品等の飲食品、医薬等の製造のために好適に利用される。
前記乳酸菌の培養物、又は前記乳酸菌は、1)ACE阻害活性能若しくは2)DPPHラジカル消去能を有する、及び/又は3)γ−アミノ酪酸を含有する飲食品の製造のために好適に使用される。前記培養物、又は前記乳酸菌の、前記飲食品製造のための使用も、本発明に包含される。
前記培養物又は前記乳酸菌を用いて前記飲食品を製造する方法は特に限定されず、例えば、飲食品の製造において前記培養物又は前記乳酸菌を添加する方法等が挙げられる。飲食品としては特に限定されないが、例えば後述する発酵食品等が好ましい。
発酵食品の製造において、例えば、前記乳酸菌の培養物、又は前記乳酸菌を添加して発酵させる工程を含むことにより、1)ACE阻害活性能若しくは2)DPPHラジカル消去能が強化された、及び/又は3)γ−アミノ酪酸量が増加した発酵食品を製造することができる。このような発酵食品の製造方法も、本発明に包含される。1)ACE阻害活性能若しくは2)DPPHラジカル消去能が強化されたとは、前記乳酸菌の培養物、又は前記乳酸菌を添加しない場合と比較して該食品が高いACE阻害活性能又はDPPHラジカル消去能を示すことをいう。γ−アミノ酪酸量が増加したとは、前記乳酸菌の培養物、又は前記乳酸菌を添加しない場合と比較して該食品中のγ−アミノ酪酸量が増加していることをいう。
発酵食品としては、乳酸発酵を利用して製造されるものが好ましく、例えば、あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、うり糠漬け等が好適である。これら以外にも、牛乳等の哺乳類の乳又は豆乳から製造されるヨーグルト、乳酸菌入り米麹、ブルーベリージュース等を用いたジェラード(アイスクリーム)、味噌、醤油、チーズ、清酒、ワイン、漬物、パン等の製造において、前記乳酸菌の培養物、又は前記乳酸菌を使用することにより、前記1)ACE阻害活性能若しくは2)DPPHラジカル消去能が強化された、及び/又は3)γ−アミノ酪酸を含有する発酵食品を製造することができる。
前記乳酸菌の培養物、又は前記乳酸菌の添加量、乳酸菌の培養物、又は前記乳酸菌を添加して発酵させる条件等は、発酵食品の種類により適宜選択すればよく、特に限定されない。好ましくは、発酵温度は約5〜45℃とする。γ−アミノ酪酸量が増加した発酵食品を製造する際には、発酵の際に、L−グルタミン酸若しくはその塩を含む原料に前記乳酸菌の培養物、又は前記乳酸菌を添加して発酵させることが好ましい。
例えば、前記乳酸菌をスターターとして接種して、乳酸発酵食品の製造を行うことも好ましい。これにより、おいしさとともに機能性が付与された乳酸発酵食品を効率よく提供することができる。また、該乳酸菌をスターターとして使用し、発酵食品を製造することで、発酵過程の管理が容易になるとともに、最終製品の安定性、機能性が増大するという効果も得られる。
前記L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能を有する培養物を生成する乳酸菌の少なくとも1種を、L−グルタミン酸を含有する培地で培養することにより、γ−アミノ酪酸を含有する乳酸菌培養物を製造することができる。このような製造方法も、本発明に包含される。
培地中のL−グルタミン酸の濃度は適宜選択すればよい。培養条件等は、前述したような乳酸菌が通常乳酸発酵を行う条件を採用すればよい。培地は、上述したような炭素源、窒素源等を含んでいてもよい。培養時間は、通常約24時間以上とすることが好ましく、より好ましくは48〜96時間程度である。このような製造方法により、γ−アミノ酪酸を高含量含有する乳酸菌培養物を製造することができる。得られたγ−アミノ酪酸を含有する乳酸菌培養物は、γ−アミノ酪酸を高濃度含有するものであり、そのまま、又は適宜精製して使用することができる。このγ−アミノ酪酸を含有する乳酸菌培養物又はその精製物は、飲食品、医薬品、飼料等の原料等として好適に用いられ、γ−アミノ酪酸を含有する飲食品、医薬品、飼料等を製造することができる。また、例えば、前記乳酸菌培養物又はその精製物を任意の飲食品等に少量添加するだけで、その飲食品中のγ−アミノ酪酸濃度を増加させることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
実施例1
1−1 乳酸菌の分離及び培養のための培地
「かぶらずし」及び「あじなれずし」等の発酵食品からの乳酸菌の分離には、MRS培地(市販品、Difco社製)55gを最終液量が1Lとなるような濃度に純水で溶解し、これに終濃度2%になるように寒天を添加して作製したプレートを使用した。
分離した乳酸菌の液体培養培地にはMRS培地(市販品、Difco社製)を使用した。
1−2 培養方法及び条件
乳酸菌を純粋培養する最初の基本培養は次の方法で行った。4 ml容バイアルとMRS液体培地を別々に120℃、20分オートクレーブし、冷却後、MRS液体培地4 mlをバイアルに分注した。滅菌したつまようじを用いて、乳酸菌コロニー又は冷凍保存液を一掻きMRS液体培地の入ったバイアルにシードし、30℃で2〜3日間培養した。この培養液をそれぞれの目的に応じて使用した。
1−3 発酵食品からの乳酸菌の分離方法
販売のために仕込まれた「かぶらずし」(四十萬谷本舗(株))及び「あじなれずし」(柳田食産(株))の仕込み樽より滲出してくる液を経時的にサンプリングし、滅菌した0.85%生理食塩水(10 ml/試験管)で適宜、希釈後、その0.1 mlをMRS寒天培地に塗布し、30℃で2〜3日間培養し、コロニーを形成させた。その際、特別に嫌気条件にはしなかった。コロニー数をカウントすることによって原液サンプルのml当たりの菌数を算出した。最終製品については米麹又は蒸し米部分の約1 gを計量し、生理食塩水10 mlで懸濁し、その懸濁液から同じようにコロニーを形成させた。
それぞれのサンプルから得たコロニーの一部(おおよそ各サンプル毎に8コロニー)を4 ml MRS液体培地(4 ml容バイアル中)にて、30℃、2〜3日間培養し、その培養液1 mlを滅菌した30%グリセリン1 mlの入ったバイアルに注入後、-80℃のフリーザーに保存するとともに、残りの培養液を16SrRNA遺伝子の解析を行うためにゲノムDNAの調製に使用した。また、滲出液及び懸濁液の一部は菌叢の網羅的解析のためのサンプルとして使用した。
1−4 16SrRNA遺伝子の解析による乳酸菌の同定
<乳酸菌よりゲノムDNAの調製>
Wizard(登録商標)Genomic DNA Purification Kit (Promega社製)を使用して、乳酸菌よりゲノム DNAを調製した。
<PCRによる16SrDNA断片の増幅>
前記で抽出したゲノムDNAから、PCRにより16SrDNA断片を増幅した。PCRはEx Taq(登録商標)DNA Polymerase (タカラバイオ社)を用いて行い、16SrDNA用プライマーとして以下の配列のプライマーを用いた。
[7-F (プライマー名)]
5’-AGAGTTTGATYMTGGCTCAG-3’ (配列番号1)
[1510-R (プライマー名)]
5’-ACGGYTACCTTGTTACGACTT-3’ (配列番号2)
配列番号1及び2中、Yは、C(シトシン)又はT(チミン)、Mは、A(アデニン)又はC(シトシン)である。
PCRのサイクルは、以下の通りである。
96℃、2分→(96℃、15秒→50℃、15秒→72℃、1分30秒)を25サイクル→4℃で保温
増幅断片の精製は、QIAquick(登録商標)PCR purification kit (QIAGEN社) を使用して行った。キットで精製した DNA 溶液、並びに、前記の配列番号1のプライマー及び配列番号2のプライマーを用いて、以下のサイクルで、PCR 機を用いて増幅反応した。
96℃、1分→(96℃、10秒→50℃、5秒→60℃、4分)を30サイクル
反応後、X terminator(登録商標)Solution (BigDye X Terminator 精製キット、Applied Biosystems社製) を使用して反応液を精製し、得られた上清 40〜50μl をシークエンサー用専用ラックに移し、Genetic Analyzer(製品名、3130xl Genetic Analyzer、Applied Biosystems社製)を用いてシークエンス解析した。
1−5 かぶらずしより単離した乳酸菌の同定
四十萬谷本舗(株)にて販売のために仕込まれた「かぶらずし」仕込み樽より滲出してくる液を仕込みから1日目、3日目、5日目、7日目にそれぞれサンプリングした。サンプル毎に8株の生菌を単離して16SrRNA遺伝子の部分塩基配列(約700bp)の解析による菌株の属種の同定を行ったところ、1日目は7株中6株がスタフィロコッカス・カルノーサス(Staphylococcus carnosus)で、乳酸菌ではない菌の割合が多くみられた。しかし、Staphylococcus carnosusは3日目では検出されず、多様な乳酸菌叢がみられた。最終製品である7日目についてはかぶらずしの米麹の部分の約1 gを計量し、生理食塩水10 mlで懸濁し、その懸濁液からコロニーとして単離して20株の菌種同定を行った。発酵が進むにつれて、特定の菌が多くなり、7日目では、大多数がラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)という結果になった。かぶらずし滲出液(発酵中の経時サンプル)から単離された菌種の例について、結果を図1に示す。
「かぶらずし」仕込み樽の滲出液ml当たりの生菌数をMRS寒天プレートに生育するコロニー数から算出した。その菌数増殖曲線(生菌数の推移)を図2に示した。
1−6 あじなれずしより単離した乳酸菌の同定
柳田食産(株)にて販売のために仕込まれた「あじなれずし」仕込み樽より滲出してくる液を仕込みから7日目、12日目、19日目、26日目、33日目、41日目にそれぞれサンプリングした。サンプル毎にコロニー分離法で8株の生菌を単離して、16SrDNAの部分塩基配列(約700bp)の解析による菌株の属種の同定を行った。最終製品である48日目については、あじなれずしの蒸し米部分の約1 gを計量し、生理食塩水10 mlで懸濁し、その懸濁液からコロニーとして単離し、前記と同じ方法で菌種同定を行った。7日目から48日目まで、同定された菌は主にラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)であった。48日目では、発酵途中の滲出液から見出されていないラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)が分離された。最終的に分離された菌株はLactobacillus brevis 、Lactobacillus plantarum 、Lactobacillus caseiであった(図3)。あじなれずし滲出液(発酵中の経時サンプル)から単離された菌種の例について、結果を図3に示す。
仕込み樽の滲出液ml当たりの生菌数の増殖曲線は、約1か月でピークになり、その後は減っていった。その菌数増殖曲線(生菌数の推移)を図4に示した。
あじなれずし最終製品(柳田食産(株)製)の固形部分(主に蒸し米由来)100g当たりの生理食塩水懸濁液中の食塩及び有機酸含有量を成分分析した結果、食塩1.6 g、乳酸2.8 g、酢酸830 mg、ピログルタミン酸30 mg、コハク酸13 mgであった。
1−7 その他発酵食品より単離した乳酸菌の同定
さらに「かぶらずし」や「あじなれずし」と同じ分離方法にて、以下のその他の分離源より乳酸菌の単離、同定を同じように行った。
分離源:ぶりなれずし、さばなれずし、山廃酒母(車多酒造(株))、大根ずし(四十萬谷本舗(株))、いか麹漬け、いか黒造り、うり糠漬け
実施例1において発酵食品から単離して、以下の実施例で、1)ACE阻害活性能、2)DPPHラジカル消去能、及び3)L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能のいずれかの機能性を検討した菌種を表1にまとめた。
表1に示す乳酸菌のうち、Lactobacillus buchneri AN1-1、Lactobacillus brevis AN1-5、Lactobacillus sakei KP7-11、Lactobacillus buchneri SB21、Enterococcus faecalis SB103、及びWeissella hellenica SB105については、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託申請し、以下の受託番号で受託された
Lactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)(受託日:2011年8月12日)
Lactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)(受託日:2011年8月30日)
Enterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)(受託日:2011年8月12日)
Weissella hellenica SB105(受託番号:NITE P-1128)(受託日:2011年8月12日)
以下の実施例中、表1に示した乳酸菌の菌種名を略し、菌株名のみで表す場合もある。例えば、AN2-2は、Lactobacillus brevis AN2-2を意味する。
実施例2
DPPHラジカル消去活性能の検討
2−1 使用菌株
石川県の発酵食品から単離された表1に示す乳酸菌を用いた。
2−2 試薬及び機器
培養液としてMRS培地、寒天培地はOxoid社のものを使用した。アネロパック・ケンキ(商品名)は三菱ガス化学(株)のものを使用した。DPPHラジカル消去活性測定において、発色剤であるOPA(o-フタルアルデヒド)は和光純薬工業(株)のものを使用した。
2−3 方法
(菌の培養及び保存)
培養:−80℃で冷凍保存されていた菌株を解凍し、15mlプラスチックチューブにMRS液体培地9ml、及び乳酸菌1mlを入れて、35℃に設定したインキュベータで2〜3日培養した。
前記のプラスチックチューブをインキュベータから取り出し、MRS寒天培地に塗り付けて、アネロパック・ケンキ(商品名)を使って、37℃で24〜48時間、嫌気培養した。
保存:前記の方法でMRS寒天培地上にできたコロニーを拾い上げ、新たなMRS寒天培地に塗り付けて、35℃でインキュベートした。この操作は1ヶ月おきに行った。
2−4 サンプル調製:乳タンパク質培地として、北海道スキムミルク(商品名、雪印メグミルク(株)製)54gにグルコース50gを加え、450mlの純水(DW)に溶かしたものを使用し、大豆タンパク質培地として、Soy Protein(商品名、ヘルシーベスト(株)製)54gにグルコース50gを加え、450mlの純水(DW)に溶かしたものを使用した。プラスチックチューブにMRS液体培地9ml、及び乳酸菌1mlを入れ、35℃で1〜2日間インキュベートしたものを遠心分離し、沈殿物に生理食塩水(0.85%NaCl) 1mlを加えた。得られた乳酸菌を、前記の乳タンパク質培地、又は大豆タンパク質培地に加えた。これを50mlプラスチックチューブに40mlずつ分注し、73℃のウォーターバスで30分低温殺菌した。しばらく置き、粗熱を取った後、35℃で2〜3日間インキュベートした。この上澄みをDPPHラジカル消去活性を調べるためのサンプルとし、サンプルと同量の20%エタノールを混合させたものを以下の測定のために使用した。
2−5 測定法:
MES(2-Morpholineethane sulfonic acid) 4.26gを純水(DW)に溶かし、NaOH溶液でpH 6.0に調整後、100mlにメスアップした。次いで下記表2に示すように、このMESバッファー300μlとDW300μl、50%エタノール(1200μl(サンプル0μl(ブランク))、1100μl(サンプル100μl)、900μl(サンプル300μl)、又は600μl(サンプル600μl))を混合し、最後にDPPH溶液(DPPH3.94mg/50mlエタノール)600μlを加え、2分後に、この溶液のAbs.520nmの吸光度を測定した。またDPPHラジカル活性は以下のように算出した。表2に、DPPHラジカル消去活性測定のために調製したブランク(No.1)及び試験溶液(No.2〜4)の組成を示す。表2中の数値の単位はμlである。
DPPHラジカル活性(%)
=(ブランクの吸光度−試験溶液の吸光度)/ブランクの吸光度 ×100
DPPHラジカル消去活性測定ではサンプルの量を100、300、600μlと変化させて各試験溶液のDPPHラジカル消去活性を測定した。乳酸菌を乳タンパク質培地で培養して得られた上澄みと大豆タンパク質培地で培養して得られた上澄みそれぞれの値を測定した。
各試験溶液のDPPHラジカル消去活性は、サンプル(発酵食品から分離した乳酸菌を乳タンパク質培地又は大豆タンパク質培地で培養した培養上澄み)100μl添加では活性がほとんど見られなかったが、サンプル600μl添加でDPPHラジカル消去活性が認められたものがあった。各種乳酸菌培養物のDPPHラジカル消去活性の測定値を表3に示す。
実施例3
ACE阻害活性能の検討
3−1 使用菌株
石川県の発酵食品から単離された表1に示す乳酸菌を用いた。
3−2 試薬及び機器
培養液、寒天培地、及びアネロパック・ケンキ(商品名)は実施例2と同じものを使用した。ACE阻害活性能測定における基質(N-Hippuryl-His-Leu hydrate)と酵素(ウサギ肺由来のアンジオテンシン変換酵素(ACE))はシグマアルドリッチジャパン社のものを使用した。
3−3 方法
菌の培養及び保存は、実施例2と同じ方法で行った。サンプル(乳酸菌を、乳タンパク質培地、又は大豆タンパク質培地で培養した上澄み)調製も、実施例2と同じ方法で行った。ACE阻害活性能の試験溶液にはこのサンプル(上澄み)を1/10倍希釈したものを使用した。
3−4 測定法:Nakanoらの方法(Biosci. Biotechnol. Biochem., 70, 1118-1126, 2006)を一部変更した蛍光法により行った。下記表4に示されるように、基質(N-Hippuryl-His-Leu hydrate 2mg/mlバッファー)50μlと試験溶液25μlを混合した中にACE溶液50μl(1.25mU)を10秒ごとに時間を正確に測りながら各試験溶液(C1及びS1)に順番に入れ、ボルテックスミキサーでよく混合した後、37℃で1時間反応させた。1時間後、0.3M NaOH 750μlを、各試験溶液(C1及びS1)に順番に10秒ごとに加え、ボルテックスミキサーでよく混合した。ACE溶液を添加しないC2及びS2についても0.3M NaOH 750μlを順番に10秒ごとに加え、ボルテックスミキサーでよく混合した。その後、OPA(O-フタルアルデヒド 20mg/mlメタノール)50μlを10秒ごとに各試験溶液に順番に加え、ボルテックスミキサーで混合し、10分間室温に放置した。10分後、3M HCl 100μlを10秒ごとに各試験溶液に順番に加え、ボルテックスミキサーで混合し、1時間以上室温に置き、蛍光光度340nmで蛍光強度(Ex:340nm、Em:455nm)を測定した。またACE阻害活性は、以下のように算出した。
ACE阻害活性(%)={(C1-C2)−(S1-S2)}/(C1-C2) ×100
C1(control 1)…ACEありコントロールの蛍光強度
C2(control 2)…ACEなしコントロールの蛍光強度
S1…ACEあり試験溶液の蛍光強度
S2…ACEなし試験溶液の蛍光強度
表4に、ACE阻害活性測定のために調製した各コントロール及び試験溶液の組成を示す。
乳タンパク質(動物性タンパク質)培地と大豆タンパク質(植物性タンパク質)培地を用いて乳酸発酵させた培地の上澄み(乳酸菌培養物)を用い、ACE阻害活性を測定した。表5に、各種乳酸菌培養物のACE阻害活性の測定結果(阻害活性(%))を示す。
表5に示すように大豆タンパク質培地での培養物は総じて高い活性を示したが、乳タンパク質培地での培養物は菌種によってばらつきがみられた。DPPHラジカル消去活性の結果も含め、これらの菌種間で両培地の違いによって活性の違いがみられたのは、菌種によってプロテアーゼの種類が異なるために、培地タンパク質の種類によって生成されるペプチドの種類が異なってくるからと思われた。
ACE阻害活性、DPPHラジカル消去活性の結果は培地に含まれるタンパク質に由来するペプチドが関与している可能性がある。しかし、他に乳酸菌自身が細胞内でACE阻害活性、DPPHラジカル消去活性をもつ物質を合成している可能性もある。そこで表6に示す組成のタンパク質を含まない最少培地を用いて乳酸菌培養を行い、乳酸菌自身の生産するACE阻害活性物質の有無について検討した。
図5に示すように最少培地を用いて検討した23株すべての乳酸菌培養物にACE阻害活性がみられた。乳タンパク質培地では活性がみられなかった菌種(Lactobacillus brevis AN2-2、AN3-5、AN4-5)でも最少培地で活性がみられたのは乳タンパク質培地には含まれない微量なミネラルやアミノ酸類が最少培地には含まれていることが関係しているのかもしれない。また全体として、最少培地において乳酸菌が生産するACE阻害活物質は非常に少ないか、あるいは活性が低いことが示唆された。
実施例4
γ−アミノ酪酸(GABA)生成能の検討
4−1 使用菌株
石川県の発酵食品から単離された表1に示す乳酸菌を用いた。
4−2 試薬、機器
培養液、寒天培地、及びアネロパック・ケンキ(商品名)は実施例2と同じものを使用した。グルタミン酸含有量測定には、ヤマサ醤油(株)のヤマサL−グルタミン酸測定キットIIを使用した。GABA含有量測定に用いたDTT(ジチオスレイトール)、2-ケトグルタル酸はナカライテスク(株)のものを使用した。またNADPはオリエンタル酵母(株)のもの、Gabaseはシグマ社のものを使用した。乳酸含有量測定はMerck Chemicals JapanのLactic Acid testを用いて行った。マイクロプレートはBio-Rad社のものを使用した。
4−3 方法
菌の培養及び保存は、実施例2と同じ方法で行った。
4−4 サンプル調製:プラスチックチューブに、L-グルタミン酸1%を含むMRS液体培地(それぞれpHを3、4、5、6に調整)9mlと乳酸菌1mlを入れ、35℃で1〜4日間インキュベートしたものを遠心分離し、その上清液を得た。得られた上清液について、L-グルタミン酸、GABA、及び乳酸量を以下のように測定した。
4−5 L−グルタミン酸含有量測定
ヤマサ醤油(株)のグルタミン酸測定キットを用いて行った。下記表7に示すようにマイクロプレートのwellに分注し、室温で20分間インキュベートした後、各反応溶液の600nmの吸光度(A、S、R及びB)を測定した。なおL−グルタミン酸量の計算式は以下の通りである。
L-グルタミン酸(g/L)=(A-B-R)/(S-R) ×100×希釈倍率
4−6 GABA含有量測定
Tsukataniらの方法(Analytica Chimica Acta,540,293-297,2005)を用いて行った。すなわち2.9gのTrisに300mlのDWを加え、Tris-HClバッファーを調製した。硫酸ナトリウム10.65g、DTT 0.15g、α-ケトグルタル酸20.45mgをTris-HClバッファー100mlに溶かした。この溶液10mlにNADP14.8mgを加え、ボルテックスミキサーでよく混合した(1)。
GABA10mg/ml DWを希釈し、8、6、4、2、1、0.8…と0.06mg/ml DWの標準液を作製した(2)。
マイクロプレート1、2列目のwellに(2)で作製した1mg/ml〜0.06mg/ml 濃度のGABA標準液を10μlずつ分注した。3〜10列目のwellに1/10倍希釈した乳酸菌サンプル10μlを分注した。マイクロプレート全てのwellに(1)で調製した溶液を80μl分注した。1〜10列目のwellにGabase 10μl(3μg)を分注した。11、12列目のwellにTris-HClバッファー20μlを分注した。各wellにトータル100μlの反応液が入ったマイクロプレートを軽くゆすって混合した後、30℃で3時間以上インキュベートした。その後、マイクロプレートリーダーで340nmの吸光度を測定し、検量線との比較によりサンプル中のGABA濃度を算出した。Gabaseはシグマ社製のものを使用した。その中味はPseudomonas fluorescens由来のγ-アミノ酪酸-グルタミン酸トランスアミナーゼとコハク酸セミアルデヒド脱水素酵素の粉末の混合物である。
4−7 乳酸含有量測定
Merck Chemicals Japanの乳酸測定キットを用いて行った。すなわち、キットに付属されている試験紙の先端部にサンプル溶液を染み込ませ、キットの測定部位にセットし、5分間反応させた。5分後、測定終了の合図音が鳴ると測定画面に乳酸量が表示されるのでその値を記録した。
表8に単離された乳酸菌培養物のGABA生産量(各種乳酸菌培養物のGABA含有量)を示した。GABA含有量は菌種によって大きな違いがみられた。4g/L以上GABAを生成するものもあれば、全く生成しないものもあった。これらの結果は乳酸菌のグルタミン酸脱炭酸酵素がGABA生成に密接に関与しており、菌種によって酵素を持つものとそうでないもの、あるいは酵素活性の強いものと弱いものがあることを示している。
実施例5
実施例1〜4の単離された乳酸菌の機能性評価に基づき、さらに詳しく追及するためには、菌種を絞り込む必要がある。そこで、DPPHラジカル消去活性、ACE阻害活性及びGABA産生能評価結果から、有能であると思われる表9に示した10種類の乳酸菌を選別し、以後の実験を行った。すなわち、乳酸菌の発酵度合いを調べる乳酸量測定に加え、グルタミン酸量測定、グルタミン酸からどれだけのGABAが生成されるかを調べるGABA量測定を行った。なお、前記成分の測定は培地のpHを変化させた条件下で経時的に行った。また、ACE阻害活性能についても再度検討を行った。
L−グルタミン酸量、GABA量、及び乳酸量測定用のサンプルはpH3〜6の4種類の液体培地(実施例2と同じ培養液)を用い、一方は一週間、毎日pHを調整し培養したもの(adjusted)、他方は初日のみpHを調整し、後は何もせずに培養したもの(not adjusted)の2通りで行った。これは培地中のpHが乳酸菌の発酵とGABA生成量にどのように影響するかを調べるためのものである。培養は、35℃で行い、測定は培養後、12時間、48時間、96時間について行った。培地中のL−グルタミン酸量、GABA量、及び乳酸量の測定は、実施例4と同様の方法で行った。
乳酸菌の生育度合いを示す乳酸量測定において、ほぼすべての乳酸菌の生成乳酸量はpHを毎日調整したものもそうでないものも大きな違いは見られなかった。培養時間も長くなるにつれ、比例的に乳酸量、GABA量は増加し、L−グルタミン酸量は減少していった。
一般的な乳酸菌の最適生育pHはpH4〜7であることから、今回の結果でもAN1-1、SB21(Lactobacillus buchneri)、SB101、SB105(Weissella hellenica)はpH4〜6でよく乳酸発酵を行い、盛んにGABAを生成した。しかしpH3という酸性条件下になるとAN1-1(Lactobacillus buchneri)とSB101、SB105(Weissella hellenica)はある程度の乳酸発酵をするものの、GABA生成はほとんど行わなかった。ただ、SB21(Lactobacillus buchneri)は同じ菌種でもAN1-1と差異があり、pH3でもGABA生成量は多かった。
一方、Lactobacillus brevis は総じてpH3という酸性条件下でも高いGABA生成量を示した(AN1-5、AN3-5、AN4-5、ANP7-6、SB109)。しかしながら、同じ菌種のLactobacillus brevis AN2-2はGABA生成はほとんど行わなかった。表9に示す10種類の乳酸菌をpH3〜6の培地中で培養した培養物の乳酸、L−グルタミン酸、及びGABA含有量を表10〜19に示す。
実施例6
ACE阻害活性能の再検討結果
実施例5で選別された10種類の乳酸菌(表9)を実施例3と同様の方法により培養し、培養後12時間、48時間、96時間のサンプル(培養上澄み)のACE阻害活性を、実施例3と同様の方法により測定した。
大豆タンパク質培地においては培養時間に関係なく総じて高い活性がみられたが、乳タンパク質培地では96時間培養したもの以外、活性はみられなかった。
図6及び図7に、10種類の乳酸菌の培地別の培養物のACE阻害活性の経時変化を示す。図6は、各乳酸菌を乳由来タンパク質培地で培養した場合の培養物のACE阻害活性の経時変化であり、図7は、各乳酸菌を大豆タンパク質培地で培養した場合の培養物のACE阻害活性の経時変化である。図6及び図7中、白のバーは培養12時間後、黒のバーは培養48時間後、灰色のバーは培養96時間後のサンプルの阻害活性を示す。
本発明の機能性を有する乳酸菌やその培養物は、機能性を有する発酵食品等の開発に非常に有用なものである。すなわち、このような乳酸菌やその培養物を使用することにより、ACE阻害活性能又は抗酸化作用を有する飲食品や医薬品、GABAを含有する組成物等を製造することができる。また、分離した乳酸菌をスターターとして接種して、かぶらずし、あじなれずし、ヨーグルト等の乳酸発酵食品の製造を行うことにより、おいしさとともに機能性が付与された乳酸発酵食品を提供することができる。さらには、該乳酸菌をスターターとして使用し、発酵食品を製造することで、発酵過程の管理が容易になるとともに、最終製品の安定性、機能性が増大する。

Claims (6)

  1. あじなれずしより分離されたLactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、あじなれずしより分離されたLactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)、かぶらずしより分離されたLactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、あじなれずしより分離されたLactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)、いか麹漬けより分離されたEnterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)、及びいか黒造りより分離されたWeissella hellenica SB105(受託番号:NITE P-1128)からなる群より選択される乳酸菌1種又は2種以上の培養物であって、下記1)〜3)の少なくも1つの機能を有することを特徴とする乳酸菌の培養物。
    1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、2)DPPHラジカル消去能、及び3)L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能
  2. あじなれずしより分離されたLactobacillus buchneri AN1-1(受託番号:NITE P-1123)、あじなれずしより分離されたLactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)、かぶらずしより分離されたLactobacillus sakei KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、あじなれずしより分離されたLactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)、いか麹漬けより分離されたEnterococcus faecalis SB103(受託番号:NITE P-1127)、及びいか黒造りより分離されたWeissella hellenica SB105(受託番号:NITE P-1128)からなる群より選択される乳酸菌であって、その培養物が下記1)〜3)の少なくも1つの機能を有することを特徴とする乳酸菌。
    1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、2)DPPHラジカル消去能、及び3)L−グルタミン酸からγ−アミノ酪酸への変換能
  3. Lactobacillus brevis AN1-5(受託番号:NITE P-1124)又はLactobacillus buchneri SB21(受託番号:NITE P-1139)であって、pH3付近の酸性条件培養下で乳酸発酵能を有する請求項に記載の乳酸菌。
  4. 請求項2又は3に記載の乳酸菌の少なくとも1種を、L−グルタミン酸を含有する培地で培養することを特徴とするγ−アミノ酪酸を含有する乳酸菌培養物の製造方法。
  5. 請求項に記載の培養物、又は請求項2又は3に記載の乳酸菌の、1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、若しくは2)DPPHラジカル消去能を有する、及び/又は3)γ−アミノ酪酸を含有する飲食品製造のための使用。
  6. 1)アンジオテンシン転換酵素阻害活性能、若しくは2)DPPHラジカル消去能が強化された、及び/又は3)γ−アミノ酪酸を含有する発酵食品の製造方法であって、請求項に記載の培養物、又は請求項2又は3に記載の乳酸菌を添加して発酵させる工程を含むことを特徴とする製造方法。
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