JP2013149506A - 積層型固体酸化物形燃料電池 - Google Patents

積層型固体酸化物形燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】積層型固体酸化物形燃料電池の繰返し昇降温の使用条件下で生じる熱応力による割れやクラックなどの構造欠陥を生じることなく、信頼性の高い積層型固体酸化物形燃料電池を得る。
【解決手段】積層型固体酸化物形燃料電池の頂点および辺であるコーナー部に面取り加工が施され、コーナー部が曲率半径Rの曲面状に面取り加工されており、積層型固体酸化物形燃料電池の最も短い辺の長さをTとしたときに、曲率半径Rは1/20T≦R≦1/2Tを満たす面取り加工を施した積層型固体酸化物形燃料電池。
【選択図】図7

Description

本発明は、積層型固体酸化物形燃料電池に関する。
燃料電池は、低炭素社会の創エネルギー技術として注目され、燃料電池自動車、家庭用コジェネレーションシステム、携帯機器用小型電源等、幅広い用途に向けて実用化が期待されている。燃料電池は様々な形式があるが、その中でも、固体酸化物形燃料電池はエネルギー変換効率が高く、また、無機全固体で構成されているため信頼性が高いといった利点を有する。電解質を介して、空気極と燃料極を対向配置したひとつの発電セルで得られる電圧は1V程度で非常に小さいため、従来から特許文献1に示すように、複数の発電セルをセパレータなどの電気伝導体を用いて電気的に直列接続し、得られる電圧、電力を高めて使用してきた。一方、特許文献2および3には、セパレータを用いないで複数の電解質、空気極および燃料極を単一の素子内に有し、インターコネクタにより電気的に並列接合する一体焼結型の積層型固体酸化物形燃料電池が開示されている。
特許文献4記載の積層型固体酸化物形燃料電池は、主としてセラミックで構成される素子であり、例えば、作動温度800℃で発電させるとすると、室温と800℃間での昇降温を繰り返すことにより、コーナー部に熱応力が集中し、応力が臨界点に達したとき、コーナー部を起点に割れやクラックを生じ、空気極側と燃料極側とにガス分離が困難になり発電ができなくなる不具合を生じていた。
一方、特許文献5には、プリント回路基板に実装されて使用されるセラミック電子部品において、プリント回路基板がたわむことによるセラミック電子部品への応力を吸収するために、セラミック電子部品のコーナー部を曲率半径Rの曲面状とし、さらに、端子電極の構造を工夫することにより、応力による割れやクラックを抑制する方法が開示されている。
国際公開2009/119771号公報 特開2003−297387号公報 特表2011−503807号公報 特開2011−34688号公報 特開2000−182879号公報
300℃〜900℃の高温で作動させる積層型固体酸化物形燃料電池において、熱応力による割れやクラックを抑制するために、小型化することはひとつの方法として有効である。しかしながら、積層型固体酸化物形燃料電池の作動時には、例えば、800℃の高温で発電している状態において、水などの液体が沸騰することにより飛散し、積層型固体酸化物形燃料電池にかかり、急激に冷却される場合も想定される。このとき、小型化だけで、積層型固体酸化物形燃料電池の割れやクラックを抑制することは困難である。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、積層型固体酸化物形燃料電池の熱応力による割れやクラックなどの構造欠陥を生じることなく、信頼性の高い積層型固体酸化物形燃料電池の構造を提案することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、六面体である積層型固体酸化物形燃料電池において、積層型固体酸化物形燃料電池の頂点および辺であるコーナー部に面取り加工が施されていることを特徴とする。これにより、300℃〜900℃の高温で発電を繰り返しても、割れやクラックを生じない積層型固体酸化物形燃料電池の提供が可能となる。
本発明の望ましい態様としては、積層型固体酸化物形燃料電池において、コーナー部が曲率半径Rの曲面状に面取り加工されており、積層型固体酸化物形燃料電池の最も短い辺の長さをTとしたときに、曲率半径Rは1/20T≦R≦1/2Tを満たすことが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、積層型固体酸化物形燃料電池において、コーナー部が45°でC面取り加工されており、積層型固体酸化物形燃料電池の最も短い辺の長さをTとしたときに、C面取り寸法Cは1/20T≦C≦1/2Tを満たすことが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、積層型固体酸化物形燃料電池において、曲率半径RまたはC面取り寸法Cと、燃料極及び空気極である内部電極の露出端面の長さが短い辺の寸法Tと、最外層側に形成された内部電極から積層型固体酸化物形燃料電池表面までの距離T”と、内部電極の露出していない側の端部と積層型固体酸化物形燃料電池表面までの距離L”と、対向する内部電極の露出端面に向かう方向で燃料極と空気極とが電解質層を介して重なり合う距離L’とが、L”≦1/2L’で、且つT”≦1/3Tで、且つL”>R(1−1/√2)で、且つT”>R(1−1/√2)の関係(このとき、RはCに置き換えることができる。)を満たすことが好ましい。これにより、燃料ガスと空気ガスの混合を防ぐことができ、積層型固体酸化物形燃料電池の発電性能低下を防止することが可能となる。
本発明は積層型固体酸化物形燃料電池の熱応力による割れやクラックを抑制することができる。
燃料電池の動作原理を説明する概略図である。 本発明に係る積層型固体酸化物形燃料電池の構造を示す図である。図2(a)は斜視図、図2(b)は図2(a)のA−A線に沿うA−A断面図、図2(c)は図2(a)のB−B線に沿うB−Bの断面図である。 本発明の実施形態1に係る積層型固体酸化物形燃料電池のA−A断面を示す概略図である。 本発明の実施形態1に係る積層型固体酸化物形燃料電池のB−B断面を示す概略図である。 本発明の実施形態2に係る積層型固体酸化物形燃料電池のA−A断面を示す概略図である。 本発明の実施形態3に係る積層型固体酸化物形燃料電池のB−B断面を示す概略図である。 本発明に係る積層型固体酸化物形燃料電池の製造工程を示すフローチャートである。 本発明に係る積層型固体酸化物形燃料電池の評価方法を説明する概略図である。
図1は、燃料電池の動作原理を説明する概略図である。図1を用いて、燃料電池の一般的な動作原理を説明する。燃料電池は、水の電気分解の逆の原理で、燃料の水素と酸素を電気化学的に反応させ、燃料のもつ化学的なエネルギーを直接電気エネルギーに変換する発電デバイスである。空気極では、酸素が外部回路から電子を受け取り、酸化物イオンとなって電解質を伝わって燃料極へ移動する。燃料極では、酸化物イオンと水素が反応して、電子を外部回路に放出する。これを化学反応式で示せば、
空気極:(1/2)O+2e→O2−・・・(1)
燃料極:O2−+H→HO+2e・・・(2)
全体:(1/2)O+H→HO・・・(3)
となる。なお、本発明に係る燃料電池は固体酸化物形燃料電池(以下、SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)という)であり、SOFCは、H以外に例えば、COも燃料として使用できる。
SOFCは、発電効率が他の燃料電池に比べ高いという特徴がある。一方、SOFCは、500℃〜1000℃の高温作動において、固体電解質のイオン伝導率が10−1Scm−1程度と低く、電流を十分に取り出すためには燃料極および空気極の電極面積の増加および固体電解質の薄膜化が必要とされている。そこで、本発明に係る積層型固体酸化物形燃料電池は、単位面積あたりの有効電極面積を従来の平板形および円筒形のSOFCと比較して大きくすることにより、大きな電流を取り出そうとするものである。このため、本発明に係る積層型固体酸化物形燃料電池は、電極(燃料極または空気極)と固体電解質とを、セパレータを介さず交互に積層して一体焼結した構造としている。このことにより、単位体積あたりの電極面積を増加させるとともに、小型化を図ることができる。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記の実施形態における構成要素は適宜組み合わせることが可能である。図面はあくまでも例示を目的としたものであって、必ずしも実寸法を示すものではない。図面をより明瞭にする目的またはある部分を目立たせる目的で、他の部分とは相対的に誇張された部分もある。また、実施形態と図面においてそれぞれ対応する部材には同一の符号を付してある。
<積層型固体酸化物形燃料電池1>
図2は、本発明の実施形態に係る積層型固体酸化物形燃料電池の構造を示す図である。図2(a)は斜視図、図2(b)は図2(a)のA−A線に沿うA−A断面図、図2(c)は図2(a)のB−B線に沿うB−Bの断面図である。積層型固体酸化物形燃料電池1は、複数の燃料極2と、複数の空気極3と、少なくとも燃料極2と空気極3との間に配置される電解質4と、隣接する電解質層同士の間に配置される仕切り部5を含む。本実施形態において、電解質4を介して、燃料極2と空気極3とが交互に2層ずつ積層されている。積層する燃料極2と空気極3の層数は、積層型固体酸化物形燃料電池1の求めら出力に応じて任意に変更することができる。
本実施形態において、燃料極2と、空気極3と、電解質4と、仕切り部5とは一体で構成されて積層型固体酸化物形燃料電池1となる。本実施形態において、積層型固体酸化物形燃料電池1は、複数層の燃料極2および複数層の空気極3をそれぞれ電気的に接続するため、また、積層型固体酸化物形燃料電池1で得られる出力を外部回路へ引き出すため、更には、積層型固体酸化物形燃料電池1を複数個用意し、直列若しくは並列接続するために、燃料極側外部電極6および空気極側外部電極7をさらに有する。このように、積層型固体酸化物形燃料電池1は、燃料極側外部電極6と空気極側外部電極7を含んでいる。
<燃料極2>
燃料極2は、電解質4との界面において、外部から供給された燃料(水素)が、電解質を透過してきた酸化物イオンと下記に示す反応を生じ、電子が生成する極である。
2−+H→HO+2e・・・(4)
本実施形態では、燃料極2は、水素を三相界面に到達させ、上記の式(4)に示す反応を促進するために、複数の気孔が連通するように形成された多孔質材料とされる。
本実施形態において、燃料極2は白金(以下、Ptという)とY安定化ZrO(以下、YSZという)のコンポジット材料(以下、Pt/YSZという)で構成される。その他、高温還元雰囲気中で電子伝導性を有し、触媒活性を示す材料が、燃料極2の材料として使用できる。このような材料としては、Pt、Ni、Co、Cuのなかから1種類もしくは2種類以上を用いた金属材料がある。これら金属材料のみで使用することも可能であるが、電極反応や触媒反応を促進するため、さらに、金属材料同士の凝集/焼結を抑制するために、酸化物イオン伝導体であるYSZ、Sc安定化ZrO(以下、ScSZという)、Gd添加CeO(以下、SDCという)、Sm添加CeO(以下、GDCという)等とコンポジット化して使用できる。
燃料極2、空気極3、電解質4が積層される方向における燃料極2の長さを、燃料極2の厚みとすると、該厚みは、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは20〜200μmである。燃料極2の厚みを上記の範囲とすることで、ガス拡散性が保たれ、高い発電性能が得られる。
<空気極3>
空気極3では、空気中の酸素が電解質4との界面(三相界面)に到達すると、燃料極側から移動してくる電子と酸素とが以下の式(5)のように反応する。
(1/2)O+2e→O2−・・・(5)
上記の式(5)に示す反応により生じた酸化物イオンは、電解質4中を移動する。本実施形態では、空気極3は、酸素を三相界面に到達させ、上記の式(5)に示す反応を促進するために、複数の気孔が連通するように形成された多孔質材料とされる。
本実施形態において、空気極3はPtとYSZのコンポジット材料で構成される。その他、高温酸化雰囲気中で電子伝導性を有し、触媒活性を示す材料が、空気極3の材料として使用できる。このような材料としては、Ag、(LaSr)CoO(以下、LSCという)、(LaSr)(CoFe)O(以下、LSCFという)、(LaSr)MnO(以下、LSMという)のなかから1種類もしくは2種類以上を用いた材料がある。これら材料のみで使用することも可能であるが、電極反応や触媒反応を促進するため、さらに、材料同士の凝集/焼結を抑制するために、酸化物イオン伝導体であるYSZ、Sc安定化ZrO(以下、ScSZという)、Gd添加CeO(以下、GDCという)、Sm添加CeO(以下、SDCという)等とコンポジット化して使用できる。
燃料極2、空気極3、電解質4が積層される方向における空気極3の長さを、空気極3の厚みとすると、該厚みは、好ましくは10〜1000μm、より好ましくは20〜200μmである。空気極3の厚みを上記の範囲とすることで、ガス拡散性が保たれ、高い発電性能が得られる。
<電解質4>
電解質4は、酸化物イオン輸率が0.96(96%)以上の緻密質のYSZ、ScSZ、GDC、SDC、または(LaSr)(GaMg)O(以下、LSGMともいう)が好ましい。
このような酸化物は、酸化物イオン輸率および酸化物イオン伝導性が高いため好ましい。なお、酸化物イオン輸率の上限は1である、すなわち、電気伝導の全てを酸化物イオンが担っていることが好ましいが、現在の技術では0.995程度である。
YSZとしては、イットリウム(Y)をジルコニア(ZrO)に3〜15モル%固溶させたものが好ましい。ScSZとしてはスカンジウム(Sc)を、ジルコニアに5〜10モル%固溶させたものが好ましい。SDCとしてはサマリウム(Sm)をセリア(CeO)に10〜20モル%固溶させたものが好ましい。GDCとしてはガドリニウム(Gd)をセリアに(CeO)に10〜20モル%固溶させたものが好ましい。LSGMとしては、(La1−XSr)(Ga1−YMg)Oにおいて、0.1≦X≦0.4、0.1≦Y≦0.4としたものが好ましい。
燃料極2、空気極3、電解質4が積層される方向における電解質4の長さを、電解質4の厚みとすると、該厚みは好ましくは1〜50μm、より好ましくは1〜10μmである。厚みを上記の範囲とすることで、電解質としての強度を確保でき、かつ発電性能を高く保つことができるという利点がある。
<仕切り部5>
上述したように、本実施形態において、仕切り部5は、積層する方向に隣接する電解質4同士の間であって、電解質4同士を接続する。燃料極2と空気極3の間で電子や気体の漏れが発生すると、積層型固体酸化物形燃料電池1の発電性能が低下する。このため、仕切り部5では、燃料極2と空気極3との間の電子およびガスの漏れを起こさないことが望ましい。
仕切り部5と電解質4とを同じ材料にすることで、積層型固体酸化物形燃料電池1の製造が容易になるという利点がある。なお、仕切り部5と電解質4とは異なる材料で構成してもよい。より電子の絶縁やガスタイトを確保しやすい材料を用いることによって、積層型固体酸化物形燃料電池1の性能低下をさらに効果的に抑制することも可能である。
仕切り部5に用いることのできる材料としては、ZrO、Al、SiO、MgOを用いることができる。特に、電解質4に用いるYSZ、ScSZ、SDC、GDC、またはLSGMが好ましい。
<燃料極側外部電極6、空気極側外部電極7>
本実施形態において、積層型固体酸化物形燃料電池1内に積層されている複数の燃料極2および複数の空気極3をそれぞれ電気的に接続するためには、燃料極側外部電極6と空気極側外部電極7が必要であり、燃料極側外部電極6と空気極側外部電極7を有することにより積層型固体酸化物形燃料電池1を直列および並列で接続ができ、出力される電圧、電力の向上が可能になる。燃料極側外部電極6は高温還元雰囲気、空気極側外部電極7は高温酸化雰囲気において電子伝導性を保つことのできる材料でなければならない。
燃料極側外部電極6と空気極側外部電極7に用いることのできる材料としては、貴金属の中でも融点が比較的低く、還元・酸化雰囲気で電気伝導性の優れたAgおよびAuが好ましい。燃料極側外部電極6と空気極側外部電極7は積層型固体酸化物形燃料電池1のコーナー部を面取り加工したあとに形成される。
<コーナー部面取り>
図3は、コーナー部にR面取り加工を施した実施形態1に係る積層型固体酸化物形燃料電池1のA−A断面を示す図である。図4は、コーナー部にR面取り加工を施した実施形態1に係る積層型固体酸化物形燃料電池1のB−B断面を示す図である。面取り加工が最外層に形成された燃料極2あるいは空気極3に達した場合、燃料ガスが最外層に形成された空気極3へ、あるいは空気が最外層に形成された燃料極2へ供給されてしまい、発電性能の低下を引き起こしてしまう。上記に鑑みて、最外層に形成された燃料極2及び空気極3に面取り加工が達しないように、面取り寸法Rを設定する必要がある。
上記を満たす面取り寸法Rは、積層型固体酸化物形燃料電池1の内部電極露出端面の積層方向の寸法Tと、最外層に形成された空気極2および燃料極3から積層型固体酸化物形燃料電池表面までの距離T”と、仕切り部5の寸法L”と、内部電極重なり寸法L’とが、L”≦1/2L’で、且つT”≦1/3Tで、且つL”>R(1−1/√2)で、且つT”>R(1−1/√2)の関係を満たすことが好ましい。
図5は、コーナー部にC面取り加工を施した実施形態2に係る積層型固体酸化物形燃料電池1のA−A断面を示す図である。図6は、コーナー部にC面取り加工を施した実施形態2に係る積層型固体酸化物形燃料電池1のB−B断面を示す図である。実施形態1のR面取り加工と同様にC面取り加工が最外層に形成された燃料極2あるいは空気極3に達した場合、燃料ガスが最外層に形成された空気極3へ、あるいは空気が最外層に形成された燃料極2へ供給されてしまい、発電性能の低下を引き起こしてしまう。上記に鑑みて、最外層に形成された燃料極2及び空気極3にC面取り加工が達しないように、面取り寸法Cを設定する必要がある。
上記を満たす面取り寸法Cは、積層型固体酸化物形燃料電池の内部電極露出端面の積層方向の寸法Tと、最外層に形成された空気極と燃料極から積層型固体酸化物形燃料電池表面までの距離T”と、仕切り部5の寸法L”と、内部電極重なり寸法L’とが、L”≦1/2L’で、且つT”≦1/3Tで、且つL”>C(1−1/√2)で、且つT”>C(1−1/√2)の関係を満たすことが好ましい。
<積層型固体酸化物形燃料電池の製造方法>
本実施形態に係る積層型固体酸化物形燃料電池を製造する方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用すればよい。以下では、電解質をシート化して電解質グリーンシートを作製し、燃料極用および空気極用の電極および仕切り部はスクリーン印刷を用いて電解質グリーンシート上に形成し、それらを積層して製造する方法について具体的に説明する。
図7は、本実施形態に係る積層型固体酸化物形燃料電池の製造工程を示すフローチャートである。図2(a)〜(c)に示す電解質4を形成するための電解質グリーンシートに、燃料極2および空気極3を形成するための電極層、および仕切り部5を形成するための余白層を形成し、シートを作製する。次ぎに、切断後に燃料極2および空気極3が交互に異なる端面に露出するようにこのシートを複数枚積層してシート積層体を形成する。次ぎに、このシート積層体を積層型固体酸化物形燃料電池の1部品単位の寸法に切断する。そして、バレル研磨によりコーナー部にR加工を施し、脱バイ、焼成する。燃料極及び空気極である内部電極の内部引き込みなどの不具合を解決するために必要に応じて再度バレル研磨を行い、燃料極側外部電極6および空気極側外部電極7の形成を行うことにより、積層型固体酸化物形燃料電池1が作製する。
<スラリーの作製>
まず、電解質4を形成するための電解質用スラリーと燃料極2および空気極3を形成するための電極用スラリーとを作製する。電解質用スラリーは、電解質4の原料となる粉末を粉砕用ボールとともにプラスチック製ポットに入れ、これに溶剤、バインダーおよび可塑剤を添加して10〜20時間混合して得られる。溶剤、バインダーおよび可塑剤の含有量には制限はないが、例えば、溶剤の含有量は10質量%以上50質量%以下、バインダーの含有量は1質量%以上10質量%以下程度の範囲で設定することができる。スラリー中には、必要に応じて分散剤等を10質量%以下の範囲で含有させてもよい。これにより、シート形成性、構造保持性、乾燥性を確保できる。
電極用スラリーは、導電性粉末のネットワークを阻害することなく、電子伝導を保つため、導電性粉末に対し10〜80vol%の空隙形成材を混合し、これに溶剤およびバインダーを添加して作製する。溶剤およびバインダーの含有量には制限はないが、例えば、溶剤の含有量は10質量%以上50質量%以下、バインダーの含有量は1質量%以上10質量%以下程度の範囲で設定することができる。これにより、印刷性、構造保持性、乾燥性を確保できる。スラリー中には、必要に応じて、導電性粉末の分散性を向上させるために分散剤等を10質量%以下の範囲で含有させてもよい。これらの、原料粉末、溶剤等を三本ロールにより混合し、電極用スラリーを得る。
電解質用スラリーおよび電極用スラリーの作製に用いる溶剤としては、例えば、アセトン、トルエン、イソブチルアルコール、メチルエチルケトン、ターピネオール等の有機溶剤を用いることができる。また、バインダーとしては、例えば、ブチラール系樹脂、アクリル系樹脂等を用いることができる。電解質の原料となる粉末は、上述した電解質材料の粉末であり、導電性粉末は、上述した燃料極材料および空気極材料の粉末である。本実施形態では、電解質の原料粉末としてYSZ粉末を用い、導電性粉末として燃料極、空気極ともにPt/YSZの粉末を用いた。また、電極用スラリーに用いる空隙形成材には、例えば、アクリル系のポリマー等、焼成時に消失する材料を用いることができる。このように、焼成時に消失する空隙形成材を用いることにより、多孔質の燃料極や空気極を容易に作製できる。
<グリーンシートの作製>
電解質用スラリーおよび電極用スラリーが得られたら、電解質用スラリーを用いて電解質グリーンシートを作製する。例えば、電解質スラリーをドクターブレード法等で塗布したあと乾燥させることで、厚さ1μmから100μmの電解質グリーンシートを作製する。
<電極層の形成>
次に、得られた電解質グリーンシート上に、燃料極用または空気極用の電極層を形成する。例えば、電極用スラリーをスクリーン印刷等でパターン印刷したあと乾燥させて、厚さ10μmから200μmの電極層を形成する。
<余白層の形成>
次に、本実施形態においては、仕切り部5となる余白層に電解質用スラリーを用いて上述した電極層を形成するスクリーン印刷の逆パターンで形成する。なお、仕切り部5を、電解質4とは異なる材料で構成する場合、余白用スラリーを電解質用スラリーとは別途に作製する。この場合、余白用スラリーは、仕切り部5の原料粉末粒子に溶剤及びバインダーを添加して作製する。溶剤及びバインダーの含有量には制限はないが、例えば、溶剤の含有量は10質量%以上50質量%以下、バインダーの含有量は1質量%以上10質量%以下程度の範囲で設定することができる。これにより、印刷性、構造保持性、乾燥性を確保できる。余白用スラリーの作製に使用する溶剤及びバインダーは、固体電解質用スラリーの作製に使用するものと同じであってよい。
<積層体の作製>
このようにして、電解質グリーンシート上に電極層および余白層を形成したシートが作製される。ここで、シートは複数枚作製される。次に、このシートを、図2(a)〜(c)に示すように、燃料極2と空気極3が交互に重なるように積層する。また、燃料極2と空気極3がシート積層体を切断後に異なる端面に露出するように積層する。
<積層体の加圧と切断>
次に、積層方向に向かって加圧する。これによって、複数のシートを圧着して一体化させる。その後、部品単位、すなわち、ひとつの積層型固体酸化物形燃料電池1の一単位でシート積層体を切断する。これによって部品単位積層体を得る。
<面取り加工(バレル研磨)>
次に、切断後の部品単位積層体を、研磨ボールとともに、プラスチック製ポットに入れ、水を添加して0.1〜5時間混合し、コーナー部がR加工された部品単位積層体を得る。研磨ボールには、例えば、ジルコニア、アルミナおよびシリカなどを用いることができる。ポットの回転時間および回転速度は研磨量に応じて選択すれば良い。C面取り加工は、研磨紙などを用いて加工すれば良い。
次に、上記切断後のコーナー部にR加工を施された部品単位積層体に、脱バインダー処理を施す。その後、焼成することにより、部品単位積層体の焼結体が得られる。部品単位積層体の焼結体は、燃料極、空気極、電解質、仕切り部が一体となっている。
<脱バイと焼成>
部品単位積層体の脱バインダー処理及び焼成の条件は、使用する電解質の材料や電極層の材料で異なるが、例えば、Pt/YSZの粒子を電極層として部品単位積層体を焼成する場合、部品単位積層体を大気中で400℃から600℃で1時間から2時間加熱保持して部品単位積層体からバインダーを除去する。その後、大気中で1350℃から1500℃で3時間から5時間、部品単位積層体を焼成し、焼結体を得る。これによって、図2に示すように、燃料極2と電解質4と空気極3とが交互に積層され、かつこれらと隣接する電解質4の間に設けられる仕切り部5とが焼結によって一体化された積層構造を有する積層型固体酸化物形燃料電池1が完成する。
<バレル研磨>
次に、一体焼結された積層型固体酸化物形燃料電池1の燃料極2や空気極3が電解質4より焼結収縮率が大きく、積層型固体酸化物形燃料電池1の端部に燃料極2および空気極3の電極が露出していない場合、積層型固体酸化物形燃料電池1を、研磨ボールとともに、プラスチック製ポットに入れ、水を添加して1〜5時間混合し、燃料極2および空気極3の電極端部が露出した積層型固体酸化物形燃料電池1を得る。研磨ボールには、例えば、ジルコニア、アルミナおよびシリカなどを用いることができる。
<外部電極形成と焼付け>
次に、燃料極側外部電極6と空気極側外部電極7は、積層型固体酸化物形燃料電池1の燃料極2および空気極3が露出する焼結体露出端部に形成する。外部電極用の材料ペーストは、例えば、上述した電極用スラリーを使用することも出来るが、貴金属であるAgおよびAuのいずれか1種類または2種類の材料からなる材料ペーストを使用する。この材料ペーストを積層型固体酸化物形燃料電池1の焼結体の両側に塗布して、乾燥、脱バインダー処理を施した後、所定の条件で焼成する。これによって、複数の燃料極2と複数の空気極3のそれぞれを電気的に接続するための外部電極が焼結によって一体化されて、燃料極側外部電極6と空気極側外部電極7を有する積層型固体酸化物形燃料電池1が完成する。本実施形態に係る積層型固体酸化物形燃料電池の製造方法によれば、製造プロセスが比較的簡単であり、また、小さいデバイスも製造しやすいので、低コストで小型の積層型固体酸化物形燃料電池1を作製できる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
まず、積層型固体酸化物形燃料電池を製造するための材料を準備した。
電解質4を構成する材料の原料として、8モル%Y安定化ZrO(以下、8YSZという)粉末を準備した。8YSZ粉末:100質量部と、バインダー樹脂としてのブチラール:10質量部と、可塑剤としてのベンジルブチルフタレート(BBP):5質量部と、溶媒としてのアルコール:80質量部とをボールミルで混合・分散してペースト化し、電解質用ペーストを得た。得られた電解質用ペーストを用いて、ドクターブレード法により、焼成後の厚みが15μmとなるように電解質グリーンシートを形成した。
次いで、燃料極2と空気極3を構成する材料の原料として、Ptと8YSZとが50:50の体積比で混合されたPt/8YSZ混合粉末を準備した。Pt/8YSZ原料粉末:100質量部と、空隙形成剤としてのアクリルビーズ:17質量部と、バインダー樹脂としてのブチラール:10質量部と、可塑剤としてのベンジルブチルフタレート(BBP):5質量部と、溶媒としてのアルコール:80質量部とを三本ロールで混合・分散して電極用ペーストを得た。得られた電極用ペーストを用いて、スクリーン印刷により電解質グリーンシート上に、焼成後の厚みが50μmとなるように燃料極2及び空気極3となる電極層を形成した。仕切り部5は上述した電解質用ペーストを電極印刷パターンに対して反転したパターンでスクリーン印刷により形成した。
次いで、電極層が印刷された電解質グリーンシートを4枚交互に積層し、2つの燃料極2、2つの空気極3を有する積層型固体酸化物形燃料電池のシート積層体を得た。シート積層体は温度:80℃、圧力:10Pa、保持時間:30minでプレスした。
次いで、上記で作製したシート積層体を、焼成後の寸法で10mm×7mmのサイズおよび4.5mm×3.2mmサイズとなるように切り出し、部品単位積層体を得た。このとき、部品単位積層体は焼成後5mmおよび3mmの厚みになるよう最外層の電解質グリーンシートの厚さを調整した。
得られた部品単位積層体を、それぞれ表1に示す時間で、φ5mmのアルミナボールを研磨ボールとして用い、回転数100rpmでバレル研磨を行い、コーナー部が曲面加工された部品単位積層体を得た。また、C面取り加工は研磨紙を用いて行った。
得られた部品単位積層体を、500℃で脱バインダー処理し、次いで、焼成温度:1400℃、保持時間:5時間、焼成雰囲気:大気中の条件で焼成し、10mm×7mm×5mmサイズおよび4.5mm×3.2mm×3mmサイズの積層型固体酸化物形燃料電池1の焼結体を得た。焼結体の各部の寸法は、それぞれ図3〜4に示すように、焼成後の積層型固体酸化物形燃料電池1のコーナー部のR面取り寸法R、あるいは図5〜6に示すように、C面取り寸法Cとし、最外層側に形成された空気極若しくは燃料極から積層型固体酸化物形燃料電池1の表面までの距離をT”とし、仕切り部の長さをL”とした。
燃料極側外部電極6、空気極側外部電極7として、Agと8YSZが60:40の体積比で混合されたAg/8YSZ混合粉末を準備した。Ag/8YSZ原料粉末:100質量部と、空隙形成剤としてのアクリルビーズ:15質量部と、バインダー樹脂としてのブチラール:5質量部と、可塑剤としてのアジピン酸ジオクチル(DOA):2質量部と、溶媒としてのアルコール:80質量部とを三本ロールで混合・分散して外部電極用ペーストを得た。得られた外部電極用ペーストを燃料極2および空気極3が露出した内部電極露出端面に塗布し、850℃で焼成し、焼付けを行った。
<発電試験>
図8は、本実施形態に係る積層型固体酸化物形燃料電池の評価方法を説明する図である。上述した本実施形態に係る積層型固体酸化物形燃料電池1は、燃料極側外部電極6と空気極側外部電極7とをそれぞれ異なる空間に配置して作動させる。積層型固体酸化物形燃料電池1は、供試体支持板50に取り付けられる。そして、供試体支持板50には、燃料極側カバー52および空気極側カバー54が取り付けられる。燃料極側カバー52と空気極側カバー54とは、供試体支持板50によって仕切られる。燃料極側が燃料供給空間51、空気極側がが酸素供給空間53となる。また、積層型固体酸化物形燃料電池1の外側にはヒーター55が配置され、発電試験時にはヒーター55によって積層型固体酸化物形燃料電池1が加熱される。供試体支持板50に取り付けられた積層型固体酸化物形燃料電池1の燃料極側外部電極6と空気極側外部電極7から白金リード線56を延長し、計測器57に接続し、外部電極間の電圧V及び電流Iを測定する。
試験前に、まず、毎分50mlのHeガスを流通させて積層型固体酸化物形燃料電池1の雰囲気温度を900℃まで上昇させ、積層型固体酸化物形燃料電池1と供試体支持板50の接合部、及び積層型固体酸化物形燃料電池1の燃料極側をガスシールした。燃料極側のガス組成を四重極型ガス質量分析器でモニタリングし、ガスシール性の確認のため、空気極側からの漏れが100ppm以下になることを確認した後、積層型固体酸化物形燃料電池1の雰囲気温度(作動温度に等しい)を試験温度の800℃に低下させた。試験温度に到達した後、燃料極側には燃料として水素を毎分100mlで供給し、空気極側には空気を毎分100mlで供給し、積層型固体酸化物形燃料電池1の外部電極間(燃料極−空気極間)電圧V及び電流Iを測定した。
積層型固体酸化物形燃料電池1の外部電極に白金リード線56を接続し、燃料極−空気極間電圧V及び電流Iを計測器57により計測した。計測器57は、ポテンショガルバノスタットを用いた。実際の測定では、開回路起電力(電流を取り出さない状態における起電力)を始めに測定し、その後、一定電流の条件の下、電流値を段階的に増加させ、各電流値における電圧を測定した。試験温度は、800℃として、上述で得られた電流Iと電圧Vを乗じた電力Pが初期値で最大となる値を測定した。本実施例の形状、積層数、材料において、この初期値が10mm×7mm×5mmサイズチップでは10mW以上を、4.5mm×3.2mm×3mmサイズチップでは5mW以上を基準とし、それ以上の値を示せば積層型固体酸化物形燃料電池にクラック等の構造欠陥がなく作製できていると判断した。また、昇降温の繰り返しによる積層型固体酸化物形燃料電池の割れやクラック発生を評価するため、上述初期の最大電力と10回および100回発電試験を繰返したあとの800℃での最大電力をそれぞれ測定し比較した。10回の繰返しにおいて、最大電力の低下が0.98(2%低下)までを許容値とし、100回の繰返しにおいて0.95(5%低下)までを許容値とし、評価基準とした。この評価基準は、3650回繰返し発電において20%以内の低下を想定しており、暫定的な評価基準としたものである。
試験に供する積層型固体酸化物形燃料電池は10mm×7mm×5mmサイズのものを使用して、コーナー部の面取り加工を施していない試料番号1、ならびに、コーナー部のR加工の大きさを変更した試料番号2〜6を得た。また、コーナー部のC面加工の大きさを変更した試料番号7〜11を得た。さらに、コーナー部のR加工の大きさを一定にして最外層側に形成された内部電極から積層型固体酸化物形燃料電池表面までの距離T”又は、内部電極の露出していない側の端部と積層型固体酸化物形燃料電池表面までの距離L”を変更した試料番号12〜15を得た。さらに、積層型固体酸化物形燃料電池に4.5mm×3.2mm×3mmサイズのものを使用して、コーナー部のR加工の大きさを変更した試料番号16〜20を得た。得られた試料を使用して繰り返し発電を行った結果を表1に示した。
Figure 2013149506

表1より、比較例1(資料番号1)では、初期性能は11.2mWと十分高い出力を得られたが、室温と800℃間の昇降温の繰返しをすることにより、コーナー部を起点としたクラックが発生し、21回昇降温を繰り返した時点で割れを生じ、発電不能になることが確認された。
比較例2(資料番号2)では、比較例1(資料番号1)と同様に初期性能は10.9mWと十分高い出力を得られたが、54回昇降温を繰り返した時点で割れを生じ、発電不能になることが確認された。
比較例3(資料番号7)では、比較例1(資料番号1)と同様に初期性能は11.0mWと十分高い出力を得られたが、35回昇降温を繰り返した時点で割れを生じ、発電不能になることが確認された。
比較例4(資料番号13)では、初期性能が8.5mWと最大出力の基準値である10mWが得られなかった。これは曲面加工が燃料極及び空気極である内部電極の露出していない側の端部まで達し、両端の電極が発電に寄与できていないためであることが確認された。
比較例5(資料番号15)では、内部電極積層部が狭く、内部電極へのガスの拡散が不能となり、電気出力が得られなかった。
比較例6(資料番号16)では、比較例2(試料番号2)と同様に、初期性能は十分高い出力を得られたが、84回昇降温を繰り返した時点で割れを生じ、発電不能になることが確認された。
実施例1〜4(資料番号3〜6)および比較例2(資料番号2)から積層型固体酸化物形燃料電池の最も短い辺の長さをTとしたときに、曲率半径Rは1/20T≦R≦1/2Tを満たすことにより初期性能も十分高い出力が得られ、繰返し性能も基準値を満たすことが確認された。
実施例5〜8(試料番号8〜11)および比較例3(資料番号7)から積層型固体酸化物形燃料電池の最も短い辺の長さをTとしたときに、C面取り寸法Cは1/20T≦C≦1/2Tを満たすことにより初期性能も十分高い出力が得られ、繰返し性能も基準値を満たすことが確認された
実施例4(試料番号6)、実施例9(試料番号12)および比較例4(資料番号13)から曲率半径Rと、内部電極の露出していない側の端部と積層型固体酸化物形燃料電池表面までの距離L”と、対向する前記内部電極の露出端面に向かう方向で燃料極と空気極とが電解質層を介して重なり合う距離L’とが、L”≦1/2L’で、且つL”>R(1−1/√2)の関係を満たすことにより初期性能も十分高い出力が得られ、繰返し性能も基準値を満たすことが確認された。
実施例4(試料番号6)、実施例10(試料番号14)および比較例4(資料番号13)から曲率半径Rと、燃料極及び空気極である内部電極の露出端面の長さが短い辺の寸法Tと、最外層側に形成された内部電極から積層型固体酸化物形燃料電池表面までの距離T”とが、T”≦1/3Tで、且つT”>R(1−1/√2)の関係を満たすことにより初期性能も十分高い出力が得られ、繰返し性能も基準値を満たすことが確認された。
実施例11〜14(資料番号17〜20)および比較例5(資料番号16)から積層型固体酸化物形燃料電池のサイズを変更しても積層型固体酸化物形燃料電池の最も短い辺の長さをTとしたときに、曲率半径Rは1/20T≦R≦1/2Tを満たすことにより初期性能も十分高い出力が得られ、繰返し性能も基準値を満たすことが確認された。
以上のように、本発明に係る積層型固体酸化物形燃料電池は従来の固体酸化物形燃料電池を小型化するとともに、高い電力密度を得ることに有用である。また、繰返し昇降温の使用条件下で生じる熱応力による割れやクラックなどの構造欠陥を生じることなく、信頼性の高いため、本発明に係る積層型固体酸化物形燃料電池を使用する発電モジュールおよびそれを搭載するファン付き赤外線ストーブ、小型給湯器、ビルトインコンロなどのガス器具に使用することができる。
1 積層型固体酸化物形燃料電池
2 燃料極
3 空気極
4 電解質
5 仕切り部
6 燃料極側外部電極
7 空気極側外部電極

Claims (4)

  1. 六面体である積層型固体酸化物形燃料電池において、
    前記積層型固体酸化物形燃料電池の頂点および辺であるコーナー部に面取り加工が施されていることを特徴とする積層型固体酸化物形燃料電池。
  2. 前記積層型固体酸化物形燃料電池において、コーナー部が曲率半径Rの曲面状に面取り加工されており、
    前記積層型固体酸化物形燃料電池の最も短い辺の長さをTとしたときに、曲率半径Rは1/20T≦R≦1/2Tを満たすことを特徴とする請求項1記載の積層型固体酸化物形燃料電池。
  3. 前記積層型固体酸化物形燃料電池において、コーナー部が略45°でC面取り加工されており、
    前記積層型固体酸化物形燃料電池の最も短い辺の長さをTとしたときに、C面取り寸法Cは1/20T≦C≦1/2Tを満たすことを特徴とする請求項1記載の積層型固体酸化物形燃料電池。
  4. 前記積層型固体酸化物形燃料電池において、前記曲率半径R又は前記C面取り寸法Cと、燃料極及び空気極である内部電極の露出端面の長さが短い辺の寸法Tと、最外層側に形成された前記内部電極から積層型固体酸化物形燃料電池表面までの距離T”と、前記内部電極の露出していない側の端部と積層型固体酸化物形燃料電池表面までの距離L”と、対向する前記内部電極の露出端面に向かう方向で燃料極と空気極とが電解質層を介して重なり合う距離L’とが、L”≦1/2L’で、且つT”≦1/3Tで、且つL”>R(1−1/√2)で、且つT”>R(1−1/√2)の関係(このとき、RはCに置き換えることができる。)を満たすことを特徴とする請求項1〜3記載の積層型固体酸化物形燃料電池。
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