JP2013147731A - 溶融塩電解による金属の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】2種類以上の金属元素を含む処理対象物に含まれる金属元素を溶融塩中に溶解させる工程と、前記金属元素が溶解した溶融塩中に一対の電極部材を設け、該電極部材における電位を所定の値に制御することにより、電極部材の一方に、溶融塩中に存在する特定の金属を析出又は合金化させる工程と、を備えることを特徴とする溶融塩電解による金属の製造方法。
【選択図】図1
Description
例えば、タンタル(Ta)は主にタンタルコンデンサに利用されており、タンタルコンデンサスクラップから回収することができる。具体的には、酸化処理、磁力選別、篩分け、流水分離、粉砕、篩分け、リーチング、酸化処理、還元処理、リーチングというプロセスを経て回収されている(非特許文献1、319頁〜326頁参照)。
このように従来の金属の回収技術では処理コストがかかる、エネルギーロスが大きい、廃棄物が多い、環境負荷が大きい等の問題がある。また、費用面や技術的な問題から単体として再生されない金属もある。
(1)2種類以上の金属元素を含む処理対象物に含まれる金属元素を溶融塩中に溶解させる工程と、
前記金属元素が溶解した溶融塩中に一対の電極部材を設け、該電極部材における電位を所定の値に制御することにより、電極部材の一方に、溶融塩中に存在する特定の金属を析出又は合金化させる工程と、
を備えることを特徴とする溶融塩電解による金属の製造方法。
(2)前記特定の金属を析出又は合金化させる工程において、溶融塩中の前記特定の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差が0.05V以上となるように前記溶融塩を選択することを特徴とする上記(1)に記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(3)前記特定の金属を析出又は合金化させる工程において、前記電極部材における電位を所定の値に制御し、前記溶融塩中の前記特定の金属元素を選択的に析出又は合金化させることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(4)前記処理対象物は、遷移金属又は希土類金属を含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(5)前記処理対象物は、V、Nb、Mo、Ti、Ta、Zr、及びHfからなる群より選ばれる1種類以上の金属を含むことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(6)前記処理対象物は、Sr及び/又はBaを含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(7)前記処理対象物は、Zn、Cd、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBiからなる群より選ばれる1種類以上の金属を含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(8)前記処理対象物に含まれる金属元素を溶融塩中に溶解させる工程において、
化学的手法により前記金属を前記溶融塩中に溶解させることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(9)前記処理対象物に含まれる金属元素を溶融塩中に溶解させる工程において、
前記溶融塩中に、陰極と、前記処理対象物を含む陽極材料からなる陽極とを設け、該陽極における電位を所定の値に制御することにより、前記処理対象物から制御した電位に応じた金属元素を溶融塩中に溶解させることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(10)前記処理対象物に含まれる金属元素を溶融塩中に溶解させる工程において、前記溶融塩中の前記特定の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差が0.05V以上となるように前記溶融塩を選択することを特徴とする上記(9)に記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(11)前記処理対象物に含まれる金属元素を溶融塩中に溶解させる工程において、前記陽極における電位を所定の値に制御し、前記特定の金属元素を選択的に溶融塩中に溶解させることを特徴とする上記(9)又は(10)に記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(12)前記処理対象物に含まれる金属元素を溶融塩中に溶解させる工程において、1種類もしくは2種類以上の前記特定の金属を前記溶融塩中に溶解させることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(13)前記析出又は合金化させる特定の金属が遷移金属であることを特徴とする上記(1)〜(5)、(8)〜(11)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(14)前記特定の金属が希土類金属であることを特徴とする上記(1)〜(4)、(8)〜(11)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(15)前記析出又は合金化させる特定の金属がV、Nb、Mo、Ti、Ta、Zr、又はHfであることを特徴とする上記(1)〜(5)、(8)〜(11)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(16)前記析出又は合金化させる特定の金属がSr又はBaであることを特徴とする上記(1)〜(3)、(6)、(8)〜(11)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(17)前記析出又は合金化させる特定の金属がZn、Cd、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、又はBiであることを特徴とする上記(1)〜(3)、(7)〜(11)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(18)前記溶融塩として塩化物系またはフッ化物系の溶融塩を用いることを特徴とする上記(1)〜(17)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(19)前記溶融塩として塩化物系の溶融塩とフッ化物系の溶融塩とを混合した溶融塩を用いることを特徴とする上記(1)〜(17)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(20)前記処理対象物は、粒状又は粉末状であることを特徴とする上記(1)〜(19)のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(21)前記粒状又は粉末状の前記処理対象物を押し固めて前記陽極とすることを特徴とする上記(20)に記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
(22)2種類以上の金属元素を含む処理対象物から特定の金属を溶融塩電解により製造する方法であって、
溶融塩中に陰極と、前記処理対象物を含む陽極材料からなる陽極とを設け、該陽極における電位を所定の値に制御することにより、前記処理対象物から制御した電位に応じた金属元素を溶融塩中に溶解させることで特定の金属を陽極に残留させることを特徴とする
溶融塩電解による金属の製造方法。
(23)前記溶融塩中に前記処理対象物から金属元素を溶解させる工程において、前記溶融塩中の前記特定の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差が0.05V以上となるように前記溶融塩を選択することを特徴とする上記(22)に記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
処理対象物に含まれる特定の金属を溶融塩中に溶解させる方法としては、例えば化学的手法により溶解させる方法が挙げられる。具体的には、処理対象物を粉砕して粒状、粉状にし、これらと塩とを混合して加熱することにより、処理対象物に含まれる特定の金属を溶融塩中に溶解させることができる。また、処理対象物を溶融塩に投入して溶解させてもよい。
陽極に負荷する電位は、後述するネルンストの式により計算することができる。
処理対象物に特定の金属が1種類のみ含まれている場合には、前述のように当該特定の金属を溶解させた後に析出工程を行って目的の金属を得る。また、処理対象物に目的となる特定の金属が2種類以上含まれている場合には、そのうちの1種類のみを溶融塩中に溶解させ、続けて析出工程を行い、その後に、再度溶解工程を行うことにより残りの種類の特定の金属を溶融塩に溶解させても良い。なおこの場合には、最初の溶解工程を経た後の処理対象物を当該溶解工程に用いた溶融塩とは別の溶融塩に移して溶解工程を行うことによって、残りの種類の特定の金属を溶解させても良い。
処理対象物に含まれている2種類以上の特定の金属を溶融塩中に2種類以上溶解させた場合には、その後に行う析出工程において、溶融塩中に存在する特定の金属を1種類ずつ電極材料に析出又は合金化させることで、所望の特定の金属を製造することができる。この場合には、1種類の特定の金属を電極材料に析出又は合金化させた後に、電極材料を交換して、該電極材料に溶融塩中に溶解している残りの特定の金属を析出又は合金化させればよい。
また、後述するように、本プロセスと全く逆の考え方で製錬することも可能である。すなわち、対象処理物を陽極とし、不純物となる金属元素のみを溶融塩中に溶解させるというものである。この場合も、陽極における電位を制御することで、特定の金属が陽極に残留し、不純物元素が溶解するといった現象を発生させる。これにより陽極に特定の金属が得られる。
具体的には、前記特定の金属を析出又は合金化させる工程において、溶融塩中の前記特定の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差が0.05V以上となるように前記溶融塩を選択することが好ましい。溶融塩中の前記特定の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差は、0.1V以上とすることがより好ましく、0.25V以上とすることが更に好ましい。
このように、前記特定の金属を析出もしくは合金化させる工程においては、前記電極部材における電位を所定の値に制御し、前記溶融塩中の前記特定の金属元素を選択的に析出又は合金化させることが好ましい。
例えば、特定の金属としてモリブデンが溶解して4価のモリブデン(Mo)イオン(以下ではMo(IV)と表す)となっている溶融塩からMo単体を析出させる電位は次の式により求めることができる。
なお、上記式(1)において、E0 Moは標準電位を、Rは気体定数を、Tは絶対温度を、Fはファラデー数を、aMo(IV)はMo(IV)イオンの活量を、aMo(0)はMo単体の活量を、それぞれ意味する。
EMo=E0 Mo + RT/3F・lnaMo(IV)
=E0 Mo + RT/3F・ln(γMo(IV)・CMo(IV)) ・・・式(2)
EMo=E0’ Mo+ RT/3F・lnCMo(IV) ・・・式(3)
なお、上記式(3)において、CMo(IV)は4価のMoイオンの濃度を、E0’ Moは式量電極電位(ここでは、E0 Mo+RT/3F・lnγMo(IV)と等しい)をそれぞれ意味する。
また、モリブデンを合金として析出させる場合にも同様にして計算することができる。前記の陰極にモリブデンを析出もしくは合金化させるプロセスでは、このモリブデン単体もしくはモリブデン合金の析出電位の値を見て、他の金属の単体もしくはその合金の析出電位と充分な電位の差が得られるように溶融塩や陰極材料の選定を行い、モリブデン単体として析出させるか又はモリブデン合金として析出させるかを決定する。
操業における電位は、電極の大きさや位置関係によって変わってくるため、条件出しにより基準となる電位を決めた後に、上記の方法で求めた電位の値と序列に基づいて、各ステップにおいて制御する電位の値を決定する。
すなわち、本発明の溶融塩電解による金属の製造方法は、2種類以上の金属元素を含む処理対象物から特定の金属を溶融塩電解により製造する方法であって、溶融塩中に陰極と、前記処理対象物を含む陽極材料からなる陽極とを設け、該陽極における電位を所定の値に制御することにより、前記処理対象物から電位の値に応じた金属元素を溶融塩中に溶解させることで特定の金属を陽極に残留させることを特徴とする。
また、陽極において制御する電位は、前記のようにネルンストの式を用いて計算することができる。
また本発明は、前記処理対象物に含まれる金属が、Sr、Baのいずれか、又は両方である場合にも好適に利用される。更に、前記処理対象物がZn、Cd、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBiからなる群より選ばれる1種類以上の金属を含む場合にも好適に利用される。
同様に、前記析出又は合金化させる特定の金属を、V、Nb、Mo、Ti、Ta、Zr若しくはHfとするか、Sr若しくはBaとするか、又はZn、Cd、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb若しくはBiとすることにより、これらの金属を得ることができる。
前述のように、前記溶解工程において、処理対象物に含まれるこれらの金属を1種類以上溶融塩に溶解させて、当該溶融塩から順番に特定の金属を電極部材に析出又は合金化させることができる。
更に、粒状又は粉末状にした処理対象物を押し固めることで、陽極(アノード)として使用することができる。この場合、粒子間に溶融塩が容易に侵入できる空間が存在することが望ましい。
塩化物系の溶融塩としては、例えばKCl、NaCl、CaCl2、LiCl、RbCl、CsCl、SrCl2、BaCl2、MgCl2などを用いることができる。またフッ化物系の溶融塩としては、例えばLiF、NaF、KF、RbF、CsF、MgF2、CaF2、SrF2、BaF2を用いることができる。なお、効率の点から塩化物系の溶融塩を用いることが好ましく、なかでも安価で入手が容易という点から、KCl、NaCl、CaCl2を用いることが好ましい。
また、これらの溶融塩は複数種類の溶融塩を組み合わせて任意の組成の溶融塩として用いることができ、例えばKCl−CaCl2やLiCl−KCl、あるいはNaCl−KClといった組成の溶融塩を用いることができる。
制御部9は、カゴ4を一方の電極(陽極)とし、電極6を他方の電極(陰極)としてこの電極における電位を所定の値に制御することが可能となっている。また、制御部9においては、制御する電圧の値の変更が可能である。ヒータ10は、容器1の周囲を環状に囲むように配置されている。電極6は任意の材料により構成することができるが、例えば炭素を用いることができる。なお、容器1の形状は、底面の円形状あるいは多角形状であってもよい。また、カゴ4としては前述のカゴを用いることができる。
そして、処理対象物3から特定の金属が充分に溶解した後に、カゴ4及び電極6を取り出し、別の電極7(陰極)、電極8(陽極)を溶融塩2中に投入する。この電極7、8はそれぞれ導電線5を介して制御部9と接続している。そして、制御部9から電極7、8における電位を所定の値に制御する。このとき、制御する電圧は、電極7、8の電位差が特定の金属の析出電位となるように調整する。これにより溶融塩2に溶解していた特定の金属が電極7(陰極)の表面に析出することになる。電極7、8の材料としては、たとえばグラッシーカーボン(C)を用いることができる。
例えば、本発明の金属の製造方法によりバナジウムを得るためには、まず、処理対象物3としてフェロバナジウムを1kg準備し、溶融塩2としてNaCl−KClを準備する。フェロバナジウムとしては例えばバナジウム(V)を75wt%、鉄(Fe)を25wt%含有するものとする。当該フェロバナジウムを粉砕してカゴ4の内部に配置する。溶融塩2の量は約15リットルとする。
そして、電極6として炭素からなる電極を用いて前述の溶解工程を行い、続いて、電極7、8としてグラッシーカーボンからなる電極を用いて析出工程を行えばよい。
本発明の金属の製造方法によりモリブデンを得るためには、まず、処理対象物3としてMo−Cu系ヒートスプレッダを1kg準備し、溶融塩2としてLiCl−KClを準備する。Mo−Cu系ヒートスプレッダとしては例えばモリブデン(Mo)を50wt%、銅(Cu)を50wt%含有するものとする。当該ヒートスプレッダを粉砕してカゴ4の内部に配置する。溶融塩2の量は約5リットルとする。
そして、電極6として炭素からなる電極を用いて前述の溶解工程を行い、続いて電極7、8としてグラッシーカーボンからなる電極を用いて析出工程を行えばよい。
本発明の金属の製造方法によりストロンチウムを得るためには、まず、処理対象物3として酸化物系超電導材料を1kg準備し、溶融塩2としてLiF−CaF2を準備する。酸化物系超電導材料としては例えばストロンチウム(Sr)を17wt%、カルシウム(Ca)を8wt%含有するものとする。当該酸化物系超電導材料を粉砕してカゴ4の内部に配置する。溶融塩2の量は約4リットルとする。
そして、電極6として炭素からなる電極を用いて前述の溶解工程を行い、続いて電極7、8としてグラッシーカーボンからなる電極を用いて析出工程を行えばよい。
本発明の金属の製造方法によりゲルマニウムを得るためには、まず、処理対象物3として光ファイバ材料を1kg準備し、溶融塩2としてLiF−CaF2を準備する。光ファイバ材料としては例えばゲルマニウム(Ge)を3wt%含有するものとする。当該光ファイバ材料を粉砕してカゴ4の内部に配置する。溶融塩2の量は約4リットルとする。
そして、電極6として炭素からなる電極を用いて前述の溶解工程を行い、続いて電極7、8としてグラッシーカーボンからなる電極を用いて析出工程を行えばよい。
本発明の溶融塩電解による金属の製造方法によれば、従来の回収方法などに比べて装置構成を簡略化できるとともに処理時間も短くすることができるため、コストを低減することができる。さらに、電極における電位を適切に設定することで、電極表面に特定の金属を単体として析出させることができるので、純度の高い金属を得ることができる。
なお、それぞれのバナジウム、バナジウム合金、モリブデン、モリブデン合金、ストロンチウム、ストロンチウム合金、ゲルマニウム、又はゲルマニウム合金を析出させるための電位は前述の計算により算出することができる。
バナジウムを含む金属材料としてフェロバナジウムを用いて、溶融塩電解によりバナジウムを製造した。
(試料)
処理対象物であるフェロバナジウムとしては、バナジウムを75wt%、鉄を25wt%有するフェロバナジウムを使用した。そして当該フェロバナジウムをビーズミルやアトライターの手段により粉砕して粒径が約2mmとなるようにした。粉砕した試料(フェロバナジウム)を、モリブデン(Mo)製の網(50mesh)で包んだ。図3に示すようにMo製の網の内部に保持された試料粉末(処理対象物)を、陽極(アノード電極)とした。
溶融塩としてNaCl−KClの共晶組成の溶融塩を使用し、700℃に加熱して完全に溶融させた。そして、当該溶融塩に、上述した陽極(アノード電極)と、陰極(カソード電極)とを配線して浸漬した。カソード電極の材料としてはグラッシーカーボンを用いた。
このように溶融塩にアノード電極とカソード電極とを浸漬した状態で、アノード電極を所定の電位に保持した。この際の電位は、鉄は溶解せずに、バナジウムのみが選択的に溶解する電位とした。そして、所定時間経過後、溶融塩からサンプルを採取し、当該サンプルについてICP−AESにより組成分析を行なった。
上記溶解工程の後、溶融塩にグラッシーカーボンからなるカソード電極およびグラッシーカーボンからなるアノード電極を浸漬し、カソード電極の電位を所定の電位に保持した。具体的には、NaCl−KCl系溶融塩においてバナジウムが析出するような電位に保持した。そして、所定時間経過後、カソード電極の表面状態を観察した。
溶解工程について:
溶解工程において観察されたアノード電流は、図4に示すような経時変化を示した。なお、図4の横軸は時間(単位:分)を示し、縦軸はアノード電流の電流値を示す。図4に示すように、電流値は時間が経過するにつれて低下していた。また、電流値の時間変化率は、測定開始時(通電開始時)が最も高く、その後徐々に変化率が小さくなっていく傾向が見られた。
カソード電極の表面層について、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、カソード電極を構成するグラッシーカーボンからなる電極本体部の表面に、バナジウムが析出していた。
このように、バナジウムを含むフェロバナジウムに含まれていたバナジウムを高純度で得ることができた。
モリブデンを含む金属材料としてMo−Cu系ヒートスプレッダを用いて、溶融塩電解によりモリブデンを製造した。
(試料)
処理対象物であるMo−Cu系ヒートスプレッダとしては、モリブデンを50wt%、銅を50wt%有するヒートスプレッダを使用した。そして当該ヒートスプレッダをビーズミルやアトライターの手段により粉砕して粒径が約2mmとなるようにした。粉砕した試料(ヒートスプレッダ)を、白金(Pt)製の網(50mesh)で包んだ。Pt製の網の内部に保持された試料粉末(処理対象物)を、陽極(アノード電極)とした。
溶融塩としてLiCl−KClの共晶組成の溶融塩を使用し、450℃に加熱して完全に溶融させた。そして、当該溶融塩に、上述したアノード電極と、カソード電極とを配線して浸漬した。カソード電極の材料としてはグラッシーカーボンを用いた。
このように溶融塩にアノード電極とカソード電極とを浸漬した状態で、アノード電極を所定の電位に保持した。この際の電位は、銅は溶解せずに、モリブデンのみが選択的に溶解する電位とした。そして、所定時間経過後、溶融塩からサンプルを採取し、当該サンプルについてICP−AESにより組成分析を行なった。
上記溶解工程の後、溶融塩にグラッシーカーボンからなるカソード電極およびグラッシーカーボンからなるアノード電極を浸漬し、カソード電極の電位を所定の電位に保持した。具体的には、LiCl−KCl系溶融塩においてモリブデンが析出するような電位に保持した。そして、所定時間経過後、カソード電極の表面状態を観察した。
溶解工程について:
溶解工程において観察されたアノード電流は、前記バナジウムの場合と同様に、時間が経過するにつれて電流値が低下していた。また、電流値の時間変化率は、測定開始時(通電開始時)が最も高く、その後徐々に変化率が小さくなっていく傾向が見られた。
カソード電極の表面層について、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、カソード電極を構成するグラッシーカーボンからなる電極本体部の表面に、モリブデンが析出していた。
このように、モリブデンを含むヒートスプレッダに含まれていたモリブデンを高純度で得ることができた。
ストロンチウムを含む金属材料として酸化物系超電導材料を用いて、溶融塩電解によりストロンチウムを製造した。
(試料)
処理対象物である酸化物系超電導材料としては、ストロンチウムを17wt%、カルシウムを8wt%有する酸化物系超電導材料を使用した。そして当該酸化物系超電導材料をビーズミルやアトライターの手段により粉砕して粒径が約2mmとなるようにした。粉砕した試料(酸化物系超電導材料)を、白金(Pt)製の網(50mesh)で包んだ。Pt製の網の内部に保持された試料粉末(処理対象物)を、陽極(アノード電極)とした。
溶融塩としてLiF−CaF2の共晶組成の溶融塩を使用し、850℃に加熱して完全に溶融させた。そして、当該溶融塩に、上述したアノード電極と、カソード電極とを配線して浸漬した。カソード電極の材料としてはグラッシーカーボンを用いた。
このように溶融塩にアノード電極とカソード電極とを浸漬した状態で、アノード電極を所定の電位に保持した。この際の電位は、ストロンチウム、カルシウムのみが選択的に溶解し、他の含有元素は溶解しない電位とした。そして、所定時間経過後、溶融塩からサンプルを採取し、当該サンプルについてICP−AESにより組成分析を行なった。
上記溶解工程の後、溶融塩にグラッシーカーボンからなるカソード電極およびグラッシーカーボンからなるアノード電極を浸漬し、カソード電極の電位を所定の電位に保持した。具体的には、LiF−CaF2系溶融塩においてストロンチウムが析出するような電位に保持した。そして、所定時間経過後、カソード電極の表面状態を観察した。
溶解工程について:
溶解工程において観察されたアノード電流は、前記バナジウムの場合と同様に、時間が経過するにつれて電流値が低下していた。また、電流値の時間変化率は、測定開始時(通電開始時)が最も高く、その後徐々に変化率が小さくなっていく傾向が見られた。
カソード電極の表面層について、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、カソード電極を構成するグラッシーカーボンからなる電極本体部の表面に、ストロンチウムが付着していた。ストロンチウムの融点は768℃なので、液体となっている。電極本体への付着量が多くなると、溶融塩との比重差により、浮遊してくるので、電極の上側には浮遊してきたストロンチウムを捕集する治具を設置した。
このように、ストロンチウムを含む酸化物系超電導材料に含まれていたストロンチウムを高純度で得ることができた。
ゲルマニウムを含む金属材料として光ファイバ材料を用いて、溶融塩電解によりゲルマニウムを製造した。
(試料)
処理対象物である光ファイバ材料としては、ゲルマニウムを3wt%有する光ファイバ材料を使用した。そして当該光ファイバ材料をビーズミルやアトライターの手段により粉砕して粒径が約2mmとなるようにした。粉砕した試料(光ファイバ材料)を、白金(Pt)製の網(50mesh)で包んだ。Pt製の網の内部に保持された試料粉末(処理対象物)を、陽極(アノード電極)とした。
溶融塩としてLiF−CaF2の共晶組成の溶融塩を使用し、850℃に加熱して完全に溶融させた。そして、当該溶融塩に、上述したアノード電極と、カソード電極とを配線して浸漬した。カソード電極の材料としてはグラッシーカーボンを用いた。
このように溶融塩にアノード電極とカソード電極とを浸漬した状態で、アノード電極を所定の電位に保持した。この際の電位は、ゲルマニウムのみが選択的に溶解し、他の含有元素は溶解しない電位とした。そして、所定時間経過後、溶融塩からサンプルを採取し、当該サンプルについてICP−AESにより組成分析を行なった。
上記溶解工程の後、溶融塩にグラッシーカーボンからなるカソード電極およびグラッシーカーボンからなるアノード電極を浸漬し、カソード電極の電位を所定の電位に保持した。具体的には、LiF−CaF2系溶融塩においてゲルマニウムが析出するような電位に保持した。そして、所定時間経過後、カソード電極の表面状態を観察した。
溶解工程について:
溶解工程において観察されたアノード電流は、前記バナジウムの場合と同様に、時間が経過するにつれて低下していた。また、電流値の時間変化率は、測定開始時(通電開始時)が最も高く、その後徐々に変化率が小さくなっていく傾向が見られた。
カソード電極の表面層について、断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果、カソード電極を構成するグラッシーカーボンからなる電極本体部の表面に、ゲルマニウムが析出していた。
このように、ゲルマニウムを含む光ファイバ材料に含まれていたゲルマニウムを高純度で得ることができた。
2 溶融塩
3 処理対象物
4 カゴ
5 導電線
6〜8 電極
9 制御部
10 ヒータ
Claims (23)
- 2種類以上の金属元素を含む処理対象物に含まれる金属元素を溶融塩中に溶解させる工程と、
前記金属元素が溶解した溶融塩中に一対の電極部材を設け、該電極部材における電位を所定の値に制御することにより、電極部材の一方に、溶融塩中に存在する特定の金属を析出又は合金化させる工程と、
を備えることを特徴とする溶融塩電解による金属の製造方法。 - 前記特定の金属を析出又は合金化させる工程において、溶融塩中の前記特定の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差が0.05V以上となるように前記溶融塩を選択することを特徴とする請求項1に記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記特定の金属を析出又は合金化させる工程において、前記電極部材における電位を所定の値に制御し、前記溶融塩中の前記特定の金属元素を選択的に析出又は合金化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記処理対象物は、遷移金属又は希土類金属を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記処理対象物は、V、Nb、Mo、Ti、Ta、Zr、及びHfからなる群より選ばれる1種類以上の金属を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記処理対象物は、Sr及び/又はBaを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記処理対象物は、Zn、Cd、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、及びBiからなる群より選ばれる1種類以上の金属を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記処理対象物に含まれる金属元素を溶融塩中に溶解させる工程において、
化学的手法により前記金属を前記溶融塩中に溶解させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。 - 前記処理対象物に含まれる金属元素を溶融塩中に溶解させる工程において、
前記溶融塩中に、陰極と、前記処理対象物を含む陽極材料からなる陽極とを設け、該陽極における電位を所定の値に制御することにより、前記処理対象物から制御した電位に応じた金属元素を溶融塩中に溶解させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。 - 前記処理対象物に含まれる金属元素を溶融塩中に溶解させる工程において、前記溶融塩中の前記特定の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差が0.05V以上となるように前記溶融塩を選択することを特徴とする請求項9に記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記処理対象物に含まれる金属元素を溶融塩中に溶解させる工程において、前記陽極における電位を所定の値に制御し、前記特定の金属元素を選択的に溶融塩中に溶解させることを特徴とする請求項9又は10に記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記処理対象物に含まれる金属元素を溶融塩中に溶解させる工程において、1種類もしくは2種類以上の前記特定の金属を前記溶融塩中に溶解させることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記析出又は合金化させる特定の金属が遷移金属であることを特徴とする請求項1〜5、8〜11のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記析出又は合金化させる特定の金属が希土類金属であることを特徴とする請求項1〜4、8〜11のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記析出又は合金化させる特定の金属がV、Nb、Mo、Ti、Ta、Zr、又はHfであることを特徴とする請求項1〜5、8〜11のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記析出又は合金化させる特定の金属がSr又はBaであることを特徴とする請求項1〜3、6、8〜11のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記析出又は合金化させる特定の金属がZn、Cd、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、又はBiであることを特徴とする請求項1〜3、7〜11のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記溶融塩として塩化物系またはフッ化物系の溶融塩を用いることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記溶融塩として塩化物系の溶融塩とフッ化物系の溶融塩とを混合した溶融塩を用いることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記処理対象物は、粒状又は粉末状であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 前記粒状又は粉末状の前記処理対象物を押し固めて前記陽極とすることを特徴とする請求項20に記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
- 2種類以上の金属元素を含む処理対象物から特定の金属を溶融塩電解により製造する方法であって、
溶融塩中に陰極と、前記処理対象物を含む陽極材料からなる陽極とを設け、該陽極における電位を所定の値に制御することにより、前記処理対象物から制御した電位に応じた金属元素を溶融塩中に溶解させることで特定の金属を陽極に残留させることを特徴とする
溶融塩電解による金属の製造方法。 - 前記溶融塩中に前記処理対象物から金属元素を溶解させる工程において、前記溶融塩中の前記特定の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位と他の金属の単体もしくはその合金の標準電極電位との差が0.05V以上となるように前記溶融塩を選択することを特徴とする請求項22に記載の溶融塩電解による金属の製造方法。
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