JP2013137535A - トナー - Google Patents

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Abstract

【課題】 低温定着性に優れるとともに、帯電安定性、環境安定性、及び耐久性に優れ、高画質の画像を長期に亘って安定に得ることができるトナーを提供すること。
【解決手段】 結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するコアと、樹脂Aを含有するシェル相を有するコアシェル構造のトナー粒子を有するトナーであって、前記樹脂Aは、幹部位(X)、枝部位(Y)及び枝部位(Z)を有する櫛形ポリマーであり、幹部位(X)は、ビニル系重合体であり、枝部位(Y)は、脂肪族ポリエステル構造を有し、且つ、ポリエステル部位のエステル基濃度が6.5mmol/g以下であり、枝部位(Z)は、有機ポリシロキサン構造を有し、且つ、シロキサン部位のSi−O結合の平均繰り返し単位数が2以上、100以下であることを特徴とするトナー。
【選択図】 なし

Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、トナージェット方式記録法に用いられるトナーに関する。詳しくは、本発明は、静電潜像担持体上にトナー画像を形成した後、転写材上に転写させ、熱圧力下にて定着して定着画像を得る、複写機、プリンター、ファックスの如き画像形成装置に用いられるトナーに関する。
近年、複写機やプリンター、ファックスにおいては、省エネルギー化が大きな技術的課題として考えられており、定着装置にかかる熱量の大幅な削減が望まれている。したがって、トナーにおいては、より低エネルギーでの定着が可能な、いわゆる「低温定着性」のニーズが高まっている。
また、これら装置の世界的な需要の高まりにつれて、さまざまな使用環境下、とりわけ温度、湿度の異なる環境下においても安定して高画質の画像を得ることができる装置が求められるようになっている。したがって、トナーには、温度や湿度の影響を受けない帯電性能を有することが求められ、さらには、多数枚の複写またはプリントによっても、画質低下のない高耐久性が要求されるようになっている。
トナーの低温定着性を改善するための一般的な方法としては、使用する結着樹脂のガラス転移温度(Tg)を低くする方法が挙げられる。しかしながら、単に結着樹脂のTgを低下させるだけでは、トナーの耐熱保存性が損なわれてしまい、低温定着性と耐熱保存性を両立させることは困難であるとされている。
そこで、トナーの低温定着性と耐熱保存性を両立させるため、シャープメルト性に優れた結晶性樹脂を結着樹脂に使用する方法が検討されている。
トナー用の結着樹脂として一般的に用いられる非晶性の樹脂は、示差走査熱量計(DSC)による測定において吸熱ピークを示さないが、結着樹脂中に結晶性樹脂を含有する場合には、DSC測定における吸熱ピークが現れる。この吸熱ピークのピーク温度は、結晶性樹脂の融点を意味している。
結晶性ポリエステル樹脂は、高分子鎖が規則的に配列した構造を有しており、融点未満の温度領域では軟化しにくく、融点を境に急激に溶融して粘度低下を起こす性質を有している。このような特性から、結晶性ポリエステル樹脂は近年特に注目されており、これをトナーの材料として用いる検討が盛んに行われている。
例えば、特許文献1では、脂肪族ポリエステル(すなわち結晶性ポリエステル)を必須成分とする結晶部と非晶部から構成される樹脂を有機溶剤に溶解させた溶液を、液状又は超臨界状態の二酸化炭素中に分散させることによって、前記樹脂と有機溶剤を含有する樹脂粒子を形成し、次いで前記有機溶剤及び二酸化炭素を除去することによって得られるトナーが提案されている。
また、特許文献2では、結晶性ポリエステル鎖を有するビニルモノマーを必須構成単位とする樹脂を含有する微粒子を、液状又は超臨界状態の二酸化炭素中に分散させ、得られた分散体に結着樹脂となる樹脂を有機溶剤に溶解させた溶液を分散させることによって、表面に前記微粒子が固着された樹脂粒子を形成し、次いで前記有機溶剤及び二酸化炭素を除去することによって得られるトナーが提案されている。
これらのトナーは、結晶性ポリエステルのシャープメルト効果によって、非晶性樹脂を結着樹脂として用いた従来のトナーに比べ、優れた低温定着性が発現される。しかしながら、本発明者らが検討を行ったところ、いずれのトナーも帯電性能が必ずしも十分ではなく、特に摩擦帯電させた後の帯電量が安定に保持されない傾向があることが分かった。そして、このようなトナーを用いた現像剤を無撹拌状態で放置した場合、その後の現像工程において非画像部へのトナー飛散や画像欠陥を生じやすく、高画質の画像が得られないことがあった。
その原因は、結晶性ポリエステルが従来の非晶性樹脂に比べて体積抵抗が低いため、トナーに含有される結晶性ポリエステルが粒子表面に露出した状態で存在するような場合、電荷の漏洩が生じやすくなるためであると考えている。
一方、トナーの環境安定性を改善するための方法としては、トナー粒子表面を疎水性の材料で覆う方法が考えられる。有機ポリシロキサンは、界面張力が低い材料として知られている。したがって、有機ポリシロキサン構造をトナー粒子の表面部に導入すれば、周囲の湿度に依存しない帯電性能を有するトナーの実現が可能になると期待される。
特許文献3では、有機ポリシロキサン構造を有するビニルモノマー(シリコーン含有ビニルモノマー)を必須構成単位とする樹脂を含有する微粒子を分散させた液状又は超臨界状態の二酸化炭素中に、結晶性ポリエステルを含有する樹脂を有機溶剤に溶解させた溶液を分散させることによって、表面に前記微粒子が固着された樹脂粒子を形成し、次いで前記有機溶剤及び二酸化炭素を除去することによって得られるトナーが提案されている。
しかしながら、この開示に基づいて得られたトナーを定着性の評価に供したところ、同様の溶融粘度特性を有する他のトナーに比べて、定着画像の表面を摺擦した際にトナーの剥離が起こりやすい傾向があることが分かった。
これは、上記樹脂を構成する有機ポリシロキサン構造を有するビニルモノマーの割合が多すぎたために界面張力の影響を受けやすくなり、溶融したトナーと紙との密着性が低下したことが原因と考えられる。
また、このトナーを耐久性の評価に供したところ、評価の進行とともに現像スジが発生しやすくなる傾向があることも分かった。
これは、有機ポリシロキサンは一般にガラス転移温度(Tg)が室温よりも低いため、上記ビニルモノマーにおけるシロキサン部位の重合度(分子量)が高すぎたり、上記樹脂を構成する有機ポリシロキサン構造を有するビニルモノマーの割合が多すぎたりした結果、トナー表面の硬度が不足し、規制部材への融着が生じたことが原因と推察される。
以上説明した通り、結晶性ポリエステルを材料に用いたトナーにおいて、十分な低温定着性を達成させるとともに、安定した帯電性能を得るためには未だ課題を有しており、さらに、有機ポリシロキサン構造の導入による環境安定性の向上を実現させるためには、定着画像の安定性や耐久性の点で課題を有していた。
特開2010−168529号公報 特開2011−127102号公報 特開2011−094135号公報
本発明は、上述した従来の問題点を解決したトナーを提供するものである。
すなわち、本発明は、低温定着性に優れるとともに、帯電安定性、環境安定性、及び耐久性に優れたトナーを提供することにある。
また、高画質の画像を長期に亘って安定に得ることができるトナーを提供することにある。
本発明は、結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するコアと、樹脂Aを含有するシェル相を有するコアシェル構造のトナー粒子を有するトナーであって、
前記樹脂Aは、幹部位(X)、枝部位(Y)及び枝部位(Z)を有する櫛形ポリマーであり、
(i)幹部位(X)は、ビニル系重合体であり、
(ii)枝部位(Y)は、脂肪族ポリエステル構造を有し、且つ、ポリエステル部位のエステル基濃度が、ポリエステル部位の質量を基準として6.5mmol/g以下であり、
(iii)枝部位(Z)は、有機ポリシロキサン構造を有し、且つ、シロキサン部位のSi−O結合の平均繰り返し単位数が2以上、100以下である
ことを特徴とするトナーに関する。
本発明によれば、低温定着性に優れるとともに、帯電安定性、環境安定性、及び耐久性に優れ、高画質の画像を長期に亘って安定に得ることができるトナーを提供することができる。
トナーの製造に使用する製造装置の一例を示す概略図である。 トナーの帯電量測定装置の一例を示す図である。
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、ワックスを含有するコアの表面に、樹脂Aを含有するシェル相を形成したコアシェル構造のトナー粒子を有するトナーである。そして、本発明のトナーの最大の特徴は、前記樹脂Aが、幹部位(X)と枝部位(Y)、枝部位(Z)を有する櫛形ポリマーで構成されることにある。
本発明のトナーにおいて、シェル相を構成する樹脂Aとしての櫛形ポリマーは、その主骨格となる幹部位(X)がビニル系重合体で形成される。
そして、前記樹脂Aとしては、以下のi)或いはii)のような櫛形ポリマーが例示される。
i)枝部位(Y)を有するビニルモノマー(y)と、枝部位(Z)を有するビニルモノマー(z)と、必要に応じてその他のビニルモノマーとを共重合することによって得られる櫛形ポリマー。
ii)前記ビニルモノマー(y)または前記ビニルモノマー(z)に代えて、それぞれの枝部位を導入するための前駆体となるビニルモノマーを用いて共重合した後、枝部位(Y)または枝部位(Z)を導入することによって得た櫛形ポリマー。 前記櫛形ポリマーを構成する枝部位(Y)について説明する。
前記枝部位(Y)は、脂肪族ポリエステル構造を有する部位を含有する。ここで、脂肪族ポリエステル構造とは、脂肪族炭化水素基同士がエステル結合で結ばれた構造である。このような構造を有する部位は、それ自体が多数集合すると、規則的に配列して結晶性を発現するようになる。したがって、脂肪族ポリエステル構造を有する部位(以下、脂肪族ポリエステル部位、又は単にポリエステル部位とも称する)を枝部位(Y)に含有させることで、シャープメルト性に優れた櫛形ポリマーが得られる。
前記脂肪族炭化水素基は分岐構造が含まれていてもよいが、櫛形ポリマーの結晶性をより高めることができる点で、直鎖型脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
前記脂肪族ポリエステル部位は、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とのエステル化反応によって得ることができる。
前記脂肪族ジオールとしては、炭素数4以上、20以下の直鎖脂肪族ジオールが好ましく、具体的には以下のものが挙げられる。
1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
また、前記脂肪族ジカルボン酸としては、4以上、炭素数20以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましく、具体的には以下のものを挙げることができる。
アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸。あるいはその低級アルキルエステルや酸無水物。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記脂肪族ポリエステル部位は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)において、重量平均分子量(Mw)が2,000以上、40,000以下であることが好ましい。Mwを上記の範囲とすることで、脂肪族ポリエステル部位の結晶性をより高めることができ、櫛形ポリマーに優れたシャープメルト性を付与することが可能となる。Mwのより好ましい範囲は3,000以上、20,000以下である。
前記脂肪族ポリエステル部位は、DSC測定における最大吸熱ピークのピーク温度が60℃以上、90℃以下であることが好ましい。ピーク温度を上記の範囲とすることで、櫛形ポリマーのシャープメルト効果を有効に発揮させることができ、良好な低温定着性を有するトナーを得ることが可能となる。ピーク温度のより好ましい範囲は、65℃以上、85℃以下である。
上述したように、一般に結晶性ポリエステル(本発明における脂肪族ポリエステル)は、従来の非晶性樹脂に比べ、体積抵抗が低い樹脂であることが知られている。したがって、このような材料をシェル相の構成成分として用いた場合、得られるトナーは、摩擦帯電後の帯電量の安定性が低いものとなる。
本発明者らは、脂肪族ポリエステルの分子構造の違いによる体積抵抗への影響に着目し、使用する脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸の組み合わせを変えて種々の樹脂を作製し、詳細に検討を行った。その結果、単位質量当たりの樹脂に含まれるエステル結合の数(エステル基濃度)と体積抵抗との間には、明確な相関が見られることを見出した。すなわち、脂肪族ポリエステル樹脂においては、エステル基濃度を低くするほど体積抵抗が増大する傾向があることが分かった。
この理由について、本発明者らは以下のように考えている。
上述したように、脂肪族ポリエステルは、その集合体においては分子鎖が規則的な配列を示し、マクロ的に見ると、融点未満の温度領域では分子運動が制限された状態を保持している。ところが、通常、脂肪族ポリエステルのガラス転移温度(Tg)は室温よりもはるかに低く、ミクロ的に見ると、室温下であっても結晶構造中に含まれる分子配列の歪部分においては分子運動が起こり得ると考えられる。したがって、分子鎖中のエステル結合部を媒介とする電荷の授受が可能であり、エステル結合が集中した箇所において導電経路が形成され、樹脂の体積抵抗が低下すると考えられる。すなわち、樹脂のエステル基濃度を低く抑えることで導電経路の形成が抑制されるため、体積抵抗を増大させることが可能になると推察される。
エステル基濃度の値は、主には脂肪族ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸の種類によって決まり、それぞれ炭素数の大きいものを選定することで低い値に設計することができる。その他、樹脂の分子量や末端基の制御によっても微調整が可能である。
但し、エステル基濃度を低く設計すると、得られる脂肪族ポリエステルの部位の融点(DSC測定における最大吸熱ピーク温度)が高くなるため、注意が必要である。
前記脂肪族ポリエステル部位のエステル基濃度は、該ポリエステル部位の質量を基準として、6.5mmol/g以下であることが必要である。エステル基濃度を6.5mmol/g以下に制御することで、櫛形ポリマーの体積抵抗を十分に高めることができる。
また、前記エステル基濃度は、さらに5.0mmol/g以上であることがより好ましい。エステル基濃度を5.0mmol/g以上に制御することで、櫛形ポリマーの融点を90℃以下に抑えることができる。
そして、この櫛形ポリマーを前記樹脂Aとして用いたトナーは、電荷の漏洩が起こりにくく、摩擦帯電後の安定性に優れたものとなり、トナー飛散や画像欠陥のない高画質の画像を得ることが可能となる。しかも、脂肪族ポリエステル本来のシャープメルト効果が有効に発現されるため、良好な低温定着性も兼ね備えたトナーの実現が可能となる。
前記脂肪族ポリエステル部位を作製する方法には特に制限はなく、アルコール成分と酸成分を反応させる一般的なポリエステル樹脂の重合法によって作製することができる。具体的には、直接重縮合、エステル交換法を用い、使用するジオールやジカルボン酸の種類によって使い分けて作製することができる。
前記脂肪族ポリエステル部位の作製は、重合温度180℃以上、230℃以下の間で行うのが好ましく、必要に応じて反応系内を減圧し、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させるのが好ましい。モノマーが反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加えて溶解させるのがよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから、主成分とともに重縮合させるのが好ましい。
前記脂肪族ポリエステル部位の作製には、具体的には以下に挙げる触媒を使用することができる。チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドの如きチタン触媒。ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドの如きスズ触媒。
上記脂肪族ポリエステル部位を用いて、枝部位(Y)を有する櫛形ポリマーを作製する方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)ヒドロキシル基を有するビニルモノマー又はカルボキシル基を有するビニルモノマーと前記脂肪族ポリエステル部位を、エステル化反応させて枝部位(Y)を有するビニルモノマー(y)作製し、他のビニルモノマーと共重合させる方法。
(2)イソシアネート基を有するビニルモノマーと前記脂肪族ポリエステル部位を、ウレタン化反応させて枝部位(Y)を有するビニルモノマー(y)を作製し、他のビニルモノマーと共重合させる方法。
(3)ヒドロキシル基を含有するビニルモノマーと前記脂肪族ポリエステル部位を、結合剤であるジイソシアネートと夫々ウレタン化反応させて枝部位(Y)を有するビニルモノマー(y)を作製し、他のビニルモノマーと共重合させる方法。
(4)ヒドロキシル基を有するビニルモノマー又はカルボキシル基を有するビニルモノマーを用いて幹部位(X)を形成した後、前記脂肪族ポリエステル部位とエステル化反応させる方法。
(5)イソシアネート基を有するビニルモノマーを用いて幹部位(X)を形成した後、前記脂肪族ポリエステル部位とウレタン化反応させる方法。
これらの方法の中でも、予め枝部位(Y)を有するビニルモノマー(y)を作製した後、他のビニルモノマーと共重合させる、前記(1)乃至(3)の方法が好ましく、脂肪族ポリエステル部位との反応性の点で、前記(2)及び(3)の方法が特に好ましい。
ここで、脂肪族ポリエステル部位の導入をカルボキシル基とのエステル化反応によって行う場合、あるいはイソシアネート基とのウレタン化反応によって行う場合、前記脂肪族ポリエステル部位は、アルコール末端であることが好ましい。そのため、前記脂肪族ポリエステルは、ジオールとジカルボン酸のモル比(ジオール/ジカルボン酸)が1.02以上、1.20以下であることが好ましい。一方、脂肪族ポリエステル部位の導入をヒドロキシル基とのエステル化反応によって行う場合は酸末端であることが好ましく、ジオールとジカルボン酸のモル比はその逆であることが好ましい。
前記ヒドロキシル基を含有するビニルモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
ヒドロキシスチレン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート、アリルアルコール、メタアリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル、庶糖アリルエーテル。これらの中でも、特に好ましいものはヒドロキシエチルメタアクリレートである。
前記カルボキシル基を含有するビニルモノマーとしては、炭素数30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、及びその無水物が好ましく、具体的には、以下のものが挙げられる。
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、イサコン酸、ケイ皮酸、並びにその無水物。これらの中でも、特に好ましいものはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸である。
前記イソシアネート基を含有するビニルモノマーとしては、以下のものが挙げられる。
2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、メタクリル酸2−(0−[1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチルメタクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート。これらの中でも、特に好ましいものは2−イソシアナトエチルアクリレート及び2−イソシアナトエチルメタクリレートである。
前記ジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物。以下、変性ジイソシアネートともいう)が挙げられる。
前記脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4以上、12以下(イソシアネート基中の炭素を除く、以下同様)の脂肪族ジイソシアネートが好ましく、具体的には以下のものが挙げられる。
エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート。
前記脂環式ジイソシアネートとしては、炭素数4以上、15以下の脂環式ジイソシアネートが好ましく、具体的には以下のものが挙げられる。
イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート。
前記芳香族ジイソシアネートとしては、炭素数6以上、15以下の芳香族ジイソシアネートが好ましく、具体的には以下のものが挙げられる。
m−及び/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート。
これら中でも、特に好ましいものはHDI及びIPDI、XDIである。
前記櫛形ポリマーを構成するもう一方の枝部位(Z)について説明する。
前記枝部位(Z)は、有機ポリシロキサン構造を有する部位を含有する。ここで、有機ポリシロキサン構造とは、Si−O結合の繰り返し単位を有し、且つ、各Si原子に一価の有機基が二つずつ結合した構造である。
前記有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を挙げることができ、これらの有機基は置換基を有していてもよい。また、各々の有機基は同一であってもよく、異なっていてもよい。これらの有機基の中でも、アルキル基及びアリール基が後述する有機ポリシロキサンの特長を発現しやすくなる点で好ましく、炭素数1以上、3以下のアルキル基がより好ましい。特に好ましくはメチル基である。
上述したように、有機ポリシロキサンは、界面張力が低い材料である。したがって、有機ポリシロキサン構造を有する部位を枝部位(Z)として含有させることで、櫛形ポリマーに好適な疎水性を付与することができる。
一方、有機ポリシロキサンは、ガラス転移温度(Tg)が室温よりも低く、室温下では粘性のある液状で存在する物質である。したがって、有機ポリシロキサン構造を有する部位を枝部位(Z)として導入すると、得られる櫛形ポリマーは軟化する傾向を示す。
前記有機ポリシロキサン構造を有する部位(以下、有機ポリシロキサン部位、又は単にシロキサン部位とも称する)のSi−O結合の平均繰り返し単位数は2以上、100以下である。ここで、平均繰り返し単位数とは、前記櫛形ポリマーを構成する複数の枝部位(Z)に各々含まれるシロキサン鎖のSi−O結合の繰り返し数の平均値を意味する。
前記平均繰り返し単位数が2未満の場合、シロキサン本来の特性が発現されないため、櫛形ポリマーに十分な疎水性を付与することができない。また、前記平均繰り返し単位数が100を超える場合は、樹脂化したときに十分に硬化しないため、櫛形ポリマーに十分な硬度を保持させることができなくなる。
すなわち、前記有機ポリシロキサン部位のSi−O結合の平均繰り返し単位数を上記の範囲に制御することで、トナー用樹脂としての十分な硬度と、湿度環境の変化に対応可能な疎水性とを兼ね備えた櫛形ポリマーを得ることができる。平均繰り返し単位数のより好ましい範囲は2以上、15以下である。
そして、このような櫛形ポリマーを前記樹脂Aとして用いることにより、トナー融着による部材汚染に対して十分な耐久性を有し、温度、湿度が異なる種々の環境下においても帯電性能への影響が少ないトナーの実現が可能となる。
ところで、有機ポリシロキサン部位を有する枝部位(Z)を導入した櫛形ポリマーを用いた場合、その界面張力の低さ故に起こり得る課題として、トナーの紙との親和性の低下がある。紙との親和性が低いと、定着時において加熱溶融したトナーと紙との密着性が低下するため、定着画像が剥離しやすくなる。
トナーは、前記櫛形ポリマー中に存在するもう一方の枝部位(Y)に含まれる脂肪族ポリエステル部位によって、溶融時の粘性が低下しやすい。そのため、溶融したトナーが紙の繊維の間に入り込みやすく、密着性の低下によるトナーの剥離を防止することができる。
トナー中において、前記有機ポリシロキサン部位と前記脂肪族ポリエステル部位は、同一分子内に共存していることが重要である。例えば、前記有機ポリシロキサン部位のみを含有するポリマーに、前記脂肪族ポリエステル部位のみを含有するポリマーを混合したものを樹脂Aとして用いたとしても、上記密着性低下の影響を回避することは困難である。
また、トナー中において、前記有機ポリシロキサン部位と前記脂肪族ポリエステル部位は、それぞれが異なる枝部位の構成成分として存在していることも重要である。両部位が互いに独立して存在していることで、上述した双方の部位が持つ特性は損なわれることなく、有効に発現される。
前記有機ポリシロキサン部位の好適な例を、下記式(1)に示す。
ここで、R乃至Rは、それぞれ独立して、置換基を有していても良い炭素数1乃至3のアルキル基、又は置換基を有していても良いアリール基を表す。これらの中でも、メチル基であることが好ましい。また、Rは炭素数1乃至10のアルキレン基を表す。また、nは重合度を表し、2以上、100以下の整数であり、好ましくは2以上、15以下である。
このような有機ポリシロキサン部位を有する枝部位(Z)を導入して櫛形ポリマーを作製する方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)有機ポリシロキサンの片末端を、例えばカルビノール基、カルボキシル基、エポキシ基のいずれかで変性したものを枝部位(Z)として用い、これらの基と反応可能な基を有する樹脂と反応させる方法。
(2)有機ポリシロキサンの片末端をアクリレート変性、あるいはメタクリレート変性して枝部位(Z)を有するビニルモノマー(z)を作製し、他のビニルモノマーと共重合させる方法。
これらの方法の中では、前記(2)の方法が合成のしやすさの点で好ましい。
前記ビニルモノマー(z)は、下記式(a)で示す部分構造及び下記式(b)で示す部分構造を有することが好ましい。前記ビニルモノマー(z)としては、より好ましくは下記式(2)で表わされるモノマーである。
式(a)中、R10及びR11は、それぞれ独立して、置換基を有していても良い炭素数1乃至3のアルキル基、又は置換基を有していても良いアリール基を表す。これらの中でも、メチル基であることが好ましい。そして、nは重合度を表し、2以上、100以下の整数であり、好ましくは2以上、15以下である。
式(b)中、R13は、水素原子又はメチル基を表す。
式(2)中、R乃至R11は、それぞれ独立して、置換基を有していても良い炭素数1乃至3のアルキル基、又は置換基を有していても良いアリール基を表す。これらの中でも、メチル基であることが好ましい。また、R12は炭素数1乃至10のアルキレン基を表す。また、R13は水素原子又はメチル基を表す。そして、nは重合度を表し、2以上、100以下の整数であり、好ましくは2以上、15以下である。
上記有機ポリシロキサンのアクリレート変性又はメタクリレート変性によるビニルモノマー(z)の作製方法としては特に限定されないが、具体的には、カルビノール変性ポリシロキサンと、アクリル酸クロライド若しくはメタクリル酸クロライドとの脱塩酸反応による方法が挙げられる。
トナーにおけるシェル相、及びシェル相を構成する樹脂Aについて、さらに詳しく説明する。
前記樹脂Aは、前記エステル基濃度が6.5mmol/g以下である脂肪族ポリエステル構造を有するビニルモノマー(y)と、前記式(2)に示す有機ポリシロキサン構造を有するビニルモノマー(z)とを共重合することによって得られる樹脂であることが好ましい。
また、前記樹脂Aの合成に使用する前記ビニルモノマー(y)は、共重合に使用する全モノマーの量を100質量%とした時、15.0質量%以上、50.0質量%以下の割合であることが好ましい。一方、前記ビニルモノマー(z)は、5.0質量%以上、25.0質量%以下の割合であることが好ましい。そして、他のビニルモノマーを、25.0質量%以上、80.0質量%以下の割合で使用することが好ましい。
前記ビニルモノマー(y)の割合を上記範囲とすることで、上述したトナーの低温定着性と帯電安定性の改善効果を、より有効に発現させることができる。
また、前記ビニルモノマー(z)の割合を上記範囲とすることで、上述したトナーの環境安定性と耐久性の改善効果を、より有効に発現させることができる。
そして、前記ビニルモノマー(y)と前記ビニルモノマー(z)とを上記割合の範囲内で用いることにより、有機ポリシロキサン部位によるトナーと紙との密着性の低下を効果的に抑制することができ、より安定した定着画像を得ることができる。より好ましくは、前記ビニルモノマー(y)の割合が20.0質量%以上、45.0質量%以下であり、前記ビニルモノマー(z)の割合が10.0質量%以上、20.0質量%以下である。
前記樹脂Aの合成に使用する他のビニルモノマーとしては、カルボキシル基及び/又はその塩を有するビニルモノマーを含有することが好ましい。
カルボキシル基を有するビニルモノマーとしては、上述したビニルモノマー(y)の作製と同様の、炭素数30以下の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、及びその無水物を用いることができる。特に好ましいものはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸である。カルボキシル基の塩の種類としてはアルカリ金属塩が好ましく、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が特に好ましい。
前記カルボキシル基及び/又はその塩を有するビニルモノマーの量は、共重合に使用する全モノマーの量を100質量%とした時、1.0質量%以上、20.0質量%以下の割合であることが好ましい。上記モノマー量をこの範囲とすることで、トナーに好適な帯電性能を付与することができる。より好ましくは、3.0質量%以上、15.0質量%以下である。
また、前記他のビニルモノマーとして、芳香環を有するビニルモノマーをさらに含有することが好ましい。
芳香環を有するビニルモノマーとしては、具体的には以下のものが挙げられる。
スチレン及びそのハイドロカルビル(アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アルケニル)置換体、具体的にはα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ビニルナフタレン。これらの中で、特に好ましいものはスチレンである。スチレンモノマーは、共重合性に優れるという利点に加え、トナーの帯電性能をより安定化させやすいという利点も有している。
その他にも、以下に例示する通常のビニル系樹脂の原料となるビニルモノマーを用いることもできるが、この限りではない。
脂肪族ビニル炭化水素:アルケン類(具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン)、前記以外のα−オレフィン;アルカジエン類(具体的にはブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエン)。
脂環式ビニル炭化水素:モノ−もしくはジ−シクロアルケンおよびアルカジエン類(具体的にはシクロヘキセン、シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン);テルペン類(具体的にはピネン、リモネン、インデン)。
ビニルエステル:具体的には酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチルα−エトキシアクリレート、炭素数1以上11以下のアルキル基(直鎖もしくは分岐)を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート)、ジアルキルフマレート(フマル酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(マレイン酸ジアルキルエステル)(2個のアルキル基は、炭素数2以上8以下の、直鎖、分枝鎖もしくは脂環式の基である)、ポリアリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン)、ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系モノマー(ポリエチレングリコール(分子量300)モノアクリレート、ポリエチレングリコール(分子量300)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノアクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)モノメタクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物アクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(エチレンオキサイドを以下EOと略記する)10モル付加物メタクリレート、ラウリルアルコールEO30モル付加物アクリレートラウリルアルコールEO30モル付加物メタクリレート)、ポリアクリレート類およびポリメタクリレート類(多価アルコール類のポリアクリレートおよびポリメタクリレート:エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート。ポリエチレングリコールジメタクリレート。
前記樹脂Aのテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)は、15,000以上、100,000以下であることが好ましい。Mwを上記の範囲とすることで、樹脂Aが適度な硬度を持つようになり、トナーの耐久性が向上する。15,000よりも小さいと耐久性が低下しやすくなり、100,000よりも大きいと低温定着性が低下する場合がある。Mwのより好ましい範囲は20,000以上、80,000以下である。
トナー粒子は、前記樹脂Aを3.0質量%以上、15.0質量%以下含有することが好ましい。トナー粒子中の樹脂Aの含有量をこの範囲とすることで、トナーの低温定着性の向上と環境安定性の向上が顕著となる。
トナーにおけるシェル相は、前記樹脂Aの他、樹脂Bを含有することも可能である。前記樹脂Bは、結晶性樹脂、非晶性樹脂のいずれであってもよく、これらを併用してもよい。前記結晶性樹脂としては、結晶性ポリエステルの他、結晶性アルキル樹脂も使用可能である。前記非晶性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂やポリスチレンといったビニル系樹脂が挙げられるが、その限りではない。また、これら樹脂は、ウレタン、ウレア、エポキシの変性を行っても良い。
前記シェル相を構成する樹脂中の前記樹脂Aの割合は、50.0質量%以上であることが好ましく、前記樹脂Aのみから構成されることが特に好ましい。前記樹脂Aが50.0質量%よりも少ないと、上述した低温定着性や環境安定性の効果が発現しにくくなることがある。
前記シェル相は、コア表面の被覆の均一性を高める観点から、コアに対して3.0質量%以上、30.0質量%以下含有することが好ましい。より好ましくは3.0質量%以上、20.0質量%以下である。尚、本発明においては、シェル相がコアの表面を完全には被覆していなくてもよく、コアが一部露出しているような形態も含む。また、明確な界面を有する層としてシェル相がコアを被覆しておらず、界面が明確でない状態で被覆している形態も含む。
トナーに含まれる結着樹脂について説明する。
結着樹脂は、結晶性樹脂、非晶性樹脂のいずれであってもよく、これらを併用してもよいが、結晶性樹脂を主成分として含有することが好ましい。ここで、「主成分として」とは、結着樹脂中の結晶性樹脂の比率が50質量%以上であることを意味する。
上述したように、結晶性樹脂とは、ポリマーの分子鎖が規則的に配列した構造を有する樹脂であり、融点付近まではほとんど軟化せず、融点を境に急激に融解が生じて軟化する性質を有している。このような特性から、本発明のトナーの結着樹脂として結晶性樹脂を用いた場合、定着時に加熱溶融したトナーが紙の繊維の間に入り込みやすくなる。そのため、単に従来の低温定着性に対する改善効果に加え、シェル相を構成する前記樹脂Aに含まれる有機ポリシロキサン部位によって引き起こされる、定着画像からトナーが剥離しやすくなってしまうという欠点を補完しやすくなる。
前記結晶性樹脂としては、上述した樹脂Aが脂肪族ポリエステル部位を含有することから、同じ系統の脂肪族ポリエステルを含有することが、シェル相との接着性の観点から好ましい。
前記脂肪族ポリエステルの作製に用いるモノマーとしては、上述した樹脂Aに使用する脂肪族ポリエステルと同様の脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を組み合わせて用いることができる。
また、二重結合を持つ脂肪族ジオールを用いることもできる。前記二重結合を持つ脂肪族ジオールとしては、以下の化合物を挙げることができる。2−ブテン−1,4−ジオール、3−ヘキセン−1,6−ジオール、4−オクテン−1,8−ジオール。
さらに、二重結合を有するジカルボン酸を用いることもできる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸、マレイン酸が好ましい。
前記結着樹脂に含有される結晶性樹脂の融点は、50℃以上、80℃以下であることが好ましい。結晶性樹脂の融点がこの範囲であることで、トナーは溶融時に低粘度になりやすく、紙の繊維の間に入り込みやすくなる。融点が50℃よりも低いとトナーの保存性が低下することがあり、80℃よりも高いと、トナーの溶融粘度が低下しにくくなり、定着画像の安定性が低下しやすくなる。
また、前記結着樹脂に含有される結晶性樹脂の融点は、シェル相を構成する樹脂Aの融点(脂肪族ポリエステル部位に由来する)に比べ、同じかあるいは低く設定することが好ましい。そうすることで、定着時に低粘度化した結着樹脂がより紙の繊維の間に入り込みやすくなり、定着画像の安定性がより向上しやすくなる。
前記結晶性樹脂は、結晶構造をとり得る部位と結晶構造をとり得ない部位とが化学的に結合したコポリマーを含有することがより好ましい。
ここで、結晶構造をとり得る部位とは、それ自体が多数集合することで高分子鎖が規則的に配列して結晶性を発現する部位である。また、結晶構造をとり得ない部位とは、それ自体が集合しても規則的な配列は起こらずにランダムな構造をとる非晶性の部位である。
化学的に結合したコポリマーの例としては、ブロックポリマー、グラフトポリマー、スターポリマーが挙げられる。ブロックポリマーとは、一分子内で高分子鎖同士が共有結合によって結ばれたコポリマーである。前記結着樹脂は、結晶構造をとり得る部位と結晶構造をとり得ない部位とを結合したブロックポリマーを含有することが特に好ましい。
上記ブロックポリマーの形態としては、結晶性部位(A)と非晶性部位(B)とのAB型ジブロックポリマー、ABA型トリブロックポリマー、BAB型トリブロックポリマー、ABAB・・・型マルチブロックポリマーが挙げられる。
結着樹脂としての結晶性樹脂にこのようなブロックポリマーを用いることで、結着樹脂中に上記結晶性部位(A)による微小なドメインを均一に形成させることができる。その結果、定着時において結着樹脂の溶融粘度をより効果的に低下させることができ、溶融したトナーがより紙の繊維の間に入り込みやすくなる。
前記結晶性部位(A)としては、上述した脂肪族ポリエステルで構成されることが好ましい。一方、非晶性部位(B)としては、非晶性であれば特に限定されるものではなく、トナー用樹脂として一般的に用いられる非晶性樹脂と同様のものを使用することができる。ただし、非晶性部位(B)を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上、130℃以下であることが好ましく、70℃以上、130℃以下であることがより好ましい。このような非晶性部位(B)を含有することで、シャープメルトした後の定着領域におけるトナーの弾性が維持されやすくなる。
非晶性部位(B)を構成する樹脂の具体例としては、ポリウレタン樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリスチレン、スチレンブタジエン系樹脂が挙げられる。また、これら樹脂は、ウレタン、ウレア、エポキシによる変性が行われていてもよい。これらの中でも、弾性維持の観点から、非晶性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂が好適に例示できる。
以下に、非晶性部位(B)としての非晶性ポリエステル樹脂について述べる。非晶性ポリエステル樹脂の製造に使用可能なモノマーとしては、具体的には、「高分子データハンドブック:基礎編」(高分子学会編:培風館)に記載されているような、従来公知の2価または3価以上のカルボン酸と、2価または3価以上のアルコールが挙げられる。これらモノマーの具体例としては、以下の通りである。
2価のカルボン酸としては、以下を挙げることができる。コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、ドデセニルコハク酸の如き二塩基酸、およびこれらの無水物、これらの低級アルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸の如き脂肪族不飽和ジカルボン酸。
3価以上のカルボン酸としては、以下を挙げることができる。1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、およびこれらの無水物、これらの低級アルキルエステル。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
2価のアルコールとしては、以下を挙げることができる。ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール。
3価以上のアルコールとしては、以下を挙げることができる。グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
尚、酸価や水酸基価の調整を目的として、必要に応じて酢酸、安息香酸の1価の酸、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールの1価のアルコールも使用することができる。
非晶性ポリエステル樹脂は、例えば、重縮合(化学同人)、高分子実験学(重縮合と重付加:共立出版)、ポリエステル樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社編)に記載の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法を単独で、または組み合わせて用いることができる。
次に、非晶性部位(B)としてのポリウレタン樹脂について述べる。ポリウレタン樹脂は、ジオールとジイソシアネート基を含有する化合物との反応物である。
ジイソシアネート基を含有する化合物としては、上述したビニルモノマー(y)の作製と同様の、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、及びこれらジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物。以下、変性ジイソシアネートともいう)を用いることができる。特に好ましいものはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)である。
また、前記ポリウレタン樹脂は、ジイソシアネート化合物に加えて、3官能以上のイソシアネート化合物を用いることもできる。
一方、ポリウレタン樹脂に用いることのできるジオール成分としては、以下のものが挙げられる。
アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール);アルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール);ビスフェノール類(ビスフェノールA);前記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド)付加物。
前記アルキレングリコール、アルキレンエーテルグリコールのアルキル部分は直鎖状であっても、分岐していてもよい。本発明においては分岐構造のアルキレングリコールも好ましく用いることができる。
上記結晶性部位(A)と非晶性部位(B)を結合したブロックポリマーにおいて、これらを結ぶ結合形態としては、エステル結合、ウレア結合、ウレタン結合が挙げられる。これらの中でも、ウレタン結合で結合されたブロックポリマーは、シャープメルト後の定着温度領域においても適度な弾性が維持されやすく、高温オフセットを効果的に抑制することが可能となることから特に好ましい。
上記ブロックポリマーの調製方法としては、結晶性部位(A)と非晶性部位(B)とを別々に調製し、両者を結合する方法(二段階法)、結晶性部位(A)と非晶性部位(B)の原料となるモノマーを同時に仕込み、一度で調製する方法(一段階法)を用いることができる。
前記ブロックポリマーは、それぞれのポリマーの末端官能基の反応性を考慮して、種々の方法の中から選択して合成することができる。以下に、結晶性部位(A)として結晶性ポリエステルを用いた場合の、ブロックポリマーの具体的な調製例を示す。
結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルによるブロックポリマーの場合、各ユニットを別々に調製した後、結合剤を用いて結合することにより調製することができる。特に片方のポリエステルの酸価が高く、もう一方のポリエステルの水酸基価が高い場合は、結合剤を使う必要はなく、そのまま加熱減圧しつつ、縮合反応を進めることができる。このとき、反応温度は200℃付近で行うことが好ましい。
結合剤を使用する場合は、以下の結合剤が挙げられる。多価カルボン酸、多価アルコール、多価イソシアネート、多官能エポキシ、多酸無水物。これらの結合剤を用いて、脱水反応や付加反応によって合成することができる。
結晶性ポリエステルとポリウレタンによるブロックポリマーの場合は、各ユニットを別々に調製した後、結晶性ポリエステルのアルコール末端とポリウレタンのイソシアネート末端とをウレタン化反応させることにより調製することができる。また、アルコール末端を持つ結晶性ポリエステルおよびポリウレタンを構成するジオール、ジイソシアネートを混合し、加熱する方法でも合成が可能である。この場合、ジオールおよびジイソシアネートの濃度が高い反応初期はジオールとジイソシアネートが選択的に反応してポリウレタンとなり、ある程度分子量が大きくなった後にポリウレタンのイソシアネート末端と結晶性ポリエステルのアルコール末端とのウレタン化反応が起こり、ブロックポリマーとすることができる。
トナー中の上記結着樹脂は、結晶性樹脂を50質量%以上、85質量%以下含有することが好ましい。前記結晶性樹脂がブロックポリマーで構成される場合は、ブロックポリマー中の結晶性部位(A)として、上記結着樹脂の全量に対し50質量%以上、85質量%以下含有することが好ましい。結着樹脂における結晶性樹脂の含有量が50質量%以上であることで、シャープメルト性が有効に発現されやすくなる。より好ましくは、60質量%以上、80質量%以下である。
一方、上記結着樹脂は、非晶性樹脂を15質量%以上、50質量%以下含有することが好ましい。結着樹脂が前記ブロックポリマーを含有する場合は、ブロックポリマー中における非晶性部位(B)と上記非晶性樹脂の含有量の合計が、結着樹脂の全量に対して15質量%以上、50質量%以下であることが好ましい。結着樹脂における非晶性樹脂の含有量が15質量%以上であることで、シャープメルト後の弾性の維持が良好になる。より好ましくは、20質量%以上、40質量%以下である。
尚、前記非晶性樹脂としては、上記非晶性部位(B)と同様のものを使用することができる。
トナー中の前記結着樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求められる数平均分子量(Mn)が、8,000以上、30,000以下、重量平均分子量(Mw)が、15,000以上、60,000以下であることが好ましい。
数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)が上記範囲にあることで、トナーに適度な粘弾性を付与することが可能である。上記Mnのより好ましい範囲は、10,000以上、20,000以下であり、Mwのより好ましい範囲は、20,000以上、50,000以下である。
さらに、前記MnとMwの比(Mw/Mn)は、6以下であることが好ましい。Mw/Mnの値が6以下である場合、結着樹脂に含有される結晶性ポリエステルの結晶性が適度に高くなり、DSC測定における吸熱ピークがシャープになる。Mw/Mnのより好ましい範囲は、3以下である。
以下に、トナーに使用することのできる他の材料について説明する。
トナー粒子は、ワックスを含有する。ワックスとしては、具体的には、以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量オレフィン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
本発明において特に好ましく用いられるワックスは、脂肪族炭化水素系ワックス及びエステルワックスである。
本発明においてエステルワックスとは、1分子中にエステル結合を少なくとも1つ有していればよく、天然エステルワックス、合成エステルワックスのいずれを用いてもよい。
合成エステルワックスとしては、具体的には、長鎖直鎖飽和脂肪酸と長鎖直鎖飽和脂肪族アルコールから合成されるモノエステルワックスが挙げられる。上記長鎖直鎖飽和脂肪酸は一般式C2n+1COOHで表され、nの値が5以上、28以下のものが好ましく用いられる。また上記長鎖直鎖飽和脂肪族アルコールはC2n+1OHで表され、nの値が5以上、28以下のものが好ましく用いられる。
また、天然エステルワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックスおよびその誘導体が挙げられる。
上記のうち、より好ましいワックスとしては、長鎖直鎖飽和脂肪酸と長鎖直鎖飽和脂肪族アルコールとによる合成エステルワックス、もしくは、そのようなエステルを主成分とする天然ワックスである。
本発明において、トナー中におけるワックスの含有量は、好ましくは2質量%以上、20質量%以下、より好ましくは2質量%以上、15質量%以下である。2質量%より少ないと、トナーの離型性を保ちにくくなり、定着体が低温になった場合に、転写紙の巻きつきが起こりやすくなる。20質量%より多い場合は、トナー表面にワックスが露出し易くなり、耐熱保存性の低下を招く恐れがある。更に、カブリや融着といった弊害を生じやすくなる。 本発明においてワックスは、示差走査熱量測定(DSC)において、60℃以上、120℃以下に最大吸熱ピークを有することが好ましい。より好ましくは60℃以上、90℃以下である。
トナー粒子は、着色剤を含有する。本発明に好ましく使用される着色剤として、有機顔料、有機染料、無機顔料、黒色着色剤としてのカーボンブラック、磁性粉体が挙げられ、そのほかに従来トナーに用いられている着色剤を用いることが出来る。
イエロー用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、155、168、180が好適に用いられる。
マゼンタ用着色剤としては、以下のものが挙げられる。縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254が好適に用いられる。
シアン用着色剤としては、以下のものが挙げられる。銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が好適に用いられる。
トナーに用いられる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー中の分散性の点から選択される。
該着色剤は、好ましくは結着樹脂100質量部に対し、1質量部以上、20質量部以下添加して用いられる。着色剤として磁性粉体を用いる場合、その添加量は、結着樹脂100質量部に対し、40質量部以上、150質量部以下であることが好ましい。
本発明のトナーに用いられるトナー粒子には、必要に応じて荷電制御剤を含有させてもよい。また、トナー粒子に外部添加してもよい。荷電制御剤を配合することにより、荷電特性を安定化、現像システムに応じた最適の摩擦帯電量のコントロールが可能となる。
前記荷電制御剤としては、公知のものが利用でき、特に帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
前記荷電制御剤として、トナーを負荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸及びダイカルボン酸系の金属化合物が挙げられる。トナーを正荷電性に制御するものとしては、以下のものが挙げられる。ニグロシン、四級アンモニウム塩、高級脂肪酸の金属塩、ジオルガノスズボレート類、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
前記荷電制御剤の好ましい配合量は、結着樹脂100質量部に対して0.01質量部以上、20質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上、10質量部以下である。
以下に、トナー粒子の製造方法について説明する。
まず、本発明のトナーの特徴であるコアシェル構造の形成方法について述べる。
本発明のトナーにおいて、前記シェル相の形成はコアを形成した後に行っても良いが、より簡便であるという点から、前記コアの形成と前記シェル相の形成を同時に行うことが好ましい。
また、シェル相を形成する方法としては、何ら制限を受けるものではない。
例えば、前述したコアの形成後にシェル相を設ける方法の一例としては、コア粒子とシェル相を形成する樹脂微粒子を水系媒体中に分散させ、その後、前記コア粒子の表面に前記樹脂微粒子を凝集させ、固着させる方法がある。
また、前記コアの形成とシェル相の形成を同時に行う好適な方法の一例としては、いわゆる「溶解懸濁法」がある。溶解懸濁法とは、コアとなる樹脂を有機溶剤中に溶解させて樹脂組成物を調製し、得られた樹脂組成物を分散媒体中に分散して前記樹脂組成物の液状粒子の分散体を形成した後、この液状粒子の分散体から有機溶剤を除去することによって樹脂粒子を得る方法である。このとき、前記分散媒体中にシェル相となる樹脂微粒子を予め分散させておくことにより、この樹脂微粒子が前記液状粒子の表面に付着してシェル相を形成する。
前記分散媒体としては水系媒体を使用するのが一般的であるが、本発明のトナーに用いるトナー粒子の製造においては、非水系の分散媒体を使用することが好ましい。本発明のトナーにおけるシェル相を構成する樹脂微粒子は、上述した樹脂Aを含有している。したがって、非水系の分散媒体中では、前記樹脂Aに含まれる有機ポリシロキサン部位の作用によって、前記樹脂微粒子が液状粒子の表面により配向しやすくなり、環境安定性が向上しやすくなる。
上記非水系の分散媒体は、高圧状態の二酸化炭素を主成分とする媒体であることが特に好ましい。
すなわち、前記トナー粒子は、結着樹脂、着色剤、ワックスを有機溶媒中に溶解または分散させた樹脂組成物を、二酸化炭素を主成分とし、前記樹脂Aを含有する樹脂微粒子が分散された分散媒体中に分散させ、得られた分散体から前記有機溶媒を除去することによって形成したトナー粒子であることが好ましい。
本発明において好適に用いられる高圧状態の二酸化炭素とは、液体状態または超臨界状態の二酸化炭素である。ここで、液体状態の二酸化炭素とは、二酸化炭素の相図上における三重点(温度=−57℃、圧力=0.5MPa)と臨界点(温度=31℃、圧力=7.4MPa)を通る気液境界線、臨界温度の等温線、および固液境界線に囲まれた部分の温度、圧力条件にある二酸化炭素を表す。また、超臨界状態の二酸化炭素とは、上記二酸化炭素の臨界点以上の温度、圧力条件にある二酸化炭素を表す。
以下に、トナー粒子を得る上で特に好適な、高圧状態の二酸化炭素を分散媒体に用いるトナー粒子の製造方法を例示して詳細に説明する。
まず、結着樹脂、着色剤、ワックス、並びに必要に応じて他の添加物を、前記結着樹脂を溶解することのできる有機溶剤とともに、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機の如き分散機を用いて均一に溶解または分散させて樹脂組成物を調製する。
上記結着樹脂を溶解させるための有機溶剤としては、以下のものが挙げられる。アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトンの如きケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテートの如きエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブの如きエーテル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤;トルエン、キシレン、エチルベンゼンの如き芳香族炭化水素系溶剤。
次に、得られた樹脂組成物を、容器内に満たした液体状態または超臨界状態の二酸化炭素中に分散して、該樹脂組成物の液状粒子の分散体を調製する。
このとき、上記液体状態または超臨界状態の二酸化炭素中には、分散剤を分散させておく必要がある。分散剤としては、無機あるいは有機の微粒子状物質が挙げられ、目的に応じて単独あるいは2種以上を併用して用いられる。本発明においては、シェル相を形成する樹脂Aを含有する樹脂微粒子を使用する。このとき、無機微粒子分散剤や他の有機微粒子分散剤を混合して用いてもよい。
上記無機微粒子分散剤としては、具体的には、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、チタニア、酸化カルシウムの無機微粒子が挙げられる。
上記有機微粒子分散剤としては、上記樹脂Aの他、具体的には、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート、セルロースの微粒子およびこれらの混合物が挙げられる。
分散剤として樹脂の微粒子を用いる場合、非晶性樹脂の微粒子を使用すると、液体状態または超臨界状態の二酸化炭素が前記樹脂中に溶解して可塑化させ、樹脂のガラス転移温度(Tg)を低下させるため、トナー粒子同士が凝集しやすくなる。したがって、上記樹脂の微粒子には結晶性を有する樹脂を使用することが好ましく、非晶性樹脂を用いる場合には、架橋構造を導入することが好ましい。また、非晶性樹脂微粒子を結晶性樹脂で被覆した微粒子であってもよい。
上記分散剤は、そのまま用いても良いが、上記樹脂組成物による液状粒子の表面への吸着性を持たせるため、各種処理によって表面改質されていてもよい。具体的には、シラン系、チタネート系、アルミネート系のカップリング剤による表面処理や、各種界面活性剤による表面処理、ポリマーによるコーティング処理が挙げられる。
上記液状粒子の表面に吸着した分散剤は、トナー粒子形成後もそのまま残留するため、分散剤として樹脂Aや他の樹脂微粒子を用いた場合には、樹脂微粒子がシェル相として表面を被覆したトナー粒子を形成することができる。このとき、樹脂微粒子の粒径は、体積平均粒径(Dv)で0.03μm以上、0.30μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.05μm以上、0.10μm以下である。樹脂微粒子の粒径が小さ過ぎる場合、造粒時の液状粒子の安定性が低下する傾向にある。大き過ぎる場合は、液状粒子の粒径を所望の大きさに制御することが困難になる。
また、樹脂微粒子の配合量は、上記トナー粒子を構成する材料の溶解液中に含まれる固形分量に対して3.0質量部以上、20.0質量部以下であることが好ましく、液状粒子の安定性や所望する粒径に合わせて適宜調整することができる。
トナー粒子の製造において、上記分散剤を液体状態または超臨界状態の二酸化炭素中に分散させる方法は、如何なる方法を用いてもよい。具体例としては、上記分散剤と液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を容器内に仕込み、撹拌や超音波照射により直接分散させる方法が挙げられる。また、液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を仕込んだ容器に、上記分散剤を有機溶剤に分散させた分散液を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。
また、上記樹脂組成物を液体状態または超臨界状態の二酸化炭素からなる分散媒体中に分散させる方法は、いかなる方法を用いてもよい。具体例としては、上記分散剤を分散させた状態の液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を入れた容器に、上記樹脂組成物を、高圧ポンプを用いて導入する方法が挙げられる。また、上記樹脂組成物を仕込んだ容器に、上記分散剤を分散させた状態の液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を導入してもよい。
上記した液体状態または超臨界状態の二酸化炭素による分散媒体は、単一相であることが好ましい。上記樹脂組成物を液体状態または超臨界状態の二酸化炭素中に分散させて造粒を行う場合、液状粒子中の有機溶剤の一部は分散体中に移行する。このとき、二酸化炭素を含む相の他に、有機溶剤の相が分離した状態で存在することは、液状粒子の安定性が損なわれる原因となり好ましくない。したがって、上記分散媒体の温度や圧力、液体状態または超臨界状態の二酸化炭素に対する上記溶解液の量は、二酸化炭素と有機溶剤とが均一相を形成し得る範囲内に調整することが好ましい。
また、上記分散媒体の温度および圧力については、造粒性(液状粒子の形成のし易さ)や上記樹脂組成物中の構成成分の上記分散媒体への溶解性にも注意が必要である。例えば、上記樹脂組成物中の樹脂やワックスは、温度条件や圧力条件によっては、上記分散媒体に溶解することがある。通常、低温、低圧になるほど上記成分の分散媒体への溶解性は抑制されるが、形成した油滴が凝集・合一を起こし易くなり、造粒性は低下する。一方、高温、高圧になるほど造粒性は向上するものの、上記成分が上記分散媒体に溶解し易くなる傾向を示す。
さらに、上記分散媒体の温度については、結着樹脂中に結晶性樹脂を含有する場合、結晶性が損なわれないよう、結晶性樹脂の融点よりも低い温度であることが好ましい。したがって、トナー粒子の製造において、上記分散媒体の温度は10℃以上、40℃以下の温度範囲であることが好ましい。
また、上記分散媒体を形成する容器内の圧力は、1MPa以上、20MPa以下であることが好ましく、2MPa以上、15MPa以下であることがより好ましい。尚、本発明における圧力とは、分散媒体中に二酸化炭素以外の成分が含まれる場合には、その全圧を示す。
分散媒体中の二酸化炭素の比率は、通常70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
こうして造粒が完了した後、液状粒子中に残留している有機溶剤を、液体状態または超臨界状態の二酸化炭素による分散媒体を介して除去する。具体的には、液状粒子が分散された上記分散媒体にさらに液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を混合して、残留する有機溶剤を二酸化炭素の相に抽出し、この有機溶剤を含む二酸化炭素を、さらに液体状態または超臨界状態の二酸化炭素で置換することによって行う。
上記分散媒体と上記液体状態または超臨界状態の二酸化炭素の混合は、上記分散媒体に、これよりも高圧の液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を加えてもよく、また、上記分散媒体を、これよりも低圧の液体状態または超臨界状態の二酸化炭素中に加えてもよい。
そして、有機溶剤を含む二酸化炭素をさらに液体状態または超臨界状態の二酸化炭素で置換する方法としては、容器内の圧力を一定に保ちつつ、液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を流通させる方法が挙げられる。このとき、形成されるトナー粒子は、フィルターで捕捉しながら行う。
上記液体状態または超臨界状態の二酸化炭素による置換が十分でなく、分散媒体中に有機溶剤が残留した状態であると、得られたトナー粒子を回収するために容器を減圧する際、上記分散媒体中に溶解した有機溶剤が凝縮してトナー粒子が再溶解したり、トナー粒子同士が合一したりするといった不具合が生じる場合がある。したがって、上記液体状態または超臨界状態の二酸化炭素による置換は、有機溶剤が完全に除去されるまで行う必要がある。流通させる液体状態または超臨界状態の二酸化炭素の量は、上記分散媒体の体積に対して1倍以上、100倍以下が好ましく、さらに好ましくは1倍以上、50倍以下、最も好ましくは1倍以上、30倍以下である。
容器を減圧し、トナー粒子が分散した液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を含む分散体からトナー粒子を取り出す際は、一気に常温、常圧まで減圧してもよいが、独立に圧力制御された容器を多段に設けることによって段階的に減圧してもよい。減圧速度は、トナー粒子が発泡しない範囲で設定することが好ましい。
さらに結着樹脂中に結晶性樹脂を含有する場合は、取り出したトナー粒子に対して、結晶性樹脂の融点よりも低い温度条件にて熱処理を施すことが好ましい。本発明では、以後この熱処理をアニール処理と称する。
一般に、結晶性樹脂は、アニール処理を施すことによって結晶性が高まることが知られている。その原理は以下のように考えられている。すなわち、結晶性材料にアニール処理を行うと、その熱によって高分子鎖の分子運動性がある程度高くなるために、高分子鎖がより安定な構造、すなわち規則的な結晶構造へと再配向することで、結晶化が起こるというものである。結晶性材料の融点以上の温度で処理した場合には、高分子鎖は再配向に必要なエネルギーよりも高いエネルギーを得ることになるため、再結晶化は起こらない。
したがって、本発明におけるアニール処理は、トナー中の結晶性樹脂の分子運動を可能な限り活発化させるため、結晶性樹脂の融点に対して、限られた温度範囲内で行うことが重要である。具体的には、得られたトナー粒子について昇温速度10.0℃/minの条件でDSC測定を行って結晶性樹脂に由来する吸熱ピーク温度を求め、このピーク温度から15℃差し引いた温度以上、5℃差し引いた温度以下でアニール処理を行うことが好ましい。より好ましくは、上記ピーク温度から10℃差し引いた温度以上、5℃差し引いた温度以下の温度範囲である。
また、アニール処理時間は、トナー中の結晶性樹脂の割合や種類、結晶状態によって適宜調整可能であるが、通常は1時間以上、50時間以下の範囲で行うことが好ましい。アニール時間が1時間に満たない場合は、再結晶化の効果は得られにくい。一方、50時間を超えるアニール処理を行っても、それ以上の効果は期待できない。より好ましくは、2時間以上、24時間以下の範囲である。
尚、本発明において、アニール処理は、トナー粒子の形成工程後であれば、どの段階で行ってもよい。
上記トナー粒子に無機微粒子を外添してトナーを製造する工程を含むことも可能である。当該無機微粉体は、トナーの流動性を向上させる機能、トナーの帯電を均一化する機能を有する。
上記無機微粉体としては、シリカ微粉体、酸化チタン微粉体、アルミナ微粉体またはそれらの複合酸化物微粉体の如き微粉体が挙げられる。これらの無機微粉体の中でも、シリカ微粉体および酸化チタン微粉体が好ましい。
シリカ微粉体としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカまたはヒュームドシリカ、および水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。無機微粉体としては、表面およびシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNaO、SO 2−の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカは、製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタン他の如き金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって製造された、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体であっても良い。
また、無機微粉体としては、無機微粉体自体が疎水化処理されることによって、トナーの帯電量の調整、環境安定性の向上、高湿環境下での特性の向上を達成することができるので、疎水化処理された無機微粉体が用いられることがより好ましい。トナーに外添された無機微粉体が吸湿すると、トナーとしての帯電量が低下し、現像性や転写性の低下が生じ易くなる。
無機微粉体の疎水化処理の処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独で或いは併用して用いられても良い。
その中でも、シリコーンオイルにより処理された無機微粉体が好ましい。より好ましくは、無機微粉体をカップリング剤で疎水化処理すると同時或いは処理した後に、シリコーンオイルにより処理した疎水化処理無機微粉体が高湿環境下でもトナーの帯電量を高く維持し、選択現像性を低減する上で好ましい。
上記無機微粉体の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上、4.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上、3.5質量部以下である。
トナーは、重量平均粒径(D4)が、3.0μm以上、8.0μm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、5.0μm以上、7.0μm以下である。このような重量平均粒径(D4)のトナーを用いることは、トナーのハンドリング性を良好にしつつ、ドットの再現性を十分に満足する上で好ましい。
さらに、トナーの重量平均粒径(D4)と個数平均粒径(D1)の比(D4/D1)は、1.25以下であることが好ましい。より好ましくは1.20以下である。
本発明のトナーにおける、各種物性の測定方法について以下に説明する。
<脂肪族ポリエステル部位のエステル基濃度の測定方法>
シェル相を構成する樹脂Aに使用する脂肪族ポリエステル部位のエステル基濃度は、以下のようにして算出する。
(1)試料を0.1乃至0.3g精秤し、重さをW(g)とする。
(2)300(ml)の三角フラスコに試料を入れ、0.5mol/lの水酸化カリウムのエタノール溶液25mlを加える。
(3)三角フラスコに空気冷却器を取り付け、ときどき内容物を振り混ぜながら30分間水浴、砂浴又は熱板で穏やかに加熱して反応させる。加熱するときは還流するエタノールの環が空気冷却器の上端に達しないように加熱温度を調節する。
(4)反応が終わった後、直ちに冷却し、内容物が寒天状に固まらないうちに空気冷却器の上から少量の水、又はキシレン/エタノール(1/3)混合溶液を吹き付けてその内壁を洗浄した後、空気冷却器を外す。
(5)0.5mol/lの塩酸を用いて、電位差滴定装置を用いて滴定する(例えば、京都電子株式会社製の電位差滴定装置AT−400(win workstation)とABP−410電動ビュレットを用いての自動滴定が利用できる。)。
(6)この時の塩酸の使用量をS(ml)とし、同時にブランクを測定し、この時の塩酸の使用量をB(ml)とする。
(7)次式によりエステル基濃度を計算する。fは塩酸のファクターである。
エステル基濃度(mmol/g)={(B−S)×0.5f}/W
<有機ポリシロキサン構造を有するビニルモノマー(z)の重合度nの測定方法>
シェル相を構成する樹脂Aに使用する有機ポリシロキサン構造を有するビニルモノマー(z)の重合度nの測定は、1H−NMRにより以下の条件にて行う。
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料(ビニルモノマー(z))50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて測定試料を調製する。当該測定試料を用いて上記条件にて測定し、1H−NMRチャートを得る。
得られた1H−NMRチャートより、ケイ素と結合した炭素に結合した水素に帰属されるピーク(約0.0ppm)の積分値Sを算出する。同様に、ビニル基の末端水素の1つに帰属されるピーク(約6.0ppm)の積分値Sを算出する。
ビニルモノマー(z)の重合度nは、上記積分値Sおよび積分値Sを用いて、次式によって算出される値の小数点以下を四捨五入して求める。ここで、nは、1つのケイ素原子と結合した炭素原子に結合した水素原子の数の合計である。
ビニルモノマー(z)の重合度 n={(S−n)/n}/S
<トナー粒子中の樹脂Aの含有量の測定方法>
トナー粒子中の樹脂Aの含有量は、蛍光X線分析(XRF)によって測定されるSi量から算出して求める。測定装置には、波長分散型蛍光X線分析装置Axios advanced(PANalytical社製)を使用する。
まず、トナー粒子について、He雰囲気下、FP法にてNaからUまでの元素を直接測定する。検出された元素の総質量を100%として、ソフトウエアUniQuant5(ver.5.49)にて総質量に対するSiの含有量X(質量%)を求める。
次に、樹脂Aについても同様にして測定を行い、Siの含有量Y(質量%)を求める。樹脂Aの含有量は、上記XおよびYの値を用いて、次式により計算して求める。
樹脂Aの含有量(質量%)=X/(Y/100)
<トナー粒子表面の樹脂Aによる被覆率の測定方法>
トナー粒子表面に存在する樹脂Aによる被覆率は、X線光電子分光分析(ESCA)による表面組成分析で求めた有機ポリシロキサン部位に由来するSi量の値から算出する。ESCAの装置及び測定条件は、下記の通りである。
使用装置:アルバック−ファイ社製 Quantum 2000
分析方法:ナロー分析
測定条件:
X線源:Al−Kα
X線条件:100μ25W15kV
光電子取り込み角度:45°
PassEnergy:58.70eV
測定範囲:φ100μm
まず、トナー粒子について、上記の条件で測定を行い、炭素1s軌道のC−C結合に由来するピークを285eVに補正する。その後、100eV以上103eV以下にピークトップが検出されるケイ素2p軌道のSiO結合のピーク面積から、アルバック−ファイ社提供の相対感度因子を用いることで、構成元素の総量に対する有機ポリシロキサン構造に由来するSi量X(atomic%)を算出する。なお、Si2p軌道の他ピーク(SiO:103eVより大きく、105eV以下)が検出される場合は、SiO結合のピークに対し波形分離を行うことで、Si−O結合のピーク面積を算出する。
次に、樹脂Aについても同様にして測定を行い、Si量Y(atomic%)を求める。
樹脂Aによるトナー粒子表面の被覆率は、上記XおよびYの値を用いて、次式により計算して求める。
樹脂Aによる被覆率(%)=X/(Y/100)
<最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)の測定方法>
トナー、結晶性樹脂、ブロックポリマー、脂肪族ポリエステル部位の最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)は、示査走査熱量計DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度 :10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。そのときの最大吸熱ピークのピーク温度をTpとする。ここで、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことである。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)の測定方法>
樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分の数平均分子量(Mn)、および重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
(1)測定試料の作製
樹脂(試料)とTHFとを約0.5乃至5mg/ml(例えば約5mg/ml)の濃度で混合し、室温にて数時間(例えば5乃至6時間)放置した後、充分に振とうし、THFと試料を試料の合一体がなくなるまで良く混ぜる。さらに、室温にて12時間以上(例えば24時間)静置する。この時、試料とTHFの混合開始時点から、静置終了の時点までの時間が24時間以上となるようにする。
その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.45乃至0.5μm、マイショリディスクH−25−2[東ソー社製]、エキクロディスク25CR[ゲルマン サイエンスジャパン社製]が好ましく利用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。
(2)試料の測定
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度に於けるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、試料濃度を0.5乃至5mg/mlに調整した樹脂のTHF試料溶液を50乃至200μl注入して測定する。
試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作製された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical Co.製或いは東洋ソーダ工業社製の、分子量が6.0×10、2.1×10、4.0×10、1.75×10、5.1×10、1.1×10、3.9×10、8.6×10、2.0×10、4.48×10のものを用いた。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
尚、カラムとしては、1×10乃至2×10の分子量領域を適確に測定する為に、市販のポリスチレンゲルカラムを下記のように複数組み合わせて用いる。本発明における、GPCの測定条件は以下の通りである。
[GPC測定条件]
装置:LC−GPC 150C(ウォーターズ社製)
カラム:ショウデックスKF801、802、803、804、805、806、807(昭和電工株式会社製)の7連
カラム温度:40℃
移動相:THF(テトラヒドロフラン)
<結晶構造をとり得る部位の含有量(質量基準)の測定方法>
ブロックポリマーにおける結晶構造をとり得る部位(例えば、結晶性ポリエステル)の含有量(質量基準)は、1H−NMRにより、以下の条件にて測定する。
測定装置 :FT NMR装置 JNM−EX400(日本電子社製)
測定周波数:400MHz
パルス条件:5.0μs
周波数範囲:10500Hz
積算回数 :64回
測定温度 :30℃
試料(ブロックポリマー)50mgを内径5mmのサンプルチューブに入れ、溶媒として重クロロホルム(CDCl)を添加し、これを40℃の恒温槽内で溶解させて測定試料を調製する。当該測定試料を上記条件にて測定し、1H−NMRチャートを得る。得られた1H−NMRチャートより、結晶性ポリエステルの構成要素に帰属されるピークの中から、他の構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値Sを算出する。同様に、非晶性ポリマーの構成要素に帰属されるピークの中から、他の構成要素に帰属されるピークとは独立したピークを選択し、このピークの積分値Sを算出する。結晶性ポリエステルの含有量(モル%)は、上記積分値Sおよび積分値Sを用いて、以下のようにして求める。尚、n、nは、着眼したピークが帰属される構成要素に於ける水素の数である。
結晶性ポリエステルの含有量(モル%)={(S/n)/((S/n)+(S/n))}×100
こうして得られた含有量(モル%)の値は、各成分の分子量から「質量%」に換算される。
<非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定方法>
非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示査走査熱量計DSC Q1000(TA Instruments社製)を用いて以下の条件にて測定する。
測定モード:モジュレーションモード
昇温速度:2℃/min
モジュレーション温度振幅:±0.6℃/min
周波数:1回/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:150℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、リファレンスとして空の銀製のパンを用い、測定する。測定は1回のみで、得られた昇温時のリバーシングヒートフロー曲線から、吸熱を示す曲線と前後のベースラインとの接線を描き、それぞれの接線の交点を結ぶ直線の中点を求めて、これをガラス転移温度とする。
<ワックスの融点の測定方法>
ワックスの融点は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定する。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約2mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、リファレンスとして空の銀製のパンを用い、測定する。測定は、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30℃から200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを示す温度をワックスの融点とする。上記最大吸熱ピークとは、ピークが複数存在する場合には、最も吸熱量の大きいピークをいう。
<樹脂微粒子の体積平均粒径(Dv)の測定方法>
樹脂微粒子の体積平均粒径(Dv)は、マイクロトラック粒度分布測定装置HRA(X−100)(日機装社製)を用い、0.001μm乃至10μmのレンジ設定で測定を行い、体積平均粒径(μm)として測定する。尚、希釈溶媒としては水を選択する。
<トナーの重量平均粒径(D4)、及び個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の、液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてト尚分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、これは本発明を何ら限定するものではない。なお、実施例及び比較例の部数及び%は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
<脂肪族ポリエステル1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・セバシン酸 134.0質量部
・1,4−ブタンジオール 66.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、180℃にて6時間攪拌を行った。その後、攪拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、脂肪族ポリエステル1を合成した。得られた脂肪族ポリエステル1の物性を表2に示す。
<脂肪族ポリエステル2乃至8の合成>
脂肪族ポリエステル1の合成において、原料の仕込みを表1のように変更した以外はすべて同様にして、脂肪族ポリエステル2乃至8を合成した。得られた脂肪族ポリエステル2乃至8の物性を表2に示す。
<脂肪族ポリエステル構造を有するビニルモノマー(y1)の合成>
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、キシリレンジイソシアネート(XDI)59.0質量部を仕込み、2−ヒドロキシエチルメタクリレート41.0質量部を滴下し、55℃で4時間反応させて、モノマー中間体を得た。
次に、撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、脂肪族ポリエステル1を83.0質量部、およびテトラヒドロフラン(THF)を100.0質量部仕込み、50℃で溶解させた。その後、前記モノマー中間体を10.0質量部滴下し、50℃で4時間反応させ、ビニルモノマー(y1)溶液を得た。溶媒であるTHFを留去することで、ビニルモノマー(y1)を得た。
<脂肪族ポリエステル構造を有するビニルモノマー(y2)乃至(y6)の合成>
ビニルモノマー(y1)の合成において、脂肪族ポリエステル1を脂肪族ポリエステル2乃至6に変えた以外はすべて同様にして、ビニルモノマー(y2)乃至(y6)を合成した。
<有機ポリシロキサン構造を有するビニルモノマー(z1)乃至(z5)の準備>
本発明においては、表3に示す市販のメタクリル変性ポリシロキサンを用意し、有機ポリシロキサン構造を有するビニルモノマー(z1)乃至(z5)として使用した。
例えば、ビニルモノマー(z1)は、下記式(2)において、R乃至R11、及び、R13がメチル基であり、R12がプロピレン基であり、重合度nが3である。
<シェル用樹脂微粒子分散液1の調製>
ビーカーに、下記原料を仕込み、20℃にて攪拌、混合して単量体溶液を調製した。
・ビニルモノマー(y4) 40.0質量部
・ビニルモノマー(z1) 15.0質量部
・メタクリル酸(MAA) 10.0質量部
・スチレン(St) 35.0質量部
・アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル 0.3質量部
・ノルマルヘキサン 80.0質量部
上記単量体溶液を、あらかじめ加熱乾燥しておいた滴下漏斗に導入した。これとは別に、加熱乾燥した二口フラスコに、ノルマルヘキサン800.0質量部を仕込んだ。窒素置換した後、滴下漏斗を取り付け、密閉下、40℃にて1時間かけて単量体溶液を滴下した。滴下終了から3時間攪拌を続け、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル0.3質量部およびノルマルヘキサン20.0質量部の混合物を再度滴下し、40℃にて3時間攪拌を行った。その後、室温まで冷却することで、シェル用樹脂微粒子1を含有する、固形分量10.0質量%のシェル用樹脂微粒子分散液1を得た。シェル用樹脂微粒子1の物性を表4に示す。
<シェル用樹脂微粒子分散液2乃至23の調製>
シェル用樹脂微粒子分散液1の調製において、原料の仕込みを表4のように変更した以外はすべて同様にして、シェル用樹脂微粒子2乃至23を含有する、固形分量10.0質量%のシェル用樹脂微粒子分散液2乃至23を調製した。得られたシェル用樹脂微粒子2乃至23の物性を表4に示す。
<ブロックポリマー1の合成>
撹拌装置および温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら以下の原料を仕込んだ。
・脂肪族ポリエステル7 210.0質量部
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 56.0質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 34.0質量部
・テトラヒドロフラン(THF) 300.0質量部
50℃まで加熱し、15時間かけてウレタン化反応を施した。その後、ターシャリーブチルアルコール3.0質量部を添加し、イソシアネート末端を修飾した。溶媒であるTHFを留去し、ブロックポリマー1を合成した。得られたブロックポリマー1は、Mnが11,800、Mwが27,400、最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)が58℃であった。
<ブロックポリマー2の合成>
ブロックポリマー1の合成において、原料の仕込みを以下のように変えた以外はすべて同様にして、ブロックポリマー2を合成した。
・脂肪族ポリエステル7 135.0質量部
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 97.0質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 68.0質量部
・テトラヒドロフラン(THF) 300.0質量部
得られたブロックポリマー2は、Mnが14,700、Mwが33,500、最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)が58℃であった。
<非晶性樹脂1の合成>
加熱乾燥した二口フラスコに、窒素を導入しながら以下の原料を仕込んだ。
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン30.0質量部
・ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
34.0質量部
・テレフタル酸 30.0質量部
・フマル酸 6.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
減圧操作により系内を窒素置換した後、215℃にて5時間撹拌を行った。その後、撹拌を続けながら減圧下にて230℃まで徐々に昇温し、さらに2時間保持した。粘稠な状態となったところで空冷し、反応を停止させることで、非晶性ポリエステルである非晶性樹脂1を合成した。得られた非晶性樹脂1は、数平均分子量(Mn)が2,200、重量平均分子量(Mw)が9,800、ガラス転移温度(Tg)が60℃であった。
<非晶性樹脂2の合成>
非晶性樹脂1の合成において、原料の仕込みを以下のように変えた以外はすべて同様にして、非晶性樹脂2を合成した。
・ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
30.0質量部
・ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
33.0質量部
・テレフタル酸 21.0質量部
・無水トリメリット酸 1.0質量部
・フマル酸 3.0質量部
・ドデセニルコハク酸 12.0質量部
・酸化ジブチルスズ 0.1質量部
得られた非晶性樹脂2は、Mnが7,200、Mwが43,000、Tgが63℃であった。
<非晶性樹脂3の合成>
撹拌装置および温度計を備えた反応容器中に、窒素置換をしながら以下の原料を仕込んだ。
・キシリレンジイソシアネート(XDI) 117.0質量部
・シクロヘキサンジメタノール(CHDM) 83.0質量部
・アセトン 200.0質量部
50℃まで加熱し、15時間かけてウレタン化反応を施した。その後、ターシャリーブチルアルコール3.0質量部を添加し、イソシアネート末端を修飾した。溶媒であるアセトンを留去し、非晶性樹脂3を合成した。得られた非晶性樹脂3は、Mnが4,400、Mwが20,000であった。
<ブロックポリマー溶液1の調製>
撹拌装置を備えたビーカーに、アセトン500.0質量部、ブロックポリマー1の500.0質量部を投入し、完全に溶解するまで撹拌を続け、ブロックポリマー溶液1を調製した。
<ブロックポリマー溶液2の調製>
ブロックポリマー樹脂溶液1の調製において、ブロックポリマー1をブロックポリマー2に変えた以外はすべて同様にして、ブロックポリマー溶液2を調製した。
<脂肪族ポリエステル樹脂溶液1の調製>
攪拌装置のついたビーカーに、THF500.0質量部、脂肪族ポリエステル8を500.0質量部投入し、温度40℃で完全に溶解するまで攪拌を続け、脂肪族ポリエステル樹脂溶液1を調製した。
<非晶性樹脂溶液1の調製>
攪拌装置のついたビーカーに、アセトン500.0質量部、非晶性樹脂3を500.0質量部投入し、温度40℃で完全に溶解するまで攪拌を続け、非晶性樹脂溶液1を調製した。
<非晶性樹脂溶液2の調製>
非晶性樹脂溶液1の調製において、非晶性樹脂3の500.0質量部を、非晶性樹脂1の400.0質量部と、非晶性樹脂2の100.0質量部に変えた以外はすべて同様にして、非晶性樹脂溶液2を調製した。
<着色剤粒子分散液1の調製>
・C.I.Pigment Blue15:3 100.0質量部
・アセトン 150.0質量部
・ガラスビーズ(1mm) 300.0質量部
上記材料を耐熱性のガラス容器に投入し、ペイントシェーカー(東洋精機製)にて5時間分散を行い、ナイロンメッシュにてガラスビーズを取り除き、固形分量40.0質量%の着色剤粒子分散液1を得た。
<ワックス粒子分散液1の調製>
・パラフィンワックスHNP10(吸熱メインピークのピーク温度:75℃、日本精蝋社製) 16.0質量部
・ワックス分散剤(ポリエチレン15.0質量部の存在下、スチレン50.0質量部、n−ブチルアクリレート25.0質量部、アクリロニトリル10.0質量部をグラフト共重合させた、ピーク分子量8,500の共重合体) 8.0質量部
・アセトン 76.0質量部
上記を撹拌羽根突きのガラスビーカー(IWAKIガラス製)に投入し、系内を70℃に加熱することでパラフィンワックスをアセトンに溶解させた。次いで、系内を50rpmで緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、3時間かけて25℃にまで冷却させ乳白色の液体を得た。
この溶液を1mmのガラスビーズ20質量部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカーにて3時間の分散を行い、体積平均粒径が0.27μmのワックス粒子を固形分として16.0質量%含有する、ワックス粒子分散液1を得た。
<実施例1>
(処理前粒子の製造)
図1の実験装置において、まず、バルブV1、V2、および圧力調整バルブV3を閉じ、トナー粒子を捕捉するためのフィルターと撹拌機構とを備えた耐圧の造粒タンクT1にシェル用樹脂微粒子分散液1を仕込み、内部温度を25℃に調整した。次に、バルブV1を開き、ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素(純度99.99%)を造粒タンクT1に導入し、内部圧力が4MPaに到達したところでバルブV1を閉じた。
一方、樹脂溶解液タンクT2にブロックポリマー溶液1、ワックス分散液1、着色剤分散液1、アセトンを仕込み、内部温度を25℃に調整した。
次に、バルブV2を開き、造粒タンクT1の内部を2000rpmで撹拌しながら、ポンプP2を用いて樹脂溶解液タンクT2の内容物を造粒タンクT1内に導入し、すべて導入を終えたところでバルブV2を閉じた。
導入後の、造粒タンクT1の内部圧力は5MPaとなった。
尚、各種材料の仕込み量(質量比)は、次の通りである。
・シェル用樹脂微粒子分散液1 87.0質量部
・ブロックポリマー溶液1 182.0質量部
・着色剤粒子分散液1 12.5質量部
・ワックス粒子分散液1 25.0質量部
・アセトン 30.5質量部
・二酸化炭素 480.0質量部
導入した二酸化炭素の質量は、二酸化炭素の温度(25℃)、および圧力(5MPa)から、二酸化炭素の密度を下記文献に記載の状態式より算出し、これに造粒タンクT1の体積を乗じることにより算出した。(Journal of Physical and Chemical Reference data、vol.25、P.1509−1596)
樹脂溶解液タンクT2の内容物の造粒タンクT1への導入を終えた後、さらに、2000rpmで10分間撹拌して造粒を行った。
次に、バルブV1を開き、ボンベB1からポンプP1を用いて二酸化炭素を造粒タンクT1内に導入した。この際、圧力調整バルブV3を10MPaに設定し、造粒タンクT1の内部圧力を10MPaに保持しながら、さらに二酸化炭素を流通させた。この操作により、造粒後の液滴中から抽出された有機溶剤(主にアセトン)を含む二酸化炭素を、溶剤回収タンクT3に排出し、有機溶剤と二酸化炭素を分離した。
造粒タンクT1内への二酸化炭素の導入は、最初に造粒タンクT1に導入した二酸化炭素質量の5倍量に到達した時点で停止した。この時点で、有機溶剤を含む二酸化炭素を、有機溶剤を含まない二酸化炭素で置換する操作は完了した。
さらに、圧力調整バルブV3を少しずつ開き、造粒タンクT1の内部圧力を大気圧まで減圧することで、フィルターに捕捉されている処理前粒子1を得た。得られた処理前粒子1のDSC測定を行い、最大吸熱ピークのピーク温度を求めたところ、58℃であった。
(アニール処理)
アニール処理は、恒温乾燥器(佐竹化学製41−S5)を用いて行った。まず、恒温乾燥器の内部温度を50℃に調整した。次いで、上記処理前粒子1を、ステンレス製バットに均等になるように広げて入れ、これを前記恒温乾燥器に入れて2時間静置した後、取り出した。こうして、アニール処理されたトナー粒子(処理後)1を得た。得られたトナー粒子(処理後)は、蛍光X線分析(XRF)によるSi量の測定によって、シェル用樹脂微粒子に由来する樹脂を8.0質量%含有することが確認された。また、X線光電子分光分析(ESCA)によるSi量の測定によって、シェル用樹脂微粒子に由来する樹脂で表面の95%が被覆された粒子であることが確認された。
(トナーの調製)
上記トナー粒子(処理後)1の100.0質量部に対し、ヘキサメチルジシラザンで処理された疎水性シリカ微粉体1.8質量部(個数平均一次粒子径:7nm)、ルチル型酸化チタン微粉体0.15質量部(個数平均一次粒子径:30nm)をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて5分間乾式混合して、本発明のトナー1を得た。
<実施例2乃至16>
実施例1において、処理前粒子の製造工程におけるシェル用樹脂微粒子分散液1に代えて、シェル用樹脂微粒子分散液2乃至16を使用した以外は、実施例1とすべて同様にして、処理前粒子2乃至16を得た。さらに、実施例1とすべて同様にしてアニール処理を行い、本発明のトナー2乃至16を得た。
<実施例17>
実施例1において、処理前粒子の製造工程におけるシェル用樹脂微粒子分散液1の仕込み量を20.4質量部に変えた以外は、実施例1とすべて同様にして、処理前粒子17を得た。さらに、実施例1とすべて同様にしてアニール処理を行い、本発明のトナー17を得た。
<実施例18>
実施例1において、処理前粒子の製造工程におけるシェル用樹脂微粒子分散液1の仕込み量を52.6質量部に変えた以外は、実施例1とすべて同様にして、処理前粒子18を得た。さらに、実施例1とすべて同様にしてアニール処理を行い、本発明のトナー18を得た。
<実施例19>
実施例1において、処理前粒子の製造工程におけるシェル用樹脂微粒子分散液1の仕込み量を136.4質量部に変えた以外は、実施例1とすべて同様にして、処理前粒子19を得た。さらに、実施例1とすべて同様にしてアニール処理を行い、本発明のトナー19を得た。
<実施例20>
実施例1において、処理前粒子の製造工程におけるシェル用樹脂微粒子分散液1の仕込み量を219.5質量部に変えた以外は、実施例1とすべて同様にして、処理前粒子20を得た。さらに、実施例1とすべて同様にしてアニール処理を行い、本発明のトナー20を得た。
<実施例21>
実施例1において、処理前粒子の製造工程におけるブロックポリマー溶液1に代えて、ブロックポリマー溶液2を使用した以外は、実施例1とすべて同様にして、処理前粒子21を得た。さらに、実施例1とすべて同様にしてアニール処理を行い、本発明のトナー21を得た。
<実施例22>
実施例1において、処理前粒子の製造工程におけるブロックポリマー溶液1の182.0質量部代えて、脂肪族ポリエステル樹脂溶液1の81.9質量部と、非晶性樹脂溶液1の100.1質量部を使用した以外は、実施例1とすべて同様にして、処理前粒子22を得た。さらに、実施例1とすべて同様にしてアニール処理を行い、本発明のトナー22を得た。
<比較例1乃至7>
実施例1において、処理前粒子の製造工程におけるシェル用樹脂微粒子分散液1に代えて、シェル用樹脂微粒子分散液17乃至23を使用した以外は、実施例1とすべて同様にして、処理前粒子23乃至29を得た。さらに、実施例1とすべて同様にしてアニール処理を行い、比較用のトナー23乃至29を得た。
<比較例8>
実施例1において、処理前粒子の製造工程におけるシェル用樹脂微粒子分散液1の87.0質量部に代えて、シェル用樹脂微粒子分散液18及びシェル用樹脂微粒子分散液19の各55.6質量部を使用したこと、並びに、ブロックポリマー溶液1に代えて、非晶性樹脂溶液2を使用したこと以外は、実施例1とすべて同様にして、処理前粒子30を得た。処理前粒子30については、アニール処理を行うことなく、実施例1のトナーの調製工程と同様にして、比較明のトナー30を得た。
こうして得られたトナー1乃至30の物性を表5に示す。尚、ビニルモノマー(z)を構成材料に含むシェル用樹脂微粒子を用いて作製したトナー粒子(処理後)については、X線光電子分光分析(ESCA)によるSi量の測定によって、シェル用樹脂微粒子に由来する樹脂によって被覆された粒子であることが確認された。それ以外のトナー粒子(処理後)については、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察によって、シェル用樹脂微粒子に由来する樹脂が表面に存在することを確認した。
また、トナー1乃至30について、それぞれ常温常湿環境下(23℃、60%RH)に24時間放置したものを用意し、以下の手順に従って評価を行った。評価結果を表6に示す。
<トナーの評価方法>
(低温定着性)
市販のキヤノン製プリンターLBP5300を使用し、評価を行った。
LBP5300は、一成分接触現像を採用しており、トナー規制部材によって現像担持体上のトナー量を規制している。評価用カートリッジは、市販のカートリッジ中に入っているトナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、上記トナーを充填したものを使用した。上記カートリッジを、シアンステーションに装着し、その他にはダミーカートリッジを装着した。
次いで、厚紙A4用紙(「プローバーボンド紙」:105g/m、フォックスリバー社製)上に、先端余白5mm、幅100mm、長さ25mmの「べた」の未定着のトナー画像(単位面積あたりのトナー載り量1.2mg/cm)を形成した。
市販のキヤノン製プリンターLBP5900の定着器を、手動による定着温度設定が可能となるように改造し、定着器の回転速度を245mm/sに、ニップ内圧力を98kPaに変更した。この改造定着器を用い、常温常湿環境下(23℃、60%RH)にて、80℃から130℃の範囲で5℃ずつ定着温度を上昇させながら、上記「べた」の未定着画像の各温度における定着画像を得た。
低温定着性の評価は、コールドオフセット性による定着開始温度によって行った。
具体的には、上記方法で得られた定着画像の「べた」部分について、周方向末端から定着ベルト一周分後方の白地になる部位の濃度変化で評価した。濃度の測定は、東京電色技術センター製DENSITOMETER TC−6DSを用いて反射率(%)を測定し、濃度の値とした。濃度が0.5%変化したところをコールドオフセット発生点とし、コールドオフセットが発生しなかった最低温度を定着開始温度とした。
評価基準は以下のとおりである。尚、下記A、B、Cは問題なし。下記Dでは本発明の効果が得られていないものとみなす。
A:定着開始温度が100℃未満
B:定着開始温度が100℃以上、110℃未満
C:定着開始温度が110℃以上、120℃未満
D:定着開始温度が120℃以上
(定着画像の安定性)
上記キヤノン製プリンターLBP5300を使用し、上記低温定着性の評価と同様にして、未定着のトナー画像(単位面積あたりのトナー載り量1.2mg/cm)を形成した。
次に、上記キヤノン製プリンターLBP5900から取り出して改造した定着器を用い、定着器の回転速度を245mm/s、ニップ内圧力を98kPa、温度を110℃に設定し、常温常湿環境下(23℃、60%RH)にて、上記未定着画像の定着を行った。
得られた定着画像の画像領域に、柔和な薄紙(例えば、商品名「ダスパー」、小津産業社製)を被せ、前記薄紙の上から14.7kPa(150g/cm)の荷重をかけつつ10往復摺擦した。
摺擦前後の画像濃度をそれぞれ測定して、下記式により画像濃度の低下率ΔD(%)を算出し、このΔD(%)を定着画像安定性の指標とした。
画像濃度は、カラー反射濃度計(Color reflection densitometer X−Rite 404A:製造元 X−Rite社製)で測定した。
ΔD(%)={(摺擦前の画像濃度−摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度}×100
評価基準は以下のとおりである。
A:画像濃度低下率(ΔD)が3%未満
B:画像濃度低下率(ΔD)が3%以上、5%未満
C:画像濃度低下率(ΔD)が5%以上、10%未満
D:画像濃度低下率(ΔD)が10%以上
(帯電安定性)
サンプルの準備
トナーおよび所定のキャリア(日本画像学会標準キャリア:フェライトコアを表面処理した球形キャリアN−01)を、ふた付きのプラスチックボトルにそれぞれ1.0g、19.0g入れ、常温常湿環境下(23℃、60%RH)に5日放置した。
帯電量の測定
上記キャリアおよびトナーを入れたプラスチックボトルのふたを閉め、振とう機(YS−LD、(株)ヤヨイ製)で、1秒間に4往復のスピードで1分間振とうし、トナーとキャリアからなる現像剤を帯電させた。次に、図2に示す摩擦帯電量を測定する装置において摩擦帯電量を測定した。
図2において、底に目開き20μmのスクリーン3のある金属製の測定容器2に、該現像剤0.5g以上、1.5g以下を入れ、金属製のフタ4をする。この時の測定容器2全体の質量を精秤し、W1(g)とする。次に吸引機1(測定容器2と接する部分は少なくとも絶縁体)において、吸引口7から吸引し風量調節弁6を調整して真空計5の圧力を2.5kPaとする。この状態で2分間吸引を行い、トナーを吸引除去する。この時の電位計9の電位をV(V)とする。ここで、8はコンデンサーであり容量をC(mF)とする。また、吸引後の測定容器全体の質量を精秤し、W2(g)とする。この試料の摩擦帯電量Q(mC/kg)は下式の如く算出される。
摩擦帯電量Q(mC/kg)=C×V/(W1−W2)
帯電安定性の評価は、常温常湿環境下(23℃、60%RH)における、振とう直後の試料の摩擦帯電量をQ1(mC/kg)、振とう後5日間放置した後の上記摩擦帯電量をQ2(mC/kg)とし、放置前後の帯電量の維持率(Q2/Q1)を環境安定性の指標とした。
評価基準は以下のとおりである。
A:帯電量維持率(Q2/Q1)が0.90以上1.00以下
B:帯電量維持率(Q2/Q1)が0.80以上0.90未満
C:帯電量維持率(Q2/Q1)が0.70以上0.80未満
D:帯電量維持率(Q2/Q1)が0.70未満
(環境安定性)
サンプルの準備
トナーおよび所定のキャリア(日本画像学会標準キャリア:フェライトコアを表面処理した球形キャリアN−01)を、ふた付きのプラスチックボトルにそれぞれ1.0g、19.0g入れ、温度15℃、相対湿度10%のLL環境および温度32.0℃、相対湿度85%のHH環境に5日放置した。
帯電量の測定
上記帯電安定性の評価に示した手順に従ってトナーとキャリアからなる現像剤を帯電させ、図2に示す装置を用いて帯電量を測定した。
環境安定性の評価は、LL環境における振とう直後の試料の摩擦帯電量をQ3(mC/kg)、HH環境における上記摩擦帯電量をQ4(mC/kg)とし、両環境下での帯電量の比(Q4/Q3)を環境安定性の指標とした。
評価基準は以下のとおりである。
A:帯電量比(Q4/Q3)が0.90以上1.00以下
B:帯電量比(Q4/Q3)が0.80以上0.90未満
C:帯電量比(Q4/Q3)が0.70以上0.80未満
D:帯電量比(Q4/Q3)が0.70未満
(耐久性)
上記キヤノン製プリンターLBP5300を使用し、耐久性の評価を行った。
15℃、10%RHの低温低湿環境下にて、印字率が1%の画像を連続して出力した。1,000枚出力する毎にべた画像及びハーフトーン画像を出力し、規制部材へのトナー融着に起因する縦スジ、いわゆる現像スジの発生の有無を目視で確認した。この操作を繰返し、最終的に15,000枚の画像出力を行った。
評価基準は以下のとおりである。
A:15,000枚出力しても、現像スジの発生なし
B:13,000枚を超え、15,000枚以下で現像スジが発生
C:11,000枚を超え、13,000枚以下で現像スジが発生
D:11,000枚以下で、現像スジが発生
1 吸引機(測定容器2と接する部分は少なくとも絶縁体)
2 金属製の測定容器
3 スクリーン
4 金属製のフタ
5 真空計
6 風量調節弁
7 吸引口
8 コンデンサー
9 電位計
T1 造粒タンク
T2 樹脂溶解液タンク
T3 溶剤回収タンク
B1 二酸化炭素ボンベ
P1及びP2 ポンプ
V1及びV2 バルブ
V3 圧力調整バルブ

Claims (11)

  1. 結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するコアと、樹脂Aを含有するシェル相を有するコアシェル構造のトナー粒子を有するトナーであって、
    前記樹脂Aは、幹部位(X)、枝部位(Y)及び枝部位(Z)を有する櫛形ポリマーであり、
    (i)幹部位(X)は、ビニル系重合体であり、
    (ii)枝部位(Y)は、脂肪族ポリエステル構造を有し、且つ、ポリエステル部位のエステル基濃度が6.5mmol/g以下であり、
    (iii)枝部位(Z)は、有機ポリシロキサン構造を有し、且つ、シロキサン部位のSi−O結合の平均繰り返し単位数が2以上、100以下である、
    ことを特徴とするトナー。
  2. 前記枝部位(Z)が、下記式(1)

    (式(1)中、R乃至Rは、それぞれ独立して、置換基を有していても良い炭素数1乃至3のアルキル基、又は置換基を有していても良いアリール基を表し、Rは炭素数1乃至10のアルキレン基を表し、nは2以上、100以下の整数である。)
    で示される有機ポリシロキサン構造を有する部位を含むことを特徴とする請求項1に記載のトナー。
  3. 前記樹脂Aが、ポリエステル部位のエステル基濃度が6.5mmol/g以下である脂肪族ポリエステル構造を有するビニルモノマー(y)と、
    下記式(2)

    (式(2)中、R乃至R11は、それぞれ独立して、置換基を有していても良い炭素数1乃至3のアルキル基、又は置換基を有していても良いアリール基を表し、R12は炭素数1乃至10のアルキレン基を表し、R13は水素原子又はメチル基を表し、nは2以上、100以下の整数である。)
    で示される有機ポリシロキサン構造を有するビニルモノマー(z)を共重合することにより得られる樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載のトナー。
  4. 前記樹脂Aが、共重合に用いられる全モノマーの量を100質量%とした時、前記ビニルモノマー(y)が15.0質量%以上、50.0質量%以下、前記ビニルモノマー(z)が5.0質量%以上、25.0質量%以下、他のビニルモノマーが25.0質量%以上、80.0質量%以下の割合で共重合することにより得られる樹脂であることを特徴とする請求項3に記載のトナー。
  5. 前記他のビニルモノマーが、カルボキシル基及び/又はその塩を有するビニルモノマーを含有することを特徴とする請求項4に記載のトナー。
  6. 前記他のビニルモノマーが、芳香環を有するビニルモノマーを含有することを特徴とする請求項4又は5に記載のトナー。
  7. 前記トナー粒子が、前記樹脂Aを3.0質量%以上、15.0質量%以下含有することを特徴とする1乃至6のいずれか一項に記載のトナー。
  8. 前記結着樹脂が、結晶性樹脂を主成分として含有することを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のトナー。
  9. 前記結晶性樹脂が、結晶構造をとり得る部位と結晶構造をとり得ない部位とを結合したブロックポリマーを含有することを特徴とする、請求項8に記載のトナー。
  10. 前記トナー粒子が、前記結着樹脂、前記着色剤、前記ワックスを有機溶媒中に溶解または分散させた樹脂組成物を、二酸化炭素を主成分とし、前記樹脂Aを含有する樹脂微粒子が分散された分散媒体中に分散させ、得られた分散体から前記有機溶媒を除去することによって形成されるトナー粒子であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のトナー。
  11. 前記ポリエステル部位のエステル基濃度が5.0mmol/g以上6.5mmol/g以下であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに一項に記載のトナー。
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