JP2013129809A - 酸無水物基含有オルガノシロキサン及びその製造方法 - Google Patents

酸無水物基含有オルガノシロキサン及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】用途に応じて、1分子中に含有するアルコキシ基、及び酸無水物基の数を自由に調整することができ、かつ無機基材との親和性及び反応性を制御することができる新規な酸無水物基含有オルガノシロキサン、及び該オルガノシロキサンを安定に保持するオルガノシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】[1]式で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、A式のシロキサン単位と必要によりB式のシロキサン単位を挿入したオルガノシロキサン。
Figure 2013129809

Figure 2013129809

(Xは、酸無水物基を有する一価炭化水素基を示す。)
【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂硬化剤、樹脂改質剤、塗料改質剤、接着性改良剤、繊維の表面処理剤、無機質材料(塗料用無機顔料、プラスチック用無機充填剤、化粧料用無機粉体、ガラス、コンクリート等)の表面処理剤等として、好適に使用される酸無水物基含有オルガノシロキサン及びその製造方法に関する。また、該オルガノシロキサンを用いたオルガノシロキサン組成物に関する。
上記分野において、従来より、アルコキシシリル基、酸無水物基、SiH基等を含む有機ケイ素化合物が知られている。例えば、特許文献1(特開2003−165867号公報)には、アミノ基を有するシランカップリング剤1当量に対しテトラカルボン酸二無水物1当量を反応させて得られたシランカップリング剤が記載されている。しかし、このシランカップリング剤は、分子内にカルボキシル基を有するため、室温で固体である場合が多く、極性溶媒により希釈して使用する必要があるため、作業性が悪く、環境面への負荷も大きい等の問題があった。
特許文献2(特開2006−22158号公報)では、エポキシ樹脂と酸無水物基含有アルコキシシラン及び/又はその加水分解縮合物とを含有する硬化性樹脂組成物が記載されている。ここで取り扱われる酸無水物基含有ケイ素化合物は、室温で液体であるため、溶媒希釈が不要となり、作業性が改善されている。また、酸無水物基含有アルコキシシランの加水分解縮合物は、1分子中に複数の酸無水物基をもつため、エポキシ樹脂との架橋点を増加させることができる。しかし、酸無水物基含有アルコキシシランを加水分解縮合して、分子内に酸無水物基を複数もたせようとしたとき、水を使用するため、酸無水物環の開環反応等による経時変化が起こり、純度が低下するという問題がある。また、酸無水物基は、親水性が低いため、親水性の無機基材への親和性を制御することが困難となる。
特開2003−165867号公報 特開2006−22158号公報
近年、有機樹脂と無機基材とのハイブリット化が進む中で、酸無水物基含有有機ケイ素化合物に求められている特性も多様化してきている。
本発明は、用途に応じて、1分子中に含有するアルコキシ基、及び酸無水物基の数を自由に調整することができ、かつ無機基材との親和性及び反応性を制御することができる新規な酸無水物基含有オルガノシロキサン、及び該オルガノシロキサンを安定に保持するオルガノシロキサン組成物を提供することを目的とする。
また、該酸無水物基含有オルガノシロキサンの製造工程において、酸無水物環の開環反応を抑制することができ、かつ低コストである酸無水物基含有オルガノシロキサンの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意研究を重ねたところ、以下の本発明により上記問題が解決されることを見出した。
即ち、本発明は、下記[1]式で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、少なくとも1種類のシロキサン単位が、シロキサン結合を形成して挿入された、分子内に、アルコキシ基と、酸無水物基を有する化合物であって、かつ、上記挿入されるシロキサン単位が、下記[2a]式のA式で表されるシロキサン単位1〜100個と、必要に応じて挿入される下記[2a]式のB式で表されるシロキサン単位0〜100個からなることを特徴とするオルガノシロキサンを提供する。
Figure 2013129809
(式中、R1は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基を示す。R2は、炭素原子数1〜10のアルキル基を示す。nは、0又は1を示す。)
Figure 2013129809
(式中、Xは、酸無水物基を有する一価炭化水素基を示す。R3は、互いに独立して、水素原子、又はハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基を示す。)
また、本発明の酸無水物基含有オルガノシロキサンは、下記[1]式で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、少なくとも2種類のシロキサン単位が、シロキサン結合を形成して挿入された、分子内に、アルコキシ基と、酸無水物基と、ポリエーテル基を有する化合物であって、かつ、上記挿入されるシロキサン単位が、下記[2b]式のA式で表されるシロキサン単位1〜100個と、下記[2b]式のC式で表されるシロキサン単位1〜100個と、更に必要に応じて挿入される下記[2b]式のB式で表されるシロキサン単位0〜100個からなることが好ましい。
Figure 2013129809
(式中、R1は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基を示す。R2は、炭素原子数1〜10のアルキル基を示す。nは、0又は1を示す。)
Figure 2013129809
(式中、Xは、酸無水物基を有する一価炭化水素基を示す。Yは、ポリエーテル基を有する一価炭化水素基を示す。R3は、互いに独立して、水素原子、又はハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基を示す。)
なお、上記[2a]式及び[2b]式において、Xが、下記[3]式で表される酸無水物基を有する一価炭化水素基であり、かつYが、下記[4]式で表されるポリエーテル基を有する一価炭化水素基であることが好ましい。
Figure 2013129809
(式中、Aは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数2〜10のアルキレン基又はアルケニレン基を示す。)
Figure 2013129809
(式中、R4は水素原子、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基、又は下記[5]式で表される基を示す。mは、1以上の整数を示す。p、qは、0又は1以上の整数を示す。但し、p、qのうち少なくとも1つは、1以上の整数をとる。)
Figure 2013129809
(式中、R5は、炭素原子数1〜4の一価炭化水素基を示す。)
また、本発明は、上記オルガノシロキサンと、活性水素含有化合物の捕捉剤として、下記[6]式で表されるα−シリル脂肪族エステル化合物を含有するオルガノシロキサン組成物を提供する。
Figure 2013129809
(式中、R6は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基を示す。R7は、水素原子又はメチル基を示す。R8は、炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。rは、1〜3の整数を示す。R9は、炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。)
上記[6]式で表されるα−シリル脂肪族エステル化合物は、具体的に、α−トリメトキシシリルプロピオン酸エチル、又はα−メチルジメトキシシリルプロピオン酸オクチルであることが好ましい。
次に、本発明は、アルコキシ基及び酸無水物基を含有するオルガノシロキサンについて、下記(A)及び(B)の2工程を経て製造することを特徴とする製造方法を提供する。
(A)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンの製造工程
(i)上記[1]式で表わされるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物と、下記[7]式の環状オルガノハイドロジェンシロキサン又は下記[7]式の環状オルガノハイドロジェンシロキサンと下記[8]式の環状オルガノシロキサンとを混合し、超強酸性触媒の存在下、実質的に水の非存在下において平衡化反応を行い、アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンを得る工程、
Figure 2013129809
(式中、R10は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基を示す。sは、3以上の整数である。)
Figure 2013129809
(式中、R11は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基を示す。tは、3以上の整数である。)
(ii)得られた生成液に、周期表2族及び/又は13族の元素を含む塩基性中和剤及び/又は吸着剤を添加して、前記超強酸性触媒を中和及び/又は吸着する工程、及び
(iii)前記超強酸性触媒の中和物及び/又は吸着物を除去する工程、
(B)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへ酸無水物基を導入する工程
(iv)白金触媒下、上記(A)の工程で得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHと、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物をヒドロシリル化反応させる工程。
なお、上記不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物は、アリル無水コハク酸であることが好ましい。
更に、本発明のアルコキシ基、酸無水物基、及びポリエーテル基を含有するオルガノシロキサンについて、上記(A)の工程に続いて、下記(C)の工程を経て製造することを特徴とする製造方法を提供する。
(C)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへポリエーテル基及び酸無水物基を導入する工程
白金触媒下、まず、上記(A)の工程で得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHの一部と、不飽和結合を有するポリエーテル基含有化合物をヒドロシリル化反応させた後、次に、残りの≡SiHと、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物をヒドロシリル化反応させる工程。
なお、上記不飽和結合を有するポリエーテル基含有化合物が、下記[9]式で表されるアリルポリエーテルであり、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物が、アリル無水コハク酸であることが好ましい。
Figure 2013129809
(式中、Zは、炭素原子数1〜4の二価炭化水素基を示す。xは、0又は1である。R4は、水素原子、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基、又は下記[5]式で表される基を示す。p、qは、0又は1以上の整数を示す。但し、p、qのうち少なくとも1つは、1以上の整数をとる。)
Figure 2013129809
(式中、R5は、炭素原子数1〜4の一価炭化水素基を示す。)
また更に、上記の周期表2族及び/又は13族の元素を含む塩基性中和剤及び/又は吸着剤は、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで表される結晶性層状化合物からなることが好ましい。
本発明のオルガノシロキサンは、分子内にアルコキシ基と、酸無水物基と、更に必要に応じてポリエーテル基を有するものであり、各官能基の数を自由に調整することができる。
該オルガノシロキサンを、樹脂硬化剤、樹脂改質剤、塗料改質剤、接着性改良剤、繊維の表面処理剤、無機質材料(塗料用無機顔料、プラスチック用無機充填剤、化粧料用無機粉体、ガラス、コンクリート等)の表面処理剤等の用途で使用した場合、分子内の酸無水物基の数を調整することで、樹脂との架橋密度を調整することが可能となり、またアルコキシ基とポリエーテル基の数を調整することで、無機基材との親和性及び反応性を自由に制御することが可能となる。
また、本発明の製造方法は、完全非水系で製造できるため、製造の段階において、酸無水物基の開環反応等の副反応を抑制できる。また、低コストでの製造が可能となる。
実施例と比較例の水接触角測定結果を示すグラフである。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のオルガノシロキサンは、下記[1]式で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、少なくとも1種類のシロキサン単位が、シロキサン結合を形成して挿入されている、アルコキシ基と、酸無水物基を必須とする化合物である。この場合、部分加水分解縮合物の重合度(ケイ素原子又はSiO基の数)は2〜100、好ましくは2〜50、更に好ましくは2〜20であることが好ましい。挿入されるシロキサン単位は、下記[2a]式のA式で表されるシロキサン単位1〜100個、好ましくは1〜50個、更に好ましくは1〜20個と、必要に応じて挿入される下記[2a]式のB式で表されるシロキサン単位0〜100個、好ましくは0〜50個、更に好ましくは0〜20個からなる。なお、B式のシロキサン単位を含む場合、好ましくは1個以上含むことがよい。
なお、上記の各種シロキサン単位は、同一のO−Si結合間に、共挿入されてもよいし、他のO−Si結合間に、個別に挿入されてもよい。
Figure 2013129809
(式中、R1は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20、好ましくは1〜10のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の一価炭化水素基を示す。R2は、炭素原子数1〜10、好ましくは1〜5のアルキル基を示す。nは、0又は1を示す。)
Figure 2013129809
(式中、Xは、酸無水物基を有する一価炭化水素基を示す。R3は、互いに独立して、水素原子、又はハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20、特に1〜10のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の一価炭化水素基を示す。)
また、本発明のオルガノシロキサンは、上記[1]式で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、少なくとも2種類のシロキサン単位が、シロキサン結合を形成して挿入された、アルコキシ基と、酸無水物基と、ポリエーテル基を必須とする化合物とすることができる。挿入されるシロキサン単位は、下記[2b]式のA式で表されるシロキサン単位1〜100個、好ましくは1〜50個、更に好ましくは1〜20個と、下記[2b]式のC式で表されるシロキサン単位1〜100個、好ましくは1〜50個、更に好ましくは1〜20個と、更に必要に応じて挿入される下記[2b]式のB式で表されるシロキサン単位0〜100個、好ましくは0〜50個、更に好ましくは0〜20個からなる。なお、B式のシロキサン単位を含む場合、好ましくは1個以上含むことがよい。
Figure 2013129809
(式中、Xは、酸無水物基を有する一価炭化水素基を示す。Yは、ポリエーテル基を有する一価炭化水素基を示す。R3は、互いに独立して、水素原子、又はハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基を示す。)
上記[1]式で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物としては、下記に限定されないが、例えば、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、及びこれらシラン単独もしくは複数組み合わせた部分加水分解縮合物が好適に使用される。
ここで、具体例として、下記[10]式に示すテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(直鎖型メトキシシロキサン:4量体)を用いて作製した本発明のオルガノシロキサンについて、説明する。
Figure 2013129809
上記化合物の分子内には、O−Si結合が、α1〜α8、β1〜β8の合計16個存在する。
これらのO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、例えば、下記A1式及びC1式で表されるシロキサン単位が、シロキサン結合を形成して挿入される場合について、説明する。
Figure 2013129809
(式中、Xは、酸無水物基を有する一価炭化水素基を示す。Yは、ポリエーテル基を有する一価炭化水素基を示す。)
1式及びC1式で表されるシロキサン単位は、[10]式で表される化合物の分子内に存在するO−Si結合(α1〜α8、β1〜β8)のいずれに挿入されてもよい。但し、これらのシロキサン単位は、O−Si結合において、OとSiの原子間に、シロキサン結合を形成して挿入される。つまり、分子内にSi−Si、O−Oのような結合が生じることはない。
[10]式の化合物中へ、例えば、A1式で表されるシロキサン単位が2個、C1式で表されるシロキサン単位が2個挿入された場合について、例示する。
上記シロキサン単位が、[10]式で表される化合物の分子内に存在するO−Si結合において、β4の部位に、共挿入された場合、例えば、下記[11]式のような構造となる。
Figure 2013129809
また、上記シロキサン単位が、上記[10]式において、β2、β3、β6、β7の部位に、個別に挿入された場合、例えば、下記[12]式のような構造となる。
Figure 2013129809
次に、上記以外の具体例として、下記[13]式のテトラメトキシシランの部分加水分解縮合物(分岐型メトキシシロキサン:6量体)を用いて作製した本発明のオルガノシロキサンについて、説明する。
Figure 2013129809
上記化合物の分子内には、O−Si結合が、α1〜α8、β1〜β12の合計20個存在する。
これらのO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、例えば、上記A1式及びC1式で表されるシロキサン単位が、シロキサン結合を形成して挿入される場合について、説明する。
1式及びC1式で表されるシロキサン単位は、[13]式で表される化合物の分子内に存在するO−Si結合(α1〜α8、β1〜β12)のいずれに挿入されてもよい。但し、これらのシロキサン単位は、O−Si結合において、OとSiの原子間に、シロキサン結合を形成して挿入される。つまり、分子内にSi−Si、O−Oのような結合が生じることはない。
上記[13]式の化合物中へ、例えば、A1式で表されるシロキサン単位が2個、C1式で表されるシロキサン単位が2個挿入された場合について、例示する。
上記シロキサン単位が、上記[13]式で表される化合物の分子内に存在するO−Si結合において、β6の部位に、共挿入された場合、例えば、下記[14]式のような構造となる。
Figure 2013129809
また、A1式で表されるシロキサン単位とC1式で表されるシロキサン単位が、上記[13]式において、β1、β6、β12の部位に、それぞれ個別に挿入された場合、例えば、下記[15]式のような構造となる。
Figure 2013129809
本発明のオルガノシロキサンは、互いに独立して、水素原子、又はハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20、特に1〜10の一価炭化水素基R3をもつ。このような基を導入することにより、樹脂組成物と混合する際の相溶性が向上し、相分離等が発生しにくくなる。置換基を有してもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、オクタデシル基等の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが例示でき、またこれら一価炭化水素基の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたものとして、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロプロピル基等を例示することができる。好ましくはメチル基である。
また、本発明のオルガノシロキサンは、酸無水物基を有する一価炭化水素基Xをもつ。該オルガノシロキサンを樹脂組成物へ添加した際、酸無水物基の部分が、樹脂組成物のもつ反応性基(水酸基、イソシアネート基等)と反応し、樹脂と該オルガノシロキサンとの一体化がなされる。酸無水物基を有する一価炭化水素基として、下記[3]式で表される基を例示することができる。好ましくは無水コハク酸プロピル基である。
Figure 2013129809
(式中、Aは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数2〜10のアルキレン基又はアルケニレン基を示す。なお、アルケニレン基としては、末端ではなく、中間に2重結合を有するものが有効である。)
また、本発明のオルガノシロキサンは、分子内にアルコキシ基を含有する。ガラス等の無機基材を該オルガノシロキサンで表面処理した場合、このアルコキシ基が無機基材表面に存在する−OH基と反応し、該オルガノシロキサンと無機基材との間に化学結合が形成される。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられ、これらの群から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
本発明のオルガノシロキサンは、アルコキシ基と酸無水物基の数を自由に調整できる。このため、有機樹脂に対する反応性、及び無機基材に対する反応性を自由に制御することができる。
ポリエーテル基は、該オルガノシロキサンと無機基材表面との親和性を制御する効果をもつ。有機官能基として、アルコキシ基と酸無水物基のみを含有するオルガノシロキサンは、酸無水物基の親水性が低いため、その数の増加に伴って、分子全体の親水性が大きく低下する場合がある。このため、親水性表面を有する無機基材上へ、このオルガノシロキサンを塗布し、硬化皮膜を形成する際、ぬれ性が悪く、ハジキ等が発生し、均一な塗膜が得られないという問題が発生することがある。しかし、上記オルガノシロキサンの分子内にポリエーテル基を導入することにより、このような問題が解決し、無機基材上へオルガノシロキサンの均一な硬化膜を形成することが可能となる。なお、ポリエーテル基の種類や導入量を調整することにより、アルコキシ基と無機基材との反応を制御して、基材とオルガノシロキサンとの結合力を調整することが可能となる。これにより、オルガノシロキサンを有機樹脂と無機基材との接着に使用した際、微粘着から強接着まで、用途に応じて、接着力を調整することが可能となる。ポリエーテル基を含有する一価炭化水素基としては、下記[4]式で表される構造を例示することができる。
Figure 2013129809
(式中、R4は水素原子、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基、又は下記[5]式で表される基を示し、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。mは、1以上の整数を示し、好ましくは2〜6、更に好ましくは3〜6の整数である。p、qは、0又は1以上の整数を示し、好ましくは0≦p≦50、0≦q≦50の範囲をとり、更に好ましくは0≦p≦20、0≦q≦20の範囲をとる。但し、p、qのうち少なくとも1つは、1以上の整数をとる。)
Figure 2013129809
(式中、R5は、炭素原子数1〜4のアルキル基等の一価炭化水素基を示す。)
ポリエーテル基部分は、エチレンオキサイド型(以下、EO型と記す。)、プロピレンオキサイド型(以下、PO型と記す。)、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド型(以下、EO−PO型と記す。)のいずれでもよく、EO−PO型の場合には、ランダム、ブロック、交互のいずれでもよい。また、本発明によるオルガノシロキサンへPO型のポリエーテル基を有する一価炭化水素基を導入することにより、耐湿性を向上させることができる。
本発明のオルガノシロキサンは、酸無水物基やアルコキシ基と反応性を有する活性水素含有化合物、例えば、水やアルコール等が混入することで、経時的に変化し、純度が低下する。経時変化のメカニズムとしては、まず、一段階目として、例えば、空気中に湿気として存在する水分により、該オルガノシロキサン中のアルコキシ基が加水分解して、アルコールが生成する。二段階目として、生成したアルコールにより、酸無水物環の開環反応が起こり、カルボン酸が生成する。三段階目として、生成したカルボン酸とアルコキシ基とのエステル交換反応により、再度アルコールが発生する。その後、二段階目と三段階目が繰り返し進行して、純度は経時的に低下する。このような該オルガノシロキサンの経時変化を抑える方法としては、活性水素含有化合物の捕捉剤を併用することが挙げられる。捕捉剤とは、活性水素含有化合物と反応して該活性水素含有化合物中の活性水素を消滅させる物質をいう。活性水素含有化合物の捕捉剤としては、例えば、下記[6]式で表されるα−シリル脂肪族エステル化合物が挙げられる。
Figure 2013129809
(式中、R6は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20、特に1〜10のアルキル基、アリール基等の一価炭化水素基を示す。R7は、水素原子又はメチル基を示す。R8は、炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。rは、1〜3の整数を示す。R9は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。)
上記α−シリル脂肪族エステル化合物と活性水素含有化合物との反応性は、酸無水物基と活性水素含有化合物との反応性よりも優れている。また、α−シリル脂肪族エステル化合物が活性水素含有化合物と反応すると、α位の炭素原子からシリル基が分離して、活性水素を含まない有機ケイ素化合物と活性水素を含まない脂肪族カルボン酸エステルとが生成する。いずれの生成物も活性水素を含まないので、酸無水物基やアルコキシ基を含有するオルガノシロキサンとは反応性を有しない。従って、該オルガノシロキサンは、経時的に変化することなく、純度が高い状態に保たれる。
α−シリル脂肪族エステル化合物の具体例としては、α−トリメトキシシリルプロピオン酸メチル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸エチル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸プロピル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸ブチル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸ペンチル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸ヘキシル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸オクチル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸デシル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸シクロヘキシル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸イソプロピル、α−トリメトキシシリルプロピオン酸フェニル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸メチル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸エチル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸プロピル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸ブチル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸ペンチル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸ヘキシル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸オクチル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸デシル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸シクロヘキシル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸イソプロピル、α−トリエトキシシリルプロピオン酸フェニル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸メチル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸エチル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸プロピル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸ブチル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸ペンチル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸ヘキシル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸オクチル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸デシルなどが挙げられる。これらの中でも捕捉反応性の高さ及び材料の入手のし易さからα−トリメトキシシリルプロピオン酸エチル、α−メチルジメトキシシリルプロピオン酸オクチルがより好ましい。
なお、上記α−シリル脂肪族エステル化合物の配合量は、本発明のオルガノシロキサン100質量部に対し、0.01〜10質量部、好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部である。
次に、該オルガノシロキサンの製造方法について、説明する。
本発明のアルコキシ基及び酸無水物基を含有するオルガノシロキサンは、下記(A)、(B)の2工程を経て製造することができる。
(A)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンの製造工程
(i)上記[1]式で表わされるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物と、下記<1>又は<2>の環状オルガノハイドロジェンシロキサンとを混合し、超強酸性触媒の存在下、実質的に水の非存在下において平衡化反応を行い、アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンを得る工程、
<1>下記[7]式で表わされる環状オルガノハイドロジェンシロキサン
<2>下記[7]式で表わされる環状オルガノハイドロジェンシロキサンと下記[8]式で表される環状オルガノシロキサンとの混合物
Figure 2013129809
(式中、R10は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20、特に1〜10の一価炭化水素基を示す。sは、3以上、好ましくは3〜8、更に好ましくは3〜6の整数である。)
Figure 2013129809
(式中、R11は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20、特に1〜10の一価炭化水素基を示す。tは、3以上、好ましくは3〜8、更に好ましくは3〜6の整数である。)
(ii)得られた生成液に、周期表2族及び/又は13族の元素を含む塩基性中和剤及び/又は吸着剤を添加して、前記超強酸性触媒を中和及び/又は吸着する工程、及び
(iii)前記超強酸性触媒の中和物及び/又は吸着物を除去する工程、
(B)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへ酸無水物基を導入する工程
(iv)白金触媒下、上記(A)の工程で得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHと、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物をヒドロシリル化反応させる工程。
また、本発明のアルコキシ基、酸無水物基、及びポリエーテル基を含有するオルガノシロキサンは、上記(A)の工程に続いて、下記(C)の工程を経て製造することができる。
(C)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへポリエーテル基及び酸無水物基を導入する工程
白金触媒下、まず、上記(A)の工程で得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHの一部と、不飽和結合を有するポリエーテル基含有化合物をヒドロシリル化反応させた後、次に、残りの≡SiHと、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物をヒドロシリル化反応させる工程。
上記(A)の工程について、説明する。
上記[1]式のアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物、上記[7]式の環状オルガノハイドロジェンシロキサン、上記[8]式の環状オルガノシロキサンは、モル比で、好ましくは[1]:[7]:[8]=1:1/s〜200/s:0〜100/t、更に好ましくは[1]:[7]:[8]=1:1/s〜100/s:0〜50/t、特に好ましくは[1]:[7]:[8]=1:1/s〜40/s:0〜20/tの割合で、混合して使用することができる。[1]式のアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物と[7]式の環状オルガノハイドロジェンシロキサンは、必須の成分であり、[8]式の環状オルガノシロキサンは、必要に応じて、適宜併用される成分である。[8]式の環状オルガノシロキサンを使用する場合、1/t以上のモル比で用いることができる。
ここで使用する超強酸性触媒は、硫酸よりも酸性が強い触媒であり、具体的にはトリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸等が挙げられ、これらの中でも反応性が高く、比較的低温で使用することができるトリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。この場合、超強酸性触媒の使用量は、上記[1]式のアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物と、上記[7]式の環状オルガノハイドロジェンシロキサンと、上記[8]式の環状オルガノシロキサンの混合物100質量部に対し、0.001〜1質量部、好ましくは0.005〜0.5質量部、更に好ましくは0.01〜0.1質量部が好適である。超強酸性触媒の使用量が少なすぎると平衡化反応が十分進まないことがあり、多すぎると反応後の中和処理が煩雑となる。平衡化反応の温度は、特に限定されないが、室温〜150℃が好ましく、特には室温〜80℃が好ましい。また、平衡化に要する時間は、2〜24時間程度である。
平衡化反応終了後、非水系で前記超強酸性触媒を取り除く。その方法として、本発明においては、周期表2族及び/又は13族の元素を含む塩基性中和剤及び/又は吸着剤を使用して取り除く。この塩基性中和剤及び/又は吸着剤としては、具体的に、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで表される結晶性層状化合物が好ましい。該塩基性中和剤及び/又は吸着剤の使用量は、系内を中性化できる量であればよく、好ましくは超強酸性触媒の添加量に対して1〜10倍量、特に2〜6倍量である。塩基性中和剤及び/又は吸着剤の使用量が少なすぎると触媒の吸着除去が不十分となることがあり、多すぎると必要以上添加することになり、経済的に無駄であると共に、後述する超強酸性触媒の中和物及び/又は吸着物の除去が煩雑となることがある。
最後に、超強酸性触媒の中和物及び/又は吸着物の除去を行う。その方法として、上記で得られた液体を、フィルターを通して、ろ過、精製を行う。
上記のようにして作製されたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンは、上記[1]式で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、下記D式で表されるシロキサン単位と、必要に応じて下記E式で表されるシロキサン単位が、挿入された構造をとる。
Figure 2013129809
(式中、R10、R11は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20、特に1〜10の一価炭化水素基を示す。)
上記シロキサン単位の挿入のされ方としては、シロキサン結合におけるOとSiの原子間に挿入される場合と、R2O−Si結合におけるOとSiの原子間に挿入される場合があるが、いずれでもよく、また、それらの組み合わせでもよい。
次に、上記(B)の工程について、説明する。
上記(A)の工程により得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへ、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物、白金触媒、及び、必要により溶剤を混合し、加熱することにより、ヒドロシリル化反応が進行し、目的とするアルコキシ基及び酸無水物基を含有するオルガノシロキサンを得ることができる。
ここで、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物としては、下記式で表されるものが挙げられる。
Figure 2013129809
(式中、Wは炭素原子数1〜8のアルキレン基、又は中間に2重結合を有するアルケニレン基を示し、yは0又は1である。)
具体的に、下記のような化合物が例示される。特に好ましくはアリル無水コハク酸である。
Figure 2013129809
上記不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物の使用量は、好ましくは上記(A)の工程により得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン1molに対し、好ましくは1〜100mol、更に好ましくは1〜50mol、特に好ましくは1〜20molを加え、ヒドロシリル化反応を行うことができる。
また、白金触媒としては、塩化白金酸等を使用することができる。実際には、取り扱いを簡便とするため、トルエン等の溶剤で、0.1〜2質量%程度に希釈して使用することが好ましい。白金触媒の添加量は、原料として仕込んだアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有するSiH基の総mol数に対し、10-5〜10-4倍のmol数を添加することが好ましい。
ヒドロシリル化反応は、90〜120℃、特に90〜110℃で行うことが好ましく、また反応時間は、4〜10時間が好ましい。
次に、上記(C)の工程について、説明する。
まず、上記(A)の工程により得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへ、不飽和結合を有するポリエーテル基含有化合物、白金触媒、及び、必要により溶剤を混合し、加熱することにより、ヒドロシリル化反応が進行し、アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHの一部へ、ポリエーテル基含有化合物が付加される。次に、前記反応液中へ、不飽和結合をもつ酸無水物基含有化合物を添加し、加熱することにより、残り全ての≡SiHへ、酸無水物基含有化合物が付加され、目的とするアルコキシ基、酸無水物基、及びポリエーテル基を含有するオルガノシロキサンを得ることができる。
この場合、不飽和結合を有するポリエーテル基含有化合物は、下記[9]式、特に[9a]式
Figure 2013129809
(式中、Zは、炭素原子数1〜4のアルキレン基等の二価炭化水素基を示す。xは、0又は1である。R4は、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基等の一価炭化水素基、又は下記[5]式で表される基を示す。p、qは、0又は1以上の整数を示す。但し、p、qのうち少なくとも1つは、1以上の整数をとる。)
Figure 2013129809
(式中、R5は、炭素原子数1〜4のアルキル基等の一価炭化水素基を示す。)
Figure 2013129809
(式中、R4、p、qは、上記と同様である。)
で表されるアリルポリエーテルであることが好ましく、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物が、アリル無水コハク酸であることが好ましい。
上記不飽和結合を有するポリエーテル基含有化合物の使用量は、好ましくは上記(A)の工程により得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン1molに対し、好ましくは1〜100mol、更に好ましくは1〜50mol、特に好ましくは1〜20molを加え、ヒドロシリル化反応を行うことができる。
ヒドロシリル化反応は、60〜120℃、特に80〜100℃で行うことが好ましく、また反応時間は、3〜6時間が好ましい。白金触媒としては、上記のものが用いられる。白金触媒は、溶剤で希釈する場合、溶剤の種類は上記した通りであり、その使用量も上記した通りである。
また、上記不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物の使用量は、上記(A)の工程により得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン1molに対し、好ましくは1〜100mol、更に好ましくは1〜50mol、特に好ましくは1〜20molの割合で配合し、ヒドロシリル化反応を行うことができる。
ヒドロシリル化反応は、90〜120℃、特に90〜110℃で行うことが好ましく、また反応時間は、4〜10時間が好ましい。白金触媒は、上記した通りである。
ここで、アルコキシ基、酸無水物基(例えば、無水コハク酸基)、及びポリエーテル基を含有するオルガノシロキサンに関し、別の製法で製造した場合について説明し、次に、本発明と比較する。
まず、例えば、無水コハク酸変性アルコキシシランとポリエーテル変性アルコキシシランとを加水分解縮合して目的物を製造する方法が挙げられる。しかし、この方法は、水を使用するため、製造段階において、無水コハク酸環の加水分解による開環反応が併発するという問題がある。
また、別の製法として、例えば、下記[16]式で表される環状オルガノハイドロジェンシロキサンへ、白金触媒下、ビニルトリメトキシシラン、アリルポリエーテル、アリル無水コハク酸を順次付加していく方法が挙げられる。
Figure 2013129809
(式中、uは、3以上の整数を示す。)
しかし、上記環状オルガノハイドロジェンシロキサンの中で、現実的に、安価で容易に入手できるものは、u=3〜5の低分子シロキサンとなる。その場合、分子内に存在する反応点(SiH)の数は、最大でも5個までとなる。この環状オルガノハイドロジェンシロキサンへ、ビニルトリメトキシシラン、アリルポリエーテル、アリル無水コハク酸を順次、ヒドロシリル化反応により付加しようとした場合、各化合物の合計導入量は5個までとなり、各官能基の自由な導入量の設定ができない。
こうした問題を解決するためには、下記[17]式で表される直鎖状オルガノハイドロジェンシロキサンを使用する方法を挙げることができる。
Figure 2013129809
(式中、vは、1以上の整数を示す。)
上記直鎖状オルガノハイドロジェンシロキサンは、一般に、ヘキサメチルジシロキサン(末端封鎖剤)と、上記[16]式で表される環状メチルハイドロジェンポリシロキサンを強酸性触媒の存在下、平衡化反応を行うことにより製造される。ヘキサメチルジシロキサンの配合量に対して、環状メチルハイドロジェンポリシロキサンの配合量を調整することで、vの数を自由に設定することができる。即ち、反応点(SiH)の数を自由に増やすことが可能となる。この直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンへ、ビニルトリメトキシシラン、アリルポリエーテル、アリル無水コハク酸を順次、ヒドロシリル化反応により付加しようとした場合、各化合物の導入量は自由に設定することができる。しかし、上記環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンあるいは直鎖状オルガノシロキサンのいずれを使用した場合においても、分子内にアルコキシ基、ポリエーテル基、酸無水物基の3種類の官能基を導入しようとすると、3段階の付加反応が必要で作業が煩雑となるという問題が残る。
一方、本発明の製造方法によれば、最初のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを作製する平衡化時に、アルコキシ基をシロキサン骨格中へ取り込むことができる。このため、次の付加反応による官能基導入は、ポリエーテル基と酸無水物基の2種類でよく、従来法と比較して、低コストとなる。
なお、上記の環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンあるいは直鎖状オルガノシロキサンを使用して製造したオルガノシロキサンは、オイル状シロキサン骨格の側鎖へ、アルコキシ基、酸無水物基、ポリエーテル基の各官能基を含有する基が結合した構造をとる。また、アルコキシ基は、シルエチレン鎖を介して、シロキサン骨格へ結合した形態をとる。
これに対し、本発明によるオルガノシロキサンは、レジン状シロキサン骨格へ、各官能基を含有する基が結合した構造をとる。更に、アルコキシ基は、シルエチレン鎖を介すことなく、Si原子へダイレクトに結合した形態をとる。なお、完全非水系で製造できるため、製造段階における酸無水物環の開環反応が抑制される。
このような製法による生成物の構造の相違は、分子の剛性や反応性等の特性に大きな変化をもたらすものと考えられる。本発明によるオルガノシロキサンは、例えば、無機基材上へ塗布し、硬化皮膜を形成する場合において、皮膜の硬さをだすのに有利となる。
本発明について、実施例及び比較例を挙げて、具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
<オルガノシロキサンの製造>
実施例1(無水コハク酸変性メトキシシロキサンの製造)
下記(A)、(B)の2工程を経て、無水コハク酸変性メトキシシロキサンの製造を行った。
(A)メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンの製造工程
撹拌機、温度計、及びジムロート冷却管を備えた1リットルの3つ口フラスコに、Si43(OCH310(本発明で規定する[1]式において、R2=CH3、n=0であるアルコキシシランの部分加水分解縮合物)で表されるメトキシシロキサン85.0g(0.181mol)、及びテトラメチルテトラヒドロシクロテトラシロキサン43.4g(0.181mol)を仕込んだ後、トリフルオロメタンスルホン酸0.0646gを撹拌しながら添加し、室温で4時間反応させた。反応終了後、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで表される固体塩基性中和剤0.388gを系内に添加し、2時間撹拌して、トリフルオロメタンスルホン酸の中和処理を行った後、ろ過精製を行い、122gの生成物−1(メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン)を得た。ここで、生成物−1について、トルエン溶媒下、GPC(Gel Permeation Chromatography)測定を行った。その結果、保持時間25〜37分の位置にブロードな生成物ピークを確認した。
(B)メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンへ無水コハク酸基を導入する工程
撹拌機、温度計、及びジムロート冷却管を備えた1リットルの3つ口フラスコに、アリル無水コハク酸94.7g(0.676mol)を仕込んだ後、塩化白金酸のトルエン溶液(Pt濃度:0.5質量%)1.20gを撹拌しながら添加した。次に、100℃まで昇温した後、上記(A)工程で得られた生成物−1(メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン)120gを滴下添加し、更に110℃で4時間の熟成を行った。
ここで、上記反応に使用したアリル無水コハク酸の反応率について、次のようにして測定を行った。
まず、次の方法により、反応前後におけるサンプル1g中の≡SiH含有量をそれぞれ測定した。反応前後のサンプル1gへ、それぞれ、ブタノール10gを加え、更に、撹拌を加えながら、20質量%NaOH水溶液を20g加えた。この時に発生する水素ガス(≡SiH+H2O→≡SiOH+H2↑)の量から、≡SiH含有量をそれぞれ算出した。次に、下記式により、サンプル1g中において、実際に反応したアリル無水コハク酸の量を算出した。
反応量(mol)=[反応前の≡SiH含有量(mol)]−[反応後の≡SiH含有量(mol)]
表1に、その結果を示す。
Figure 2013129809
反応終了後の水素ガス発生量は、ほぼ0mlに近い値であった。このことから、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン中に存在した≡SiHは、ヒドロシリル化反応により、ほぼ全てアリル無水コハク酸と反応したと考えられる。
反応前のサンプル1g中には、原料として仕込んだアリル無水コハク酸が3.13×10-3mol存在する。先に求めた反応量と、原料として仕込んだ量から、下記のようにして、アリル無水コハク酸の反応率を計算すると99.4%となる。
[反応率=(3.11×10-3(mol)/3.13×10-3(mol))×100=99.4(%)]
以上のことから、ヒドロシリル化反応により、原料として仕込んだアリル無水コハク酸の99%以上が、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンと反応したことを確認した。
最後に、僅かに残留したアリル無水コハク酸を除去するための操作を行った。ジムロート冷却管を排ガス管につなぎかえ、系内の圧力を10mmHgまで減圧した後、窒素ガスバブリング下、110℃で10時間加熱を行った。減圧加熱を終了後、温度を室温まで冷却し、圧力を常圧に復圧した後、得られた液体のろ過精製を行い、183gの生成物−2(無水コハク酸変性メトキシシロキサン)を得た。
ここで、生成物−2に関し、THF溶媒下でのGPC測定を行った。その結果、保持時間22〜33分の位置にブロードな生成物ピークを確認した。保持時間36〜37分の付近に出現する原料アリル無水コハク酸のピークが存在しないことから、アリル無水コハク酸の余剰分は、最後の減圧加熱でほぼ完全に除去されたと考えられる。
次に、生成物−2に関し、赤外分光法(FTIR)によって、酸無水物基の帰属を行った。その結果、1,863cm-1、1,785cm-1に無水コハク酸基のカルボニル伸縮振動による吸収が観測された。なお、1,735cm-1に、無水コハク酸基が開環して生じるカルボキシル基のカルボニル伸縮振動による吸収は、観測されなかった。生成物−2は、完全非水系で製造を行うため、製造段階において、活性水素含有化合物(例:水やアルコール等)が混入することがなく、酸無水物基の開環が十分に抑制されている。
次に、生成物−2の構造解析を行うため、29Si−NMR測定を実施した。
その結果、まず、−80ppm〜−110ppmの範囲に、SiO4/2の単位に起因する3本のピークが存在した。これらのピークは、SiO1/2(OCH33、SiO2/2(OCH32、SiO3/2(OCH3)で表される構造の存在を示唆する。また、−5ppm〜−25ppmの範囲に、SiO2/2の単位に起因する2本のピークが存在した。これらのピークは、SiO2/2(CH3)X1、SiO1/2(CH3)(OCH3)X1で表される構造の存在を示唆する(X1は、下記の無水コハク酸基を有する一価炭化水素基を示す。)。
Figure 2013129809
これらの結果から、生成物−2の構造は、原料のSi43(OCH310で表される化合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、下記A2式で表される無水コハク酸基を有する一価炭化水素基X1を有するシロキサン単位が挿入された構造をもつことが推定される。
Figure 2013129809
(X1は、上記の構造を示す。)
ここで、メトキシシロキサン、アリル無水コハク酸の各原料仕込み量、及び上記反応率の測定結果より、メトキシシロキサン1molに対し、反応して導入されたA2式で表されるシロキサン単位の数を算出した。表6に、その結果を示す。
設計としては、メトキシシロキサン1molに対して、A2式で表されるシロキサン単位が4mol導入される配合比率で、各原料の仕込みを行った。実際に得られた生成物は、平均組成として、ほぼ設計通りのものができている。
実施例2(無水コハク酸/ポリエーテル共変性メトキシシロキサンの製造−1)
実施例1の(A)工程、及び下記(C)の2工程を経て、無水コハク酸/ポリエーテル共変性メトキシシロキサンの製造を行った。
(C)メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンへのポリエーテル基及び酸無水物基の導入工程
まず、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiH基の一部へ、アリルポリエーテルを反応させるための操作を行った。
撹拌機、温度計、及びジムロート冷却管を備えた1リットルの3つ口フラスコに、実施例1の(A)工程で得られた生成物−1(メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン)120g、及びトルエン36gを仕込んだ後、塩化白金酸のトルエン溶液(Pt濃度:0.5質量%)1.50gを撹拌しながら添加した。次に、90℃まで昇温した後、下記式
CH2=CH−CH2−O(CH2CH2O)3.8CH3
で表されるアリルポリエーテル20.3g(0.0849mol)を滴下添加し、3時間の熟成を行った。
ここで、上記反応に使用したアリルポリエーテルの反応率について、次のようにして測定を行った。まず、実施例1と同様にして、反応前後におけるサンプル1g中の≡SiH含有量を測定し、実際に反応したアリルポリエーテルの量を算出した。表2に、その結果を示す。
Figure 2013129809
反応前のサンプル1g中には、原料として仕込んだアリルポリエーテルが0.477×10-3mol存在する。先に求めた反応量と、原料として仕込んだ量とから、下記のようにしてアリルポリエーテルの反応率を計算すると、98.5%となる。
反応率=0.470×10-3(mol)/0.477×10-3(mol)×100≒98.5(%)
以上のことから、ヒドロシリル化反応により、原料として仕込んだCH2=CH−CH2−O(CH2CH2O)3.8CH3は、ほぼ全てメトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンへ導入されたことを確認した。
次に、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン中に含有する残りの≡SiH基へ、アリル無水コハク酸を反応させるための操作を行った。温度を100〜110℃に維持しながら、撹拌下、アリル無水コハク酸107g(0.764mol)を滴下添加した後、110℃で5時間熟成を行った。
ここで、アリル無水コハク酸の反応率を測定した。まず、前記と同様の方法により、反応前後におけるサンプル1g中の≡SiH含有量を測定し、実際に反応したアリル無水コハク酸の量を算出した。表3に、その結果を示す。
Figure 2013129809
反応終了後の水素ガス発生量は、ほぼ0mlに近い値であった。このことから、アリルポリエーテルと反応した後、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン中に残留していた≡SiHは、ヒドロシリル化反応により、ほぼ全てアリル無水コハク酸と反応したと考えられる。
反応前のサンプル1g中には、原料として仕込んだアリル無水コハク酸が2.68×10-3mol存在する。先に求めた反応量と、原料として仕込んだ量とから、下記のようにしてアリルポリエーテルの反応率を計算すると、76.5%となる。
[2.05×10-3(mol)/2.68×10-3(mol)×100=76.5(%)]
原料として仕込んだアリル無水コハク酸の約77%が、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンと反応し、残り約23%が余剰分として残留した。最後に、余剰のアリル無水コハク酸を除去するための操作を行った。ジムロート冷却管を排ガス管につなぎかえ、系内の圧力を10mmHgまで減圧した後、窒素ガスバブリング下、110℃で10時間加熱を行った。減圧加熱を終了後、室温まで冷却し、常圧に復圧した後、得られた液体のろ過精製を行い、197gの生成物−3(無水コハク酸/ポリエーテル共変性メトキシシロキサン)を得た。
ここで、生成物−3に関し、THF溶媒下でのGPC測定を行った。その結果、保持時間22〜33分の位置にブロードな生成物ピークを確認した。保持時間36〜37分の付近に出現する原料アリル無水コハク酸のピークが存在しないことから、アリル無水コハク酸の余剰分は、最後の減圧加熱でほぼ完全に除去されたと考えられる。
次に、生成物−3に関し、赤外分光法(FTIR)によって、無水コハク酸基の帰属を行った。その結果、1,863cm-1、1,785cm-1に無水コハク酸基のカルボニル伸縮振動による吸収が観測された。なお、1,735cm-1に、無水コハク酸基が開環して生じるカルボキシル基のカルボニル伸縮振動による吸収は、観測されなかった。生成物−3は、製造段階において、酸無水物基の開環が十分に抑制されている。
次に、生成物−3の構造解析を行うため、29Si−NMR測定を実施した。その結果、まず、−80ppm〜−110ppmの範囲に、SiO4/2の単位に起因する3本のピークが存在した。これらのピークは、SiO1/2(OCH33、SiO2/2(OCH32、SiO3/2(OCH3)で表される構造の存在を示唆する。また、−5ppm〜−25ppmの範囲に、SiO2/2の単位に起因する2本のピークが存在した。これらのピークは、SiO2/2(CH3)W、SiO1/2(CH3)(OCH3)W[W=X1(下記の無水コハク酸基を有する一価炭化水素基)、Y1(下記のポリエーテル基を有する一価炭化水素基)]で表される構造の存在を示唆する。
Figure 2013129809
これらの結果から、生成物−3の構造は、原料のSi43(OCH310で表される化合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、下記A2式で表される無水コハク酸基を有する一価炭化水素基X1を有するシロキサン単位、及び下記C2式で表されるポリエーテル基を有する一価炭化水素基Y1を有するシロキサン単位が挿入された構造をもつことが推定される。
Figure 2013129809
(X1、Y1は、上記の構造を示す。)
ここで、メトキシシロキサン、アリルポリエーテル、アリル無水コハク酸の各原料仕込み量、及び上記反応率の測定結果より、メトキシシロキサン1molに対し、反応して導入されたA2式及びC2式で表されるシロキサン単位の数を算出した。表6に、その結果を示す。
設計としては、メトキシシロキサン1molに対し、A2式で表されるシロキサン単位が3.5mol、C2式で表されるシロキサン単位が0.5mol導入される配合比率で、各原料の仕込みを行った。実際に得られた生成物は、平均組成として、ほぼ設計通りのものができている。
実施例3(無水コハク酸/ポリエーテル共変性メトキシシロキサンの製造−2)
実施例2において、CH2=CH−CH2−O(CH2CH2O)3.8CH3で表される化合物の添加量を20.3g(0.0849mol)から40.6g(0.170mol)へ変更したこと以外は、同様の操作を行った。
まず、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiH基の一部へアリルポリエーテルを反応させた後、アリルポリエーテルの反応率を測定した。実施例1,2と同様にして、反応前後における反応液1g中の≡SiH含有量を測定し、実際に反応したアリルポリエーテルの量を算出した。表4に、その結果を示す。
Figure 2013129809
反応前のサンプル1g中には、原料として仕込んだアリルポリエーテルが0.857×10-3mol存在する。先に求めた反応量と、原料として仕込んだ量とから、下記のようにしてアリルポリエーテルの反応率を計算すると、98.0%となる。
[反応率=0.840×10-3(mol)/0.857×10-3(mol)×100≒98.0(%)]
ヒドロシリル化反応により、原料として仕込んだCH2=CH−CH2−O(CH2CH2O)3.8CH3は、ほぼ全てメトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンへ導入されたと考えられる。
次に、アルコキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン中に含有する残りの≡SiH基へ、アリル無水コハク酸を反応させた後、アリル無水コハク酸の反応率を測定した。前記と同様の方法により、反応前後における反応液1g中の≡SiH含有量を測定し、実際に反応したアリル無水コハク酸の量を算出した。表5に、その結果を示す。
Figure 2013129809
反応終了後の水素ガス発生量は、ほぼ0mlに近い値であった。このことから、アリルポリエーテルと反応した後、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン中に残留していた≡SiH基は、ヒドロシリル化反応により、ほぼ全てアリル無水コハク酸と反応したと考えられる。反応前の反応液1g中には、原料として仕込んだアリル無水コハク酸が2.51×10-3mol存在する。先に求めた反応量と、原料として仕込んだ量とから、下記のようにして、アリル無水コハク酸の反応率を計算すると65.7%となる。
[反応率=1.65×10-3(mol)/2.51×10-3(mol)×100=65.7(%)]
以上のことから、原料として仕込んだアリル無水コハク酸の約66%が、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンと反応し、残り約34%が余剰分として残留したことを確認した。
最後に、余剰のアリル無水コハク酸を除去するための操作を行った。ジムロート冷却管を排ガス管につなぎかえ、系内の圧力を10mmHgまで減圧した後、窒素ガスバブリング下、110℃で10時間加熱を行った。減圧加熱を終了後、室温まで冷却し、常圧に復圧した後、得られた液体のろ過精製を行い、197gの生成物−4(無水コハク酸/ポリエーテル共変性メトキシシロキサン)を得た。
ここで、生成物−4に関し、THF溶媒下でのGPC測定を行った。その結果、保持時間22〜33分の位置にブロードな生成物ピークを確認した。保持時間36〜37分の付近に出現する原料アリル無水コハク酸のピークが存在しないことから、アリル無水コハク酸の余剰分は、最後の減圧加熱でほぼ完全に除去されたと考えられる。
次に、生成物−4に関し、赤外分光法(FTIR)によって、無水コハク酸基の帰属を行った。その結果、1,863cm-1、1,785cm-1に無水コハク酸基のカルボニル伸縮振動による吸収が観測された。なお、1,735cm-1に、無水コハク酸基が開環して生じるカルボキシル基のカルボニル伸縮振動による吸収は、観測されなかった。生成物−4は、製造段階において、酸無水物基の開環が十分に抑制されている。
次に、生成物−4の構造解析を行うため、29Si−NMR測定を実施した。その結果、得られた生成物−4の構造は、実施例2で製造した無水コハク酸/ポリエーテル共変性メトキシシロキサンと同様、原料のSi43(OCH310で表される化合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、下記A2式で表される酸無水物基を有する一価炭化水素基X1を有するシロキサン単位、及び下記C2式で表されるポリエーテル基を有する一価炭化水素基Y1を有するシロキサン単位が挿入された構造をもつことが推定される。
Figure 2013129809
(X1、Y1は、上記の構造を示す。)
ここで、メトキシシロキサン、アリルポリエーテル、アリル無水コハク酸の各原料仕込み量、及び上記反応率の測定結果より、メトキシシロキサン1molに対し、反応して導入されたA2式及びC2式で表されるシロキサン単位の数を算出した。表6に、その結果を示す。
設計としては、メトキシシロキサン1molに対し、A2式で表されるシロキサン単位が3mol、C2式で表されるシロキサン単位が1mol導入される配合比率で、各原料の仕込みを行った。実際に得られた生成物は、平均組成として、ほぼ設計通りのものができている。
Figure 2013129809
比較例1〜3(無水コハク酸変性トリメトキシシラン/ポリエーテル変性トリメトキシシラン混合物の製造)
表7に示す配合で、X−12−967とX−12−641の混合物を製造した。
Figure 2013129809
次に、上記で得られたサンプルについて、赤外分光法(FTIR)によって、無水コハク酸基の帰属を行った。その結果、いずれのサンプルに関しても、1,863cm-1、1,785cm-1に無水コハク酸基のカルボニル伸縮振動による吸収が観測され、1,735cm-1付近に、無水コハク酸基が開環して生じるカルボキシル基のカルボニル伸縮振動による吸収は、観測されなかった。
比較例4〜6(無水コハク酸変性トリメトキシシラン/ポリエーテル変性トリメトキシシラン混合物の加水分解縮合物製造)
上記比較例1〜3で得られた各サンプルへ、0.1N−塩酸水を添加した。1N−塩酸水の添加量は、各サンプル中のX−12−967とX−12−641の総量に対して、1.3倍molの水が加わる量に調整した。次に、この混合物をジメトキシエタンで10質量%に希釈し、75℃で1時間、撹拌し、透明な液体を得た。
次に、上記で得られた各サンプルについて、THF溶媒下でのGPC測定を行い、反応前後における重量平均分子量を算出した。表8に、各サンプルの重量平均分子量に関し、反応前に対する増加率を示す。
Figure 2013129809
次に、各サンプルについて、赤外分光法(FTIR)によって、無水コハク酸基の帰属を行った。その結果、いずれのサンプルに関しても、1,863cm-1、1,785cm-1に無水コハク酸基のカルボニル伸縮振動による吸収が観測され、かつ、1,735cm-1付近に、無水コハク酸基が開環して生じるカルボキシル基のカルボニル伸縮振動による吸収が観測された。1分子中にメトキシ基と無水コハク酸基を共存させることを目的とし、無水コハク酸変性トリメトキシシラン/ポリエーテル変性トリメトキシシラン混合物の加水分解縮合を試みたが、製造工程に水を使用するため、いずれのサンプルに関しても、無水コハク酸基の開環反応が併発した。
<塗液サンプルの調合、及び硬化皮膜の作製>
上記で得られた実施例1のオルガノシロキサンを、ジメトキシエタン中へ、10質量%溶解した塗液サンプルを作製した。この塗液サンプルを、寸法50mm×100mm×3mmのガラス基板上へフローコートし、室温で20分間自然乾燥後、105℃で60分間加熱処理を行って、ガラス基板上へ硬化皮膜を形成した。実施例2,3、及び比較例1〜3に関しても、上記と同様の操作を行った。なお、比較例4〜6に関しては、すでにジメトキシエタンで10質量%に希釈されているため、そのまま塗液として使用した。
<硬化皮膜の評価>
(1)外観、密着性
上記のようにして作製した硬化皮膜付きガラス基板を水、ジメトキシエタンの各液中へ、それぞれ1時間浸漬した後、エアーをあてて乾燥を行い、更に105℃で5分間、加熱乾燥した。
まず、ガラス基板上へ形成した硬化皮膜の外観を観察し、下記の基準で評価を行った。
○:無色透明で、均一な硬化皮膜が形成されている。
×:着色(白濁等)や、硬化皮膜表面にムラがある。
次に、硬化皮膜のガラス基板への密着性評価を実施した。密着性評価は、碁盤目密着試験を行った。硬化皮膜上へ25×25マスの切れ目を入れ、セロハンテープを貼付した後に剥がして、基板上に残ったマス目の数を計測した。表9に、外観、密着性の評価結果を示す。
Figure 2013129809
実施例1〜3に関しては、硬化皮膜の外観がよく、またガラス基板への密着性も良好であった。一方、比較例に関しては、無水コハク酸変性トリメトキシシランとポリエーテル変性トリメトキシシランを混合した比較例2,3において、外観、密着性が共に悪化した。
(2)水接触角
上記のようにして作製した硬化皮膜付きガラス基板をジメトキシエタン中へ1時間浸漬した後、エアーをあてて乾燥を行い、更に105℃で5分間、加熱乾燥した。次に、得られた硬化皮膜の水接触角を測定した。図1に、その結果を示す。
実施例1〜3のオルガノシロキサンから形成した硬化皮膜は、比較例1〜6の硬化皮膜と比較して、水接触角が高い。このことから、硬化皮膜の表面において、親水性の低い無水コハク酸基が、高密度に存在すると考えられる。なお、実施例2,3に関しては、実施例1と比較して、水接触角が増加の傾向がみられた。このことから、オルガノシロキサンへ、無水コハク酸基と少量のポリエーテル基を共変性することで、ガラスとの親和性が向上し、密着性が改善された可能性が考えられる。
また、無水コハク酸変性トリメトキシシランとポリエーテル変性トリメトキシシランとの加水分解縮合物である比較例4〜6は、それらを単純混合して得た比較例1〜3と比較して、水接触角が増加の傾向がみられた。しかし、比較例4〜6では、加水分解縮合の際、水を使用するため、無水コハク酸基の一部に開環反応が併発している。
<保存安定性の評価>
実施例1で得られたオルガノシロキサンと、これに活性水素含有化合物の捕捉剤として、α−トリメトキシシリルプロピオン酸エチルを5質量%添加した組成物について、室温で1ヶ月間保管した。また、実施例3、比較例1,4に関しては、α−トリメトキシシリルプロピオン酸エチルを添加せず、室温で1ヶ月間保管した。保管前後のサンプルについて、IR測定を行い、下記の基準により、保存安定性を評価した。
○:1,735cm-1での吸収(無水コハク酸基が開環して生じるカルボキシル基の
カルボニル伸縮振動による吸収)がみられない。
×:1,735cm-1での吸収がみられる。
Figure 2013129809
実施例1,3に関しては、完全非水系で製造ができるため、製造時における無水コハク酸基の安定性は良好である。なお、実施例1に関しては、経時で、無水コハク酸基の安定性が低下する傾向がみられるが、α−トリメトキシシリルプロピオン酸エチルの添加により、安定性の改善がみられる。また、実施例3では、α−トリメトキシシリルプロピオン酸エチルの添加なしで、安定性が保たれている。
比較例1に関しては、製造時における無水コハク酸基の安定性は良好である。一方、経時で、無水コハク酸基の安定性が低下する傾向がみられる。また、比較例4では、1分子内に複数の無水コハク酸基をもたせるために、無水コハク酸変性トリメトキシシランの加水分解縮合を行ったが、その際に使用する水の影響で、製造の段階で、無水コハク酸基の一部が開環してしまう。

Claims (11)

  1. 下記[1]式で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、少なくとも1種類のシロキサン単位が、シロキサン結合を形成して挿入された、分子内に、アルコキシ基と、酸無水物基を有する化合物であって、かつ、上記挿入されるシロキサン単位が、下記[2a]式のA式で表されるシロキサン単位1〜100個と、必要に応じて挿入される下記[2a]式のB式で表されるシロキサン単位0〜100個からなることを特徴とするオルガノシロキサン。
    Figure 2013129809
    (式中、R1は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基を示す。R2は、炭素原子数1〜10のアルキル基を示す。nは、0又は1を示す。)
    Figure 2013129809
    (式中、Xは、酸無水物基を有する一価炭化水素基を示す。R3は、互いに独立して、水素原子、又はハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基を示す。)
  2. 下記[1]式で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、少なくとも2種類のシロキサン単位が、シロキサン結合を形成して挿入された、分子内に、アルコキシ基と、酸無水物基と、ポリエーテル基を有する化合物であって、かつ、上記挿入されるシロキサン単位が、下記[2b]式のA式で表されるシロキサン単位1〜100個と、下記[2b]式のC式で表されるシロキサン単位1〜100個と、更に必要に応じて挿入される下記[2b]式のB式で表されるシロキサン単位0〜100個からなることを特徴とするオルガノシロキサン。
    Figure 2013129809
    (式中、R1は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基を示す。R2は、炭素原子数1〜10のアルキル基を示す。nは、0又は1を示す。)
    Figure 2013129809
    (式中、Xは、酸無水物基を有する一価炭化水素基を示す。Yは、ポリエーテル基を有する一価炭化水素基を示す。R3は、互いに独立して、水素原子、又はハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基を示す。)
  3. 上記[2a]式において、Xが、下記[3]式で表される酸無水物基を有する一価炭化水素基であることを特徴とする請求項1に記載のオルガノシロキサン。
    Figure 2013129809
    (式中、Aは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数2〜10のアルキレン基又はアルケニレン基を示す。)
  4. 上記[2b]式において、Xが、下記[3]式で表される酸無水物基を有する一価炭化水素基であり、かつYが、下記[4]式で表されるポリエーテル基を有する一価炭化水素基であることを特徴とする請求項2に記載のオルガノシロキサン。
    Figure 2013129809
    (式中、Aは、直鎖状又は分岐鎖状の炭素原子数2〜10のアルキレン基又はアルケニレン基を示す。)
    Figure 2013129809
    (式中、R4は水素原子、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基、又は下記[5]式で表される基を示す。mは、1以上の整数を示す。p、qは、0又は1以上の整数を示す。但し、p、qのうち少なくとも1つは、1以上の整数をとる。)
    Figure 2013129809
    (式中、R5は、炭素原子数1〜4の一価炭化水素基を示す。)
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のオルガノシロキサンと、活性水素含有化合物の捕捉剤として、下記[6]式で表されるα−シリル脂肪族エステル化合物を含有してなることを特徴とするオルガノシロキサン組成物。
    Figure 2013129809
    (式中、R6は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基を示す。R7は、水素原子又はメチル基を示す。R8は、炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。rは、1〜3の整数を示す。R9は、炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。)
  6. 上記[6]式で表されるα−シリル脂肪族エステル化合物が、α−トリメトキシシリルプロピオン酸エチル、又はα−メチルジメトキシシリルプロピオン酸オクチルであることを特徴とする請求項5に記載のオルガノシロキサン組成物。
  7. 下記(A)及び(B)の2工程を経て製造することを特徴とする、分子内にアルコキシ基と、酸無水物基を有する請求項1に記載するオルガノシロキサンの製造方法。
    (A)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンの製造工程
    (i)請求項1記載の[1]式で表わされるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物と、下記[7]式の環状オルガノハイドロジェンシロキサン又は下記[7]式の環状オルガノハイドロジェンシロキサンと下記[8]式の環状オルガノシロキサンとを混合し、超強酸性触媒の存在下、実質的に水の非存在下において平衡化反応を行い、アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンを得る工程、
    Figure 2013129809
    (式中、R10は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基を示す。sは、3以上の整数である。)
    Figure 2013129809
    (式中、R11は、ハロゲン原子で置換されてもよい炭素原子数1〜20の一価炭化水素基を示す。tは、3以上の整数である。)
    (ii)得られた生成液に、周期表2族及び/又は13族の元素を含む塩基性中和剤及び/又は吸着剤を添加して、前記超強酸性触媒を中和及び/又は吸着する工程、及び
    (iii)前記超強酸性触媒の中和物及び/又は吸着物を除去する工程、
    (B)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへ酸無水物基を導入する工程
    (iv)白金触媒下、上記(A)の工程で得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHと、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物をヒドロシリル化反応させる工程。
  8. 不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物が、アリル無水コハク酸である請求項7記載のオルガノシロキサンの製造方法。
  9. 請求項7記載の(A)の工程に続いて、下記(C)の工程を経て製造することを特徴とする、分子内にアルコキシ基と、酸無水物基と、ポリエーテル基を有する請求項2に記載するオルガノシロキサンの製造方法。
    (C)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへポリエーテル基及び酸無水物基を導入する工程
    白金触媒下、まず、上記(A)の工程で得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHの一部と、不飽和結合を有するポリエーテル基含有化合物をヒドロシリル化反応させた後、次に、残りの≡SiHと、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物をヒドロシリル化反応させる工程。
  10. 不飽和結合を有するポリエーテル基含有化合物が、下記[9]式で表されるアリルポリエーテルであり、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物が、アリル無水コハク酸である請求項9記載のオルガノシロキサンの製造方法。
    Figure 2013129809
    (式中、Zは、炭素原子数1〜4の二価炭化水素基を示す。xは、0又は1である。R4は、水素原子、炭素原子数1〜6の一価炭化水素基、又は下記[5]式で表される基を示す。p、qは、0又は1以上の整数を示す。但し、p、qのうち少なくとも1つは、1以上の整数をとる。)
    Figure 2013129809
    (式中、R5は、炭素原子数1〜4の一価炭化水素基を示す。)
  11. 上記の周期表2族及び/又は13族の元素を含む塩基性中和剤及び/又は吸着剤が、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで表される結晶性層状化合物からなることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載のオルガノシロキサンの製造方法。
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