JP2013129809A - 酸無水物基含有オルガノシロキサン及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、用途に応じて、1分子中に含有するアルコキシ基、及び酸無水物基の数を自由に調整することができ、かつ無機基材との親和性及び反応性を制御することができる新規な酸無水物基含有オルガノシロキサン、及び該オルガノシロキサンを安定に保持するオルガノシロキサン組成物を提供することを目的とする。
また、該酸無水物基含有オルガノシロキサンの製造工程において、酸無水物環の開環反応を抑制することができ、かつ低コストである酸無水物基含有オルガノシロキサンの製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本発明は、下記[1]式で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、少なくとも1種類のシロキサン単位が、シロキサン結合を形成して挿入された、分子内に、アルコキシ基と、酸無水物基を有する化合物であって、かつ、上記挿入されるシロキサン単位が、下記[2a]式のA式で表されるシロキサン単位1〜100個と、必要に応じて挿入される下記[2a]式のB式で表されるシロキサン単位0〜100個からなることを特徴とするオルガノシロキサンを提供する。
(A)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンの製造工程
(i)上記[1]式で表わされるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物と、下記[7]式の環状オルガノハイドロジェンシロキサン又は下記[7]式の環状オルガノハイドロジェンシロキサンと下記[8]式の環状オルガノシロキサンとを混合し、超強酸性触媒の存在下、実質的に水の非存在下において平衡化反応を行い、アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンを得る工程、
(ii)得られた生成液に、周期表2族及び/又は13族の元素を含む塩基性中和剤及び/又は吸着剤を添加して、前記超強酸性触媒を中和及び/又は吸着する工程、及び
(iii)前記超強酸性触媒の中和物及び/又は吸着物を除去する工程、
(B)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへ酸無水物基を導入する工程
(iv)白金触媒下、上記(A)の工程で得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHと、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物をヒドロシリル化反応させる工程。
(C)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへポリエーテル基及び酸無水物基を導入する工程
白金触媒下、まず、上記(A)の工程で得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHの一部と、不飽和結合を有するポリエーテル基含有化合物をヒドロシリル化反応させた後、次に、残りの≡SiHと、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物をヒドロシリル化反応させる工程。
該オルガノシロキサンを、樹脂硬化剤、樹脂改質剤、塗料改質剤、接着性改良剤、繊維の表面処理剤、無機質材料(塗料用無機顔料、プラスチック用無機充填剤、化粧料用無機粉体、ガラス、コンクリート等)の表面処理剤等の用途で使用した場合、分子内の酸無水物基の数を調整することで、樹脂との架橋密度を調整することが可能となり、またアルコキシ基とポリエーテル基の数を調整することで、無機基材との親和性及び反応性を自由に制御することが可能となる。
また、本発明の製造方法は、完全非水系で製造できるため、製造の段階において、酸無水物基の開環反応等の副反応を抑制できる。また、低コストでの製造が可能となる。
本発明のオルガノシロキサンは、下記[1]式で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、少なくとも1種類のシロキサン単位が、シロキサン結合を形成して挿入されている、アルコキシ基と、酸無水物基を必須とする化合物である。この場合、部分加水分解縮合物の重合度(ケイ素原子又はSiO基の数)は2〜100、好ましくは2〜50、更に好ましくは2〜20であることが好ましい。挿入されるシロキサン単位は、下記[2a]式のA式で表されるシロキサン単位1〜100個、好ましくは1〜50個、更に好ましくは1〜20個と、必要に応じて挿入される下記[2a]式のB式で表されるシロキサン単位0〜100個、好ましくは0〜50個、更に好ましくは0〜20個からなる。なお、B式のシロキサン単位を含む場合、好ましくは1個以上含むことがよい。
なお、上記の各種シロキサン単位は、同一のO−Si結合間に、共挿入されてもよいし、他のO−Si結合間に、個別に挿入されてもよい。
上記シロキサン単位が、[10]式で表される化合物の分子内に存在するO−Si結合において、β4の部位に、共挿入された場合、例えば、下記[11]式のような構造となる。
A1式及びC1式で表されるシロキサン単位は、[13]式で表される化合物の分子内に存在するO−Si結合(α1〜α8、β1〜β12)のいずれに挿入されてもよい。但し、これらのシロキサン単位は、O−Si結合において、OとSiの原子間に、シロキサン結合を形成して挿入される。つまり、分子内にSi−Si、O−Oのような結合が生じることはない。
上記シロキサン単位が、上記[13]式で表される化合物の分子内に存在するO−Si結合において、β6の部位に、共挿入された場合、例えば、下記[14]式のような構造となる。
本発明のアルコキシ基及び酸無水物基を含有するオルガノシロキサンは、下記(A)、(B)の2工程を経て製造することができる。
(A)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンの製造工程
(i)上記[1]式で表わされるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物と、下記<1>又は<2>の環状オルガノハイドロジェンシロキサンとを混合し、超強酸性触媒の存在下、実質的に水の非存在下において平衡化反応を行い、アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンを得る工程、
<1>下記[7]式で表わされる環状オルガノハイドロジェンシロキサン
<2>下記[7]式で表わされる環状オルガノハイドロジェンシロキサンと下記[8]式で表される環状オルガノシロキサンとの混合物
(ii)得られた生成液に、周期表2族及び/又は13族の元素を含む塩基性中和剤及び/又は吸着剤を添加して、前記超強酸性触媒を中和及び/又は吸着する工程、及び
(iii)前記超強酸性触媒の中和物及び/又は吸着物を除去する工程、
(B)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへ酸無水物基を導入する工程
(iv)白金触媒下、上記(A)の工程で得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHと、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物をヒドロシリル化反応させる工程。
(C)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへポリエーテル基及び酸無水物基を導入する工程
白金触媒下、まず、上記(A)の工程で得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHの一部と、不飽和結合を有するポリエーテル基含有化合物をヒドロシリル化反応させた後、次に、残りの≡SiHと、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物をヒドロシリル化反応させる工程。
上記[1]式のアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物、上記[7]式の環状オルガノハイドロジェンシロキサン、上記[8]式の環状オルガノシロキサンは、モル比で、好ましくは[1]:[7]:[8]=1:1/s〜200/s:0〜100/t、更に好ましくは[1]:[7]:[8]=1:1/s〜100/s:0〜50/t、特に好ましくは[1]:[7]:[8]=1:1/s〜40/s:0〜20/tの割合で、混合して使用することができる。[1]式のアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物と[7]式の環状オルガノハイドロジェンシロキサンは、必須の成分であり、[8]式の環状オルガノシロキサンは、必要に応じて、適宜併用される成分である。[8]式の環状オルガノシロキサンを使用する場合、1/t以上のモル比で用いることができる。
最後に、超強酸性触媒の中和物及び/又は吸着物の除去を行う。その方法として、上記で得られた液体を、フィルターを通して、ろ過、精製を行う。
上記(A)の工程により得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへ、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物、白金触媒、及び、必要により溶剤を混合し、加熱することにより、ヒドロシリル化反応が進行し、目的とするアルコキシ基及び酸無水物基を含有するオルガノシロキサンを得ることができる。
また、白金触媒としては、塩化白金酸等を使用することができる。実際には、取り扱いを簡便とするため、トルエン等の溶剤で、0.1〜2質量%程度に希釈して使用することが好ましい。白金触媒の添加量は、原料として仕込んだアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有するSiH基の総mol数に対し、10-5〜10-4倍のmol数を添加することが好ましい。
ヒドロシリル化反応は、90〜120℃、特に90〜110℃で行うことが好ましく、また反応時間は、4〜10時間が好ましい。
まず、上記(A)の工程により得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへ、不飽和結合を有するポリエーテル基含有化合物、白金触媒、及び、必要により溶剤を混合し、加熱することにより、ヒドロシリル化反応が進行し、アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHの一部へ、ポリエーテル基含有化合物が付加される。次に、前記反応液中へ、不飽和結合をもつ酸無水物基含有化合物を添加し、加熱することにより、残り全ての≡SiHへ、酸無水物基含有化合物が付加され、目的とするアルコキシ基、酸無水物基、及びポリエーテル基を含有するオルガノシロキサンを得ることができる。
この場合、不飽和結合を有するポリエーテル基含有化合物は、下記[9]式、特に[9a]式
で表されるアリルポリエーテルであることが好ましく、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物が、アリル無水コハク酸であることが好ましい。
ヒドロシリル化反応は、60〜120℃、特に80〜100℃で行うことが好ましく、また反応時間は、3〜6時間が好ましい。白金触媒としては、上記のものが用いられる。白金触媒は、溶剤で希釈する場合、溶剤の種類は上記した通りであり、その使用量も上記した通りである。
また、上記不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物の使用量は、上記(A)の工程により得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン1molに対し、好ましくは1〜100mol、更に好ましくは1〜50mol、特に好ましくは1〜20molの割合で配合し、ヒドロシリル化反応を行うことができる。
ヒドロシリル化反応は、90〜120℃、特に90〜110℃で行うことが好ましく、また反応時間は、4〜10時間が好ましい。白金触媒は、上記した通りである。
実施例1(無水コハク酸変性メトキシシロキサンの製造)
下記(A)、(B)の2工程を経て、無水コハク酸変性メトキシシロキサンの製造を行った。
(A)メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンの製造工程
撹拌機、温度計、及びジムロート冷却管を備えた1リットルの3つ口フラスコに、Si4O3(OCH3)10(本発明で規定する[1]式において、R2=CH3、n=0であるアルコキシシランの部分加水分解縮合物)で表されるメトキシシロキサン85.0g(0.181mol)、及びテトラメチルテトラヒドロシクロテトラシロキサン43.4g(0.181mol)を仕込んだ後、トリフルオロメタンスルホン酸0.0646gを撹拌しながら添加し、室温で4時間反応させた。反応終了後、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで表される固体塩基性中和剤0.388gを系内に添加し、2時間撹拌して、トリフルオロメタンスルホン酸の中和処理を行った後、ろ過精製を行い、122gの生成物−1(メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン)を得た。ここで、生成物−1について、トルエン溶媒下、GPC(Gel Permeation Chromatography)測定を行った。その結果、保持時間25〜37分の位置にブロードな生成物ピークを確認した。
撹拌機、温度計、及びジムロート冷却管を備えた1リットルの3つ口フラスコに、アリル無水コハク酸94.7g(0.676mol)を仕込んだ後、塩化白金酸のトルエン溶液(Pt濃度:0.5質量%)1.20gを撹拌しながら添加した。次に、100℃まで昇温した後、上記(A)工程で得られた生成物−1(メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン)120gを滴下添加し、更に110℃で4時間の熟成を行った。
まず、次の方法により、反応前後におけるサンプル1g中の≡SiH含有量をそれぞれ測定した。反応前後のサンプル1gへ、それぞれ、ブタノール10gを加え、更に、撹拌を加えながら、20質量%NaOH水溶液を20g加えた。この時に発生する水素ガス(≡SiH+H2O→≡SiOH+H2↑)の量から、≡SiH含有量をそれぞれ算出した。次に、下記式により、サンプル1g中において、実際に反応したアリル無水コハク酸の量を算出した。
反応量(mol)=[反応前の≡SiH含有量(mol)]−[反応後の≡SiH含有量(mol)]
表1に、その結果を示す。
反応前のサンプル1g中には、原料として仕込んだアリル無水コハク酸が3.13×10-3mol存在する。先に求めた反応量と、原料として仕込んだ量から、下記のようにして、アリル無水コハク酸の反応率を計算すると99.4%となる。
[反応率=(3.11×10-3(mol)/3.13×10-3(mol))×100=99.4(%)]
以上のことから、ヒドロシリル化反応により、原料として仕込んだアリル無水コハク酸の99%以上が、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンと反応したことを確認した。
その結果、まず、−80ppm〜−110ppmの範囲に、SiO4/2の単位に起因する3本のピークが存在した。これらのピークは、SiO1/2(OCH3)3、SiO2/2(OCH3)2、SiO3/2(OCH3)で表される構造の存在を示唆する。また、−5ppm〜−25ppmの範囲に、SiO2/2の単位に起因する2本のピークが存在した。これらのピークは、SiO2/2(CH3)X1、SiO1/2(CH3)(OCH3)X1で表される構造の存在を示唆する(X1は、下記の無水コハク酸基を有する一価炭化水素基を示す。)。
設計としては、メトキシシロキサン1molに対して、A2式で表されるシロキサン単位が4mol導入される配合比率で、各原料の仕込みを行った。実際に得られた生成物は、平均組成として、ほぼ設計通りのものができている。
実施例1の(A)工程、及び下記(C)の2工程を経て、無水コハク酸/ポリエーテル共変性メトキシシロキサンの製造を行った。
(C)メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンへのポリエーテル基及び酸無水物基の導入工程
まず、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiH基の一部へ、アリルポリエーテルを反応させるための操作を行った。
撹拌機、温度計、及びジムロート冷却管を備えた1リットルの3つ口フラスコに、実施例1の(A)工程で得られた生成物−1(メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン)120g、及びトルエン36gを仕込んだ後、塩化白金酸のトルエン溶液(Pt濃度:0.5質量%)1.50gを撹拌しながら添加した。次に、90℃まで昇温した後、下記式
CH2=CH−CH2−O(CH2CH2O)3.8CH3
で表されるアリルポリエーテル20.3g(0.0849mol)を滴下添加し、3時間の熟成を行った。
反応率=0.470×10-3(mol)/0.477×10-3(mol)×100≒98.5(%)
以上のことから、ヒドロシリル化反応により、原料として仕込んだCH2=CH−CH2−O(CH2CH2O)3.8CH3は、ほぼ全てメトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンへ導入されたことを確認した。
次に、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン中に含有する残りの≡SiH基へ、アリル無水コハク酸を反応させるための操作を行った。温度を100〜110℃に維持しながら、撹拌下、アリル無水コハク酸107g(0.764mol)を滴下添加した後、110℃で5時間熟成を行った。
反応前のサンプル1g中には、原料として仕込んだアリル無水コハク酸が2.68×10-3mol存在する。先に求めた反応量と、原料として仕込んだ量とから、下記のようにしてアリルポリエーテルの反応率を計算すると、76.5%となる。
[2.05×10-3(mol)/2.68×10-3(mol)×100=76.5(%)]
原料として仕込んだアリル無水コハク酸の約77%が、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンと反応し、残り約23%が余剰分として残留した。最後に、余剰のアリル無水コハク酸を除去するための操作を行った。ジムロート冷却管を排ガス管につなぎかえ、系内の圧力を10mmHgまで減圧した後、窒素ガスバブリング下、110℃で10時間加熱を行った。減圧加熱を終了後、室温まで冷却し、常圧に復圧した後、得られた液体のろ過精製を行い、197gの生成物−3(無水コハク酸/ポリエーテル共変性メトキシシロキサン)を得た。
設計としては、メトキシシロキサン1molに対し、A2式で表されるシロキサン単位が3.5mol、C2式で表されるシロキサン単位が0.5mol導入される配合比率で、各原料の仕込みを行った。実際に得られた生成物は、平均組成として、ほぼ設計通りのものができている。
実施例2において、CH2=CH−CH2−O(CH2CH2O)3.8CH3で表される化合物の添加量を20.3g(0.0849mol)から40.6g(0.170mol)へ変更したこと以外は、同様の操作を行った。
まず、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiH基の一部へアリルポリエーテルを反応させた後、アリルポリエーテルの反応率を測定した。実施例1,2と同様にして、反応前後における反応液1g中の≡SiH含有量を測定し、実際に反応したアリルポリエーテルの量を算出した。表4に、その結果を示す。
[反応率=0.840×10-3(mol)/0.857×10-3(mol)×100≒98.0(%)]
ヒドロシリル化反応により、原料として仕込んだCH2=CH−CH2−O(CH2CH2O)3.8CH3は、ほぼ全てメトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンへ導入されたと考えられる。
次に、アルコキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサン中に含有する残りの≡SiH基へ、アリル無水コハク酸を反応させた後、アリル無水コハク酸の反応率を測定した。前記と同様の方法により、反応前後における反応液1g中の≡SiH含有量を測定し、実際に反応したアリル無水コハク酸の量を算出した。表5に、その結果を示す。
[反応率=1.65×10-3(mol)/2.51×10-3(mol)×100=65.7(%)]
以上のことから、原料として仕込んだアリル無水コハク酸の約66%が、メトキシ基含有メチルハイドロジェンシロキサンと反応し、残り約34%が余剰分として残留したことを確認した。
最後に、余剰のアリル無水コハク酸を除去するための操作を行った。ジムロート冷却管を排ガス管につなぎかえ、系内の圧力を10mmHgまで減圧した後、窒素ガスバブリング下、110℃で10時間加熱を行った。減圧加熱を終了後、室温まで冷却し、常圧に復圧した後、得られた液体のろ過精製を行い、197gの生成物−4(無水コハク酸/ポリエーテル共変性メトキシシロキサン)を得た。
次に、生成物−4に関し、赤外分光法(FTIR)によって、無水コハク酸基の帰属を行った。その結果、1,863cm-1、1,785cm-1に無水コハク酸基のカルボニル伸縮振動による吸収が観測された。なお、1,735cm-1に、無水コハク酸基が開環して生じるカルボキシル基のカルボニル伸縮振動による吸収は、観測されなかった。生成物−4は、製造段階において、酸無水物基の開環が十分に抑制されている。
次に、生成物−4の構造解析を行うため、29Si−NMR測定を実施した。その結果、得られた生成物−4の構造は、実施例2で製造した無水コハク酸/ポリエーテル共変性メトキシシロキサンと同様、原料のSi4O3(OCH3)10で表される化合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、下記A2式で表される酸無水物基を有する一価炭化水素基X1を有するシロキサン単位、及び下記C2式で表されるポリエーテル基を有する一価炭化水素基Y1を有するシロキサン単位が挿入された構造をもつことが推定される。
設計としては、メトキシシロキサン1molに対し、A2式で表されるシロキサン単位が3mol、C2式で表されるシロキサン単位が1mol導入される配合比率で、各原料の仕込みを行った。実際に得られた生成物は、平均組成として、ほぼ設計通りのものができている。
表7に示す配合で、X−12−967とX−12−641の混合物を製造した。
上記比較例1〜3で得られた各サンプルへ、0.1N−塩酸水を添加した。1N−塩酸水の添加量は、各サンプル中のX−12−967とX−12−641の総量に対して、1.3倍molの水が加わる量に調整した。次に、この混合物をジメトキシエタンで10質量%に希釈し、75℃で1時間、撹拌し、透明な液体を得た。
次に、上記で得られた各サンプルについて、THF溶媒下でのGPC測定を行い、反応前後における重量平均分子量を算出した。表8に、各サンプルの重量平均分子量に関し、反応前に対する増加率を示す。
上記で得られた実施例1のオルガノシロキサンを、ジメトキシエタン中へ、10質量%溶解した塗液サンプルを作製した。この塗液サンプルを、寸法50mm×100mm×3mmのガラス基板上へフローコートし、室温で20分間自然乾燥後、105℃で60分間加熱処理を行って、ガラス基板上へ硬化皮膜を形成した。実施例2,3、及び比較例1〜3に関しても、上記と同様の操作を行った。なお、比較例4〜6に関しては、すでにジメトキシエタンで10質量%に希釈されているため、そのまま塗液として使用した。
(1)外観、密着性
上記のようにして作製した硬化皮膜付きガラス基板を水、ジメトキシエタンの各液中へ、それぞれ1時間浸漬した後、エアーをあてて乾燥を行い、更に105℃で5分間、加熱乾燥した。
まず、ガラス基板上へ形成した硬化皮膜の外観を観察し、下記の基準で評価を行った。
○:無色透明で、均一な硬化皮膜が形成されている。
×:着色(白濁等)や、硬化皮膜表面にムラがある。
次に、硬化皮膜のガラス基板への密着性評価を実施した。密着性評価は、碁盤目密着試験を行った。硬化皮膜上へ25×25マスの切れ目を入れ、セロハンテープを貼付した後に剥がして、基板上に残ったマス目の数を計測した。表9に、外観、密着性の評価結果を示す。
上記のようにして作製した硬化皮膜付きガラス基板をジメトキシエタン中へ1時間浸漬した後、エアーをあてて乾燥を行い、更に105℃で5分間、加熱乾燥した。次に、得られた硬化皮膜の水接触角を測定した。図1に、その結果を示す。
また、無水コハク酸変性トリメトキシシランとポリエーテル変性トリメトキシシランとの加水分解縮合物である比較例4〜6は、それらを単純混合して得た比較例1〜3と比較して、水接触角が増加の傾向がみられた。しかし、比較例4〜6では、加水分解縮合の際、水を使用するため、無水コハク酸基の一部に開環反応が併発している。
実施例1で得られたオルガノシロキサンと、これに活性水素含有化合物の捕捉剤として、α−トリメトキシシリルプロピオン酸エチルを5質量%添加した組成物について、室温で1ヶ月間保管した。また、実施例3、比較例1,4に関しては、α−トリメトキシシリルプロピオン酸エチルを添加せず、室温で1ヶ月間保管した。保管前後のサンプルについて、IR測定を行い、下記の基準により、保存安定性を評価した。
○:1,735cm-1での吸収(無水コハク酸基が開環して生じるカルボキシル基の
カルボニル伸縮振動による吸収)がみられない。
×:1,735cm-1での吸収がみられる。
比較例1に関しては、製造時における無水コハク酸基の安定性は良好である。一方、経時で、無水コハク酸基の安定性が低下する傾向がみられる。また、比較例4では、1分子内に複数の無水コハク酸基をもたせるために、無水コハク酸変性トリメトキシシランの加水分解縮合を行ったが、その際に使用する水の影響で、製造の段階で、無水コハク酸基の一部が開環してしまう。
Claims (11)
- 下記[1]式で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、少なくとも1種類のシロキサン単位が、シロキサン結合を形成して挿入された、分子内に、アルコキシ基と、酸無水物基を有する化合物であって、かつ、上記挿入されるシロキサン単位が、下記[2a]式のA式で表されるシロキサン単位1〜100個と、必要に応じて挿入される下記[2a]式のB式で表されるシロキサン単位0〜100個からなることを特徴とするオルガノシロキサン。
- 下記[1]式で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物の分子内に存在するO−Si結合の少なくとも1つにおいて、OとSiの原子間に、少なくとも2種類のシロキサン単位が、シロキサン結合を形成して挿入された、分子内に、アルコキシ基と、酸無水物基と、ポリエーテル基を有する化合物であって、かつ、上記挿入されるシロキサン単位が、下記[2b]式のA式で表されるシロキサン単位1〜100個と、下記[2b]式のC式で表されるシロキサン単位1〜100個と、更に必要に応じて挿入される下記[2b]式のB式で表されるシロキサン単位0〜100個からなることを特徴とするオルガノシロキサン。
- 上記[6]式で表されるα−シリル脂肪族エステル化合物が、α−トリメトキシシリルプロピオン酸エチル、又はα−メチルジメトキシシリルプロピオン酸オクチルであることを特徴とする請求項5に記載のオルガノシロキサン組成物。
- 下記(A)及び(B)の2工程を経て製造することを特徴とする、分子内にアルコキシ基と、酸無水物基を有する請求項1に記載するオルガノシロキサンの製造方法。
(A)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンの製造工程
(i)請求項1記載の[1]式で表わされるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物と、下記[7]式の環状オルガノハイドロジェンシロキサン又は下記[7]式の環状オルガノハイドロジェンシロキサンと下記[8]式の環状オルガノシロキサンとを混合し、超強酸性触媒の存在下、実質的に水の非存在下において平衡化反応を行い、アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンを得る工程、
(ii)得られた生成液に、周期表2族及び/又は13族の元素を含む塩基性中和剤及び/又は吸着剤を添加して、前記超強酸性触媒を中和及び/又は吸着する工程、及び
(iii)前記超強酸性触媒の中和物及び/又は吸着物を除去する工程、
(B)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへ酸無水物基を導入する工程
(iv)白金触媒下、上記(A)の工程で得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHと、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物をヒドロシリル化反応させる工程。 - 不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物が、アリル無水コハク酸である請求項7記載のオルガノシロキサンの製造方法。
- 請求項7記載の(A)の工程に続いて、下記(C)の工程を経て製造することを特徴とする、分子内にアルコキシ基と、酸無水物基と、ポリエーテル基を有する請求項2に記載するオルガノシロキサンの製造方法。
(C)アルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサンへポリエーテル基及び酸無水物基を導入する工程
白金触媒下、まず、上記(A)の工程で得られたアルコキシ基含有オルガノハイドロジェンシロキサン中に含有する≡SiHの一部と、不飽和結合を有するポリエーテル基含有化合物をヒドロシリル化反応させた後、次に、残りの≡SiHと、不飽和結合を有する酸無水物基含有化合物をヒドロシリル化反応させる工程。 - 上記の周期表2族及び/又は13族の元素を含む塩基性中和剤及び/又は吸着剤が、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oで表される結晶性層状化合物からなることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか1項に記載のオルガノシロキサンの製造方法。
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