JP2013129760A - ポリ乳酸系延伸フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】残存している残触媒を触媒失活剤添加又は溶剤洗浄により除去したポリD乳酸より抗菌性に優れたポリ乳酸系延伸フィルム及び該延伸フィルムを被覆層としたポリ乳酸系複合フィルムを提供すること。
【解決手段】本発明によるポリ乳酸系延伸フィルムは、ポリD乳酸に残存する残触媒が少なくとも溶融混練後に失活状態となるように触媒失活処理が行われることを特徴とする。
【選択図】なし
【解決手段】本発明によるポリ乳酸系延伸フィルムは、ポリD乳酸に残存する残触媒が少なくとも溶融混練後に失活状態となるように触媒失活処理が行われることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
本発明はポリD乳酸からなり、強度が十分な延伸フィルムに関する。また本発明はポリD乳酸からなる多層ポリ乳酸系延伸フィルムの被覆層となるポリ乳酸系延伸フィルムに関する。
生分解可能なプラスチックとして、汎用性の高い脂肪族ポリエステルが注目されており、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンサクシネート(PES)、ポリカプロラクトン(PCL)などが上市されている。これら生分解性脂肪族ポリエステルの用途の一つとして包装用、農業用、食品用などのフィルム分野があり、用途に応じた高強度、耐熱性、ガスバリア性及び生分解性が基本性能として要求されている。上記脂肪族ポリエステルのうちPLAは、ポリL乳酸(PLLA)やポリD乳酸(PDLA)からなり(例えば、特許文献1及び特許文献5を参照)、その単独結晶(α晶)の融点は約170℃であり、ポリエチレンテレフタレート等と比較すると耐熱性が不十分な場合もあり、その改良が求められている。
一方、PLAの耐熱性を更に改良する方法として、ポリL乳酸(PLLA)とポリD乳酸(PDLA)とをブレンドしてステレオコンプレックスを形成させる方法が多数提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、非特許文献1等を参照)。このステレオコンプレックス(SC)は、ポリL乳酸(PLLA)とポリD乳酸(PDLA)の共晶であり、その結晶の融点はα晶よりも約50℃高く、それを利用することが期待されている。
しかしながら、PLLAとPDLAを単に溶融混練して得た組成物をフィルムに成形しても容易にステレオコンプレックスは形成されず、また、形成されたフィルムは、耐熱性は改良されるものの、脆く、包装用フィルム等として使い難い。そこでPLLAとPDLAを溶融混練して得た組成物を特定の条件下で少なくとも一軸方向に延伸することにより耐熱性、靭性に優れた延伸フィルムが得られることを発明者らは提案した。この延伸フィルムは広角X線回折による回折ピーク(2θ)が16°近辺〔以下、かかる領域に検出されるピークを(PPL)と呼ぶ場合がある。〕にあり、且つ12°近辺、21°近辺及び24°近辺の回折ピーク(2θ)〔以下、かかる領域に検出されるピークを併せて(PSC)と呼ぶ場合がある。〕の総面積(SSC)が、16°近辺の回折ピーク(PPL)の面積(SPL)と(SSC)との合計量に対して10%未満の延伸フィルムである。そのため延伸フィルム中のSC晶はPLLA及びPDLA単体の結晶に比べ稀少である。さらに、本発明者らはかかる延伸フィルムに特定の熱処理を行い、広角X線回折による主たる回折ピーク(2θ)が12°近辺、21°近辺及び24°近辺にあり、主にSC晶からなる延伸フィルムの製造方法を提案した(特許文献6を参照)。
また、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムのガスバリア性を改善する方法として無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物の層をもうける方法が提案されている(特許文献5参照)。しかし、かかる蒸着等方法は行程が複雑なため費用がかかり、また蒸着膜は非常に薄いものなのでバリア性能の管理等に課題があった。また、そうした特定の熱特性を有するポリ乳酸系組成物に関し、さらに、表面平滑性、透明性、耐熱性、バリア性能、靭性に優れた延伸フィルム等のフィルム、インジェクション、ブロー、真空/圧空成形又は押出成形その他の成形品を提供することを目的として混練による高度な分散処理が提案されている(特許文献6参照)。
Macromoleculs,20,904(1987)
ポリ乳酸の重合中に触媒失活剤を添加する場合は、触媒失活剤が酸性物質であるためポリ乳酸を重合する釜の腐食が問題となる場合があり、またポリ乳酸の連続バッチ重合を行う場合は前バッチに残されている微量の触媒失活剤が後のバッチの触媒に影響し、重合反応が進みにくくなり分子量が上がりにくい場合があるために、ポリ乳酸重合時に触媒失活剤を添加しない方法で製造したポリ乳酸は分子量低下が大きく、もろいフィルムとなった。また、中間層をポリL乳酸/ポリD乳酸=45/55〜55/45からなるステレオコンプレックス晶を含むポリ乳酸フィルム層とし、被覆層をヒートシール性と雑菌繁殖抑制効果を有するポリD乳酸からなるポリ乳酸系延伸フィルム層とした場合には被覆層がもろくなり、ヒートシール強度が出ないおそれがあった。本発明は、ポリD乳酸単体からなるフィルムの強度を改善し、さらに、基材層として中間層をポリL乳酸/ポリD乳酸=45/55〜55/45からなるステレオコンプレックス晶を含むポリ乳酸フィルム層とし、被覆層をポリD乳酸から構成されているポリ乳酸系延伸フィルム層としたポリ乳酸延伸複合フィルムの被覆層の強度を改善することを目的とする。
ポリ乳酸の重合中に触媒失活剤を添加する場合は、触媒失活剤が酸性物質であるためポリ乳酸を重合する釜の腐食が問題となる場合があり、またポリ乳酸の連続バッチ重合を行う場合は前バッチに残されている微量の触媒失活剤が後のバッチの触媒に影響し、重合反応が進みにくくなり分子量が上がりにくい場合があるために、ポリ乳酸重合時に触媒失活剤を添加しない方法で製造したポリ乳酸は分子量低下が大きく、もろいフィルムとなる。そこで本発明者らは、ポリD乳酸を押出成形することにより得られるポリ乳酸系組成物であって、該ポリD乳酸に残触媒が残存する場合において、残存する該残触媒が少なくとも押出成形後に失活状態となるように触媒失活処理が行われるようにすることで、十分な強度のフィルムとなる。また、基材層を中間層としてポリL乳酸/ポリD乳酸=45/55〜55/45からなるステレオコンプレックス晶を含むポリ乳酸フィルム層とし、被覆層を、ヒートシール性と雑菌繁殖抑制効果を有するポリD乳酸からなる延伸フィルム層としたポリ乳酸延伸複合フィルムとした場合にも被覆層が十分なヒートシール強度をもたせることが出来る。すなわち、本発明はポリ乳酸重合時に触媒失活剤を添加しない方法で製造したポリ乳酸を押出成形することにより得られるポリ乳酸系組成物であって、該ポリD乳酸に残触媒が残存する場合において、残存する該残触媒が少なくとも押出成形後に失活状態となるように触媒失活処理が行われるようにすることで、ポリD乳酸単体でも十分な強度のフィルムとする技術に関する。また、基材層として中間層をポリL乳酸/ポリD乳酸=45/55〜55/45からなるステレオコンプレックス晶を含むポリ乳酸フィルム層とし、被覆層を、ヒートシール性と雑菌繁殖抑制効果を有するポリD乳酸からなる延伸フィルム層としたポリ乳酸延伸複合フィルムとした場合にも被覆層が十分なヒートシール強度をもたせる技術に関する。さらに、本発明において、残触媒の好適な除去方法は、触媒失活剤としてメタリン酸、ピロリン酸、メタクリル酸又はメタスルホン酸の少なくとも一種を用い、ポリD乳酸100質量%に対して0.01〜0.1質量%の割合で添加すること、又は溶剤として酢酸エチル、メチルエチルケトン、又はアセトンの少なくとも一種を用いて洗浄除去する方法である。さらに、本発明の好適な態様によれば、ポリD乳酸の残触媒の金属含有量が、20〜60ppmの範囲であり、かつ触媒失活剤の添加量がポリD乳酸の0.2質量%以下の範囲であることが望ましい。これにより、ポリD乳酸フィルムに十分な強度を得ることが出来る。
具体的には、上記目的を達成するための手段は以下の第(1)項〜第(6)項である。
(1)ポリD乳酸に残存する残触媒が少なくとも溶融混練後に失活状態となるように触媒失活処理が行われることを特徴とする、ポリ乳酸系延伸フィルム。
(2)その触媒失活処理が、触媒失活剤による添加処理又は溶剤洗浄処理であることを特徴とする、第(1)項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
(3)その触媒失活剤がメタリン酸、メタスルホン酸、ホスホノ酸エステル及びポリリン酸の群から選択される少なくとも1種であり、かつ、その触媒失活剤がポリD乳酸の質量に対して0.1〜1.5質量%で添加されることを特徴とする、第(2)項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
(4)そのポリD乳酸の残存するその残触媒の金属含有量が、20〜60ppmの範囲であり、かつ、その触媒失活剤の添加量がそのポリD乳酸の質量に対して、0.01質量%〜0.15質量%であることを特徴とする、第(2)項又は第(3)項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
(5)一方向に2倍以上延伸されてなることを特徴とする、第(1)項から第(4)項のいずれか1項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
(6)第(1)項から第(5)項のいずれか1項に記載のポリ乳酸系延伸フィルムである被覆層と、ステレオコンプレックス晶のポリ乳酸を含む基材層とを含む、ポリ乳酸延伸複合フィルム。
(1)ポリD乳酸に残存する残触媒が少なくとも溶融混練後に失活状態となるように触媒失活処理が行われることを特徴とする、ポリ乳酸系延伸フィルム。
(2)その触媒失活処理が、触媒失活剤による添加処理又は溶剤洗浄処理であることを特徴とする、第(1)項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
(3)その触媒失活剤がメタリン酸、メタスルホン酸、ホスホノ酸エステル及びポリリン酸の群から選択される少なくとも1種であり、かつ、その触媒失活剤がポリD乳酸の質量に対して0.1〜1.5質量%で添加されることを特徴とする、第(2)項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
(4)そのポリD乳酸の残存するその残触媒の金属含有量が、20〜60ppmの範囲であり、かつ、その触媒失活剤の添加量がそのポリD乳酸の質量に対して、0.01質量%〜0.15質量%であることを特徴とする、第(2)項又は第(3)項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
(5)一方向に2倍以上延伸されてなることを特徴とする、第(1)項から第(4)項のいずれか1項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
(6)第(1)項から第(5)項のいずれか1項に記載のポリ乳酸系延伸フィルムである被覆層と、ステレオコンプレックス晶のポリ乳酸を含む基材層とを含む、ポリ乳酸延伸複合フィルム。
触媒失活処理をすることでポリD乳酸からなるフィルムの強度を改善し、さらに、被覆層を、ヒートシール性と雑菌繁殖抑制効果を有するポリD乳酸からなる延伸フィルム層としたポリ乳酸延伸複合フィルムのヒートシール性を改善する技術である。
ポリL乳酸
本発明においてポリL乳酸(PLLA)は、ポリL乳酸を主たる構成成分として含み、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。L乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、後述のポリD乳酸(PDLA)と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸して得られるポリ乳酸系延伸フィルムの耐熱性、ガスバリア性、その他成形品の耐熱性が劣るおそれがある。PLLAの分子量はフィルムなどの形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜100万の範囲にある。本発明では、重量平均分子量が6千〜50万のポリ−L乳酸が好適である。なお、フィルム分野では、重量平均分子量が6万未満のものは得られるポリ乳酸系延伸フィルムの強度が劣るおそれがある。一方、100万を超えるものは溶融粘度が大きく成形加工性が劣るおそれがある。本発明においてはポリ乳酸の残触媒を触媒失活剤添加又は溶剤洗浄により失活処理後に押出機に投入して成形する。
本発明においてポリL乳酸(PLLA)は、ポリL乳酸を主たる構成成分として含み、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。L乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、後述のポリD乳酸(PDLA)と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸して得られるポリ乳酸系延伸フィルムの耐熱性、ガスバリア性、その他成形品の耐熱性が劣るおそれがある。PLLAの分子量はフィルムなどの形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜100万の範囲にある。本発明では、重量平均分子量が6千〜50万のポリ−L乳酸が好適である。なお、フィルム分野では、重量平均分子量が6万未満のものは得られるポリ乳酸系延伸フィルムの強度が劣るおそれがある。一方、100万を超えるものは溶融粘度が大きく成形加工性が劣るおそれがある。本発明においてはポリ乳酸の残触媒を触媒失活剤添加又は溶剤洗浄により失活処理後に押出機に投入して成形する。
ポリL乳酸では残触媒の金属含有量は、ポリL乳酸に対して20〜60ppmの範囲であることが好ましく、これに対して、触媒失活剤の添加量は、ポリL乳酸に対して、0.2質量%以下、中でも0.01〜0.15質量%の範囲であることが好適である。また、残触媒の金属含有量がポリL乳酸に対して60〜100ppmの場合には、これに対して、触媒失活剤の添加量は、0.2質量%以下、中でも0.1〜0.15質量%の範囲であることが好ましい。
ポリL乳酸の残触媒量、すなわち重合後残存する残触媒となる触媒中の金属含有量が、20ppm未満では分子量10万以上の重合が出来ないおそれがあり、100ppmよりも多くなると、触媒活性により分子量が低下するおそれがある。
ポリD乳酸
本発明においてポリD乳酸(PDLA)は、ポリD乳酸を主たる構成成分として含み、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。D乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、先述のポリL乳酸(PLLA)と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸して得られるポリ乳酸系延伸フィルムの耐熱性、ガスバリア性、その他成形品の耐熱性が劣るおそれがある。PDLAの分子量はフィルムなどの形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜100万の範囲にある。本発明では、重量平均分子量が6千〜50万のポリ−D乳酸が好適である。なお、フィルム分野では、重量平均分子量が6万未満のものは得られるポリ乳酸系延伸フィルムの強度が劣るおそれがある。一方、100万を超えるものは溶融粘度が大きく成形加工性が劣るおそれがある。本発明においてはポリ乳酸の残触媒を触媒失活剤添加又は溶剤洗浄により失活処理後に押出機に投入して成形する。
本発明においてポリD乳酸(PDLA)は、ポリD乳酸を主たる構成成分として含み、好ましくは95モル%以上を含む重合体である。D乳酸の含有量が95モル%未満の重合体は、先述のポリL乳酸(PLLA)と溶融混練して得られるポリ乳酸系組成物を延伸して得られるポリ乳酸系延伸フィルムの耐熱性、ガスバリア性、その他成形品の耐熱性が劣るおそれがある。PDLAの分子量はフィルムなどの形成性を有する限り、特に限定はされないが、通常、重量平均分子量(Mw)は6千〜100万の範囲にある。本発明では、重量平均分子量が6千〜50万のポリ−D乳酸が好適である。なお、フィルム分野では、重量平均分子量が6万未満のものは得られるポリ乳酸系延伸フィルムの強度が劣るおそれがある。一方、100万を超えるものは溶融粘度が大きく成形加工性が劣るおそれがある。本発明においてはポリ乳酸の残触媒を触媒失活剤添加又は溶剤洗浄により失活処理後に押出機に投入して成形する。
ポリD乳酸では残触媒の金属含有量は、ポリD乳酸に対して20〜60ppmの範囲であることが好ましく、これに対して、触媒失活剤の添加量は、ポリD乳酸に対して、0.2質量%以下であり、中でも0.01〜0.15質量%の範囲であることが好適である。また、残触媒の金属含有量がポリD乳酸に対して60〜100ppmの場合には、これに対して、触媒失活剤の添加量は、0.2質量%以下であり、中でも0.1〜0.15質量%の範囲であることが好ましい。
ポリD乳酸の残触媒量、すなわち重合後残存する残触媒となる触媒中の金属含有量が、20ppm未満では分子量10万以上の重合が出来ないおそれがあり、100ppmよりも多くなると、触媒活性により分子量が低下する恐れがある。ここで、ポリD乳酸は例えば酵素ex.プロティナーゼKによる分解されないことが報告されている(Blend of aliphatic polymers:V Non-enzymatic and enzymatic hydrolysis of blends from hydrophobic poly(L-lactide) and hydrophobic poly(vinyl alcohol);Polymer Degradation and Stability 71(2001) 403-413,Hideto Tuji, et al)。このように耐菌性のポリD乳酸層を内層、すなわち熱融着層とすることで包装体内部の菌の増殖を抑えて、内容物の劣化を防ぐことが期待できる。
共重合成分
本発明においてポリL乳酸及びポリD乳酸には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の他の共重合成分、例えば、多価カルボン酸若しくはそのエステル、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン類等を共重合させておいてもよい。多価カルボン酸としては、具体的には、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸、ジグリコール酸、ケトピメリン酸、マロン酸及びメチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸並びにテレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル及びメチルマロン酸ジメチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル並びにテレフタル酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸ジエステルが挙げられる。多価アルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール及び分子量1000以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、グリコール酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸及びヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。ラクトン類としては、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β又はγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等の各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状1量体エステル;グリコリド、Lラクチド、Dラクチド等の上記ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステル等が挙げられる。また、本発明に係わるポリL乳酸及びポリD乳酸には、それぞれD乳酸若しくはL乳酸を前記範囲以下であれば少量含まれていてもよい。
本発明においてポリL乳酸及びポリD乳酸には、本発明の目的を損なわない範囲で、少量の他の共重合成分、例えば、多価カルボン酸若しくはそのエステル、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン類等を共重合させておいてもよい。多価カルボン酸としては、具体的には、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸、ジグリコール酸、ケトピメリン酸、マロン酸及びメチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸並びにテレフタル酸、イソフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。多価カルボン酸エステルとしては、具体的には、例えば、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル及びメチルマロン酸ジメチル等の脂肪族ジカルボン酸ジエステル並びにテレフタル酸ジメチル及びイソフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸ジエステルが挙げられる。多価アルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール及び分子量1000以下のポリエチレングリコール等が挙げられる。ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、グリコール酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸及びヒドロキシカプロン酸等が挙げられる。ラクトン類としては、具体的には、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β又はγ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等の各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状1量体エステル;グリコリド、Lラクチド、Dラクチド等の上記ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステル等が挙げられる。また、本発明に係わるポリL乳酸及びポリD乳酸には、それぞれD乳酸若しくはL乳酸を前記範囲以下であれば少量含まれていてもよい。
触媒失活剤
好適な触媒失活剤として、有機酸、又はその塩がある。ここで有機酸とは、有機化合物の酸の総称であり、主たる有機酸の例としてカルボン酸があり、その中でもメタクリル酸が好適である。他の好適な触媒失活剤として、メタスルホン酸等のスルホ基含有化合物、メタリン酸、ピロリン酸等の種々のリン酸、又はその塩がある。これらの中では、特にメタリン酸、メタスルホン酸、ホスホノ酢酸トリエチル等のホスホノ酸エステル、又はポリリン酸が適度な触媒失活能力を有し、かつ、ポリ乳酸に対する分解効果が小さいので好ましい。また添加量としてはポリD乳酸質量に対し、0.1〜1.5質量%である。残触媒の金属含有量が20〜60ppmの範囲である場合には触媒失活剤の添加量は、ポリD乳酸の質量に対して、0.2質量%以下、中でも0.01〜0.15質量%の範囲であることが好適であり、残触媒の金属含有量がポリD乳酸に対して60〜100ppmの場合には、0.2質量%以下、中でも0.1〜0.15質量%の範囲であることが好ましい。残触媒の金属含有量が20〜60ppmの範囲である場合において、0.01質量%未満では触媒失活効果が十分でなく、1.5質量%を超えるとポリD乳酸が分解するおそれがある。また、ポリD乳酸の好ましい重合反応の観点から添加する触媒量から、ポリD乳酸の残存する残触媒の金属含有量が、20〜60ppmの範囲であることが多く、かかる残触媒の金属含有量での触媒失活剤の添加量はポリD乳酸の合計質量に対して、0.2質量%以下、中でも0.01〜0.15質量%の範囲であることが好適である。また、残触媒の金属含有量がポリD乳酸に対して60〜100ppmの場合には、0.2質量%以下であり、中でも0.1〜0.15質量%の範囲であることが好ましい。前記触媒失活剤の添加量が0.2質量%を超えるとポリD乳酸を分解してしまう可能性があるからである。さらに、触媒失活剤を添加するタイミングは、当然ポリD乳酸の重合後に適宜添加すればよい。また、ポリD乳酸の重合中に触媒失活剤を添加する場合は、触媒失活剤が酸性物質であるためポリD乳酸を重合する釜の腐食が問題となる場合がある。また、ポリD乳酸の連続バッチ重合を行う場合は前バッチに残されている微量の触媒失活剤が後のバッチの触媒に影響し、ポリD乳酸の重合反応を阻害し、分子量が上がりにくい場合がある。すなわち、本発明においては、ポリD乳酸を混練する又は押出成形するまでに予め添加しておいてもよいし、混練又は押出成形する際に添加してもよい。すなわち、具体的には混練又は押出成形の直前、混練中、混合の直後の少なくともいずれかの1つの時期に、触媒失活剤を添加することが望ましい。
好適な触媒失活剤として、有機酸、又はその塩がある。ここで有機酸とは、有機化合物の酸の総称であり、主たる有機酸の例としてカルボン酸があり、その中でもメタクリル酸が好適である。他の好適な触媒失活剤として、メタスルホン酸等のスルホ基含有化合物、メタリン酸、ピロリン酸等の種々のリン酸、又はその塩がある。これらの中では、特にメタリン酸、メタスルホン酸、ホスホノ酢酸トリエチル等のホスホノ酸エステル、又はポリリン酸が適度な触媒失活能力を有し、かつ、ポリ乳酸に対する分解効果が小さいので好ましい。また添加量としてはポリD乳酸質量に対し、0.1〜1.5質量%である。残触媒の金属含有量が20〜60ppmの範囲である場合には触媒失活剤の添加量は、ポリD乳酸の質量に対して、0.2質量%以下、中でも0.01〜0.15質量%の範囲であることが好適であり、残触媒の金属含有量がポリD乳酸に対して60〜100ppmの場合には、0.2質量%以下、中でも0.1〜0.15質量%の範囲であることが好ましい。残触媒の金属含有量が20〜60ppmの範囲である場合において、0.01質量%未満では触媒失活効果が十分でなく、1.5質量%を超えるとポリD乳酸が分解するおそれがある。また、ポリD乳酸の好ましい重合反応の観点から添加する触媒量から、ポリD乳酸の残存する残触媒の金属含有量が、20〜60ppmの範囲であることが多く、かかる残触媒の金属含有量での触媒失活剤の添加量はポリD乳酸の合計質量に対して、0.2質量%以下、中でも0.01〜0.15質量%の範囲であることが好適である。また、残触媒の金属含有量がポリD乳酸に対して60〜100ppmの場合には、0.2質量%以下であり、中でも0.1〜0.15質量%の範囲であることが好ましい。前記触媒失活剤の添加量が0.2質量%を超えるとポリD乳酸を分解してしまう可能性があるからである。さらに、触媒失活剤を添加するタイミングは、当然ポリD乳酸の重合後に適宜添加すればよい。また、ポリD乳酸の重合中に触媒失活剤を添加する場合は、触媒失活剤が酸性物質であるためポリD乳酸を重合する釜の腐食が問題となる場合がある。また、ポリD乳酸の連続バッチ重合を行う場合は前バッチに残されている微量の触媒失活剤が後のバッチの触媒に影響し、ポリD乳酸の重合反応を阻害し、分子量が上がりにくい場合がある。すなわち、本発明においては、ポリD乳酸を混練する又は押出成形するまでに予め添加しておいてもよいし、混練又は押出成形する際に添加してもよい。すなわち、具体的には混練又は押出成形の直前、混練中、混合の直後の少なくともいずれかの1つの時期に、触媒失活剤を添加することが望ましい。
溶剤洗浄
残触媒が残存するポリ乳酸を溶剤洗浄することによって、残触媒の一部または全部を失活させることができる場合がある。このような処理に用いることができる洗浄溶剤の例としては、アルコール、アセトン、ヘキサン、テトラクロロエチレン、トルエン、テルピン油、ヘキサン、石油エーテル、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル等の単独溶剤及びそれらの2種以上の混合溶剤が挙げることができる。ポリ乳酸に対して親和性の高く、取り扱う上で引火性の低いことから、酢酸エチル、メチルエチルケトン、又はアセトンが特に好ましい。また、洗浄温度は20℃未満では洗浄能力が劣る可能性があり、50℃より高いと引火する可能性が高くなる。また洗浄時間はポリD乳酸の形状にもよるが、直径4mmの球形とした場合、溶剤に浸った状態で1時間未満では十分洗浄出来ないおそれがあり、20時間以上では生産性が著しく低い可能性がある。
残触媒が残存するポリ乳酸を溶剤洗浄することによって、残触媒の一部または全部を失活させることができる場合がある。このような処理に用いることができる洗浄溶剤の例としては、アルコール、アセトン、ヘキサン、テトラクロロエチレン、トルエン、テルピン油、ヘキサン、石油エーテル、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル等の単独溶剤及びそれらの2種以上の混合溶剤が挙げることができる。ポリ乳酸に対して親和性の高く、取り扱う上で引火性の低いことから、酢酸エチル、メチルエチルケトン、又はアセトンが特に好ましい。また、洗浄温度は20℃未満では洗浄能力が劣る可能性があり、50℃より高いと引火する可能性が高くなる。また洗浄時間はポリD乳酸の形状にもよるが、直径4mmの球形とした場合、溶剤に浸った状態で1時間未満では十分洗浄出来ないおそれがあり、20時間以上では生産性が著しく低い可能性がある。
ポリ乳酸系延伸フィルム
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、ポリD乳酸重合に用いられ、残存している触媒を、触媒失活処理、すなわち、触媒失活剤による添加処理、溶剤洗浄処理等により失活させたポリD乳酸を利用して、これを延伸成形することにより得ることができる。また、基材層として中間層をポリL乳酸/ポリD乳酸=45/55〜55/45からなるステレオコンプレックス晶を含むポリ乳酸フィルム層とし、被覆層を、ヒートシール性と雑菌繁殖抑制効果を有するポリD乳酸からなるポリ乳酸系延伸フィルム層とした場合にも被覆層が十分なヒートシール強度をもたせることもできる。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、ポリD乳酸重合に用いられ、残存している触媒を、触媒失活処理、すなわち、触媒失活剤による添加処理、溶剤洗浄処理等により失活させたポリD乳酸を利用して、これを延伸成形することにより得ることができる。また、基材層として中間層をポリL乳酸/ポリD乳酸=45/55〜55/45からなるステレオコンプレックス晶を含むポリ乳酸フィルム層とし、被覆層を、ヒートシール性と雑菌繁殖抑制効果を有するポリD乳酸からなるポリ乳酸系延伸フィルム層とした場合にも被覆層が十分なヒートシール強度をもたせることもできる。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは、好ましくは一方向に2倍以上、より好ましくは2〜12倍、更に好ましくは3〜6倍延伸されてなる。延伸倍率は2倍未満のポリ乳酸系延伸フィルムは耐熱性が改良されないおそれがある。一方、延伸倍率に上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、12倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できないおそれがある。
本発明のポリ乳酸系2軸延伸フィルムは、好ましくは縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上、より好ましくは縦方向に2〜7倍及び横方向に2〜7倍、更に好ましくは縦方向に2.5〜5倍及び横方向に2.5〜5倍延伸されてなる。一方向の延伸倍率が2倍未満の二軸ポリ乳酸系延伸フィルムは耐熱性が改良されないおそれがある。一方、延伸倍率に上限は延伸し得る限り、とくに限定はされないが、通常、7倍を超えるとフィルムが破断したりして、安定して延伸できないおそれがある。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの厚さは用途により種々決め得るが、通常3〜300μm、好ましくは50〜100μmの範囲にある。本発明のポリ乳酸系延伸フィルムは種々用途により、他の基材と積層してもよい。他の基材としては、例えば、ポリL乳酸/ポリD乳酸=45/55〜55/45からなるステレオコンプレックス晶ポリ乳酸、非結晶性等の他のポリ乳酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン及びポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート及びポリカーボネート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリメチルメタクリレート、エチレン・酢酸ビニル共重合体、脂肪族ポリエステル等の生分解性ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、シート、カップ、トレー状物、あるいはその発泡体、若しくはガラス、金属、アルミニューム箔、紙等が挙げられる。熱可塑性樹脂からなるフィルムは無延伸であっても一軸あるいは二軸ポリ乳酸系延伸フィルムであっても良い。勿論、基材は1層でも2層以上としても良い。例えば、 本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの少なくとも片面にシリコーン樹脂層が積層されてなるポリ乳酸延伸複合フィルムは、離型フィルムなどの用途に好適である。このようなポリ乳酸延伸複合フィルムは、厚さ1〜300μmのポリ乳酸系延伸フィルム、厚さ0.1〜5μmの硬化樹脂層及び厚さ0.01〜5μmのシリコーン樹脂層からなる。
ポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法は、前記ポリ乳酸系組成物からなるシート又はフィルムを、通常50〜110℃、好ましくは60〜90℃の温度で一方向に2倍以上、好ましくは3〜12倍に延伸して得られるポリ乳酸系延伸フィルムを通常140〜220℃、好ましくは150〜200℃で、1秒以上、好ましくは3秒〜60秒、より好ましくは3〜20秒熱処理してポリ乳酸系延伸フィルムとする方法である。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法は、前記ポリ乳酸系組成物からなるシート又はフィルムを、通常50〜110℃、好ましくは60〜90℃の温度で一方向に2倍以上、好ましくは3〜12倍に延伸して得られるポリ乳酸系延伸フィルムを通常140〜220℃、好ましくは150〜200℃で、1秒以上、好ましくは3秒〜60秒、より好ましくは3〜20秒熱処理してポリ乳酸系延伸フィルムとする方法である。
延伸倍率が2倍未満では、耐熱性に優れたポリ乳酸系延伸フィルムが得られないおそれがあり、一方、延伸倍率の上限は特に限定はされないが、12倍を超えると安定して延伸できないおそれがある。延伸温度が50℃未満では、安定して延伸できないおそれがあり、また、得られるポリ乳酸系延伸フィルムの透明性、平滑性が劣るおそれがある。
一方、110℃を超えるとフィルムが加熱ロールに付着し、フィルム表面が汚れ、また安定して延伸ができないおそれがあり、得られるポリ乳酸系延伸フィルムの靭性が劣るおそれがある。熱処理時間が1秒未満ではポリ乳酸系延伸フィルムに熱が伝わらず、熱処理の効果が発現されないおそれがある。また、予熱時間は長くても問題はないが、工程上60秒以下が好ましい。本発明のポリ乳酸系延伸フィルム製造方法の他の態様は、前記ポリ乳酸系組成物からなるシートを、通常50〜110℃、好ましくは60〜90℃の温度で、好ましくは縦方向に2倍以上及び横方向に2倍以上、より好ましくは縦方向に2〜7倍及び横方向に2〜7倍、更に好ましくは縦方向に2.5〜5倍及び横方向に2.5〜5倍延伸して得られるポリ乳酸系延伸フィルムを、通常130〜160℃、好ましくは140〜155℃で、1秒以上、好ましくは3秒〜60秒、より好ましくは3〜20秒熱処理してポリ乳酸系延伸フィルムとする方法である。熱処理時間が1秒未満ではポリ乳酸系延伸フィルムに熱が伝わらず、熱処理の効果が発現されないおそれがある。また、予熱時間は長くても問題はないが、工程上60秒以下が好ましい。
本発明のポリD乳酸の単体からなるフィルムは、広角X線回折による回折ピークが検出されない原料シート或いはフィルムを用いることが好ましい。広角X線回折による回折ピーク(2θ)が検出されるシート、すなわち結晶が形成されたシートを用いた場合は、その形成量にもよるが、得られるポリ乳酸系延伸フィルムの透明性が劣り、又、靭性にも劣るおそれがある。ポリ乳酸系組成物からなるシートあるいはフィルムを広角X線回折による回折ピーク(2θ)が検出されない状態にする方法としては、例えば、前記のポリD乳酸をアルファ晶の融点である180℃以上、好ましくは200〜230℃の範囲で溶融した後、5〜30℃で急冷してシートあるいはフィルムとする方法を採ることにより、アルファ晶の形成を抑えることができる。
本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法としては、重量平均分子量が150,000〜300,000のポリD乳酸を洗浄処理により触媒を失活させた上で、上記の所定の押出温度で一軸押出機、又は二軸押出機でTダイより押出し、0〜30℃のチルロールで急冷することによりシートを成形し、次いで、延伸温度50〜80℃で少なくとも2倍以上に延伸することが望ましい。また、さらに、本発明のポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法としては、重量平均分子量が150,000〜300,000のポリD乳酸に、触媒失活剤を添加してから押出し、200〜230℃の範囲で溶融した後、5〜30℃で急冷してシートあるいはフィルムとする方法を採ることにより、一軸又は二軸押出機の先端のギヤポンプを経て/若しくは経ずにTダイより押出し、0〜30℃のチルロールで急冷することによりシートを成形し、次いで、50〜80℃の条件で2倍以上に一軸又は二軸方向に延伸し、120〜180℃で熱処理して得られるポリ乳酸系延伸フィルムの製造方法である。この方法の場合には触媒失活剤を均一に分散する必要がある観点から、押出機としては均一混練の観点からニーディング部分を有する二軸押出機を用いることが好ましい。
またさらに、触媒失活剤は押出前に添加してあるのがよい。触媒失活剤の均一分散の観点から、予め、ポリD乳酸、及び触媒失活剤を混合しておくことが好ましい。また、押出成形をする際に用いる押出機は一軸押出機であっても二軸押出機であってもよいが、均一混練の観点から二軸押出機を用いることが好ましい。押出機での混練温度は180〜230℃が好ましく、160℃未満である場合には、ポリD乳酸のα晶が融解しないため、フィルムに不良を起こす可能性がある。230℃を超える場合にはポリD乳酸が熱分解する場合がある。押出機で混練後、ギヤポンプを経ずにTダイより押し出してもよいが、フィルムに厳密な厚み精度が求められる場合には厚み制御等の観点からギヤポンプを経させることが好ましい。混練後押し出されるシートは0〜30℃で急冷することによりシート中に結晶が出来ないため延伸が良好に行われるので好ましい。また急冷手段としては、均一、かつ、確実に冷却する観点からチルロールを用いる。さらに、50〜80℃の条件で一軸延伸又は二軸延伸する。二軸延伸する場合、二軸方向に延伸する方法としては、逐次二軸延伸法、及び同時二軸延伸法を適用することができる。延伸条件については、延伸温度が50℃未満であるとシートの切断や十分に延伸できない可能性があり、80℃を超えると配向が不十分で均一な厚薄や透明性等が十分に得られないことがある。また、120〜180℃で熱処理することがフィルムの寸法安定性の観点から好ましい。熱処理温度が120℃未満であると加温時の収縮抑制な場合があり、180℃を超えるとフィルムが緩和してしまうおそれがある。
このようにポリD乳酸を押出成形する際に、残存する該残触媒が少なくとも押出成形後に失活状態となるように触媒失活処理が行われるようにすることで、ポリD乳酸単体でも十分な強度のフィルムとなる。さらに、基材層として中間層をポリL乳酸/ポリD乳酸=45/55〜55/45からなるステレオコンプレックス晶を含むポリ乳酸フィルム層、被覆層をポリD乳酸としたヒートシール性と雑菌繁殖抑制効果を有するポリD乳酸からなるポリ乳酸系延伸フィルム層としたポリ乳酸延伸複合フィルムとした場合にも被覆層が十分なヒートシール強度をもたせることが出来る。その際は中間層であるポリL乳酸/ポリD乳酸=45/55〜55/45からなるステレオコンプレックス晶を含むポリ乳酸フィルム層に延伸条件を合わせるが、先述の条件と大きくは変わらない。混練後押し出されるシートは0〜30℃で急冷することが好ましい。また急冷手段としてはチルロールを用いる。さらに、50〜80℃の条件で一軸延伸又は二軸延伸する。二軸延伸する場合、二軸方向に延伸する方法としては、逐次二軸延伸法、及び同時二軸延伸法を適用することができる。延伸条件については、延伸温度が50℃未満であるとシートの切断や十分に延伸できない可能性があり、80℃を超えると配向が不十分で均一な厚薄や透明性等が十分に得られないことがある。また、180〜220℃で熱処理することがフィルムの寸法安定性の観点から好ましい。熱処理温度が180℃未満であると基材層のアルファ結晶からステレオコンプレックス結晶への転換が不十分であり、220℃を超えるとフィルムが緩和してしまうおそれがある。また熱処理温度180℃では被覆層は融解し配向は緩和するが、テンターを出た後に急冷されて非結晶となるため透明性は保たれ、また基材層としての中間層であるステレオコンプレックス晶を含むポリ乳酸フィルム層は緩和しないので十分な強度を有するフィルムとなる。
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を超えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。実施例及び比較例で使用したポリ乳酸、触媒失活剤は次のとおりである。
(イ)ポリL乳酸(PLLA−1):
触媒としてSnを、原料にLラクチドを用いたカップリング重合体。
D体量:1.9質量% Mw:225,000 Mn:129,000(g/モル)、
Tm:164℃
残触媒量 Sn:25ppm
(イ)ポリL乳酸(PLLA−1):
触媒としてSnを、原料にLラクチドを用いたカップリング重合体。
D体量:1.9質量% Mw:225,000 Mn:129,000(g/モル)、
Tm:164℃
残触媒量 Sn:25ppm
(ロ)ポリD乳酸(PDLA−1):
触媒としてSnを、原料にDラクチドを用いたカップリング重合体
D体量:100.0質量% Mw:152000 Mn:65000、Tm:175℃
残触媒量 Sn:30ppm
触媒失活剤量(ホスホノ酢酸トリエチル) 0質量%
触媒としてSnを、原料にDラクチドを用いたカップリング重合体
D体量:100.0質量% Mw:152000 Mn:65000、Tm:175℃
残触媒量 Sn:30ppm
触媒失活剤量(ホスホノ酢酸トリエチル) 0質量%
(ハ)触媒失活剤
ホスホノ酢酸トリエチル(城北化学製)
ホスホノ酢酸トリエチル(城北化学製)
(1)重量平均分子量(Mw)
試料20mgに、GPC溶離液10mLを加え、一晩静置後、手で緩やかに攪拌した。この溶液を、両親媒性0.45μm―PTFEフィルター(ADVANTEC DISMIC―25HP045AN)でろ過し、GPC試料溶液とした。
測定装置 Shodex GPC SYSTEM−21
解析装置 データ解析プログラム:SIC480データステーションII
検出器 示差屈折検出器(RI)
カラム Shodex GPC K−G + K−806L + K−806L
カラム温度 40℃
溶離液 クロロホルム
流速 1.0mL/分
注入量 200μL
分子量校正 単分散ポリスチレン
試料20mgに、GPC溶離液10mLを加え、一晩静置後、手で緩やかに攪拌した。この溶液を、両親媒性0.45μm―PTFEフィルター(ADVANTEC DISMIC―25HP045AN)でろ過し、GPC試料溶液とした。
測定装置 Shodex GPC SYSTEM−21
解析装置 データ解析プログラム:SIC480データステーションII
検出器 示差屈折検出器(RI)
カラム Shodex GPC K−G + K−806L + K−806L
カラム温度 40℃
溶離液 クロロホルム
流速 1.0mL/分
注入量 200μL
分子量校正 単分散ポリスチレン
(2)DSC測定
示差走査熱量計(DSC)としてティー・エイ・インスツルメント社製 Q 100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121に準拠し、窒素ガス流入量:50mL/分の条件下で、0℃から加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して試料を一旦融解させた後(第1回昇温過程(1st heating))、250℃に10分間維持し、冷却速度:10℃/分で0℃まで降温して結晶化させた後(冷却過程(Cooling))、再度、加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して(第2回昇温過程(2nd heating))、各々の昇温及び冷却過程から熱融解曲線を得た。得られた熱融解曲線から、第1回昇温過程(1st heating)及び第2回昇温過程(2nd heating)での試料の融点(Tm)(℃)、融解熱量(J/g)、冷却過程(Cooling)での結晶化温度(Tc)(℃)、結晶化熱量(Hc)(J/g)を求めた。
示差走査熱量計(DSC)としてティー・エイ・インスツルメント社製 Q 100を用い、試料約5mgを精秤し、JIS K 7121に準拠し、窒素ガス流入量:50mL/分の条件下で、0℃から加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して試料を一旦融解させた後(第1回昇温過程(1st heating))、250℃に10分間維持し、冷却速度:10℃/分で0℃まで降温して結晶化させた後(冷却過程(Cooling))、再度、加熱速度:10℃/分で250℃まで昇温して(第2回昇温過程(2nd heating))、各々の昇温及び冷却過程から熱融解曲線を得た。得られた熱融解曲線から、第1回昇温過程(1st heating)及び第2回昇温過程(2nd heating)での試料の融点(Tm)(℃)、融解熱量(J/g)、冷却過程(Cooling)での結晶化温度(Tc)(℃)、結晶化熱量(Hc)(J/g)を求めた。
(3)触媒量
ガラス製三角フラスコに試料0.2gを精秤した後、濃硫酸(98質量%)3mlを添加し、ホットプレート上で加温した。徐々にホットプレートを加温しながら最終的に350℃まで加温し、過酸化水素水(30質量%)を適量添加して試料の完全分解を行った。次いで室温まで冷却した後、塩酸(6M)10mlを加え、さらに、超純水を加えて20mlにメスアップし、測定用の試料溶液とした。今回用いた測定法による検出下限濃度は、10mg/kgである。上記方法により調製した溶液中のSn濃度をICP発光測定法により求め、触媒量とした。なお本特許においては金属換算の重量分率で示した。
装置:SPECTRO社製 CIROS−120
測定波長:189.991nm
ガラス製三角フラスコに試料0.2gを精秤した後、濃硫酸(98質量%)3mlを添加し、ホットプレート上で加温した。徐々にホットプレートを加温しながら最終的に350℃まで加温し、過酸化水素水(30質量%)を適量添加して試料の完全分解を行った。次いで室温まで冷却した後、塩酸(6M)10mlを加え、さらに、超純水を加えて20mlにメスアップし、測定用の試料溶液とした。今回用いた測定法による検出下限濃度は、10mg/kgである。上記方法により調製した溶液中のSn濃度をICP発光測定法により求め、触媒量とした。なお本特許においては金属換算の重量分率で示した。
装置:SPECTRO社製 CIROS−120
測定波長:189.991nm
試験方法
(1)透明性
日本電色工業社製 ヘイズメーター300Aを用いてフィルムのヘーズ(HZ)及び平行光光線透過率(PT)を測定した。
(2)引張り試験
ポリ乳酸からなるフィルム(表1に掲載)または三層フィルム(表2に掲載)から、夫々短冊状の試験片(長さ:150mm、幅:15mm)を採取して、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を使用し、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分で測定)で、引張り試験を行い、引張強さ(MPa)、伸び(%)及びヤング率(MPa)を求めた。尚、実施例3,6についてはフィルムの4倍に延伸した方向で引っ張り試験を行った。
(3)ヒートシール強度
ポリ乳酸からなる三層フィルムの被覆層面同士を重ね合わせ、テスター産業株式会社製TP−701−B HEATSEALTESTERを用いて、所定の温度で、シール面圧:1kg/cm2の時間1.0秒条件下でヒートシール(熱融着)した。尚、加熱は上側のみとした。次いで、ヒートシールしたポリ乳酸系からなる三層フィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度でMD方向と平行にT型剥離を行い、その最大強度を熱融着強度とした。
(1)透明性
日本電色工業社製 ヘイズメーター300Aを用いてフィルムのヘーズ(HZ)及び平行光光線透過率(PT)を測定した。
(2)引張り試験
ポリ乳酸からなるフィルム(表1に掲載)または三層フィルム(表2に掲載)から、夫々短冊状の試験片(長さ:150mm、幅:15mm)を採取して、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を使用し、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分で測定)で、引張り試験を行い、引張強さ(MPa)、伸び(%)及びヤング率(MPa)を求めた。尚、実施例3,6についてはフィルムの4倍に延伸した方向で引っ張り試験を行った。
(3)ヒートシール強度
ポリ乳酸からなる三層フィルムの被覆層面同士を重ね合わせ、テスター産業株式会社製TP−701−B HEATSEALTESTERを用いて、所定の温度で、シール面圧:1kg/cm2の時間1.0秒条件下でヒートシール(熱融着)した。尚、加熱は上側のみとした。次いで、ヒートシールしたポリ乳酸系からなる三層フィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度でMD方向と平行にT型剥離を行い、その最大強度を熱融着強度とした。
実施例1〜3
PDLA−1をあらかじめ3質量%触媒失活剤を含んだアセトン(特級)に1時間浸した。その後、真空乾燥機で70℃×3時間乾燥し、触媒失活剤を含浸させ、組成物−1を得た。さらに、本組成物−1を、厚さ:50μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名:ユーピレックスー50S)で挟んだ後、厚さ:0.3mm及び270mm×270mmのステンレス製矩形の金枠に入れ、プレス温度:200℃、初圧:3分(圧力0)、ガス抜き:5回、プレス時間:4分(圧力100kgf)、冷却:5分(圧力10kgf)の条件でプレス成形し、プレスシート(プレスシート−1)を得た。プレスシート−1を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(ブルックナー社製 KARO―IV)を用いて70℃ホットエアーで60秒予熱した後、2.1m/分の速度で、縦方向×横方向として、3×3(実施例1)、4×4(実施例2)、1×4(実施例3)に延伸(同時二軸延伸)し、150℃×60秒の条件でヒートセット(熱処理)した後、扇風機で十分冷やしてポリ乳酸系延伸フィルムを得た。得られたポリ乳酸系延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
PDLA−1をあらかじめ3質量%触媒失活剤を含んだアセトン(特級)に1時間浸した。その後、真空乾燥機で70℃×3時間乾燥し、触媒失活剤を含浸させ、組成物−1を得た。さらに、本組成物−1を、厚さ:50μmのポリイミドフィルム(宇部興産製 商品名:ユーピレックスー50S)で挟んだ後、厚さ:0.3mm及び270mm×270mmのステンレス製矩形の金枠に入れ、プレス温度:200℃、初圧:3分(圧力0)、ガス抜き:5回、プレス時間:4分(圧力100kgf)、冷却:5分(圧力10kgf)の条件でプレス成形し、プレスシート(プレスシート−1)を得た。プレスシート−1を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(ブルックナー社製 KARO―IV)を用いて70℃ホットエアーで60秒予熱した後、2.1m/分の速度で、縦方向×横方向として、3×3(実施例1)、4×4(実施例2)、1×4(実施例3)に延伸(同時二軸延伸)し、150℃×60秒の条件でヒートセット(熱処理)した後、扇風機で十分冷やしてポリ乳酸系延伸フィルムを得た。得られたポリ乳酸系延伸フィルムを前記記載の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
実施例4〜6
PDLA−1を80g秤量し、失活剤を600ppm相当、東洋精機製ラボプラストミルCモデル(2軸混練機)を用いて200℃、60rpmの条件下で3分間溶融混練し、ポリ乳酸系組成物(組成物−2)を得た。本組成物−2を実施例1〜3と同様に、プレス成形し、その後、延伸成形した。延伸倍率を、縦方向×横方向として、3×3(実施例4)、4×4(実施例5)、1×4(実施例6)とした。
PDLA−1を80g秤量し、失活剤を600ppm相当、東洋精機製ラボプラストミルCモデル(2軸混練機)を用いて200℃、60rpmの条件下で3分間溶融混練し、ポリ乳酸系組成物(組成物−2)を得た。本組成物−2を実施例1〜3と同様に、プレス成形し、その後、延伸成形した。延伸倍率を、縦方向×横方向として、3×3(実施例4)、4×4(実施例5)、1×4(実施例6)とした。
比較例1
PDLAに触媒失活剤を添加しない以外は実施例1〜6と同様に行った。しかし、実際には同条件でプレスしたがシートは非常にもろく延伸成形まで出来なかった。
PDLAに触媒失活剤を添加しない以外は実施例1〜6と同様に行った。しかし、実際には同条件でプレスしたがシートは非常にもろく延伸成形まで出来なかった。
以上のことから、重合時に触媒失活剤を添加していないPDLA−1を成形するには成形前に触媒失活剤を溶剤浸漬又は溶融添加で含浸させなくてはいけないことは明らかである。
実施例7
<ポリ乳酸系組成物及びポリ乳酸系延伸フィルムの作製>
PLLA−1:PDLA−1:触媒失活質剤−1を50:50:0.03質量%の比で計量し、フィード速度330g/分で、東芝機械株式会社製 同方向回転二軸混練押出機(TEM−37BS スクリュ径:37mm、スクリュ条数:2、スクリュ長(L/D):42からなるスクリュパターンを用いてC1=200℃、C2〜C12:245℃、430rpmの条件下で混練押出し、ストランドを水中でカットしペレットとしさらに、100℃×8時間の乾燥を兼ねた熱処理を行った。触媒失活剤を含浸したステレオコンプレックス構造ポリ乳酸からなる本ペレットをペレット−1とした。さらに、PDLA−1:触媒失活剤を100:0.06質量%の比で計量し、フィード速度330g/分で、東芝機械株式会社製 同方向回転二軸混練押出機(TEM−37BS スクリュ径:37mm、スクリュ条数:2、スクリュ長(L/D):42からなるスクリュパターンを用いてC1=180℃、C2〜C12:200℃、130rpmの条件下で混練押出し、ストランドを水中でカットしペレットとしさらに、100℃×8時間の乾燥を兼ねた熱処理を行った。触媒失活剤を含浸したPDLAからなる本ペレットをペレット−2とした。ペレット−2/ペレット−1/ペレット−2を押出機3本に接続した3種3層ダイスでシリンダー温度、ペレット−2をホッパー下至近のC1を160℃としC2以降は全て200℃として、ペレット−1はホッパー下至近のC1を160℃としC2以降は全て235℃として成形した。ここでペレット−1について160→235℃に急激に温度を上げている理由は180−220℃の温度粋はアルファ晶が融解した後にステレコンプレックス晶になるため、出来るだけその温度のゾーンが出来ないようにしたためである。さらに、上記キャストシートを層厚み1/8/1になるように押出機回転数で調整し、設定温度20℃のチルロールで急冷することで300μm厚みのシート−3を得た。プレスシート−3を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(ブルックナー社製 KARO―IV)を用いて70℃ホットエアーで60秒予熱した後、2.1m/分の速度で、縦方向(MD方向)×横方向(TD方向)として、4×4に延伸(同時二軸延伸)し、200℃×60秒の条件でヒートセット(熱処理)した後、扇風機で十分冷やしてポリ乳酸系延伸フィルムを得た。その結果を表2に示す。
<ポリ乳酸系組成物及びポリ乳酸系延伸フィルムの作製>
PLLA−1:PDLA−1:触媒失活質剤−1を50:50:0.03質量%の比で計量し、フィード速度330g/分で、東芝機械株式会社製 同方向回転二軸混練押出機(TEM−37BS スクリュ径:37mm、スクリュ条数:2、スクリュ長(L/D):42からなるスクリュパターンを用いてC1=200℃、C2〜C12:245℃、430rpmの条件下で混練押出し、ストランドを水中でカットしペレットとしさらに、100℃×8時間の乾燥を兼ねた熱処理を行った。触媒失活剤を含浸したステレオコンプレックス構造ポリ乳酸からなる本ペレットをペレット−1とした。さらに、PDLA−1:触媒失活剤を100:0.06質量%の比で計量し、フィード速度330g/分で、東芝機械株式会社製 同方向回転二軸混練押出機(TEM−37BS スクリュ径:37mm、スクリュ条数:2、スクリュ長(L/D):42からなるスクリュパターンを用いてC1=180℃、C2〜C12:200℃、130rpmの条件下で混練押出し、ストランドを水中でカットしペレットとしさらに、100℃×8時間の乾燥を兼ねた熱処理を行った。触媒失活剤を含浸したPDLAからなる本ペレットをペレット−2とした。ペレット−2/ペレット−1/ペレット−2を押出機3本に接続した3種3層ダイスでシリンダー温度、ペレット−2をホッパー下至近のC1を160℃としC2以降は全て200℃として、ペレット−1はホッパー下至近のC1を160℃としC2以降は全て235℃として成形した。ここでペレット−1について160→235℃に急激に温度を上げている理由は180−220℃の温度粋はアルファ晶が融解した後にステレコンプレックス晶になるため、出来るだけその温度のゾーンが出来ないようにしたためである。さらに、上記キャストシートを層厚み1/8/1になるように押出機回転数で調整し、設定温度20℃のチルロールで急冷することで300μm厚みのシート−3を得た。プレスシート−3を、パンタグラフ式バッチ二軸延伸装置(ブルックナー社製 KARO―IV)を用いて70℃ホットエアーで60秒予熱した後、2.1m/分の速度で、縦方向(MD方向)×横方向(TD方向)として、4×4に延伸(同時二軸延伸)し、200℃×60秒の条件でヒートセット(熱処理)した後、扇風機で十分冷やしてポリ乳酸系延伸フィルムを得た。その結果を表2に示す。
比較例2
あらかじめ、ホスホノ酢酸トリエチルを配合したペレット−2を使う代わりにPDLA−1を用いた以外は実施例7と同様に行った。その結果を表2に示す。
あらかじめ、ホスホノ酢酸トリエチルを配合したペレット−2を使う代わりにPDLA−1を用いた以外は実施例7と同様に行った。その結果を表2に示す。
表2から明らかなように、熱融着層であるPDLA−1に触媒失活剤を添加していない比較例2はオーバーラップフィルムとしてのシール強度が得られていない。このことは先述の比較例−1と同様に同組成の熱融着層がもろくなっているためと考えられる。
Claims (6)
- ポリD乳酸に残存する残触媒が少なくとも溶融混練後に失活状態となるように触媒失活処理が行われることを特徴とする、ポリ乳酸系延伸フィルム。
- 前記触媒失活処理が、触媒失活剤による添加処理又は溶剤洗浄処理であることを特徴とする、請求項1に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
- 前記触媒失活剤がメタリン酸、メタスルホン酸、ホスホノ酸エステル及びポリリン酸の群から選択される少なくとも1種であり、かつ、前記触媒失活剤がポリD乳酸の質量に対して0.1〜1.5質量%で添加されることを特徴とする、請求項2に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
- 前記ポリD乳酸の残存する前記残触媒の金属含有量が、20〜60ppmの範囲であり、かつ、前記触媒失活剤の添加量が前記ポリD乳酸の質量に対して、0.01質量%〜0.15質量%であることを特徴とする、請求項2又は3に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
- 一方向に2倍以上延伸されてなることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のポリ乳酸系延伸フィルム。
- 請求項1から5のいずれか1項に記載のポリ乳酸系延伸フィルムである被覆層と、ステレオコンプレックス晶のポリ乳酸を含む基材層とを含む、ポリ乳酸延伸複合フィルム。
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