JP2013121887A - 金属窒化物の製造方法及びそれを用いた窒化物蛍光体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、金属窒化物を早く、大量、安価、かつ純度良く製造する方法を提供することであり、また、この金属窒化物を用いた高輝度の蛍光体を提供することである。
【解決手段】ランタン、セリウム、カルシウム、及びストロンチウムからなる群より選ばれた少なくとも1つの粒子状金属を炉中に投入し、少なくとも窒素原子を含む窒化性ガスを炉中に充填し、該金属の窒化反応開始温度以上、該金属の融点より20℃以上低い温度で、炉中の粒子状金属に運動を与えながら金属を窒化させることを特徴とする金属窒化物の製造方法により課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属窒化物の製造方法に関し、より詳しくは、蛍光体原料として使用できる、酸素含有率の少ない金属窒化物を、短時間で大量に生産する方法に関する。また、該金属窒化物を用いた窒化物蛍光体の製造方法に関する。
近年、窒化物蛍光体が多く開発され、生産量が増加していることから、その原料として窒化物蛍光体の構成元素を含む金属窒化物をなるべく早く、大量、安価、かつ純度良く製造することが望まれている。特に希土類金属元素やアルカリ土類金属元素を含む、金属窒化物のような窒化物原料の需要は高い。
このような窒化物原料の製造は、直接その金属を窒素中で加熱して窒化物を作る方法のほか、窒素のかわりにアンモニアを使用して直接金属を窒化させる方法、液化アンモニア中に所望の金属を溶解させ、アンモニアを蒸発させて得られたイミド化合物を焼成する方法、などが行われている。
一方、合金の窒化方法として、特許文献1には、SmFe系合金の粉末を雰囲気ガスで窒化させて行なうに当り、均一な窒化を実現することにより、各組成の磁石合金において到達できる最高度の磁気特性を有する粉末磁石材料を得る方法として、キルン内部に軸方向に走る複数のフィンを設けたロータリーキルン内にSmFe系合金の粉末を入れ、窒化ガスとしてアンモニア−水素混合ガスをキルン内部に供給しつつ、ロータリーキルンを回転させて、フィンで粉末を掻き上げては落とす操作を繰り返すことにより、粉末とガスとを均一に接触させつつ窒化を行なうことを開示している。
また、非特許文献1には、窒化物の製造方法として、窒素−水素(圧力比1:3)の雰囲気中、500℃にて石英皿の上に静置されたランタンを窒化させる方法が記載されている。
特開2003−173907号公報
Technology Reports of The Osaka University.,46(1996)297項
しかしながら、前述の方法には一長一短があり、より純度が高く、特に酸化物含有量が少ない金属窒化物を、安価かつ短時間で大量に作ることができる方法が望まれている。
具体的には、液化アンモニアを使用する方法は、溶解させる設備と焼成する設備が必要で、かつ工程が2段階に分かれおり、かつバッチでの製造になってしまい連続的に金属窒化物を得ることが難しくなるため、製造コストが高くなってしまう。また、中間生成物であるイミド化合物等が残留する恐れがあり、製造した金属窒化物の純度が低下する可能性がある。
金属をアンモニアや窒素などの窒化性ガス中で加熱する方法については、非特許文献1
に記載されているように金属を静置して窒化する手法では、短時間で大量に窒化処理を行なうことが難しい。また、窒化性ガスによって金属を窒化する場合、窒化されるべき金属が一定の大きさを持っている場合が多く、その表面から中心まで十分に反応が進行しないと金属の残留物が生じてしまう。
通常であれば、反応を十分に進めるため、反応させる温度を上げたり、特許文献1のように反応させる金属の粒子をより細かくしたりするところであるが、金属の窒化反応の場合にはこのような通常の技術が適用できなかった。
なぜならば、金属の窒化反応速度は反応温度に比例し、温度が高ければ反応が速く進む。その一方窒化反応は発熱反応であるため、反応させるための雰囲気温度を高くしておくと、反応が速く進み発熱量が増える。そのため温度が高くなり、さらに反応が速くなってますます温度が上がるという熱暴走を起こして制御が困難になり、溶融した金属が加熱している炉に付着したり、炉自体にダメージを与えたりするなどの課題があるためである。また、熱暴走により、必要以上に温度が上昇すると、ガス中に微量に混入している酸素等と反応し窒化物の純度が低下する恐れもある。原料金属の時間当たりの反応量を増やすと同様の熱暴走を起こし易い。例えば粒子の大きさを小さくしたり、原料の投入量を増やしたりしても同様の問題を生じる。
金属を直接窒化させる方法は、大量生産しようとして反応速度をあげる手段をとると、熱暴走反応を生じる。一方、熱暴走反応が起こらないように工夫すると、今度は反応に時間がかかり、未反応部分が生じるという、二律背反の状態になるため、新たな工夫が望まれていた。
すなわち、本発明の目的は、金属窒化物を早く、大量、安価、かつ純度良く製造する方法を提供することであり、また本発明のほかの目的は、この金属窒化物を用いた高輝度の蛍光体を提供することである。
そこで本発明者らは、反応が最も速く進むのは原料金属表面であることから、未反応の金属表面量をうまく制御し、かつ窒化反応により生じる反応熱を効率的に除去する方法を検討した。その結果、金属原料として粒子状金属を用い、該粒子状金属に運動を与えながら金属を窒化させることで課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
本発明の原理は、金属が窒化されると、硬度が上がると同時にもろくなることを利用し、窒化反応中の炉内において、金属原料に運動を与え、物理的衝撃を与えることにより、既に反応して表面に生成した金属窒化物と、内部の未反応金属原料とを分離させ、次々と新たなる未反応面を金属原料表面に露出させることにより、金属原料の内部まで効率的に窒化すると同時に、一度に大量の窒化反応が生じることを避けることができるというものである。また、金属原料に与える運動量を調整し、物理的衝撃の強度をかえることにより、未反応面の露出量が制御可能であり、反応促進のために過度に温度を上げる必要がなく、かつ衝撃を与える際に原料と反応により生じた窒化物が移動することにより、放熱効率が向上するため、熱暴走反応を生じにくく、温度、反応量等の制約を小さくできるというものである。本発明におけるこれらの効果により、より速く大量の金属窒化物を安全に純度良く製造することができる。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)ランタン、セリウム、カルシウム、及びストロンチウムからなる群より選ばれた少なくとも1つの粒子状金属を炉中に投入し、少なくとも窒素原子を含む窒化性ガスを炉中に充填し、該金属の窒化反応開始温度以上、該金属の融点より20℃以上低い温度で、炉中の粒子状金属に運動を与えながら金属を窒化させることを特徴とする金属窒化物の製造方法。
(2)前記窒化性ガスは、元素としての水素を500wtppm以上含む、(1)に記載の金属窒化物の製造方法。
(3)前記窒化性ガスは、元素としての水素と元素としての窒素の存在比が0.05:99.95〜90:10の範囲である、(1)または(2)に記載の金属窒化物の製造方法。
(4)前記炉中に窒化性ガスを流通させながら金属を窒化させることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の金属窒化物の製造方法。
(5)前記炉中に、窒化性ガスに加え不活性ガスを流通させる(4)に記載の金属窒化物の製造方法。
(6)前記炉が回転炉であり、その回転速度が1rpm以上である(1)乃至(5)のいずれかに記載の金属窒化物の製造方法。
(7)前記炉中の温度が、900℃以下である(1)乃至(6)のいずれかに記載の金属窒化物の製造方法。
(8)(1)乃至(7)のいずれかに記載の方法で製造された金属窒化物と、少なくともケイ素を含む化合物またはケイ素単体と、賦活剤となる元素を含む化合物又は賦活剤となる元素単体とを混合し、窒素を含む雰囲気下で焼成する窒化物蛍光体の製造方法。
(9)該窒化物蛍光体が下記一般式(I)で表される(8)記載の窒化物蛍光体の製造方法。
LnaSibc:Zd …(I)
式中、a+d=3、5.4≦b≦6.6、10≦c≦12を満たし、LnはLaを必須として含む、希土類金属又はアルカリ土類金属からなる群より選ばれる元素であり、Zは賦活剤として使用される元素である。
本発明により、金属窒化物を早く、大量、安価、かつ純度良く製造する方法を提供することができ、また本発明の金属窒化物を原料として用いることにより、早く、大量、安価、かつ純度良い窒化物蛍光体を量産することができる。
図1は、本発明に係わる回転炉(ロータリーキルン)の構成の一例を示す模式図である。 図2は、H2/N2混合ガスの濃度を変えた場合の窒化反応の様子を示す熱重量測定装置(TG)の測定結果を示す図である。 図3は、本発明の窒化反応時の水素濃度と反応完了時間のTG測定結果より推定される水素拡散係数を元に得られたシミュレーション結果と運動を与えながら窒化した場合の実測値の比較により、運動を与えながら窒化する本発明の優位性を説明するための図である。
本発明の金属窒化物の製造方法は、前述の原理に基づくものであり、炉中の粒子状金属に運動を与えながら金属を窒化させることを特徴とするものである。換言すれば、(1)ランタン、セリウム、カルシウム、及びストロンチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つの粒子状金属を準備する工程、(2)該粒子状金属を炉内に載置する工程、(3)窒化性ガスの存在下、該粒子状金属に運動を与えながら金属を窒化し、窒化した表面を運動による衝撃で剥離させる工程、を含む金属窒化物の製造方法である。その具体的な手法については以下に記載の通りである。
(金属原料について)
本発明は、金属ランタン、金属セリウム、金属カルシウム、及び金属ストロンチウムから選ばれる少なくとも一つの金属を窒化する原料として用いる。このうち特に好ましくは
金属ランタン、金属セリウムからなる群より選ばれる少なくとも一つの金属であり、このうち特に好ましくは、窒化前後での硬度の変化の激しい金属ランタンを含むことであり、最も好ましくは金属ランタンである。
もちろんこれらの中から2種以上の金属を含んでいてもよく、また合金であっても良い。
また、本発明の効果を阻害するようなものでなければ、これらの金属以外を含んでいてもよいが、金属ランタン、金属セリウム、金属カルシウム、及び金属ストロンチウムの合計量が、重量割合で、投入される金属原料総量の半分以上であることが好ましい。
これらの金属以外に投入してもよい原料としては、例えば蛍光体の場合であれば、賦活剤として用いられる元素を含む蛍光体原料を混ぜてもよい。通常蛍光体原料として使われる賦活剤量は、モル比で蛍光体に対し3%以下であるため、窒化には大きな影響を与えないと考えられるからである。
一方、蛍光体の原料としては、所望の組成に使用されない元素、すなわち不純物は少ないほうが好ましく、所望の組成にするために必要な元素以外は500ppm(重量割合:以下特に断りのない場合、固体は重量基準の値、気体は体積基準の値である)以下に抑えることが好ましい。特に鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)等は、非可視光での発光または減衰を生じるため、特に混入には配慮することが必要であり、これらの元素は原料に実質的に含まれないことが好ましい。ここでいう実質的とは、蛍光体とした場合に、非可視光での発光または減衰が生じない程度をいう。
かかる金属原料は粒子状のものを準備し、ついで炉に投入される。炉への投入はバッチで投入してもよいが、より好ましくは、連続して投入することである。なお、金属原料の形状については、後述する。
(炉について)
本発明でいう炉は、炉中に原料の粒子状金属を投入した状態で、粒子状金属に運動を与えながら、金属原料を窒化できるものであれば特段限定されない。このような炉としては、回転炉(ロータリーキルン)、揺動炉等を例示することができる。一方、炉自体が動かない静置タイプのものであっても、撹拌手段等を備えており、炉内部に投入された金属原料に運動を与えることが出来るものであれば使用可能である。このような炉の典型的な例として、ロータリーキルンの模式図を図1に示す。
ロータリーキルン100は、回転可能に造られた炉心管103の周囲にヒーター102を含む電気炉101が設置されている。炉心管103の材質は、1000℃以下の温度で変形を起こさず、水素に対する耐性があり、割れ難いこと、原料等により内壁が削られて不純物の混入を招かぬことを、考慮した上で適宜選択すればよく、好ましくはステンレスであり、より好ましくはステンレスの中でもSUS310Sである。また炉心管の内壁には、金属窒化物への不純物の混入を避けるため、セラミック等の保護材をかぶせてもよい。
前述したように、本発明の骨子は、金属原料に運動を与えながら金属を窒化させることであり、ロータリーキルンの場合には回転させる際の落下あるいは摺動により、窒化した金属原料表面を剥離させることに有るので、炉心管103はある程度以上の内径を有するものが好ましく、具体的には内径が20cm以上、好ましくは30cm以上、より好ましくは50cm以上である。また、確実に衝撃を与えるために、内部に掻上板110を設けることも好ましい。
この炉心管103には、その内部にガスを導入するためのガス導入管113、ガスを排
気するためのガス排気管105、真空引きをするための真空排気管107が設けられており、それぞれにバルブ112、104、106が設けられている。
また、炉心管103の回転、あるいは揺動のために、モーター111が設けられ、炉心管103を動かすことができる。
炉心管103の一端には原料あるいは反応後の窒化物を出し入れするための、フランジ108が設けられている。
本発明の金属窒化物の製造方法は、金属原料を炉に投入した状態において、炉を揺動させたり回転させたりすることで金属原料に運動を与える。この揺動、回転等による金属原料への物理的衝撃で、金属原料表面の窒化した部分が剥離して、原料の未反応面を新たに露出させることになる。炉を揺動させる場合には、炉全体の往復運動することによる加速度を利用して金属原料に運動を与えることになり、エネルギーの使用量が大きくなりやすいため、好ましくは回転運動させることである。
製造方法に用いる炉として、上記説明したような回転炉(ロータリーキルン)を用いる場合には、炉心管の回転速度は1rpm以上が好ましい。一方回転速度の上限は、遠心力でロータリーキルンの炉心管壁面に原料あるいは窒化物が固着しない範囲であれば特に限定されないが、あまり速くてもエネルギーの無駄、あるいは炉心管内面にダメージを与えるので、10rpm以下が通常用いられる。
線速度にすると1cm/sec以上、30cm/sec以下が好ましい。
また窒化した金属原料表面を、より容易に剥離させるため、炉心管中にメディアを入れても良い。
メディアは通常ボールまたはビーズが好ましく、その材質は、炉心管同様、1000℃まで変形を起こさず使用可能で、水素耐性があり、破壊して生成した窒化物に不純物として混入することがないものを選べばよい。好ましい材質としては、ジルコニアや窒化ケイ素である。またステンレスなどを芯とするボールであって、ボールの表面に炉心管内壁と同じ材質でコートされているものも使用できる。
このような炉心管の中に金属原料を投入し、窒化を行う。
このような手法により金属窒化物を製造することで、得られる金属窒化物中の不純物、特に鉄等の遷移金属の量を低減できる。得られる窒化物中の遷移金属量は、500ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは、特にFeの不純物量が100ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。本発明により得られた窒化物は、主に蛍光体原料として使用されるため、このように不純物を低減することが好ましい。
また、本発明の方法を使用すると、このような不純物が発生する可能性を低減することが出来る。従来の粉体での反応は、全体としては窒化反応が熱暴走を起こすことなく順調に進んでいても、局所的な熱暴走反応が発生することがある。そのような場合、その熱暴走反応が生じた部分で温度が急上昇することにより炉心管がダメージを受ける。すると炉心管の材料、例えばステンレスであれば鉄等が、生成物中に不純物として現れることがある。
本発明においては、ある時点での窒化反応できる原料の量をコントロールできる。例えば与える運動の大きさを変える、ロータリーキルンであれば回転数を下げることにより、窒化が終了した部分が剥離して現れる量を減らすことができるために、不純物の発生を抑えることが出来る。
(窒化性ガスについて)
本発明の製造方法では、炉に窒化性ガスを充填し、窒化反応を行う。窒化性ガスは、少なくとも元素としての窒素と水素を含むガスをいう。好ましくは元素としての水素を50
0(wt)ppm以上含むガスである。本発明においては、アンモニア等の水素と窒素が化合したガスを用いても良いし、水素ガスと窒素ガスの混合ガス、あるいはアンモニアと水素と窒素の混合ガスなども好適に使用できるが、より好ましくは水素ガスと窒素ガスの混合ガスである。水素原子は、いったん金属の水素化物を作り、その後水素化物が窒化され、水素原子が開放されることを繰り返すため、反応の進行に伴って消耗するわけではないが、反応速度に影響するため500ppm以上含むことが好ましい。
窒化性ガスは、通常用いられる元素としての水素と元素としての窒素の存在比としては、水素:窒素=1:99〜90:10の範囲が、好ましく用いられる。尚、水素ガスと窒素ガスと比較して水素が少ないほうが、水素爆発の可能性を減らせるため好ましいが、窒化反応においては、前述の通り中間体として水素化物が生成してから窒化されるほうが効率がよいので、水素と窒素の存在比は、水素原子の下限値側は1:99となる。より好ましくは、水素の下限として2:98、より好ましくは4:96である。また、水素化物を窒化する反応を効率的に行なうためには、ある程度の窒素が窒化性ガス中に含まれる必要があるので、水素の上限値側は90:10となる。また、安全性等を考えると、元素としての水素のより好ましい上限は10:90である。
また、反応速度を制御するために、反応に寄与しないアルゴンガスのような不活性ガス(イナートガス)を炉中に存在させてもよく、その存在量は90%程度まで増やしてもよいが、通常は50%以下である。
また金属窒化物を製造する際に酸素の存在は酸化物を生じてしまうため好ましくなく、窒化性ガス中に体積換算で0.1%以下であることが好ましい。より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。また酸素の混入を防ぐため、炉内は常圧よりわずかに加圧された状態にすることが好ましい。
また、本発明においては、窒化性ガスを単に炉内に充填するのみならず窒化反応の際に流通させておくことが、原料中から不可避的に発生する吸着酸素等を反応系外に排出できるという観点から好ましく、その流量は1リットル/分以上であることが好ましい。この窒化性ガスは、反応温度に合わせて加熱して流通させてもよいし、逆に常温のまま炉内面に這わせるように流入させて、冷却の一助としてもよい。また、前述の不活性ガスも併せて流通させることが好ましい。
一方、窒化性ガス中の酸素や水の低減が困難である場合には、逆になるべく外からのガス供給を少なくする観点から、最初に窒化に必要な量の窒素と水素を炉内に充填しておく方法、あるいは、窒化に伴い減少する窒素のみを供給する方法などを採用することもできる。
(窒化反応時の温度と時間について)
本発明の金属窒化物の製造方法における炉内の反応温度は、該金属の窒化反応開始温度以上、該金属の融点より20℃以上低い温度とする。金属原料の窒化反応が始まれば、炉内の温度は上昇する傾向にあるが、最初に反応が始まることが必須であるので、炉内の温度を窒化反応開始温度以上とすることが必要となる。この窒化開始温度については別に説明する。より好ましくは200℃以上であり、より好ましくは300℃以上である。特にランタンの場合には、300℃以上であることが好ましい。
一方炉内の反応温度の上限は、該金属の融点より20℃以上低い温度である。複数の金属を原料として用いる場合には、その中で最も融点の低いものを基準に考える。より好ましくは900℃以下、更に好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下である。
本発明で好適に使用される金属の融点は、ランタン(La)が921℃、セリウム(Ce)が799℃、カルシウム(Ca)が839℃、ストロンチウム(Sr)が769℃で
あり、追加されても良い元素(例えば賦活剤元素)では、ユウロピウム(Eu)が822℃になる。その他含まれても良い金属原料の融点としてはマグネシウム(Mg)が649℃、バリウム(Ba)が725℃、イットリウム(Y)が1522℃、ガドリニウム(Gd)が1313℃である。
(金属原料の窒化開始温度の定義)
窒化開始温度とは原料である粒子状金属がある所定の反応速度以上で窒化し始める温度のことを指し、具体的には、TG(熱重量測定)やDTA(示差熱量測定)、DSC(示差走査熱量測定)等の熱分析で観測される重量変化や発熱量変化の時間微分により得られるピークの、ピーク開始温度を窒化開始温度とすることが望ましい。
(金属原料の大きさについて)
本発明の製造方法においては、窒化した金属窒化物が、金属原料表面から剥離していくことを原理としており、このためには金属原料は粒子状、つまりある程度の大きさを有することが必要である。
本発明における粒子状金属原料の定義としては、金属原料のうち、重量にして全体の8割以上、より好ましくは9割以上が、JIS Z−8801−1:2006の付表1に記載された公称目開き1.0(mm)のメッシュを通過しない状態の金属原料を、粒子状金属原料とする。最も好ましくは実質的に金属原料全量が上述のメッシュを通過しない大きさであることである。
大きさの上限は、本発明の原理から考えて、窒化した金属原料表面が剥離していくため、炉に入りさえすれば特に問題は無いが、粒子状金属が大き過ぎると窒化するのに時間がかかる上、炉に対して、金属原料が炉の内壁に衝突する衝撃によりダメージを与える可能性もあるため、1粒子の重量が5kg以下、好ましくは1kg以下である。
(蛍光体の製造方法)
本発明の製造方法にて製造された金属窒化物は、酸素の含有量が少なく、適度に粉砕され、かつ不純物の混入も少ないため、窒化物蛍光体の製造に特に好適に使用される。
本発明の金属窒化物は、窒化物蛍光体の原料としては、公知の種々の蛍光体の原料として使用できるが、特に好ましくは、下記一般式(I)で表される窒化物蛍光体である。
LnaSibc:Zd ・・・(I)
上記式中、a+d=3、5.4≦b≦6.6、10≦c≦12を満たし、LnはLaを必須として含む、希土類金属又はアルカリ土類金属からなる群より選ばれる元素であり、Zは賦活剤として使用される元素である。
Zとしては、好ましくはCe、Eu、Mn、Yb、Pr及びTbからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素であり、特に好ましくはEuとCeである。
また、a+d=3、b=6、c=11が、最も好ましい、この蛍光体の母体の化学量論組成となる。
また一般式(I)の蛍光体は、この一般式以外に、酸素やハロゲン、Li等を、その構造中に構成元素の一部を置換したり、あるいは不純物として含んでいたりしてもよい。
また、上記一般式(I)で表わされる以外の窒化物蛍光体であって、本発明の窒化物が好適に使用される蛍光体としては、CaAlSiN3:Eu、CaAlSiN3:Ce、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu、SrAlSi47:Eu、SrAlSi47:Ce等の基本的に酸素を含まない蛍光体の原料として使用することが好ましい。
本発明の金属窒化物を用いた窒化物蛍光体の製造方法については、公知の窒化物蛍光体を製造する方法を適宜採用することができる。例えば、本発明の製造方法により製造された金属酸化物と、少なくともケイ素を含む化合物またはケイ素単体と、賦活剤となる元素
を含む化合物又は賦活剤となる元素単体とを混合し、窒素を含む雰囲気下で焼成することで、窒化物蛍光体を製造することができる。反応条件についても特段限定されず、適宜設定すればよい。
本発明の製造方法により製造された金属窒化物を使用して窒化物蛍光体を製造する場合、窒化物原料を比較的短時間で量産できるため、そのコストを低減できるのみならず、窒化物原料に含まれる不純物量を低減することができ、結果、窒化物蛍光体の輝度向上とコストダウンに貢献できる。
以下、本発明について実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(ロータリーキルンを用いた金属Laの窒化)
金属Laの窒化については、図1に記載のロータリーキルンを用いて行った。まず、ガス導入管113を通じて炉心管103(SUS310S製:試料充填部:内径400mm、長さ200mm、腕部分:内径105mm、長さ450mm、テーパー部:長さ200mm、試料充填部に掻上板110が1枚設置)内へN2ガス10L/minを流通させた状態でフランジ108を開け、炉心管103内へ1.5〜3cm角の金属La を1409.25g投入しフランジ108を閉じた。この原料は、JIS8801−1:2006に規定する公称目開き1mmのメッシュをほぼ全量通過しないものであった。次に、バルブ104とバルブ112を閉じバルブ106を開けた後、真空排気管107を介して炉心管103内を真空ポンプで−0.1MPa(ゲージ圧:大気圧が0MPaになる、以下同様)まで減圧状態とした。その後、バルブ106を閉じ、ガス導入管113から再度N2ガス10L/minを炉心管103内へ導入し、炉心管103内が+0.01MPa(ゲージ圧)になったところでバルブ104を開け、炉心管103内をN2ガス流通状態とした。炉心管103内の酸素濃度が0.1vol%未満となったところで、導入ガスを30vol%H2/N2混合ガスに切替え、ガス流量を20L/minとして炉心管103内を30分間流通置換した。
ガス置換後、モーター111を用いて炉心管103を2.5rpmの速度で回転させながら、ヒーター102による加熱を開始し、電気炉101を30分で350℃まで昇温した。このとき、昇温中の炉心管103の内温が300℃を超えたところで、金属La 109の窒化反応が開始し、反応に伴う発熱によって炉心管103の内温は最大で520℃まで上昇し、発熱挙動は30分程継続した。しかし、試料量に対して相対的な除熱面積が大きいロータリーキルンを用いたこと、用いた原料の大きさが大きく、未反応面の面積が過大になることが無いことにより、金属Laの融点(918℃)や炉心管103の使用上限温度(約1000℃)まで内温が上昇することはなかった。その後、窒化反応による発熱挙動が見られなくなり炉心管103の内温が350℃で一定になったところで、電気炉101の温度を350℃から500℃まで15分で昇温させ500℃で75分保持したが、さらなる発熱挙動は見られなかった。
500℃での熱保持後、流通ガスを再びN2ガス10L/minに切替え、ヒーター102による加熱を停止し、電気炉101を開放して炉心管103を室温まで冷却した。炉心管冷却後、N2ガスを流通させた状態でフランジ108を開け、炉心管103を傾けて生成物を回収し重量を測定したところ、1533.17gのLaNが回収された(理論重量増加率から算出される回収率は98.8%)。また回収されたLaNは、ロータリーキルンの回転に伴う炉心管壁との衝突や粒子同士の衝突によって、大部分が0.5〜2mm角未満まで粉砕されており、大きいものでも1cm角程度まで粉砕されていた。窒素ボックス内にて1cm角程度のLaNを粉砕したところ、内部に金属Laの残留物は確認されず(目視による判断)、さらに、この粉砕物の窒素量をON分析計(測定装置:LECO社製酸素窒素分析装置TC6000)を用いて測定したところ、N量は8.7wt%(理論量9.1wt%)であり、得られた生成物はその組成から、95%以上がLaNであることが確認された。
(LaNを原料とした窒化物蛍光体の合成)
上述の製法で得られたLaNを原料として以下の手順で蛍光体を合成した。まず、窒素ボックスにて、ロータリーキルンを用いて製造したLaNをアルミナ製乳鉢で粉砕し、目開き100μmのナイロンメッシュを通過させた。その後、得られたLaN粉末4.10gとαSi34(宇部興産社製SN−E10)2.51g、およびCeF3 0.40gを、乳鉢を用いて混合し、これをMo製坩堝(内径:28mm、高さ30mm)に入れた。次に、このMo坩堝をマッフル型電気炉に入れ、4vol%H2/N2混合ガスを流通させながら1525℃まで昇温し、1525℃にて12時間保持した。電気炉を冷却した後、得られた生成物をMo坩堝から取り出し、これを1N塩酸水溶液で洗浄し、不純物を除去後、濾過、乾燥により蛍光体(La,Ce)3Si611を得た。得られた蛍光体は青色の励起光(455nm)の照射によって強い黄色の発光を示し、その相対ピーク強度は145であった。なお、相対ピーク強度は、化成オプトニクス社製YAG蛍光体P46Y3のピーク強度を100としたときのピーク強度であり、発光スペクトルは、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてMCPD7000(大塚電子社製)を用いて測定した。
<参考実験例1>
原料として市販のLaNを2.4g、Si34を1.5g、CeF3を0.23g用い、内径18mm、高さ15mmのMoるつぼを使用した以外は、実施例1と同様にして(La,Ce)3Si611蛍光体を得た。得られた蛍光体は青色の励起光(455nm)の照射により黄色い発光を示し、その相対ピーク強度は141であった。
この実験により、本発明の製造方法により製造されたロータリーキルンを使用して製造したLaNは、窒化物蛍光体原料として使用すると、得られた窒化物蛍光体は市販のLaNを用いた蛍光体に比べ、高い発光ピーク強度を示した。
<実施例2>
原料の金属Laの量を997.97gとし、導入ガスを20vol%H2/N2混合ガスとしたこと、ガス流量を15L/minとしたこと、回転速度を10rpmにしたこと、反応終了後の500℃保持時間を45分にしたこと以外は、実施例1と同様にして、金属Laの窒化を行った。
得られたLaNは1054.78gであり(理論重量増加率から算出される回収率は98.8%)、反応に伴う発熱によって炉心管103の内温は最大で420℃まで上昇した。また発熱挙動は45分間観察された。
得られたLaNを実施例1と同様にLECO社製酸素窒素分析装置TC6000を用いて、N量を求めたところ、9.0wt%であり、98%以上がLaNであることが確認された。
またICPによる微量元素分析を行ったところ、不純物として鉄(Fe)を19ppm(重量:以下同じ)、ニッケル(Ni)が検出限界(1ppm)以下、Mnが2ppm、Crが1ppmであり、蛍光体原料として十分使用できるものであり、かつ局所的な熱暴走反応による炉心管のダメージも無いことがわかった。
<実施例3>
原料の金属Laの量を1007.39gとし、導入ガスを10vol%H2/N2混合ガスとしたこと、ガス流量を15L/minとしたこと、反応終了後の500℃保持時間を
30分にしたこと以外は、実施例1と同様にして、金属Laの窒化を行った。
得られたLaNは、1087.85gであり(理論重量増加率から算出される回収率は98.1%)、反応に伴う発熱によって炉心管103の内温は最大で390℃まで上昇した。また発熱挙動は60分間観察された。
得られたLaNを実施例1と同様にLECO社製酸素窒素分析装置TC6000を用いて、N量を求めたところ、9.2wt%であり、実質100%がLaNであることが確認された。
またICPによる微量元素分析を行ったところ、不純物として鉄(Fe)を12ppm(重量:以下同じ)、ニッケル(Ni)が検出限界(1ppm)以下、Mnが2ppm、Crが検出限界(1ppm)以下であり、蛍光体原料として十分使用できるものであり、かつ局所的な熱暴走反応による炉心管のダメージも無いことがわかった。
<実施例4>
原料の金属Laの量を966.69gとし、導入ガスを4vol%H2/N2混合ガスとしたこと、ガス流量を8L/minとしたこと、反応終了後の500℃保持時間を15分にしたこと以外は、実施例1と同様にして、金属Laの窒化を行った。
得られたLaNは、1046.69gであり(理論重量増加率から算出される回収率は98.4%)、反応に伴う発熱によって炉心管103の内温は最大で410℃まで上昇した。また発熱挙動は90分間観察された。
また得られたLaNを実施例1と同様にLECO社製酸素窒素分析装置TC6000を用いて、N量を求めたところ、9.0wt%であり、98%以上がLaNであることが確認された。
実施例1−4の結果を表1に示す。
この結果より、水素濃度が低くても問題なく窒化が行われ、かつ、水素濃度10vоl%以下において、発熱到達温度が低く、かつ窒化率が高いことがわかる。
以下の実験は、本発明の有用性を示すための参考実験である。
比較例1は、LaNの製造において、金属Laを炉中に静置した状態での反応を確認したものである。計算上、炉内温度が高温になり危険であることがわかったため、少量での窒化実験と、その結果を用いたシミュレーション計算の結果のみを示す。
比較例2は、低水素濃度で静置した場合には、窒化反応がほとんど進まないことを示している。
比較例3は水素が存在しない場合には、金属Laの融点以上に温度を上げても反応自体が不十分であることを示している。
比較例2,3は窒化が不十分になることが判ったので、少量実験データのみ示す。
<比較例1>
窒素ボックスにてMo製坩堝(内径18mm、高さ20mm)内に0.5〜1.0cm角の金属Laを9.96g仕込みこれを石英管(内径40mm、高さ400mm)の中に入れて密閉状態とした。次に石英管を窒素ボックスから取り出し、縦型電気炉に石英管を差込んだ後、石英管内を真空排気した。その後、石英管内に30vol%H2/N2混合ガスを100cm3/minで流通させながら500℃まで1時間かけて昇温し、500℃で5時間保持した。電気炉による加熱を停止し石英管を冷却した後、Mo坩堝ごと再度窒素ボックスに入れて窒化反応後の重量を測定したところ、10.95gのLaNが得られた。理論重量増加量(1.00g)から計算すると、得られたLaNの反応率は98%以上であることが確認された。
次に、本条件と同様に坩堝形状の容器を用いて、かつ30vol%H2/N2雰囲気下において実施例1と同等量の金属La(1400g)を窒化する場合を想定して、窒化反応に伴う発熱による試料の温度上昇度を以下に示す簡易的な関係式(2)から見積もった。
m・ΔH/t=U・A・ΔT・・・(2)
ここで、mは金属La量(g)、ΔHは窒化反応に伴う発熱量(J/g)、tは発熱(反応)時間(s)、Uは総括伝熱係数(J/s/m2/K)、Aは除熱面積(m2)、ΔTは炉心管内温と電気炉温度の差(K)である。
まず、実施例1で用いた炉心管103の試料充填部の管壁を除熱部(A=0.25m2)とし、金属Laの窒化反応に伴う発熱量をΔH=2200J/g(熱力学データベースMALTより計算)、金属La量をm=1400g、また反応時に見られた発熱挙動より発熱時間をt=1800s、炉心管内温と電気炉温度の差をΔT=520−330=190Kとして、総括伝熱係数Uを求めた(U=40J/s/m2/K)。次に、実施例1と同量の金属Laが収納できる円筒形の坩堝(坩堝内径8.0cm、高さ10cm、除熱面積A=0.03m2)を使用した場合を想定して、上計算にて求めた総括伝熱係数Uから、坩堝を使用した場合の発熱時の内温を算出した。その結果、発熱ピーク時の内温は、Laの融点(912℃)や電気炉の使用上限温度(1000〜1500℃)を遥かに超える1900℃にまで達することが判明したため、坩堝を用いた金属La1400gの窒化は危険と考え実験を断念した。このように、除熱面積が小さい坩堝形状の容器では、大量の金属Laを窒化することができないことが確認された。
<比較例2>
金属ランタンの量を5.81g、水素濃度を4%、保持温度を850℃にした以外は、比較例1と同様にして窒化を行った。得られた反応物5.83gであり、窒化率は3.4%であった。表面の剥離が生じない静置状態では、温度を850℃にしても、ほとんど窒化反応が進行しないことが判った。
<比較例3>
金属ランタンの量を11.6g、窒素100%、保持温度を1100℃にした以外は、比較例1と同様にして窒化を行った。得られた反応物11.88gであり、窒化率は23.6%であった。温度を金属Laの融点(912℃)以上に上げたにもかかわらず、窒化の進行は不十分であった。
静置での低水素濃度条件では窒化がほとんど進行しないが、ロータリーキルンを用いることで、粉砕効果により窒化物層が剥がれ、窒化反応が大きく促進されると言える。
<参考実験例2>
(熱重量測定装置(TG)を用いた粉末Laの窒化)
以下、H2/N2混合ガス下におけるLaの窒化反応について、熱重量測定装置(TG;
島津製TGA−50)を用いた測定結果と反応速度解析結果を示す。図2に窒化反応に伴う重量変化をTGで測定した結果を示す。30%H2−N2とは、H2/N2混合ガス中でのH2の割合が30vol%で、残りの70vol%がN2であることを意味する。用いた粉末Laの粒子径は425〜710μmであり、全ての条件において昇温速度は20℃/minとした。水素濃度が増加するほど、反応速度が増加する傾向にあることがわかる。また、熱暴走の観点からは、4vol%から10vol%の範囲で、比較的穏やかで、暴走し難い反応が生じていることも判る。
次に、TG測定結果を基に反応完了時間(重量増加開始から終了まで)と水素濃度の関係から、金属La中の水素の拡散速度D(m2/s)を下記式(3)から求めた。なお、下記式(3)中でt(s)は反応完了時間、ρ(mol/m3)はLaの密度、R(m)はLaの粒子径、Cは水素濃度(mol/m3)である。
t=ρ・R2/(3D・C)・・・(3)
関係式から、各条件での水素拡散速度Dを求めると、以下の表2のようになる。
次に、求めた水素拡散係数の平均値(3.0E−05m2/s)から粒子状(粒径0.2cm〜3cm)の金属Laを用いた場合の窒化反応完了時間を図3に示す。この図は、比較例3に示したように、窒素100%では窒化がかなりの高温でも進まないことから、水素の拡散が窒化速度を支配していると考え、水素の金属ランタン中への拡散速度が、窒化の速度と実質一致すると仮定し、ある粒径の粒子が中心まで窒化するのに必要な時間を、水素濃度と粒径の関係から求めたものである。
図3に示される通り、1cm角以上の金属Laを原料として用いた場合、5%以下の低水素濃度では反応完了までに10〜100時間以上を要することになる。これに対し、実施例1〜4に示したようなロータリーキルンを用いた金属Laの窒化では、計算よりも遥かに早く反応が完了しており、粒子状金属に運動を与えることによる窒化物層の剥離が反応促進に大きく影響を与えていることがわかる。実施例1〜4の結果と計算結果を対比すると、剥離する窒化物層の厚みは0.2〜0.5cmであると考えられる。
本発明の金属窒化物を製造する方法により製造された金属窒化物は、窒化物蛍光体の原料として好適である。
100:ロータリーキルン
101:電気炉
102:ヒーター
103:炉心管
104:バルブ
105:ガス排気管
106:バルブ
107:真空排気管
108:フランジ
109:原料
110:掻上板
111:モーター
112:バルブ
113:ガス導入管

Claims (9)

  1. ランタン、セリウム、カルシウム、及びストロンチウムからなる群より選ばれた少なくとも1つの粒子状金属を炉中に投入し、少なくとも窒素原子を含む窒化性ガスを炉中に充填し、該金属の窒化反応開始温度以上、該金属の融点より20℃以上低い温度で、炉中の粒子状金属に運動を与えながら金属を窒化させることを特徴とする金属窒化物の製造方法。
  2. 前記窒化性ガスは、元素としての水素を500wtppm以上含む、請求項1に記載の金属窒化物の製造方法。
  3. 前記窒化性ガスは、元素としての水素と元素としての窒素の存在比が0.05:99.95〜90:10の範囲である、請求項1又は2に記載の金属窒化物の製造方法。
  4. 前記炉中に窒化性ガスを流通させながら金属を窒化させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の金属窒化物の製造方法。
  5. 前記炉中に、窒化性ガスに加え不活性ガスを流通させる請求項4に記載の金属窒化物の製造方法。
  6. 前記炉が回転炉であり、その回転速度が1rpm以上である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の金属窒化物の製造方法。
  7. 前記炉中温度が、900℃以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の金属窒化物の製造方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法で製造された金属窒化物と、少なくともケイ素を含む化合物またはケイ素単体と、賦活剤となる元素を含む化合物又は賦活剤となる元素単体とを混合し、窒素を含む雰囲気下で焼成する窒化物蛍光体の製造方法。
  9. 前記窒化物蛍光体が下記一般式(I)で表される請求項8に記載の窒化物蛍光体の製造方法。
    LnaSibc:Zd …(I)
    式中、a+d=3、5.4≦b≦6.6、10≦c≦12を満たし、LnはLaを必須として含む、希土類金属又はアルカリ土類金属からなる群より選ばれる元素であり、Zは賦活剤として使用される元素である。
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