JP7364449B2 - 窒化イットリウムの製造方法 - Google Patents
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かさ密度を高める方法として、ホットプレス等で焼結体を製造したのちにミル等で粉砕し、かさ密度の高い粉末を採取する方法が考えられるが、この方法を窒化イットリウムに適用した場合、焼結体製造時に酸素が混入しやすいだけでなく、粉砕時にミル媒体が混入しやすいため、純度の低下といった問題が生ずることが判明した。
本発明の課題は、かさ密度の高い窒化イットリウムの製造方法を提供することにある。
〔1〕窒素ガス及びアンモニアガスの混合ガスの流通下、金属イットリウムを900℃以上の温度で焼成する工程を含む窒化イットリウムの製造方法であって、
混合ガス中の窒素ガスとアンモニアガスとの体積比(窒素/アンモニア)が0.3~9である、窒化イットリウムの製造方法。
〔2〕焼成後、焼成物を粉砕する工程を含む、前記〔1〕記載の窒化イットリウムの製造方法。
〔3〕窒化イットリウムは、初期かさ密度が1.3g/cm3以上であり、かつタップかさ密度が2g/cm3以上である、前記〔1〕又は〔2〕記載の窒化イットリウムの製造方法。
本発明の窒化イットリウムの製造方法は、窒素ガス及びアンモニアガスの混合ガスの流通下、金属イットリウムを900℃以上の温度で焼成する工程を含み、混合ガス中の窒素ガスとアンモニアガスとの体積比(窒素/アンモニア)が0.3~9であることを特徴とする。
金属イットリウムは、市販品を使用することができるが、高純度であるものが好ましい。例えば、金属イットリウムとして、純度99.99%以上のものを使用することができる。
また、金属イットリウムの形態は、バルクでも、粉末でも構わないが、かさ密度向上、変質防止の観点から、バルクが好ましい。バルクの大きさは、通常0.1~50mmであり、好ましくは1~30mmであり、更に好ましくは3~20mmである。なお、バルクは、1辺の長さがいずれも上記範囲内にあればよい。このような大きさとするには、例えば、金属イットリウムの板状物やインゴットを切断又は切削すればよい。
混合ガスは、窒素ガスとアンモニアガスとからなるものである。
窒素ガスとしては、例えば、純度99.9容積%以上の窒素ボンベガス、液化窒素を使用することができる。また、アンモニアガスとしては、例えば、純度99.8質量%以上の液化アンモニアを使用することができる。
また、窒素ガス及びアンモニアガスは、両者の体積比が上記範囲内となるように、各ガスの供給速度を、通常0.01~100L/min、好ましくは0.1~10L/minの範囲内で制御される。
焼成に使用する装置は、装置内に混合ガスを流通でき、かつ焼成温度に耐えられる装置であれば特に限定されないが、例えば、管状炉、電気炉、バッチ式キルン、ロータリーキルンを挙げることができる。
焼成は、常圧で行えばよく、加圧又は真空とすることを要しない。
焼成時間は、反応スケールにより一様ではないが、例えば、金属イットリウム100gを使用する場合、通常0.5~60時間、好ましくは1~20時間、更に好ましくは3~10時間である。
焼成後、焼成物を粉砕してもよい。
粉砕は、粉砕装置を使用することができる。粉砕装置としては、窒化イットリウムを粉砕可能であり、且つ密閉状態とすることができれば特に限定されないが、例えば、媒体粉砕機を挙げることができる。媒体粉砕機としては、例えば、ミルが挙げられ、具体的には、遊星ボールミル、ボールミル、ディスクミル等の容器駆動媒体ミルを挙げることができる。なお、粉砕媒体及び粉砕容器の材質としては、窒化イットリウムを粉砕可能であり、かつ不純物の混入を防止できれば特に限定されない。
粉砕時の雰囲気を酸素非含有雰囲気とするには、例えば、ミルを使用する場合、酸素非含有雰囲気のグローブボックス内で、粉砕容器内の気相を置換した後、該粉砕容器に粉砕媒体、窒化物及び酸素吸収剤を収容し、粉砕媒体の開口部を密閉すればよい。
窒化イットリウムの鉱物相は、粉末X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、Bruker D8 advance)を用いて測定し、同定を行った。
窒化イットリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度を、JIS R 1628「ファインセラミックス粉末のかさ密度測定方法」に準拠して測定した。
窒化イットリウム粉末の粒度分布を、JIS R 1629「ファインセラミックス原料のレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定方法」に準拠して体積基準で作成した。そして、積算分布曲線の50%に相当する粒子径(D50)を求めた。なお、レーザ回折・散乱法による粒子径分布測定装置として、マイクロトラックMT3300EX II(マイクロトラック・ベル社製)を使用した。
下記の要件(1)~(3)のすべてを満たすものを「〇」とし、いずれか1以上を満たさないものを「×」と評価した。
(1)鉱物相がYN単相であること
(2)初期かさ密度が1.3g/cm3以上であること
(3)タップかさ密度が2g/cm3以上であること
アルミナ製ボートに金属イットリウム(三津和化学社製、10mm角)を74g量り取り、炉心管の中央部に仕込み、管状炉に設置した。次いで、窒素ガス1L/minとアンモニアガス1L/minをそれぞれ炉心管内に流通させ、1050℃の温度まで5℃/minで昇温し、10時間保持して焼成を行った。焼成後、室温まで徐冷し、生成物をボールミルにて350rpm、3分間の条件で粉砕し、窒化イットリウム粉末を得た。得られた窒化イットリウム粉末の鉱物相を同定するためにX線回折(XRD)測定を行い、YN単相であることを確認した。また、窒化イットリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
アンモニアガス及び窒素ガスの流通量を表1に示す割合に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、窒化イットリウム粉末を得た。得られた窒化イットリウム粉末について、実施例1と同様に鉱物相の同定を行い、YN単相であることを確認した。また、窒化イットリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
アンモニアガス及び窒素ガスの流通量を表1に示す割合に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、窒化イットリウム粉末を得た。得られた窒化イットリウム粉末について、実施例1と同様に鉱物相の同定を行い、YN単相であることを確認した。また、窒化イットリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
アンモニアガス及び窒素ガスの流通量を表1に示す割合に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、窒化イットリウム粉末を得た。得られた窒化イットリウム粉末について、実施例1と同様に鉱物相の同定を行い、YN単相であることを確認した。また、窒化イットリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
アンモニアガス及び窒素ガスの流通量を表1に示す割合とし、焼成温度を900℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、窒化イットリウム粉末を得た。得られた窒化イットリウム粉末について、実施例1と同様に鉱物相の同定を行い、YN単相であることを確認した。また、窒化イットリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
アンモニアガス及び窒素ガスの流通量を表1に示す割合とし、焼成温度を1450℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、窒化イットリウム粉末を得た。得られた窒化イットリウム粉末について、実施例1と同様に鉱物相の同定を行い、YN単相であることを確認した。また、窒化イットリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
窒素ガスを供給しなかったこと以外は、実施例1と同様の操作により、窒化イットリウム粉末を得た。得られた窒化イットリウム粉末について、実施例1と同様に鉱物相の同定を行い、YN単相であることを確認した。また、窒化イットリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
アンモニアガス及び窒素ガスの流通量を表1に示す割合に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、窒化イットリウム粉末を得た。得られた窒化イットリウム粉末について、実施例1と同様に鉱物相の同定を行い、YN単相であることを確認した。また、窒化イットリウム粉末の初期かさ密度及びタップかさ密度、並びに平均粒子径を測定した。その結果を表1に示す。
アンモニアガス及び窒素ガスの流通量を表1に示す割合に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、窒化イットリウム粉末を得た。得られた窒化イットリウム粉末について、実施例1と同様に鉱物相の同定を行ったところ、YN及びYの複相であることが判明した。そのため、その後の分析を断念した。
アンモニアガス及び窒素ガスの流通量を表1に示す割合とし、焼成温度を800℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、窒化イットリウム粉末を得た。得られた窒化イットリウム粉末について、実施例1と同様に鉱物相の同定を行ったところ、YN及びYの複相であることが判明した。そのため、その後の分析を断念した。
窒素ガスに代えて水素ガスを用い、アンモニアガス及び水素ガスの流通量を表1に示す割合とし、焼成温度を1000℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、窒化イットリウム粉末を得た。得られた窒化イットリウム粉末について、実施例1と同様に鉱物相の同定を行ったところ、YN及びYH2の複相であることが判明した。そのため、その後の分析を断念した。
アンモニアガスに代えて水素ガスを用い、窒素ガス及び水素ガスの流通量を表1に示す割合としたこと以外は、実施例1と同様の操作により、窒化イットリウム粉末を得た。得られた窒化イットリウム粉末について、実施例1と同様に鉱物相の同定を行ったところ、YN及びYの複相であることが判明した。そのため、その後の分析を断念した。
比較例2、3から、窒素ガス及びアンモニアガスの混合ガスの雰囲気であっても、それらの体積比が0.3~9に満たないと、窒化イットリウム単相が得られないか、得られたとしてもかさ密度が低くなることがわかる。
比較例4から、窒素ガス及びアンモニアガスの体積比が0.3~9に制御された混合ガスの雰囲気であっても、焼成温度が900℃に満たないと、未反応イットリウムが残存し、窒化イットリウム単相が得られないことがわかる。
比較例5は、アンモニアガス及び水素ガスの雰囲気を採用する特許文献1に記載された方法であるが、水素化イットリウムが混入し、窒化イットリウム単相は得られないことがわかる。
比較例6から、アンモニアガスを含まない、窒素ガス及び水素ガスの雰囲気であると、未反応のイットリウムが残存し、窒化イットリウム単相が得られないことがわかる。
以上から、窒素ガス及びアンモニアガスの体積比が0.3~9に制御された混合ガスの流通下にて、金属イットリウムを900℃以上で焼成することで、かさ密度の高い窒化イットリウムが得られることがわかる。
Claims (2)
- 窒素ガス及びアンモニアガスの混合ガスの流通下、1辺の長さが0.1~50mmの範囲内にある金属イットリウムのバルクを900℃以上の温度で焼成する工程と、
焼成物を粉砕する工程
を含む窒化イットリウムの製造方法であって、
混合ガス中の窒素ガスとアンモニアガスとの体積比(窒素/アンモニア)が0.3~9である、窒化イットリウムの製造方法。 - 窒化イットリウムは、初期かさ密度が1.3g/cm3以上であり、かつタップかさ密度が2g/cm3以上である、請求項1記載の窒化イットリウムの製造方法。
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