JP2013116124A - 細胞培養におけるインフルエンザウイルスの複製の方法、および本方法によって入手可能なインフルエンザウイルス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】細胞培養におけるインフルエンザウイルスの複製のための方法であって、インフルエンザウイルスによって感染され得る細胞が細胞培養において培養され、該細胞が、インフルエンザウイルスで感染され、そして感染後、ウイルス複製のために30〜36℃の範囲の温度で培養されることを含む、方法。
【選択図】なし
Description
卵中のインフルエンザウイルスの単離および精製は、臨床的な単離とは大きく異なる特定の表現型の選択を導く。臨床的単離とは異なり、細胞培養におけるウイルスの単離および複製においては、継代依存性選択は生じない(非特許文献1;非特許文献2)。従って、有効なワクチンのために、細胞培養におけるウイルス複製はまた、この局面より卵におけるものに対して好ましい。インフルエンザウイルスが細胞培養において複製され得ることは公知である。雌鶏胚細胞およびハムスター細胞(BHK21-FおよびHKCC)に加えて、MDBK細胞および特にMDCK細胞が、インフルエンザウイルスのインビトロでの複製のための適切な細胞として記載されている(非特許文献3)。首尾よい感染のための必須条件は、感染培地へのプロテアーゼ(好ましくは、トリプシンまたは類似のセリンプロテアーゼ)の添加である。なぜなら、これらのプロテアーゼは、赤血球凝集素[HA0]の前駆体タンパク
質を、活性な赤血球凝集素[HA1およびHA2]に、細胞外的に切断するからである。切断された赤血球凝集素のみが、続く細胞へのウイルス同化を伴う細胞上のインフルエンザウイルスの吸着を導く(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)、そしてそれゆえ、細胞培養におけるウイルスのさらなる複製サイクルを導く。
特許文献1は、接着性増殖細胞の細胞培養におけるインフルエンザウイルスの複製を記載した。細胞増殖後、栄養培地は除去され、そして新鮮な栄養培地が、インフルエンザウイルスでの細胞の感染と同時にまたはその少し後に細胞に添加される。感染から所定の時間の後、プロテアーゼ(例えばトリプシン)が至適ウイルス複製を得るために添加される。ウイルスは回収され、精製され、そして不活化または弱毒化ワクチンを生じさせるために加工される。しかし、ワクチン産生のための必須条件としての経済的なインフルエンザウイルス複製は、培地の変換、続く感染、ならびにトリプシンの添加のような、後に個々の細胞培養容器を数回開ける必要性をもたらし、それゆえ大変労力を要するこの特許に記載の方法論を用いては達成され得ない。さらに、培養容器の各操作での所望でない微生物やウイルスによる細胞培養の汚染の危険が増大する。より安価な選択は、当業者に公知の発酵槽系における細胞増殖であり、細胞はミクロキャリア上の接着性増殖する。しかし、ミクロキャリア上の細胞の増殖に必要な血清(通常、ウシ胚血清)は、トリプシンインヒビターを含み、その結果、この産生方法においてさえ、トリプシンによるインフルエンザ赤血球凝集素の切断を達成し、それゆえ適切な高度なウイルス複製のために、培地の無血清培地への変換が必要である。従って、この方法論はまた、培養容器を数回開けることを必要とし、それゆえ汚染の危険を増大させる。
(項目1) 細胞培養におけるインフルエンザウイルスの複製のための方法であって、インフルエンザウイルスによって感染され得る細胞が細胞培養において培養され、該細胞が、インフルエンザウイルスで感染され、そして感染後、ウイルス複製のために30〜36℃の範囲の温度で培養されることを含む、方法。
(項目2) 前記細胞が、感染後、ウイルス複製のために、32〜34℃の範囲の温度で培養される、項目1に記載の方法。
(項目3) 前記細胞が、感染後、ウイルス複製のために、33℃で培養される、項目2に記載の方法。
(項目4) 前記細胞が脊椎動物の細胞である、項目2および3に記載の方法。
(項目5) 前記脊椎動物細胞がトリ細胞である、項目4に記載の方法。
(項目6) 前記細胞が雌鶏胚細胞である、項目5に記載の方法。
(項目7) 前記脊椎動物細胞が哺乳動物細胞である、項目4に記載の方法。
(項目8) 前記哺乳動物細胞が、ハムスター、ウシ、サル、またはイヌ細胞である、項目7に記載の方法。
(項目9) 前記インフルエンザウイルスによって感染され得る細胞が、接着性増殖する、項目1〜8に記載の方法。
(項目10) 前記インフルエンザウイルスによって感染され得る細胞が、懸濁物において増殖する、項目1〜8に記載の方法。
(項目11) プロテアーゼを、インフルエンザウイルスで感染する前、間、または後に、前記培養細胞に添加する、項目1〜10に記載の方法。
(項目12) 前記プロテアーゼがセリンプロテアーゼである、項目11に記載の方法。(項目13) 前記セリンプロテアーゼがトリプシンである、項目12に記載の方法。
(項目14) 前記インフルエンザウイルスの回収および単離が、感染の2〜10日後に行われる、項目1〜13のいずれかに記載の方法。
(項目15) 前記インフルエンザウイルスの回収および単離が、感染の2〜7日後に行われる、項目14に記載の方法。
(項目16) 項目1〜15に記載の方法によって入手可能なインフルエンザウイルス。(項目17) 適切な場合、免疫応答を増大させる物質と組み合わせた、項目16に記載のインフルエンザウイルスを含むワクチン。
(項目18) 前記インフルエンザウイルスが、インタクトなウイルス粒子として存在する、項目17に記載のワクチン。
(項目19) 前記インフルエンザウイルスが、弱毒化ウイルスとして存在する、項目17に記載のワクチン。
(項目20) 前記インフルエンザウイルスが、分解ウイルス粒子として存在する、項目17に記載のワクチン。
(項目21) 前記ワクチンが、前記インフルエンザウイルスの単離されたタンパク質を含む、項目21に記載のワクチン。
(項目22) 項目16に記載のインフルエンザウイルスまたはこのようなインフルエンザウイルスの構成物を含む、診断用組成物。
。可能なサル細胞は、例えば、VERO細胞であり、そして可能なウシ細胞はMDBK細胞株である。適切な腎臓細胞株の例は、イヌ腎臓由来のMDCK細胞株(ATCC CCL34 MDCK(NBL-2))である。
発明のプロセスにおいて特に好ましく使用される。これは、特許手続のための微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約の規定に基づき、国際寄託部署として承認されているブルンスウィック(ドイツ連邦共和国)のGerman Collection of Microorganisms(DSM)に、受託番号DSM ACC 2219で1995年6月7日に寄託された。
%(空気飽和に基づく)との間である。
らすプロテアーゼの添加は、本発明に従い、インフルエンザウイルスでの細胞の感染の少し前、同時、または少し後に行われ得る。添加が感染と同時に行われる場合、プロテアーゼは感染されるべき細胞培養に直接または例えば、ウイルス接種と一緒に濃縮物として添加され得る。血清含有培地が培養に使用される場合、これはプロテアーゼ添加の前に除去されるべきである。プロテアーゼは好ましくはセリンプロテアーゼ、そして特に好ましくはトリプシンである。
。
33℃でのMDCK細胞におけるインフルエンザウイルスの複製
MDCK細胞(ATCC CCL 34)を、細胞培養ボトル(2% FCSを用いるEagle's MEM [EMEM]、37℃で4日間のインキュベーション)において複製した。得られた濃厚な細胞ローンを、トリプシン溶液を用いて容器の壁から剥離し、細胞を単離し、そして細胞濃縮物を血清含有培地中に再懸濁した。細胞を、ローラーボトル(200ml/ボトル)において5×105細胞/mlの細胞密度で接種し、そして37℃で4rpmでインキュベートした。2日後、細胞にインフルエンザウイルスを感染させた。これを行うために、濃厚な細胞ローンの上の培地を除去し、そして無血清EMEMにより置換した。0.1のm.o.i.(感染多重度)を有する
インフルエンザウイルスA/PR/8/34および25μg/mlの最終濃度のトリプシンを培地に添加
した。いずれの場合も2つのローラーボトルを37℃または33℃でインキュベートした。ウイルス複製を、抗原の量(赤血球凝集素単位として測定)として決定し、そして感染性(CC ID50試験において測定)として決定した。そして、これを表1に示す。
懸濁物中での増殖に適応しており、そしてインフルエンザウイルスにより感染され得る細胞株の調製
懸濁培養における増殖に適切であり、そしてインフルエンザウイルスにより感染され得る細胞株を、MDCK細胞(ATCC CCL34 MDCK (NBL-2))から開始して選択した。この細胞は、研究室において少数回の継代のみにより、または数ヶ月かけて増殖させておいた。この選択を、16rpm(付着性増殖細胞を有するローラーボトルについての習慣的な約3rpmの代わり)で回転したローラーボトルにおける細胞の増殖により実施した。培地中に懸濁して存在する細胞の数回の継代後、懸濁物中で増殖している細胞株を得た。これらの細胞株にインフルエンザウイルスを感染させ、そしてこの株をどの株が最大のウイルス収量を生じるかについて選択した。16rpmでの最初の継代の間の懸濁物中での細胞の増殖速度の増
加は、当業者に公知の選択系(例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン、またはアラノシンおよびアデニンを個々にまたは組み合わせて)の添加により1〜3回の継代にわたって達成される。懸濁物中で増殖している細胞の選択はまた、当業者に公知の他の撹拌細胞培養系(例えば、撹拌フラスコ)において可能である。懸濁物中での増殖に適応しており、そしてインフルエンザウイルスにより感染され得る細胞の例は、細胞株MDCK 33016(DSM ACC2219)である。
33℃でのMDCK 33016細胞におけるインフルエンザウイルスの複製
懸濁物中で増殖している細胞株MDCK 33016(DSM ACC2219)を、16rpmで回転するローラーボトルにおいて週に2回、1:8〜1:12の分割割合で、Iscove培地中で37℃で複製させた。移してから4日後、約7.0×105細胞/mlの細胞数を達成した。この4日齢の細
胞培養物のインフルエンザ株A/PR/8/34(m.o.i.=0.1)での感染と同時に、細胞培養物をトリプシン(25μg/mlの最終濃度)で処理し、37℃または33℃でさらにインキュベートし、そしてウイルス複製を3日間にわたって決定した(表II)。
33℃でのMDCK 33016細胞(DSM ACC 2219)における種々のインフルエンザ株の複製
細胞株MDCK 33016(DSM ACC 2219)を、16rpmで回転するローラーボトルにおいて週に2回、1:8〜1:12の分割割合で、Iscove培地中で37℃で増殖させた。移してから4日後、約7.0×105〜10×105細胞/mlの細胞数を達成した。この4日齢の細胞培養物の
種々のインフルエンザ株(m.o.i.約0.1)での感染と同時に、細胞培養物をトリプシン(25μg/mlの最終濃度)で処理し、33℃でさらにインキュベートし、そしてウイルス複製を
感染5日後に決定した(表III)。
実験用インフルエンザワクチンの調製
マウスにおける接種の後、ヒト病原性インフルエンザウイルスは、通常病理学的プロセスを伴う感染に至らず、その結果、マウスを用いる保護実験は、構築することが実験的に非常に困難である。しかし、インフルエンザウイルスA/PR/8/34株は、マウスに適応され
、そして鼻腔内投与の後に、マウスにおいて用量依存性死亡を引き起こす。
は33℃で複製させたA/PR/8)から調製した。細胞培養培地中のインフルエンザウイルスを、低速遠心分離(2000g、20分、4℃)によって細胞および細胞フラグメントから分離し
、そしてショ糖勾配遠心分離(10〜50%(wt/wt)の直線状ショ糖勾配、30,000g、2時間、4℃)によって精製した。インフルエンザウイルス含有バンドを入手し、PBS (pH7.2)で1:10に希釈し、そして20,000rpmで沈殿させ、そして沈殿物をPBS(容量:最初の細胞培養培地の50%)中に取り出した。インフルエンザウイルスを、ホルムアルデヒドで不活化した(24時間の間隔で35%強度ホルムアルデヒド溶液の0.025%の2回の添加、撹拌しな
がら20℃でのインキュベーション)。
各々0.3mlのこれらの不活化実験用ワクチンとともにインキュベートした。接種の2およ
び4週間後、ならびにさらにワクチン再接種の1および2週間後に、血液を動物から採取して、A/PR/8/34に対する中和抗体の力価を測定した。保護割合を決定するために、マウ
スを、ワクチン再接種(実験の開始後6週間)後に1000 LD50(致死量の50%)の鼻腔内投与によって2週間曝露した。実験の結果を表IVに編集した。
33℃でのMDCK細胞におけるインフルエンザウイルスの複製および得られるワクチンの効力
細胞株MDCK(ATCC CL34)を、週に2回の1:8〜1:12の分割割合で、細胞培養ボトル中
で2% FCSを有するEagleのMEM(EMEM)において37℃で複製させた。形質転換の4日後、
高密度な細胞ローンが生じた。この培地から血清非含有EMEMへの変更の後、細胞培養物を、インフルエンザB/Beijing(m.o.i.=0.1)で感染させ、トリプシンを25μg/mlの最終濃度で培地に添加し、そして感染細胞培養ボトルを、37℃または33℃のいずれかでインキュベートした。感染の4日後、実験用バッチ中のHA含量は両方とも256HA単位であった。細
胞/細胞残渣を除去するための低速遠心分離の後、上清中のウイルスを、ホルムアルデヒ
ド(24時間の間隔の35%強度ホルムアルデヒド溶液の0.025%の2回の添加、攪拌しなが
ら20℃でのインキュベーション)で不活化した。各実験セクションにおいて、添加したアジュバントは水酸化アルミニウムであった(2%強度Al(OH)3溶液の10%最終濃度)。こ
れらの実験用ワクチンを用いて、各ケースにおいて、実験セクション当たり3匹のモルモット(400〜500g)に0.2mlでの足底内ワクチン接種を与え、そしてその後に同じワクチンで4週間ワクチン再接種を与えた。ワクチンの効力を調査するために、血液サンプルを接種後の2、4および6週間採取し、そして赤血球凝集阻害試験および血清中和試験において試験した(表Vを参照のこと)。
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