JP2013107327A - タイヤ内面用離型剤およびそれを用いたタイヤの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 タイヤ内面用離型剤は、アルキルシリコーンと、曇点20〜60℃且つ動粘度10〜60cSt(25℃)であるシリコーン系非イオン界面活性剤と、粉体からなる無機成分と、水とを含む。タイヤの製造方法は、このタイヤ内面用離型剤を、生タイヤの内面および/またはブラダーの外面に塗布し、前記ブラダーを加熱膨張させて前記生タイヤを金型に圧入し、加硫成型する第1成型工程と、前記ブラダーを加熱膨張させて別の生タイヤを金型に圧入し、加硫成型する第2成型工程とを含む製造方法である。
【選択図】 なし
Description
特許文献1では、シリコーンの水性エマルジョンと一次平均粒子径が55〜95μmのマイカを含む無機粉体との組成物を、タイヤ内面用離型剤として使用することが示されている。この例では、加硫しようとする生タイヤの内面それぞれに対して、加硫のたび毎にタイヤ内面用離型剤を塗布する必要があり、作業効率が低い。
本発明にかかるタイヤ内面用離型剤は、アルキルシリコーンと、曇点20〜60℃且つ動粘度10〜60cSt(25℃)であるシリコーン系非イオン界面活性剤と、粉体からなる無機成分と、水とを含むタイヤ内面用離型剤である。
(1)前記シリコーン系非イオン界面活性剤の重量割合が、前記アルキルシリコーン、シリコーン系非イオン界面活性剤および無機成分の合計量に対して0.01〜20重量%である。
(2)無機成分の重量割合が、前記アルキルシリコーン、シリコーン系非イオン界面活性剤および無機成分の合計量に対して2〜40重量%である。
(3)前記シリコーン系非イオン界面活性剤の臨界ミセル形成濃度(CMC)が1000mg/L以下(25℃)であり、前記臨界ミセル形成濃度における表面張力(γCMC)が15〜40mN/m(25℃)である。
(4)前記無機成分が炭酸カルシウムである。
前記第2成型工程を少なくともさらに3回続けて行うと好ましい。また、前記第2成型工程を、タイヤ内面用離型剤を別の生タイヤの内面および前記ブラダーの外面のいずれにも実質的に塗布することなく行うとよい。
本発明にかかるタイヤは、上記タイヤ内面用離型剤を生タイヤの内面に付着させ、加硫してなるタイヤである。
本発明のタイヤの製造方法では、本発明のタイヤ内面用離型剤を用いるので、生タイヤの加硫成型を複数回行っても優れた離型性が持続し、タイヤの生産性が高い。
アルキルシリコーンは、タイヤ内面用離型剤に離型性や潤滑性を付与する主要な成分である。アルキルシリコーンは、アルキル基を少なくとも1つ有するオルガノポリシロキサン類の総称であって、オイル、ゴム、樹脂等のどのような形態であってもよい。
アルキル基を少なくとも1つ有するオルガノポリシロキサン類としては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルイソプロピルポリシロキサン、メチルドデシルポリシロキサン等のジアルキルポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等のアルキルフェニルポリシロキサン;メチル(フェニルエチル)ポリシロキサン、メチル(フェニルプロピル)ポリシロキサン等のアルキルアラルキルポリシロキサン等を挙げることができる。これらのオルガノポリシロキサン類は、1種または2種以上を併用してもよい。
アルキルシリコーンは、タイヤ内面用離型剤の製造の際に、アルキルシリコーンの乳化物を使用してもよく、乳化物は水中油滴型の乳化物が好ましい。
シリコーン系非イオン界面活性剤は、その分子内にシロキサン結合とともに、ポリオキシアルキレン基(ポリエーテル基)等の非イオン性基を持つことを特徴とし、生タイヤの内面やブラダーの外面との親和性に優れる成分である。そのため、タイヤ内面用離型剤を生タイヤの内面に塗布した場合は、シリコーン系非イオン界面活性剤は、タイヤ内面用離型剤から水を除いた成分(以下では、単に「離型剤の構成成分」ということがある。)を生タイヤの加硫成型時にブラダーの外面に効果的に転着させて作用を発揮する。また、タイヤ内面用離型剤をブラダーの外面に塗布した場合は、シリコーン系非イオン界面活性剤は離型剤の構成成分を効果的に外面に密着させて作用を発揮する。これによって、本発明のタイヤ内面用離型剤は、生タイヤの加硫成型に複数回使用しても優れた離型性が持続することになる。
タイヤ内面用離型剤を生タイヤの内面に塗布した場合に、離型剤の構成成分がブラダーの外面に効果的に転着することは、たとえば、次のように考えられる。生タイヤの内面およびブラダーの外面は、通常、ブチル系ゴム等の同一または類似したゴムから構成されている。しかし、その表面の平滑の程度は、ブラダーの外面のほうがその表面の起伏が大きく複雑である。一方、シリコーン系界面活性剤は、ゴムやアルキルシリコーンに対して親和性が高く、浸透性に優れる。そのため、生タイヤの内面およびブラダーの外面が生タイヤの加硫成型時に密着した際に、離型剤の構成成分が起伏の大きいブラダーの外面に浸透し、ブラダーの外面の複雑な表面状態を利用して強く固着することができる。したがって、後述の第1成型工程後に、離型剤の構成成分がブラダーの外面に転着することになる。
シリコーン系非イオン界面活性剤の曇点は、通常、20〜60℃であり、好ましくは25〜55℃であり、さらに好ましくは30〜50℃である。曇点が低すぎたり、高すぎたりする場合には、離型剤の構成成分が十分に転着や密着しないことがある。曇点の測定方法は、以下で詳しく説明する。
シリコーン系非イオン界面活性剤の25℃における臨界ミセル形成濃度(CMC)は、好ましくは1000mg/L以下、さらに好ましくは1〜1000mg/L、特に好ましくは10〜200mg/Lである。また、臨界ミセル形成濃度における25℃で測定した表面張力(γCMC)は、好ましくは15〜40mN/m、さらに好ましくは20〜35mN/mである。CMCまたはγCMCが小さすぎると、生タイヤの内面を構成するゴム間に浸透してタイヤの強度が低下することがある。一方、CMCまたはγCMCが大きすぎると、生タイヤの内面またはブラダーの外面に付着する際に、はじきが生じて、タイヤ内面用離型剤を均一に付着させることができないことがある。
シリコーン系非イオン界面活性剤の分子内に含まれるケイ素原子の数については、特に限定はないが、好ましくは10以下、さらに好ましくは1〜6、特に好ましくは2〜5、最も好ましくは3〜4である。ケイ素原子の数が10を超えると、シリコーン系非イオン界面活性剤は、その粘度が高くなり、水に溶解しにくく、タイヤ内面用離型剤の製造が困難となる。
100〜1000、さらに好ましくは150〜900、特に好ましくは200〜800である。シリコーン系非イオン界面活性剤の分子量が100未満であると親水性が低下して、タイヤ内面用離型剤を塗布することが困難となる。一方、シリコーン系非イオン界面活性剤の分子量が1000を超えると粘度が高くなり、水に溶解させるのに時間を要し、タイヤ内面用離型剤の製造が困難となる。
シリコーン系非イオン界面活性剤としては、たとえば、下記化学式(1)で示される非イオン界面活性剤が好ましい。
化学式(1)において、Rとしては、水素原子が好ましい。また、Rがアルキル基の場合、その炭素数は、さらに好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜3である。アルキル基の炭素数が7を超えると水溶性が低下し、タイヤ内面用離型剤を塗布することが困難となる。
化学式(1)において、mはさらに好ましくは4〜30、特に好ましくは5〜20である。mが40を超えると、粘度が高くなり水へ溶解させるのに時間を要することがある。
化学式(1)において、A1〜A3は、互いに同一または異なっていてもよい1価の有機基であれば特に限定はないが、A1〜A3としては、−O−Si≡等の構造を有する有機ケイ素基や、炭素数1〜10のアルコキシ基、アルキル基、フェノキシ基、フェニル基、アルケニル基等が好ましい。また、この有機ケイ素基は、炭素数1〜10のアルコキシ基、アルキル基、フェノキシ基、フェニル基、アルケニル基等と結合していてもよく、別の有機ケイ素基と結合していてもよい。
粉体からなる無機成分(以下、単に「無機成分」ということがある。)は、主に平滑性および空気透過性を付与するために用いられる成分である。
無機成分としては、特に限定はないが、たとえば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト;ベントナイト;ジ−バーミキュライト、トリ−バーミキュライト等のバーミキュライト;ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト、クリソタイル等のカオリン;タルク、パイロフィライト、マイカ(マスコバイト、セリサイト)、マーガライト、クリントナイト、白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、フッ素雲母、パラゴライト、フロゴパイト、レピドライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等のフィロ珪酸塩;アンチゴライト等のジャモン石;ドンパサイト、スドウ石、クッカイト、クリノクロア、シャモサイト、クロライト、ナンタイト等の緑泥石等;セピヲライト、パリゴルスカイト等のピオライト−パリゴスカイト;(重質)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;珪藻土;珪酸アルミニウム;カーボンブラック;グラファイト等を挙げることができる。これらの成分は、1種または2種以上を併用してもよい。
無機成分の平均一次粒子径については、特に限定はないは、1〜30μmが好ましく、15〜25μmがさらに好ましい。無機成分の平均一次粒子径が1μmより小さい場合は、
タイヤ内面用離型剤を調製する際に、無機粉体の分散不良、タイヤ加硫時には空気透過性不足が生じる場合がある。一方、無機成分の平均一次粒子径が30μmより大きい場合は、タイヤ加硫時の平滑性不足が発生することがある。
水は、タイヤ内面用離型剤に含まれる無機成分を均一に分散させ、タイヤ内面用離型剤を均一に付着させるために重要な成分である。水は、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水、地下水、河川水、井戸水等のいずれでもよい。
本発明のタイヤ内面用離型剤は、上記で説明した成分以外に必要に応じて、シリコーン系非イオン界面活性剤以外の界面活性剤(以下、その他界面活性剤ということがある。)、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の増粘剤、消泡剤、防腐剤等の添加剤が配合されていてもよい。
その他界面活性剤は、シリコーン系非イオン界面活性剤と同様に、濡れ性を調整するために使用することが好ましい。その他界面活性剤は、シリコーン系非イオン界面活性剤以外の非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤および両性界面活性剤のどれでもよいが、シリコーン系でない非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤が好ましい。
アニオン界面活性剤としては、カルボン酸系アニオン界面活性剤、スルホン酸系アニオン界面活性剤等が適しており、カルボン酸系アニオン界面活性剤では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩等が特に適している。スルホン酸系アニオン界面活性剤では、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩等が特に適している。これらのアニオン界面活性剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
本発明のタイヤ内面用離型剤は、上記で説明した、アルキルシリコーンと、シリコーン系非イオン界面活性剤と、無機成分と、水とを必須として含む。タイヤ内面用離型剤は、上記で説明したその他の成分をさらに含んでいてもよい。
タイヤ内面用離型剤に含まれるアルキルシリコーン、シリコーン系非イオン界面活性剤、無機成分および水の重量割合については、特に限定はないが、以下に説明する配合割合であるとよい。以下では、アルキルシリコーン、シリコーン系非イオン界面活性剤および無機成分を、単に「3成分」ということがある。
アルキルシリコーンの重量割合は、3成分の合計量に対して、好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは25〜70重量%、特に好ましくは30〜60重量%である。アルキルシリコーンが少なすぎる場合は、離型剤の構成成分の転着性や密着性、タイヤ製造時の離型性が不十分となることがある。一方、アルキルシリコーンが多すぎる場合は、平滑性が悪化し、タイヤ内面離型剤の粘度が高くなってその付着不良を生じ、タイヤの製造に使用することが困難になる場合がある。
無機成分の重量割合は、3成分の合計量に対して、好ましくは2〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。無機成分が少なすぎる場合は、平滑性が悪化することがある。一方、無機成分が多すぎる場合は、成型したタイヤ内面から粉体が脱落し、タイヤ保存箇所周辺を汚すことがある。
本発明のタイヤ内面用離型剤の製造方法については、アルキルシリコーン、シリコーン系非イオン界面活性剤、無機成分および水を混合する工程を含むものであれば、混合順序や使用する混合設備等について特に限定はない。
本発明のタイヤの製造方法は、以下で詳しく説明する第1成型工程と第2成型工程とを含む製造方法である。
本発明のタイヤの製造方法では、第1成型工程および第2成型工程を行った後に、第2成型工程をさらに続けて行ってもよい。第2成型工程をさらに続けて行う回数は、タイヤの生産性向上という観点からは多いほどよく、好ましくは少なくともさらに1回、より好ましくは少なくともさらに3回、特に好ましくは少なくともさらに5回、最も好ましくは少なくともさらに10回続けて行うとよい。
次いで、本発明のタイヤ内面用離型剤を生タイヤの内面および/またはブラダーの外面に塗布し、付着させる。タイヤ内面用離型剤の塗布は、生タイヤの内面およびブラダーの外面のいずれでもよい。生タイヤの内面に塗布する塗布装置が既に設置されている場合は、新たに設備投資が不要で、タイヤ内面用離型剤を容易に生タイヤの内面に塗布できるので好ましい。一方、第2成形工程をなるべく多く繰り返すためには、ブラダー外面にタイヤ内面用離型剤を無駄なく確実に密着させるのがよいので、この場合は、タイヤ内面用離型剤をブラダー外面に塗布することが好ましい。
第1成型工程では、タイヤ内面用離型剤の塗布および乾燥後、ブラダーを加熱膨張させて生タイヤを金型に圧入し、加硫成型してタイヤが得られる。ブラダーの加熱膨張は、その内部を水蒸気等で高温加圧して行われる。その結果、生タイヤは金型に押し付けられて、最終的なタイヤ形状やトレッドパターン等となるように圧入され、加硫成型してタイヤが得られる。加硫時のブラダー表面温度(金型温度)は好ましくは160〜190℃、圧力は好ましくは12〜30kg/cm2であり、加硫時間は好ましくは10〜60分間である。
第2成型工程では、別に生タイヤを用意し、第1成型工程後のブラダーを用いる。第2成型工程では、ブラダーを加熱膨張させて別の生タイヤを金型に圧入し、加硫成型する。加硫成型の条件等は、上記で説明した第1成型工程の条件等と同様である。
また、第2成型工程では、別に用意した生タイヤの内面および/またはブラダーの外面にタイヤ内面用離型剤を塗布してもよい。その場合は、塗布のために要する手間や時間が必要になるが、離型性の向上が期待できる。第2成型工程でタイヤ内面用離型剤を塗布する場合は、第1成型工程が終了した時点では、離型剤の構成成分がブラダーの外面に効果的に密着しているので、第2成型工程で用いるタイヤ内面用離型剤の量を通常よりも少なく抑えることができる。
本発明のタイヤは、上記で説明したタイヤ内面用離型剤を生タイヤの内面に付着させ、加硫して得られるタイヤである。タイヤ内面用離型剤の構成成分がブラダーの外面に付着し、得られるタイヤの内面には残らないため、美観が向上し、ホイールとのスリップが低減する。
シリコーン系非イオン界面活性剤の曇点、動粘度および臨界ミセル形成濃度における表面張力(γCMC)、タイヤ内面用離型剤の物性等については、以下の測定方法で評価した。
試料1g、純水94gおよび2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール5gを混合し、均一化した液を調製した。ついで、この液を徐々に加温し、相分離して液が白濁した時点の液温を曇点(℃)とした。
ブルックフィールド型粘度計(東機産業社製、製品名TVB−10)を用いて、シリコーン系非イオン界面活性剤の粘度を25℃で測定し、その数値(単位:mPa・s)を25℃における密度(単位:g/mL)で除したものを動粘度(単位:cSt)とした。
25℃で、ウィルヘルミー法によりクルス社製Processor Tensiometer K100を用いて、CMCおよびγCMCを測定した。
(モデル実験)
乾燥後塗布量が15g/m2となるように、タイヤ内面用離型剤を2枚の未加硫タイヤ内面ゴムシート(4cm×7cm×0.2cm)にそれぞれ塗布した。そして、1枚の塗布した未加硫タイヤ内面ゴムシートにブラダーゴムシート(3cm×3cm×0.5cm)を重ねさらに500gの分銅を乗せ、10cm/分の速度で水平に引っ張り、その引っ張り荷重(N)を測定し、平滑性を評価した。
タイヤ内面用離型剤を塗布したもう1枚の未加硫タイヤ内面ゴムシートの塗布面に同じ大きさのブラダーゴムシートを重ね合わせ、卓上型テストプレス機にセットし、金型温度180℃、圧力20kg/cm2で20分間加圧し、加硫した。加硫済みのゴムシートを引き剥がし、剥離の状況や、離型剤の構成成分のブラダーゴムシートへの移行、転着の状況等を観察した。
次いで、加硫済みのゴムシートを引き剥がした後に得られる、ブラダーゴムシートの離型剤の構成成分が移行、転着した面と、タイヤ内面用離型剤が塗布されていない未加硫タイヤ内面ゴムシートとを重ね合わせ、上記と同様に、加硫や引き剥がしの操作および観察を繰り返した。
モデル実験において、未加硫タイヤ内面ゴムシートの代わりに実際の生タイヤ(215/60R16サイズ)の内面を用いることに変更し、ブラダーゴムシートの代わりに実際のブラダーの外面を用いることに変更する以外は、モデル実験と同様にして、タイヤを得た。その際、タイヤの内面からブラダーを引き剥がし時の剥離の状況や、離型剤の構成成分のブラダーへの移行、転着の状況等を観察した。
次いで、タイヤの内面から引き剥がした後に得られるブラダーと、タイヤ内面用離型剤が塗布されていない生タイヤを用いて、加硫や引き剥がしの操作および観察を繰り返して、タイヤを製造した。
(タイヤ内面用離型剤の調製)
水道水18.8部に対して、シリコーン系非イオン界面活性剤である3−(ポリオキシエチレン)プロピルヘプタメチルトリシロキサン5部およびアルキルシリコーン(信越化学社製KF412;動粘度500cSt)の水中油滴型乳化物(アルキルシリコーン含有率:50%)60部を均一に混合した。次いで、得られた混合物に対して、ジメチルポリシロキサンの水中油滴型乳化物(基油動粘度:約1万cSt、ジメチルポリシロキサンの含有率:40%)5部、軽微性炭酸カルシウム粉末(神島化学社製;平均粒子径10μm)10部、カルボキシメチルセルロースナトリウム(1%水溶液の25℃における粘度:10mPa・s)0.1部、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(日本触媒社製ソフタノール70)1.0部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1部を加え、ホモミキサーを用いて均一に溶解分散して、離型剤1を調製した。
なお、3−(ポリオキシエチレン)プロピルヘプタメチルトリシロキサンの物性は、曇点が45℃であり、25℃において、動粘度が40cSt、γCMCが21mN/mであった。
上記で説明した〔タイヤ内面用離型剤の物性〕にしたがって物性を評価した。以下の実施例および比較例の物性評価も同様である。
離型剤1を用いた場合の引っ張り荷重が1.5Nであり、十分な平滑性が得られていることを確認した。
加硫済みのゴムシートを引き剥がすと容易に剥離した。また、剥離した加硫済みゴムシートには、離型剤の構成成分がほとんど残存しておらず、離型剤の構成成分のほとんど全部がブラダーゴムシート面に移行し、転着したことを確認した。
離型剤1を使用して生タイヤからタイヤを製造した場合も、上記と同じ結果が得られた。すなわち、タイヤ内面用離型剤が塗布されていない生タイヤを使用して、加硫や引き剥がしの操作を4回繰り返し、4本のタイヤを続けて製造できることを確認した。しかし、加硫や引き剥がしの操作の5回目を行ったが、引き剥がしができず、5回目のタイヤは製造できなかった。
(タイヤ内面用離型剤の調製)
実施例1で、アルキルシリコーンの水中油滴型乳化物60部およびジメチルポリシロキサンの水中油滴型乳化物5部をジメチルポリシロキサンの水中油滴型乳化物65部に変更する以外は、実施例1と同様にして、離型剤2を得た。
離型剤2を用いた場合の引っ張り荷重が2.0Nであり、十分な平滑性が得られていることを確認した。
加硫済みのゴムシートを引き剥がすと容易に剥離した。また、剥離した加硫済みゴムシートには、離型剤の構成成分がほとんど残存しておらず、離型剤の構成成分のほとんど全部がブラダーゴムシート面に移行し、転着したことを確認した。
離型剤2を使用して生タイヤからタイヤを製造した場合も、上記と同じ結果が得られた。すなわち、タイヤ内面用離型剤が塗布されていない生タイヤを使用して、加硫や引き剥がしの操作を4回繰り返し、4本のタイヤを続けて製造できることを確認した。しかし、加硫や引き剥がしの操作の5回目を行ったが、引き剥がしができず、5回目のタイヤは製造できなかった。
(タイヤ内面用離型剤の調製)
実施例1で、軽微性炭酸カルシウム粉末10部をマスコバイトマイカ粉末(ヤマグチマイカ社製;平均粒子径40μm)2部およびタルク(松村産業社製;クラウンタルク局方PP;平均粒子径11μm)8部に変更する以外は、実施例1と同様にして、離型剤3を得た。
離型剤3を用いた場合の引っ張り荷重が1.4Nであり、十分な平滑性が得られていることを確認した。
加硫済みのゴムシートを引き剥がすと容易に剥離した。また、剥離した加硫済みゴムシートには、離型剤の構成成分がほとんど残存しておらず、離型剤の構成成分のほとんど全部がブラダーゴムシート面に移行し、転着したことを確認した。
離型剤3を使用して生タイヤからタイヤを製造した場合も、上記と同じ結果が得られた。すなわち、タイヤ内面用離型剤が塗布されていない生タイヤを使用して、加硫や引き剥がしの操作を2回繰り返し、2本のタイヤを続けて製造できることを確認した。しかし、加硫や引き剥がしの操作の3回目を行ったが、引き剥がしができず、3回目のタイヤは製造できなかった。
実施例1で、タイヤ内面用離型剤を未加硫タイヤ内面ゴムシートではなくブラダーゴムシートに塗布する以外は、タイヤ内面用離型剤の評価(モデル実験)を同様に実施したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
また、実施例1で、タイヤ内面用離型剤を生タイヤの内面ではなくブラダーの外面に塗布する以外は、タイヤ内面用離型剤の評価(タイヤ製造実験)を同様に評価したところ、実施例1と同様の結果が得られた。
実施例4で、離型剤1を離型剤2に変更する以外は、タイヤ内面用離型剤の評価(モデル実験)および(タイヤ製造実験)を同様に実施したところ、実施例2と同様の結果が得られた。
実施例4で、離型剤1を離型剤3に変更する以外は、タイヤ内面用離型剤の評価(モデル実験)および(タイヤ製造実験)を同様に実施したところ、実施例3と同様の結果が得られた。
(タイヤ内面用離型剤の調製)
実施例1で、シリコーン系非イオン界面活性剤を全量ジメチルポリシロキサン(動粘度10000cSt)の水中油滴型乳化物に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較離型剤1を得た。
比較離型剤1を用いた場合の引っ張り荷重が1.5Nであり、十分な平滑性が得られていることを確認した。
加硫済みのゴムシートを引き剥がすと容易に剥離した。しかし、離型剤の構成成分が、剥離した加硫済みゴムシートからブラダーゴムシート面に、十分には移行せず、転着していなかった。
比較離型剤1を使用して生タイヤからタイヤを製造した場合は、最初の1回は通常のタイヤが得られた。しかし、タイヤの内面から引き剥がした後に得られるブラダーと、タイヤ内面用離型剤が塗布されていない生タイヤとを用いて加硫したが、タイヤとブラダーを引き剥がすことができず、当然ではあるが、加硫や引き剥がしの操作をこれ以上繰り返すことができなかった。
(タイヤ内面用離型剤の調製)
水道水78.5部に対して、ジメチルポリシロキサンの水中油滴型乳化物(基油粘度:約1万mPa・s、ジメチルポリシロキサンの含有率:40%)6部、マスコバイトマイカ(ヤマグチマイカ社製;平均粒子径40μm)4部、タルク(松村産業社製;クラウンタルク局方PP;平均粒子径11μm)10部、カルボキシメチルセルロースナトリウム(1%水溶液の粘度:10mPa・s)0.5部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を加え、ホモミキサーを用いて均一に溶解分散して、比較離型剤2を調製した。
比較例1と同じ結果であった。
実施例1〜3および比較例1および2の結果を表1にまとめて示す。
*2 ジメチルシリコーン含有率40%
*3 平滑性の評価
*4 タイヤ内面用離型剤を塗布した未加硫タイヤ内面ゴムシートの塗布面にブラダーゴムシートを重ね合わせ加硫した後、加硫済みのゴムシートを引き剥がした。その時に得られるブラダーゴムシートと、タイヤ内面用離型剤が塗布されていない未加硫タイヤ内面ゴムシートとを使用して、加硫や引き剥がしの操作を繰り返した際の繰り返し回数(つまり、第2成型工程に相当する加硫や引き剥がしの操作を行った回数)
*5 上記*4において、未加硫タイヤ内面ゴムシートの代わりに実際の生タイヤ(215/60R16サイズ)の内面を用い、ブラダーゴムシートの代わりに実際のブラダーの外面を用いる以外は、*4と同様にして加硫を行い、タイヤを得た。その時に得られるブラダーと、タイヤ内面用離型剤が塗布されていない生タイヤを用いて、加硫や引き剥がしの操作を繰り返してタイヤの製造を行った際の繰り返し回数(つまり、第2成型工程でタイヤを製造した回数)
Claims (9)
- アルキルシリコーンと、曇点20〜60℃且つ動粘度10〜60cSt(25℃)であるシリコーン系非イオン界面活性剤と、粉体からなる無機成分と、水とを含む、タイヤ内面用離型剤。
- 前記シリコーン系非イオン界面活性剤の重量割合が、前記アルキルシリコーン、シリコーン系非イオン界面活性剤および無機成分の合計量に対して0.01〜20重量%である、請求項1に記載のタイヤ内面用離型剤。
- 無機成分の重量割合が、前記アルキルシリコーン、シリコーン系非イオン界面活性剤および無機成分の合計量に対して2〜40重量%である、請求項1または2に記載のタイヤ内面用離型剤。
- 前記シリコーン系非イオン界面活性剤の臨界ミセル形成濃度(CMC)が1000mg/L以下(25℃)であり、前記臨界ミセル形成濃度における表面張力(γCMC)が15〜40mN/m(25℃)である、請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ内面用離型剤。
- 前記無機成分が炭酸カルシウムである、請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ内面用離型剤。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ内面用離型剤を、生タイヤの内面および/またはブラダーの外面に塗布し、前記ブラダーを加熱膨張させて前記生タイヤを金型に圧入し、加硫成型する第1成型工程と、
前記ブラダーを加熱膨張させて別の生タイヤを金型に圧入し、加硫成型する第2成型工程と、
を含むタイヤの製造方法。 - 前記第2成型工程を少なくともさらに3回続けて行う、請求項6に記載のタイヤの製造方法。
- 前記第2成型工程を、タイヤ内面用離型剤を別の生タイヤの内面および前記ブラダーの外面のいずれにも実質的に塗布することなく行う、請求項6または7に記載のタイヤの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載されるタイヤ内面用離型剤を生タイヤの内面に付着させ、加硫してなる、タイヤ。
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