JP6581411B2 - タイヤ内面用離型剤及びその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、タイヤ内面用離型剤に関する。より詳しくは、タイヤ加硫成型時に生タイヤとブラダーとの間に介在して潤滑、離型作用を発揮するタイヤ内面用離型剤に関する。
タイヤの製造工程において、未加硫生タイヤの加硫成型は、通常、ブラダーと呼ばれるゴム製袋を生タイヤ内側で温風、熱水又は蒸気で膨張させることで、金型内に未加硫生タイヤを圧入成型することによって行われる。
通常、この工程を円滑に行うために生タイヤのインナーライナー面(以下、生タイヤ内面)にあらかじめ離型剤(タイヤ内面用離型剤)が塗布される。タイヤ内面用離型剤には主に、生タイヤ内面とブラダーとの間に良好な潤滑性を与える性能(平滑性)、ブラダーと生タイヤ内面に入り込んだ空気を逃し両者を密着させる性能(空気透過性)が必要であり、また、加硫終了後にブラダーを収縮させるときにはブラダーと生タイヤ内面とが円滑にはがれる性能(離型性)が求められる。
そのため、離型性を付与するシリコーン類の水中油滴型乳化物と、平滑性及び空気透過性を付与する固体粒子懸濁液との混合組成物を、タイヤ内面用離型剤として塗布することが広く行われてきた。特に固体粒子の組成としては天然鉱物や粘土に由来する無機粉体が好適とされてきた。
特許文献1では、シリコーンの水性エマルジョンと一次平均粒子径が55〜95μmのマイカを含む無機粉体との組成物をタイヤ内面用離型剤として使用することが示されている。
特許文献2では、ジオルガノポリシロキサン乳化物にマイカ粉末又はタルク粉末と、融点が200℃以下である粉体及び水からなるタイヤ成型用離型剤組成物が示されている。
特許文献3では、シリコーンゴムの離型フィルムを形成し、該離型フィルム上にタルク粉末及びマイカ粉末の少なくとも一方を含有する離型剤を塗布し、これら離型フィルムと離型剤を備えた生タイヤをモールド内に投入し、タイヤ空洞内でブラダーを膨らませつつ加硫を行う方法が示されている。
これらの方法では、従来のタイヤでは問題は生じなかったが、近年の高性能タイヤ製造時には工程通過性が低下する傾向があった。
特開2005−193448号公報 特開平08−039575号公報 特開2005−246627号公報
高性能タイヤ製造時には生産効率が低下する原因を調査した結果、タイヤ内面に使用されているゴム中のブチルゴム組成比率が高くなってきたことにより、タイヤ内面とブラダーとの密着傾向が強くなってきたことにより、離型性が不足していることが判明した。また、タイヤの形状が、その高性能化に伴い、従来よりも踏面の幅がより広くリムから踏面までの高さが低いロープロファイルタイヤが主流となってきたため、平滑性が不足していることが判明した。
本発明が解決しようとする課題は、従来よりも優れた平滑性、離型性をもつタイヤ内面用離型剤を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ガラスビーズを含むタイヤ内面用離型剤であれば、従来の問題が一挙に解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明のタイヤ内面用離型剤は、ガラスビーズを含平均アスペクト比が10〜1200である平板状粉体をさらに含む、タイヤ内面用離型剤である。
前記ガラスビーズの平均粒子径が1〜200μmであると好ましい。
前記平板状粉体が、マイカ及びタルクから選ばれる少なくとも1種であると好ましい。
シリコーン成分、界面活性剤及び水をさらに含むと好ましい。
本発明のタイヤの製造方法は、上記タイヤ内面用離型剤を生タイヤとブラダー間に付着
させ、加硫成型してなる。
本発明のタイヤ内面用離型剤は、従来よりも優れた平滑性、離型性を有するため、本発明のタイヤ内面用離型剤を使用するタイヤの製造方法は、生産効率に優れる。
本発明のタイヤ内面用離型剤に配合される各成分について説明し、タイヤ内面用離型剤について詳述する。
〔ガラスビーズ〕
本発明のタイヤ内面用離型剤は、ガラスビーズを必須に含有する。
ガラスビーズがタイヤ内面用離型剤として優れる理由としては、適度な硬度を有すること及び粒子の形状が丸みを帯びているため、コロ効果が発揮され易いこと、と考えている。
ガラスビーズの平均一次粒子径については、特に限定はないが、1〜200μmが好ましく、5〜150μmがさらに好まく、25〜50μmが特に好ましい。ガラスビーズの平均一次粒子径が1μm未満の場合は、平滑性、離型性が得られないことがある。逆に200μmより大きい場合には、スプレーガンなどを用いてタイヤ内面用離型剤を付着させる工程で、スプレーガンノズルが閉塞することがある。
ガラスビーズとはガラス製球状粒子群の総称である。ガラスビーズとしては、特に限定はなく、材質としてはソーダ石灰ガラス、低アルカリガラス、硼ケイ酸ナトリウムガラス、硼ケイ酸ガラス、アルミノ硼酸ガラス等が挙げられる。また、中心部分が空洞になっている中空ビーズタイプを使用してもよい。これらのガラスビーズは工業用のみではなく、装飾用、道路標識用等、どのタイプでもよく、二種類以上のものを併用してもよい。
ソーダ石灰ガラスビーズとしては、GB301S、GB731、GB210、EGB210A、EGB210B、EGB210C(以上、ポッターズバロティーニ(株)製)、UB−01L、UB−02L、UB−03L、UB−06L、UBS−0020L、UBS−0030L等が挙げられる。
低アルカリガラスビーズとしては、EGB731、EGB210、EMB−20、EMB−10(以上、ポッターズバロティーニ(株)製)が挙げられる。
ガラスビーズの硬度は、モース硬度が7以下であるものが好ましい。
〔平板状粉体〕
本発明のタイヤ内面用離型剤は、上記ガラスビーズに加え、平板状粉体を含むと、平滑性に対して優れた相乗効果を発揮するため、好ましい。ガラスビーズと平板状粉体とが併用されて平滑性に対して優れた相乗効果を発揮する理由としては、タイヤ内面用離型剤は、タイヤ内面(ゴム)と、ブラダー(ゴム)との界面の離型性を発揮するものであるが、両表面に平板状粉体が吸着し、平板状粉体間に存在するガラスビーズがその「コロ効果」によって平板状粉体間に生じる摺動性摩擦を著しく軽減するためである。さらに平板状粉体がガラスビーズの「コロ効果」によってその位置を分散させるため、生タイヤとブラダー双方が接触する機会が著しく減り、その結果離型性が向上する。
平板状粉体とは、粒子形状が板状である粉体のことであり、アスペクト比とはその粒子の最も長い面の長さを、最も短い面の長さで除した数値である。本発明では過半数の粒子のアスペクト比が10以上である粉体を平板状粉体と定義する。
本発明でいうアスペクト比の計測は、電子顕微鏡やマイクロスコープを用いて行う。粒子をこれらで観察し、無作為に100個以上の粒子画像を抽出し、それぞれの長さを画像に定規をあてることで求め、前述の計算によってアスペクト比を求める。これらの値を平均したものをその粉体の平均アスペクト比とする。
上記平板状粉体としては特に限定はなく、無機粉体、有機粉体、またはそれらの複合粉体でもよい。たとえば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト;ベントナイト;ジ−バーミキュライト、トリ−バーミキュライト等のバーミキュライト;ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト、クリソタイル等のカオリン;タルク、パイロフィライト、マイカ(マスコバイト、セリサイト)、マーガライト、クリントナイト、白雲母、黒雲母、金雲母、合成雲母、フッ素雲母、パラゴライト、フロゴパイト、レピドライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等のフィロ珪酸塩;アンチゴライト等のジャモン石;ドンパサイト、スドウ石、クッカイト、クリノクロア、シャモサイト、クロライト、ナンタイト等の緑泥石等;セピオライト、アタパルジャイト、アタパルガスクレイ、パリゴルスカイト等のピオライト−パリゴスカイト;(重質)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物、ベンガラ、珪藻土、珪酸アルミニウム、カーボンブラック、土状黒鉛、鱗状黒鉛などのグラファイト類、金属石鹸、セルロース、アルキルリン酸塩、N−アシルリジン、ポリエチレン粉末、ポリプロピレン粉末などの樹脂粉末、ホタテガイなどの貝殻粉砕物、おがくず、火山灰、フライアッシュ、米粉、そば粉、でんぷん、片栗粉、もみ殻、ワラビ粉等を挙げることができる。
平板状粉体の平均アスペクト比は10〜1200が好ましく、より好ましくは50〜150、最も好ましくは70〜120である。平均アスペクト比が10未満では、ガラスビーズとの相乗効果が得られないことがある。逆に、平均アスペクト比が1200超では粒子の強度が得られず、粒子の破断を生じることがある。
平板状粉体の平均一次粒子径については、特に限定はないが、0.1〜50μmが好ましく、0.1〜40μmがさらに好ましい。平板状粉体の平均一次粒子径が0.1μm未満の場合は、充分な離型性が得られないだけでなく、タイヤ内面用離型剤を付着させる工程で周囲に粉塵が飛散することがある。逆に40μmより大きい場合には、スプレーガンなどを用いてタイヤ内面用離型剤を付着させる工程で、スプレーガンノズルが閉塞することがある。
平板状粉体の色相・白色度については特に限定はないが、白色度が80以上であるものを使用すると、タイヤに付着させたときの付着状態を容易に観察することができ好ましい。
また、土状黒鉛などの黒色の粉体を使用すると、タイヤ美観が向上することがある。
平板状粉体に天然無機鉱物を使用し、さらにそれが他鉱物などの不純物を含有する場合は、その純度が80重量%以上のものが好ましい。純度が低すぎると、ブラダーの寿命が悪化することがある。
〔シリコーン成分〕
本発明のタイヤ内面用離型剤は、シリコーン成分を含むと、離型性や潤滑性が向上する。シリコーンは、オルガノポリシロキサン類の総称であって、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンレジンを含む。シリコーン成分はこれらのシリコーンを含む。
オルガノポリシロキサン類としては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルイソプロピルポリシロキサン、メチルドデシルポリシロキサン等のジアルキルポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等のアルキルフェニルポリシロキサン;メチル(フェニルエチル)ポリシロキサン、メチル(フェニルプロピル)ポリシロキサン等のアルキルアラルキルポリシロキサン;3,3,3−トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン等を挙げることができる。これらのオルガノポリシロキサン類は、1種又は2種以上を併用してもよい。
シリコーン成分としては、離型性の点からは、分子構造が直鎖状で、重合度が低く常温で流動性を有するシリコ−ンオイル等が好ましい。その粘度については、特に限定はないが、離型性と製品安定性のバランスの点で、25℃における粘度が、好ましくは100〜50万cSt、さらに好ましくは300〜10万cStである。
シリコーン成分は、タイヤ内面用離型剤の製造の際に、シリコーンの乳化物を使用してもよい。
〔界面活性剤〕
界面活性剤はガラスビーズ及び/又は平板状粉体を水中に分散させ、タイヤ内面用離型剤の分散安定性を高めるだけでなく、タイヤ内面用離型剤をスプレー装置などにより生タイヤに塗布する際に、液はじきを防止する特性(濡れ性)を与える。その配合量を調整することによって、濡れ性を調節することができる。
界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれた少なくとも1種であればよく、好ましくは非イオン型界面活性剤及び/又はアニオン型界面活性剤である。
非イオン性界面活性剤としては、特に限定はないが、たとえば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;オキシエチレンーオキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。本発明においては、焼成カオリンに対する水への分散効果の面で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル(アルキルは1〜3級のいずれでもよい)、などポリオキシアルキレン系が望ましい。非イオン性界面活性剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
アニオン性界面活性剤としては、特に限定はないが、たとえば、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩等が挙げられる。
本発明においては、タイヤ内面用離型剤を付着させる効果の面から、カルボン酸型アニオン性界面活性剤、スルホン酸型アニオン性界面活性剤等が適しており、カルボン酸型アニオン性界面活性剤では、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩等が特に適している。スルホン酸型アニオン性界面活性剤では、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩等が特に適している。これらのアニオン性界面活性剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
カチオン性界面活性剤としては、たとえば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩が挙げられる。
両性界面活性剤としては、たとえば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン、N−ステアリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
分散安定性や濡れ性を高めるために、界面活性剤の2種以上を併用してもよく、たとえば、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤の併用系を挙げることができる。
タイヤ内面用離型剤が非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を含む場合、それぞれの重量割合については、特に限定はないが、泡立ちへの影響、無機成分の分散安定性上の理由から、非イオン性界面活性剤/アニオン性界面活性剤(重量比)が75/25〜99/1であると好ましく、85/15〜98/2であるとさらに好ましく、90/10〜95/5であると特に好ましい。
これら使用する界面活性剤のHLB値には限定はないが、タイヤ内面用離型剤液を付着させる際の濡れ性の観点から、6〜16が好ましい。HLB値が小さすぎたり大きすぎたりすると、タイヤ内面用離型剤液を均一に塗布できないことがある。HLB値とは、界面活性剤の水と油との親和性の程度を表す1〜20の数値で、数値が小さいほど新油性が高く、数値が大きいほど親水性が高い。
〔水〕
水を加えることによって、タイヤ内面用離型剤に含まれるガラスビーズ及び/又は平板状粒子を均一に分散させ、タイヤ内面用離型剤を生タイヤ内面に均一に付着させることができる。水は、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水、地下水、井戸水、雨水等のいずれでもよい。また、タイヤ内面用離型剤を付着しやすくする目的で、エタノール、グリセリンなどのアルコール類を加えてもよい。
〔タイヤ内面用離型剤〕
本発明のタイヤ内面用離型剤に対するガラスビーズの重量割合は、好ましくは5〜55重量%、より好ましくは10〜50重量%、さらに好ましくは15〜45重量%、特に好ましくは20〜40重量%である。5重量%未満の場合は、十分な平滑性が得られないことがある。一方、50重量%超では、成型したタイヤ内面からガラスビーズが脱落し、タイヤ保存箇所周辺を汚すことがある。
本発明のタイヤ内面用離型剤が平板状粉体を含む場合には、平板状粉体の重量比率は、平板状粒子とガラスビーズの合計量に対して25〜90重量%が好ましく、35〜80重量%がより好ましく、40〜70重量%がさらに好ましく、45〜65重量%が特に好ましい。25重量%未満では、平滑性が得られないことがあり、90重量%超では、成型したタイヤ内面から平板状粉体が脱落し、タイヤ保存箇所周辺を汚すことがある。
本発明のタイヤ内面用離型剤がシリコーン成分を含む場合には、タイヤ内面用離型剤に対するシリコーン成分の重量割合は、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%、さらに好ましくは8〜15重量%である。1重量%未満の場合は、離型剤が悪化することがある。また、シリコーン成分が多すぎる場合は、平滑性が悪化することがある。
本発明のタイヤ内面用離型剤が界面活性剤を含む場合には、タイヤ内面用離型剤に対する界面活性剤の重量割合は、好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは1〜15重量%、特に好ましくは2〜10重量%である。1重量%未満の場合は、塗布時生タイヤ内面での液はじきの発生、タイヤ内面用離型剤の保存安定性が悪化することがある。20重量%超の場合には、平滑性の悪化やタイヤ内面用離型剤の泡立ちによる塗布不良が発生することがある。
それ自体の平滑性に優れるという点と、結晶性シリカなど高硬度の不純物の含有率が低いという観点から、上記平板状粉体がマイカ及び/又はタルクを含むと好ましい。
本発明のタイヤ内面用離型剤は、上記で説明した成分以外に必要に応じて、増粘剤、乳化安定剤、たれどめ剤、消泡剤、防腐剤、着色剤、防錆剤、酸化防止剤、キレート剤・pH調整剤などのビルダー類、香料等の添加剤を含有していてもよい。
本発明のタイヤ内面用離型剤の製造方法については、特に限定はない。
本発明のタイヤ内面用離型剤が、平板状粉体、シリコーン成分、界面活性剤及び水をさらに含む場合には、ガラスビーズ、平板状粉体、シリコーン成分、界面活性剤及び水混合する工程を含むものであれば、混合順序や使用する混合設備等について特に限定はない。
ただし、水を除く成分をあらかじめナウターミキサー、V型ミキサー、コニカルブレンダー、リボンミキサー、ハイスピードミキサーなどの混合機で均一な状態に混合し、粉体状にしておくと貯蔵安定性や保存効率の点で好ましい。また、このときの粉体をフェザーミル、ハンマーミルなどで粉砕したあとふるいかけを行い一定の粒度に調整しておくと、粉体の計量作業などの取り扱いが行いやすくなる。好ましい粒度は4.5メッシュを全通し、なおかつ、10メッシュ篩上残り分が25〜50%の場合である。ここでいうメッシュとは、1インチの長さの中にある目開きの数のことを言う。
また、水や水溶性高分子化合物などのバインダー成分を添加したうえで皿形造粒機、押出し造粒機などの造粒機を使用して粒状または顆粒状にしておくと、タイヤ内面用離型剤液を作成する際の粉塵飛散が少なくなり作業環境にとって好ましい。
本発明のタイヤ内面用離型剤の粉体・顆粒品を作製するときの水分量は、粉体全体に対して2〜20重量%が好ましく、5〜15重量%がさらに好ましい。水分量が少なすぎると、取り扱い時の粉塵飛散が多くなることがある。逆に水分量が多すぎると、保管中に粉体が固まりを生じ、水への溶解性が悪化することがある。
本発明のタイヤ内面用離型剤のpHについては特に制限はないが、界面活性剤を含ませる場合には、1重量%濃度のタイヤ内面用離型剤水分散液のpHが7.0以上10.5以下であることが好ましい。pHが7.0未満の場合、界面活性剤の効果が十分得られずタイヤ内面用離型剤を付着させることが困難になる場合がある。逆に10.5超の場合には取り扱い時に皮膚に付着した場合、皮膚を刺激することがある。
本発明のタイヤ内面用離型剤を液状にした時の粘度については特に限定はないが、付着工程を円滑に行うためには25℃における粘度が10〜10,000mPa・sであることが好ましい。塗装性・保管安定性の面からは200〜2,000mPa・sであるとさらに好ましい。
〔タイヤ〕
本発明のタイヤは、上記で説明したタイヤ内面用離型剤を生タイヤ内面またはブラダーに付着させ、加硫して得られる。
本発明のタイヤは、たとえば、以下に示す付着工程と加硫工程とを経て製造することができる。
〔付着工程〕
付着工程では、まず、未加硫のゴムを主体にビードワイヤーやタイヤコード等の必要な部材を組み合わせ接着して、生タイヤと呼ばれるタイヤ原形を準備する。
次いで、本発明のタイヤ内面用離型剤をこの生タイヤ内面に付着させる。タイヤ内面用離型剤の付着方法は、エアガンやエアレスガンによる吹き付けが一般的であるが、刷毛塗りや遠心塗装機等を用いてもよい。タイヤ内面用離型剤の付着量は、タイヤ製品の用途やサイズなどにより様々であるが、乾燥後に10〜50g/mであると好ましい。タイヤ内面用離型剤の付着量が少ない場合は十分な離型剤性能が得られない。一方、付着量が多すぎる場合は離型剤成分が多く脱落し周辺を汚すことがある。その後、内面に付着したタイヤ内面用離型剤が十分乾燥するまでの間、室温にて数十分から長い場合は数日間、生タイヤは放置される。
〔加硫工程〕
上記付着工程で得られた乾燥した生タイヤに対して、次のように加硫が行われる。まず、生タイヤを金属製の金型内に設置し、その内側からブラダーと呼ばれるゴム製のバッグを水蒸気等で高温加圧して、生タイヤを金型に押し付けて、最終的なタイヤ形状やトレッドパターン等となるように加硫する。加硫時のブラダー表面温度(金型温度)は好ましくは160〜190℃、圧力は好ましくは12〜30kg/cmであり、加硫時間は好ましくは10〜60分間である。
以下、本発明の実施例及び比較例について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に拘束されることはない。以下で、「部」とあるのは「重量部」を意味する。
なお、実施例6を参考例6とし、実施例12〜14を参考例12〜14とする。
評価方法は次の通り。
(ゴム試片を用いた評価)
1.平滑性
4cm×7cm×0.5cmの未加硫ゴムシート上に、乾燥後重量が15g/平方メートルとなるように、この上面のみにタイヤ内面用離型剤を噴霧機で付着させた。次いで、この評価用未加硫ゴムに、4cm×4cm×0.5cmのブラダーゴムシートを重ね合わせ、さらに500gの分銅を垂直荷重として乗せ、ブラダーゴムシートを100mm/分の速度で水平に引っ張り、この時の引っ張り荷重を平滑性とした。以下の評価基準で判断し、◎及び○を合格とした。
◎:2.5N以下
○:3.2N以下
×:3.2N超
2.離型性
4cm×7cm×0.5cmの未加硫ゴムシート上に、乾燥後重量が15g/平方メートルとなるように、この上面のみにタイヤ内面用離型剤を噴霧機で付着させた。次いで、この評価用未加硫ゴムに、4cm×7cm×0.5cmのブラダーゴムシートを重ね合わせ、卓上型テストプレス機にセットし、温度180℃、圧力20kg/平方センチメートルで20分間加圧して加硫し、加硫済み評価ゴムを得た。加硫終了後、離型性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
加硫済み評価ゴムとブラダーゴムシートを90度に引き剥がしその際に必要な剥離荷重を引っ張り試験機で測定して、離型性を評価した。離型性の評価基準は次のとおりであり、◎及び○を合格とした。なお、加硫終了時に既に剥離している場合は、引っ張り試験はできないが、離型性は言うまでもなく優れているから、◎と評価する。
◎:0.5N未満の引っ張り荷重で剥離。
○:0.5N以上1.5N以下の引っ張り荷重で剥離。
×:1.5N以上の引っ張り荷重で剥離。
〔実施例1〕
(タイヤ内面用離型剤の調製及び評価)
容量200リットルのリボンブレンダーに、アスペクト比80、平均粒子径8μmのセリサイトマイカを25部、平均粒子径5μmの硼ケイ酸ガラス製ガラスビーズ15部、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.1部を加え、30分間混合した。その後、混合物を容量200リットルのナウターミキサーに移し、混合を行いながら、酸化エチレン付加モル数が平均7モルである、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを1.8部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.2部、消泡剤としてKM−72(信越化学社製)を1部、防腐剤としてファインサイドC−9500を0.9部添加し、30分間混合を続けた後、ジメチルポリシロキサン乳化物KM−797(信越化学社製)10部を、混合しながら徐々に添加し、さらに90分間混合を行い、タイヤ内面用離型剤混合固形物を得た。
得られたタイヤ内面用離型剤混合固形物を、目開き4メッシュのメッシュを取り付けたスクレーパー付き振動ふるい機にかけ、含まれていた塊状物をすべて粗砕し、タイヤ内面用離型剤粉体を得た。得られたタイヤ内面用離型剤粉体を、目開き10メッシュ、16メッシュ篩にそれぞれかけ粒度を測定したところ、10メッシュ篩上残り分が40%、10メッシュ篩通過、16メッシュ篩上残り分が21%、16メッシュ篩通過分が39%であり、取り扱い性良好であった。また、かさ比重を測定したところ、0.65g/cm3であり、保存場所に対する貯蔵効率にも優れていた。
得られたタイヤ内面用離型剤粉体54部を、200リットルのステンレス製寸胴に入れ、水道水46部をこれに添加し、高速せん断装置であるホモディスパー(1000rpm)で30分間溶解分散させ、タイヤ内面用離型剤液(離型剤a)を得た。得られた離型剤aの25℃における粘度は1950mPa・sであった。
この離型剤aについて、以下に示すゴム試片を用いた平滑性及び離型性を評価した。評価の結果は表1に示すとおり、平滑性が2.25N、離型性は◎であり、いずれも良好であった。
〔実施例2〜5〕
〔実施例1〕で用いた平均粒子径5μmガラスビーズを、それぞれ35μm、50μm、100μm、150μmに変更する以外はすべて〔実施例1〕と同様に、離型剤b〜eを得た。評価の結果は表1に示すとおり平滑性、離型性ともに良好であった。
〔実施例6〕
〔実施例1〕で用いた平均粒子径8μmのセリサイトマイカを平均粒子径20μmのマスコバイトマイカに変更する以外はすべて〔実施例1〕と同様に、離型剤fを得た。評価の結果は表1に示すとおり平滑性、離型性ともに良好であった。
〔実施例7〜11〕
〔実施例1〕で用いた平均粒子径5μmガラスビーズ15部を、10、20、25、30、35部に、平均粒子径8μmのセリサイトマイカを30、20、15、10、5部に変更する以外はすべて〔実施例1〕と同様に、離型剤g〜kを得た。評価の結果は表1及び表2に示すとおり平滑性、離型性ともに良好であった。
〔実施例12〕
(タイヤ内面用離型剤の調製及び評価)
容量200リットルのリボンブレンダーに、平均粒子径5μmの低アルカリガラス製ガラスビーズ40部、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.1部を加え、30分間混合した。その後、混合物を容量200リットルのナウターミキサーに移し、混合を行いながら、酸化エチレン付加モル数が平均7モルである、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを1.8部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.2部、消泡剤としてKM−72(信越化学社製)を1部、防腐剤としてファインサイドC−9500を0.9部添加し、30分間混合を続けた後、ジメチルポリシロキサン乳化物KM−797を10部、混合しながら徐々に添加し、さらに90分間混合を行い、タイヤ内面用離型剤混合固形物を得た。
得られたタイヤ内面用離型剤混合固形物を、目開き4メッシュのメッシュを取り付けたスクレーパー付き振動ふるい機にかけ、含まれていた塊状物をすべて粗砕し、タイヤ内面用離型剤粉体を得た。
得られたタイヤ内面用離型剤粉体54部を、200リットルのステンレス製寸胴に入れ、水道水46部をこれに添加し、高速せん断装置であるホモディスパー(1000rpm)で30分間溶解分散させ、タイヤ内面用離型剤液(離型剤l)を得た。得られた離型剤lの25℃における粘度は1825mPa・sであった。
この離型剤lについて、以下に示すゴム試片を用いた平滑性及びを評価した。評価の結果は表3に示すとおり、離型性は比較的良好で、平滑性は○であった。
〔実施例13及び14〕
〔実施例12〕で用いた平均粒子径5μmガラスビーズを、それぞれ50μm、150μmに変更する以外はすべて〔実施例12〕と同様に、離型剤m及びnを得た。評価の結果は表2に示すとおり、離型性は比較的良好、平滑性は○であった。
〔比較例1及び2〕
〔実施例12〕で用いた平均粒子径5μmガラスビーズを、それぞれ平均粒子径8μmのセリサイトマイカ、平均粒子径20μmのマスコバイトマイカに変更する以外はすべて〔実施例12〕と同様に、離型剤o及びpを得た。評価の結果は表3に示すとおり、平滑性、離型性とも不良であった。
Figure 0006581411
Figure 0006581411
Figure 0006581411
表1及び2から分かるように、実施例1〜14では、タイヤ内面離型剤にガラスビーズが含まれているために、平滑性及び離型性に優れる。また、実施例1〜11では、平板状粉体をさらに含むため、平滑性及び離型性がさらに良化していることが分かる。
一方、表3に示す比較例1及び2では、ガラスビーズを含まないために、本願の課題である平滑性及び離型性が劣っていることが分かる。

Claims (5)

  1. ガラスビーズを含平均アスペクト比が10〜1200である平板状粉体をさらに含む、タイヤ内面用離型剤。
  2. 前記ガラスビーズの平均粒子径が1〜200μmである、請求項1に記載のタイヤ内面用離型剤。
  3. 前記平板状粉体が、マイカ及びタルクから選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のタイヤ内面用離型剤。
  4. シリコーン成分、界面活性剤及び水をさらに含む、請求項1〜のいずれかに記載のタイヤ内面用離型剤。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のタイヤ内面用離型剤を生タイヤとブラダー間に付着させ、加硫成型してなる、タイヤの製造方法。
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