JP6920926B2 - タイヤ内面用離型剤、タイヤ内面用離型剤水分散液、タイヤの製造方法、およびタイヤ - Google Patents

タイヤ内面用離型剤、タイヤ内面用離型剤水分散液、タイヤの製造方法、およびタイヤ Download PDF

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Description

本発明は、タイヤ内面用離型剤、タイヤ内面用離型剤水分散液、タイヤの製造方法、およびタイヤに関する。
ゴム用離型剤の一種として、タイヤ内面用離型剤がある。例えば、特許文献1には、粉体からなる無機成分(無機粉末)と、シリコーン成分と、界面活性剤と、多価アルコールと、水とを含むタイヤ内面用離型剤が記載されている。
特開2012−228783号公報
タイヤ内面用離型剤は、例えば、つぎのように用いられる。すなわち、タイヤの製造工程において、未加硫生タイヤの加硫成型では、ブラダーと呼ばれるゴム製袋を未加硫生タイヤの内側に配置し、前記ブラダーを温風、熱水または蒸気で膨張させることで、金型内部に前記未加硫生タイヤを押し当て、圧入成型とともに加硫が行われる。この工程を円滑に行うため、生タイヤのインナーライナー面(内面)に、タイヤ内面用離型剤が予めスプレー塗布される。タイヤ内面用離型剤は、専用タンク内で事前に溶媒に溶解され、数日間保管される。数日後、保管されたタイヤ内面用離型剤は、溶媒に再分散され使用される。そのため、タイヤ内面用離型剤では、数日の保管の間、無機粉末の沈降を抑制することが必要となる。これまで、無機粉末の経時沈降の抑制は、例えば、特許文献1に記載のように、タイヤ内面用離型剤のスラリー(水分散液)の粘度を上げることで行っていた。
しかしながら、スラリー(水分散液)の粘度を上げると、生タイヤ内面へのスプレー塗布の際、前記内面へのタイヤ内面用離型剤の均一付着が困難となる。このように、タイヤ内面用離型剤における経時沈降抑制と、スプレー塗布による均一付着との両立は困難である。
そこで、本発明は、経時沈降抑制と、スプレー塗布による均一付着との両立が可能なタイヤ内面用離型剤、およびタイヤ内面用離型剤水分散液を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記タイヤ内面用離型剤水分散液およびタイヤ内面用離型剤を用いたタイヤの製造方法、およびタイヤを提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明のタイヤ内面用離型剤は、下記成分(A)〜(D)を含むことを特徴とする。
(A)水膨潤性無機粉末
(B)水溶性多糖類および水溶性高分子の少なくとも一方
(C)界面活性剤
(D)シリコーン成分
本発明のタイヤ内面用離型剤水分散液は、
前記本発明のタイヤ内面用離型剤と、
水と、
を含むことを特徴とする。
本発明のタイヤの製造方法は、
未加硫ゴム製生タイヤの内面およびブラダーの外面の少なくとも一方に前記本発明のタイヤ内面用離型剤水分散液を付着させ、さらに水を揮発させる離型用前処理工程と、
前記離型用前処理工程後、成形型内で前記生タイヤに収容された前記ブラダーを膨張させることにより、前記成形型内面に前記生タイヤ外面を押し当て、その状態で前記生タイヤを加熱して加硫する加硫工程と、
を含むことを特徴とする。
本発明のタイヤは、前記本発明のタイヤの製造方法により得られることを特徴とする。
本発明のタイヤ内面用離型剤またはタイヤ内面用離型剤水分散液によれば、経時沈降抑制と、スプレー塗布による均一付着との両立が可能である。
以下、本発明について、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
本発明のタイヤ内面用離型剤およびタイヤ内面用離型剤水分散液は、例えば、前記成分(A)の質量(Aw)と、前記成分(B)の質量(Bw)との比が、Aw/Bw=0.1〜20であってもよい。
[1.タイヤ内面用離型剤]
本発明のタイヤ内面用離型剤における各成分は、特に限定されず、例えば、つぎのとおりである。
[1−1.水膨潤性無機粉末(A)]
水膨潤性無機粉末(A)(成分(A))は、例えば、スプレー性と分散安定性を担う成分として機能する。前記水膨潤性無機粉末は、水を吸って体積が増大する性質を持つ無機粉末をいい、特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト、および、モンモリロナイトを含有するベントナイト等が挙げられる。成分(A)は、水膨潤性無機粉末を1種類のみ含んでもよいし、2種類以上の水膨潤性無機粉末を併用してもよい。
本発明のタイヤ内面用離型剤における成分(A)の含有率は、目的に応じて選択可能であり、例えば、タイヤ内面用離型剤の質量全体に対し、0.5〜15質量%、1〜10質量%、または1〜8質量%であってもよい。本発明のタイヤ内面用離型剤に高い分散安定性を付与し水中での分離を防止する観点から、前記成分(A)の含有率が低すぎないことが好ましい。また、本発明のタイヤ内面用離型剤のスプレー性低下、付着性低下および剥離性(離型性)低下を防止する観点から、前記成分(A)の含有率が高すぎないことが好ましい。
[1−2.水溶性多糖類および水溶性高分子の少なくとも一方(B)]
水溶性多糖類および水溶性高分子の少なくとも一方(B)(成分(B))は、例えば、粘性補助を担う成分として機能する。成分(B)は、水溶性多糖類および水溶性高分子のいずれか一方のみを含んでもよいし、水溶性多糖類および水溶性高分子の双方を含んでもよい。前記水溶性多糖類としては、特に限定されず、例えば、キサンタンガム、グアーガム、ウェランガム、ローカストビーンガム、ダイユータンガム、タマリンドガム、タマリンドシードガム、トラガントガム、アラビアガム、カラギーナン、ラムザンガム、サクシノグリカン、タラガム、カラヤガム、ペクチン、アルギン酸誘導体等が挙げられる。前記水溶性高分子としては、特に限定されず、例えば、蛋白類、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、水溶性ウレタン樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ブタジエン樹脂、水溶性フェノール樹脂、メチルセルロース、セルロースエーテル類等が挙げられる。
本発明のタイヤ内面用離型剤における成分(B)の含有率は、目的に応じて選択可能であり、例えば、タイヤ内面用離型剤の質量全体に対し、0.1〜5質量、0.2〜4質量%、または0.3〜3質量%であってもよい。
本発明のタイヤ内面用離型剤によれば、前記成分(A)と前記成分(B)とを併用したことで、経時沈降抑制と、スプレーによる均一塗布とを両立可能である。
本発明のタイヤ内面用離型剤において、前記成分(A)の含有率(Aw)と前記成分(B)の含有率(Bw)との和(Aw+Bw)は、特に限定されず、例えば、0.6〜20質量%、0.8〜10質量%、または1〜8質量%であってもよい。
本発明のタイヤ内面用離型剤において、前記成分(A)の質量(含有率Aw)と、前記成分(B)の質量(含有率Bw)との比(Aw/Bw)は、特に限定されず、例えば、0.1〜20、0.5〜15、または1〜10であってもよい。
[1−3.界面活性剤(C)]
界面活性剤(C)(成分(C))は、例えば、乳化安定性付与を担う成分として機能する。なお、前記「乳化安定性」は、本発明のタイヤ内面用離型剤が乳化物である場合における、前記乳化物の安定性をいう。前記乳化物は、前記成分(A)〜(D)が、水の中に分散された乳化物であることが好ましい。このような乳化物は、すなわち、水中油滴型の乳化物(エマルジョン)である。なお、本発明のタイヤ内面用離型剤は、油中水滴型の乳化物でもよいが、スプレー性、付着性、離型性等の観点から、水中油滴型の乳化物であることが好ましい。
前記界面活性剤は、特に限定されず、カチオン界面活性剤でも、ノニオン界面活性剤でも、アニオン界面活性剤でもよいが、ノニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤の少なくとも一方が好ましい。前記ノニオン界面活性剤としては、例えば、[1]ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、[2]ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、[3]ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、[4]ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、[5]ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、[6]ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、[7]ポリグリセリン脂肪酸エステル、[8]アルキルグリセリンエーテル、[9]ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル、[10]アルキルポリグルコシド、[11]ショ糖脂肪酸エステル、[12]ポリオキシアルキレンアルキルアミン、[13]オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー、等が挙げられる。前記アニオン界面活性剤としては、例えば、[1]オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩、[2]ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアイル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、[3]ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩、[4]ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、[5]ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、[6]ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、[7]ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩、[8]モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、[9]ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、[10]ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、[11]N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩、等が挙げられる。成分(C)は、界面活性剤を1種類のみ含んでもよいし、2種類以上の界面活性剤を併用してもよい。
本発明のタイヤ内面用離型剤における成分(C)の含有率は、目的に応じて選択可能であり、例えば、タイヤ内面用離型剤の質量全体に対し、1〜17質量%、1〜15質量%、または2〜13質量%であってもよい。タイヤ内面用離型剤の乳化安定性の観点、および、生タイヤ若しくはブラダーへの濡れ性が低下しハジキが発生する現象を防止する観点から、前記成分(C)の含有率は、1質量%以上が好ましい。また、タイヤ内面用離型剤の付着性および離型性の観点、並びに、タイヤの貼り合せ部に離型剤が入り込んで接着阻害を起こす現象を防止する観点から、前記成分(C)の含有率は、15質量%以下が好ましい。
[1−4.シリコーン成分(D)]
シリコーン成分(D)(成分(D))は、例えば、離型性向上を担う成分として機能する。シリコーン成分(D)は、特に限定されず、例えば、オルガノポリシロキサン類が挙げられる。前記オルガノポリシロキサン類は、シリコーンオイル、シリコーンゴム、およびシリコーン樹脂を含む概念である。前記オルガノポリシロキサン類としては、より具体的には、例えば、[1]ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルイソプロピルポリシロキサン、メチルドデシルポリシロキサン等のアルキルポリシロキサン、[2]メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルポリシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等のアルキルフェニルポリシロキサン、[3]メチル(フェニルエチル)ポリシロキサン、メチル(フェニルプロピル)ポリシロキサン等のアルキルアラルキルポリシロキサン、[4]3,3,3−トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン等が挙げられる。前記シリコーン成分は、1種類のみ用いてもよいし、複数種類併用してもよい。
シリコーン成分(D)(成分(D))は、例えば、シリコーン成分と界面活性剤とを含むシリコーン乳化物であってもよい。前記成分(D)が前記シリコーン乳化物である場合、それに含まれる界面活性剤の含有率は、後述の成分(D)の含有率には含ませず、前記成分(C)の含有率に含ませるものとする。前記シリコーン乳化物において、前記シリコーン成分は、剥離性(離型性)の観点から、分子構造が直鎖状で、重合度が低く常温で流動性を有するシリコーンオイル等が好ましい。前記シリコーン成分の粘度は、特に限定されず、例えば、離型性と製品安定性のバランスの観点から、25℃において、1000〜10万mPa・s、5000〜5万mPa・sである。
前記シリコーン乳化物に含まれる前記界面活性剤は、特に限定されず、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤のいずれでもよいが、アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤の少なくとも一方を含むことが好ましい。前記アニオン界面活性剤は、特に限定されず、例えば、[1]高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸塩、アルキル(またはアルケニル)アミドエーテルカルボン酸塩、アシルアミノカルボン酸塩等のカルボン酸型、[2]高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノ硫酸エステル等の硫酸エステル型、[3]アルカンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のスルホン酸型、[4]アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル塩等のリン酸エステル型、等が挙げられる。前記ノニオン界面活性剤も、特に限定されず、例えば、[5]ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、[6]ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、等が挙げられる。前記界面活性剤は、1種類のみ用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
前記シリコーン乳化物(シリコーンエマルジョン)は、例えば、前記シリコーン成分を、前記界面活性剤を用いて水中に分散させ、乳化させて製造してもよい。分散および乳化方法は、特に限定されず、一般的な分散および乳化方法を用いてよい。例えば、まず、シリコーン成分に、ノニオン界面活性剤およびアニオン界面活性剤の少なくとも一方を混合する。一方、予め乳化機を設置した容器に規定量の水を入れる。つぎに、前記水を前記乳化機により撹拌しながら、前記シリコーン成分と前記界面活性剤との混合液を、少しずつ(例えば、1時間かけて)投入し、分散させる。さらに、乳化するまで撹拌することにより、前記シリコーン乳化物(シリコーンエマルジョン)を製造する。前記乳化機は、特に限定されず、一般的な乳化機でもよく、例えば、ホモミキサー、ホモディスパー等が挙げられる。また、前記シリコーン乳化物は、例えば、市販のシリコーン乳化物(シリコーンエマルジョン)をそのまま用いてもよい。前記市販のシリコーン乳化物(シリコーンエマルジョン)としては、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名KM−862T、東レ・ダウコーニング株式会社製の商品名FZ−4157等が挙げられる。前記シリコーン乳化物は、1種類のみ用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
なお、特に限定するものではないが、前記シリコーン乳化物を120℃で1時間乾燥した後の残渣質量は、前記乾燥前の前記シリコーン乳化物の質量全体に対し、例えば、20〜80質量%、30〜70質量%、または30〜65質量%であってもよい。
本発明のタイヤ内面用離型剤における成分(D)の含有率は、目的に応じて選択可能であり、例えば、タイヤ内面用離型剤の質量全体に対し、3〜30質量%、4〜28質量%、または5〜25質量%であってもよい。前述のとおり、前記成分(D)が前記シリコーン乳化剤である場合、前記成分(D)の含有率は、前記界面活性剤の含有率を含まず、前記シリコーン成分の含有率である。
[1−5.任意成分]
本発明のタイヤ内面用離型剤は、成分(A)〜(D)以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記任意成分の一つとして、例えば、無機粉体(E)(成分(E))が挙げられる。本発明のタイヤ内面用離型剤は、タイヤ内面用離型剤としての性能の観点から、無機粉体(E)を含むことが好ましい。
無機粉体(E)は、特に限定されず、例えば、一般的なタイヤ内面用離型剤に用いられている無機粉体でもよい。無機粉体(E)としては、例えば、マイカ、タルク、ゼオライト、炭酸カルシウム、クレー等が挙げられる。本発明のタイヤ内面用離型剤における成分(E)の含有率は、目的に応じて選択可能であり、例えば、タイヤ内面用離型剤の質量全体に対し、67〜92.4質量%、または70〜90質量%であってもよい。
成分(E)以外の任意成分としては、例えば、透明性向上に寄与し得る多価アルコール、水、シリコーン系消泡剤、鉱物油系消泡剤等の各種消泡剤、各種防腐剤等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、特に限定されず、例えば、[1]ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール等のポリエチレングリコール類、[2]ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、ヘキサプロピレングリコール等のポリプロピレングリコール類、[3]ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、テトラブチレングリコール、ペンタブチレングリコール、ヘキサブチレングリコール等のポリブチレングリコール類、[4]エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−へプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,2−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,2−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,2−ヘキサデカンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1、5−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロへプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン、およびこれらの2種類以上の共重合体等が挙げられる。これらの多価アルコールは、1種類のみ用いてもよいし、複数種類を併用してもよい。
本発明のタイヤ内面用離型剤の嵩比重は、特に限定されず、例えば、0.4〜1.5g/cm、0.5〜1.4g/cm、または0.7〜1.2g/cmであってもよい。
本発明のタイヤ内面用離型剤の形態は、特に限定されず、例えば、前記成分(A)〜(D)が、水の中に分散された乳化物(水分散液)であることが好ましい。
本発明のタイヤ内面用離型剤の製造方法も、特に限定されず、例えば、一般的な乳化機を用いて、本発明のタイヤ内面用離型剤の各成分を乳化することにより製造してもよい。前記乳化機も、特に限定されず、具体的には、例えば、一般的な攪拌機、ホモミキサー、ホモディスパー等が挙げられる。
本発明のタイヤ内面用離型剤の使用方法も、特に限定されず、例えば、一般的なタイヤ内面用離型剤と同様でよい。具体的には、例えば、本発明のタイヤ内面用離型剤を、原液の状態で、または水に希釈した状態で、スプレーを用いて、未加硫ゴム製生タイヤの内面およびブラダー外面の少なくとも一方に塗布して用いればよい。
本発明のタイヤ内面用離型剤は、前述のとおり、乳化物(エマルジョン、水分散液)であってもよい。前記乳化物の平均粒子径は、特に限定されず、例えば、50〜2000nm、100〜1500nm、または150〜1300nmであってもよい。界面活性剤の必要配合量が増大することによる付着性低下および離型性低下防止の観点、並びに、貼り合せ部に離型剤が入り込んだ際の接着阻害防止の観点から、前記乳化物の平均粒子径は、50nm以上が好ましい。また、乳化粒子のクリーミングおよび合一防止の観点、並びに、水溶成分と油溶成分が分離し製品安定性が不良となることを防止し得る観点から、前記乳化物の平均粒子径は、2000nm以下が好ましい。なお、本発明において、前記乳化物の平均粒子径は、例えば、BECKMAN社製のサブミクロン粒子アナライザー(レーザー回折/散乱法)を用いて乳化粒子の体積分布を測定し、測定した前記乳化粒子の体積分布に基づいて、前記平均粒子径を算出することができる。ただし、この測定方法は、例示であり、本発明は、この測定方法により限定されない。
[2.タイヤの製造方法およびタイヤ]
本発明のタイヤの製造方法およびタイヤについては、前述のとおりである。これらについても、特に限定はなく、例えば、一般的なタイヤ内面用離型剤(水分散液の形態であるタイヤ内面用離型剤)に代えて、前記本発明のタイヤ内面用離型剤水分散液またはタイヤ内面用離型剤を用いること以外は、一般的なタイヤの製造方法およびタイヤと同様でよい。本発明のタイヤの製造方法において、前記成形型としては、例えば、金型等が挙げられる。本発明のタイヤの製造方法は、前述の剥離用前処理工程および加硫工程に加えて、加硫タイヤと前記ブラダーとの間、および、加硫タイヤと前記成形型との間を離型処理する離型処理工程を有してもよい。
[実施例1〜10および比較例1〜4]
下記表1および2に記載された各成分(原料)を、市販の電動コンパクトミル(容量500mL)中に、順次撹拌しながら添加し、その後、3分間撹拌し、粉末状のタイヤ内面用離型剤を製造した。実施例1〜10は、下記表1に示すとおり、(A)〜(D)成分を全て配合した。これに対し、下記表2に示すとおり、比較例1および3は、成分(A)、(C)、(D)を配合したが、成分(B)を配合せず、比較例2および4は、成分(B)、(C)、(D)を配合したが、成分(A)を配合しなかった。なお、下記表1および2に記載された各成分の製品名(商品名)および製造元を、下記表3に示す。
Figure 0006920926
Figure 0006920926
Figure 0006920926
表1および2に記載の実施例1〜10および比較例1〜4の各タイヤ内面用離型剤水分散液を用いて、下記の評価を行った。各例のタイヤ内面用離型剤水分散液の製造方法は、つぎのとおりである。すなわち、まず、2Lガラスビーカーに水道水450gを仕込んだ後、直径5cmの3枚のプロペラ羽を備えた攪拌機で20rpmの速度で撹拌した。前記水中に、撹拌しながら、各例で製造した粉末状のタイヤ内面用離型剤550gを投入し、30分間撹拌して分散させることで、各例のタイヤ内面用離型剤水分散液を製造した。
(水分散液安定性)
前記各タイヤ内面用離型剤水分散液を、室温で、大気中に静置した。その後、何日間分散状態を維持していたかを目視にて評価した。10日以上維持したものを合格とした。
(スプレー性)
前記各タイヤ内面用離型剤水分散液を、ノズル口径φ1.0mmのスプレーガンを用い、エアー圧0.5MPaにて10秒間スプレーし、スムーズさ(スプレー性)を評価した。スプレー性は、ノズル詰まりなくスムーズに10秒間スプレーできたものを○、スプレー10秒間のうちスプレー詰まりが2〜4回のものを△、スプレー詰まりが5回以上のものを×と評価した。
(塗布面外観)
10日間静置保管した前記各タイヤ内面用離型剤水分散液を、4cm×7cm×0.2cmの未加硫インナーライナーゴムシートに、乾燥後塗布量が10g/mとなるようにスプレー塗布した時の外観を、目視により評価した。塗布面外観は、ハジキ、オイルスポットが無く均一にスプレーできているものを良好と評価した。なお、この塗布面外観が良好であるか否かは、未加硫ゴム製生タイヤ内面への付着性の良否を反映していると考えられる。
(離型性)
10日間静置保管した前記各タイヤ内面用離型剤水分散液を、4cm×7cm×0.2cmの未加硫インナーライナーゴムシートに、乾燥後塗布量が10g/mとなるようにスプレー塗布した。つぎに、この未加硫ゴムシートに同じ大きさのブラダーゴムシートを重ね合わせ、卓上型テストプレス機にセットし、金型温度180℃、圧力20kg/cmで20分間加圧し、加硫した。その後、加硫済みの前記ゴムシートを引き剥がした。離型性は、密着無く容易に剥離できたものを5級、剥離できたものを4級、剥離抗力が大きいが離型できたものと3級、一部密着し剥離しがたいものを2級、全面密着し剥離不可能ものを1級と評価した。
上記評価結果を、前記表1および2に示した。表1に示したとおり、実施例1〜10は、水分散液安定性、スプレー性、塗布面外観、および離型性の評価のいずれも良好であった。これに対し、比較例1および2は、有効成分が沈降してしまい、スプレー後の付着状態(塗布面外観)が不良で、離型性も悪かった。また、比較例3および4は、有効成分の沈降はないが、スプレー性が悪く、付着状態(塗布面外観)が不良となり、離型性も悪かった。

Claims (8)

  1. 下記成分(A)〜(D)を含むことを特徴とするタイヤ内面用離型剤。
    (A)水膨潤性無機粉末
    (B)水溶性多糖類および水溶性高分子の少なくとも一方
    (C)界面活性剤
    (D)粘度が、25℃において、1000〜10万mPa・sであるシリコーン成分
  2. 前記成分(C)が、オレアミド、アルキルアリールポリエーテル乳濁液、およびフルオロ界面活性剤を含まない、請求項1記載のタイヤ内面用離型剤。
  3. 前記成分(B)が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリアルキレングリコールを含まない、請求項1または2記載のタイヤ内面用離型剤。
  4. 前記成分(B)が、蛋白類、CMC(カルボキシメチルセルロース)、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、水溶性ウレタン樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ブタジエン樹脂、および水溶性フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも一つである、請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ内面用離型剤。
  5. 前記成分(A)の質量(Aw)と、前記成分(B)の質量(Bw)との比が、Aw/Bw
    =0.1〜20である請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ内面用離型剤。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ内面用離型剤と、水と、を含むことを特徴とするタイヤ内面用離型剤水分散液。
  7. 未加硫ゴム製生タイヤの内面およびブラダーの外面の少なくとも一方に請求項記載のタイヤ内面用離型剤水分散液を付着させ、さらに水を揮発させる離型用前処理工程と、
    前記離型用前処理工程後、成形型内で前記生タイヤに収容された前記ブラダーを膨張させることにより、前記成形型内面に前記生タイヤ外面を押し当て、その状態で前記生タイヤを加熱して加硫する加硫工程と、
    を含むことを特徴とするタイヤの製造方法。
  8. タイヤ内面に、請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ内面用離型剤における前記成分(A)〜(D)が付着していることを特徴とするタイヤ。
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