JP7163124B2 - 未加硫ゴム用防着剤及びその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、未加硫ゴム用防着剤及びその利用に関する。
ゴム製品の生産加工工程において、未加硫ゴムを次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵することがあり、この場合にゴムの密着を防止する目的で密着防止剤(防着剤)が使用されている。
従来、この防着剤としては、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ベントナイト等の無機粒子が、防着性に優れるために使用されている。その使用方法としては、粉末のままゴムに吹き付ける方法や、粉末中を通過させる方法等のいわゆるドライ法;前記無機粒子の粉末を水に懸濁させ、その懸濁液をスプレーする方法や、細流にてゴムに吹き付ける方法や懸濁液中に浸漬する方法等のいわゆるウェット法を挙げることができる。ウェット法における水の使用目的は作業性の向上の他にゴムの冷却をも兼ねている。また、押出機を使用したタイヤのチューブ等の中空で薄肉の円筒成形では、防着剤を混入した空気をチューブに吹き込みながら押出成形することで、円筒の内面が密着しないようにしている。
このような無機粒子を使用した防着剤を使用する際に、ゴム表面に付着させた後、次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間に粉落ちして粉塵が発生するといった問題がある。粉塵発生による作業環境の汚染を抑制する方法として、局所排気装置を設置する手段もあるが、設備投資費用が必要であるし根本的な解決にはならない。
この対策として、無機粒子を使用しない脂肪酸石鹸と金属石鹸主体の防着剤が開発されている。しかし、高温保管条件では脂肪酸石鹸および金属石鹸の分子運動が活発化し、水への溶解性が著しく低いラメラ構造を形成してしまう為に防着剤組成物の粘度が急激に上昇して、分離したり増粘したりして取り扱いが困難となる問題があった。また、製品安定性が良くても、ゴムへの濡れ性や密着防止性(防着性)に劣ることがあった。
特許文献1では、炭素数および金属イオンを限定した脂肪酸石鹸と金属石鹸および特定の金属の硫酸塩、酢酸塩、塩酸塩を水に分散させた組成物をゴム面に塗布して防着する方法が開示されている。
特許文献2では、脂肪酸組成を限定した脂肪酸石鹸と特定の炭素数の金属石鹸を水に分散させた組成物を未加硫ゴムに処理して防着する方法が開示されている。
ともに脂肪酸石鹸と金属石鹸を主体とした組成物で無機粒子の粉塵による汚染を抑制できる。しかし、組成物の高温安定性、濡れ性、防着性のすべてを満足するものは無かった。
特開昭55-112202号公報 特開2017-88686号公報
本発明はこのような従来の問題点に鑑み、高温安定性、濡れ性及び防着性に優れる未加硫ゴム用防着剤と、その未加硫ゴム用防着剤が処理された未加硫ゴムの製造方法とを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、水と脂肪酸石鹸と金属石鹸と特定の界面活性剤を含む防着剤によって、上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物は、水、脂肪酸石鹸、金属石鹸及び界面活性剤(A)を必須に含む未加硫ゴム用防着剤組成物であって、前記界面活性剤(A)が、ポリオキシアルキレンアルキルアミン及びスルホン酸基を有する芳香族系炭化水素の縮合物の塩から選ばれる少なくとも1種類であり、
前記水、前記脂肪酸石鹸、前記金属石鹸及び前記界面活性剤(A)の合計重量に対する前記水の重量割合が40~90重量%、前記脂肪酸石鹸の重量割合が7.5~30重量%、前記金属石鹸の重量割合が2.5~30重量%、前記界面活性剤(A)の重量割合が0.01~15重量%であり、記脂肪酸石鹸に占める炭素数6~10の脂肪酸石鹸の重量割合が1~40重量%、炭素数12~16の脂肪酸石鹸の重量割合が15~55重量%、炭素数18~22の脂肪酸石鹸の重量割合が35~75重量%である
機粉末をさらに含むと好ましい。
前記無機粉末がケイ酸塩であると好ましい。
本発明の未加硫ゴムの製造方法は、上記未加硫ゴム用防着剤組成物の希釈液を、成型加工された未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む。
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、高温安定性、濡れ性及び防着性に優れるため、未加硫ゴム製造工程で生産性に優れる。
〔未加硫ゴム用防着剤〕
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、水と脂肪酸石鹸と金属石鹸と界面活性剤(A)を含む防着剤である。以下、下記成分を詳しく説明する。
〔脂肪酸石鹸〕
脂肪酸石鹸は、本発明に必須の成分であり、優れた濡れ性と防着性を付与する。
本発明で使用する脂肪酸石鹸は特に限定はないが、炭素数6~22の直鎖もしくは分岐の飽和又は不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩から選ばれる1種であればよく、2種以上を含んでも良い。
前記脂肪酸石鹸の脂肪酸組成については、濡れ性と防着性の観点から、好ましくは、前記脂肪酸石鹸に占める炭素数6~10の脂肪酸石鹸の重量割合が0~40重量%、炭素数12~16の脂肪酸石鹸の重量割合が15~55重量%、炭素数18~22の脂肪酸石鹸の重量割合が35~75重量%である。さらに好ましくは、炭素数6~10の脂肪酸石鹸の重量割合が1~40重量%、炭素数12~16の脂肪酸石鹸の重量割合が15~52.5重量%、炭素数18~22の脂肪酸石鹸の重量割合が37.5~75重量%である。特に好ましくは、炭素数6~10の脂肪酸石鹸の重量割合が1~37.5重量%、炭素数12~16の脂肪酸石鹸の重量割合が15~50重量%、炭素数18~22の脂肪酸石鹸の重量割合が40~75重量%である。最も好ましくは、炭素数6~10の脂肪酸石鹸の重量割合が1~35重量%、炭素数12~16の脂肪酸石鹸の重量割合が15~47.5重量%、炭素数18~22の脂肪酸石鹸の重量割合が42.5~75重量%である。
炭素数6~10の脂肪酸石鹸の重量割合が40重量%超、もしくは炭素数12~16の脂肪酸石鹸の重量割合が15重量%未満、もしくは炭素数18~22の脂肪酸石鹸の重量割合が35重量%未満では、未加硫ゴムへの濡れ性が低下して、十分な防着性が得られないことがある。
炭素数12~16の脂肪酸石鹸の重量割合が55重量%超では、分散液の泡立ちが大きくなりすぎて取り扱い性が悪化することがある。
炭素数18~22の脂肪酸石鹸の重量割合が75重量%超では、脂肪酸石鹸組成物の融点が上昇し、室温下で固化することがある為、取り扱い性が悪化することがある。
また、脂肪酸としては、直鎖もしくは分岐の飽和又は不飽和脂肪酸を使用することができ、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の単一脂肪酸のほか、パーム核脂肪酸、パームステアリン脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸等の天然脂肪酸を使用することができる。これらは1種類もしくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
水、脂肪酸石鹸、金属石鹸及び界面活性剤(A)の合計重量に対する脂肪酸石鹸の重量割合については、特に限定はないが、濡れ性と防着性の観点から、好ましくは1~30重量%である。さらに好ましくは2.5~27.5重量%、特に好ましくは5~25.0重量%、最も好ましくは、7.5~22.5重量%である。脂肪酸石鹸の重量割合が1重量%未満では、未加硫ゴムへの濡れ性が低下して、十分な防着性が得られないことがあり、30重量%超では分散液の泡立ちが大きくなりすぎて取扱い性が悪化することがある。
〔金属石鹸〕
金属石鹸は、本発明に必須の成分であり、優れた防着性と平滑性を付与する。本発明で使用する金属石鹸は特に限定は無いが、炭素数10~18の有機酸の非アルカリ金属塩であればよく、1種又は2種以上を含んでも良い。
金属石鹸を構成する有機酸については、特に限定はないが、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びアラキン酸から選ばれる1種であればよく、2種以上を含んでも良い。
非アルカリ金属塩については、特に限定はないが、Al、Ag、Ba、Ca、Ce、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Hg、Mg、Mn、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Znから選ばれる1種であればよく、2種以上を含んでも良い。
また、金属石鹸の平均粒径については、特に限定はないが、未加硫ゴムへの付着性等を考慮すると、好ましくは0.1~200μm、より好ましくは0.5~100μm、さらに好ましくは1.0~50μm、特に好ましくは1.5~40μm、最も好ましくは2.0~30μmである。
水、脂肪酸石鹸、金属石鹸及び界面活性剤(A)の合計重量に対する金属石鹸の重量割合については、特に限定はないが、好ましくは1~30重量%である。さらに好ましくは2.5~27.5重量%、特に好ましくは5~25.0重量%、最も好ましくは、7.5~22.5重量%である。金属石鹸の重量割合が1重量%未満では、防着剤を付与した未加硫ゴムの防着性及び平滑性が悪化することがあり、30重量%超では分散液の泡立ちが大きくなりすぎて取扱い性が悪化することがある。
〔界面活性剤(A)〕
界面活性剤(A)は、ポリオキシアルキレンアルキルアミン及びスルホン酸基を有する芳香族系炭化水素の縮合物の塩から選ばれる少なくとも1種類であり、2種以上を含んでいてもよい。
界面活性剤(A)は、本発明に必須の成分であり、金属石鹸の脂肪酸石鹸水溶液への分散を補助する役割を果たす。特定の界面活性剤(A)が本発明の未加硫ゴム用防着剤組成物に含まれていることによって、脂肪酸石鹸水溶液中における金属石鹸の分散安定性が向上し、未加硫ゴム用防着剤組成物の高温安定性が向上する。
界面活性剤(A)の配合によって高温安定性が向上する理由としては、界面活性剤(A)が脂肪酸石鹸と金属石鹸との間に介在して、ラメラ構造の形成を抑制しているためと考えている。
界面活性剤(A)は、高温安定性の観点から、ポリオキシアルキレンアルキルアミンが特に好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルアミンのアルキル基の炭素数としては、特に限定はないが、本願効果を発揮する観点から、1~30が好ましく、4~22がより好ましく、8~18がさらに好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルアミンのポリオキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン基としては、炭素数2~4のオキシアルキレン基が挙げられ、具体的には、ポリオキシエチレン基及び/又はポリオキシプロピレン基が挙げられる。
ポリオキシアルキレンアルキルアミンのポリオキシアルキレン基の重合度としては、1~200が好ましく、1~100がより好ましく、1~30がさらに好ましい。
アルキレンオキシドの付加は、ランダム付加、ブロック付加及びランダム付加とブロック付加の組み合わせのいずれでもよく、ブロック付加の場合、アルキレンオキシドの付加順序は問わない。
ポリオキシアルキレンアルキルアミンとしては、特に限定はないが、ポリオキシアルキレンメチルアミン、ポリオキシアルキレンエチルアミン、ポリオキシアルキレンプロピルアミン、ポリオキシアルキレンブチルアミン、ポリオキシアルキレンヘキシルアミン、ポリオキシアルキレンオクチルアミン、ポリオキシアルキレンラウリルアミン、ポリオキシアルキレンミリスチルアミン、ポリオキシアルキレンセチルアミン、及びポリオキシアルキレンステアリルアミン等が挙げられる。
スルホン酸基を有する芳香族系炭化水素の縮合物の塩は、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物Na塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸Na塩、及びナフタレンスルホン酸ブチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物Na塩から選ばれる少なくとも1種類であり、2種以上を含んでいてもよい。
スルホン酸基を有する芳香族系炭化水素の縮合物の塩の配合によって金属石鹸の分散安定性および高温安定性が向上する理由としては、金属石鹸の非アルカリ金属原子にスルホン酸基が配位することで、立体的に嵩高くなり、金属石鹸同士の接触を妨げるためと考えている。
水、脂肪酸石鹸、金属石鹸及び界面活性剤(A)の合計重量に対する界面活性剤(A)の重量割合は、0.01~15重量%である。好ましくは0.01~14.0重量%、より好ましくは0.01~13.0重量%、さらに好ましくは、0.01~12.0重量%である。界面活性剤(A)の重量割合が0.01重量%未満では高温安定性が悪化し、15重量%超では分散液の泡立ちが大きくなりすぎて付着性が悪化し、防着性が悪くなる。
(水)
水は、水道水、イオン交換水、蒸留水等のいずれでもよい。水の硬度の観点からは、水が軟水であると、品質管理の観点から好ましい。
水、脂肪酸石鹸、金属石鹸及び界面活性剤(A)の合計重量に対する前記水の重量割合については、特に限定はないが、室温下での取り扱い性及び外観安定性の観点から、25~90重量%が好ましく、30~85重量%がより好ましく、40~80重量%がさらに好ましい。
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、無機粉末、界面活性剤(A)以外の界面活性剤、多価アルコール、消泡剤又は防腐剤等をさらに含有していてもよい。
(無機粉末)
無機粉末は、未加硫ゴム用防着剤の防着性を向上する。本発明で用いられる無機粉末は、特に限定は無いが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;ベントナイト、クレー、カオリン、タルク、マイカ、セリサイト等のケイ酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;非晶質シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化鉄等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;カーボンブラック;グラファイト等から選ばれるものであればよく、1種又は2種以上を含んでもよい。
前記無機粉末は、防着剤の防着性の観点から、ケイ酸塩が特に好ましい。
また、無機粉末は、不純物として結晶性シリカを含有することがあるが、結晶性シリカは親水性が低く分散性が悪いため、その含有量は、なるべく少ないことが好ましい。結晶性シリカとしては、石英、クリストバライト、トリジマイト、コーサイト、ステイショバライト等が挙げられる。結晶性シリカ含有量は無機粉末を100重量%としたときに、好ましくは20重量%未満、特に好ましくは10重量%未満、最も好ましくは5重量%未満である。20重量%以上であると、無機粉末の分散性が悪化し、ゴム表面への付着が不均一となるので粉塵飛散が多くなる。
また、無機粉末の平均粒子径については、特に限定はないが、未加硫ゴムへの付着性等を考慮すると、好ましくは0.01~200μm、より好ましくは0.03~100μm、さらに好ましくは0.05~50μm、特に好ましくは0.07~40μm、最も好ましくは0.1~30μmである。
(多価アルコール)
多価アルコールは、未加硫ゴム間に平滑性を付与する成分である。多価アルコールとしては特に限定はないが、たとえば、グリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、マルトトリオース、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
(消泡剤)
消泡剤としては、たとえば、ポリメチルシロキサン、ポリエーテル変性シリコー等のシリコーン系消泡剤;ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、コハク酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール3-ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3-ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フオスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミン等のアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレン系消泡剤;鉱物油等が挙げられる。
(防腐剤)
防腐剤としては、たとえば、チアゾール、2-メルカプトチアゾール等のチアゾール類;メチレンビスチオシアネート、アンモニウムチオシアネート等のチオシアネート類;o-ベンゾイックスルフィミド、フェニルマーキュリック-o-ベンゾイックスルフィミド等のスルフィミド類;メチルジメチルチオカルバメート、エチルジエチルジチオカルバメート等のアルキルジアルキルチオカルバメート類;テトラメチルチラウムスルフィド、テトラエチルチラウムスルフィド等のチラウムスルフィド類;テトラメチルチラウムジスルフィド、テトラエチルチラウムジスルフィド等のチラウムジスルフィド類;フェリックジエチルジチオカルバメート、リードジメチルジチオカルバメート等のジチオカルバメート類;o-トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルフォンアニリド等のスルファミド類;1-アミノナフチル-4-スルホン酸、1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸等のアミノスルホン酸類;ペンタクロロフェノール、o-フェニルフェノール等のフェノール類及びこれらのアルカリ金属塩類;;テトラクロロ-p-ベンゾキノン、2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン等の塩化キノン類;ジニトロカプリルフェニルクロトネート、ジニトロ-o-クレゾール等のニトロ基含有化合物類;1,3,5-トリヒドロキシエチルヘキサハイドロ-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリエチルヘキサハイドロ-1,3,5-トリアジン等のトリアジン類;フェニルマーキュリックフタレート、o-ヒドロキシフェニルマーキュリッククロライド等の有機水銀化合物;p-アミノアゾベンゼン、ジフェニルアミン等のアミン類;シンナムアニリド等のアミド類;1,3-ジヨード-2-プロパノール等のヨウ素含有化合物等が挙げられる。
本発明の未加硫ゴム用防着剤のpH(1%水分散液)は、本願効果を奏する観点から、7~13が好ましく、7.5~12.5がより好ましく、8.0~12.0がさらに好ましく、8.5~11.5が特に好ましい。
(未加硫ゴム用防着剤の製造方法)
本発明の未加硫ゴム用防着剤の製造方法については、脂肪酸石鹸水溶液を製造する工程と脂肪酸石鹸水溶液に特定の界面活性剤を配合し金属石鹸を分散させる工程がある。
脂肪酸石鹸水溶液はあらかじめ脂肪酸石鹸を水に溶解させたものを用いても良く、アルカリ金属塩の水溶液に脂肪酸を添加して中和反応させて作製しても良い。反応させて作製する場合、アルカリ金属塩の水溶液を70℃以上に加温し、撹拌しながら脂肪酸を添加する。添加後、30分以上反応させて脂肪酸石鹸水溶液を得る。
金属石鹸を分散させる際の脂肪酸石鹸水溶液の温度については、50℃以下であると好ましい。より好ましくは45℃以下、特に好ましくは43℃以下である。
特定の界面活性剤の配合については特に限定はなく、脂肪酸石鹸水溶液作製直後に配合しても良いし、降温して金属石鹸を分散させる直前に配合しても良い。
金属石鹸を分散させる設備については特に限定は無く、均一に分散可能な設備であれば良い。
(未加硫ゴム用防着剤の粘度)
本発明の未加硫ゴム用防着剤の粘度については、製品の取り扱いが良好である点から、5000mPa・s以下が好ましく、3000mPa・s以下がより好ましく、2000mPa・s以下がさらに好ましく、1000mPa・s以下が特に好ましい。本発明の未加硫ゴム用防着剤の粘度の下限値は、10mPa・sが好ましく、20mPa・sがより好ましく、30mPa・sがさらに好ましい。
本発明において、未加硫ゴム用防着剤の粘度は、20℃においてB型粘度計(12rpm)で測定したものをいう。未加硫ゴム用防着剤の粘度が高すぎると、ハンドリング性が悪化したり希釈時の分散性が悪化したりする。低すぎると、製品が分離して安定性が不良となる。
(防着処理された未加硫ゴムの製造方法)
本発明の防着処理された未加硫ゴムの製造方法は、上記未加硫ゴム用防着剤組成物を、未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む。ここで、未加硫ゴムは、成形加工されたものであるとよい。
処理工程では、未加硫ゴム用防着剤組成物の希釈液をスプレーする方法や、細流にてゴムに吹き付ける方法や分散液中に浸漬する方法等が挙げられる。希釈液中に浸漬する方法では、均一に未加硫ゴム用防着剤組成物を付着させることができるため好ましい。本発明の製造方法で用いる未加硫ゴムは、通常、100~180℃に加熱された状態にあり、希釈液中に浸漬する方法で未加硫ゴムを冷却することができる。希釈液の温度は特に限定はないが、0~60℃であると好ましい。次いで、希釈液を付着後に未加硫ゴムを乾燥する工程を実施してもよい。乾燥の方法としては、特に限定はないが熱風機やブローヒーターにより熱風を送ることで強制的に乾燥させる方法であると、コストが安くてよい。
当該希釈液の有効濃度は、良好な濡れ性と防着性を発揮しやすい観点から、0.01~15重量%が好ましく、0.05~12.5重量%がより好ましく、0.1~10.0重量%がさらに好ましい。0.01重量%未満では、防着性が悪化する可能性があり、10.0%重量超では、乾燥性が悪化する可能性がある。
上記有効濃度とは希釈液中の水以外の成分の濃度を示す。
このようにして製造された、防着処理された未加硫ゴムでは、次の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵する場合に、未加硫ゴム同士の密着を防止することができる。
以下に、本発明を実施例及び比較例を示して具体的に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例における各物性の評価は、以下のようにして行った。
[濡れ性]
未加硫ゴム用防着剤組成物の希釈液(有効濃度3%)に対して、100℃に加熱したNR/BRゴム試験片(天然ゴム/ブタジエンゴム;厚み0.5cm×縦5cm×横3cm)を浸漬し、直ちに引き上げた。そして、未加硫ゴム表面の濡れを判定する。
未加硫ゴム表面全体が濡れている:濡れ性は良好(指標は○)
未加硫ゴム表面の一部にはじきがある:濡れ性はやや不良(指標は△)
未加硫ゴム表面全体がはじいている:濡れ性は不良(指標は×)
[防着性]
45℃に調温した未加硫ゴム用防着剤組成物の水分散液に対して、100℃に加熱したNR/BR試験片(天然ゴム/ブタジエンゴム;厚み0.5cm×縦5cm×横3cm)を浸漬して直ちに引き上げる。浸漬させたゴム試験片を2枚作製し、風乾したら重ね合わせ、1000kg/mの荷重をかけ40℃の恒温槽に24時間放置する。恒温槽から取出した試験片を室温まで空冷し、引張り試験機を用いて100mm/minの速度下で剥離抗力(N/cm)を測定した。剥離抗力が小さいほど剥がしやすく、防着性が高い。評価基準は次の通りであり、剥離抗力が2N/cm未満の場合を合格とした。
剥離抗力が1N/cm以下:防着性は非常に良好(容易に未加硫ゴム同士を剥がすことができる、指標は◎)
剥離抗力が1N/cm超2N/cm未満:防着性は良好(負荷なく未加硫ゴム同士を剥がすことができる、指標は○)
剥離抗力が2N/cm以上3N/cm以下:防着性は不良(未加硫ゴム同士を剥がす時の負荷が大きく、防着性が低い、指標は△)
剥離抗力が3N/cm超:防着性が非常に不良(ゴム同士が密着して剥離が困難である。防着性が非常に低い、指標は×)
[経時安定性]
未加硫ゴム用防着剤組成物を、5℃、25℃及び50℃の恒温槽に2ヶ月間静置し、外観の変化及び増粘の有無を確認した。
増粘が無く、かつ外観の変化も無い:経時安定性は非常に良好(指標は◎)
増粘はあるが流動性があり、外観に変化は見られない:経時安定性は良好(指標は○)
成分が僅かに分離しており、増粘も見られるが流動性がある。:経時安定性はやや不良(指標は△)
成分の分離が見られ、かつ増粘があり流動性もない:経時安定性は不良(指標は×)
(実施例1)
水635g、カプリン酸カリウム30g、やし脂肪酸カリウム50g、オレイン酸カリウム100g、ステアリン酸亜鉛100g、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物Naを20g、グリセリン60g、ポリメチルシロキサン5gを均一に混合し、未加硫ゴム用防着剤組成物を得た。得られた未加硫ゴム用防着剤組成物を用いて、経時安定性を評価した。次いで、有効濃度が3%になるように水を加え、水中に均一分散させて、未加硫ゴム用防着剤組成物の希釈液を得た。得られた希釈液を用いて、防着性、濡れ性を評価した。評価の結果は、表1に示すとおりで、経時安定性、濡れ性、防着性に優れた。
(実施例2~4)
実施例2~4では、表1に示すように組成を変更した以外は、実施例1と同様にして未加硫ゴム用防着剤組成物および希釈液を得て、評価した。その結果を表1にそれぞれ示す。
Figure 0007163124000001
Figure 0007163124000002
表1から分かるように、実施例1~4では、前記未加硫ゴム用防着剤組成物が水、脂肪酸石鹸、金属石鹸及び界面活性剤(A)を含み、界面活性剤(A)の重量割合が特定の範囲にあり、水、脂肪酸石鹸及び金属石鹸の重量割合が特定の範囲にあるため、本願の課題を解決できている。
一方、表2から分かるように、比較例1~5では、次のように要件が不足しているために、本願の課題を解決できていない。
界面活性剤(A)については、水、脂肪酸石鹸、金属石鹸及び界面活性剤(A)の合計重量に対して、前記活性剤(A)の重量割合が0.1~15重量%の範囲にない(比較例1及び2)場合には、課題が解決できていない。
金属石鹸については、前記未加硫ゴム用防着剤組成物に金属石鹸が含まれていない(比較例3)場合には、課題が解決できていない。
脂肪酸石鹸については、前記未加硫ゴム用防着剤組成物に脂肪酸石鹸が含まれていない(比較例4)場合には、課題が解決できていない。
水については、前記未加硫ゴム用防着剤組成物に水が含まれていない(比較例5)場合には、課題が解決できていない。
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、未加硫ゴム製品の生産加工工程に用いられ、未加硫ゴムを次の成型や加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねて貯蔵する場合にゴムの密着を防止することができる。その際、防着剤の高温安定性が良好であり、取り扱いに優れる。

Claims (4)

  1. 水、脂肪酸石鹸、金属石鹸及び界面活性剤(A)を必須に含む未加硫ゴム用防着剤組成物であって、
    前記界面活性剤(A)が、ポリオキシアルキレンアルキルアミン及びスルホン酸基を有する芳香族系炭化水素の縮合物の塩から選ばれる少なくとも1種類であり、
    前記水、前記脂肪酸石鹸、前記金属石鹸及び前記界面活性剤(A)の合計重量に対する前記水の重量割合が40~90重量%、前記脂肪酸石鹸の重量割合が7.5~30重量%、前記金属石鹸の重量割合が2.5~30重量%、前記界面活性剤(A)の重量割合が0.01~15重量%であり、前記脂肪酸石鹸に占める炭素数6~10の脂肪酸石鹸の重量割合が1~40重量%、炭素数12~16の脂肪酸石鹸の重量割合が15~55重量%、炭素数18~22の脂肪酸石鹸の重量割合が35~75重量%である、未加硫ゴム用防着剤組成物。
  2. 無機粉末をさらに含む、請求項に記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
  3. 前記無機粉末がケイ酸塩である、請求項に記載の未加硫ゴム用防着剤組成物。
  4. 請求項1~のいずれかに記載の未加硫ゴム用防着剤組成物の希釈液を、成型加工された未加硫ゴムの表面に付着させる処理工程を含む、防着処理された未加硫ゴムの製造方法。
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