JP2023095689A - 未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液 - Google Patents

未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、スメクタイトを含み、かつ、防着性、流動性、分散溶解性および乾燥物洗浄性の全てに優れた未加硫ゴム用防着剤を提供することを目的とする。【解決手段】下記成分(A)~(D)を含むことを特徴とする。(A)スメクタイト(B)下記化学式(1)で表される化合物R1-O-(PO)m-H・・・(1)前記化学式(1)中、R1は、炭素数4~20の直鎖または分岐鎖の炭化水素基であり、POは、オキシプロピレン基であり、mは、POの平均付加モル数を表し、かつ、12~40の数である。(C)前記成分(B)以外の界面活性剤(D)前記成分(A)以外の無機珪酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質【選択図】なし

Description

本発明は、未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液に関する。
天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などのゴムの生産加工の現場においては、シート状などに成形された未加硫ゴムを、次の成形、加硫等の工程に移行するまでの間、積み重ねたり、折り畳んだりして貯蔵することがある。このような貯蔵時において、未加硫ゴム同士が密着してしまうことを防止する目的で、未加硫ゴムの表面に防着剤(密着防止剤)を付着させることが行われている(例えば、特許文献1等)。
特開2013-001720号公報
未加硫ゴム用防着剤の成分としては、防着性を向上させる効果が高いスメクタイトがよく用いられる。スメクタイトを含む未加硫ゴム用防着剤は、処理液(未加硫ゴム用防着剤水分散液)とした場合に高い粘度を有し、それを乾燥させると強固な乾燥被膜(防着被膜)を形成し得るため、防着性に優れる。一方、未加硫ゴム用防着剤中のスメクタイトの含有率(配合量)を多くすると、高濃度処理液(未加硫ゴム用防着剤水分散液)の流動性が低下したり、分散溶解性の低下により未分散物が発生したり、乾燥物洗浄性の低下等を引き起こしたりするおそれがある。
そこで、本発明は、スメクタイトを含み、かつ、防着性、流動性、分散溶解性および乾燥物洗浄性の全てに優れた未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の未加硫ゴム用防着剤は、下記成分(A)~(D)を含むことを特徴とする。

(A)スメクタイト
(B)下記化学式(1)で表される化合物

-O-(PO)m-H ・・・(1)

前記化学式(1)中、
は、炭素数4~20の直鎖または分岐鎖の炭化水素基であり、
POは、オキシプロピレン基であり、
mは、POの平均付加モル数を表し、かつ、12~40の数である。

(C)前記成分(B)以外の界面活性剤
(D)前記成分(A)以外の無機珪酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質
本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液は、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤と、水と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、スメクタイトを含み、かつ、防着性、流動性、分散溶解性および乾燥物洗浄性の全てに優れた未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液を提供することができる。
以下、本発明について、さらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
[1.未加硫ゴム用防着剤]
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、前述のとおり、下記成分(A)~(D)を含むことを特徴とする。

(A)スメクタイト
(B)下記化学式(1)で表される化合物

-O-(PO)m-H ・・・(1)

前記化学式(1)中、
は、炭素数4~20の直鎖または分岐鎖の炭化水素基であり、
POは、オキシプロピレン基であり、
mは、POの平均付加モル数を表し、かつ、12~40の数である。

(C)前記成分(B)以外の界面活性剤
(D)前記成分(A)以外の無機珪酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質
本発明の未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液は、前記成分(A)であるスメクタイトと、さらに前記成分(B)~(D)とを含むことにより、防着性、流動性、分散溶解性および乾燥物洗浄性の全てに優れる。なお、本発明において「分散」は「溶解」を含む。例えば、本発明の未加硫ゴム用防着剤が水に「分散」するとは、本発明の未加硫ゴム用防着剤の成分のうち、水に可溶な成分が水に溶解し、水に不溶な成分が水に分散することをいう。また、このようなことを、以下において「分散溶解」という場合がある。
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、例えば、水以外の成分の全質量100質量%に対し、前記成分(A)を20~80質量%、前記成分(B)を0.1~5質量%、前記成分(C)を5~20質量%、前記成分(D)を0.1質量%以上含んでいてもよい。後述するように、例えば、防着性および滑性と、未加硫ゴム用防着剤の使い勝手(例えば水分散性、乾燥物洗浄性、液流動性)とのバランスの観点から、各成分の含有率は、このような数値範囲が好ましい。
[1-1.成分(A):スメクタイト]
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、前記成分(A)であるスメクタイト(以下「スメクタイト(A)」という場合がある。)は、特に限定されないが、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト、および、モンモリロナイトを含有するベントナイト等が挙げられる。成分(A)は、スメクタイトを1種類のみ含んでいても良いが、2種類以上のスメクタイトを併用しても良い。
前記成分(A)は、例えば、防着性を担う成分として機能する。具体的には、例えば、前記成分(A)が被膜を形成することで、防着性を発揮し得ると考えられる。本発明の未加硫ゴム用防着剤中における前記成分(A)の含有率は、特に限定されず、目的に応じて選択可能であるが、水以外の成分の全質量100質量%に対し、好ましくは20質量%以上80質量%以下、より好ましくは30質量%以上80%質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは35質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上80質量%以下である。水以外の成分の全質量100質量%に対し、前記成分(A)の含有率が20質量%以上であると、良好な防着性が得られるため好ましい。一方、前記成分(A)の含有率が80質量%以下であると、本発明の水分散性、乾燥物洗浄性、濃縮処理液の流動性向上効果をより有効に得ることができるため好ましい。
前記成分(A)(スメクタイト)は、例えば、スメクタイトを含む無機化合物(例えば、前記無機化合物の粉末等)の形態で用いても良い。その場合、前記無機化合物中のスメクタイト含有量の測定方法は、特に限定されないが、例えば、下記の測定方法により測定できる。
(スメクタイト含有量の測定方法)
スメクタイトを含む無機化合物をX線回折により分析し、2θ=7°付近に出現するスメクタイト由来の回折ピーク強度からスメクタイト含有量を算出する。スメクタイト含有量を定量する際のX線回折の分析条件は、下記のとおりとする。

X線回折分析条件
・測定装置:X‘Pert PRO MRD(PANalytical社製)
・ターゲット:Cu
・管電圧:45kV
・管電流:40mA
・スキャン軸:ゴニオ
・スキャン範囲:5°~60°
・ステップサイズ:0.03°
・ステップ時間:12.7秒
・発散スリット:1/2°
・散乱スリット:1°
・受光スリット:なし
[1-2.成分(B):化学式(1)で表される化合物]
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、前記成分(B)は、前述のとおり、下記化学式(1)で表される化合物である。

-O-(PO)m-H ・・・(1)

前記化学式(1)中、
は、炭素数4~20の直鎖または分岐鎖の炭化水素基であり、
POは、オキシプロピレン基であり、
mは、POの平均付加モル数を表し、かつ、12~40の数である。
前記成分(B)は、例えば、本発明の未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液において、水分散性向上、乾燥物洗浄性向上、濃縮処理液の流動性向上等に寄与すると考えられる。
前記成分(B)は、例えば、本発明の未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液において、浸透剤として働いていると考えられる。具体的には、前記成分(B)は、例えば、継粉中またはスメクタイトから形成された強固な乾燥被膜中へ水を導入し易くし、未分散物の低減や乾燥物洗浄性の向上に寄与すると考えられる。また、前記成分(B)の配合によって、例えば、処理液(未加硫ゴム用防着剤水分散液)中のスメクタイトの構造形成を阻害する効果があると考えられる。前記成分(B)の配合によって、特に、高濃縮時(高濃度の未加硫ゴム用防着剤水分散液)の粘度を低減することが可能となる。
前記成分(B)において、前記化学式(1)中のRは、前述のとおり、炭素数4~20の直鎖または分岐鎖の炭化水素基である。Rの炭素数は、前記成分(B)の親水性と疎水性とのバランスの観点から、前述のとおり4~20であり、4~18が好ましく、4~12がより好ましく、4~8がさらに好ましい。
前記成分(B)において、前記化学式(1)中のmは、前述のとおり、PO(オキシプロピレン基)の平均付加モル数を表し、かつ、12~40の数である。mは、例えば、12以上、14以上、16以上、40以下、36以下、34以下であってもよい。mの数値は、例えば、前記成分(A)と成分(B)の相互作用の観点から適宜設定することができる。mの数値が下限値以上、上限値以下であれば、高濃縮時の粘度を低減することができる。
本発明の未加硫ゴム用防着剤中における前記成分(B)の含有率は、特に限定されず、目的に応じて選択可能であるが、水以外の成分の全質量100質量%に対し、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上4質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上3質量%以下である。より有効な防着性を得るためには、前記成分(B)の含有率が低いことが好ましい。十分な水分散性、乾燥物洗浄性、濃縮処理液の流動性向上効果を得るためには、前記成分(B)の含有率が高いことが好ましい。
[1-3.成分(C):前記成分(B)以外の界面活性剤]
前記成分(C)は、前述のとおり、前記成分(B)以外の界面活性剤である。前記成分(C)(以下「界面活性剤(C)」という場合がある。)は、本発明の未加硫ゴム用防着剤および未加硫ゴム用防着剤水分散液に対し、例えば、ゴムに対する濡れ性および水分散性を付与する働きをすると考えられる。
界面活性剤(C)(前記成分(C))としては、特に限定されないが、例えば、下記(1)~(5)等が挙げられる。また、界面活性剤(C)は、界面活性剤を1種類のみ用いても良いし、2種類以上併用しても良い。

(1)高級脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシアルキレンエーテルカルボン酸塩、アルキル(又はアルケニル)アミドエーテルカルボン酸塩、アシルアミノカルボン酸塩等のカルボン酸型アニオン界面活性剤
(2)高級アルコール硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノ硫酸エステル塩等の硫酸エステル型アニオン界面活性剤
(3)アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、ジアルキルスルホコハク酸塩等のスルホン酸型アニオン界面活性剤
(4)アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルリン酸エステル塩、グリセリン脂肪酸エステルモノリン酸エステル塩等のリン酸エステル型アニオン界面活性剤
(5)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型のノニオン界面活性剤
アニオン界面活性剤の対イオンは、特に限定されないが、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミンが好ましい。これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アニオン界面活性剤としては、未加硫ゴムの表面との濡れ性により優れる防着剤懸濁液が得られることから、α-オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩が好ましく、α-オレフィンスルホン酸塩としてはα-オレフィンスルホン酸ナトリウム「リポランLB-840」(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製)、ジアルキルスルホコハク酸塩としてはジオクチルスルホコハク酸ナトリウムがより好ましい。
ノニオン界面活性剤は、特に限定されないが、本発明では、例えば、下記化学式(2)で表されるノニオン界面活性剤を用いることができる。下記化学式(2)のノニオン界面活性剤は、アニオン界面活性剤とともに、防着剤懸濁液の未加硫ゴムの表面に対する表面張力を低下させることに加えて、防着剤の未加硫ゴムの表面への付着性を効果的に高める作用を奏するものと推測される。ただし、この推測は、本発明をなんら限定しない。

O-(AO)-H (2)
前記化学式(2)中、Rは、炭素数が8~18の脂肪族炭化水素基を示す。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。また、飽和、不飽和のいずれであってもよい。Rの炭素数は、前記成分(A)の分散性に優れる点から、好ましくは10~16であり、12~14がさらに好ましい。
前記化学式(2)中、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を示し、nはAOの平均付加モル数である。nは、特に限定されないが、1~30が好ましく、1~25がより好ましく、1~15がさらに好ましい。具体的には、界面活性能が低下し、前記成分(A)の分散性が低下することを防止する観点からは、nは、1以上である(すなわち、0ではない)ことが好ましい。また、親水性が高くなりすぎることによる付着性低下を防止する観点からは、nは、30を超えないことが好ましく、25を超えないことがより好ましい。nが、好ましくは1~30の範囲、より好ましくは1~25の範囲であれば、前記成分(A)の分散性がさらに向上し、かつ、未加硫ゴム表面の疎水性が高い場合にも被覆に充分な粘弾性を与えることで付着性を向上させるものと推測される。ただし、この推測は、本発明をなんら限定しない。
なお、本発明において、炭素数2~4のオキシアルキレン基とは、例えば、炭素数2~4のアルキレンオキサイドが付加してなる(付加重合により形成される)重合単位である。炭素数2~4のオキシアルキレン基としては、具体的には、エチレンオキサイドが付加してなるオキシエチレン基(EO)、プロピレンオキサイドが付加してなるオキシプロピレン基(PO)、および、ブチレンオキサイドが付加してなるオキシブチレン基(BO)がある。(AO)は、その構造中に、少なくともオキシエチレン基を含む。(AO)が、オキシエチレン基(EO)と、オキシプロピレン基(PO)と、オキシブチレン基(BO)とのうち複数種類を含む場合は、これらの基はブロック状に配列していても、ランダムに配列していてもよい。前記化学式(2)で表される界面活性剤(C)において、好ましい(AO)は、界面活性剤(C)の親水性と疎水性とのバランスに優れる点から、オキシエチレン基(EO)のみからなる。
本発明の未加硫ゴム用防着剤中における界面活性剤(C)は、1種類のみ用いてもよいし、任意の複数種類を併用してもよいが、アニオン界面活性剤およびノニオン界面活性剤を併用すると、未加硫ゴム用防着剤が濡れ性と付着性に優れるという観点から好ましい。本発明の未加硫ゴム用防着剤中における界面活性剤(C)の含有率は、特に限定されず、目的に応じて選択可能であるが、水以外の成分の全質量100質量%に対し、5~20質量%が好ましい。ゴムに対する濡れ性の不足によりハジキが発生する現象を防止する観点からは、界面活性剤(C)の含有率が低すぎないことが好ましい。未加硫ゴム用防着剤使用の際に起泡が多くなり設備からオーバーフローする現象を防止する観点からは、界面活性剤(C)の含有率が高すぎないことが好ましい。
[1-4.成分(D)]
前記成分(D)は、前述のとおり、前記成分(A)以外の無機珪酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質である。前記成分(D)は、例えば、滑剤として働く(未加硫ゴム用防着剤に滑り性を付与する)と考えられる。また、前記成分(D)は、例えば、前記成分(A)に対し補助的に、未加硫ゴム用防着剤に防着性を付与すると考えられる。前記成分(D)は特に限定されず、1種類のみ用いても複数種類併用してもよいが、防着性向上および滑性向上の観点から、金属石鹸(脂肪酸金属塩)、カオリン、マイカ、タルク、および炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも一つ以上を含むことが好ましい。
前記成分(D)において、前記成分(A)(スメクタイト)以外の無機珪酸塩としては、特に限定されないが、例えば、カオリン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ、セリサイト、ネフェリン・サイヤナイト等のケイ酸塩が挙げられる。前記無機炭酸塩は、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩が挙げられる。前記無機硫酸塩は、特に限定されないが、例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩が挙げられる。前記金属酸化物は、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化鉄等の金属酸化物が挙げられる。前記金属水酸化物は、特に限定されないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物が挙げられる。
また、前記成分(D)は、例えば、成分(D1)、すなわち、亜鉛、マグネシウム、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一つの金属石鹸(脂肪酸金属塩)を含んでいてもよい。前記金属石鹸を含むことにより、未加硫ゴム用防着剤の硬度が低減し、防着性が向上すると考えられる。なお、成分(D1)の具体例等については後述する。前記金属石鹸としては、成分(D1)以外には、例えば、脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩等が挙げられる。前記脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩は、特に限定されないが、例えば、後述する成分(D1)の金属(亜鉛、マグネシウム、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一つの金属)を、カルシウムまたはバリウムに変えた塩でも良い。なお、これらの例示に係る各金属石鹸は、非水溶性塩であり、アニオン界面活性剤には該当しない。前記成分(D)は、さらに、無機炭酸塩およびスメクタイトを除く無機珪酸塩の少なくとも一方を含むことが好ましく、その中でもカオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウムの少なくとも一つを含むことが、未加硫ゴム用防着剤の硬度がより低下するため好ましい。硬度低下の観点からは、炭酸カルシウムを含むことがさらに好ましく、カオリン、マイカ、タルクの少なくとも一つと炭酸カルシウムとを共に含むことがさらに好ましい。また、カオリンと、マイカおよび/またはタルクとを併用すると、より優れた防着性が得られるため好ましい。
亜鉛、マグネシウム、およびアルミニウムからなる群から選択される少なくとも一つの金属石鹸(D1)(成分(D1)、以下において「金属石鹸(D1)」ともいう場合がある。)は、特に限定されないが、例えば、カプリル酸亜鉛、カプリル酸マグネシウム、カプリン酸亜鉛、カプリン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸マグネシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、12-ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12-ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、14-オクタデカン酸亜鉛、14-オクタデカン酸マグネシウム、8-オクタデカン酸亜鉛、8-オクタデカン酸マグネシウム、6-オクタデカン酸亜鉛、6-オクタデカン酸マグネシウム、ヤシ脂肪酸亜鉛、ヤシ脂肪酸マグネシウム、パーム油脂肪酸亜鉛、パーム油脂肪酸マグネシウム、パーム核油脂肪酸亜鉛、パーム核油脂肪酸マグネシウム、牛脂脂肪酸亜鉛、牛脂脂肪酸マグネシウム、ひまし油脂肪酸亜鉛、ひまし油脂肪酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種類の金属石鹸が挙げられる。
金属石鹸(D1)は、前記成分(A)とともに本発明の未加硫ゴム用防着剤中に含まれることにより、十分な防着性を有しながら、未加硫ゴムの表面に形成される防着剤の乾燥被膜の硬度を低減し、ゴム中の異物を低減すると考えられる。また、金属石鹸(D1)により、防着性も向上させることができる。
本発明の未加硫ゴム用防着剤中における金属石鹸(D1)の含有率は、前記成分(D)全体の質量に対し、例えば、2質量%以上、または5質量%以上であってもよい。また、金属石鹸(D1)の含有率(質量)は、前記成分(D)全体の質量に対し、例えば、50質量%以下であり、35質量%以下、25質量%以下、または15質量%以下であってもよい。前記成分(D)中の金属石鹸(D1)の含有率を2質量%以上とすることで、乾燥固化物の硬度が低減し、良好な防着性を得ることができる。一方、前記成分(D)中の金属石鹸(D1)の含有率が50質量%以下であれば、十分な防着剤乾燥固化物の硬度低減効果、異物抑制効果が得られ、未加硫ゴム表面に形成された被膜の飛散を抑制する上で好ましい。また、成分(D1)以外の他の前記成分(D)を十分に配合することができる。
また、前記成分(D1)の含有率は、前記成分(A)~(C)の質量の合計に対しては、例えば、1質量%以上25質量%以下が好ましく、2質量%以上20質量%以下、3質量%以上15質量%以下、または3質量%以上10質量%以下であってもよい。前記成分(D1)の含有率が前記範囲であることにより、例えば、本発明の防着剤乾燥固化物の硬度低減効果、異物抑制効果を十分に得ることができ、さらに未加硫ゴム表面に飛散しにくい被膜を形成し、さらに、前記成分(D1)以外の他の前記成分(D)を十分に配合できるので良好な滑り性も得られるため好ましい。
本発明の未加硫ゴム用防着剤中における前記成分(D)の含有率は、特に限定されず、目的に応じて選択可能であるが、水以外の成分の全質量100質量%に対し、例えば、0.1質量%以上、1質量%以上、5質量%以上、15質量%以上、または25質量%以上であってもよく、例えば、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、または55質量%以下であってもよい。より有効な防着性を得るためには、前記成分(D)の含有率が低いことが好ましい。十分な防着剤乾燥固化物の硬度低減効果、異物抑制効果を得るためには、前記成分(D)の含有率が高いことが好ましい。
[1-5.成分(A)~(D)の含有量比]
本発明の未加硫ゴム用防着剤において、前記成分(A)~(D)の含有量比は、特に限定されないが、例えば以下のとおりである。
(1)成分A/成分B(質量比)
前記成分(A)と前記成分(B)との質量比(成分A/成分B)は、特に限定されないが、例えば、1以上、10以上、15以上、または20以上であってもよく、例えば、800以下、200以下、100以下、または80以下であってもよい。
(2)成分B/成分C(質量比)
前記成分(B)と前記成分(C)との質量比(成分B/成分C)は、特に限定されないが、例えば、0.01以上、0.02以上、0.05以上、または0.08以上であってもよく、例えば、5以下、2以下、1以下、または0.5以下であってもよい。
(3)成分A/成分D(質量比)
前記成分(A)と前記成分(D)との質量比(成分A/成分D)は、特に限定されないが、例えば、0.1以上、0.2以上、0.5以上、または1以上であってもよく、例えば、30以下、20以下、15以下、または10以下であってもよい。
(4)成分B/成分D(質量比)
前記成分(B)と前記成分(D)との質量比(成分B/成分D)は、特に限定されないが、例えば、0.001以上、10以上、15以上、または20以上であってもよく、例えば、1以下、0.5以下、0.4以下、または0.3以下であってもよい。
(5)(成分A+成分D)/成分B(質量比)
前記成分(A)および前記成分(D)の質量の和と、前記成分(B)との質量比((成分A+成分D)/成分B)は、特に限定されないが、例えば、1以上、10以上、15以上、または20以上であってもよく、例えば、1000以下、500以下、200以下、または100以下であってもよい。
(6)(成分A+成分D)/(成分B+成分C)(質量比)
前記成分(A)および前記成分(D)の質量の和と、前記成分(B)および前記成分(C)の質量の和との質量比((成分A+成分D)/(成分B+成分C))は、特に限定されないが、例えば、1以上、2以上、3以上、または4以上であってもよく、例えば、30以下、20以下、15以下、または10以下であってもよい。
[1-6.任意成分]
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、前記成分(A)~(D)以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記任意成分としては、例えば、アルコール系溶剤があげられる。
前記アルコール系溶剤は、特に限定されず、1種類のみ用いても2種類以上併用してもよい。アルコール系溶剤は、例えば、アルコール系溶剤としては、1価アルコール、多価アルコールおよびグリコール系溶剤があげられる。1価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~24の直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を有する1価アルコールがよく、具体的には、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、1-オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールがあげられる。多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量100~1000のポリエチレングリコール等があげられる。前記アルキル基またはアルケニル基の炭素数は、例えば、4以上、6以上、または8以上であってもよい。グリコール系溶剤としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1~8の直鎖または分岐鎖のアルコールに炭素数2~5のオキシアルキレン基が1~5モル付加重合したものがあげられる。より具体的には、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル等の炭素数1~8のアルコールのEO(1~5モル)付加体、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル等の炭素数1~8のアルコールのPO(1~5モル)付加体、等があげられる。前記アルキル基またはアルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、例えば、2~8、または4~8であってもよい。
本発明の未加硫ゴム用防着剤中における前記アルコール溶剤の含有率は、目的に応じて選択可能であるが、前記成分(A)~(D)および前記アルコール溶剤の質量の合計に対して、例えば、1質量%以上15質量%以下、2質量%以上12質量%以下、または3質量%以上10質量%以下であってもよい。成分(F)の含有率が上記範囲内であると、未加硫ゴム用防着剤が防着性、沈降性および溶解性に優れるという観点から好ましい。
前記アルコール溶剤以外の任意成分としては、例えば、消泡剤、濡れ性補助剤、粘性補助剤、異物低減補助剤などの添加剤があげられる。
消泡剤としては、特に限定されず、例えば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、コハク酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコール、ジ-t-アミルフェノキシエタノール等のアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプチルセロソルブ、ノニルセロソルブ、3-ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;トリブチルオスフェート、トリス(ブトキシエチル)フォスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミン等のアミド系消泡剤;鉱物油;シリコーン油;等が挙げられる。前記消泡剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
濡れ性補助剤としては、特に限定されず、例えば、アルコール類が挙げられ、より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、グリセリン、1,3-ブタンジオール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、ソルビトール、マルチトール、スクロース、エリスリトール、キシリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、多価アルコールのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドの付加物等が挙げられる。前記濡れ性補助剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
粘性補助剤としては、特に限定されず、例えば、水溶性高分子類が挙げられ、より具体的には、例えば、蛋白類、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、水溶性ウレタン樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ブタジエン樹脂、水溶性フェノール樹脂等の合成水溶性高分子;キサンタンガム、グアーガム、ウェランガム、ローカストビーンガム、ダイユータンガム、タマリンドガム、タマリンドシードガム、トラガントガム、アラビアガム、カラギーナン、ラムザンガム、サクシノグリカン、タラガム、ジェランガム、カラヤガム、ペクチン、アルギン酸誘導体、セルロースエーテル類等の天然水溶性高分子が挙げられる。前記粘性補助剤は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上併用してもよい。
また、本発明の未加硫ゴム用防着剤には、例えば、その粉体流動を抑制する等の目的で、水を含有させてもよい。その場合、水の含有率は、特に限定されず、例えば、2~3質量%程度である。
[2.未加硫ゴム用防着剤の製造方法、未加硫ゴム用水分散液および防着処理済み未加硫ゴム等]
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、前述のとおり、前記成分(A)~(D)を含有する。スメクタイト(成分(A))の含有率は、特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。なお、スメクタイトには、水を含んだ状態で流通するものもあるが、本明細書においてスメクタイトの含有量といった場合、その含有量は、水の量を含まない値である。
本発明の未加硫ゴム用防着剤の製造方法は、特に限定されないが、例えば、未加硫ゴム用防着剤の全ての成分(前記成分(A)~(D)と、必要に応じて配合される任意成分と)を混合することにより製造できる。混合に用いる装置としては、例えば、撹拌羽根を容器内に備えた構成の装置などを使用できる。具体的には、例えば、リボン型混合機、垂直スクリュー型混合機等の揺動撹拌または撹拌を行える粉体混合機を挙げることができる。また、撹拌装置が複数組み合わされたスーパーミキサー(株式会社カワタ製)、ハイスピードミキサー(株式会社アーステクニカ製)、ニューグラムマシン(株式会社セイシン企業製)、SVミキサー(株式会社神鋼環境ソリューション社製)等の多機能粉体混合機なども使用できる。また、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロッドミル、ボールミル、振動ロッドミル、振動ボールミル、円盤型ミル、ジェットミル、サイクロンミルなどの乾式粉砕機を用いてもよい。
また、未加硫ゴム用防着剤の全ての成分(前記成分(A)~(D)と、必要に応じて配合される任意成分と)のうち、液体成分を少なくとも1種使用する場合には、前記液体成分を液体成分以外の混合物に対して吹付けたり散布したりするスプレー装置、シャワー装置などを併用してもよい。
粉末状の未加硫ゴム用防着剤とする場合、粉末防着剤全体に対する成分(A)~(D)の質量の合計の割合は100質量%でもよい。また、水および/またはその他の前記任意成分を含む場合、成分(A)~(D)の質量の合計の割合は特に限定はされないが、未加硫ゴム用防着剤の質量全体に対し、例えば、80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上97質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以上95質量%以下である。
本発明の未加硫ゴム用防着剤は、例えば、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液として用いることができる。本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液の製造方法は、特に限定されない、例えば、前述のようにして本発明の未加硫ゴム用防着剤の全ての成分を混合し、本発明の未加硫ゴム用防着剤を製造した後に、それを水中に分散させても良い。また、例えば、本発明の未加硫ゴム用防着剤の各成分を、それぞれ水中に溶解または分散させ、水中で混合することにより、本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液としても良い。前記各成分を溶解または分散させる方法も特に限定されず、例えば、粉末状の未加硫ゴム用防着剤を攪拌槽内で所定量の水に分散させれば良い。本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液中における、前記成分(A)~(D)の合計の含有量は、特に限定されないが、本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液全体の質量に対し、例えば、0.5質量%以上10質量%以下、0.5質量%以上8質量%以下、0.5質量%以上6質量%以下、または0.5質量%以上4質量%以下であってもよい。
未加硫ゴム用防着剤水分散液とする場合、前記未加硫ゴム用防着剤水分散液中における水以外の成分の質量の合計に対する前記成分(A)~(D)の合計の含有量は、例えば、90質量%以上100質量%以下、90質量%以上99質量%以下、または93質量%以上98質量%以下であってもよい。
このように未加硫ゴム用防着剤水分散液として製造した場合、そのまま後述のウェット法などにより未加硫ゴム表面に塗布して使用することもできる。なお、前記のように未加硫ゴム用防着剤水分散液とする場合、前記成分(B1)が亜鉛塩およびマグネシウム塩の少なくとも一方を含むと、未加硫ゴム用防着剤水分散液の粘度が増加するので、これを後述のウェット法などにより未加硫ゴムに塗布する際、均質に塗布しやすくなり好ましい。特に、前記マグネシウム塩は、スメクタイト(前記成分(A))の配合量(含有率)が少ない場合でも良好な増粘性を示すためより好ましい。
本発明の未加硫ゴム用防着剤を用いた防着処理済み未加硫ゴムの製造方法は、例えば、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤を未加硫ゴムの表面に付着させて防着処理する防着処理工程を有する。このようにして製造された防着処理済み未加硫ゴムは、積み重ねたり、折り畳んだりして貯蔵されても、例えば、未加硫ゴム同士が密着してしまうことがない。
前記防着処理工程は、例えば、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液を前記未加硫ゴムの表面に付着させ、さらに水を揮発させることにより、前記未加硫ゴムの表面に前記本発明の未加硫ゴム用防着剤を付着させる工程であっても良い。より具体的には、前記防着処理工程は、前記本発明の未加硫ゴム用防着剤水分散液(防着剤懸濁液)を未加硫ゴムの表面に付着させる懸濁液付着工程(水分散液付着工程)と、未加硫ゴムの表面の前記防着剤懸濁液を乾燥して、防着剤からなる被膜を未加硫ゴムの表面に形成する乾燥工程とを有することが好ましい。このような防着処理工程を、例えば、ウェット法という。
本発明の防着処理済み未加硫ゴムの製造方法において、前記ウェット法は、特に限定されず、例えば、一般的な未加硫ゴム用防着剤におけるウェット法と同様にして行うことも可能である。前記防着剤懸濁液(水分散液)中における前記本発明の未加硫ゴム用防着剤の濃度は、例えば前述のとおりであり、より具体的には、例えば2~3質量%とすることができるが、これには限定されず、任意に調整可能である。
前記懸濁液付着工程では、例えば、シート状などに成形された時の熱により高温状態(例えば80~150℃程度)にある未加硫ゴムに対して、防着剤懸濁液を付着させることが好ましい。
前記懸濁液付着工程の具体的方法としては、例えば、防着剤懸濁液を未加硫ゴムにシャワー装置で散布する方法、防着剤懸濁液の入った槽に未加硫ゴムを短時間浸漬するディップ法が挙げられる。また、塗布装置を用いて防着剤懸濁液を未加硫ゴムに塗布する方法などを採用してもよく、これらの方法を適宜併用してもよい。
本発明によれば、前述のとおり、防着性と、防着剤起因の異物低減とを両立可能である。本発明の未加硫ゴム用防着剤がこのような効果を奏する理由(メカニズム)は、必ずしも明らかではないが、次のように推測される。すなわち、金属石鹸である成分(B1)により、防着性発現を担う成分である成分(A)が少ない量でも、防着剤の未加硫ゴムの表面への付着性を効果的に高め、防着剤懸濁液が表面にムラなく付着する効果があると推察される。これにより、本発明によれば、優れた防着剤が得られると推測される。これにより、本発明の未加硫ゴム用防着剤から調製された防着剤懸濁液は、防着剤起因の異物(例えば、タイヤ異物)を抑制するとともに、未加硫ゴムの表面を効率的に覆うため良好な防着性を得られるものと考えられる。ただし、これらは、推測されるメカニズムの一例であり、本発明をなんら限定しない。
本発明によれば、従来困難であった防着性と防着剤起因の異物低減の両立を達成できる。本発明の未加硫ゴム用防着剤が適用可能なゴム種には特に制限はなく、未加硫のゴムであればよい。前記ゴム種としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、IIR(ブチルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)等のゴムや、これらのうちの複数種が混合されたゴムが挙げられる。
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により、何ら限定されない。
[実施例1~16および比較例1~4]
下記表1~3に示す重量(質量)比で、各成分を混練して、実施例1~16及び比較例1~3の未加硫ゴム用防着剤を、それぞれ製造した。そして、下記(1)~(4)に示す方法で、防着性、乾燥物洗浄性、分散溶解性、および流動性(液粘度すなわち13質量%濃度の未加硫ゴム用防着剤水分散液の粘度)を、それぞれ評価した。下記表1~3には、これらの評価結果も併せて示す。
<評価>
各種評価には、評価用ゴムとして下記の未加硫SBRゴム及び未加硫NRゴムを用いた。
(未加硫SBRゴム)
SBR(旭化成(株)製、商品名「タフデン4850」)の100質量部に対して、SAFカーボン(三菱化学(株)製、商品名「ダイヤブラックA」)30質量部と、JSRAROMA(プロセスオイル)(日本サン石油(株)製、商品名「アロマ790」)15質量部と、亜鉛華(ハクスイテック(株)製、亜鉛華2種)3質量部と、ステアリン酸(日油(株)製、椿)1質量部と、6PPD(大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクラック6C」)1質量部、CBS(大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーCZ-G」)1質量部、硫黄(鶴見化学(株)製)1.5質量部を配合した(合計151.5質量部)未加硫SBRゴム。

(未加硫NRゴム)
NR(RSS♯3)100質量部に対して、ホワイトカーボン(東ソー・シリカ(株)製、商品名「ニップシールVN-3」)10質量部と、ISAFブラック(東海カーボン(株)製、商品名「シースト6」)30質量部と、JSRAROMA(プロセスオイル)(日本サン石油(株)製、商品名「アロマ790」)15質量部と、亜鉛華(ハクスイテック(株)製、亜鉛華2種)3質量部と、ステアリン酸(日油(株)製、椿)1質量部と、6PPD(大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクラック6C」)1質量部、CBS(大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーCZ-G」)1質量部、硫黄(鶴見化学(株)製)1.5質量部を配合した(合計162.5質量部)未加硫NRゴム。
(1)防着性の評価方法
上記の未加硫ゴムを温度80~120℃のオープンロールで練り出してゴムシート(厚さ:5~8mm、60cm×15cm)とし、繰り出された直後の前記ゴムシートを、実施例1~15および比較例1~4の各例で得られた未加硫ゴム用防着剤組成物を水で2質量%濃度となるように1時間以上撹拌分散して得られる防着剤懸濁液(温度40℃)1Lに約1秒間浸漬した。その後、前記浸漬したゴムシートをすばやく垂直に引き上げ、室温下において垂直状態で静置し、自然乾燥した。
さらにその後、前記ゴムシートを6cm×15cmにカットして2枚を重ね合わせて積層状態とし、これを試験片とした。その積層状態にある試験片に対して、一方の面から垂直方向に1t/mの荷重をかけ、60℃で12時間放置した。
60℃で12時間放置後の前記試験片を室温に戻し、引張り試験機〔AGS-500D、島津製作所〕を用いて180°剥離試験を行い、引っ張り速度300mm/minで剥離抗力(N/cm)を測定した。この剥離効力が小さいほど防着性が優れていると評価した。
(2)乾燥物洗浄性の評価方法
乾燥物洗浄率を、下記数式(X)に従い算出した。この乾燥物洗浄率(%)の数値が大きいほど乾燥物洗浄性が優れていると評価した。

乾燥物洗浄率(%)=(A-B)×100/A ・・・(X)
前記数式(X)中、Aは、下記工程(A1)~(A3)をこの順序で実施して得られた乾燥被膜の質量(g)である。
(A1)電子天秤〔商品名「AX205」、メトラー・トレド社〕にてステンレス板(15cm×6cm、ブライトアニール処理)の質量を測定した。
(A2)未加硫ゴム用防着剤を水で5質量%濃度となるように1時間以上撹拌分散して得られた防着剤懸濁液(未加硫ゴム用防着剤水分散液)5gを、25℃で前記(A1)のステンレス板の片側半面に滴下した。その滴下した未加硫ゴム用防着剤水分散液を55℃の熱風乾燥機〔商品名「PV-221」、ESPEC社〕で120分以上乾燥させることで、前記ステンレス板上に乾燥被膜を作製した。
(A3)前記工程(A2)で得られた乾燥被膜付きのステンレス板の質量を電子天秤〔商品名「AX205」、メトラー・トレド社〕で測定した。その測定された質量から前記(A1)で測定したステンレス板単体の質量を差し引くことで、乾燥被膜の質量Aとした。
前記数式(X)中、Bは、室温下で下記工程(B1)~(B3)をこの順序で実施して得られた流水洗浄後の乾燥被膜の総重量(g)である。
(B1)前記(A2)にて得られた乾燥被膜付きステンレス板の乾燥被膜面が下側になるように30℃傾けた状態で、200mLの水を前記ステンレス板の上側から流すことで、前記ステンレス板上の前記乾燥被膜を洗浄した。
(B2)前記(B1)の洗浄を合計3回繰り返した。
(B3)前記(B2)にて洗浄されたステンレス板を55℃の熱風乾燥機〔商品名「PV-221」、ESPEC社〕で120分以上乾燥させた。その後、電子天秤〔商品名「AX205」、メトラー・トレド社〕で前記乾燥させたステンレス板の質量を測定した。その測定された質量から前記(A1)で測定したステンレス板単体の質量を差し引くことで、流水洗浄後の乾燥被膜の質量Bとした。
(3)分散溶解性の評価方法
未加硫ゴム用防着剤の分散溶解時の残渣率を下記式に従い算出した。この残渣率(%)の数値が小さいほど分散溶解性が優れていると評価した。

残渣率(%)=C×100/21 ・・・(Y)
前記数式(Y)中において、Cは、下記手順(C1)~(C4)をこの順序で実施して得られた防着剤残渣の質量(g)である。
(C1)80ナイロンメッシュの質量を電子天秤にて測定した。
(C2)温度20℃の水679gを1000mLビーカーに入れ、縦長さが1cm、横長さが4cm、傾斜角度が45°である、4枚傾斜パドル翼を1段備えた攪拌機を、ビーカー底面部から4枚傾斜パドル翼の下端までの距離が4.1cmとなるように設置した。
(C3)前記(C2)の前記4枚傾斜パドル翼を回転数300rpmで回転させた状態で、未加硫ゴム用防着剤21g全量を5秒以内にビーカーへ投入し、10分間撹拌した。
(C4)前記(C3)での10分間撹拌後、得られた防着液(未加硫ゴム用防着剤水分散液)を、前記(C1)の80ナイロンメッシュを設置したポリ容器へ注いだ。その後、前記80ナイロンメッシュのみを70℃で12時間乾燥させたものの質量を電子天秤で測定した。その測定された質量から、前記(C1)で測定した前記80ナイロンメッシュ単体の質量を差し引くことで、未加硫ゴム用防着剤残渣の質量Cとした。
(4)流動性(液粘度)の評価方法
未加硫ゴム用防着剤組成物を水で13質量%濃度となるように1時間以上撹拌分散して得られる防着剤懸濁液について、BL型粘度計における、測定温度20℃、ローターNo.2、回転数6rpmの粘度(mPa・s)を測定した。この測定された粘度の数値が小さいほど、流動性が優れていると評価した。
Figure 2023095689000001
Figure 2023095689000002
Figure 2023095689000003
前記表1~3に示したとおり、前記成分(A)~(D)を全て含む実施例の未加硫ゴム用防着剤水分散では、防着性、流動性、分散溶解性および乾燥物洗浄性の全てが良好であった。これに対し、前記成分(B)を含まない比較例1および4は、いずれも、液粘度が大きすぎて流動性が悪く、分散溶解性および乾燥物洗浄性も良くなかった。また、比較例2および3は、含有するアルコールPO付加物におけるPOの平均付加モル数が「12~40」の範囲外で、前記成分(B)に該当しなかった。その結果、POの平均付加モル数が小さすぎる比較例2は、比較例1および4と同様に、液粘度が大きすぎて流動性が悪く、分散溶解性および乾燥物洗浄性も良くなかった。一方、POの平均付加モル数が大きすぎる比較例3は、防着性が悪く、未加硫ゴム同士が密着してしまい剥離できなかった。

Claims (3)

  1. 下記成分(A)~(D)を含むことを特徴とする未加硫ゴム用防着剤。

    (A)スメクタイト
    (B)下記化学式(1)で表される化合物

    -O-(PO)m-H ・・・(1)

    前記化学式(1)中、
    は、炭素数4~20の直鎖または分岐鎖の炭化水素基であり、
    POは、オキシプロピレン基であり、
    mは、POの平均付加モル数を表し、かつ、12~40の数である。

    (C)前記成分(B)以外の界面活性剤
    (D)前記成分(A)以外の無機珪酸塩、無機炭酸塩、無機硫酸塩、金属酸化物、金属水酸化物、ベンガラ、カーボンブラック、グラファイト、および金属石鹸からなる群から選択される少なくとも一つの物質
  2. 水以外の成分の全質量100質量%に対し、前記成分(A)を20~80質量%、前記成分(B)を0.1~5質量%、前記成分(C)を5~20質量%、前記成分(D)を0.1質量%以上含む請求項1記載の未加硫ゴム用防着剤。
  3. 請求項1または2記載の未加硫ゴム用防着剤と、水と、を含むことを特徴とする未加硫ゴム用防着剤水分散液。
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