JP2013095978A - 可燃性ガスを発生する精錬剤を用いた精錬処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の精錬処理方法は、吹き込み用ランス3の吐出口6を溶鉄に浸漬させる前に、非発生精錬剤の吹き込みを開始した後、吹き込み用ランス3の吐出口6を溶鉄に浸漬させる。吐出口6の浸漬深さを50mm〜200mmとして非発生精錬剤から発生精錬剤に吹き込みを切り替える。発生精錬剤を吹き込むときの固気比を3kg/Nm3以上としてさらに吐出口6の浸漬深さを200mmより大きくする。再び吐出口6の浸漬深さを50mm〜200mmとして発生精錬剤から非発生精錬剤に吹き込みを切り替える。切り替え後の非発生精錬剤の固気比を3kg/Nm3以上とし且つ溶鉄中で1分以上吹き込むものである。
【選択図】図1
Description
特許文献1では、水と反応して可燃性のあるアセチレンガスを発生するカルシウムカーバイド(CaC2)を含む精錬剤が用いられており、この精錬剤を溶銑に添加後、溶銑の温度以下でH2Oを分離する物質の1種類以上をキャリヤーガスと共に吹き込むことによってスラグ中に残留するCaC2を低減させ、スラグを処理するときに可燃性ガスであるアセチレンガスが発生しないようにしている。
即ち、本発明における課題解決のための技術的手段は、可燃性ガスが発生する精錬剤である発生精錬剤と可燃性ガスが発生しない精錬剤である非発生精錬剤と、吹き込み用ランスの吐出口から溶鉄に吹き込んで精錬する精錬処理方法において、前記吹き込み用ランスを溶鉄に浸漬させる際には、前記溶鉄表面よりも上方にて非発生精錬剤の吹き込みを開始し、その後、前記吹き込み用ランスの吐出口を溶鉄に浸漬させていき、前記溶鉄に対する吐出口の浸漬深さを50mm〜200mmとして非発生精錬剤から発生精錬剤に吹き込みを切り替え、切り替え後の発生精錬剤の固気比を3kg/Nm3以上としたうえで、前記吐出口の浸漬深さを200mmより大きくし、前記吹き込み用ランスを溶鉄から抜き取るに際しては、前記吐出口の浸漬深さを50mm〜200mmとしたうえで、発生精錬剤から非発生精錬剤に吹き込みを切り替え、切り替え後の非発生精錬剤の固気比を3kg/Nm3以上とし且つ前記溶鉄中で1分以上吹き込むようにすることを特徴とする。
一般的に、溶銑や溶鋼などの溶鉄は、様々な精錬剤を用いられて精錬処理が行われている。本発明は、精錬処理中に可燃性ガスを発生する精錬剤(以降、発生精錬剤と呼ぶ)を用いて溶鉄の精錬処理を行う方法を示したものである。
図1は、混銑車1における発生精錬剤を用いた精錬処理方法の一例を示したものである。なお、精錬処理に用いる設備は、混銑車に限定されず、溶銑鍋、溶鋼鍋、転炉のいずれであってもよい。
そして、図1(b)に示すように、上方に設置した吹き込み用ランス3を徐々に下降させて、混銑車1の容器4の開口部5に挿入すると共に、吹き込み用ランス3の先端部に形成された吐出口6から精錬剤を溶鉄2の上方から溶鉄2に向けて吹き込む。このとき吹き込む精錬剤は、精錬処理中に可燃性ガスを発生しない精錬剤(以降、非発生精錬剤と呼ぶ)とされる。即ち、吹き込み用ランス3の吐出口6を溶鉄2に浸漬させる前に、非発生精錬剤の吹き込みを開始する。
図1(d)に示すように、発生精錬剤に切り替えた後、さらに、吹き込み用ランス3を下降させ浸漬深さを200mm以上とし、精錬処理を進める。
図1(f)に示すように、非発生精錬剤へ切り替えた後は、吹き込み用ランス3を上昇させて溶鉄2から抜き、溶鉄2への非発生精錬剤の吹き込みを停止することによって、精錬処理を終了する。なお、発生精錬剤や非発生精錬剤を吹き込む際には、特開平06−212246号公報に示すようにキャリアガスも共に吹き込むこととしている。
前述した如く、本発明の精錬処理は、精錬時に可燃性ガスを発生する精錬剤(発生精錬剤)を用いて、溶鉄の試練を行うものである。発生する可燃性ガスとしては、アセチレン、プロパン、メタン、水素などが該当し、これらは、空気中の爆発限界が10%以下のガス、或いは、爆発限界の上限界と下限界の差が20%以上のガスである。
溶鉄の精錬処理を行うに際し、発生精錬剤に含まれるカルシウムカーバイドが大気(空気中)に触れると、大気中の水分と反応してアセチレンガスを発生してしまうため、本発明では、出来る限りカルシウムカーバイドが大気に触れない状況下で精錬処理を進めるようにしている。
その後、図1(c)に示すように、吹き込み用ランス3の吐出口6を溶鉄に浸漬させた後に、非発生精錬剤から発生精錬剤に吹き込みを切り替えることによって、発生精錬剤が大気に触れることなく溶鉄2中に吹き込むことが可能となる。
表1は、吐出口の浸漬深さと、精錬剤の吹き上がりとの関係を実験等によってまとめたものである。この実験では、実際に使用する精錬剤と同じカルシウムカーバイドを含む精錬剤を用いると共に、図2に示したように、吹き込み用ランス3も操業で用いるものと同じものを用いた。
垂直供給路10及び水平供給路11とから構成される供給路12は、断面視でT字状となっている。水平供給路11の外側開放口(径方向の外壁に形成された開放口)が吐出口6とされ、吐出口6と溶鉄表面との垂直距離が浸漬深さである。吐出口6の大きさ(孔径)φは30〜50mmとされている。
図3(b)に示すように、吹き込み用ランス3を基準位置L1よりも溶鉄2側に下降させたときの下端部3aの下降位置L2、基準位置L1、下端部3aから吐出口6までの吐出間距離L3との関係(浸漬深さ=基準位置L1−下降位置L2+吐出間距離L3)から浸漬深さを求めることができる。これにより、吹き込み用ランス3の現在の下降位置を測定することによって精錬中であっても容易に浸漬深さを求めることができる。なお、吹き込み用ランス3などの位置測定は、非接触型のレーザ距離計などを用いてもよい。
しかしながら、吐出口6の浸漬深さが200mm超え深くなった時点で切り替えると、吐出口6への静圧が高いため、切り替え時において溶鉄2が吐出口6内に浸入し吐出口6が詰まる可能性がある。それ故、精錬剤及びキャリアガスが持つ吹き出しの運動エネルギーが溶鉄の静圧よりも大きくなる状況下、即ち、実操業では吐出口6の浸漬深さが200mm以下であるときに吹き込みの切り替えを行う必要がある。また、非発生精錬剤から発生精錬剤に吹き込みを切り替えた直後は、キャリアガスの若干圧力変動があることからも、吐出口6への静圧が小さいとき(浸漬深さが200mm以下のとき)に吹き込みの切り替えを行うことが好ましい。
さて、溶鉄の精錬効率を高めるためには、溶鉄2を効率よく攪拌することが必要である。吹き込み用ランス3で精錬剤を吹き込むインジェクション方法では、吹き込み用ランス3(吐出口)の浸漬深さを深くすることによって攪拌力が高まり精錬効率の向上が期待できる。例えば、精錬処理の1つである脱硫処理では、「鉄鋼便覧第3版、第2巻、製銑、製鋼、8.転炉製鋼法、8.0一貫製鉄所における製鋼プロセスの現場、p11、丸善株式会社出版、1979年」や「下間ら: 鉄と鋼、51(1965)10、p1909』に記載の通り、ランスを溶銑になるべく浸漬することが望ましく、一般に溶銑深さの1/2〜3/4の深さが適当であること」が記載されている。
固気比が3kg/Nm3よりも小さい場合に、吐出口6の浸漬深さを200mmより大きくしてしまうと、吐出口6にかかる溶鉄の静圧が大きいため、吐出口6が詰まってしまう。つまり、固気比が3kg/Nm3よりも小さい場合は、発生精錬剤の吹込み速度が十分に上がっていない状況であり、この状況で吐出口6の浸漬深さを200mmよりも大きくしてしまいと、溶鉄の静圧に負けて、溶鉄2が吐出口6に入ってしまうことにより詰まりが生じると考えられる。一方、固気比を3kg/Nm3以上として、吐出口6の浸漬深さを200mmよりも大きくしたとしても吐出口6が詰まることはない。
なお、精錬処理を行うにあたって、非発生精錬剤や発生精錬剤を吹き込むときのキャリアガスの流量を一定としておけば、発生精錬剤の吹き込み速度を監視するだけで、簡単に発生精錬剤を吹き込んだ時の固気比を算出することができ、吐出口6の浸漬深さを200mm以下にするタイミングを素早く決定することが可能となる。
発生精錬剤の吹き込みを終了するために、吹き込みを非発生精錬剤に切り替えるときの吐出口6の浸漬深さが、200mmよりも深い場合は、上述したように、溶鉄の静圧が大きいため吐出口6が詰まる虞があり、50mmよりも浅い場合は、非発生精錬剤への切換が遅いため、上述したように、発生精錬剤が吹き上がってしまう。
発生精錬剤から非発生精錬剤への切り替えは、発生精錬剤の吹き込みを溶鉄内で終了させるだけでなく、吹き込みによって供給路12内に残存する発生精錬剤を溶鉄内に排出してクリーニングし、吹き込み用ランス3を溶鉄から抜いたときに、発生精錬剤が大気に触れないようにする目的でも実施する。そのため、発生精錬剤から非発生精錬剤に切り替え後における非発生精錬剤の量及び噴射時間をある程度確保しなければならない。
また、固気比を3kg/Nm3以上としたうえで、その非発生精錬剤の吹き込みを1分以上続ければ、供給路12内の発生精錬剤を溶鉄内に排出することができるが、吹き込み時間が短く1分未満であれば、供給路内に多くの発生精錬剤が残る可能性がある。
次に、この実験に関して詳しく説明する。
図4は、発生精錬剤と非発生精錬剤とを供給する供給設備を示したものである。この供給設備は実験でも用いられるが、実操業で用いられるものと同じ構成である。
図4に示すように、供給装置20は、発生精錬剤を入れる第1容器21と、この発生精錬剤とは別に非発生精錬剤を入れる第2容器21と、発生精錬剤や非発生精錬剤を溶鉄に供給するための吹き込み用ランス3とを備えていて、これら第1容器21、第2容器22及び吹き込み用ランス3は配管23によって連通状に接続されている。第1容器21の出側、第2容器22の出側、吹き込み用ランス3の入側などにはボール弁などの開閉弁24や可変弁26が接続されている。
図5(a)に示すように、非発生精錬剤に切り替え後は、吹き込み用ランス3を溶鉄から抜き出して吹き込みを停止して脱硫処理を終了した後、吐出口6を塞ぐ布(精錬剤採取用の布)25を巻き付ける。その後、図5(b)に示すように、キャリアガスのみを2分間流して配管23に残存する精錬剤を吐出口側へ案内する。なお、精錬剤を確実に採取するため、精錬剤採取用の布25は、材質がコーネックスから成るバグフィルター用の濾布を使用して、濾布は二重に吹き込み用ランス3に巻き付けた。このような脱硫処理と精錬剤採取とを6回繰り返し行い、採取した精錬剤は、平均で6.8gであり、最大で8.1gであった。
詳しくは、図5(c)に示すように、吐出口6が地金30で塞がれていて且つ垂直供給路11と連通しておらず水平供給路11内は非常に空間の狭い密閉空間とし、しかも、この密閉空間に実験により採取した量の精錬剤Xが残っているとし、この精錬剤Xが全て可燃性ガスを発生するカルシウムカーバイドであると仮定する。この仮定は、密閉空間となった水平供給路11において、採取した精錬剤Xすなわちカルシウムカーバイドから最大量のアセチレンガスが発生したという極めて厳しい状況を意味する。
ここで、吹き込み用ランス3内におけるカルシウムカーバイドの濃度と、アセチレンガスの濃度との関係をまとめると、図6に示すようになる。図6に示すように、吹き込み用ランス3内に残留した精錬剤中(残留精錬剤)に占めるカルシウムカーバイドの比率(カルシウムカーバイドの濃度)を0.2%以下にすれば、アセチレンガスの濃度を爆発限界(2.5%)以下に抑えることができる。
図7に示すように、非発生精錬剤の吹き込み時間を1分以上とし且つ固気比を3.0kg/Nm3以上とすれば、残存した精錬剤中のカルシウムカーバイドの比率(濃度)を0.2%以下ににすることができ、カルシウムカーバイドのクリーニングを十分にすることがわかる。
溶銑温度は、1270〜1450℃とし、精錬剤と共に吹き込むキャリアガスは窒素ガスで、キャリアガスの吹き込みの流量は11〜15Nm3/minとした。
実施例1〜14に示すように、非発生精錬剤の吹き込み開始は、溶銑表面から200mm上方の位置(溶銑表面+200mm)で行っていて、吹き込み用ランス3の吐出口6を溶銑に浸漬させる前に非発生精錬剤の吹き込みを開始しているため、吐出口6の詰まりは無かった。
比較例23及び24では、切り替え後、発生精錬剤を吹き込むときの固気比が3kg/Nm3未満の状態で吐出口6の浸漬深さを200mm以上としているため吐出口6の詰まりが発生した。また、比較例25及び26では、切り替え後、発生精錬剤を吹き込むとき
の固気比は3kg/Nm3以上であるが、吐出口6の浸漬深さを200mm以上と深くしなかったため、脱硫処理が効率よく進まず、脱硫処理後の[S]が規定である0.005質量%以下にすることができなかった。
例えば、上記の実施形態は、溶銑の精錬処理における精錬剤の吹き込み方法を規定したものであるため、精錬する対象物が変わっても(溶鋼であっても)、同様の効果を得ることができる。また、溶鉄を入れる容器4が混銑車1から溶銑鍋、溶鋼鍋、転炉などに変わっても同様の効果を得ることができる。精錬処理は、吹き込み用ランス3を用いて行うものであれば、当然に脱硫処理に限定されない。
また、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
2 溶鉄
3 吹き込み用ランス
3a 下端部
4 容器
5 開口部
6 吐出口
10 垂直供給路
11 水平供給路
12 供給路
20 供給装置
21 第1容器
22 第2容器
23 配管
24 開閉弁
25 精錬剤採取用の布
26 可変弁
L1 準位置
L2 下降位置
L3 吐出間距離
Claims (1)
- 可燃性ガスが発生する精錬剤である発生精錬剤と可燃性ガスが発生しない精錬剤である非発生精錬剤と、吹き込み用ランスの吐出口から溶鉄に吹き込んで精錬する精錬処理方法において、
前記吹き込み用ランスを溶鉄に浸漬させる際には、
前記溶鉄表面よりも上方にて非発生精錬剤の吹き込みを開始し、その後、前記吹き込み用ランスの吐出口を溶鉄に浸漬させていき、
前記溶鉄に対する吐出口の浸漬深さを50mm〜200mmとして非発生精錬剤から発生精錬剤に吹き込みを切り替え、
切り替え後の発生精錬剤の固気比を3kg/Nm3以上としたうえで、前記吐出口の浸漬深さを200mmより大きくし、
前記吹き込み用ランスを溶鉄から抜き取るに際しては、
前記吐出口の浸漬深さを50mm〜200mmとしたうえで、発生精錬剤から非発生精錬剤に吹き込みを切り替え、
切り替え後の非発生精錬剤の固気比を3kg/Nm3以上とし且つ前記溶鉄中で1分以上吹き込むようにする
ことを特徴とする可燃性ガスを発生する精錬剤を用いた精錬処理方法。
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