JP2013087308A - 金属ナノ粒子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】平均粒子径20〜120nmの範囲内の原料金属ナノ粒子10を準備する工程と、原料金属ナノ粒子10を、芳香環が縮合若しくは単結合した芳香族系炭化水素又はその水素化物、あるいは芳香環が酸素原子によって連結した芳香族系エーテル化合物又はその水素化物を主成分とする沸点が200℃以上の非極性有機溶媒中で、200℃〜320℃の範囲内の温度で加熱する熱処理工程と、を備えた金属ナノ粒子の製造方法。非極性有機溶媒は、ナフタレン、フェナントレン、メチルナフタレン、ビフェニル、ジエチルジフェニル、ジフェニルエーテル、ジベンジルトルエン、ベンジルジフェニル、水素化トリフェニル、テトラリン、ジシクロヘキシルベンゼン及びシクロヘキシルビフェニル等を含むものが好ましい。
【選択図】図2
Description
前記原料金属ナノ粒子を、芳香環が縮合若しくは単結合した芳香族系炭化水素又はその水素化物、あるいは芳香環が酸素原子によって連結した芳香族系エーテル化合物又はその水素化物を主成分とする沸点が200℃以上の非極性有機溶媒中で、200℃〜320℃の範囲内の温度で加熱する熱処理工程と、
を備えている。
A)カルボン酸ニッケル及び1級アミンを含む混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を得る錯化反応液生成工程、
及び、
B)該錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱して該錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、1級アミンで被覆された原料ニッケルナノ粒子のスラリーを得る原料ニッケルナノ粒子スラリー生成工程、
を含む工程を行うことにより調製されたものであってもよい。
本実施の形態の金属ナノ粒子の製造方法において、原料金属ナノ粒子(熱処理の対象となる原料として用いる金属ナノ粒子)を構成する金属種としては、例えば、Co、Fe、Ni、Cu、Ag、Au、Pt、Pd、Ru、In、及びそれらの合金等を挙げることができる。これらの中でも、磁性金属であるCo、Fe、Ni、その合金は、熱処理工程をマイクロ波照射によって行うことが可能であるため好ましい。
熱処理工程は、原料金属ナノ粒子を、芳香族系炭化水素又はその水素化物を主成分とする沸点が200℃以上の非極性有機溶媒(以下、単に「非極性有機溶媒」と記すことがある)中で、200℃〜320℃の範囲内で加熱することにより行われる。ここで、主成分とするとは、全非極性有機溶媒中に芳香族系炭化水素又はその水素化物を合計で50体積%以上含むことを意味する。
次に、本発明の好ましい実施の形態として、原料金属ナノ粒子が液相法で調製されたニッケルナノ粒子(以下、「原料ニッケルナノ粒子」と記すことがある)である場合を例に挙げて、マイクロ波照射による熱処理工程の内容を具体的に説明する。ここでは、原料ニッケルナノ粒子は、液相でのマイクロ波照射により合成され、表面に水酸基を有する平均粒子径20〜100nmの範囲内のニッケルナノ粒子である。この原料ニッケルナノ粒子は、その全重量に対して、酸素原子を0.2〜5.0重量%の範囲内で含有し、かつ、炭素原子を0.5〜5.0重量%の範囲内で含有することが好ましい。これらの酸素原子及び炭素原子は、液相反応による原料ニッケルナノ粒子の合成過程で、原料ニッケルナノ粒子の表面に、水酸化物又は有機物として付着したものである。なお、原料ニッケルナノ粒子は、ニッケル以外の金属を含むニッケル合金のナノ粒子であってもよい。この場合、ニッケル以外の金属として、例えば、銅、コバルト等を挙げることができる。ニッケル合金におけるニッケル以外の金属の含有量は、耐酸化性などの熱的安定性を維持し、コストを抑制する観点から、例えば5〜80重量%の範囲内であることが好ましい。
まず、本実施の形態のニッケルナノ粒子の製造方法において出発原料となる、表面に水酸基を有する平均粒子径20〜100nmの範囲内のニッケルナノ粒子(原料ニッケルナノ粒子)を製造する方法について説明する。原料ニッケルナノ粒子は、次の工程A及びB;
A)カルボン酸ニッケル及び1級アミンを含む混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を得る錯化反応液生成工程、
及び、
B)該錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱して該錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、1級アミンで被覆された原料ニッケルナノ粒子のスラリーを得る原料ニッケルナノ粒子スラリー生成工程、
を含むマイクロ波照射による液相法により調製することができる。
(カルボン酸ニッケル)
カルボン酸ニッケル(カルボン酸のニッケル塩)は、カルボン酸の種類を限定するものではなく、例えば、カルボキシル基が1つのモノカルボン酸であってもよく、また、カルボキシル基が2つ以上のカルボン酸であってもよい。また、非環式カルボン酸であってもよく、環式カルボン酸であってもよい。このようなカルボン酸ニッケルとして、非環式モノカルボン酸ニッケルを好適に用いることができ、非環式モノカルボン酸ニッケルのなかでも、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル、プロピオン酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、安息香酸ニッケル等を用いることがより好ましい。これらの非環式モノカルボン酸ニッケルを用いることによって、例えば、得られる原料ニッケルナノ粒子は、その形状のばらつきが抑制され、均一な形状として形成されやすくなる。カルボン酸ニッケルは、無水物であってもよく、また水和物であってもよい。
1級アミンは、ニッケルイオンとの錯体を形成することができ、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)に対する還元能を効果的に発揮する。一方、2級アミンは立体障害が大きいため、ニッケル錯体の良好な形成を阻害するおそれがあり、3級アミンはニッケルイオンの還元能を有しないため、いずれも単独では使用できないが、1級アミンを使用する上で、生成する原料ニッケルナノ粒子の形状に支障を与えない範囲でこれらを併用することは差し支えない。1級アミンは、ニッケルイオンとの錯体を形成できるものであれば、特に限定するものではなく、常温で固体又は液体のものが使用できる。ここで、常温とは、20℃±15℃をいう。常温で液体の1級アミンは、ニッケル錯体を形成する際の有機溶媒としても機能する。なお、常温で固体の1級アミンであっても、100℃以上の加熱によって液体であるか、又は有機溶媒を用いて溶解するものであれば、特に問題はない。
工程Aでは、均一溶液での反応をより効率的に進行させるために、1級アミンとは別の有機溶媒を新たに添加してもよい。有機溶媒を用いる場合、有機溶媒をカルボン酸ニッケル及び1級アミンと同時に混合してもよいが、カルボン酸ニッケル及び1級アミンを先ず混合し錯形成した後に有機溶媒を加えると、1級アミンが効率的にニッケル原子に配位するので、より好ましい。使用できる有機溶媒としては、1級アミンとニッケルイオンとの錯形成を阻害しないものであれば、特に限定するものではなく、例えば炭素数4〜30のエーテル系有機溶媒、炭素数7〜30の飽和又は不飽和の炭化水素系有機溶媒、炭素数8〜18のアルコール系有機溶媒等を使用することができる。また、マイクロ波照射による加熱条件下でも使用を可能とする観点から、使用する有機溶媒は、沸点が170℃以上のものを選択することが好ましく、より好ましくは200〜300℃の範囲内にあるものを選択することがよい。このような有機溶媒の具体例としては、例えばテトラエチレングリコール、n−オクチルエーテル等が挙げられる。
本工程では、カルボン酸ニッケルと1級アミンとの錯形成反応によって得られた錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱し、錯化反応液中のニッケルイオンを還元して1級アミンで被覆された原料ニッケルナノ粒子スラリーを得る。マイクロ波照射によって加熱する温度は、得られるナノ粒子の形状のばらつきを抑制するという観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上とすることがよい。加熱温度の上限は特にないが、処理を能率的に行う観点からは例えば270℃以下とすることが好適である。なお、マイクロ波の使用波長は、特に限定するものではなく、例えば2.45GHzである。なお、加熱温度は、例えばカルボン酸ニッケルの種類や原料ニッケルナノ粒子の核発生を促進させる添加剤の使用などによって、適宜調整することができる。
マイクロ波照射によって原料ニッケルナノ粒子を加熱する温度は、得られるニッケルナノ粒子の耐焼結性を十分に高くする観点から、原料ニッケルナノ粒子を基準にして、熱処理後のニッケルナノ粒子の結晶子径を好ましくは3〜300%、より好ましくは10〜100%の範囲内で増加させる条件で行う。原料ニッケルナノ粒子の結晶子径を所望の増加率で成長させるには、熱処理工程における加熱温度と加熱時間を適切に管理することが重要である。
以上のようにして、結晶子が大きく、耐焼結性に優れたニッケルナノ粒子を製造することができる。ニッケルナノ粒子の平均粒子径は、熱処理前とほぼ同じであり、20〜100nm範囲内であることが好ましく、30〜100nmの範囲内がより好ましい。また、ニッケルナノ粒子の粒子径分布は狭いほどよく、CV値が0.2以下であることが好ましい。このニッケルナノ粒子は、熱処理前の原料ニッケルナノ粒子に比べ、結晶子径が好ましくは3〜300%の範囲内で大きくなっているため、焼結温度が原料ニッケルナノ粒子に比べて50℃以上(好ましくは100℃以上)高く、耐焼結性が改善されている。従って、熱処理工程を経て得られるニッケルナノ粒子は、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極等の材料として好適に用いることができる。
金属粒子の平均粒子径は、SEM(走査電子顕微鏡)により試料の写真を撮影して、その中から無作為に200個を抽出して、その平均粒径(面積平均径)と標準偏差を求めた。CV値(変動係数)は(標準偏差)÷(平均粒径)によって算出した。
粉末X線回折(XRD)結果からシェラーの式により算出した。
試料を5Φ×2mmの円柱状成型器に入れ、プレス成型して得られる成型体を作製し、窒素ガス(水素ガス3%含有)の雰囲気下で、熱機械分析(TMA)および熱重量分析(TGA)を行った。また、熱機械分析装置(TMA)により測定される5%熱収縮の温度を5%熱収縮温度とした。
144.9gのミリスチルアミンに18.5gのギ酸ニッケル二水和物を加え、窒素フロー下、120℃で10分間加熱することによって、ギ酸ニッケルを溶解させて錯化反応液を得た。次いで、その錯化反応液に、さらに96.6gのミリスチルアミンを加え、マイクロ波を用いて180℃で10分間加熱することによって、Niナノ粒子スラリー1aを得た。
ガラス製の反応容器中で、非極性有機溶媒の水素化トリフェニル(沸点350℃)の200g中に合成例1で得られたNiナノ粒子1bを20g分散させた。この反応容器をマイクロ波照射装置にセットし、2.45GHz、1.0kWのマイクロ波を照射することによって、300℃、30分間加熱処理を行い、ニッケルナノ粒子1を得た。得られたニッケルナノ粒子1の5%熱収縮温度は530℃であり、XRD分析による結晶子径は22.8nmであり、結晶子径の増加率は15%であった。なお、平均粒子径は、熱処理前と変わらなかった。
ガラス製の反応容器中で、非極性有機溶媒のメチルナフタレン(沸点240℃)の200g中に合成例1で得られたNiナノ粒子1bを20g分散させた。この反応容器をマイクロ波照射装置にセットし、2.45GHz、1.0kWのマイクロ波を照射することによって、240℃、30分間加熱処理を行い、ニッケルナノ粒子2を得た。得られたニッケルナノ粒子2の5%熱収縮温度は400℃であり、XRD分析による結晶子径は21.5nmであり、結晶子径の増加率は7.5%であった。なお、平均粒子径は、熱処理前と変わらなかった。
実施例1における2.45GHz、1.0kWのマイクロ波照射による300℃、30分間加熱処理の代わりに、2.45GHz、1.0kWでパルス間隔をオン1.5秒、オフ 0.5秒の条件でマイクロ波照射による300℃、30分間加熱処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、ニッケルナノ粒子3を得た。得られたニッケルナノ粒子3の5%熱収縮温度は660℃であり、XRD分析による結晶子径は24.8nmであり、結晶子径の増加率は24%であった。なお、平均粒子径は、熱処理前と変わらなかった。
実施例1における2.45GHz、1.0kWのマイクロ波照射による300℃、30分間加熱処理の代わりに、オイルバスによる300℃、30分間加熱処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして、ニッケルナノ粒子4を得た。得られたニッケルナノ粒子4の5%熱収縮温度は330℃であり、XRD分析による結晶子径は20.8nmであり、結晶子径の増加率は4%であった。なお、平均粒子径は、熱処理前と変わらなかった。
実施例2における非極性有機溶媒としてメチルナフタレン(沸点240℃)の200gを使用したことの代わりに、ジフェニルエーテル(沸点257℃)の200gを使用したこと以外、実施例2と同様にして、ニッケルナノ粒子5を得た。得られたニッケルナノ粒子5の5%熱収縮温度は400℃であり、XRD分析による結晶子径は21.5nmであり、結晶子径の増加率は7.5%であった。なお、平均粒子径は、熱処理前と変わらなかった。
実施例1において、マイクロ波照射による加熱温度を180℃とした以外は、実施例1と同様にして、Niナノ粒子1bに対し熱処理を行った。得られたニッケルナノ粒子の5%熱収縮温度は280℃であり、XRD分析による結晶子径は19.9nmであった。
実施例1において、マイクロ波照射による加熱温度を150℃とした以外は、実施例1と同様にして、Niナノ粒子1bに対し熱処理を行った。得られたニッケルナノ粒子の5%熱収縮温度は280℃であり、XRD分析による結晶子径は19.9nmであった。
実施例1において、水素化トリフェニルに替えてポリオキシエチレンオレイルアミンエーテル中にNiナノ粒子1bを分散させた以外は実施例1と同様にして、Niナノ粒子1bに対し熱処理を行った。得られたニッケルナノ粒子の5%熱収縮温度は530℃であった。比較例3で得たニッケルナノ粒子のXRD分析の結果を図6に示した。SEMによる観察では、ニッケルナノ粒子の融着が観察され、XRD分析により、hcp構造に特有のピーク(図6中、丸印で示す)が確認され、炭化が進んでいることが判明した。
Claims (10)
- 平均粒子径20〜120nmの範囲内の原料金属ナノ粒子を準備する工程と、
前記原料金属ナノ粒子を、芳香環が縮合若しくは単結合した芳香族系炭化水素又はその水素化物、あるいは芳香環が酸素原子によって連結した芳香族系エーテル化合物又はその水素化物を主成分とする沸点が200℃以上の非極性有機溶媒中で、200℃〜320℃の範囲内の温度で加熱する熱処理工程と、
を備えた金属ナノ粒子の製造方法。 - 前記熱処理工程は、前記金属ナノ粒子の結晶子径が、熱処理前の原料金属ナノ粒子に比べ3〜300%増加する条件で行う請求項1に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
- 前記非極性有機溶媒が、2〜3個の芳香環が縮合若しくは単結合した芳香族系炭化水素、前記芳香族系炭化水素の1個以上の芳香環が水素化された水素化物、2〜3個の芳香環が酸素原子によって連結した芳香族系エーテル化合物、及び前記芳香族系エーテル化合物の1個以上の芳香環が水素化された水素化物からなる群より選ばれる1種以上を含むものである請求項1に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
- 前記非極性有機溶媒が、ナフタレン、フェナントレン、メチルナフタレン、ビフェニル、ジエチルジフェニル、ジフェニルエーテル、ジベンジルトルエン、ベンジルジフェニル、水素化トリフェニル、テトラリン、ジシクロヘキシルベンゼン及びシクロヘキシルビフェニルからなる群より選ばれる1種以上を含むものである請求項1に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
- 前記熱処理工程をマイクロ波照射により行う請求項1から4のいずれか1項に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
- 前記マイクロ波の照射が、パルス照射である請求項5に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
- 前記原料金属ナノ粒子は、酸素原子を0.2〜5.0重量%の範囲内で含有し、かつ、炭素原子を0.5〜5.0重量%の範囲内で含有する原料ニッケルナノ粒子である請求項1から6のいずれか1項に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
- 前記原料ニッケルナノ粒子が、液相でのマイクロ波照射により得られたCV値が0.2以下のニッケルナノ粒子である請求項7に記載の金属ナノ粒子の製造方法。
- 前記原料ニッケルナノ粒子が、次の工程A及びB;
A)カルボン酸ニッケル及び1級アミンを含む混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を得る錯化反応液生成工程、
及び、
B)該錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱して該錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、1級アミンで被覆された原料ニッケルナノ粒子のスラリーを得る原料ニッケルナノ粒子スラリー生成工程、
を含む工程を行うことにより調製されたものである、請求項8に記載の金属ナノ粒子の製造方法。 - 請求項1から9のいずれか1項に記載の方法により製造された金属ナノ粒子。
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