JP5831967B2 - 複合ニッケルナノ粒子及びその製造方法 - Google Patents
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A)カルボン酸ニッケル及び1級アミンを含む混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を得る錯化反応液生成工程、
及び、
B)該錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱して該錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、1級アミンで被覆された金属ニッケルナノ粒子のスラリーを得る金属ニッケルナノ粒子スラリー生成工程、
を含む工程を行うことにより調製されたものであってもよい。
本実施の形態の複合ニッケルナノ粒子の製造方法において、原料として用いるニッケルナノ粒子は、表面に水酸基を有する平均粒子径20〜100nmの範囲内のニッケルナノ粒子である。ニッケルナノ粒子は、液相でのマイクロ波照射により合成されたものであることが好ましい。この液相でのマイクロ波照射によるニッケルナノ粒子の合成法については、後述する。このニッケルナノ粒子は、その全重量に対して、酸素原子を0.5〜5.0重量%の範囲内で含有し、かつ、炭素原子を0.5〜5.0重量%の範囲内で含有することが好ましい。これらの酸素原子及び炭素原子は、液相反応によるニッケルナノ粒子の合成過程で、ニッケルナノ粒子の表面に、水酸化物又は有機物として付着したものである。
本実施の形態の複合ニッケルナノ粒子の製造方法に用いる金属アルコキシドとしては、例えばチタン、バリウム、シリコン、アルミウム、希土類金属等の金属のアルコキシドを用いることが好ましい。ここで、希土類金属としては、例えばスカンジウム、イットリウム、ランタン、ネオジム、ホロニウム、デスプロジウムなどを挙げることができる。
本実施の形態の複合ニッケルナノ粒子の製造方法に使用する沸点が200℃以上の有機溶媒(高沸点有機溶媒)としては、例えばエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコールなどのポリグリコール、ジオクチルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルアミンエーテルなどのポリエーテル、メチルナフタレン、ビフェニル、ジエチルジフェニル、ジフェニルエーテル、ジベンジルトルエン及びベンジルジフェニルなどの芳香族系炭化水素、芳香族系炭化水素の水素化物(例えば水素化トリフェニル、ジシクロヘキシルベンゼン、シクロヘキシルビフェニルなど)及びポリアルキルオレフィンなどの脂肪族系炭化水素等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合して使用してもよい。上記高沸点有機溶媒の中でも、マイクロ波が局部的に効率良くニッケルナノ粒子に吸収されるようにする観点から、極性が低いものが好ましく、炭素数10以上の炭化水素を用いることが好ましい。有機溶媒の沸点を200℃以上として、ニッケルナノ粒子の表面における金属含有皮膜の形成反応の温度よりも有機溶媒の沸点を高くしておくことにより、金属含有皮膜の形成反応を制御性よく効率的に進めることができる。
マイクロ波照射によって加熱する温度は、得られる複合ニッケルナノ粒子の耐焼結性を十分に高くする観点から、150℃以上とする必要があり、200℃以上が好ましく、250℃以上とすることがより好ましい。加熱温度の上限は特にないが、処理を能率的に行う観点からは例えば350℃以下とすることが好適である。加熱時間は、金属含有皮膜によりニッケルナノ粒子の全体を十分に被覆するため、例えば1分間以上が好ましく、5分間以上がより好ましい。加熱時間の上限は特にないが、エネルギー消費及び工程時間を節約する観点から60分間以下が好ましい。なお、マイクロ波の使用波長は、特に限定するものではなく、例えば2.45GHzを用いることができる。
以上のようにして、ニッケルナノ粒子本体の表面に、金属含有皮膜を有する複合ニッケルナノ粒子を製造することができる。この複合ニッケルナノ粒子における金属含有皮膜の厚みは、十分な耐焼結性を得る観点から、1〜15nmの範囲内が好ましく、3〜10nmの範囲内がより好ましい。金属含有皮膜は、ニッケルナノ粒子本体の全体を均一な膜厚で被覆していることが好ましいが、必要な耐焼結性が得られる限りにおいて、若干の欠陥が存在してもよい。複合ニッケルナノ粒子の平均粒子径は、原料のニッケルナノ粒子の粒子径に金属含有皮膜の厚みを加えた大きさとなるが、金属含有皮膜の厚みは無視できるため、原料のニッケルナノ粒子の粒子径とほぼ同様に、20〜100nm範囲内であることが好ましく、30〜100nmの範囲内がより好ましい。また、複合ニッケルナノ粒子の粒子径分布は狭いほどよく、CV値が0.2以下であることが好ましい。この複合ニッケルナノ粒子は、平均粒子径が100nm以下であり、粒子径分布が狭く、かつ後記実施例に示したように、焼結温度が従来のニッケルナノ粒子に比べて50℃以上(好ましくは100℃以上)高いため、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極の材料として好適に用いることができる。
次に、本実施の形態の複合ニッケルナノ粒子の製造方法の原料である、表面に水酸基を有する平均粒子径20〜100nmの範囲内のニッケルナノ粒子を製造する方法について説明する。原料のニッケルナノ粒子は、次の工程A及びB;
A)カルボン酸ニッケル及び1級アミンを含む混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を得る錯化反応液生成工程、
及び、
B)該錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱して該錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、1級アミンで被覆された金属ニッケルナノ粒子のスラリーを得る金属ニッケルナノ粒子スラリー生成工程、
を含むマイクロ波照射による液相法により調製することができる。
(カルボン酸ニッケル)
カルボン酸ニッケル(カルボン酸のニッケル塩)は、カルボン酸の種類を限定するものではなく、例えば、カルボキシル基が1つのモノカルボン酸であってもよく、また、カルボキシル基が2つ以上のカルボン酸であってもよい。また、非環式カルボン酸であってもよく、環式カルボン酸であってもよい。このようなカルボン酸ニッケルとして、非環式モノカルボン酸ニッケルを好適に用いることができ、非環式モノカルボン酸ニッケルのなかでも、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル、プロピオン酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、安息香酸ニッケル等を用いることがより好ましい。これらの非環式モノカルボン酸ニッケルを用いることによって、例えば、得られるニッケルナノ粒子は、その形状のばらつきが抑制され、均一な形状として形成されやすくなる。カルボン酸ニッケルは、無水物であってもよく、また水和物であってもよい。
1級アミンは、ニッケルイオンとの錯体を形成することができ、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)に対する還元能を効果的に発揮する。一方、2級アミンは立体障害が大きいため、ニッケル錯体の良好な形成を阻害するおそれがあり、3級アミンはニッケルイオンの還元能を有しないため、いずれも単独では使用できないが、1級アミンを使用する上で、生成するニッケルナノ粒子の形状に支障を与えない範囲でこれらを併用することは差し支えない。1級アミンは、ニッケルイオンとの錯体を形成できるものであれば、特に限定するものではなく、常温で固体又は液体のものが使用できる。ここで、常温とは、20℃±15℃をいう。常温で液体の1級アミンは、ニッケル錯体を形成する際の有機溶媒としても機能する。なお、常温で固体の1級アミンであっても、100℃以上の加熱によって液体であるか、又は有機溶媒を用いて溶解するものであれば、特に問題はない。
工程Aでは、均一溶液での反応をより効率的に進行させるために、1級アミンとは別の有機溶媒を新たに添加してもよい。有機溶媒を用いる場合、有機溶媒をカルボン酸ニッケル及び1級アミンと同時に混合してもよいが、カルボン酸ニッケル及び1級アミンを先ず混合し錯形成した後に有機溶媒を加えると、1級アミンが効率的にニッケル原子に配位するので、より好ましい。使用できる有機溶媒としては、1級アミンとニッケルイオンとの錯形成を阻害しないものであれば、特に限定するものではなく、例えば炭素数4〜30のエーテル系有機溶媒、炭素数7〜30の飽和又は不飽和の炭化水素系有機溶媒、炭素数8〜18のアルコール系有機溶媒等を使用することができる。また、マイクロ波照射による加熱条件下でも使用を可能とする観点から、使用する有機溶媒は、沸点が170℃以上のものを選択することが好ましく、より好ましくは200〜300℃の範囲内にあるものを選択することがよい。このような有機溶媒の具体例としては、例えばテトラエチレングリコール、n−オクチルエーテル等が挙げられる。
本工程では、カルボン酸ニッケルと1級アミンとの錯形成反応によって得られた錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱し、錯化反応液中のニッケルイオンを還元して1級アミンで被覆された金属ニッケルナノ粒子スラリーを得る。マイクロ波照射によって加熱する温度は、得られるナノ粒子の形状のばらつきを抑制するという観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上とすることがよい。加熱温度の上限は特にないが、処理を能率的に行う観点からは例えば270℃以下とすることが好適である。なお、マイクロ波の使用波長は、特に限定するものではなく、例えば2.45GHzである。なお、加熱温度は、例えばカルボン酸ニッケルの種類や金属ニッケルナノ粒子の核発生を促進させる添加剤の使用などによって、適宜調整することができる。
マイクロ波照射による液相法によって合成されたニッケルナノ粒子は、平均径20〜100nmの範囲内で非常に粒度分布がそろっており、150nmを超える粗大粒子を完全に排除することも可能である。しかし、XRD測定でシェラーの式により算出される結晶子の大きさは15〜25nmと小さく、また粒子表面には、2〜6nmの水酸化物の皮膜が生成している。そのために、H2/N2雰囲気での5%熱収縮温度は250〜300℃であり、気相法で得られる同じ粒子径のニッケルナノ粒子(結晶子の大きさが40〜50nmで、ニッケル粒子表面は1〜2nmの酸化皮膜)に比べて約100℃程度低い温度になる。このように、マイクロ波照射による液相法にて合成されたニッケルナノ粒子の耐焼結性が気相法によるものに比べ低い温度になる原因は、結晶子が小さいためと、水酸化物皮膜の存在により高温度で脱水反応が生じ、表面水酸基が縮合して、粒子自体が収縮するためと考えられる。
金属粒子の平均粒子径は、SEM(走査電子顕微鏡)により試料の写真を撮影して、その中から無作為に200個を抽出して、その平均粒径(面積平均径)と標準偏差を求めた。CV値(変動係数)は(標準偏差)÷(平均粒径)によって算出した。
粉末X線回折(XRD)結果からシェラーの式により算出した。
金属粒子の表面状態は、TEM(透過型電子顕微鏡)−EDX(エネルギー分散型X線分析装置)により観察した。
5%熱収縮温度は、試料を5Φ×2mmの円柱状成型器に入れ、プレス成型して得られる成型体を作製し、これを窒素ガス(水素ガス3%含有)の雰囲気下で、熱機械分析装置(TMA)により測定される5%熱収率の温度とした。
144.9gのミリスチルアミンに18.5gのギ酸ニッケル二水和物を加え、窒素フロー下、120℃で10分間加熱することによって、ギ酸ニッケルを溶解させて錯化反応液を得た。次いで、その錯化反応液に、さらに96.6gのミリスチルアミンを加え、マイクロ波を用いて180℃で10分間加熱することによって、Niナノ粒子スラリー1aを得た。
ガラス製の反応容器中で、非極性溶媒の水素化トリフェニル(沸点350℃)100g中に合成例1で得られた平均粒子径80nmのNiナノ粒子1bを20g分散させ、さらにジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタンを0.4g及び酢酸を0.01g添加した。この反応容器をマイクロ波照射装置にセットし、2.45GHz、1.5kWのマイクロ波をパルス照射することによって、300℃、20分間加熱処理を行った。得られた複合ニッケルナノ粒子の5%熱収縮温度は380℃であった。また、XRDによる結晶子径は35nmであり、TEM(透過型電子顕微鏡)−EDX(エネルギー分散型X線分析装置)による観察の結果、チタン原子はNi表面に均一に付着していた。
ガラス製の反応容器中で、非極性溶媒の水素化トリフェニル(沸点350℃)100g中に合成例1で得られた平均粒子径80nmのNiナノ粒子1bを20g分散させ、さらにテトライソプロポキシチタン1.0g及びジエトキシバリウム0.8gを添加した。この反応容器をマイクロ波照射装置にセットし、2.45GHz、1.5kWのマイクロ波をパルス照射することによって、300℃、20分間加熱処理を行った。得られた粒子の5%熱収縮温度は450℃でXRDからの結晶子径は40nmであり、TEM−EDXによるチタン及びバリウム原子はNi表面に均一に付着していた。
実施例1のマイクロ波加熱の代わりにオイルバスで同じ時間加熱した。得られた粒子の5%熱収縮温度は320℃でXRDからの結晶子径は30nmであり、TEM−EDXによるチタン原子は実施例1に比べてNi表面には不均一に付着していた。
実施例2のマイクロ波加熱の代わりにオイルバスで同じ時間加熱した。得られた粒子の5%熱収縮温度は350℃でXRDからの結晶子径は32nmであり、TEM−EDXによるチタン及びバリウム原子は実施例2に比べてNi表面には不均一に付着していた。
Claims (7)
- 沸点が200℃以上の有機溶媒中で、金属アルコキシドの存在下、表面に水酸基を有する平均粒子径20〜100nmの範囲内のニッケルナノ粒子にマイクロ波を照射して150℃以上に加熱することにより、表面に前記金属アルコキシド由来の金属元素を含む皮膜が形成された複合ニッケルナノ粒子を製造する複合ニッケルナノ粒子の製造方法。
- 前記金属アルコキシドが、チタン、バリウム、シリコン、アルミウム及び希土類金属からなる群より選ばれる1種または2種以上の金属のアルコキシドである請求項1に記載の複合ニッケルナノ粒子の製造方法。
- 前記有機溶媒が、炭素数10以上の炭化水素である請求項1又は2に記載の複合ニッケルナノ粒子の製造方法。
- 前記マイクロ波の照射が、パルス照射である請求項1から3のいずれか1項に記載の複合ニッケルナノ粒子の製造方法。
- 前記ニッケルナノ粒子は、酸素原子を0.5〜5.0重量%の範囲内で含有し、かつ、炭素原子を0.5〜5.0重量%の範囲内で含有する請求項1から4のいずれか1項に記載の複合ニッケルナノ粒子の製造方法。
- 前記ニッケルナノ粒子が、液相でのマイクロ波照射により得られたCV値が0.2以下のニッケルナノ粒子である請求項1から5のいずれか1項に記載の複合ニッケルナノ粒子の製造方法。
- 前記ニッケルナノ粒子が、次の工程A及びB;
A)カルボン酸ニッケル及び1級アミンを含む混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を得る錯化反応液生成工程、
及び、
B)該錯化反応液を、マイクロ波照射によって170℃以上の温度に加熱して該錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、1級アミンで被覆された金属ニッケルナノ粒子のスラリーを得る金属ニッケルナノ粒子スラリー生成工程、
を含む工程を行うことにより調製されたものである、請求項1から6のいずれか1項に記載の複合ニッケルナノ粒子の製造方法。
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