JP6603031B2 - ニッケル粒子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、優れた分散性を有するニッケル粒子及びその製造方法に関する。
金属微粒子は、バルク金属とは異なる物理的・化学的特性を有することから、例えば、導電性ペーストや透明導電膜などの電極材料、高密度記録材料、触媒材料、インクジェット用インク材料等の様々な工業材料に利用されている。近年では、電子機器の小型化や薄型化に伴い、金属微粒子も、数十〜数百nm程度まで微粒子化が進んでいる。例えば、電子機器の小型化に伴い、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の電極は薄膜多層化が進んでおり、これに伴って電極層の材料には、ニッケル粒子などの金属微粒子が使用されている。
工業材料に使用されるニッケル粒子は、その粒子径が例えば150nmを下回る程度に小さく、粒子径が均一で、かつ分散性に優れることが求められる。しかしながら、微粒子化が進むことで、表面エネルギーの増加により、凝集が生じ易くなり、凝集によって、ハンドリング性が低下したり、塗布時に平滑性が得られず、電極の薄膜化が困難になったりする、などの問題が生じている。
表面エネルギーの増加に伴う凝集を防ぐ方法として、金属微粒子の表面に分散剤を付与することで、粒子の二次凝集を妨げ、塗布・積層し、乾燥させた後の、塗膜の表面平滑性を改善する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、粒子表面に凝集し易い成分が含まれると、強固な凝集体が生じ易く、三本ロールなどでペースト化処理する際に、凝集体がほぐれず、十分な表面平滑性が得られない、という問題がある。
金属微粒子は、固相反応や液相反応によって得られることが知られている。ニッケル粒子を例に挙げると、固相反応としては、塩化ニッケルの化学気相蒸着やギ酸ニッケル塩の熱分解等が挙げられる。液相反応としては、塩化ニッケル等のニッケル塩を水素化ホウ素ナトリウム等の強力な還元剤で直接還元する方法、NaOH存在下ヒドラジン等の還元剤を添加して前駆体[Ni(H2NNH22]SO4・2H2Oを形成した後に熱分解する方法、塩化ニッケル等のニッケル塩や有機配位子を含有するニッケル錯体を溶媒とともに圧力容器に入れて水熱合成する方法、ギ酸ニッケル塩や酢酸ニッケル塩を1級アミン等の還元剤を添加して、マイクロ波を照射する方法等が挙げられる。
液相反応の技術に関して、ニッケル前駆物質、有機アミンおよび還元剤を混合した後、加熱することでニッケル粒子を得る技術が提案されている(例えば、特許文献2)。この技術によれば、ニッケル粒子の大きさおよび形状の制御が容易であるとされている。その理由は定かではないが、ニッケル粒子が有機アミンにコーティングされることで有機溶剤中での分散性が優れることが挙げられている。しかしながら、この製造方法で、強力な還元剤を用いると、反応を制御することが難しく、分散性が高度に優れたニッケル粒子は必ずしも好適には得られない。一方、還元力の弱い還元剤を用いると、酸化還元電位が負電位であるニッケル金属を還元するには高温に加熱する必要があり、それに伴った反応制御が必要になる。
また、ポリオール溶液に、還元剤、分散剤、およびニッケル塩を添加して混合溶液を製造する工程と、混合溶液を撹拌および加熱する工程と、混合溶液を反応させてニッケル粒子を生成する工程と、を含むニッケル粒子の製造方法が開示されている(例えば、特許文献3)。この場合、還元剤は前記のような強力な還元剤を使用するものではあるが、粒度が均一で、凝集することなく分散性に優れたニッケル粒子を得ることができる、とされている。分散剤としては、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、セルロース誘導体等が記載されている。
また、金属ナノ粒子の耐焼結性を高めるため、沸点が200℃以上の非極性溶媒中で、200℃〜320℃の範囲内の温度で加熱する熱処理工程を行う提案もなされている(例えば、特許文献4)。
特開2014−88603号公報 特開2010−037647号公報 特開2009−024254号公報 特開2013−87308号公報
本発明は、液相法によって得られ、優れた分散性を有するニッケル粒子を提供することを目的とする。
本発明者らは、液相法により、反応液中のニッケル濃度が0.1重量%以下になるまで反応させて得られたニッケル粒子に、ニッケルに対して強く配位するジメチルグリオキシムを反応させるとニッケルジメチルグリオキシムが生成し、その生成量が多いほど凝集性が強いことを実験的に確認した。これは、ニッケル粒子表面に未還元成分が残っているためと考えられ、この未還元成分が、ニッケル粒子の凝集に大きく影響している、との知見を得た。例えば、未還元成分が原因で、洗浄や乾燥時に堅固な凝集体を生成し、3本ロールなどを用いたペーストの作成時に、混練では解砕されにくい凝集体が生じているものと推測される。
本発明は、上記知見に基づいてなされものであり、ニッケル粒子合成を行った後、アニール処理を行い、炭化ニッケルが生成しない程度の熱履歴を与えることで、ニッケル粒子表面に残った凝集原因物質を低減できることを見出し、本発明を完成した。
本発明のニッケル粒子は、液相法で製造されるニッケル粒子であって、
XRD測定における炭化ニッケルの結晶ピークとニッケルの結晶ピークの比率が5%以下であり、
下記の式(1)で計算される計算値Vが50以下である。
V=A/S/D /10000000 … …(1)
{式中、AはJIS K 0102 59.1に規定するニッケルの測定法で検出されるニッケルジメチルグリオキシムの検出量[ppm]を意味し、Sはガス吸着法で測定されるニッケル粒子の比表面積[m/g]を意味し、Dは走査型電子顕微鏡(SEM)で測定されるニッケル粒子の平均粒子径[nm]を意味する。}
本発明のニッケル粒子は、前記平均粒子径が150nm以下であってもよい。
本発明のニッケル粒子は、前記液相法が、カルボン酸ニッケル及び1級アミンから得られるニッケルアミン錯体溶液にマイクロ波を照射して加熱還元する方法であってもよい。
本発明のニッケル粒子の製造方法は、液相法によるニッケル粒子合成反応において、
反応液中のニッケル濃度が0.1重量%以下になるまで反応させた後、生成したニッケル粒子をアニール処理する工程を含んでいる。
本発明のニッケル粒子の製造方法は、次の工程A、B、及びC;
A)カルボン酸ニッケル及び1級アミンを含む混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を得る錯化反応液生成工程、
B)前記錯化反応液を、マイクロ波照射によって170〜250℃の範囲内の温度に加熱して該錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、ニッケル粒子のスラリーを得るニッケル粒子スラリー生成工程、
C)前記ニッケル粒子のスラリーを、マイクロ波照射により、170〜230℃の範囲内の温度でアニール処理する工程、
を含んでいる。
本発明のニッケル粒子の製造方法は、前記ニッケル粒子が、XRD測定における炭化ニッケルの結晶ピークとニッケルの結晶ピークの比率が5%以下であり、
下記の式(1)で計算される計算値Vが50以下であってもよい。
V=A/S/D /10000000 … …(1)
{式中、AはJIS K 0102 59.1に規定するニッケルの測定法で検出されるニッケルジメチルグリオキシムの検出量[ppm]を意味し、Sはガス吸着法で測定されるニッケル粒子の比表面積[m/g]を意味し、Dは走査型電子顕微鏡(SEM)で測定されるニッケル粒子の平均粒子径[nm]を意味する。}
本発明のニッケル粒子は、炭化ニッケルの生成が極力抑制されており、かつ、上記の式(1)で計算される計算値Vが50以下であることから、例えば平均粒子径が150nm以下であっても、粒子の凝集が抑制され、単一粒子が分散した粒子の集合体である。
また、本発明のニッケル粒子の製造方法によれば、アニール処理によって、ニッケル粒子の表面に存在する凝集の原因となる成分を低減させることで、堅固な凝集体の生成が殆どない優れた分散性を有するニッケル粒子が提供される。
カルボン酸ニッケル錯体の構造を示す図であり、(a)は二座配位を、(b)は単座配位を、(c)は外圏にカルボン酸イオンが配位した状態を、それぞれ示す。 アニール処理における温度と時間との関係を模式的に示した図である。
[ニッケル粒子]
本実施の形態のニッケル粒子は、液相法で製造されるニッケル粒子である。ここで、液相法としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等の還元剤を用いてニッケル塩を還元する方法、ニッケル塩や有機配位子を含有するニッケル錯体から水熱合成する方法、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケルなどのニッケル塩に1級アミン等の還元剤を添加してニッケルアミン錯体を形成した後、加熱還元する方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、ニッケルアミン錯体を加熱還元する方法により得られたニッケル粒子が好ましい。
本実施の形態のニッケル粒子は、XRD測定における炭化ニッケルの結晶ピーク(2θ=41.8±0.1で最も高いピーク強度)と、ニッケル(2θ=44.6±0.1で最も高いピーク強度)の結晶ピークの比率が5%以下である。つまり、本実施の形態のニッケル粒子は、XRD測定における炭化ニッケルの六方最密構造(hcp)の002面の回折角2θが41.8±0.1の範囲内における最大X線強度P1と、ニッケルの立方晶(fcc)111面の回折角2θが44.6±0.1の範囲内における最大X線強度P2の強度比率[=(P1/P2)×100;以下、「ピーク比率」と記すことがある]が5%以下である。このピーク比率が5%を超える場合は、MLCCを形成する焼結の工程で、炭化ニッケルのカーボンガスが発生し、膜切れや割れ等の問題が発生する可能性がある。
また、本実施の形態のニッケル粒子は、下記の式(1)で計算される計算値Vが50以下である。
V=A/S/D /10000000 … …(1)
{式中、AはJIS K 0102 59.1に規定するニッケルの測定法で検出されるニッケルジメチルグリオキシムの検出量[ppm]を意味し、Sはガス吸着法で測定されるニッケル粒子の比表面積[m/g]を意味し、Dは走査型電子顕微鏡(SEM)で測定される平均粒子径[nm]を意味する。}
ニッケルジメチルグリオキシムの検出は、JIS K 0102(工場排水試験方法) 59.1(ニッケルの測定、ジメチルグリオキシム吸光光度法)に規定するニッケルの測定法に準拠して行うことができる。例えば、合成したニッケル粒子に対して、エタノールに2,3−ブタンジオンジオキシム(ジメチルグリオキシム)を溶解させた溶液を所定量加えて、ニッケルジメチルグリオキシムを生成させる。ニッケル粒子を磁石にて除去した後、生成したニッケルジメチルグリオキシムをクロロホルムで抽出して、これを希塩酸で逆抽出する。抽出液に臭素及びアンモニア水を加えてニッケルを酸化し、再び2,3−ブタンジオンジオキシムを加えて生じる赤褐色のニッケル錯体の吸光度を測定してニッケルを定量する。
このようにして定量されたニッケルの検出量を、ガス吸着法で測定されるニッケル粒子の比表面積で割り、更にSEMで測定されるニッケル粒子の平均粒子径の3乗根で割った値に係数(10,000,000)をかけることによって、上記の計算値Vが得られる。
上記の計算値Vは、ニッケル粒子の表面に付着した未還元のニッケル錯体など、前駆体の残存量を示す指標である。計算値Vは、50以下であり、30以下が好ましい。計算値Vが50を超えると、ニッケル粒子の表面に未還元のニッケル錯体などの前駆体が残存することから、その極性によってニッケル粒子の凝集性が増し、表面平滑性が低下する恐れがある。
<組成>
本実施の形態のニッケル粒子は、ニッケルを主成分とし、粒子全体の90重量%以上、好ましくは95重量%以上のニッケル元素を含有するものであるが、ニッケル以外の卑金属元素、貴金属元素などを含有するものであってもよい。ここで、卑金属元素としては、例えば、チタン、コバルト、銅、クロム、マンガン、鉄、ジルコニウム、スズ、タングステン、モリブデン、バナジウム等を挙げることができる。貴金属元素としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム等を挙げることができる。上記卑金属元素又は貴金属元素の中でも、例えば、チタン、コバルト、銅、金、銀、白金等のナノ粒子が好ましい。なお、ニッケル粒子は上記のニッケル以外の金属元素を単独で又は2種以上含有していてもよく、また、酸素、水素、炭素、窒素、硫黄等の金属元素以外の元素を含有していてもよいし、これらの合金であってもよい。さらに、ニッケル粒子は、単一のニッケル粒子で構成されていてもよく、2種以上のニッケル粒子を混合したものであってもよい。
特に、液相法により製造されたニッケル粒子は、例えば酸素原子を0.5〜5.0質量%の範囲内で含有し、炭素原子を0.1〜5.0質量%の範囲内で含有することが好ましい。これらの酸素原子及び炭素原子は、液相反応によるニッケル粒子の合成過程で、ニッケル粒子の表面に、水酸化物又は有機物として付着したものである。
<平均粒子径>
ニッケル粒子の平均粒子径は、特に制限はなく、その使用目的に応じて、例えば1〜150nmの範囲内から選択される。本実施の形態のニッケル粒子は、公知の分散剤では分散効果が期待できない小さな粒子径、例えば150nm以下、特に100nm以下の粒子径であっても、優れた分散効果が得られる。従って、本実施の形態のニッケル粒子の平均粒子径は、例えば150nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。ここで、平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)により試料の写真を撮影して、その中から無作為に200個を抽出してそれぞれの面積を求め、真球に換算したときの粒子径を個数基準として算出することができる。
また、ニッケル粒子は、粒子径分布が狭いことが好ましく、例えば、粒子径の変動係数(CV値)が0.2以下であることが好ましい。
本実施の形態のニッケル粒子は、炭化ニッケルの生成が極力抑制されており、かつ、上記の式(1)で計算される計算値Vが50以下であることから、例えば平均粒子径が150nm以下であっても、粒子の凝集が抑制され、単一粒子が分散した粒子の集合体として存在し得る。従って、本実施の形態のニッケル粒子は、ハンドリング性が良好であり、塗布時に平滑性が得られ、電極の薄膜化への対応が可能であることから、例えばMLCCの内部電極の材料などの用途に好適に用いることができる。
[ニッケル粒子の製造方法]
本実施の形態のニッケル粒子を製造するための方法について説明する。本実施の形態のニッケル粒子の製造方法は、液相法によるニッケル粒子合成反応において、反応液中のニッケル濃度が0.1重量%以下になるまで反応させた後、生成したニッケル粒子をアニール処理する工程を含んでいる。アニール処理は、液相法によるニッケル粒子の生成反応終了後に行われる。なお、反応液中のニッケル濃度は、反応液中のニッケル粒子を沈降させた後に、例えば、笠原理化工業株式会社製のニッケル濃度計Ni−5Zを用いて測定することで確認できる。
ニッケル粒子は、優れた表面平滑性を十分に発揮させるために、粒子径が150nm以下で粒子径分布が狭い(例えば、CV値が0.2以下)であることが好ましい。このような粒子径分布のニッケル粒子を製造することは一般に困難を伴うが、液相でのマイクロ波照射により製造することができる。以下に、液相でのマイクロ波照射を例に挙げて本発明の製造方法について説明する。
本実施の形態のニッケル粒子の製造方法は、次の工程A、B、及びC;
A)カルボン酸ニッケル及び1級アミンを含む混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を得る錯化反応液生成工程、
B)前記錯化反応液を、マイクロ波照射によって170〜250℃の範囲内の温度に加熱して該錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、ニッケル粒子のスラリーを得るニッケル粒子スラリー生成工程、
C)前記ニッケル粒子のスラリーを、マイクロ波照射により、170〜230℃の範囲内の温度でアニール処理するアニール工程、
を含んでいる。
<工程A;錯化反応液生成工程>
(カルボン酸ニッケル)
カルボン酸ニッケル(カルボン酸のニッケル塩)は、カルボン酸の種類を限定するものではなく、例えば、カルボキシル基が1つのモノカルボン酸であってもよく、また、カルボキシル基が2つ以上のカルボン酸であってもよい。また、非環式カルボン酸であってもよく、環式カルボン酸であってもよい。このようなカルボン酸ニッケルとして、非環式モノカルボン酸ニッケルを好適に用いることができ、非環式モノカルボン酸ニッケルのなかでも、ギ酸ニッケル、酢酸ニッケル、プロピオン酸ニッケル、シュウ酸ニッケル、安息香酸ニッケル等を用いることがより好ましい。これらの非環式モノカルボン酸ニッケルを用いることによって、得られるニッケル粒子は、その形状のばらつきが抑制され、均一な形状として形成されやすくなる。カルボン酸ニッケルは、無水物であってもよく、また水和物であってもよい。
なお、カルボン酸ニッケルに代えて、塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル等の無機塩を用いても良いが、無機塩の場合、解離(分解)が高温であるため、解離後のニッケル(又はニッケル錯体)を還元する過程で更なる高い温度での加熱が必要となるため好ましくない。また、Ni(acac)(β-ジケトナト錯体)、ステアリン酸ニッケル等の有機配位子により構成されるニッケル塩を用いることも考えられるが、これらのニッケル塩を用いると、原料コストが高くなり好ましくない。
(1級アミン)
1級アミンは、ニッケルとの錯体を形成することができ、ニッケル錯体(又はニッケル)に対する還元能を効果的に発揮する。一方、2級アミンは立体障害が大きいため、ニッケル錯体の良好な形成を阻害するおそれがあり、3級アミンはニッケルの還元能を有しないため、いずれも単独では使用できないが、1級アミンを使用する上で、生成するニッケル粒子の形状に支障を与えない範囲でこれらを併用することは差し支えない。1級アミンは、ニッケルとの錯体を形成できるものであれば、特に限定されるものではなく、常温で固体又は液体のものが使用できる。ここで、常温とは、20℃±15℃をいう。常温で液体の1級アミンは、ニッケル錯体を形成する際の有機溶媒としても機能する。なお、常温で固体の1級アミンであっても、100℃以上の加熱によって液体であるか、又は有機溶媒を用いて溶解するものであれば、特に問題はない。
1級アミンは、芳香族1級アミンであってもよいが、反応液におけるニッケル錯体形成の容易性の観点からは脂肪族1級アミンが好適である。脂肪族1級アミンは、例えば、その炭素鎖の長さを調整することによって生成するニッケル粒子の粒子径を制御することができ、特に平均粒子径が150nm以下にあるニッケル粒子を製造する場合において有利である。ニッケル粒子の粒子径を制御する観点から、脂肪族1級アミンは、その炭素数が6〜20程度のものから選択して用いることが好適である。炭素数が多いほど得られるニッケル粒子の粒子径が小さくなる。このようなアミンとして、例えばオクチルアミン、トリオクチルアミン、ジオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ミリスチルアミン、ラウリルアミン等を挙げることができる。例えばオレイルアミンは、ニッケル粒子生成過程に於ける温度条件下において液体状態として存在するため均一溶液で反応を効率的に進行できる。
1級アミンは、ニッケル粒子の生成時に表面修飾剤として機能するため、1級アミンの除去後においても二次凝集を抑制できる。また、1級アミンは、還元反応後に、生成したニッケル粒子の固体成分と溶剤または未反応の1級アミン等を分離する洗浄工程における処理操作の容易性の観点からは室温で液体のものが好ましい。更に、1級アミンは、ニッケル錯体を還元してニッケル粒子を得るときの反応制御の容易性の観点からは還元温度より沸点が高いものが好ましい。すなわち、脂肪族1級アミンにおいては沸点が180℃以上のものが好ましく、200℃以上のものがより好ましく、また、炭素数が9以上のものが好ましい。ここで、例えば炭素数が9である脂肪族アミン[C21N(ノニルアミン)]の沸点は201℃である。1級アミンの量は、ニッケル1molに対して2mol以上用いることが好ましく、2.2mol以上用いることがより好ましく、4mol以上用いることが望ましい。1級アミンの量が2mol未満では、得られるニッケル粒子の粒子径の制御が困難となり、粒子径がばらつきやすくなる。また、1級アミンの量の上限は特にはないが、例えば生産性の観点からは20mol以下とすることが好ましい。
工程Aでは、均一溶液での反応をより効率的に進行させるために、1級アミンとは別の有機溶媒を新たに添加してもよい。有機溶媒を用いる場合、有機溶媒をカルボン酸ニッケル及び1級アミンと同時に混合してもよいが、カルボン酸ニッケル及び1級アミンを先ず混合し錯形成した後に有機溶媒を加えると、1級アミンが効率的にニッケル原子に配位するので、より好ましい。使用できる有機溶媒としては、1級アミンとニッケルとの錯形成を阻害しないものであれば、特に限定するものではなく、例えば炭素数4〜30のエーテル系有機溶媒、炭素数7〜30の飽和又は不飽和の炭化水素系有機溶媒、炭素数8〜18のアルコール系有機溶媒等を使用することができる。また、マイクロ波照射による加熱条件下でも使用を可能とする観点から、使用する有機溶媒は、沸点が170℃以上のものを選択することが好ましく、200〜300℃の範囲内にあるものを選択することがより好ましい。このような有機溶媒の具体例としては、例えばテトラエチレングリコール、n−オクチルエーテル等が挙げられる。
2価のニッケルは、配位子置換活性種として知られており、形成する錯体の配位子は温度、濃度によって容易に配位子交換により錯形成が変化する可能性がある。例えばカルボン酸ニッケルおよび1級アミンの混合物を熱処理して反応液を得る工程において、用いるアミンの炭素鎖長等の立体障害を考慮すると、例えば、図1に示すように、カルボン酸(RCOO、RCOO)が二座配位(a)または単座配位(b)いずれかで配位する可能性があり、さらにアミンの濃度が大過剰の場合は外圏にカルボン酸が存在する(c)の少なくとも3種の可能性がある。目的とする反応温度(還元温度)に於いて均一溶液とするには、図1(a)〜(c)において、少なくともA、B、C、D、E、Fの配位子のうち少なくとも一箇所は1級アミンが配位している必要がある。その状態をとるには、1級アミンが過剰に反応溶液内に存在している必要があり、少なくともニッケル1molに対し2mol以上存在していることが好ましく、2.2mol以上存在していることがより好ましく、4mol以上存在していることが望ましい。
この錯形成反応は室温に於いても進行することができるが、十分且つ、より効率の良い錯形成反応を行うために、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して反応を行う。この加熱は、カルボン酸ニッケルとして、例えばギ酸ニッケル2水和物や酢酸ニッケル4水和物のようなカルボン酸ニッケルの水和物を用いた場合に特に有利である。加熱温度は、好ましくは100℃を超える温度とし、より好ましくは105℃以上の温度とすることで、カルボン酸ニッケルに配位した配位水と1級アミンとの配位子置換反応が効率よく行われ、錯体配位子としての水分子を解離させることができ、さらにその水を系外に出すことができるので効率よくアミンとの錯体を形成させることができる。例えば、ギ酸ニッケル2水和物は、室温では2個の配位水と2座配位子である2個のギ酸が存在した錯体構造をとっているため、この2つの配位水と1級アミンの配位子置換により効率よく錯形成させるには、100℃より高い温度で加熱することでこの錯体配位子としての水分子を解離させることが好ましい。また、カルボン酸ニッケルと1級アミンとの錯形成反応における熱処理は、後に続くニッケル錯体(又はニッケル)のマイクロ波照射による加熱還元の過程と確実に分離し、前記の錯形成反応を完結させるという観点から、上記の上限温度以下とし、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下とすることがよい。
加熱時間は、加熱温度や、各原料の含有量に応じて適宜決定することができるが、錯形成反応を完結させるという観点から、10分以上とすることが好ましい。加熱時間の上限は特にないが、長時間熱処理することはエネルギー消費及び工程時間を節約する観点から無駄である。なお、この加熱の方法は、特に制限されず、例えばオイルバスなどの熱媒体による加熱であっても、マイクロ波照射による加熱であってもよい。
カルボン酸ニッケルと1級アミンとの錯形成反応は、カルボン酸ニッケルと1級アミンとを有機溶媒中で混合して得られる溶液を加熱したときに、溶液の色の変化によって確認することができる。また、この錯形成反応は、例えば紫外・可視吸収スペクトル測定装置を用いて、300nm〜750nmの波長領域において観測される吸収スペクトルの吸収極大の波長を測定し、原料の極大吸収波長(例えばギ酸ニッケル2水和物ではその極大吸収波長は710nmであり、酢酸ニッケル4水和物ではその極大吸収波長は710nmである。)に対する錯化反応液のシフト(極大吸収波長が600nmにシフト)を観測することによって確認することができる。
カルボン酸ニッケルと1級アミンとの錯形成が行われた後、得られる反応液を、次に説明するように、マイクロ波照射によって加熱することにより、ニッケル錯体のニッケルが還元され、ニッケルに配位しているカルボン酸が同時に分解し、最終的に酸化数が0価のニッケルを含有するニッケル粒子が生成する。一般にカルボン酸ニッケルは水を溶媒とする以外の条件では難溶性であり、マイクロ波照射による加熱還元反応の前段階として、カルボン酸ニッケルを含む溶液は均一反応溶液とする必要がある。これに対して、本実施の形態で使用される1級アミンは、使用温度条件で液体であり、かつそれがニッケルに配位することで液化し、均一反応溶液を形成すると考えられる。
<工程B;ニッケル粒子スラリー生成工程>
工程Bでは、ニッケル塩と1級アミンとの錯形成反応によって得られた錯化反応液を、マイクロ波照射によって加熱し、錯化反応液中のニッケルを還元してニッケル粒子スラリーを得る。マイクロ波照射によって加熱する温度は、得られるニッケル粒子の形状のばらつきを抑制するという観点から、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上とすることがよい。加熱温度の上限は特にないが、処理を能率的に行う観点から、例えば250℃以下とすることが好適である。なお、マイクロ波の使用波長は、特に限定するものではなく、例えば2.45GHzである。
均一な粒径を有するニッケル粒子を生成させるには、錯化反応液生成工程の加熱温度を特定の範囲内で調整し、マイクロ波照射による加熱温度よりも確実に低くしておくことで、粒径・形状の整った粒子が生成し易い。例えば、錯化反応液生成工程で加熱温度が高すぎるとニッケル錯体の生成とニッケル(0価)への還元反応が同時に進行し、新しい核が発生することで、粒子形状の整ったニッケル粒子の生成が困難となるおそれがある。また、マイクロ波照射による加熱温度が低すぎるとニッケル(0価)への還元反応速度が遅くなり核の発生が少なくなるため粒子が大きくなるだけでなく、粒子の大きさが不揃いになり、ニッケル粒子の収率の点からも好ましくはない。
また、ニッケル粒子の表面に1級アミンが被覆した状態であれば、ニッケル粒子の表面に硫黄元素又は硫黄含有化合物が部分的に被覆していても特に問題はない。ニッケル粒子の表面に硫黄元素を存在させることによって、ニッケル粒子の表面活性を低下させ、触媒作用を抑制する結果、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極の材料として用いる場合の耐焼結性を向上させることができるので、より好ましい。
工程Bでは、ニッケル粒子の粒子径が150nm以下で粒子径分布が狭い(例えば、CV値が0.2以下の)粒子を形成させるために、所定量の核剤を錯化反応液に添加してもよく、あるいは、予め10〜30nmの超微粒子を合成しておき、種粒子として錯化反応液に添加してもよい。核剤や種粒子は、ニッケル以外の金属種を含有するものであってもよい。
得られたニッケル粒子スラリーは、例えば、芳香族系溶媒、テルピネオール系溶媒、脂肪族系炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒などの有機溶媒を含有するものであってもよい。必要に応じて、工程Bの後で、これらの有機溶媒への溶媒置換を行ってもよい。
<工程C;アニール工程>
工程Cでは、得られたニッケル粒子のスラリーを170℃〜230℃の範囲内の温度でアニール処理を行う。このアニール処理によって、ニッケル粒子表面の凝集の原因成分(例えば、未還元のニッケル錯体など)を低減する。アニール処理は、炭化ニッケルの生成を極力抑制した温度と時間の範囲内で行うことが好ましい。炭化ニッケルが生成すると、MLCCの電極を形成し焼成した時にガスが発生し、膜切れや割れの原因となる。
アニール処理の温度が230℃を超えると、温度制御が困難となり炭化ニッケルが生成し易くなるため、230℃以下でアニール処理を行うことが好ましく、220℃以下でアニール処理することがより好ましい。また、温度が170℃以下では、アニール処理の効果が十分に得られず、凝集が生じやすくなる。生産性の観点から、190℃以上225℃以下の範囲内の温度でアニール処理をすることが好ましい。
アニール処理の時間は、アニール処理の温度によって適宜設定すればよく、例えば200℃では20〜80分間の範囲内とすることが好ましく、40〜60分間の範囲内がより好ましい。アニール処理の時間が20分間を下回ると、上記温度範囲でもアニール処理の効果が十分に得られず、凝集が生じやすくなる。一方、アニール処理の時間が80分間を超えると、上記温度範囲でも炭化ニッケルが生成し易くなる。
アニール処理の温度と時間は、それぞれ上記範囲内から、炭化ニッケルの生成量が一定以下となるように制御すればよい。図2は、アニール処理の温度と時間との関係を模式的に示している。図2中の斜線で示す範囲は、ニッケル粒子のXRD測定における炭化ニッケルとニッケルのピーク比率が5%を超える領域を意味している。縦軸のT1はアニール温度の下限(例えば190℃)を、T2はアニール温度の上限(例えば230℃)を、それぞれ示している。横軸のt1はアニール時間の下限(例えば20分間)を、t2はアニール時間の上限(例えば180分間)を、それぞれ示している。温度T1〜T2、かつ時間t1〜t2の範囲内であっても、ピーク比率が5%を超える領域が存在する。従って、温度T1〜T2、かつ時間t1〜t2の範囲内で、ピーク比率が5%以下となるアニール処理の温度と時間との関係を、予め実験的に決めておけばよい。
工程Cのアニール処理は、生産の観点から工程Bにおけるニッケル粒子の生成後に連続して施すことが好ましい。つまり、工程Bにおける加熱還元温度からの降温過程で、適宜加熱を行い、ニッケル粒子のスラリーを上記温度範囲内に所定時間保持することによって、アニール処理を行うことができる。ニッケル粒子のスラリー中には、還元作用を有する1級アミンが含まれているため、未還元成分の金属ニッケルへの還元による低減を促すことができる。
工程Cにおいて、加熱の方法は、特に制限されず、例えばオイルバスなどの熱媒体による加熱であっても、マイクロ波照射による加熱であってもよい。なお、アニール処理の間の加熱は、連続的又は間欠的に行うことができる。
以上のようにして、ニッケル粒子を含有するスラリーを得ることが出来る。なお、工程Cの後で、ニッケル粒子のスラリーを、例えば、静置分離し、上澄み液を取り除いた後、適当な溶媒を用いて洗浄し、乾燥することで、乾燥状態のニッケル粒子を分取してもよい。
このように製造されたニッケル粒子は、所定の分散剤を付与し、ペースト化後、塗布・乾燥することによって、後記実施例に示すように、非常に優れた分散性を示すものである。
以上のように、本実施の形態のニッケル粒子によれば、液相法で得られたニッケル粒子の合成後にアニール処理を行うことによって、ピーク比率が5%以下で炭化ニッケルの生成が極力抑制されており、かつ、上記の式(1)で計算される計算値Vが50以下であるニッケル粒子が得られる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[ニッケル濃度の測定]
ニッケル粒子を合成した後の反応液(スラリー)のニッケル濃度は、反応液中のニッケルを除去した後、笠原理化工業株式会社製ニッケル濃度計Ni−5Zを用いて測定した。
[平均粒子径の測定]
平均粒子径は、SEM(走査型電子顕微鏡)により試料の写真を撮影して、その中から無作為に200個を抽出してそれぞれの面積を求め、真球に換算したときの粒子径を個数基準として平均粒子径を算出した。
[比表面積の測定]
比表面積は、比表面積/細孔分布測定装置[日本ベル株式会社製、BELSORP−mini]を用いて測定した。
[ピーク比率]
XRD(X線回折)測定により、炭化ニッケルの結晶ピークP1(2θ=41.8±0.1で最も高いピーク強度)とニッケルの結晶ピークP2(2θ=44.6±0.1で最も高いピーク強度)の比率[(P1/P2)×100]を求めた。
[導電性ペーストの表面粗さの評価]
松浪硝子工業(株)製スライドガラスS1112(76mm×26mm×t1.1mm)2枚をアセトンで湿らせた脱脂綿にて汚れを拭き取り乾燥させた。1枚のスライドガラス中央に導電性ペーストを0.05g秤量し、他の1枚のスライドガラスにて挟んだ後、側面からはみ出ない程度に加圧しながら刷り延ばし、スライドガラスを並行方向にスライドさせることによって平滑な塗膜面が得られる。この塗膜を60℃にて3時間乾燥させた後、微細形状測定装置[(株)小坂研究所ET−200]にて、算術平均粗さRaを測定した。
導電性ペーストを作製するために、分散剤(1)として、ポリエステル系高分子分散剤[日本ルーブリゾール社製、商品名;Solsperse13240]を用いた。
トルエンで洗浄したニッケル粒子トルエンスラリー10gを固形分濃度10wt%に調整した。これに分散剤(1)を0.05g加え、15分間撹拌した後、テルピネオールで洗浄しながら、トルエンをテルピネオールに置換し、ニッケル粒子テルピネオールスラリー(固形分濃度60wt%)を調製した。このようにして得られたスラリー組成物1.67gにセルロース系バインダー[日新化成(株)製EC−100FTP]を0.3g、テルピネオールを0.17g加え、混練機[株式会社シンキー製、あわとり練太郎AR−250]を用いて2分間混練を行い、テルピネオール系のペーストを作成した(略称を「TP」とする)。
トルエンで洗浄したニッケル粒子トルエンスラリー10gを固形分濃度10wt%に調整した。これに分散剤(1)を0.05g加え、15分間撹拌した後、ジヒドロターピネオールで洗浄しながらトルエンをジヒドロターピネオールに置換し、ニッケル粒子ジヒドロターピネオールスラリー(固形分濃度60wt%)を調製した。このようにして得られたスラリー組成物1.67gに、セルロース系バインダー[日新化成(株)製EC−100FTP]を0.3g、テルピネオールを0.17g加え、混練機[株式会社シンキー製あわとり練太郎AR−250]を用いて2分間混練を行い、ジヒドロターピネオール系のペーストを作成した(略称を「DTH」とする)。
[ジメチルグリオキシムを用いた分析]
JIS K 0120 59.1(ニッケルの測定、ジメチルグリオキシム吸光光度法)に規定するニッケルの測定法に準じ、ニッケル粒子1gに対し、生成するニッケルジメチルグリオキシム中のニッケル量の測定を行った。具体的には、エタノールに1Lに対して、2,3−ブタンジオンジオキシム(ジメチルグリオキシム)を15g加えて溶解させた後、ニッケル粒子1gに対して該溶解液を50ml加えて、ニッケルジメチルグリオキシムを生成させる。ニッケル粒子を磁石にて除去した後、生成したニッケルジメチルグリオキシムをクロロホルムで抽出して、これを希塩酸で逆抽出する。抽出液に臭素及びアンモニア水を加えてニッケルを酸化し、再び2,3−ブタンジオンジオキシムを加えて生じる赤褐色のニッケル錯体の吸光度を測定してニッケルを定量する。
<ニッケル錯体の合成−1>
オレイルアミン6000gに酢酸ニッケル四水和物840gを加え、窒素フロー下で140℃、4時間加熱することでニッケル錯体(A)を得た。
<ニッケル錯体の合成−2>
オレイルアミン5000gに酢酸ニッケル四水和物2055gを加え、窒素フロー下で140℃、4時間加熱することでニッケル錯体(B)を得た。
(実施例1)
ニッケル錯体(A)6600gを、マイクロ波を用いて昇温し、245℃〜250℃で5分間反応させた後、215℃〜200℃で20〜30分間アニール処理を行うことで、ニッケル粒子スラリー(C−1)を得た。スラリー(C−1)における溶液中のニッケル濃度は0%で検出範囲外であった。得られたニッケル粒子スラリー(C−1)をトルエンにて洗浄を行った。得られたニッケル粒子を乾燥後、SEM観察、及びXRDの測定を行った。また、ニッケル粒子をペースト化処理し、表面平滑性の測定を行った。また、ニッケル粒子に対し、ジメチルグリオキシムを用いてニッケルジメチルグリオキシム中のニッケル量の測定を行った。
(実施例2)
ニッケル錯体(A)6600gを、マイクロ波を用いて昇温し、245℃〜250℃で5分間反応させた後、215℃〜200℃で50〜60分間アニール処理を行うことで、ニッケル粒子スラリー(C−2)を得た。スラリー(C−2)における溶液中のニッケル濃度は0%で検出範囲外であった。得られたニッケル粒子スラリー(C−2)について、実施例1と同様に処理して、SEM観察、XRDの測定、表面平滑性の測定、及びニッケルジメチルグリオキシム中のニッケル量の測定を行った。
(実施例3)
ニッケル錯体(B)6460gを、マイクロ波を用いて昇温し、245℃〜250℃で5分間反応させた後、225℃〜190℃で30〜40分間アニール処理を行うことで、ニッケル粒子スラリー(C−3)を得た。スラリー(C−3)における溶液中のニッケル濃度は0%で検出範囲外であった。得られたニッケル粒子スラリー(C−3)について、実施例1と同様に処理して、SEM観察、XRDの測定、表面平滑性の測定、及びニッケルジメチルグリオキシム中のニッケル量の測定を行った。
(実施例4)
ニッケル錯体(B)6460gに硝酸銀4.85gを加え、ニッケル錯体と十分に撹拌した後、マイクロ波を用いて昇温し、225℃で20分反応させた後、225℃〜200℃で、60〜70分間アニール処理を行うことで、ニッケル粒子スラリー(C−4)を得た。スラリー(C−4)における溶液中のニッケル濃度は0%で検出範囲外であった。得られたニッケル粒子スラリー(C−4)について、実施例1と同様に処理して、SEM観察、XRDの測定、表面平滑性の測定、及びニッケルジメチルグリオキシム中のニッケル量の測定を行った。
(比較例1)
ニッケル錯体(A)6600gを、マイクロ波を用いて昇温し、245℃〜250℃で5分間反応させた後、水冷してニッケル粒子スラリー(C−5)を得た。スラリー(C−5)における溶液中のニッケル濃度は0%で検出範囲外であった。得られたニッケル粒子スラリー(C−5)について、実施例1と同様に処理して、SEM観察、XRDの測定、表面平滑性の測定、及びニッケルジメチルグリオキシム中のニッケル量の測定を行った。
(比較例2)
ニッケル錯体(B)6460gを、マイクロ波を用いて昇温し、245℃〜250℃で5分間反応させた後、水冷してニッケル粒子スラリー(C−6)を得た。スラリー(C−6)における溶液中のニッケル濃度は0%で検出範囲外であった。得られたニッケル粒子スラリー(C−6)について、実施例1と同様に処理して、SEM観察、XRDの測定、表面平滑性の測定、及びニッケルジメチルグリオキシム中のニッケル量の測定を行った。
(比較例3)
ニッケル錯体(B)6460gを、マイクロ波を用いて昇温し、245℃〜250℃で5分間反応させた後、更に250℃で5分間アニール処理を行いニッケル粒子スラリー(C−7)を得た。スラリー(C−7)における溶液中のニッケル濃度は0%で検出範囲外であった。得られたニッケル粒子スラリー(C−7)について、実施例1と同様に処理して、SEM観察、XRDの測定、表面平滑性の測定、及びニッケルジメチルグリオキシム中のニッケル量の測定を行った。
以上の結果をまとめて表1に示す。
Figure 0006603031
平均粒子径50〜130nmのニッケル粒子を用いて評価した結果、表1に示したように、粒子を合成した後に、アニール処理を行った実施例1〜4では、ジメチルグリオキシムとの反応で検出されるニッケル量が少なく、式(1)で得られる計算値Vは50以下で、表面平滑性も良好であった。
それに対し、アニール処理を行わない比較例1、2では、ジメチルグリオキシムとの反応で検出されるニッケル量が多く、式(1)で得られる計算値Vは50超であり、表面平滑性も良くなかった。また、比較例3に示したようにアニール温度が250℃では、表面平滑性は良好であるが、XRDピーク比率が5%を超えており、多くの炭化ニッケルの生成が確認され、焼結時に高温でのガス発生が懸念される結果となった。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。

Claims (5)

  1. 液相法で製造されるニッケル粒子であって、
    XRD測定における炭化ニッケルの結晶ピークとニッケルの結晶ピークの比率が5%以下であり、
    下記の式(1)で計算される計算値Vが50以下であるニッケル粒子。
    V=A/S/D /10000000 … …(1)
    {式中、AはJIS K 0102 59.1に規定するニッケルの測定法で検出されるニッケルジメチルグリオキシムの検出量[ppm]を意味し、Sはガス吸着法で測定されるニッケル粒子の比表面積[m/g]を意味し、Dは走査型電子顕微鏡(SEM)で測定されるニッケル粒子の平均粒子径[nm]を意味する。}
  2. 前記平均粒子径が150nm以下である請求項1に記載のニッケル粒子。
  3. 液相法によるニッケル粒子合成反応において、反応液中のニッケル濃度が0.1重量%以下になるまで反応させた後、生成したニッケル粒子を液相中で170〜230℃の範囲内の温度、かつ、20〜80分間の範囲内の時間でアニール処理する工程を含むニッケル粒子の製造方法であって、
    次の工程A、B、及びC;
    A)カルボン酸ニッケル及び1級アミンを含む混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を得る錯化反応液生成工程、
    B)前記錯化反応液を、マイクロ波照射によって180〜250℃の範囲内の温度に加熱して該錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、ニッケル粒子のスラリーを得るニッケル粒子スラリー生成工程、
    C)前記ニッケル粒子のスラリーを、マイクロ波照射により、前記条件でアニール処理する工程、
    を含むニッケル粒子の製造方法。
  4. 前記ニッケル粒子が、XRD測定における炭化ニッケルの結晶ピークとニッケルの結晶ピークの比率が5%以下であり、
    下記の式(1)で計算される計算値Vが50以下である請求項に記載のニッケル粒子の製造方法。
    V=A/S/D /10000000 … …(1)
    {式中、AはJIS K 0102 59.1に規定するニッケルの測定法で検出されるニッケルジメチルグリオキシムの検出量[ppm]を意味し、Sはガス吸着法で測定されるニッケル粒子の比表面積[m/g]を意味し、Dは走査型電子顕微鏡(SEM)で測定されるニッケル粒子の平均粒子径[nm]を意味する。}
  5. 液相法によるニッケル粒子合成反応において、反応液中のニッケル濃度が0.1重量%以下になるまで反応させた後、生成したニッケル粒子をアニール処理する工程を含むニッケル粒子の製造方法であって、
    次の工程A、B、及びC;
    A)カルボン酸ニッケル及び1級アミンを含む混合物を、100℃〜165℃の範囲内の温度に加熱して錯化反応液を得る錯化反応液生成工程、
    B)前記錯化反応液を、マイクロ波照射によって180〜250℃の範囲内の温度に加熱して該錯化反応液中のニッケルイオンを還元し、ニッケル粒子のスラリーを得るニッケル粒子スラリー生成工程、
    C)前記ニッケル粒子のスラリーを、マイクロ波照射により、170〜230℃の範囲内の温度でアニール処理する工程、
    を含むとともに、
    前記ニッケル粒子が、XRD測定における炭化ニッケルの結晶ピークとニッケルの結晶ピークの比率が5%以下であり、
    下記の式(1)で計算される計算値Vが50以下であるニッケル粒子の製造方法。
    V=A/S/D /10000000 … …(1)
    {式中、AはJIS K 0102 59.1に規定するニッケルの測定法で検出されるニッケルジメチルグリオキシムの検出量[ppm]を意味し、Sはガス吸着法で測定されるニッケル粒子の比表面積[m/g]を意味し、Dは走査型電子顕微鏡(SEM)で測定されるニッケル粒子の平均粒子径[nm]を意味する。}
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