JP2014173105A - ニッケルナノ粒子の表面改質方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】例えば150nm以下の粒径を有するニッケルナノ粒子の焼結時の熱収縮性を改善する。
【解決手段】ニッケルナノ粒子の表面改質方法は、(1)平均粒子径が20nm以上150nm以下の範囲内であり、(2)窒素雰囲気で室温から500℃における重量減少率が0.5〜5%であり、(3)水酸化物の被膜を有するが、X線回折で結晶性の水酸化ニッケルが観測されない;を満たすニッケルナノ粒子を、グロー放電により生成させた酸素含有ガスのプラズマで処理し、酸化ニッケルの被膜を形成する工程を含む。グロー放電における酸素含有ガスの濃度は、0.01体積%以上10体積%以下の範囲内であることが好ましい。
【選択図】図5

Description

本発明は、ニッケルナノ粒子の焼結性を改善するための表面改質方法に関し、より詳しくは、例えば積層セラミックスコンデンサ(MLCC)の内部電極材料などの用途に用いるニッケルナノ粒子の表面改質方法に関する。
MLCCは、セラミックス誘電体と内部電極とを交互に層状に重ねて圧着し、焼成して一体化させたものである。このようなMLCCの内部電極を形成する際には、内部電極材料である金属ニッケル粒子をペースト化したのち、これをセラミックス基板上に印刷する。次いで、乾燥、積層及び圧着した後、通常、酸素雰囲気下で約250〜400℃に加熱して有機物を除去するための脱バインダー処理を行なう。このような加熱処理を行なうことによって、金属ニッケル粒子は酸化され、それにより体積膨張が起きる。さらにその後、還元性雰囲気下で高温(例えばチタン酸バリウム系セラミックス誘電体では約1200〜1400℃)で焼結を行なうが、この焼結により、一旦酸化された金属ニッケル粒子が還元されるとともに、体積の収縮が生じる。
このように、MLCCの製造工程では、酸化反応や還元反応によって金属ニッケル粒子が膨張・収縮して体積変化が生じる。また、セラミックス誘電体も焼結により膨張・収縮し、体積変化が生じる。ところが、金属ニッケル粒子とセラミックス誘電体とでは、焼結時における膨張・収縮による体積変化の挙動が異なる。すなわち、金属ニッケル粒子の焼結開始温度(約500℃)とセラミックス誘電体の焼結開始温度(約1000℃)が大きく異なるために、デラミネーションやクラック等の欠陥を生じるおそれがある。
近年、MLCCにおいて小型化・高容量化が進み、内部電極の薄膜化が求められるに伴って金属ニッケル粒子もナノサイズのものが求められている。しかし、サイズ効果の影響によって、金属ニッケル粒子が小粒径化していくとより低温で収縮する傾向が強くなる。特に、金属ニッケル粒子がナノサイズになると、サイズ効果によって上記デラミネーションやクラック等の欠陥が発生しやすくなる。従って、例えば150nm以下の粒径を有する金属ニッケル粒子の焼結開始温度の改善が求められている。
金属ニッケル粒子の表面に強固な酸化被膜が形成されている場合、金属ニッケル粒子の焼結開始温度が高くなることが知られている。例えば、気相法で合成した金属ニッケル粒子は、反応時の熱履歴が高いために、表面に強固な酸化被膜が形成されている。一方、液相法で合成した金属ニッケル粒子は、反応時の熱履歴が低いために、表面の酸化被膜が不安定なアモルファス状であったり、水酸化ニッケルを形成していたりすることがあり、それが焼結開始温度を低める一因となっている。
金属微粒子の表面処理に関して、例えば特許文献1では、磁性粉末のFe16を作製するため、反応容器内を高真空に保持し、この容器内に反応ガスとしてのNガス等を導入してグロー放電を行うことにより鉄粉末を窒化する方法が提案されている。ただし、特許文献1の提案は、不純物除去や酸化被膜形成を目的とするものではない。また、使用する装置も高真空が必要である。
また、金属微粒子を対象とするものではないが、例えば特許文献2では、対向する2つの電極の間にある金属被処理体の少なくとも被処理面を不活性気体と反応性気体との混合気体の雰囲気下におき、該混合気体を大気圧下プラズマ励起して電極間にグロー放電を行なわせる表面処理法が提案されている。
特開平04−225204号公報 特開平06−88242号公報
本発明の目的は、例えば150nm以下の粒径を有するニッケルナノ粒子の焼結時の熱収縮性を改善することである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、酸素含有ガスのプラズマで処理することにより、ニッケルナノ粒子の表面に適度な厚みで酸化ニッケルの被膜を形成することが可能になり、ニッケルナノ粒子の焼結時の収縮を効果的に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のニッケルナノ粒子の表面改質方法は、以下の(1)〜(3)の条件;
(1)走査型電子顕微鏡観察による平均粒子径が20nm以上150nm以下の範囲内であり、
(2)窒素雰囲気で熱重量分析によって測定される室温から500℃における重量減少率が0.5〜5%の範囲内であり、
(3)水酸化物の被膜を有するが、X線回折で結晶性の水酸化ニッケルが観測されない;
を満たすニッケルナノ粒子を、グロー放電により生成させた酸素含有ガスのプラズマで処理し、酸化ニッケルの被膜を形成する工程を含むことを特徴とする。
本発明のニッケルナノ粒子の表面改質方法は、前記グロー放電における酸素含有ガスの濃度が、0.01体積%以上10体積%以下の範囲内であってもよい。
本発明のニッケルナノ粒子の表面改質方法は、前記グロー放電を大気圧で行ってもよい。
本発明のニッケルナノ粒子の表面改質方法は、前記プラズマによる処理温度が、5℃以上200℃以下の範囲内であってもよい。
本発明のニッケルナノ粒子の表面改質方法は、前記プラズマによる処理が、間欠的なプラズマ照射によって行われるものであってもよい。
本発明のニッケルナノ粒子の表面改質方法は、前記ニッケルナノ粒子が、下記の工程A〜C;
A)金属ニッケルの前駆体であるニッケル塩を有機溶媒に溶解して、ニッケル錯体を生成させた錯化反応液を得る工程、
B)錯化反応液を、マイクロ波照射によって加熱して、ニッケルナノ粒子のスラリーを得る工程、
C)ニッケルナノ粒子のスラリーからニッケルナノ粒子を単離する工程、
を含む方法によって製造されたものであってもよい。
本発明の表面改質方法によれば、ニッケルナノ粒子を酸素含有ガスのプラズマで処理することにより、水酸化ニッケルなどの不純物を除去し、強固な酸化被膜を形成できる。本発明の表面改質方法によって形成した酸化物被膜により、焼結時にニッケルナノ粒子の急激な収縮を効果的に抑制できる。従って、例えば積層セラミックコンデンサの製造過程で、焼結時のデラミネーションやクラック等の欠陥の発生を防ぐことができる。このようなニッケルナノ粒子は、積層セラミックコンデンサの内部電極の材料などの用途に好適に用いることができる。
本発明の実施の形態に係る表面改質方法に利用可能なプラズマ処理装置の一例の概要を説明する図面である。 本発明の実施の形態に係る表面改質方法に利用可能なプラズマ処理装置の別の例の概要を説明する図面である。 実施例1における改質処理の前後のニッケルナノ粒子のX線回折(XRD)のチャートである。 実施例1における改質処理の回数別のニッケルナノ粒子の熱重量分析(TGA)のチャートである。 実施例1における改質処理の前後のニッケルナノ粒子の熱機械分析(TMA)の測定結果である。 実施例2における改質処理の前後のニッケルナノ粒子の熱機械分析(TMA)の測定結果である。
本実施の形態のニッケルナノ粒子の表面改質方法は、以下の(1)〜(3)の条件;
(1)走査型電子顕微鏡観察による平均粒子径が20nm以上150nm以下の範囲内であり、
(2)窒素雰囲気で熱重量分析によって測定される室温から500℃における重量減少率が0.5〜5%の範囲内であり、
(3)水酸化物の被膜を有するが、X線回折で結晶性の水酸化ニッケルが観測されない;
を満たすニッケルナノ粒子を、グロー放電により生成させた酸素含有ガスのプラズマで処理し、酸化ニッケルの被膜を形成する工程を含んでいる。
[プラズマ処理]
ニッケルナノ粒子のプラズマ処理は、プラズマ生成用ガスと、酸素含有ガスを含む処理ガスを、ニッケルナノ粒子が収容された処理容器内に導入し、好ましくは大気圧でグロー放電を発生させることにより行うことができる。大気圧グロー放電を利用することによって、ニッケルナノ粒子に対し、低温で、均一かつマイルドなプラズマ処理を行うことができる。また、大気圧グロー放電では、処理装置に真空設備を必要としないため、簡素な構成でプラズマ処理を実施できる。また、大気圧グロー放電では、ニッケルナノ粒子を処理容器内に供給・排出しながらプラズマ処理を行う連続処理も可能になる。なお、ニッケルナノ粒子のプラズマ処理は、減圧状態であっても、加圧状態であっても可能であり、減圧状態でのプラズマ処理の場合、圧力の下限値を0.1Paとすることが好ましい。この下限値を下回る場合、酸素濃度が極端に低くなり、ニッケルナノ粒子の表面に所望の酸化被膜を形成することが困難となる。一方、加圧状態でのプラズマ処理の場合、圧力の上限値を10気圧(1MPa)とすることが好ましい。この上限値を上回る場合、大電力電源が必要になり、設備コストが著しく高くなるため好ましくない。
プラズマ処理に用いるプラズマ生成用ガスとしては、例えばHe、Ar、Xe、Krなどの希ガスを用いることができる。
酸素含有ガスとしては、Oガス、Oガスを含有するガス(例えば空気)のほか、例えばO、HO(水蒸気)、NOなどを用いることができる。
大気圧グロー放電における酸素含有ガスの濃度は、処理ガスの全流量に対し、0.01体積%以上10体積%以下の範囲内とすることが好ましい。酸素含有ガスの濃度が0.01体積%未満では、酸化力が弱く、ニッケルナノ粒子表面での酸化物の被膜形成が不十分になりやすい。一方、酸素含有ガスの濃度が10体積%を超えると、酸化力が強くなりすぎてニッケルナノ粒子表面の酸化物の被膜が厚くなりすぎる場合があり、また、安定したグロー放電が困難になることがある。
大気圧グロー放電におけるプラズマ処理の温度は、ニッケルナノ粒子の熱収縮を抑制しながら効率的な酸化処理を行うため、例えば5℃以上200℃以下の範囲内とすることが好ましく、20℃以上150℃以下の範囲内とすることがより好ましい。プラズマ処理の温度が5℃未満では、プラズマ装置内を冷却しなければならず、高コストとなり、200℃を超えるとニッケルナノ粒子同士の凝結又は凝集が進行する傾向となる。ここで、プラズマ処理の温度とは、放射温度計で測定した場合のニッケルナノ粒子の表面の温度を表すものである。
大気圧グロー放電を生じさせるため高周波電力は、例えば50W以上500W以下の範囲内とすることが好ましい。高周波電力が、50W未満では、グロー放電が十分に発生しないため、ニッケルナノ粒子の表面改質が不十分となり、500Wを超えると発熱が生じ、ニッケルナノ粒子同士の凝結又は凝集が進行する傾向となる。このような観点から、高周波出力として、周波数は、例えば200Hz以上1MHz以下の範囲内とすることが好ましく、1kHz以上100kHz以下の範囲内とすることがより好ましい。
プラズマ処理におけるプラズマ照射時間は、プラズマ出力と関係し、プラズマ出力が高ければプラズマ処理時間を短くすることができる。例えば高周波電力が50W以上500W以下の範囲内にある場合、プラズマ照射時間は、3分〜120分の範囲内とすることが好ましい。照射時間が3分未満では、ニッケルナノ粒子の表面改質が不十分となり、照射時間が120分を超えると、ニッケルナノ粒子の酸化が進行しすぎる恐れがある。また、例えば1kW程度の高周波電力でプラズマ処理を行う場合、プラズマ照射時間を1分程度と短くすることができる。このような観点から、プラズマ出力と照射時間を制御して、発熱を抑制することができる。なお、プラズマ処理は、連続的なプラズマ照射であってもよいし、間欠的なプラズマ照射であってもいが、ニッケルナノ粒子の温度上昇を抑制するという観点から、間欠的なプラズマ照射が好ましい。
本実施の形態における表面改質方法では、上記条件でプラズマ処理を行うことによって、ニッケルナノ粒子の表面の水酸化物被膜が酸化物被膜に改質される。すなわち、水酸化ニッケル(Ni(OH))のOH基が酸化されて酸化ニッケル(NiO)に変化する。
次に、本実施の形態のニッケルナノ粒子の表面改質方法に好ましく利用できる処理装置について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、大気圧グロー放電によるプラズマを利用してニッケルナノ粒子の表面改質処理を行うプラズマ処理装置1の一態様の概略構成を示している。このプラズマ処理装置1は、下部電極2及び上部電極3からなる上下一対の電極と、これら電極の間に配置される一対のガラス板4及びガラス板5と、これらガラス板4,5の間に介在するスペーサー6と、を備えている。また、プラズマ処理装置1は、ガラス板4とガラス板5の間の内部空間Sに処理ガスを供給するガス供給部7と、内部空間Sからガスを排気するガス排気部8と、を備えている。上部電極3は、高周波電源9と電気的に接続されており、下部電極2は接地されている。
図1に示すように、ガラス板4,5とスペーサー6とによってニッケルナノ粒子10を処理する処理室が形成され、その内部空間Sが、大気圧グロー放電によるプラズマ生成空間となっている。
図1に示した処理装置では、ニッケルナノ粒子10は、載置部を兼ねる下側のガラス板4上に配置される。そして、ガス供給部7から酸素含有ガスを含む処理ガスを導入し、ガス排気部8から排気を行いながら、上部電極3に高周波電力を供給することにより、下部電極2及び上部電極3からなる上下一対の電極間に電圧を印加し、グロー放電を発生させる。このグロー放電によって、内部空間Sでは酸素含有ガスのプラズマが生成し、ニッケルナノ粒子10に対するプラズマ処理が行われる。大気圧グロー放電によるプラズマは、酸素ラジカルによるマイルドな酸化力を有しており、ニッケルナノ粒子10の表面に存在する水酸化物の被膜を酸化物の被膜に変化させる。
図2は、大気圧グロー放電によるプラズマを利用してニッケルナノ粒子の表面改質処理を行うプラズマ処理装置101の別の態様の概略構成を示している。このプラズマ処理装置101は、互いに同心円状に配置された円筒状電極102及び円柱状電極103からなる一対の電極と、これら電極の間に同心円状に配置された一対の円筒状のガラス筒104及びガラス筒105と、を備えている。また、プラズマ処理装置101において、ガラス筒104とガラス筒105の間には、内部空間Sが形成されている。また、プラズマ処理装置101において、外周側のガラス筒104の内周面には、内部空間Sに向けて突出した撹拌用の突起107が設けられている。円柱状電極103は、高周波電源109と電気的に接続されており、円筒状電極102は接地されている。また、プラズマ処理装置101は、内部空間Sに処理ガスを供給する図示しないガス供給部と、内部空間Sからガスを排気する図示しないガス排気部と、を備えている。
また、プラズマ処理装置101は、第1のローラ111及び第2のローラ112上に配置されている。第1のローラ111及び第2のローラ112は、円筒状電極102の外周面に当接し、プラズマ処理装置101を回転可能に支持している。そして、第1のローラ111及び第2のローラ112を、それぞれ図中矢印で示す方向に回転させることによって、円柱状電極103を回転中心としてプラズマ処理装置101全体を逆向きに回転させることができる。なお、第1のローラ111及び第2のローラ112はいずれも同時に回転させる必要はなく、第1のローラ111又は第2のローラ112の一方を開放しておき、もう一方を回転させるだけでもよい。
図2に示すように、ガラス筒104及びガラス筒105と図示しない壁(間仕切り)によってニッケルナノ粒子を処理する処理室が形成され、その内部空間Sが、グロー放電によるプラズマ生成空間となっている。
図2に示したプラズマ処理装置101では、ニッケルナノ粒子10は、ガラス筒104とガラス筒105との間の内部空間Sに配置される。そして、ガス供給部から処理ガスを導入し、ガス排気部から排気を行いながら、円柱状電極103に高周波電力を供給することにより、円筒状電極102及び円柱状電極103からなる内外一対の電極間に電圧を印加し、グロー放電を発生させる。このグロー放電によって、内部空間Sでは酸素含有ガスのプラズマが生成し、ニッケルナノ粒子10に対するプラズマ処理が行われる。プラズマ処理の間は、第1のローラ111及び第2のローラ112を回転させることによって、円柱状電極103を回転中心としてプラズマ処理装置101を回転させることにより、撹拌用の突起107によって処理空間S内のニッケルナノ粒子10が撹拌される。従って、処理対象のニッケルナノ粒子10の全体を均一に表面処理することができる。
なお、図1および図2に例示したプラズマ処理装置1,101は、いずれもバッチ式であるが、ニッケルナノ粒子の内部空間Sへの供給と、表面改質後のニッケルナノ粒子の取り出しを連続的に行う連続方式の装置を用いることも可能である。
[ニッケルナノ粒子]
次に、本実施の形態の表面改質方法で改質の対象となるニッケルナノ粒子について説明する。上記のとおり、本実施の形態で表面改質対象のニッケルナノ粒子は、以下の(1)〜(3)の条件;
(1)走査型電子顕微鏡観察による平均粒子径が20nm以上150nm以下の範囲内であり、
(2)窒素雰囲気で熱重量分析によって測定される室温から500℃における重量減少率が0.5〜5%であり、
(3)水酸化物の被膜を有するが、X線回折で結晶性の水酸化ニッケルが観測されない;
を満たすニッケルナノ粒子である。
本実施の形態の表面改質方法で用いるニッケルナノ粒子は、走査型電子顕微鏡観察による平均粒子径が20〜150nmの範囲内、好ましくは40〜150nmの範囲内がよい。別の観点から、BET測定による平均粒子径が20〜150nmの範囲内、好ましくは40〜150nmの範囲内がよい。ニッケルナノ粒子の平均粒子径が20nmを下回ると、比表面積が増大し、表面自由エネルギーの増大により焼結開始温度が低温化し、凝集粒子が増大する。また、ニッケルナノ粒子の平均粒子径が20nmを下回ると、誘電体層とのデラミネーションが激しくなることから例えばMLCCの内部電極材料としての実用性を欠くとともに、脱バインダー時の加熱でニッケルナノ粒子同士が凝集又溶融しやすくなり、また酸素を取り込みやすくなるため、ニッケルナノ粒子の体積膨張や収縮変化が大きくなる。一方、MLCCの内部電極材料として、従来は、平均粒子径が200nm以上のニッケルナノ粒子が使用されていたが、内部電極層の薄膜化に伴い150nm以下の平均粒子径のニッケルナノ粒子が求められている。すなわち、ニッケルナノ粒子の平均粒子径が150nmを上回ると、最小径の粒子及び最大径の粒子の分布幅が大きくなり、薄膜化したMLCCの内部電極材料に利用した場合に、巨大粒子の存在によりショート不良を起こしやすい。
なお、本実施の形態の表面改質方法で用いるニッケルナノ粒子は、粒子径の変動係数(CV)が0.2以下であることが好ましい。変動係数を0.2以下とすることで、MLCCの製造過程で、ペースト塗布後の乾燥塗膜の表面平滑性が得られやすい。
本実施の形態の表面改質方法で用いるニッケルナノ粒子は、窒素雰囲気下での熱重量分析によって測定される室温から500℃における重量減少率が0.5〜5%であり、好ましくは1〜3%の範囲内である。このような温度領域での重量減少は、水酸化物の被膜からの脱水によって酸化物の被膜に変化することに起因するものであるが、ニッケルナノ粒子の表面に有機物や吸着水が存在している場合もこの温度領域で重量減少が確認される。これらを考慮し、本実施の形態では、ニッケルナノ粒子の重量減少率を0.5〜5%の範囲内と規定している。すなわち、理想的には、熱収縮を抑えるために、重量減少率がゼロであり、不純物がないほうがよいが、実際には、ニッケルナノ粒子の表面には、例えば吸着水、酸化物、水酸化物、有機物等が付着しており、特に有機系の湿式合成においてはこれらの付着が避けられないことから、重量減少率の下限を0.5%としている。また、重量減少率が、0.5%未満であると、ニッケルナノ粒子の表面活性を抑制する効果が小さくなるばかりでなく、分散性が低下する場合がある。一方、重量減少率が5%を超えて大きい場合、表面改質によって形成される酸化物被膜が厚くなり過ぎる可能性がある。また、ニッケルナノ粒子の表面を修飾している保護剤の変質(例えば高分子化など)が促進されやすくなる恐れがある。
本実施の形態の表面改質方法で用いるニッケルナノ粒子は、ニッケルナノ粒子の表面に、水酸化物[例えば水酸化ニッケル(Ni(OH))]の被膜が形成されている。このような被膜は、ニッケルナノ粒子を構成する金属ニッケルの表面に部分的に存在する被膜でもよいし、該粒子の全表面に亘る被膜でもよい。なお、水酸化物の被膜には、金属ニッケルの表面に存在する吸着水を含んでいてもよい。
水酸化物の被膜は、X線回折により結晶性の水酸化ニッケルが観測されないという特徴を有している。このことは、本実施の形態で用いるニッケルナノ粒子において、水酸化物の被膜が、結晶性が低いアモルファス状の水酸化ニッケルによって構成されているか、又は、水酸化物の被膜が、X線回折によって検出できないレベルのものであることを意味している。水酸化物の被膜がアモルファス状又はX線回折による検出限界以下とすることによって、酸化ニッケル被膜への改質がスムーズに行われる。すなわち、プラズマ処理では、金属ニッケルを被覆する水酸化物の被膜から水分が揮発し、除去されて酸化物の被膜に変化する。このような脱水反応は、水酸化物の被膜の結晶性が高い場合よりも、アモルファス状又はX線回折による検出限界以下である場合の方が速やかに進行しやすい。
本実施の形態の表面改質方法で用いるニッケルナノ粒子は、ニッケル元素を含有する。ニッケル元素の含有量は、その使用目的に応じて適宜選択すればよいが、ニッケル元素の量を、ニッケルナノ粒子100質量部に対し、好ましくは90質量部以上、より好ましくは95質量部以上とすることがよい。ニッケル以外の金属としては、例えば、チタン、コバルト、銅、クロム、マンガン、鉄、アルミニウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、ジルコニウム、スズ、タングステン、モリブデン、バナジウム、バリウム、カルシウム、ストロンチウム。シリコン、アルミニウム、リン等の卑金属、金、銀、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、ネオジウム、ニオブ、ホロニウム、ディスプロヂウム、イットリウム等の貴金属、希土類金属を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上含有していてもよく、また水素、炭素、窒素、硫黄、ボロン等の金属元素以外の元素を含有していてもよいし、これらの合金であってもよい。
本実施の形態の表面改質方法で用いるニッケルナノ粒子は、酸素元素を含有している。このような酸素元素は、ニッケルナノ粒子の表面に部分的に存在する水酸化物の被膜に含有される酸素元素に由来するものと考えられる。このことは、ニッケルナノ粒子における水酸化物の被膜の厚みが、平均粒子径の大小によらず殆ど大差がないのに対し、ニッケルナノ粒子の平均粒子径が小さくなるにつれ、酸素元素の含有量が高くなる傾向があることから推察される。すなわち、ニッケルナノ粒子の平均粒子径が小さいほど、その総表面積(全てのニッケルナノ粒子の合計の表面積)が大きいので、ニッケルナノ粒子全体に占める酸素元素の含有量が相対的に大きくなると考えられる。
ニッケルナノ粒子における酸素元素の含有量は、プラズマ処理による改質の前後でほぼ一定であり、0.2〜5.0質量%の範囲内であり、好ましくは0.5〜2.0質量%の範囲内がよい。具体的には、本実施の形態における表面改質方法では、水酸化ニッケル(Ni(OH))は脱水によって酸化ニッケル(NiO)に改質されるとともに、ニッケルナノ粒子表面のニッケル元素が酸化されて緻密な酸化ニッケルに改質されるため、ニッケルナノ粒子表面に存在する酸素元素の含有量は、改質の前後でほとんど変化しない。このように、本実施の形態の表面改質方法では、大気圧グロー放電によるプラズマを利用し、ニッケルナノ粒子における酸素元素の含有量が実質的に変化しない程度の強さで表面酸化を行うものである。改質後の酸素元素の含有量が、0.2質量%未満であると、ニッケルナノ粒子の表面活性を抑制する効果が小さくなる傾向があり、5.0質量%を超えると、逆に焼結時に体積変化が生じやすくなる傾向がある。この酸素元素の含有量は、ニッケルナノ粒子の元素分析により確認することができる。
本実施の形態の表面改質方法で用いるニッケルナノ粒子は、硫黄元素を含有していてもよい。
[ニッケルナノ粒子の製造方法]
次に、本実施の形態の表面改質方法で用いるニッケルナノ粒子の製造方法について説明する。
本実施の形態の表面改質方法で用いるニッケルナノ粒子は、例えば、気相法や液相法などの方法により得られるが、その製造方法については特に限定されない。
気相法では、例えば、気化部、反応部、冷却部を有する反応装置を用いるとともに、原料として塩化ニッケルを用い、この塩化ニッケルを気化部で加熱気化した後にキャリアガスで反応部に移送し、ここで水素と接触させることによって粒子状に金属を析出させ、その後、得られたニッケルナノ粒子を冷却部で冷却するようにして得ることができる。反応温度は、例えば950℃〜1100℃程度に制御すればよい。この方法におけるニッケルナノ粒子の粒径制御は、例えばキャリアガスの流速を制御することによって実施できる。一般に、キャリアガスの流速を上昇させれば、得られるニッケルナノ粒子の粒径は小さくなる傾向がある。また、得られたニッケルナノ粒子は、例えば遠心力を用いた分級手段などを用いることによって変動係数を制御することもできる。
気相法は液相法に比べて製造コストが高価になりがちであるので、液相法を適用することが有利である。また、液相法で合成されたニッケルナノ粒子は、水酸化物の被膜を有していることが多く、そのまま本発明方法を適用できる。液相法のなかでも、粒子径分布が狭いニッケルナノ粒子を短時間で容易に製造する方法として、下記の工程A〜C;
A)金属ニッケルの前駆体であるニッケル塩を有機溶媒に溶解して、ニッケル錯体を生成させた錯化反応液を得る工程、
B)錯化反応液を、マイクロ波照射によって加熱して、ニッケルナノ粒子のスラリーを得る工程、
C)ニッケルナノ粒子のスラリーからニッケルナノ粒子を単離する工程、
を具える方法が好ましい。
工程A)錯化反応液生成工程:
ニッケル前駆体(ニッケル塩)としては、例えば塩化ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、カルボン酸ニッケル、Ni(acac)(β−ジケトナト錯体)、ステアリン酸ニッケル等を挙げることができる。例えば、塩化ニッケル六水和物(NiCl・6HO)は、錯体であるtrans―[NiCl(HO)]と、それに弱く結合した2個の水分子からなり、6個の水分子のうち4個のみが直接ニッケルと結合した構造を有している。このような構造のニッケル六水和物の水分子は容易にアミンなどによって置換され得るため、アミンと混合することで容易にアミン錯体を形成することができる。ニッケル前駆体の一部もしくは全部として塩化ニッケル(II)を用いることで、結晶性が高い金属ニッケルを生成することができる。
また、ニッケル前駆体として、還元過程での解離温度(分解温度)が比較的低いカルボン酸ニッケルを用いることも好ましい。カルボン酸ニッケルとしては、例えば炭素数が1〜12のカルボン酸ニッケルを用いることができる。カルボン酸ニッケルは、カルボキシ基が1つのモノカルボン酸であってもよく、カルボキシ基が2つ以上のカルボン酸であってもよい。また、非環式カルボン酸であってもよく、環式カルボン酸であってもよい。好ましいカルボン酸ニッケルとして、例えばギ酸ニッケル、酢酸ニッケル等を用いることができるが、還元温度が低く、ニッケルナノ粒子の生成のための核を生じさせる作用も併有するギ酸ニッケルを用いることがより好ましい。
有機溶媒は、ニッケル塩を溶解できるものであれば、特に限定されず、例えばエチレングリコール、アルコール類、有機アミン類、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられるが、金属塩に対して還元作用があるエチレングリコール、アルコール類、有機アミン類等の有機溶媒が好ましい。このなかでも特に、1級の有機アミン(以下、「1級アミン」と略称する。)は、ニッケル塩との混合物を溶解することにより、ニッケルイオンとの錯体を形成することができ、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)に対する還元能を効果的に発揮しやすく、加熱による還元温度が高温のニッケル塩に対して有利に使用できる。1級アミンは、ニッケルイオンとの錯体を形成できるものであれば、特に限定するものではなく、常温で固体又は液体のものが使用できる。ここで、常温とは、20℃±15℃をいう。
常温で液体の1級アミンは、ニッケル錯体を形成する際の有機溶媒としても機能する。なお、常温で固体の1級の有機アミンであっても、加熱によって液体であるか、又は有機溶媒を用いて溶解するものであれば、特に問題はない。
1級アミンは、芳香族1級アミンであってもよいが、反応液におけるニッケル錯体形成の容易性の観点からは脂肪族1級アミンが好適である。脂肪族1級アミンは、例えばその炭素鎖の長さを調整することによって生成するニッケルナノ粒子の粒径を制御することができる。ニッケルナノ粒子の粒径を制御する観点から、脂肪族1級アミンは、その炭素数が6〜20程度のものから選択して用いることが好適である。炭素数が多いほど得られるニッケルナノ粒子の粒径が小さくなる。このようなアミンとして、例えばオクチルアミン、トリオクチルアミン、ジオクチルアミン、ヘキサデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ミリスチルアミン、ラウリルアミン等を挙げることができる。
1級アミンは、還元反応後の生成したニッケルナノ粒子の固体成分と溶剤または未反応の1級アミン等を分離する洗浄工程における処理操作の容易性の観点からは室温で液体のものが好ましい。更に、1級アミンは、ニッケル錯体を還元してニッケルナノ粒子を得るときの反応制御の容易性の観点からは還元温度より沸点が高いものが好ましい。1級アミンの量は、ニッケル塩1molに対して2mol以上用いることが好ましく、2.2mol以上用いることがより好ましい。1級アミンの量が2mol未満では、得られるニッケルナノ粒子の粒子径の制御が困難となり、粒子径がばらつきやすくなる。また、1級アミンの量の上限は特にはないが、例えば生産性の観点からは20mol以下とすることが好ましい。
均一溶液での反応をより効率的に進行させるために、1級アミンとは別の有機溶媒を新たに添加してもよい。使用できる有機溶媒としては、1級アミンとニッケルイオンとの錯形成を阻害しないものであれば、特に限定するものではなく、例えば炭素数4〜30のエーテル系有機溶媒、炭素数7〜30の飽和又は不飽和の炭化水素系有機溶媒、炭素数8〜18のアルコール系有機溶媒等を使用することができる。また、マイクロ波照射による加熱条件下でも使用を可能とする観点から、使用する有機溶媒は、沸点が170℃以上のものを選択することが好ましく、より好ましくは200〜300℃の範囲内にあるものを選択することがよい。このような有機溶媒の具体例としては、例えばテトラエチレングリコール、n−オクチルエーテル等が挙げられる。
錯形成反応は室温に於いても進行することができるが、十分且つ、より効率の良い錯形成反応を行うために、例えば100℃〜165℃の範囲内に加熱して反応を行う。この加熱は、後に続くニッケル錯体(又はニッケルイオン)のマイクロ波照射による加熱還元の過程と確実に分離し、前記の錯形成反応を完結させるという観点から、上記上限を適宜設定することができる。なお、この加熱の方法は、特に制限されず、例えばオイルバスなどの熱媒体による加熱であっても、マイクロ波照射による加熱であってもよい。
なお、ニッケル塩として塩化ニッケルを用いる場合、錯化反応液には、ニッケルナノ粒子を構成する金属ニッケルを生成する際の核となる物質(核剤)を配合することが好ましい。核剤としては、核形成が可能な物質であれば特に制限なく使用可能であり、上述のギ酸ニッケルを利用できるほか、例えばギ酸銅、硝酸銀、硝酸銅、パラジウム塩、白金塩、金塩等を用いることができる。これらの核剤を用いることで、塩化ニッケルから結晶性の高い金属ニッケルを効率よく生成させることができる。核剤の配合量は、塩化ニッケルに対して、0.1〜50モル%の範囲内が好ましい。核剤の配合量が塩化ニッケルに対して0.1モル%未満では、塩化ニッケルから金属ニッケルの生成を促す効果が得られず、塩化ニッケルに対して50モル%を超えると、核が多く生成しすぎる結果、ニッケルナノ粒子の粒子径が小さくなる傾向がある。なお、核剤は、工程A(錯化反応液生成工程)に限らず、工程B(ニッケルナノ粒子スラリー生成工程)におけるマイクロ波照射の前までに配合すればよい。
工程B)ニッケルナノ粒子スラリー生成工程:
本工程では、ニッケル塩と有機溶媒との錯形成反応によって得られた錯化反応液を、マイクロ波照射によって加熱し、錯化反応液中のニッケルイオンを還元して金属ニッケルを生成させ、ニッケルナノ粒子のスラリーを得る。マイクロ波照射によって加熱する温度は、得られるニッケルナノ粒子の形状のばらつきを抑制するという観点から、好ましくは170℃以上、より好ましくは180℃以上とすることがよい。加熱温度の上限は特にないが、処理を効率的に行う観点からは例えば270℃以下とすることが好適である。なお、マイクロ波の使用波長は、特に限定するものではなく、例えば2.45GHzである。
マイクロ波照射による錯化反応液の加熱は、該反応液内の均一加熱を可能とし、かつエネルギーを媒体に直接与えることができるため、急速加熱を行なうことができる。これにより、反応液全体を所望の温度に均一にすることができ、ニッケル錯体(又はニッケルイオン)の還元、核生成、核成長各々の過程を溶液全体において同時に生じさせ、結果として粒子径分布の狭い単分散な粒子を短時間で容易に製造することができる。特に、平均粒子径が20〜150nmの範囲内にあるニッケルナノ粒子を製造するのに好適である。
均一な粒径を有するニッケルナノ粒子を生成させるには、錯化反応液生成工程の加熱温度を特定の範囲内で調整し、ニッケルナノ粒子スラリー生成工程におけるマイクロ波による加熱温度よりも確実に低くしておくことで、粒径・形状の整った粒子が生成し易い。例えば、錯化反応液生成工程で加熱温度が高すぎるとニッケル錯体の生成とニッケル(0価)への還元反応が同時に進行し異種の金属種が発生することで、ニッケルナノ粒子スラリー生成工程での粒子形状の整った粒子の生成が困難となるおそれがある。また、ニッケルナノ粒子スラリー生成工程の加熱温度が低すぎるとニッケル(0価)への還元反応速度が遅くなり核の発生が少なくなるため粒子が大きくなるだけでなく、ニッケルナノ粒子の収率の点からも好ましくはない。
ニッケルナノ粒子スラリー生成工程においては、必要に応じ、前述した有機溶媒を加えてもよい。なお、前記したように、錯形成反応に使用する1級アミンを有機溶媒としてそのまま用いることは、本発明の好適な実施の形態である。
工程C)ニッケルナノ粒子単離工程:
本工程では、マイクロ波照射によって加熱して得られるニッケルナノ粒子スラリーを、例えば、静置分離し、上澄み液を取り除いた後、適当な溶媒を用いて洗浄し、乾燥することで、ニッケルナノ粒子が得られる。
上記にようにして改質対象となるニッケルナノ粒子を製造することができるが、例えばニッケルナノ粒子スラリーの状態で有機溶媒中に所定時間保持することや、ニッケルナノ粒子スラリーを低酸素状態で乾燥させることなどによって、ニッケルナノ粒子の表面に所定の水酸化物の被膜を形成することができる。この水酸化物の被膜は、X線回折により結晶質の水酸化ニッケルが観測されないアモルファス状態の被膜であり、窒素雰囲気下での熱重量分析によって測定される室温から500℃までの温度領域での重量減少率が0.5〜5%の範囲内である。
本実施の形態の表面改質方法では、上記プラズマ処理によって、水酸化物の被膜が酸化物の被膜に変化する。このように生成した酸化物の被膜により、焼結時にはニッケルナノ粒子の内部への急激な酸化を抑制することができるので、デラミネーションやクラック等の欠陥の発生を回避できる。このように表面が改質されたニッケルナノ粒子は、酸化物の被膜によって熱収縮が抑制されるため、例えば積層セラミックコンデンサの内部電極の材料として好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[平均粒子径の測定]
SEM(走査電子顕微鏡)により試料の写真を撮影して、その中から無作為に200個を抽出してそれぞれの面積を求め、真球に換算したときの粒子径を個数基準として一次粒子の平均粒子径を算出した。また、CV値(変動係数)は、(標準偏差)÷(平均粒子径)によって算出した。なお、CV値が小さいほど、粒子径がより均一であることを示す。
BET測定による平均粒子径(BET換算径)は、ニッケルナノ粒子の単位重量当たりの表面積(BET値)を実測し、そのBET値から下記式を用いてBET換算径を算出した。
BET換算径(nm)=6/BET値(m/g)/真密度(g/cm)×1000
[熱機械分析(TMA)、熱重量分析(TGA)、5%熱収縮温度]
試料を5Φ×2mmの円柱状成型器に入れ、プレス成型して得られる成型体を作製し、窒素ガス(水素ガス3%含有)の雰囲気下で、熱機械分析(TMA)および熱重量分析(TGA)を行った。また、熱機械分析装置(TMA)により測定される5%熱収縮の温度を5%熱収縮温度とした。
合成例1
<溶解工程>
酢酸ニッケル四水和物60.0g(241.1mmmol)にオレイルアミン690g(2.58mol)を加え、窒素フロー下で140℃、20分間加熱することによって酢酸ニッケルをオレイルアミンに溶解させた。
<還元工程>
次いで、その溶液にマイクロ波を照射して250℃まで加熱し、その温度を5分保持することによってニッケルナノ粒子を得た。
<洗浄・乾燥工程>
ニッケルナノ粒子スラリーを静置分離し、上澄み液を取り除いた後、トルエンとメタノールを用いて3回洗浄し、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥してニッケルナノ粒子(SEMによる平均粒子径;90nm、BET値;8.2m/g、真密度;8.5g/cm、BET換算径;86nm)を得た。元素分析の結果、C;0.5、O;1.3(単位は質量%)であった。
<炭酸洗浄>
純水にCOガスをバブリングさせて、pHが4.5となるように炭酸水を調製した。得られたニッケルナノ粒子10gに炭酸水100gを加えて1回洗浄を行い、メタノールでさらに1回洗浄した後、70℃に維持される真空乾燥機で6時間乾燥してニッケルナノ粒子を得た。元素分析の結果、C;0.6、O;1.6(単位は質量%)であった。また、窒素雰囲気下での熱重量分析によって測定される240℃から300℃までの温度領域での重量減少率は2.0%であった。ニッケルナノ粒子の表面の水酸化物の被膜は、X線回折(XRD)で結晶質の水酸化ニッケルは観測されなかった。得られたニッケルナノ粒子の平均粒子径は90nm、CV値は0.18、5%熱収縮温度は約300℃であった。
実施例1
図1に示したプラズマ処理装置1と同様の構成の処理装置を用い、合成例1の平均粒子径90nmのニッケルナノ粒子を10g装置内に投入した後、Heガスを5L/min、Oガスを0.2L/minの流量で混合して供給し、装置内を十分に混合ガスで置換した。そして、200Wの出力で5分間、大気圧グロー放電によりプラズマを発生させ、ニッケルナノ粒子に対してプラズマ処理(プラズマ照射時間;5分間、放射温度計によるニッケルナノ粒子の表面温度;25〜130℃)を行った。その後、プラズマ処理を間欠的に5回(プラズマ照射時間の合計;25分間、放射温度計によるニッケルナノ粒子の表面温度;30〜150℃)もしくは10回(プラズマ照射時間の合計;50分間、放射温度計によるニッケルナノ粒子の表面温度;30〜150℃)繰り返すことで表面改質されたニッケルナノ粒子を得た。
プラズマ処理による表面改質前後のニッケルナノ粒子に対するXRDの測定結果を図3に示した。図3(a)は表面改質処理前の原料ニッケルナノ粒子、同(b)はプラズマ処理を間欠的に5回行った場合、同(c)はプラズマ処理を間欠的に10回行った場合の結果である。図3(a)〜(c)より、プラズマ処理によって、酸化物(NiO)のピークが増大していることがわかる。
また、プラズマ処理を10回繰り返した場合のニッケルナノ粒子のTGAの測定結果の変化を図4に示した。図4から、プラズマ処理を繰り返す毎に、重量減少が生じており、プラズマ処理によって水酸化ニッケルなどの不純物が除去されていることがわかる。
さらに、焼結時の熱収縮挙動を確認するために、プラズマ処理の前後のニッケルナノ粒子について、TMAを測定した結果を図5に示した。図5から、プラズマ処理を行うことで5%収縮時の温度が向上している。これは、図3の結果を考慮すると、ニッケルナノ粒子の表面に、強固な酸化被膜が形成されたためであると考えられる。
以上のことから、液相法で合成したニッケルナノ粒子に低酸素雰囲気下のグロー放電を利用したプラズマ処理を行うことによって、水酸化ニッケルなどの不純物を除去し、ニッケルナノ粒子の表面に強固な酸化被膜を形成させるとともに、焼結時の熱収縮を抑制し得ることが確認された。
実施例2
プラズマ処理に用いたニッケルナノ粒子の平均粒子径を50nmにした以外は実施例1と同様にしてプラズマ処理による表面改質を行った。プラズマ処理前後のニッケルナノ粒子のTMAの測定結果を図6に示した。図6から、プラズマ処理を行うことによって初期の熱収縮が抑えられていることがわかる。この結果から、液相法で合成したニッケルナノ粒子に低酸素雰囲気下でプラズマ処理を行うことによって、水酸化ニッケルなどの不純物を除去し、ニッケルナノ粒子の表面に強固な酸化被膜を形成させるとともに、焼結時の熱収縮を抑制し得ることが確認された。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはなく、種々の変形が可能である。
1…プラズマ処理装置、2…下部電極、3…上部電極、4…ガラス板、5…ガラス板、6…スペーサー、7…ガス供給部、8…ガス排気部、9…高周波電源、10…ニッケルナノ粒子、101…プラズマ処理装置、102…円筒状電極、103…円柱状電極、104…ガラス筒、105…ガラス筒、109…高周波電源、111…第1のローラ、112…第2のローラ、S…内部空間

Claims (6)

  1. ニッケルナノ粒子の表面改質方法であって、以下の(1)〜(3)の条件;
    (1)走査型電子顕微鏡観察による平均粒子径が20nm以上150nm以下の範囲内であり、
    (2)窒素雰囲気で熱重量分析によって測定される室温から500℃における重量減少率が0.5〜5%の範囲内であり、
    (3)水酸化物の被膜を有するが、X線回折で結晶性の水酸化ニッケルが観測されない;
    を満たすニッケルナノ粒子を、グロー放電により生成させた酸素含有ガスのプラズマで処理し、酸化ニッケルの被膜を形成する工程を含むことを特徴とするニッケルナノ粒子の表面改質方法。
  2. 前記グロー放電における酸素含有ガスの濃度が、0.01体積%以上10体積%以下の範囲内である請求項1に記載のニッケルナノ粒子の表面改質方法。
  3. 前記グロー放電を大気圧で行う請求項1に記載のニッケルナノ粒子の表面改質方法。
  4. 前記プラズマによる処理温度が、5℃以上200℃以下の範囲内である請求項1に記載のニッケルナノ粒子の表面改質方法。
  5. 前記プラズマによる処理が、間欠的なプラズマ照射によって行われるものである請求項1に記載のニッケルナノ粒子の表面改質方法。
  6. 前記ニッケルナノ粒子が、下記の工程A〜C;
    A)金属ニッケルの前駆体であるニッケル塩を有機溶媒に溶解して、ニッケル錯体を生成させた錯化反応液を得る工程、
    B)錯化反応液を、マイクロ波照射によって加熱して、ニッケルナノ粒子のスラリーを得る工程、
    C)ニッケルナノ粒子のスラリーからニッケルナノ粒子を単離する工程、
    を含む方法によって製造されたものである請求項1に記載のニッケルナノ粒子の表面改質方法。
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