JP2013067971A - 鋼矢板構造物、鋼矢板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る鋼矢板構造物1は、一方の面に重防食被覆3が施されると共に両端に継手部17、21、41、49を有する第1、第2Z形鋼矢板5,7を連結して形成されるであって、継手部17、21、41、49は重防食被覆3がされた面側に突き出ないように設けられ、隣接する第1、第2Z形鋼矢板5,7の継手部同士が連結された状態で、連結された第1、第2Z形鋼矢板5,7における重防食被覆3間の隙間の距離が20mm以下であることを特徴とするものである。
【選択図】 図3
Description
重防食被覆鋼矢板は主にU形鋼矢板が用いられてきたが、近年幅広で工期短縮が可能なハット形鋼矢板についても重防食被覆が検討されている。
また、鋼矢板には断面がZ形状のものがあり、今後海外を中心に使用が増えることが考えられているが、その防食方法についてはほとんど検討されていない。
また、特許文献2では継手部にあらかじめフック金具を固定して、そこにカバーを取り付けその中に充填材を充填する方法が提案されている。
また、特許文献3では継手部にそってべースプレートを固定し、そのベースプレートとカバーをスポット溶接し、その中に充填材を充填する方法が提案されている。
また、特許文献4では継手部にあらかじめL型金具を固定しておき、そこにカバーをとりつけ、継手部とカバー間に充填材を充填する方法が提案されている。
また、特許文献1乃至4はいずれもハット形鋼矢板に関するものであり、ハット形鋼矢板以外のもの、例えばZ形鋼矢板については何らの検討もされていない。
また鋼材が露出する箇所が極端に小さくなることによって、露出部をシール材や金属板などで被覆する必要がなく、施工性を向上させることもできる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
本実施の形態に係る鋼矢板構造物1は、図1、図2に示すように、一方の面に重防食被覆3が施された第1Z形鋼矢板5と第2Z形鋼矢板7を連結して形成される鋼矢板構造物である。
以下、各構成を詳細に説明する。
本実施の形態において第1Z形鋼矢板5及び第2Z形鋼矢板7に施される重防食被覆3はその種類や形態を特に限定するものではないが、その一例を示すと、腐食環境にさらされる表面にウレタンエラストマーやポリエチレンなどの防食樹脂層をポリウレタンやエポキシなどの接着剤層の上に2〜5mm程度の厚さで被覆したものが挙げられる。
重防食被覆3は、例えば海側に配置される面における飛沫、干満帯に相当する部位に施工される。
また、隣接する第1Z形鋼矢板5と第2Z形鋼矢板7間に生ずる重防食被覆3間の隙間a(図2参照)は、20mm以下になるように設定されている。
隙間aの距離が20mm以下になるのは、図2に示されるように、第1Z形鋼矢板5と第2Z形鋼矢板7の継手部の形状が関連しているが、この点については、以下の第1Z形鋼矢板5と第2Z形鋼矢板7の説明において詳細に述べる。
第1Z形鋼矢板5(図3(a)参照)は、断面において、図中右斜め上方に向かうように傾斜するウェブ9と、該ウェブ9の図中上側端部に連続して右方向に延出するように形成された上フランジ11と、ウェブ9の下側端部に連続して左方向に延出するように形成された下フランジ13とを備えている。そして、上フランジ11の端部には凸状部15を備えた第1凸付継手部17が形成され、下フランジ13の端部には内面側(重防食被覆3が設けられていない面側)に向けて略直角に屈曲する屈曲部19を備えた第1屈曲継手部21が形成されている。
第1凸付継手部17は、図3(a)に示すように、図中下方に開口する凹溝23と、凹溝23の先端側に形成されて凹溝23側に屈曲する鉤爪25と、凹溝23の基部側に形成された図中下方向に突き出る凸状部15を備えている。鉤爪25の外側の端面27は上フランジ11に対して略直角になっている。
また、図3(a)に示すように、第1凸付継手部17における開口側と反対の面は、第1屈曲継手部21の屈曲部19に至るまで、ウェブとフランジの境の部分にあたる折れ曲がりを除き平坦になっており、この部分に重防食被覆3が施されている。ただし第1凸付継手部17の先端や第1屈曲継手部21側の屈曲部19の基端部(端面27から10mm以内、および端面28から10mm以内)には重防食被覆3はなされていない(図2参照)。
第1屈曲継手部21は、図3(a)に示すように、屈曲部19の外側(鋼矢板幅方向外側)に図中上方に開口する凹溝29と、凹溝29の先端側に形成されて凹溝29側に屈曲する鉤爪31を備えている。
第2Z形鋼矢板7(図3(b)参照)は、断面において、図中左斜め上方に向かうように傾斜するウェブ33と、該ウェブ33の図中上側端部に連続して左方向に延出するように形成された上フランジ35と、ウェブ33の下側端部に連続して右方向に延出するように形成された下フランジ37とを備えている。
上フランジ35の端部には内面側(重防食被覆3が設けられていない面側)に向けて略直角に屈曲する屈曲部39を備えた第2屈曲継手部41が形成されている。この第2屈曲継手部41は第1Z形鋼矢板5に形成された第1屈曲継手部21と同形状であり、屈曲部39の外側に図中上方に開口する凹溝43と、凹溝43の先端側に形成されて凹溝43側に屈曲する鉤爪45を備えている。
第2屈曲継手部41は、第1Z形鋼矢板5の第1凸付継手部17と連結可能になっている。
第2凸付継手部49は、第1Z形鋼矢板5の第1屈曲継手部21と連結可能になっている。
また、第1Z形鋼矢板5及び第2Z形鋼矢板7は、その鋼種について特に限定するものではないが、普通鋼もしくはC、Si、Mn、P、Sなどを制御したものや、Cu、Cr、Ni、Mo、W、Sn、Nb、Sb,V、Al等の元素を添加した合金鋼などを用いることが出来る。
本発明の鋼矢板構造物1は従来の方法を特に変更することなく施工することが可能である。第1Z形鋼矢板5及び第2Z形鋼矢板7は、一枚ずつバイブロハンマーによって隣接する継手部(第1Z形鋼矢板5の第1凸付継手部17と第2Z形鋼矢板7の第2屈曲継手部41、第2Z形鋼矢板7の第2凸付継手部49と第1Z形鋼矢板5の第1屈曲継手部21)を連結しながら地中に打設する。
図2に示すように、隣接する第1Z形鋼矢板5と第2Z形鋼矢板7の連結部においては、各継手部の先端まで重防食被覆3がなされているので、鋼材が露出する部分は、20mm以内という小さい隙間aの部位のみであり、かつ第1Z形鋼矢板5の第1凸付継手部17と、第2Z形鋼矢板7の第2屈曲継手部41とが近接して配置されている。
このため、重防食被覆3間の隙間から海水等が浸入して第1凸付継手部17と第2屈曲継手部41における対向する部位が腐食して錆びが発生すると、この錆びによって錆びが発生した部位よりも内側への海水等の浸入が防止され、それ以上の継手部内部の腐食が防止される。つまり、継手近傍で腐食が進行する部位は重防食被覆3間の隙間aの部位のみとなる。さらに、ここで、重防食被覆3の端部における鋼材の腐食面積を小さくすること、具体的には重防食被覆3間の隙間aを20mm以下とすることにより、重防食被覆3の剥離を顕著に抑制できることを見出した。
この点をさらに詳細に説明する。水中における金属の腐食は、電気化学的反応に基づいて進行し、この反応は酸化反応(アノード反応)と、同時に還元反応(カソード反応)を伴う。カソード反応によってOH-イオンが発生し、このOH-イオンが重防食被覆を剥離させる。カソード反応の強さは腐食面積に比例するが、本実施の形態では腐食面積を小さくできるので、OH-イオンの発生を抑制して重防食被覆の剥離を防止できるのである。
図5に示すような継手部の態様を有するものにおいても、例えば図6に示す第1Z形鋼矢板69及び第2Z形鋼矢板71のように、第1Z形鋼矢板のウェブ9と上フランジ11及び下フランジ13の成す角度、第2Z形鋼矢板のウェブ33と上フランジ35及び下フランジ37の成す角度は、より直角に近いものであってもよい。
ハット形鋼矢板73の場合においても上述したZ形鋼矢板の場合と同様に、例えばウェブとフランジとの成す角度は特に限定されず、例えば図8に示すハット形鋼矢板75のように、屈曲部の角度が図7のものよりも直角に近いものであってもよい。
なお、U形鋼矢板の場合には、図9に示す態様の他、連結される一対のU形鋼矢板のうちの一方のU形鋼矢板における一方端部には第1凸付継手部17が、他方の端部には第1屈曲継手部21が設けられ、他方のU形鋼矢板における一方の端部には第2凸付継手部49が設けられ他方の端部には第2屈曲継手部41が設けられるような態様であってもよい。
本実施例のZ形鋼矢板は、鋼種SY295で、厚み250mm×幅700mm、長さ5000mmの連続鋳造ブルームを用いて、熱間圧延で製造したものである。
圧延時の素材ウェブ温度を、粗圧延機で1050〜1250℃、中間圧延機で900〜1050℃、仕上げ圧延機で700〜850℃として圧延を行った。前記3台の圧延機は従来の鋼矢板製造に用いる孔型を有するロールからなる圧延機である。その結果、何らのトラブルなく製品の鋼矢板が安定して製造できた。製品のサイズは、厚み16.0mm、有効幅630mm、有効高さ430mmである。
Z形鋼矢板表面における飛沫、干満帯に相当する部位4mに、重防食被覆として3mm厚さのウレタンエラストマー被覆を行った。
発明例1として隣接するZ形鋼矢板の継手部間の隙間a(図2参照)が10mmとなるもの、発明例2として隙間aが20mmとなるもの、比較例1として隙間aが40mmとなるものを準備した。
圧延時の素材ウェブ温度を、粗圧延機で1050〜1250℃、中間圧延機で900〜1050℃、仕上げ圧延機で700〜850℃として圧延を行った。前記3台の圧延機は従来の鋼矢板製造に用いる孔型を有するロールからなる圧延機である。その結果、何らのトラブルなく製品の鋼矢板が安定して製造できた。U形鋼矢板の製品サイズ(2Wサイズ)は厚み10.3mm、有効幅600mm、有効高さ130mmである。
U形鋼矢板表面における飛沫、干満帯に相当する部位4mに、重防食被覆として3mm厚さのウレタンエラストマー被覆を行った。
発明例3として隣接するU形鋼矢板の継手部間の隙間a(図2参照)が20mmとなるもの、比較例2として隙間aが40mmとなるものを準備した。
一方、比較例1、2については剥離距離が15mmであり、剥離した重防食被覆下の腐食も認められた。この段階では問題とならないが、今後剥離が進展し補修が必要となることはほぼ間違いなく、充分な防食性能が保たれているとは言えない結果となった。
以上のように、本発明であれば隣接する鋼矢板間の重防食被覆の隙間にカバーを設けなくても腐食防止の効果があることが実証された。
3 重防食被覆
5 第1Z形鋼矢板
7 第2Z形鋼矢板
9 ウェブ(第1Z形鋼矢板)
11 上フランジ(第1Z形鋼矢板)
13 下フランジ(第1Z形鋼矢板)
15 凸状部(第1Z形鋼矢板)
17 第1凸付き継手部
19 屈曲部(第1Z形鋼矢板)
21 第1屈曲継手部
23 凹溝(第1凸付き継手部)
25 鉤爪(第1凸付き継手部)
27 端面
28 端面
29 凹溝(第1屈曲継手部)
31 鉤爪(第1屈曲継手部)
33 ウェブ(第2Z形鋼矢板)
35 上フランジ(第2Z形鋼矢板)
37 下フランジ(第2Z形鋼矢板)
39 屈曲部(第2Z形鋼矢板)
41 第2屈曲継手部
43 凹溝(第2屈曲継手部)
45 鉤爪(第2屈曲継手部)
47 凸状部(第2凸付き継手部)
49 第2凸付き継手部
51 凹溝(第2凸付き継手部)
53 鉤爪(第2凸付き継手部)
55 端面
61 第1Z形鋼矢板(他の態様)
63 第2Z形鋼矢板(他の態様)
65 第1Z形鋼矢板(他の態様)
67 第2Z形鋼矢板(他の態様)
69 第1Z形鋼矢板(他の態様)
71 第2Z形鋼矢板(他の態様)
73 ハット形鋼矢板
75 ハット形鋼矢板(他の態様)
77 第1U形鋼矢板
79 第2U形鋼矢板
81 直線形鋼矢板
Claims (7)
- 一方の面に重防食被覆が施されると共に両端に継手部を有する鋼矢板を連結して形成される鋼矢板構造物であって、
前記継手部は前記重防食被覆がされた面側に突き出ないように設けられ、隣接する鋼矢板の継手部同士が連結された状態で、連結された鋼矢板における重防食被覆間の隙間の距離が20mm以下であることを特徴とする鋼矢板構造物。 - 請求項1記載の鋼矢板構造物を構成する鋼矢板であって、ウェブと、その両端に形成されたフランジと、各フランジの端部に、鋼矢板の面に対して逆向きに開口する継手部を備えてなるZ形鋼矢板であることを特徴とする鋼矢板。
- 請求項1記載の鋼矢板構造物を構成する鋼矢板であって、ウェブと、その両端に形成されたフランジと、各フランジの端部に、鋼矢板の面に対して同じ向きに開口する継手部を備えてなるZ形鋼矢板であることを特徴とする鋼矢板。
- 請求項1記載の鋼矢板構造物を構成する鋼矢板であって、断面がハット形のハット形鋼矢板であることを特徴とする鋼矢板。
- 請求項1記載の鋼矢板構造物を構成する鋼矢板であって、鋼矢板の面に対して逆向きに開口する継手部を有し、断面がU形のU形鋼矢板であることを特徴とする鋼矢板。
- 請求項1記載の鋼矢板構造物を構成する鋼矢板であって、鋼矢板の面に対して同じ向きに開口する継手部を有し、断面がU形のU形鋼矢板であることを特徴とする鋼矢板。
- 請求項1記載の鋼矢板構造物を構成する鋼矢板であって、断面が直線の直線形鋼矢板であることを特徴とする鋼矢板。
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