JP2010144209A - 鋼材並びに鋼矢板、鋼管矢板および鋼管杭並びに鋼矢板壁および鋼管矢板壁 - Google Patents

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英昭 幸
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Yoichi Kobayashi
洋一 小林
Yutaka Kano
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Abstract

【課題】十分な耐食性を有する鋼材並びに鋼矢板、鋼管矢板および鋼管杭並びに鋼矢板壁および鋼管矢板壁を提供する。
【解決手段】
耐食部および炭素鋼部が長手方向に接続された鋼材であって、前記耐食部が下記に規定する高耐食鋼からなることを特徴とする鋼材並びに鋼矢板、鋼管矢板および鋼管杭並びに鋼矢板壁および鋼管矢板壁。
質量%で、C:0.001〜0.15%、Si:2.5%以下、Mn:0.5%を超え2.5%以下、P:0.03%未満、S:0.005%以下、Cu:0.2%未満、Ni:0.2%未満、Cr:0.01〜3.0%、Al:0.003〜0.1%、N:0.001〜0.1%およびSn:0.03〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、Cu/Sn比が1以下である高耐食鋼。さらに、高耐食鋼は、Ti、Nb、Mo、W、V、Ca、Mg及びREMのうちの1種または2種以上を含んでもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、海岸、湾岸または河川等において岸壁形成または護岸等のために使用される鋼材並びに鋼矢板、鋼管矢板および鋼管杭並びに鋼矢板壁および鋼管矢板壁に関する。
屋外で長期間使用する鋼材は、厳しい腐食環境に曝されることがある。例えば、鋼矢板および鋼管矢板は、連続的に地中に打ち込まれ、鋼矢板壁および鋼管矢板壁を形成して、主に河川、海岸、港湾などの護岸に用いられている。また、例えば、鋼管杭は、海底に打ち込まれ、海洋構造物等の基礎として海洋環境において用いられている。
したがって、これらの鋼材は、屋外の自然環境の中で、河川水、排水、雨水、海水などの水、大気、太陽光などに曝され、また土砂、泥、瓦礫などに直接強く接するので、著しい腐食が起こり易い。特に、海洋環境においては、非常に過酷な腐食環境であるため、鋼材が著しく腐食し、寿命が低下する。したがって、より長期間持続可能でかつ効果的な防食対策が望まれている。
この対策として、従来より、鋼からなる母材の表面にポリオレフィンまたはポリウレタン等の樹脂からなる防食被膜が形成された防食被膜処理鋼(以下、単に「防食処理鋼」ともいう)が使用されている。しかしながら、例えば鋼矢板においては、隣接する継手部を互いに嵌合させる必要があるため、継手部に防食被膜を形成することが困難である。その結果、母材の端面が露出する形となることが一般的である。そのため、鋼矢板の防食には、防食被膜の形成に加えて電気防食(カソード防食)が併用されることが一般的である。
このように、電気防食を併用することによって、防食被膜がなされない端面においても母材は防食される。しかしながら、防食電流が及ぶ海中部(没水部)は防食されるが、防食電流が及ばない飛沫部においては有効な防食手段がないという問題があった。また、主に干満部において、流木等で防食被膜にキズが生じる場合があるが、干満部は常に防食電流が流れる状況であるというわけではないため、キズが生じた部位における防食被膜の剥がれの発生やその部位が腐食する場合があることが課題であった。
このため、防食鋼材の使用期間中の電気防食下の剥離現象を防止するために、耐水密着性や耐陰極剥離性を向上させるための種々の提案がなされてきた。
特許文献1には、Cr含有量が0.5質量%以上の低合金鋼に、絶縁抵抗が10Ωm以上の被膜を形成することによって、耐水密着性および耐陰極剥離性を向上させてなる防食鋼管矢板が開示されている。
また、特許文献2には、濃度0.5MのNaCl溶液中で常温における腐食電位が0〜−550mV vs SCE の範囲内を満足する鋼材と、この鋼材の表面に形成される有機被膜層とからなり、有機被膜層の耐端面剥離性と、鋼板と有機被膜層との二次密着性を改善してなる有機被膜鋼材が開示されている。
また、上記のような防食被膜を形成することなく鋼材の防食性を向上させる技術も提案されている。例えば、特許文献3および特許文献4に記載の鋼矢板では、防食性を向上させるために、鋼矢板の水と接触する部分がチタンクラッド鋼板によって被覆されている。
特開2000-355775号公報 特開2003-301284号公報 特開平11-293663号公報 特開2000-199224号公報
しかしながら、特許文献1で開示された技術は、没水部における剥離はある程度抑制できるものの、海洋飛沫部のように乾湿繰り返しがあり、電気防食の効果が及ばない部位では、逆に腐食が促進されるという問題がある。
そして、特許文献2で開示された技術は、塩水噴霧試験では優れた効果を示しており、常時濡れた環境では防食効果がある。しかしながら、海洋飛沫部のような乾湿繰り返し環境では局部的に腐食が進行するという問題がある。
また、特許文献3および特許文献4に記載の技術では、鋼矢板の形状に応じてチタンクラッド鋼板の形状を調整する必要がある。そのため、鋼矢板の形状が複雑な場合には、チタンクラッド鋼板の製造が困難になる。また、この技術を用いた鋼矢板においては、チタンクラッド鋼板に流木等が衝突した場合、その衝突部において鋼矢板とチタンクラッド鋼板との間で異種金属接触腐食が発生するおそれがある。この異種金属接触腐食を防止するためには、鋼矢板とチタンクラッド鋼板との間に樹脂等を充填する必要があり、製造工程の簡略化が困難になる。
本発明は、このような状況に鑑み、十分な耐食性を有しかつ異種金属接触腐食の発生が防止された鋼材並びに鋼矢板、鋼管矢板および鋼管杭並びに鋼矢板壁および鋼管矢板壁を提供することを目的とする。
本発明者らは、防食被膜鋼材の端面あるいは損傷部からの被膜層の剥がれと膨れ、そして、鋼材の腐食深さ、特に乾湿繰り返し環境となる海洋飛沫部における現象について、種々の実験と詳細な検討を重ねた。
その結果、海洋飛沫部のように塩分量の付着が多く、乾湿繰り返しの環境下では、FeCl溶液の乾湿繰り返しが本質的な条件となり、Fe3+の加水分解によりpHが低下した状態で、かつFe3+が酸化剤として作用することによって腐食が加速されることを見出した。
このときの腐食反応は、以下に示すとおりである。
カソード反応としては、主として、次の反応が起こる。
Fe3++e→Fe2+ (Fe3+の還元反応)
そして、この反応以外にも、次のカソード反応も併発する。
2HO+O+2e→4OH
2H+2e→H
一方、上記のFe3+の還元反応に対して、次のアノード反応が起こる。
アノード反応:Fe→Fe2++2e (Feの溶解反応)
従って、腐食の総括反応は、次の(1)式のとおりである。
2Fe3++Fe→3Fe2+ ・・・・・・(1)式
上記(1)式の反応により生成したFe2+は、空気酸化によってFe3+に酸化され、生成したFe3+は再び酸化剤として作用し、腐食を加速する。この際、Fe2+の空気酸化の反応速度は低pH環境では一般に遅いが、濃厚塩化物溶液中では加速され、Fe3+が生成され易くなる。このようなサイクリックな反応のため、塩分量が非常に多い環境では、Fe3+が常に供給され続け、鋼の腐食が加速され、耐食性が著しく劣化することになることが判明した。
このように、塩分量が非常に多い環境では、鋼自身のアノード溶解反応を遅くするのが有効である。すなわち、塩分量が非常に多い環境では、Crを含有する鋼はアノード溶解反応が促進されるために、耐食性が劣化するものと想定される。
上述の塩分環境における腐食のメカニズムを基に、種々の合金元素の耐食性ならびに耐剥離性への影響について検討した結果、下記の(a)〜(i)に示す知見を得た。
(a)Snは、Sn2+として溶解し、2Fe3++Sn2+→2Fe2++Sn4+なる反応によりFe3+の濃度を低下させることで、(1)式の反応を抑制する。Snには、さらにアノード溶解を抑制するという作用もある。このSnの添加による耐食性向上により、防食被膜の端部ならびにキズ部の剥離が抑制されることが判明した。
(b)Niは、従来から耐食性を向上させる合金元素として知られているが、Snと複合添加した場合には、塩分の多い環境における耐食性の改善効果が無く、多量に添加すると、逆に耐食性を劣化させることが判明した。このNiの挙動は、Ni添加量が増すほど耐食性が向上するという従来の知見とは相反するものである。
(c)これに対して、Crは単独添加した場合には、塩分量の多い環境において耐食性を劣化させるが、Snと複合添加した場合には、塩分量の多い環境での耐食性を向上させる効果を発揮することが判明した。
(d)Alを含有させると、海洋飛沫環境では耐食性が向上する。
(e)Nはアンモニアとして溶解し、腐食界面のpHを上昇させる作用を有する。塩分量の多い環境では、上記Fe3+の加水分解によりpHが低下するが、Nを含有させることにより、腐食界面のpH低下が抑制され、耐食性および塗膜剥離性が向上する。
(f)以上の(a)〜(e)の成分を含有させた材料に、Ti、Nb、Mo、W、V、CaおよびMgから選んだ1種または2種以上を含有させても、耐食性の改善に効果がある。
(g)さらに、REMを含有させると、鋼の溶接性が改善される。
(h)これらの鋼は、表面に防食被膜を形成した場合、端面ならびにキズ部の腐食深さを抑制するとともに、防食被膜の剥離を抑制する効果がある。
(i)鋼材の耐食性を向上させるためには、鋼材の全部に上記の耐食性および塗膜剥離性を有する鋼(以下、「高耐食鋼」という。)を用いなくても、腐食環境が厳しく防食性の要求される部分を高耐食鋼により形成すればよい(以下、高耐食鋼からなる部分を「耐食部」という)。また、高耐食鋼は、汎用の鋼矢板、鋼管矢板または鋼管杭等に用いられるいわゆる炭素鋼と海水中における電位の差が殆どないため、異種金属接触腐食を考慮する必要がない。
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、その要旨は、次の(1)〜(7)の鋼材、並びに(8)の鋼矢板、鋼管矢板または鋼管杭、並びに(9)の鋼矢板壁または鋼管矢板壁にある。以下、総称して、本発明ということがある。
(1) 耐食部および炭素鋼部が長手方向に接続された鋼材であって、前記耐食部が下記に規定する高耐食鋼からなることを特徴とする鋼材。
質量%で、C:0.001〜0.15%、Si:2.5%以下、Mn:0.5%を超え2.5%以下、P:0.03%未満、S:0.005%以下、Cu:0.2%未満、Ni:0.2%未満、Cr:0.01〜3.0%、Al:0.003〜0.1%、N:0.001〜0.1%およびSn:0.03〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、Cu/Sn比が1以下である高耐食鋼。
(2) 前記高耐食鋼は、さらに、質量%で、Ti:0.3%以下およびNb:0.1%以下よりなる群から選ばれた1種又は2種を含有することを特徴とする、上記(1)の鋼材。
(3) 前記高耐食鋼は、さらに、質量%で、Mo:1.0%以下、W:1.0%以下およびV:1.0%以下よりなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の鋼材。
(4) 前記高耐食鋼は、さらに、質量%で、Ca:0.1%以下およびMg:0.1%以下よりなる群から選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする、上記(1)から(3)までのいずれかに記載の鋼材。
(5) 前記高耐食鋼は、さらに、質量%で、REMを0.02%以下含有することを特徴とする、上記(1)から(4)までのいずれかに記載の鋼材。
(6) 前記耐食部の少なくとも一部に、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリオレフィン樹脂のうちの1種又は2種以上からなる防食被膜が形成されていることを特徴とする、上記(1)から(5)までのいずれかに記載の鋼材。
(7) 前記耐食部は、少なくとも水面の変動範囲および飛沫帯に設けられることを特徴とする、上記(1)から(6)までのいずれかに記載の鋼材。
(8) 上記(1)から(7)までのいずれかに記載の鋼材からなることを特徴とする鋼矢板、鋼管矢板または鋼管杭。
(9) 上記(8)に記載の鋼矢板または鋼管矢板により形成されることを特徴とする鋼矢板壁または鋼管矢板壁。
本発明にかかる鋼材並びに鋼矢板、鋼管矢板および鋼管杭並びに鋼矢板壁および鋼管矢板壁は、塩分量が多い環境下においても十分な耐食性を有している。また、防食被膜の剥離抑制、被膜の端部およびキズ部の耐食性・耐剥離性に優れるため、欠陥部等からの腐食を著しく抑制することができるので、メンテナンスミニマム化に寄与する材料として広く適用することができる。
本発明に係る鋼材は、下記に説明する高耐食鋼からなる耐食部および炭素鋼からなる炭素鋼部により構成される。以下、具体的に説明する。
1.以下に、本発明に係る高耐食鋼に含まれる合金元素の作用効果を、その含有量の限定理由とともに、説明する。なお、合金元素の含有量「%」は、いずれも「質量%」を意味する。
C:0.001〜0.15%
Cは、鋼の強度を確保するために必要な合金元素であるが、多量に含有させると鋼材の溶接性が劣化する。したがって、C含有量は0.15%を上限とする。また、0.001%未満になると所定の強度が確保できないので、下限は0.001%とする。望ましい範囲は、0.005%〜0.15%である。
Si:2.5%以下
Siは、製鋼時の脱酸に必要な合金元素である。同じく脱酸剤としての働きをするAlを含有する場合には、特に添加をしなくてもよいが、Al含有量が0.005%未満の場合には、0.4%以上含有させるのが望ましい。一方、Siを2.5%を超えて含有させると、鋼の靱性が損なわれる。したがって、Siの含有量は2.5%以下とする。また、Siには耐食性を向上させる効果もある。この効果を確実に得たい場合には、0.1%以上添加するのが好ましい。
Mn:0.5%を超え2.5%以下
Mnは、低コストで鋼の強度を高める作用効果を有する元素であり、鋼中のSの含有量が低い場合には、一般に塩分環境における耐食性を向上させる作用を有する。しかしながら、鋼中のSと結合してMnSを形成し、このMnSが腐食の起点となり、耐食性を劣化させる。また、機構は不明であるが、Niと共存する場合にはMnの含有量が2.5%を超えると耐食性が劣化する。したがって、Mnの含有量は2.5%以下とする。望ましくは1.5%以下とする。なお、構造用鋼としての強度を維持するためには、Mnを0.5%を超えて含有させる必要がある。
P:0.03%未満
Pは、不純物として含有されるが、濃厚塩化物環境での過度のPの含有は耐食性を劣化させるため、できるだけ少なくする必要がある。したがって、その含有量は0.03%未満とする。
S:0.005%以下
Sは、不純物として含有されるが、Mnと結合すると非金属介在物のMnSを形成して腐食の起点となり易く、耐食性を劣化させる。したがって、Sの含有はできるだけ少なくする必要があるので、その上限は0.005%とする。
Cu:0.2%未満
Cuは、一般的に耐食性を向上させる基本元素とされ、ほぼ全ての耐食鋼に添加されているが、高塩分の比較的ドライな環境においては、むしろ耐食性を低下させる場合がある。したがって、Cuの含有はできるだけ少なくする必要があり、不純物として含有されるとしても、Cu含有量は0.2%未満とする必要がある。
Ni:0.2%未満
Niは、一般的に塩分量の多い環境下での耐食性を著しく向上させる元素として従来から鋼中に添加され、Ni系耐候性鋼として開発・実用化されてきている。しかし、理由は定かではないが、Snと複合添加した場合には、耐食性の改善効果がないばかりか、Snによる耐食性改善効果を低下させるという悪影響が現れる。したがって、Niの含有はできるだけ少なくする必要があり、不純物として含有されるとしても、Ni含有量は0.2%未満とする必要がある。
Cr:0.01〜3.0%
Crは、塩分量がそれほど多くない環境では耐食性の向上が期待できるが、塩分量が多い環境において鋼のアノード溶解反応を促進し耐候性を劣化させる。ところが、Snを含有する場合には、塩分量が多い環境においても、Cr含有による耐食性の向上効果が発揮される。この効果は含有量0.01%以上で発揮されるが、3.0%を超えると局部腐食感受性が高まるとともに、溶接性が劣化する。したがって、Cr含有量は0.01〜3.0%とする必要がある。なお、Crの含有量の望ましい範囲は0.05〜1.0%である。
Al:0.003〜0.1%
Alは、0.003%以上含有させると耐食性が向上するが、含有量が0.1%を超えると鋼が脆化し易くなる。したがって、Alの含有量は0.003〜0.1%とする。
N:0.001〜0.1%
Nは、アンモニアとなって溶解し、塩分量の多い環境におけるFe3+の加水分解によるpH低下を抑制することで、塩分環境における耐食性を向上させる効果を有する。この効果はNを0.001%以上含有させることにより得られ、0.1%を超えると飽和する。したがって、Nの含有量は0.001〜0.1%とする。含有量の望ましい範囲は0.002〜0.08%である。
Sn:0.03〜0.50%
Snは、Sn2+となって溶解し、酸性塩化物溶液中でのインヒビター作用により腐食を抑制する作用を有する。また、Fe3+を速やかに還元させ、酸化剤としてのFe3+濃度を低減する作用を有することにより、Fe3+の腐食促進作用を抑制するので、高塩分環境における耐食性を向上させる。また、Snには鋼のアノード溶解反応を抑制し耐食性を向上させる作用がある。さらに、Snを含有することにより、塩分が多い環境においてもCrの耐候性を向上させる効果が発揮される。
これらの作用は、Snを0.03%以上含有させることにより得られ、0.50%を超えると飽和する。したがって、Snの含有量は0.03〜0.50%とする。Snの含有量の望ましい範囲は0.03〜0.20%である。
Cu/Sn比:1以下
本願発明のようにSnを含有する鋼の場合には、Cuの含有による耐食性の低下が著しい。また、鋼材を製造する際、Cuの含有による圧延割れの原因ともなる。このため、Cu/Sn比、すなわち、Si含有量に対するCu含有量の比を1以下とする必要がある。
本発明にかかる高耐食鋼は、上記の合金元素の他に、さらにTi、Nb、Mo、W、V、CaおよびMgよりなる群から選ばれた1種または2種以上を含有してもよいし、また、REMを含有してもよい。これらの元素を含有させてもよい理由とそのときの含有量は、次の通りである。
Ti:0.3%以下
Tiは、TiCを形成してCを固定することによって、クロム炭化物の形成を抑制して耐食性を向上させる。また、TiSの形成によりSを固定することによって、腐食の起点となるMnSの形成を抑える。しかしながら、Tiの含有量が0.3%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.3%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Tiを0.01%以上含有させるのが好ましい。
Nb:0.1%以下
Nbには、Tiと同様、NbCを形成することによって、クロム炭化物の形成を抑制して耐食性を向上させる効果がある。しかしながら、Nbの含有量が0.1%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.1%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Nbを0.01%以上含有させるのが好ましい。
Mo:1.0%以下
Moは、溶解して酸素酸イオンMoO 2−の形でさびに吸着し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。しかしながら、Moの含有量が1.0%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は1.0%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Moを0.01%以上含有させるのが好ましい。
W:1.0%以下
Wは、Moと同様、溶解して酸素酸イオンMoO 2−の形でさびに吸着し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。しかしながら、Wの含有量が1.0%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は1.0%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Wを0.01%以上含有させるのが好ましい。
V:1.0%以下
Vは、MoやWと同様、溶解して酸素酸イオンMoO 2−の形でさびに吸着し、さび層中の塩化物イオンの透過を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。しかしながら、Vの含有量が1.0%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は1.0%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Vを0.01%以上含有させるのが好ましい。
Ca:0.1%以下
Caは、鋼中に酸化物の形で存在し、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制して、腐食の促進を抑える効果がある。しかしながら、Caの含有量が0.1%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.1%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Caを0.0001%以上含有させるのが好ましい。
Mg:0.1%以下
Mgは、Caと同様、腐食反応部における界面のpHの低下を抑制し、耐食性を向上させる効果がある。しかしながら、Mgの含有量が0.1%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.1%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、Mgを0.0001%以上含有させるのが好ましい。
REM:0.02%以下
REMは、鋼の溶接性を向上させる目的で含有させることができる。しかしながら、REMの含有量が0.02%を超えると、この効果が飽和するだけでなく、鋼材のコストが上昇するので、その含有量の上限は0.02%とする。なお、この効果を確実に発現させるために、REMを0.0001%以上含有させるのが好ましい。なお、REMとは、ランタニドの15元素にYおよびScを合わせた17元素の総称であり、これらの元素のうちの1種又は2種以上を含有させることができる。なお、REMの含有量はこれらの元素の合計含有量を意味する。
本発明に係る高耐食鋼は、上記の必須元素あるいはさらに上記の任意元素を含有し、残部がFeおよび不純物からなる。ここで、不純物とは、原料鉱石やスクラップ等から混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。なお、鋼中にオキサイド等の介在物が微細分散されている鋼も本発明の高耐食鋼に含まれる。
本発明に係る高耐食鋼は、板材、管材、棒材、H型鋼などの異形鋼材を含む多様な形状とすることができる。鋼材の厚みは一般に3mm以上とすることが好ましい。耐食性鋼材は一般に熱間圧延材であるが、本発明の高耐食鋼を製造する際の熱間圧延条件は特に制限されず、通常と同様でよい。
本発明に係る高耐食鋼は、表面の少なくとも一部に防食被膜を有してもよい。ここで、「防食被膜」とは、樹脂の厚膜被膜であって、鋼材に優れた防食性を与えることができるものをいう。この厚膜に用いる各樹脂は公知のものでよい。より具体的には、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリオレフィン樹脂のうちの1種または2種以上からなる樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂の厚みは、加工性及び海上の浮遊物に対する耐衝撃性等を考慮して決定されることが好ましい。例えば、0.3〜5mmとすることが好ましい。
防食処理される高耐食鋼は、予めショットブラスト、グリッドブラストまたはサンドブラスト等の物理的手段により、あるいは酸洗またはアルカリ脱脂などの化学的手段により表面が清浄化されていることが好ましい。
また、公知のクロメ−ト処理やリン酸塩処理を施すことが可能も可能である。さらに、ジンクリッチプライマーあるいはジンクリッチペイントを樹脂被膜下に予め形成することもできる。特に、汎用のエポキシ樹脂や変性エポキシ樹脂の被膜の場合には効果が大きい。
ポリウレタン被膜も公知のプライマーを施した後に形成することができる。また、ポリオレフィン樹脂被膜は、公知のエポキシプライマーや変性ポリオレフィン樹脂を介して形
成することができる。
2.鋼材の形態
以下、本発明にかかる鋼材の種々の形態について説明する。
(1)第1の形態(U字型鋼矢板)
図1は、本発明に係る鋼材の一例である鋼矢板を示す斜視図である。ここでは、U型の鋼矢板10について説明する。
鋼矢板10は、耐食部11およびその耐食部11の下部に接続される炭素鋼部12により構成される。耐食部11および炭素鋼部12は、例えば、溶接により接続される。耐食部11は、上記の高耐食鋼からなる。鋼矢板10(耐食部11および炭素鋼部12)は、ウェブ13、ウェブ13の両端に形成される2つのフランジ14およびそれぞれのフランジ14の先端部に形成される2つの継手部15により構成される。耐食部11および炭素鋼部12は、略同一の断面形状を有する。
図2および図3は、鋼矢板10の海岸での使用の一例を示す図である。なお、図2は、鋼矢板10から形成される鋼矢板壁20を示す斜視図(一部断面図)であり、図3は、その側面図(一部断面図)である。
図2および図3に示す例では、複数個の鋼矢板10を隣接する継手部15同士を嵌合することにより鋼矢板壁20が形成されている。鋼矢板壁20は、海岸の岸壁50に沿って直立するように海底地盤(水底地盤)51に打ち込まれている。各鋼矢板10の上端部は、岸壁50上のコンクリート構造物52内に埋設されている。これにより、鋼矢板壁20が固定されている。
図4は、鋼矢板壁20を形成する手順を説明するための図である。なお、図4において、(a)は鋼矢板壁20の斜視図であり、(b)は(a)のA−A線矢視断面図である。
図4に示すように、鋼矢板10同士を連結する場合には、鋼矢板10の継手部15の一つが、隣接する鋼矢板10の継手部15の一つにはめ込まれる。このようにして、複数の鋼矢板10を連結することにより鋼矢板壁20が形成される。なお、本実施の形態においては、隣接する鋼矢板10同士は、互いに逆方向を向くように設置されている。
また、本実施の形態においては、耐食部11は、海面61の上下の変動範囲と飛沫帯をカバーするように設けられている。なお、図3において二点鎖線で示す位置h1は、干潮時の海面61の位置を示し、位置h2は満潮時の海面61の位置を示し、位置h3は満潮時に海面61からの飛沫が到達可能な位置を示す。したがって、位置h2と位置h3との間の領域が、満潮時の飛沫帯となる。
本実施の形態においては、耐食部11の下端が、位置h1よりも下方に位置するように設けられている。これにより、干潮時においても、鋼矢板10の腐食を著しく抑制することができる。
また、炭素鋼部12の海60側には、流電陽極70が設けられている。本実施の形態においては、この流電陽極70を用いて炭素鋼部12の電気防食処理を行うことができる。それにより、炭素鋼部12の海60側の面の腐食を十分に防止することができる。
なお、流電陽極70は、浮遊物(流木等)の衝突による損傷を避けるため、海面61から十分に離間した位置に取り付けることが好ましい。また、流電陽極70は、炭素鋼部12の長さ等を考慮して、炭素鋼部12全体を効率よく防食できる位置に取り付けることが好ましい。なお、流電陽極70としては、アルミニウム合金または亜鉛合金等を用いることができる。この場合、炭素鋼部12を−0.77V(vs.SCE)よりも卑な電位に保つことができ、炭素鋼部12の腐食を十分に防止することができる。
なお、本実施の形態においては、耐食部11の少なくとも海60側の面には、ポリウレタン等からなる防食被膜が形成されている。それにより、耐食部11の腐食をより著しく抑制することができる。
以上のように、本実施の形態においては、海面61の変動範囲および飛沫帯に応じて鋼矢板10の所定の領域に耐食部11が設けられている。それにより、鋼矢板10の耐食性を十分に向上させることができる。
また、本実施の形態においては、工場等において管理された状態で、予め耐食部11および炭素鋼部12を接合しておくこともできる。また、鋼矢板10の施設場所において、鋼矢板10に新たな防食処理を施す必要がないので、鋼矢板10を容易に設置することができるとともに、設置コストを低減することができる。
なお、上記においては、鋼矢板10が海岸で用いられる場合について説明したが、本発明に係る鋼矢板10は、海上または川岸等の種々の場所でも用いることができる。
(2)第2の形態(ハット型鋼矢板)
図5は、本発明に係る鋼材の一例であるハット型鋼矢板を示す斜視図である。また、図6は、図5のハット型鋼矢板により形成される鋼矢板壁を示す横断面図である。
図5に示すように、本実施の形態に係るハット型鋼矢板30(以下、鋼矢板30と略記する。)は、耐食部31およびその耐食部31の下部に接続される炭素鋼部32により構成される。耐食部31および炭素鋼部32は、例えば、溶接により接続される。耐食部31は、上記の高耐食鋼からなる。耐食部31および炭素鋼部32は、略同一の断面形状を有する。
図5および図6に示すように、ハット型鋼矢板30(耐食部31および炭素鋼部32)は、ウェブ33、ウェブ33の両端に形成される2つのフランジ34、それぞれのフランジ34の先端においてウェブ33に対して平行に延びる2つの腕部35a,35bおよびそれぞれの腕部35a,35bの先端に形成される2つの継手部36a,36bにより構成される。なお、図5および図6の例においては、鋼矢板30のウェブ33にH型鋼37が溶接により接続されている。
図6に示すように、鋼矢板壁40を形成する際には、隣接する継手部36aと他の鋼矢板30の継手部36bとを嵌合することにより複数個の鋼矢板30が接続される。この鋼矢板壁40を図2および図3の鋼矢板壁20と同様に岸壁の護岸のために用いる場合には、H型鋼37が海側に設置される。
また、耐食部31は、図1〜図4で説明した鋼矢板10の耐食部11と同様の位置に設けられる。それにより、干潮時においても、鋼矢板30の腐食を著しく抑制することができる。また、炭素鋼部32の海側の部分には、鋼矢板10(図3)と同様に流電陽極70(図3)が設けられ、電気防食処理が行われる。それにより、炭素鋼部32の腐食を十分に防止することができる。また、耐食部31の少なくとも海側の面には、ポリウレタン等からなる防食被膜が形成されている。それにより、耐食部31の腐食をより著しく抑制することができる。
なお、上記の鋼矢板壁40においては、各鋼矢板30にH型鋼37が設けられているが、全ての鋼矢板30にH型鋼37が設けられる必要はない。
(3)第3の形態(H型鋼矢板)
図7は、本発明に係る鋼材の一例であるH型鋼矢板を示す斜視図である。なお、図7には、H型鋼矢板の上部が示されている。
図7に示すように、本実施の形態に係るH型鋼矢板80(以下、鋼矢板80と略記する。)は、板状のウェブ81およびそのウェブ81の両側に溶接によって接続される2つのフランジ82,83を有する。それぞれのフランジ82の両側には、2つの継手部84aが形成され、それぞれのフランジ83の両側には2つの継手部84bが形成されている。なお、フランジ82とフランジ83とは、略同一の断面形状を有する。
フランジ82は、例えば、炭素鋼により形成される。また、フランジ83は、耐食部83aおよびその耐食部83aの下部に接続される炭素鋼部83bにより構成される。耐食部83aおよび炭素鋼部83bは、例えば、溶接により接続される。耐食部83aは、上述した高耐食鋼からなる。耐食部83aおよび炭素鋼部83bは、略同一の断面形状を有する。
この鋼矢板80によって鋼矢板壁を形成する際には、隣接する継手部84a同士および隣接する継手部84b同士を嵌合することにより複数個の鋼矢板80が接続される。このようにして形成される鋼矢板壁を図2および図3の鋼矢板20と同様に岸壁の護岸のために用いる場合には、フランジ83が海側に配置される。
また、耐食部83aは、図1〜図4で説明した鋼矢板の耐食部と同様の位置に設けられる。それにより、干潮時においても、鋼矢板80の腐食を著しく抑制することができる。また、炭素鋼部83bの海側の部分には、鋼矢板10(図3参照)と同様に流電陽極70(図3)が設けられ、電気防食処理が行われる。それにより、炭素鋼部83bの腐食を十分に防止することができる。また、耐食部83aの少なくとも海側の面には、ポリウレタン等からなる防食被膜が形成されている。それにより、耐食部83aの腐食をより著しく抑制することができる。
(4)第4の形態(鋼管杭)
図8は、本発明に係る鋼材の一例である鋼管杭を示す斜視図である。なお、図8には、鋼管杭の上部が示されている。
図8に示すように、本実施の形態に係る鋼管杭90は、耐食部91およびその耐食部91の下部に接続される炭素鋼部92により構成される。耐食部91および炭素鋼部92は、略同一の断面形状(円形状)を有する。耐食部91と炭素鋼部92とは、例えば、溶接により接続される。
この鋼管杭90を海洋構造物の基礎として用いる場合には、耐食部91は、図1〜図4で説明した鋼矢板の耐食部と同様の位置に設けられる。それにより、干潮時においても、鋼管杭90の腐食を著しく抑制することができる。また、炭素鋼部92の海側の部分には、鋼矢板の場合と同様に流電陽極70(図3参照)が設けられ、電気防食処理が行われる。それにより、炭素鋼部92の腐食を十分に防止することができる。また、耐食部91の表面には、ポリウレタン等からなる防食被膜が形成されている。それにより、耐食部91の腐食をより著しく抑制することができる。
(5)他の形態
本発明に係る鋼材は、上記の形態に限定されず、鋼管矢板等の他の形態で用いられてもよい。また、継手部の形状も上記の例に限定されず、鉤状等の他の形状であってもよい。
実施例においては、上記の高耐食鋼の性能を試験室レベルで評価した。以下、その評価結果について説明する。
表1に示した化学組成を有するNo.1〜No.26の鋼について、150Kg真空溶解炉で溶製し、インゴットに鍛造した後、1100℃に加熱後、圧延を行って、厚さ4mm×幅150mm×長さ1000mmの寸法の鋼材を作製した。次いで、この鋼材の表裏面を機械研削し、厚さ3.2mm×幅70mm×長さ150mmの試験片を切り出した。なお、本実施例で作製した鋼材の酸素含有量は0.0001〜0.005%の範囲であった。
Figure 2010144209
得られた鋼材をブラスト処理(R=50μm)した後、ウレタン用プライマー(日本ペイント(株)製の防食コーティングス製Rプライマー(N))を30ミクロンバーコーターにより塗布し、2時間室温にて乾燥後、ウレタン被膜(日本ペイント(株)製の防食コーティングス「ミゼロンS-100/A-1000」)を厚み1.5mmになるように鋼材上に形成し、鋼面にキズがつくまで塩化ビニルカッターによりクロスにカットを入れて、クロスカット試験評価を行った。なお、実施例ではウレタン被膜を例示するが、上述の他の樹脂被膜でも同様の改善効果が観察された。また、通常、ウレタン被膜は2〜5mm程度の厚みの防食被膜を形成されるが、本実施例では厚膜となると長期の試験が必要となるために、その厚みを1.5mmとした。
得られた試験片をSAE(Society of Automotive Engineers)J 2334試験を改良した改良SAE J2334試験により評価した。
改良前のSAE J2334試験は、次の条件で行う加速試験である。
湿潤:50℃、100%RH、6時間、
塩分付着:0.5質量%NaCl、0.1質量%CaCl、0.075質量%NaHCO水溶液浸漬、0.25時間、
乾燥:60℃、50%RH、17.75時間
を1サイクル(合計24時間)としたものである。
これに対して、本発明の評価に用いた改良SAE J2334試験は、海洋飛沫暴露試験を模擬するためのものであって、上記塩分付着時の水溶液を5質量%NaCl、0.1質量%CaCl、0.075質量%NaHCO水溶液浸漬に変更した。この改良SAE J2334試験における被膜の剥離と腐食形態が海洋飛沫暴露試験に類似しており、また普通鋼(JIS SM材)を無塗装材(裸材)で20サイクル試験すると、約0.4mmの平均板厚の減少となり、非常に厳しい試験と言える。
上述の改良SAE J2334試験片のクロスカット試験の120サイクル終了後、ポイントマイクロメーターを用いて、キズ部の最大腐食深さと被膜の剥離面積を、試験後の剥離部の被膜を剥がすことによって、写真撮影したのち画像処理にて測定し、試験片の表面積で割ることにより、剥離面積率を計算により得た。試験結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、本発明例に係る高耐食鋼では、いずれも本発明で規定する化学組成を満足しているので、改良SAE J2334試験の結果、優れた耐食性ならびに耐剥離性に優れている。
これに対して、比較例の鋼No.23及び26の鋼材においてはSnの量が不足するために、改良SAE J2334試験で、最大腐食深さと剥離面積率が増大する傾向が明瞭に観察された。そして、比較例の鋼No.24及び25の鋼材においては、Snが規定範囲に添加されており、最大腐食深さと剥離面積率は良好なものの、Cu量が多すぎるため、Cu/Snが1を超えてしまっており、改良SAE J2334試験で腐食減量が増大する傾向が明瞭に観察された。なお、比較例の鋼No.24及び25の鋼材は、圧延後に微小の割れも観察された。
本発明に係る鋼材は、塩分量が多い環境下においても十分な耐食性を有している。また、防食被膜の耐剥離性に優れ、そして、被膜端部およびキズ部の耐食性と耐剥離性に優れるため、海洋鋼構造物に使用した場合、欠陥部等からの腐食を著しく抑制するためメンテナンスミニマム化に寄与する材料として広く適用することができる。
本実施の形態に係る鋼材の一例を示す斜視図である。 鋼矢板の海岸での使用の一例を示す斜視図(一部断面図)である。 鋼矢板の海岸での使用の一例を示す側面図(一部断面図)である。 鋼矢板壁を形成する手順を説明するための図である。 本発明に係る鋼材の一例であるハット型鋼矢板を示す斜視図である。 図5のハット型鋼矢板により形成される鋼矢板壁を示す横断面図である。 本発明に係る鋼材の一例であるH型鋼矢板を示す斜視図である。 本発明に係る鋼材の一例である鋼管杭を示す斜視図である。
符号の説明
10 鋼矢板
11 耐食部
12 炭素鋼部
13 ウェブ
14 フランジ
15 継手部
20 鋼矢板壁
30 鋼矢板
31 耐食部
32 炭素鋼部
33 ウェブ
34 フランジ
35a,35b 腕部
36a,36b 継手部
37 H型鋼
40 鋼矢板壁
50 岸壁
51 海底地盤
52 コンクリート構造物
60 海
61 海面
70 流電陽極
80 H型鋼矢板
81 ウェブ
82 フランジ
83 フランジ
83a 耐食部
83b 炭素鋼部
84a,84b 継手部
90 鋼管杭
91 耐食部
92 炭素鋼部

Claims (9)

  1. 耐食部および炭素鋼部が長手方向に接続された鋼材であって、前記耐食部が下記に規定する高耐食鋼からなることを特徴とする鋼材。
    質量%で、C:0.001〜0.15%、Si:2.5%以下、Mn:0.5%を超え2.5%以下、P:0.03%未満、S:0.005%以下、Cu:0.2%未満、Ni:0.2%未満、Cr:0.01〜3.0%、Al:0.003〜0.1%、N:0.001〜0.1%およびSn:0.03〜0.50%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、Cu/Sn比が1以下である高耐食鋼。
  2. 前記高耐食鋼は、さらに、質量%で、Ti:0.3%以下およびNb:0.1%以下よりなる群から選ばれた1種又は2種を含有することを特徴とする、請求項1に記載の鋼材。
  3. 前記高耐食鋼は、さらに、質量%で、Mo:1.0%以下、W:1.0%以下およびV:1.0%以下よりなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の鋼材。
  4. 前記高耐食鋼は、さらに、質量%で、Ca:0.1%以下およびMg:0.1%以下よりなる群から選ばれた1種または2種を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載の鋼材。
  5. 前記高耐食鋼は、さらに、質量%で、REMを0.02%以下含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれかに記載の鋼材。
  6. 前記耐食部の少なくとも一部に、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリオレフィン樹脂のうちの1種又は2種以上からなる防食被膜が形成されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれかに記載の鋼材。
  7. 前記耐食部は、少なくとも水面の変動範囲および飛沫帯に設けられることを特徴とする、請求項1から6までのいずれかに記載の鋼材。
  8. 請求項1から7までのいずれかに記載の鋼材からなることを特徴とする鋼矢板、鋼管矢板または鋼管杭。
  9. 請求項8に記載の鋼矢板または鋼管矢板により形成されることを特徴とする鋼矢板壁または鋼管矢板壁。
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