JP2013014816A - 角形鋼管用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

角形鋼管用鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鋼板から角形鋼管を製造した場合にも表面疵が発生せず、角部においては一定以上の靭性を有し、かつ、角部以外では降伏比が80%以下である高強度鋼板の提供。
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.10〜0.40%、Mn:1.20〜1.50%、Al:0.003〜0.06%、Ti:0.005〜0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ下記式で定義されるCeqが0.34以上を満たす鋼素材を900〜1200℃に加熱した後、圧延を開始し、Ar点以上で圧延終了後、Ar点以下からAr点−400℃以下まで水冷し、その後、500℃以下での焼戻しする角形鋼管用鋼板の製造方法およびそれにより得られる角形鋼管用鋼板。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
但し、式中の各元素記号は、溶接材料中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
【選択図】 なし

Description

本発明は、角形鋼管を製造するための高強度鋼板およびその製造方法に係り、主として建築構造物に使用される表層変形能に優れた角形鋼管用鋼板およびその製造方法に関する。
角形鋼管は、一般に鋼板を冷間加工により角部となる部分を90°に曲げて角部を形成し、鋼板端部を溶接することにより製造する。近年、鋼構造物の大型化が進み、より高強度の角形鋼管が求められるようになってきた。
高強度の角形鋼管、特に引張強度が530MPa以上の高強度鋼板を用いて角形鋼管を製造する場合、90°曲げを行うと角部に表面疵が発生するという問題が発生しやすい。表面疵が発生した場合、亀裂発生の起点となるため、手入れを実施して疵を除去する必要がある。しかし、手入れを実施するとコストが上昇するだけでなく、設計上求められる板厚を確保できず、スクラップとなる場合もある。
特に表面疵の発生は、板厚25mm以上の厚鋼板を用いて角形鋼管を製造する場合に起こりやすい。これは板厚が大きいと、鋼板製造の水冷時に鋼板表層が硬化し、伸びが低下するからと考えられる。
また、90°曲げに伴い角部では靭性が劣化する。冷間加工による靭性の低下は避けられないが、製管後の状態でも一定の靭性を確保する必要がある。一方、曲げ加工による歪を受けない箇所においては構造物の耐震性を担保するため、低い降伏比(降伏強度/引張強度)であることが求められる。
これらの問題に対し、例えば、特許文献1および特許文献2では、鋼管製造方法の改良を行い、冷間成形部(角部)に熱処理を行うことで角形鋼管を得ている。
特開平10−60579号公報 特開平10−60580号公報
特許文献1および特許文献2に記載の発明によれば、一定の特性を有する角形鋼管を製造することが可能である。しかしながら、鋼管成形後、熱処理を行うことはコストの上昇につながる。
また、角形鋼管は、通常、鋼板メーカーが製造した鋼板を鋼管メーカーが曲げおよび溶接を行って角形鋼管を形成することで製造される。下工程である鋼管の成形工程において発生する表面疵を、成形方法の改良のみで抑制することは極めて困難である。そのため、鋼管メーカーからは、簡便に一定の特性を有する角形鋼管を製造できる鋼板に対する要望が強い。
そこで、本発明者らは、鋼管製造の工程ではなく、鋼管製造の前段階(上工程)である鋼板製造の工程に着目し、課題解決のための検討を行った。
本発明が解決しようとする課題は、鋼板から角形鋼管を製造した場合にも表面疵が発生せず、角部においては一定以上の靭性を有し、かつ、角部以外では降伏比が80%以下である高強度鋼板を提供することである。
本発明者らは、上記の条件を満足する角形鋼管用鋼板について、種々の検討を行った結果、以下の(A)〜(D)の知見を得た。
(A)角部において一定以上の靱性を有する鋼管を得るためには、冷間加工(角部形成)に伴う角部の靱性劣化を考慮した鋼板(鋼管素材)の設計が求められる。さらに、建築構造物としての構造強度を得るためには、引張強度530MPa以上の高強度鋼板とする必要がある。
(B)引張強度530MPa以上の鋼板の強度を確保するためには、鋼の組成設計だけでは足りず圧延直後の水冷による焼入れが必須となる。しかし、特に板厚25mm以上の厚鋼板では、圧延直後の水冷によって表層は硬化し、塑性変形能が劣化する。板厚が大きいほどこの傾向は強くなり、その結果、角形加工の際に表面疵が多数発生する。
(C)そこで、鋼板の表層改質を検討し、具体的には、焼戻しによる鋼板の表層状態の改質を図った。ただし、高温での焼戻しは引張強度の低下を招くだけでなく、降伏強度が上昇するため、耐震性の確保から降伏比80%以下が必要とされる建築構造物に用いられる角形鋼管としての要求性能を満足しなくなる場合がある。そのため、焼戻しは低温で行うこととし、強度特性を満足させると共に、鋼板の表層状態を改質させ、冷間加工しても表面疵が発生しないよう焼戻し温度を調整した。
(D)所定の化学組成を有する鋼に適切な焼入れおよび焼戻し処理を施すことにより製造した鋼板は、表面における一様伸びが一定以上の値となり、その結果、角形鋼管に加工する際の表面疵の発生を抑制できることが判明した。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、下記の(1)〜(6)に示す角形鋼管用鋼板の製造方法および(7)に示す角形鋼管用鋼板を要旨とする。
(1)質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.10〜0.40%、Mn:1.20〜1.50%、Al:0.003〜0.06%、Ti:0.005〜0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ下記式で定義されるCeqが0.34以上を満たす鋼素材を900〜1200℃に加熱した後、圧延を開始し、Ar点以上で圧延終了後、Ar点以下からAr点−400℃以下まで水冷し、その後、500℃以下での焼戻しすることを特徴とする角形鋼管用鋼板の製造方法。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
但し、式中の各元素記号は、溶接材料中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
(2)質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.10〜0.40%、Mn:1.20〜1.50%、Al:0.003〜0.06%、Ti:0.005〜0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ下記式で定義されるCeqが0.34以上を満たす鋼素材を900〜1200℃に加熱した後、圧延を開始し、Ar点以上で圧延終了後、Ar点以下から水冷し、Ar点−400℃以上Ar点−200℃以下の温度域で水冷を終了し、その後、空冷することを特徴とする角形鋼管用鋼板の製造方法。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
但し、式中の各元素記号は、溶接材料中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
(3)鋼素材の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、さらにNb:0.05%以下を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の角形鋼管用鋼板の製造方法。
(4)鋼素材の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、さらにCu:0.40%以下、Ni:1.0%以下、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下およびV:0.050%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする上記(1)から(3)までのいずれかに記載の角形鋼管用鋼板の製造方法。
(5)鋼素材の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、さらにCa:0.0050%以下を含有することを特徴とする上記(1)から(4)までのいずれかに記載の角形鋼管用鋼板の製造方法。
(6)鋼素材の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、さらにSn:0.50%以下を含有することを特徴とする上記(1)から(5)までのいずれかに記載の角形鋼管用鋼板の製造方法。
(7)上記(1)から(6)までのいずれかに記載の化学組成を有する鋼板であって、表層の一様伸びが8%以上であることを特徴とする板厚25mm以上の引張強度が530MPa以上であることを特徴とする角形鋼管用鋼板。
本発明によれば、曲げ加工を行っても表面に疵が発生せずに、曲げ部分における靱性も良好であり、かつ、引張強度が高く、降伏比の低い鋼板を得ることが可能である。したがって、本発明の高強度鋼板は、建築構造物に使用される角形鋼管を簡便に製造するための鋼素材として最適である。
引張試験に用いる試験片の形状を模式的に示した図である。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.05〜0.20%
Cは、鋼材の強度を上昇させるのに極めて有効な元素である。強度を確保するためには、0.05%以上含有させる必要がある。一方、0.20%を超えると、硬化組織が形成され、成形時に表面疵が発生しやすくなり、靭性も劣化する。したがって、C含有量は0.05〜0.20%とした。
Si:0.10〜0.40%
Siは、Alとともに製鋼時の脱酸剤として有効な元素であり、鋼の強度上昇にも極めて有効である。しかし、その含有量が0.10%未満ではこれらの効果が得られない。一方、含有量が0.40%を超えると靭性が劣化する。したがって、Si含有量は0.10〜0.40%とした。
Mn:1.20〜1.50%
Mnは、焼き入れ性を向上させ、鋼の強度および靭性を確保する上で重要な元素である。しかし、その含有量が1.20%未満では靭性向上への効果が低い。一方、Mnを1.50%を超えて含有させると、これらの効果が飽和するばかりでなく、連続鋳造によるスラブの製造時に中心偏析の主要因となる。したがって、Mn含有量は1.20〜1.50%とした。
Al:0.003〜0.06%
Alは製鋼時の脱酸剤として有効な元素であり、0.003%以上含有させる必要がある。一方、0.06%を超えて含有させると靭性を劣化させる。したがって、Al含有量は0.003〜0.06%とした。
Ti:0.005〜0.050%
Tiは、Nと結合してTiNとしてスラブ中に微細に析出し、加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制するので、圧延組織の微細化に有効である。また、TiNが鋼中に存在すると、溶接時に熱影響部の粗大化を抑制する。このため、Tiは母材および溶接部の靭性を改善する上で必要な元素である。これらの効果はその含有量が0.005%未満では不十分であるが、0.050%を超えて含有させると溶接部の低温靭性を劣化させる。したがって、Ti含有量は0.005〜0.050%とした。
本発明の鋼素材は、上記のCからTiまでの元素を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有する。
ここで「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
本発明の鋼素材は、Feの一部に代えて、さらに以下に示す量のNb、Cu、Ni、Cr、Mo、V、CaおよびSnから選択される1種以上を含有させることができる。
Nb:0.05%以下
Nbは、熱間圧延時の未再結晶温度域を広げ制御圧延を容易にし、強度および靭性を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、0.05%を超えて含有させると溶接熱影響部の靭性を劣化させるので、Nbを含有させる場合の上限を0.05%とする。上記の効果は、Nbを0.005%以上含有させた場合に顕著となる。
Cu:0.40%以下
Cuは、母材の強度を高める作用を有するので、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、0.40%を超えて含有させると鋳片の表面性状を劣化させるので、Cuを含有させる場合の上限を0.40%とする。上記の効果は、Cuを0.05%以上含有させた場合に顕著となる。
Ni:1.0%以下
Niは、鋼中に固溶して靭性を高め、かつ焼き入れ性を向上させることにより強度を高める作用を有するので、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、1.0%を超えて含有させると焼き入れ性が過剰となり溶接熱影響部靭性が劣化するので、Niを含有させる場合の上限を1.0%とする。上記の効果は、Niを0.05%以上含有させた場合に顕著となる。
Cr.:0.50%以下
Crは、安価に焼き入れ性を高めることができ、強度を高める作用を有するので、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、0.50%を超えて含有させると溶接熱影響部靭性が劣化するので、Crを含有させる場合の上限を0.50%とするのが良い。上記の効果は、Crを0.03%以上含有させた場合に顕著となる。
Mo:0.50%以下
Moは、焼き入れ性を高め強度を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、0.50%を超えて含有させると溶接熱影響部靭性が劣化するので、Moを含有させる場合の上限を0.50%以下とするのが良い。上記の効果は、Moを0.03%以上含有させた場合に顕著となる。
V:0.050%以下
Vは、炭窒化物を析出することにより強度を向上させる作用を有するので、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、0.050%を超えて含有させると溶接熱影響部靭性が劣化するので、Vを含有させる場合の上限を0.05%とするのが良い。上記の効果は、Vを0.005%以上含有させた場合に顕著となる。
Ca:0.0050%以下
Caは、介在物の形状を調整して溶接部靭性を改善させる作用を有するので、必要に応じて含有させても良い。しかしながら、0.0050%を超えて含有させると効果が飽和するため、Caを含有させる場合の上限を0.0050%とするのが良い。上記の効果は、Caを0.0005%以上含有させた場合に顕著となる。
Sn:0.50%以下
Snは、Sn2+となって溶解し、酸性塩化物溶液中でのインヒビター作用により腐食を抑制する作用を有する。また、Fe3+を速やかに還元し、酸化剤としてのFe3+濃度を低減させることにより、Fe3+の腐食促進作用を抑制するので、高飛来塩分環境における耐候性を向上させる。また、Snには鋼のアノード溶解反応を抑制し耐食性を向上させる作用がある。そのため、必要に応じてSnを含有させても良い。しかしながら、0.50%を超えて含有させるとこれらの効果が飽和するため、Snを含有させる場合の上限を0.50%とするのが良い。Sn含有量の上限は、0.40%とするのがより望ましい。上記の効果は、Snを0.01%以上含有させた場合に顕著となる。Snは、0.10%以上含有させることがより望ましい。
Ceq:0.34以上
上記の化学組成を有する場合であっても、降伏強度が上昇することがあるため、本発明の鋼素材においては、下記式で表されるCeqを0.34以上となるように、化学組成を調整しなければならない。低い降伏比は、鋼の組織を軟質相としてのフェライトおよび硬質相としてのベイナイト・マルテンサイトを混在させ複相組織とすることで達成できる。Ceqを0.34以上とすることにより、複相組織が得られやすくなり、降伏比を抑え、かつ塑性変形能を向上させることができる。なお、下記式は、JIS G3136に規定されている「炭素当量」の式と同様である。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
但し、式中の各元素記号は、溶接材料中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
2.製造方法
上記の化学組成を有する鋼素材を用いて角形鋼管用鋼板を製造しても、本発明が目的とする性能を満足しない場合がある。そこで、鋼板から角形鋼管を製造した場合にも表面疵が発生せず、角部においては一定以上の靭性を有し、かつ、角部以外では降伏比が80%以下である高強度鋼板の製造方法について以下に説明する。
(i)加熱工程
加熱工程では、角形鋼管用鋼板の圧延素材として上述の化学組成を有するスラブを900〜1200℃の温度域に加熱する。スラブを900℃以上に加熱するのは、オーステナイト変態させて、均一な組織とするためである。一方、スラブ加熱温度を1200℃以下とするのは、結晶粒の粗大化を防止し、靭性を確保するためである。
なお、スラブの中央部まで温度を均一化するために、上記温度域でのスラブの加熱時間は、3時間以上とすることが好ましい。ただし、コスト削減のために、加熱時間の上限は12時間とすることが好ましい。
(ii)圧延工程
スラブ加熱後、スラブの圧延を開始し所定の寸法とする。このとき、鋼板表面温度がAr点以下で圧延を行うと、生成したフェライトを加工することとなり、降伏応力が上昇し、その結果、降伏比が上昇してしまうため、Ar点以上で圧延終了させる必要がある。なお、Ar点は下記計算式により求める。
Ar点=910−273C+25Si−74Mn−56Ni−16Cr−9Mo−5Cu−1620Nb
但し、式中の各元素記号は、溶接材料中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
(iii)水冷工程
圧延工程に続く水冷工程では、鋼板表面温度がAr点以下からAr点−400℃以下まで水冷を行う。前述の圧延工程では、Ar点以上で圧延を終了させるため、圧延後は鋼板表面温度がAr点以下の温度となるまで空冷して、水冷工程を開始することになる。
上記のような水冷を行うことによって、鋼の組織を軟質相であるフェライトおよび硬質相であるベイナイト・マルテンサイトの複相組織とし、低い降伏比を得ると同時に表層の塑性変形能を確保することができる。
(iv)焼戻工程
水冷工程後は、さらに、表層の塑性変形能を改善し、かつ一定以上の靭性を確保するため、焼戻しを行う。このとき、高温での焼戻しは降伏強度の上昇を招くため好ましくない。よって、鋼板表面温度が500℃以下の温度で焼戻しを行う。
また、いわゆるオートテンパーにより焼戻しと同じ機能を持たせてもよい。この場合、前述の水冷工程において、Ar点以下から水冷し、Ar点−400℃からAr点−200℃の温度域で水冷を停止し、その後空冷すれば、焼戻しと同じ効果が得られ、表層の塑性変形能を確保でき、同時に低降伏比と靭性も確保できる。
3.鋼板の機械的特性
以上のような製造方法により製造した鋼板は、板厚25mm以上という厚みの鋼板においても、表層の一様伸びが8%以上となる。表層の一様伸びが8%以上となれば、その表層の変形能が優れ、角形鋼管製造時にも表面疵は発生しない。
また、同鋼板は軟質相と硬質相からなる複相組織となるため、引張強度530MPa以上、かつ、降伏比80%以下とすることができる。さらに、角形鋼管に加工した場合には、その角部においては靭性低下が起こるものの、この場合でも0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが70J以上を維持できる。よって、本発明に係る鋼板は、角形鋼管用鋼板として好適に用いることができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する鋼を真空溶解炉にて溶製し、得られた180kgのスラブを小型圧延機にて圧延し、鋼素材とした。
Figure 2013014816
表2に製造条件を示す。各製造条件の中で、Ar点は上述の式の計算値、加熱温度は加熱炉の設定温度、圧延終了温度、水冷開始温度、水冷停止温度および焼戻温度は鋼板の表面温度を測定した値である。
Figure 2013014816
表3に鋼板の機械的特性(引張強度、降伏比、一様伸び)、製管後の目視による鋼の表面観察結果、シャルピー吸収エネルギーを示す。
Figure 2013014816
鋼板の機械的特性は、鋼板から図1および表4に示す形状の試験片を採取して引張試験を実施し、評価した。なお、一様伸びの測定では表層の特性を正しく評価するため、厚さを6mmの試験片を切り出して試験を行った。ここで、引張強度は530MPa以上、降伏比は80%以下、一様伸びは8%以上を基準として、好適な鋼板か判定を行った。
Figure 2013014816
また、鋼板を加工して角形鋼管とし、各鋼管につき目視により疵の有無を確認するとともに、角部の外表面下より管軸方向に2mmVノッチのJIS4号シャルピー試験片(10mm×10mm×55mm)を採取し、0℃にてシャルピー試験を実施した。ここで、シャルピー試験では70J以上の吸収エネルギーを有するものを十分な靭性を有する鋼板として判断した。
表3から、本発明で規定する条件で製造した鋼板はいずれも上述の機械的特性の基準を満足し、かつ角形鋼管に加工しても疵の発生もなく、角部のシャルピー吸収エネルギーも70J以上と高い値を示した。
これに対して、本発明で規定する組成条件を満足しない鋼板(Mark17−25)および、組成は満足するが製法条件を満足しない鋼板(Mark3−7)については、引張強度、降伏比、一様伸び、角形鋼管加工後の角部のシャルピー吸収エネルギーのいずれかが本発明の基準を満足しない、または製管後に表面疵が残り、角形鋼管加工用の鋼板としては適さないものであった。
本発明に係る高強度鋼板は、曲げ加工を行っても表面に疵が発生せずに、曲げ部分における靱性も良好であり、かつ、高い引張強度および低い降伏比を有するため、建築構造物に使用される角形鋼管を簡便に製造するための鋼素材として最適である。

Claims (7)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.10〜0.40%、Mn:1.20〜1.50%、Al:0.003〜0.06%、Ti:0.005〜0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ下記式で定義されるCeqが0.34以上を満たす鋼素材を900〜1200℃に加熱した後、圧延を開始し、Ar点以上で圧延終了後、Ar点以下からAr点−400℃以下まで水冷し、その後、500℃以下での焼戻しすることを特徴とする角形鋼管用鋼板の製造方法。
    Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
    但し、式中の各元素記号は、溶接材料中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
  2. 質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.10〜0.40%、Mn:1.20〜1.50%、Al:0.003〜0.06%、Ti:0.005〜0.050%を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ下記式で定義されるCeqが0.34以上を満たす鋼素材を900〜1200℃に加熱した後、圧延を開始し、Ar点以上で圧延終了後、Ar点以下から水冷し、Ar点−400℃以上Ar点−200℃以下の温度域で水冷を終了し、その後、空冷することを特徴とする角形鋼管用鋼板の製造方法。
    Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
    但し、式中の各元素記号は、溶接材料中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
  3. 鋼素材の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、さらにNb:0.05%以下を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の角形鋼管用鋼板の製造方法。
  4. 鋼素材の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、さらにCu:0.40%以下、Ni:1.0%以下、Cr:0.50%以下、Mo:0.50%以下およびV:0.050%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の角形鋼管用鋼板の製造方法。
  5. 鋼素材の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、さらにCa:0.0050%以下を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の角形鋼管用鋼板の製造方法。
  6. 鋼素材の化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、さらにSn:0.50%以下を含有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の角形鋼管用鋼板の製造方法。
  7. 請求項1から請求項6までのいずれかに記載の化学組成を有する鋼板であって、表層の一様伸びが8%以上であることを特徴とする板厚25mm以上の引張強度が530MPa以上であることを特徴とする角形鋼管用鋼板。
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