JP5092358B2 - 高強度高靱性鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ラインパイプや海洋構造物、造船、建築、土木、建設機械、等の分野で使用される、高強度高靱性鋼板とその製造方法に関するものであり、特に、冷間成形時の成形性に優れた材質ばらつきの小さな高強度高靱性鋼板とその製造方法に関する。
近年、パイプラインやその他の鋼構造物においては、施工コストの削減のため高強度の鋼材が要求されているだけでなく、寒冷地の開発が進んでいることから、母材および溶接部の靭性が優れた鋼材が必要とされている。さらに、これらの要求に加え、鋼管の円周溶接の作業効率を高めたり、また高精度の構造設計を行ったりするためには、寸法精度の高い鋼管や鋼部材が要求されている。UOE鋼管等冷間成形によって製造される鋼管や、切断や冷間成形など様々な加工を受けて製造される鋼部材の寸法精度は、それに用いる鋼板の材質ばらつきや残留応力の影響を強く受けるため、強度や延性などの材質ばらつきや残留応力の小さな鋼板を用いることが、寸法精度を向上するためにきわめて有効である。
材質ばらつきの低減に対しては、従来、鋼板製造条件の厳格管理等、生産管理面での対応がなされており、大量製造した場合の材質ばらつき、特に強度のばらつき低減が計られているが、上述の寸法精度向上のためには、個々の鋼板の板内においても材質ばらつきを低減することが必要である。
一般に、引張強度が570MPa以上の高強度鋼板は加速冷却によって製造されており、鋼板の長手方向端部が過冷却されやすく、長手方向端部の強度が中央部に比較して高くなりやすい。また、圧延前の加熱炉でスラブの長手方向端部が過加熱されたことに起因して、長手方向端部の強度が中央部に比較して高くなる場合もある。
これらのバラツキを低減するための対策としては、特許文献1には、加速冷却を2段階に分けて加速冷却を行い、前段と後段の冷却の間に空冷区間を設けることで、温度ムラを低減する方法が開示されている。この方法は、材質ばらつき低減に対して一定の効果があるものの、後段の冷却では依然として板長方向の温度ムラを生じるため、材質ばらつきは十分に解消することはできない。
そのため、加速冷却によって製造した鋼板の強度ばらつき低減、特に鋼板の長手方向端部で強度が高すぎた部分を軟化させる方法として、従来から、加速冷却後に焼戻しを行う方法がとられていた。この焼戻し処理は、鋼板をガス燃焼炉に装入してバッチ処理するか、トンネル炉に通板させることにより実施されている。この方法では、一般に焼戻し前の強度が高い部分の方が焼戻しによる軟化量が大きいので、焼戻し後の強度の差が縮まるが、焼戻す必要のない部分の強度も低下するという問題があり、さらに、焼戻し処理に時間を要するため、炭化物が粗大化し靱性の劣化、特にDWTT性能の劣化を生じていた。
靱性を劣化させない焼戻し方法としては、特許文献2に加速冷却装置と同一の製造ライン上に設置された誘導加熱装置を用いて急速加熱焼戻しを行う方法が開示されている。この方法によれば、焼戻し時に生成する炭化物が微細になるため、高靱性の鋼板を得ることが可能であるが、鋼板を均一に加熱するために、板内の強度ばらつきの低減に関しては効果がない。また、加速冷却過程での冷却停止温度を200℃程度以下の温度として、誘導加熱前のミクロ組織をマルテンサイトとすることで、急速加熱焼戻しによる炭化物微細化が図られるが、冷却停止温度が高くベイナイト主体の組織となる場合は、焼戻しによって炭化物が粗大化し、靱性が劣化する場合がある。
また上記の問題を解決するため、特許文献3には、加速冷却後の焼戻しを高周波誘導加熱で行う際に、鋼板の長手方向に加熱方法を変化させる焼戻し方法が提案されている。この方法により、鋼板の長手方向端部などの強度が高すぎる部分のみの強度を低減できるため、強度ばらつきの大幅な低減が可能となる。しかしながら、その効果を十分に得るためには加速冷却後の鋼板板長方向の強度分布を正確に予測して、強度が高い部分のみを適切な温度に加熱する必要があり、強度ばらつきの小さな鋼板を安定的に得ることは困難であった。
誘導加熱装置を適用した鋼板の製造方法として、特許文献4や特許文献5には、加速冷却後に鋼板表面を内部より高い温度に加熱する耐サワーラインパイプ用鋼板の製造方法が開示されている。これらの方法によれば加速冷却によって硬化した表層部の硬度が低減でき、鋼板の板厚方向の硬さ分布が平準化されるが、耐サワー性能に優れるベイナイト主体の組織とするために、比較的高い温度域から加速冷却を開始する必要があり、鋼板の長手方向の強度ばらつきは改善されないままであった。
特開昭62−47426号公報 特開平4−358022号公報 特開2003−27136号公報 特開2002−327212号公報 特開2003−13138号公報
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、引張強度が570MPa以上の強度と優れた母材及びHAZ靱性を有し、さらに鋼板内の強度のバラツキを低減することで優れた成形性を有する高強度高靱性鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
発明者等は、加速冷却によって生じる鋼板内の材質ばらつきの要因を、そのミクロ組織変化の観点から詳細に調査した結果、以下の知見を得るに至った。加速冷却時の鋼板長手方向端部の強度上昇は、上述の通り過冷却、すなわち冷却終了温度の低下によるが、このとき、鋼板内部より鋼板表層部の温度低下が大きくなるため、鋼板表層部が島状マルテンサイト(MA)を含んだ組織となり、表層部の硬度が大幅に上昇する。
図1に0.07%C−1.7%Mnを含有する鋼板の加速冷却後の板厚方向硬度分布を鋼板長手方向の端部と中央部で測定した例を示す。長手方向端部は中央部に比べ表層部の硬度が高くなっており、そのため、鋼板の全厚強度も上昇する結果となっている。
図2は表層部を2段エッチングにより腐食し、SEMによって観察した結果であるが、表層部は島状マルテンサイトを含んだ組織となっている。一方、鋼板の板厚中心部は島状マルテンサイトがみられるもののその体積分率は小さく、鋼板内のミクロ組織の不均一性が、鋼板材質ばらつきの原因の一つであるといえる。
上述のミクロ組織の不均一性、具体的には鋼板表層部の島状マルテンサイトの量を抑制することで、材質ばらつきの小さな鋼板を得ることが可能であるが、そのためには、加速冷却によって表層部に生成した島状マルテンサイトを焼戻すことが有効である。しかし、一般的な燃焼炉による焼戻しや、特許文献2に開示された誘導加熱による焼戻しでは、鋼板の板厚方向中心部まで加熱されるため、前述のように強度の高い鋼板長手方向端部以外の強度も低下するため、鋼板の強度ばらつきは十分に低減されない。
この問題を解決するためには、加速冷却後の鋼板を焼戻す際に、鋼板表層部の焼戻し温度を、鋼板の板厚方向中央部に比べ高くすればよく、加熱温度を鋼板表層部と板厚方向中央部の最適な範囲にコントロールすることで、鋼板の板厚方向でミクロ組織変化が小さな鋼板を得ることが可能となり、これによって鋼板内の材質ばらつきの低減が可能となる。上記のように鋼板表層部と内部とで異なる温度の加熱を行うためには、高周波誘導加熱を用いることが効果的である。
図3は図1と同様の成分系で、ほぼ同様の圧延−加速冷却を行った後、誘導加熱により鋼板表面の最高加熱温度を550℃、鋼板平均加熱温度を440℃に加熱を行った鋼板の板厚方向硬度分布を示す。また、このときの鋼板表層部のミクロ組織を図4に示す。図2の加速冷却ままの鋼板表層部で見られるような島状マルテンサイト組織は見られず、鋼板表層部と板厚方向中央部で均一なミクロ組織が得られている。そして、図3に示すように、鋼板の長手方向端部と長手方向中央部のいずれも、表層部と板厚方向中央部との硬度の差が小さくなっている。また、鋼板の板厚方向中央部の加熱温度を制限することで、鋼板全体の強度低下を抑制することができ、板長手方向の強度ばらつき低減か可能となる。
また、鋼板の板長手方向の強度ばらつきだけでなく、板厚方向の硬度差が小さいため、冷間成形時の曲げ加工性がよく、さらには加速冷却で導入される内部歪に起因する残留応力が、その後の誘導加熱によって低減されるため、冷間成形性がよく、成形後の寸法精度が大幅に改善されるものである。
本発明は、上記の知見に基づきなされたもので、
第一の発明は、質量%で、C:0.06〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜2.5%、Al:0.08%以下、Nb:0.005〜0.025%、Ti:0.005〜0.025%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を、1000〜1200℃に加熱し、熱間圧延を行った後、冷却開始温度が鋼板表面温度で(Ar3+10℃)以下、冷却停止温度が鋼板平均温度で300〜550℃となる加速冷却を行い、次いで誘導加熱により鋼板表面温度で500〜700℃、鋼板平均温度で580℃未満に加熱することを特徴とする高強度高靱性鋼板の製造方法である。
第二の発明は、さらに質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下、Ca:0.001〜0.003%の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする第一の発明に記載の高強度高靱性鋼板の製造方法である。
第三の発明は、第一の発明または第二の発明に記載の方法で製造された、引張強度570MPa以上の鋼板であって、鋼板表層部の金属組織が、島状マルテンサイトの体積分率は3%以下、残部はベイナイトまたはベイナイトとフェライトの混合組織であることを特徴とする高強度高靱性鋼板である。
本発明によれば、引張強度570MPa以上の高強度と高い溶接部靭性を有し、かつ鋼板長手方向の強度バラツキ大幅に低減でき、さらに板厚方向の硬さのバラツキも低減できるため冷間成形性の優れた鋼板が得られる
以下に本発明の各構成要件の限定理由について説明する。
1.化学成分について
はじめに本発明の高強度高靱性鋼板が含有する化学成分の限定理由を説明する。なお、成分%は全て質量%を意味する。
C:0.06〜0.12%
Cは、加速冷却によって製造される鋼板の強度を高めるために最も有効な元素である。しかし、0.06%未満では十分な強度を確保できず、0.12%を超えると靱性や溶接性を劣化させる。従って、C量は0.06〜0.12%の範囲とする。
Si:0.5%以下
Siは脱酸のために添加するが、0.5%を越えると靭性や溶接性を劣化させる。従ってSi量は0.5%以下の範囲とする。
Mn:0.5〜2.5%
Mnは鋼の強度および靭性の向上のため添加するが、0.5%未満ではその効果が十分ではなく、2.5%を越えると溶接性が劣化する。従って、Mn量は0.5〜2.5%の範囲とする。
Al:0.08%以下
Alは脱酸剤として添加されるが、0.08%を超えると清浄度の低下により延性を劣化させる。従って、Al量は0.08%以下とする。
Nb:0.005〜0.025%
Nbは、圧延時の粒成長を抑制し、微細粒化により靭性を向上させる。しかし、Nb量が0.005%未満ではその効果がなく、0.025%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化する。従って、Nb量は0.005〜0.025%の範囲とする。
Ti:0.005〜0.025%
Tiは、TiNを形成してスラブ加熱時の粒成長を抑制するだけでなく、溶接熱影響部の粒成長を抑制し、母材及び溶接熱影響部の微細粒化により靭性を向上させる。しかし、Ti量が0.005%未満ではその効果がなく、0.025%を越えると靭性を劣化させる。従って、Ti量は0.005〜0.025%の範囲とする。
本発明では上記の化学成分の他に、以下の元素を選択元素として添加することができる。
Cu:0.5%以下
Cuは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、0.5%を超えて添加すると溶接性が劣化する。従って、Cuを添加する場合は0.5%以下とする。
Ni:1%以下
Niは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、1%を超えて添加すると溶接性が劣化する。従って、Niを添加する場合は1.0%以下とする。
Cr:0.5%以下
Crは、焼き入れ性を高めることで強度の上昇に有効な元素であるが、0.5%を超えて添加すると溶接性を劣化させる。従って、Crを添加する場合は0.5%以下とする。
Mo:0.5%以下
Moは、靭性の改善と強度の上昇に有効な元素であるが、0.5%を超えて添加すると溶接性が劣化する。従って、Moを添加する場合は0.5%以下とする。
V:0.1%以下
Vは靭性を劣化させずに強度を上昇させる元素であるが、0.1%を超えて添加すると溶接性を著しく損なう。従って、Vを添加する場合は、0.1%以下とする。
Ca:0.001〜0.005%
Caは硫化物系介在物の形態を制御し、延性を改善するために有効な元素であるが、0.001%未満ではその効果がなく、0.005%を超えて添加しても効果が飽和し、むしろ清浄度の低下により靱性を劣化させる。従って、Ca量は0.001〜0.005%の範囲とする。
不純物元素として含まれるP,Sは特に規定されないが、より高い靱性を得るためには以下の範囲とすることが望ましい。
P:0.02%以下
Pは不可避的不純物として含まれるが、Pの含有量が増えると靭性及び溶接性を劣化させるため、P量の上限は0.02%とする。
S:0.003%以下
Sも不可避的不純物として含まれるが、Sの含有量が増えると靱性及び延性を劣化させるため、S量の上限は0.003%とする。
なお、本発明の鋼の残部は実質的にFeであり、上記以外の元素及び不可避不純物については、本発明の効果を損なわない限り含有することができる。
2.製造条件について
本発明は、上述した化学成分を含有する鋼スラブを、加熱し熱間圧延を行った後、加速冷却を施し、引き続いて誘導加熱による焼戻しを行う製造方法である。以下に、鋼板の製造条件の限定理由について説明する。
スラブ加熱温度:1000〜1200℃
スラブ加熱温度は、1000℃未満では十分な強度が得られず、1200℃を越えると、靱性やDWTT特性が劣化する。従って、スラブ加熱温度は1000〜1200℃の範囲とする。
熱間圧延工程において、高い母材靱性を得るには圧延終了温度は低いほどよいが、その反面圧延能率が低下するため、圧延終了温度は必要な母材靱性と圧延能率を鑑みて任意に設定できる。また,高い母材靱性を得るためには未再結晶温度域での圧下率を60%以上とすることが望ましい。
冷却開始時の鋼板表面温度:(Ar3+10℃)以下
熱間圧延後に加速冷却を行うが、冷却開始時の鋼板表面温度が(Ar3+10℃)を超えると、表層部の硬度が上昇し成形性が劣化するだけでなく、板長手方向の強度バラツキが大きくなりやすい。よって、冷却開始時の鋼板表面温度は(Ar3+10℃)以下とする。
ここで、Ar3温度は鋼の成分から、下記式(1)で与えられる。
Ar3(℃)=910-310C(%)-80Mn(%)-20Cu(%)-15Cr(%)-55Ni(%)-80Mo(%)・・・・・(1)
なお、冷却開始温度の下限は特に規定しないが、加速冷却の開始温度が低くなりすぎると、フェライトの面積率が高くなり強度低下をまねくため、冷却開始温度は600℃以上とすることが望ましい。
冷却停止時の鋼板平均温度:300〜550℃
加速冷却は,ベイナイト変態によって高強度を得るために重要なプロセスである。しかし、冷却停止時の鋼板平均温度が550℃を超えると、ベイナイト変態が不十分であり、十分な強度が得られない。また,冷却停止時の鋼板平均温度が300℃未満では,鋼板表層部の硬度が高くなりすぎるだけでなく、鋼板に歪みを生じやすくなり成形性が劣化する。よって、冷却停止時の鋼板平均温度は300〜550℃の範囲とする。
本発明は加速冷却に引き続き、誘導加熱による焼戻しを行う。ここで、誘導加熱装置を用いるのは、急速な加熱が可能で、さらに本発明の重要な要件である鋼板の加熱温度を、鋼板表層部と板厚中央部とで変化させることが可能であるためである。
誘導加熱装置により鋼板を加熱した場合の、鋼板表面温度と鋼板中心温度の時間による変化の様子を、図5に模式図で示す。誘導加熱は鋼材の表層部が誘導電流により発熱し、熱伝導によって鋼板内部の温度が上昇する。そのため、誘導加熱中は鋼板中心部に比べ鋼板表層部が大きく温度上昇するが、誘導加熱が終了すると熱伝導によって表層部の温度が急激に低下し、鋼板中心部の温度は上昇してくる。そして、誘導加熱を終了し、数秒で鋼板表面と鋼板中心の温度がほぼ等しくなる。
本発明においては,誘導加熱時の鋼板表面温度は、誘導加熱終了直後の鋼板表面温度の実測値とする。また、鋼板平均加熱温度は誘導加熱終了後で、鋼板中心温度と鋼板表面温度がほぼ等しくなったときの、鋼板表面温度の実測値とする。
なお、本願特許は、誘導加熱により鋼板表層部を鋼板中心部より高い温度に加熱することが特徴であるが、鋼板の板厚が薄くなると、表層部と中心部の温度差が小さくなるため、期待される効果が得られない。よって、鋼板の板厚は12mm以上とすることが望ましい。
以下に、誘導加熱による加熱条件の限定理由を説明する。
鋼板表面温度:500〜700℃
鋼板表層部の加熱によって、加速冷却によって生成した島状マルテンサイトが分解され、表層部の硬度が低減される。しかし、表面温度が500℃未満では島状マルテンサイトの分解が十分でないため、硬度低下が不十分であり、また、700℃を超えると、鋼板中央部の加熱温度も上昇するため大きな強度低下をまねく。よって、誘導加熱での鋼板表面温度は500〜700℃の範囲とする。
鋼板平均加熱温度:580℃未満
誘導加熱によって鋼板中央部が加熱されると、焼戻しによる強度低下を招くため、鋼板中央部の加熱温度は低いほどよい。しかし、580℃未満の温度なら大きな強度低下を生じないため、鋼板平均加熱温度は580℃未満とする。
3.金属組織について
本発明では加速冷却後の加熱処理によって鋼板表面部の硬度が低下し,板厚方向の硬度分布が平滑化されるが,鋼板表層部の金属組織は以下のように規定する。
表層部の島状マルテンサイトの体積分率:3%以下
島状マルテンサイト(MA)は加速冷却によって生成する組織であり、島状マルテンサイトが生成することで硬度が大きく上昇する。しかし、体積分率で3%未満なら鋼板中央部との硬度差が十分小さくなるので、島状マルテンサイトの体積分率の上限は3%とする。
表1に示す化学成分の鋼(鋼種A〜K)を連続鋳造法によりスラブとし、これを用いて板厚20mm,または30mmの厚鋼板(No.1〜22)を製造した。
加熱したスラブを熱間圧延により圧延した。熱間圧延後の鋼板の長さは,板厚20mmの場合は38m,板厚30mmの場合は25mとした。熱間圧延後直ちに水冷型の加速冷却設備を用いて冷却を行い、加速冷却設備と同一ライン上に設置した誘導加熱炉を用いて再加熱を行った。また,一部の鋼板は比較のため再加熱を行わなかった。各鋼板(No.1〜22)の製造条件を表2に示す。
以上のようにして製造した鋼板の引張特性は、圧延垂直方向の全厚試験片を引張試験片として引張試験を行い、引張強度を測定した。引張強度570MPa以上を本発明に必要な強度とした。ここで,鋼板内の強度のバラツキを確認するため,鋼板の長手方向端部及び長手方向中央部から引張試験片を採取し、その差を強度バラツキとした。
さらに鋼板長手方向中央部について、鋼板の金属組織の観察及び硬さを測定した。鋼板表層部の組織は、ナイタールエッチング後、電解エッチングを行い(2段エッチング)島状マルテンサイト(MA)の面積分率を測定した。硬さ試験は荷重10kgのビッカース硬度計を用いて、鋼板表層部(表面下1mm)及び板厚中央部の硬さを測定した。そして、その差を硬さのバラツキとした。ここで、引張強度のバラツキが20MPa以下、及び硬さのバラツキがHV40以下のものを本発明例とした。
溶接熱影響部(HAZ)靭性については、再現熱サイクル装置によって入熱40kJ/cmに相当する熱履歴を加えた試験片を用いて種々の温度でシャルピー試験を行った。そして、脆性破面率50%となる温度を破面遷移温度(vTrs)として求めた。そして、vTrsが0℃以下を本発明の範囲とした。
表2において、本発明例であるNo.1〜10はいずれも、化学成分および製造方法及びミクロ組織が本発明の範囲内であり、引張強度570MPa以上の高強度でかつ鋼板内の強度バラツキが20MPa以下と小さい。さらに,板厚方向の硬さのバラツキも小さいため冷間成形時の曲げ加工性がきわめて良好といえる。そして,溶接熱影響部靭性も良好であった。
一方,No.11〜19は、化学成分は本発明の範囲内であるので溶接部靭性に優れているが、製造方法が本発明の範囲外であるため強度が不足するか、または、表層部の島状マルテンサイト(MA)量が本発明の範囲を超えるため、強度や硬さのバラツキが大きい。No.20〜23は化学成分が本発明の範囲外であるので、十分な強度が得られないか、溶接熱影響部靭性が劣っていた。
本発明によれば、引張強度570MPa以上の高強度と高い溶接部靭性を有し、かつ冷間成形性の優れた鋼板が得られるので、強度靱性と高い材質均質性と冷間成型後の寸法精度が必要とされるラインパイプや鋼構造物へ適用することができる。
加速冷却後の板厚方向硬度分布を説明する図である。 加速冷却後の鋼板表層部のSEM観察写真である。 誘導加熱後の板厚方向硬度分布を説明する図である。 誘導加熱後の鋼板表層部のSEM観察写真である。 誘導加熱時の鋼板表面と鋼板中心部の温度履歴を説明する模式図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.06〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜2.5%、Al:0.08%以下、Nb:0.005〜0.025%、Ti:0.005〜0.025%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼を、1000〜1200℃に加熱し、熱間圧延を行った後、冷却開始温度が鋼板表面温度で(Ar+10℃)以下、冷却停止温度が鋼板平均温度で300〜550℃となる加速冷却を行い、次いで誘導加熱により鋼板表面温度で500〜612℃、鋼板平均温度で580℃未満に加熱することを特徴とする高強度高靱性鋼板の製造方法。
  2. さらに質量%で、Cu:0.5%以下、Ni:1%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、V:0.1%以下、Ca:0.001〜0.003%の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度高靱性鋼板の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の方法で製造された、引張強度570MPa以上の鋼板であって、鋼板表層部の金属組織が、島状マルテンサイトの体積分率は3%以下、残部はベイナイトまたはベイナイトとフェライトの混合組織であることを特徴とする高強度高靱性鋼板。
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