JP2013064144A - 粘着フィルム及びfpc用保護フィルム - Google Patents

粘着フィルム及びfpc用保護フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】被着体に貼り付け、被着体から剥離する際に、被着体に微量成分の移行を生じさせず、剥離面に対し補強板等の他の部材を接着したときの接着強度低下による浮き・剥れがない粘着フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】アルキル(メタ)アクリレートとカルボキシル基を有するビニルモノマーを共重合したアクリル系共重合体をエポキシ系架橋剤で架橋してなる粘着剤をフィルム基材面に塗布して形成した粘着剤層を、貼り合せた後、剥離したポリイミドシート面のぬれ張力評価法によるぬれ張力が40dyne/cm以上である粘着フィルムを用いることにより、剥離面に接着した補強板等の浮き・剥れが生じることがない。
【選択図】なし

Description

本発明は、各種の被着体に接着可能な再剥離性に優れる粘着剤および粘着フィルムに関する。より詳しくは、電子・電気機器等に使用されているフレキシブルプリント配線基板(以下、適宜、「FPC」と称する)製造用等として適用できる粘着剤層を設けた保護フィルムに関し、さらに具体的には、剥離したFPC面への粘着剤由来の微量成分の移行を抑え、補強板などの他の部材を剥離面に接着しても、補強板等の浮き・剥れ等が生じない保護フィルムに関する。
従来から、各種の物品に接着し剥離される、いわゆる再剥離性の粘着フィルムとして、所要の部分を残して不要の部分を覆うマスキングフィルム、外的要因から物品を保護する保護フィルム、物品を担持して搬送するキャリアーフィルムなどが知られている。具体的には、例えば、FPCは、粘着剤層を介して保護フィルム上に固定された状態で、エッチング、穴あけ、打ち抜き等の加工が施されて製造される。近年、この製造工程終了後に保護フィルムを剥離したポリイミド面に、例えば、ポリイミドフィルム製の補強板を接着してFPCを補強するケースが増えてきている。ところが、この場合、FPCに対する補強板の接着強度が、保護フィルムを貼り合わせたことにより低下し、その結果、後工程で補強板の浮き・剥れ等の問題が生じる場合があった。
補強板の接着強度が低下する原因の一つは、剥離面に移行した粘着剤(以下、この成分を「糊残り」ともいう。)によるもので、近年、その接着強度を高く維持する要求が高まっており、この課題を解決する粘着剤の開発が強く望まれていた。
これらの問題を解決するため、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体組成物と、イソシアネート系硬化剤及びメラミン系硬化剤を含有する粘着剤は、ポリイミドフィルムの剥離面の糊残りが100倍の顕微鏡観察により発見されなかったことが特許文献1に記載されている。しかし、この粘着剤を用いても剥離面に対する補強板の浮き・剥れが生じることがある。
また、アクリル系粘着剤用重合体と、熱膨張性微小球、粘着付与剤及びエポキシ系架橋剤を含む粘着層は、SUS304に貼り付けた後、剥離した表面の糊残りが、目視で観察されなかったことが特許文献2に記載されている。しかし、実際にこの粘着層を用いた保護フィルムをポリイミドフィルムに貼り付けた後、保護フィルムを剥離した剥離面に補強板を接着すると、補強板に対する接着力が低下しており、補強板の浮き・剥れが生じることがある。
特開2005−75884号公報 特開2003−160765号公報
従来、保護フィルムを剥離した後のポリイミドフィルムに粘着剤そのものが移行する糊残りは認識されていた。そして、粘着剤の糊残りの分析は、目視、光学顕微鏡で確認したり、近年XPS等を用いる方法で行われている。しかし、これらの方法では、例えば、粘着剤のベースとなる重合体の一部が分解されて生成する低分子量成分など極めて僅かな粘着剤由来の成分(以下、この成分を「微量成分」ともいう。)を充分に確認しきれず、補強板の接着に問題を生じる可能性のある微量成分の有無の判定をすることができなかった。その結果、剥離面に対する補強板の接着強度を充分に維持できる粘着剤を的確に評価することができず、その様な粘着剤を開発することが難しかった。
本発明は、被着体に貼り付け、被着体から剥離する際に、被着体に微量成分の移行を生じさせず、剥離面に対し補強板を接着したときの接着強度の低下による浮き・剥れがない粘着フィルムを提供することを目的とする。
被着体に粘着剤由来の微量成分の移行があると、その被着体の表面のぬれ張力は低下する。そして、粘着剤による接着において、粘着剤による被着体のぬれ表面積を大きくして高い接着力を得るためには被着体のぬれ張力より低い表面張力を有する粘着剤が必要となる。つまり、被着体のぬれ張力は、粘着剤の接着力と関係づけられる。この様な知見に基づき、本発明の発明者は、被着体の粘着剤層が剥離した面をTOF−SIMS法により粘着剤由来の微量成分の存在の有無を分析し、剥離面のぬれ張力との相関関係を検討した結果、剥離面のぬれ張力が特定値以上の粘着剤であればTOF−SIMS分析において粘着剤由来の微量成分が検出されない結果に対応すること、粘着剤層を剥離した面に対し補強板等の他の部材を接着したとき、その接着強度が低下せず、浮き・剥れが発生しないという関係を見出した。また、粘着剤のベースとなる重合体と架橋剤との組み合わせについても鋭意検討を行い、特定の重合体を特定の架橋剤で架橋させた粘着剤が、粘着剤層を剥離した面に対し補強板等の他の部材を接着したとき、その接着強度が低下せず、浮き・剥れが発生しにくいという知見を得た。即ち、本発明の発明者は、これらの知見に基づき本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、
アルキル(メタ)アクリレートとカルボキシル基を有するビニルモノマーを共重合したアクリル系共重合体をエポキシ系架橋剤で架橋してなる粘着剤であって、該粘着剤を基材に塗布して粘着剤層を形成し、該粘着剤層をポリイミドフィルム面に貼り合せた後、前記粘着剤層を剥離したポリイミドフィルム面のぬれ張力を、下記のぬれ張力評価法により測定して、ぬれ張力が40dyne/cm以上であること、より好ましくは、60dyne/cm以上であり、さらに、アクリル系共重合体が、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート及びアクリル酸の重合単位を含むことを特徴とする粘着剤である。
又、本発明は、上記粘着剤からなる粘着剤層を積層した粘着フィルムであり、FPCに張付けて使用する保護フィルムである。
本発明は、アルキル(メタ)アクリレートとカルボキシル基を有するビニルモノマーを共重合したアクリル系共重合体をエポキシ系架橋剤で架橋してなる粘着剤からなる粘着剤層を基材に積層した粘着フィルムの検査方法であって、
前記粘着フィルムの前記粘着剤層をポリイミドフィルム面に貼り合せた後、前記粘着剤層を剥離したポリイミドフィルム面のぬれ張力を、下記のぬれ張力評価法により測定したとき、ぬれ張力が40dyne/cm以上である場合に、より好ましくは60dyne/cm以上であり、さらに、前記アクリル系共重合体が、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート及びアクリル酸の重合単位を含む場合に合格と判定することを特徴とする粘着フィルムの検査方法である。
又、本発明は、前記粘着フィルムの検査方法を含む検査工程を有する粘着フィルムの製造方法である。
「ぬれ張力評価法」は、ポリイミドフィルムに粘着剤層を貼り合せ、180℃、40Kg/cmで30分プレス処理した後、粘着剤層を剥がし、ポリイミドフィルムの粘着剤層貼付面を試験片表面とし、水平に位置する前記試験片表面に、JIS K 6768に準じ、順次より大きな表面張力を有するぬれ張力試験用液のそれぞれ1mlを3cmの高さからスポイトで滴下し、直ちに試験片を90度傾け、滴下面を垂直方向とした場合に、液滴がはじかれずに試験片表面をぬらしながら流れる時の最大の表面張力を有するぬれ張力試験用液の表面張力(dyne/cm)を試験片のぬれ張力とする方法である。
本発明においては、アルキル(メタ)アクリレートとカルボキシル基を有するビニルモノマーを共重合したアクリル系共重合体をエポキシ系架橋剤で架橋してなる粘着剤を用いること、粘着剤層を剥離したポリイミドフィルム面のぬれ張力が40dyne/cm以上であること、の二つの構成を具備するものである。2番目の構成「ぬれ張力が40dyne/cm以上であること」は、通常の粘着剤が有効に機能するために被着体が有することが望ましい数値であり、粘着フィルムの粘着剤と粘着フィルムが剥離された後に貼られる他の部材の粘着剤との組み合わせに関わらず実用的な接着強度が得られる。一方、被着体のぬれ張力が40dyne/cm未満では、粘着フィルムの粘着剤と粘着フィルムが剥離された後に貼られる他の部材の粘着剤との組み合わせによっては、接着が不充分となる場合がある。
また、本願発明は、ポリイミドフィルム面のぬれ張力が60dyne/cm以上であると、粘着フィルムの粘着剤と粘着フィルムが剥離された後に貼られる他の部材の粘着剤との組み合わせに関わらず、他の部材の接着が充分となる。
なお、本発明において、ポリイミドフィルム面のぬれ張力の上限は、ブランク(オリジナル)のポリイミドのぬれ張力となる。ぬれ張力試験用液はぬれ張力が67dyne/cm以上に対応するものは入手することができないので、ぬれ張力試験用液を水として試験すると液滴がはじかれて試験片表面を流れるので、ブランクのポリイミドのぬれ張力は73dyne/cm未満である。
本発明の粘着剤および粘着フィルムは、被着体から剥離した際、被着体の粘着フィルムを剥離した面に粘着剤由来の移行が抑制される。したがって、被着体に微量成分による汚染を生じさせず、被着体の粘着フィルム剥離面に他の部材を他の粘着剤で接着する場合に、接着力低下による浮き・剥れが生じることがない。
特に、粘着フィルムがポリイミド樹脂層を絶縁層とするFPCの導電回路が形成されていない面に接着する保護フィルムである場合に、保護フィルムを貼付した樹脂層導体箔積層体を用いるFPCの製造工程で、保護フィルムを貼付した樹脂層導体箔積層体の搬送や加工時の各種薬品からポリイミド樹脂層面を有効に保護して、工程終了後に剥離して補強板を強固に接着することができる。
また、本発明の粘着フィルムの検査方法は、簡易な操作で、被着体から剥離した際の被着体の粘着フィルムを剥離した面に粘着剤由来の微量成分による汚染を容易に検査できる。そして、この様な検査方法を製造工程に組み込むことにより、被着体の粘着フィルム剥離面に他のフィルムを他の粘着剤層で接着する粘着フィルムである場合に、接着力低下による浮き・剥れが生じることがない優れたフィルムを効率的に製造することができる。
本発明における粘着剤用ポリマーは、それ自体に粘着性があるアクリル系共重合体である。このアクリル系共重合体は、アルキル(メタ)アクリレートと、カルボキシル基等を含有するビニルモノマーを共重合させて得ることができる。また、これらのモノマーと共重合可能な他のモノマーを併用することができる。
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素数が3〜14のものが好ましい。アルキル基の炭素数がこの範囲外であると、粘着剤としての特性が損なわれ、アルキル基の炭素数が4〜9のものが更に好ましい。このようなものとして、例えば、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中で、ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましく使用される。
上記アクリル系共重合体において、アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な他のモノマーとしては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
エポキシ系架橋剤と反応し得るカルボキシル基を有するビニルモノマーは、架橋基点として関与させること以外に、他の、例えば表面の極性を上げて粘着力を向上させることやポリマーのガラス転移点の調整等に関与させることも可能である。
その様なカルボキシル基を有するビニルモノマーとして、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。これらの中で、アクリル酸が特に好ましい。
上記アクリル系共重合体においては、カルボキシル基を有するビニルモノマーの配合量は0.5〜10重量%が好ましい。この範囲より少ないと粘着剤の架橋度が上昇せず、充分な凝集力が得られず、この範囲を超えると粘着力が低下するので好ましくない。より好ましくは、1〜5重量%である。
アクリル系共重合体のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)による重量平均分子量(Mw)は10〜200万の範囲が好ましい。重量平均分子量がこの範囲より小さいと官能基量を増やさない限り必要な凝集力が得られず、官能基量を増やした場合は硬化反応に時間がかかり、結果的に生産性が低下する。この範囲を超えると粘度が高くなり塗工工程での生産性が悪くなる。より好ましくは、30〜150万である。
アクリル系共重合体のガラス転移温度は−85〜20℃であることが望ましく、0℃以下であることがより望ましい。ガラス転移温度が使用環境の温度より高いと被着体との粘着力が低下する。
このアクリル系共重合体の製造方法としては、特に限定されず、例えば、乳化重合、溶液重合、塊状重合、懸濁重合等の公知の重合方法が挙げられる。重合の開始方法としては、特に限定されず、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチルニトリル等の熱重合開始剤による方法や、光重合開始剤等が挙げられる。また、分子量を調節するために、連鎖移動剤が添加されてもよい。連鎖移動剤としては、チオール化合物、ハロゲン化合物等の連鎖移動性の高いものを使用することができる。
本発明において使用される架橋剤の中で、アクリル系共重合体のカルボキシル基と反応可能なエポキシ系架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルアミノフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、m−N,N−ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N−ジグリシジルアニリン等のエポキシ系化合物が挙げられる。
粘着剤には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により通常使用されている各種添加剤、例えば、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、軟化剤、充填剤、架橋促進剤等を適宜添加することができるが、成分移行の観点からは添加物を可能な限り加えない方が望ましい。
本発明の粘着フィルムにおいて、基材上に粘着剤層を設ける方法は、公知の方法を採用することができる。具体的には、剥離フィルムや剥離紙等に粘着剤を塗布、乾燥後、基材に貼り合わせ粘着フィルムを作成する方法、基材に粘着剤を塗布し、乾燥後、剥離フィルムに貼り合わせ粘着フィルムを作成する方法等が挙げられる。具体的な塗工の手段はグラビアコーティング、メイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング、ドクターナイフコーティング、リバースコーティング、コンマドクターコーティングなどの公知のものを適宜使用すればよい。
アクリル系共重合体とエポキシ系架橋剤等を適当な溶剤に溶解または分散させ、粘着剤層形成塗工液が適当な粘度となるよう固形分濃度を調整した塗工液を塗布、乾燥して、粘着剤層を0.1〜30μm程度に設けることが好ましい。この範囲より粘着剤層が厚いと、例えば、FPCなどの加工工程において、粘着剤層が加熱処理後の剥離時に凝集破壊が起り易くなり、良好な剥離性が得られなく、この範囲より薄いと、被着体との充分な粘着力が得られなくなる。
本発明の粘着フィルムに用いる基材としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、フッ素樹脂フィルム等が挙げられる。これらのフィルムは一軸または二軸に延伸されていると強度に優れ好ましい。延伸する場合はアニール処理などにより熱固定すると加熱時の収縮が起こりにくく、被着体に貼付してなる積層体がカールしにくいので好ましい。これらのフィルムは単独で使用してもよいし、2種以上のラミネートフィルムを用いてもよい。しかし、加熱時のカールを抑制するという観点からは、単体のフィルムの使用が好ましい。これら基材のうち、機械的特性、耐熱性、耐薬品性等に優れ、入手が容易で経済性に優れるという観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に用いられる。加熱時の寸法安定性の観点から2軸延伸を施したフィルムが好ましく、粘着剤層の積層強度(接着強度)を向上させる観点からは、公知の方法、例えば、コロナ放電処理やプラズマ処理等により表面処理したものが更に好適である。
基材の厚みは基材として用いられるフィルム(本明細書においては、厚みによるシートとフィルムの区別は行わず、両者を含めてフィルムと称する。)の種類や粘着フィルムの用途によって要求される強度等によって異なり、特に制限されないが、例えば、FPC加工用の保護フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合は、12〜125μm程度のものが好ましい。
粘着剤層の上に、さらに剥離フィルムを設ける場合、剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムや、これらにアミノアルキッド樹脂やシリコーン樹脂等の剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。本発明の粘着フィルムがFPCの保護フィルムとして使用される場合、この剥離剤には、シリコーン樹脂を使用してないことが望ましい。なぜならシリコーン樹脂を用いると、剥離フィルム表面に接触した粘着剤の表面にシリコーン樹脂の一部が移行し、これがポリイミドの表面にさらに移行する恐れがあるためである。これらの剥離フィルムの厚さは特に限定されないが、通常12〜150μm程度である。
粘着剤の粘着力は特に制限を受けないが、その測定方法はJIS Z 0237に記載の試験方法に準ずる。被着体表面に対する粘着力が剥離角度180度ピール、剥離速度300mm/分の条件下で、0.03〜2N/インチ程度が好適である。粘着力が0.03N/インチ未満では、例えば、FPC製造工程での作業中に保護フィルムが剥がれたり浮いたりする場合がある。また、2N/インチを超えると、保護フィルムを剥がし難かったり、粘着剤由来の微量成分が保護フィルムを剥離したポリイミドの表面に残存する場合がある。
ここで、保護フィルムを剥離した後のFPCのポリイミド表面に、FPCを補強するためのポリイミド製補強板を接着する際、ポリイミド表面に粘着剤に由来する微量成分が移行し汚染された場合、接着強度が低下する。この時、ポリイミド表面のぬれ張力は低下しており、その結果、接着剤がポリイミド表面を濡らすように充分に覆うことが困難になり、接着強度が低下するものと考えられる
なお、補強板はFPCを部分的に補強するために貼り合わされ、用途により種々の材料が使用される。通常は、薄型化したFPCに対してポリイミドフィルムやポリエステルフィルムが使用される場合が多い。補強板の厚さは、ポリイミドは25μm以上、ポリエステルは25〜240μmが一般的である。
本発明を完成させるに際し用いたTOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析装置)分析法は、試料表面に付着した有機汚染物の特定や構造解析に適し、表面に不具合が存在していることが明らかな箇所における局所(数μm程度)のの解析に好ましく利用できる方法であるが、表面の不具合が存在するか否かを検出する方法としては好適ではない。つまり、表面が補強板を接着させるときにその接着強度が低下するか否かの判定には適していない。そこで、種々の粘着剤を用いた保護フィルムを用意し、保護フィルムを貼付した、保護フィルムを剥離した後のポリイミド表面状態と、ブランクのポリイミド表面状態をTOF−SIMS分析で確認した。そして、両者がほぼ同等の状態であるもの、および、差異のあるものについて、保護フィルムを剥離したポリイミド表面に補強板を接着し、補強板の浮き・剥れの有無、および、剥離表面のぬれ特性を、JIS K 6768「プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法」に準じた「ぬれ張力評価法」で評価し、相関関係を検討した。その結果、粘着剤のベースとなる重合体、および、架橋剤として、特定のものを選択し、ぬれ張力が特定値以上であれば、保護フィルムを剥離した後のポリイミド表面状態と、ブランクのポリイミド表面状態がTOF−SIMS分析でほぼ同等の状態であるものに相当し、補強板の接着で問題が生じないことを見出した。
なお、JIS K 6768では、試験表面に、表面張力がより大きくなるような試験用液を順次滴下し、直ちに液滴をワイヤーバーや綿棒を用いて6cm以上に広げ、2秒間でぬらすことができる試験用液を選ぶ。このようにして選ばれた試験用液のうち、表面張力が最も大きいものの表面張力をポリイミド表面のぬれ張力とする。一方、本発明における、ぬれ張力評価法は、液滴をワイヤーバーや綿棒を使わず試験片を垂直に立てて自然に垂らして広げる。本方法は、JIS法に比べ、試験材料表面にワイヤーバー等が接触して表面状態に影響を及ぼすおそれがなく、しかも複数の試験用液を同時に並行して試験できるので、短時間で簡潔に評価できる等の特徴がある。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものでない。なお、以下の実施例にて用いるアクリル系共重合体及び実施例、比較例における試験片の評価方法は、以下の通りである。
「ぬれ張力評価法」
JIS K 6768に準じた上記の方法を用いた。
「補強板密着性テスト」
補強板の接着性評価として、補強板貼り付け後の積層品のハンドリングを想定して、所定回数、一定の曲げ角度で補強板積層品を曲げたときに浮きが生じるか否かを測定した。
具体的には、100μmポリイミドフィルム(20cm×20cm)に保護フィルム(20cm×20cm)を貼合し、180℃、40Kg/cmで30分プレス処理を行った。
その後保護フィルムを剥がし、保護フィルムを剥離した面に対してポリイミド製の補強板(ポリイミド面大きさ=15cm×15cm、厚さ=ポリイミドフィルム75μm+アクリル系粘着剤25μm)を接着し、ポリイミドフィルム/補強板積層品を作成した。室温で1時間放置した後、積層品を直径3インチの樹脂管に、ポリイミドフィルムを内側にして巻きつけた。その後、巻き戻して反転させ、補強板面を内側にして積層品を樹脂管に巻きつけた。再度巻き戻して、同じ操作を5回繰り返した後、補強板の浮き・剥れを目視にて観測した。
「TOF−SIMS分析」
FPCの裏面に見立てたポリイミドフィルムの保護フィルムを剥がした表面をION TOF社製装置を用い、測定条件として、Au1次イオン照射、測定範囲200μm×200μm、検出範囲0〜1,000a.m.uで行った。比較データとしてブランクのポリイミドフィルム面を同条件で測定したときのデータを用いた。
なお、FPCの裏面に見立てたポリイミドフィルムは、現在、FPCの基材として一般に多用されている東レ・デュポン株式会社製のカプトン100Hである。本発明においては、粘着フィルムが剥離されたFPC面のぬれ張力を測定するものであり、上記カプトン100Hが入手不能な場合は、FPCの基材として一般に使用されているポリイミドフィルムであれば等価なものとして代替が可能である。
実施例1
ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、及びアクリル酸の重合単位からなるアクリル系共重合体の固形分40重量%に調整したアクリル系共重合体組成物を得た。アクリル系共重合体の重量平均分子量Mwは50万、ガラス転移温度は−54℃であった。
上記のアクリル系共重合体組成物100重量部に対し、エポキシ系架橋剤(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(固形分60重量%))を3重量部添加して、厚さ50μmのアニール処理した2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにコンマドクター工法により乾燥後の粘着剤層の厚さが10μmとなるよう塗布した後、130℃で3分間乾燥して保護フィルムを得た。
得られた保護フィルムの20cm×20cmを試料として、その粘着剤層面に、FPC代替として同じ寸法のポリイミドフィルムを180℃、40Kg/cmで30分プレス処理をして貼り合わせた。その後、保護フィルムを剥離したポリイミド表面をTOF−SIMS分析により確認した。
その結果、粘着剤に由来する微量成分は検出されず、最大ぬれ張力評価法によるぬれ張力は67dyne/cm以上であった。なお、ぬれ張力試験用液はぬれ張力が67dyne/cm以上に対応するものは入手することができず、ぬれ張力をこれ以上具体的に測定することはできなかった。
そして、保護フィルムを剥離した面に対してポリイミド製の補強板(大きさ=15cm×15cm、厚さ=ポリイミドフィルム75μm+アクリル系粘着剤25μm)を接着し、室温で1時間放置した後、補強板密着性テストを行い目視により外観を検査したが、補強板の浮き・剥れの発生は観測されなかった。
実施例2
ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸及びシクロブチルアクリレートの重合単位からなるアクリル系共重合体の固形分40重量%に調整したアクリル系共重合体組成物を得た。アクリル系共重合体の重量平均分子量Mwが74万、ガラス転移温度が−23℃であった。
アクリル系共重合体組成物100重量部に対し、エポキシ系架橋剤(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(固形分60重量%))を3重量部添加して、実施例1と同様にして作成した保護フィルムを実施例1と同様に評価をした。
TOF−SIMS分析により確認した結果、粘着剤に由来する微量成分は検出されず、ぬれ張力評価法による最大ぬれ張力は実施例1と同様に67dyne/cm以上であった。
補強板密着性テスト後の目視による外観検査においても、剥離面に対して接着したポリイミド製の補強板の浮き・剥れの発生は観測されなかった。
比較例1
ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートの重合単位からなるアクリル系共重合体の固形分40重量%に調整したアクリル系共重合体組成物を得た。アクリル系共重合体の重量平均分子量Mwは60万、ガラス転移温度は−45℃であった。
アクリル系共重合体組成物100重量部に対し、イソシアネート系架橋剤(コロネートL−45(日本ポリウレタン工業株式会社製、固形分45重量%))を6重量部とした以外は、実施例1と同様にして作成した保護フィルムを実施例1と同様に評価をした。
目視検査では糊残りは観測されなかったが、TOF−SIMS分析により確認した結果、粘着剤に由来する微量成分が検出され、ぬれ張力評価法による最大ぬれ張力は32dyne/cmであった。
補強板密着性テスト後の目視による外観検査においても、剥離面に対して接着したポリイミド製の補強板の浮き・剥れの発生が観測された。
本発明の粘着剤および粘着フィルムは、例えば、FPC製造工程中に使用でき、当該粘着フィルムを剥離したFPCポリイミド表面への粘着剤由来の微量成分の移行を抑え、その剥離面に接着する補強板の浮き・剥れを生じさせない。又、本発明の粘着フィルムの検査方法および製造方法は、FPC加工・製造用粘着剤について、保護フィルム剥離後の微量成分抑制の可否を簡単に評価でき、効率的にFPCを加工・製造できるという効果を有する。

Claims (6)

  1. 炭素数3〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、カルボキシル基を有するビニルモノマーとを共重合したアクリル系共重合体を、エポキシ系架橋剤で架橋してなる粘着剤を基材に積層した粘着フィルムであって、
    前記アクリル系共重合体における、カルボキシル基を有するビニルモノマーの配合量が、0.5〜10重量%であり、前記アクリル系共重合体のガラス転移温度が、−85〜+20℃であり、該粘着剤をポリエチレンテレフタレートフィルムからなる前記基材に塗布して粘着剤層を積層した粘着フィルムを形成し、前記粘着フィルムの該粘着剤層をポリイミドフィルム面に貼り合せた後、前記粘着剤層を剥離したポリイミドフィルム面のぬれ張力を、下記のぬれ張力評価法により測定して、ぬれ張力が40dyne/cm以上であることを特徴とする粘着フィルム。
    ぬれ張力評価法
    ポリイミドフィルムに粘着フィルムの粘着剤層を貼り合せ、180℃、40Kg/cmで30分プレス処理した後、前記粘着剤層を剥がし、ポリイミドフィルムの前記粘着剤層の貼付面を試験片表面とし、水平に位置する前記試験片表面に、JIS K 6768に準じ、順次より大きな表面張力を有するぬれ張力試験用液のそれぞれ1mlを3cmの高さからスポイトで滴下し、直ちに試験片を90度傾け、滴下面を垂直方向とした場合に、液滴がはじかれずに試験片表面をぬらしながら流れる時の最大の表面張力を有するぬれ張力試験用液の表面張力(dyne/cm)を試験片のぬれ張力とする。
  2. 前記ポリイミドフィルム面のぬれ張力が、60dyne/cm以上である請求項1に記載の粘着フィルム。
  3. 前記アクリル系共重合体が、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート及びアクリル酸の重合単位を含むものである請求項1または2に記載の粘着フィルム。
  4. 前記アクリル系共重合体100重量部に対し、前記エポキシ系架橋剤を8重量部以上配合した粘着剤を除くものである、請求項1ないし3のいずれかに記載の粘着フィルム。
  5. 前記アクリル系共重合体100重量部に対し、前記エポキシ系架橋剤を3重量部添加したものである、請求項1ないし3のいずれかに記載の粘着フィルム。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の粘着フィルムが、フレキシブルプリント配線基板の導電回路が形成されていない面に貼付するFPC用保護フィルム。
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