JP2013049583A - オリビン型リチウム遷移金属酸化物およびその製造方法 - Google Patents

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【課題】
正極活物質として使用した際に充填性が高く、極板からの剥離が抑制されるオリビン型リチウム遷移金属酸化物を提供することを目的とする。
【解決手段】
一般式Li(Fe1−y)PO(0.9<x<1.3、0≦y<1、MはMn、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種類の金属元素)で表されるオリビン型リチウム遷移金属酸化物の製造方法であって、リチウム源と、リン酸源と、鉄源と、場合により金属元素M源と、炭素源と、分散剤としてのカルボン酸と、分散媒とを含む原料混合物を調製する混合工程と、前記原料混合物を粉砕処理に付す粉砕工程と、粉砕後の前記原料混合物を噴霧乾燥して前駆体とする乾燥工程と、前記前駆体を焼成する焼成工程とを含む、方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、主としてリチウムを可逆的にドープ及び脱ドープ可能な正極活物質に用いられるオリビン型リチウム遷移金属酸化物およびその製造方法に関する。
非水電解質二次電池の正極活物質として用いられるリチウム遷移金属酸化物は、二次電池を構成したときの作用電圧が4Vと高く、また、大きな容量が得られることが知られている。そのため、リチウム遷移金属酸化物を正極活物質として利用したリチウムイオン二次電池は、携帯電話、ノート型パソコンおよびデジタルカメラ等の電子機器の電源として多く用いられている。また、近年、環境への配慮から、電気自動車、ハイブリッド自動車などに搭載される大型の二次電池の用途向けにリチウムイオン二次電池の要求が高くなっている。
特に、遷移金属としてコバルトを利用したリチウム遷移金属酸化物(コバルト酸リチウム)と比較して安全で安価な正極活物質として、例えば、特許文献1に開示されるようなオリビン型リチウム鉄酸化物が注目されている。オリビン型リチウム鉄酸化物は、ポリアニオンを基本骨格とするオリビン型結晶構造を有する。オリビン型リチウム遷移金属酸化物としては、例えば組成式LiFePOで表される化合物が知られている。オリビン型リチウム遷移金属酸化物を正極活物質として使用したリチウムイオン二次電池は、充放電に伴う正極活物質の結晶構造変化が少ないためサイクル特性に優れており、また、正極活物質結晶中の酸素原子がリンとの共有結合により安定して存在するため電池が高温環境に晒された場合であっても酸素放出の可能性が小さく安全性に優れているという利点を有する。
特表2008−536285号公報
しかしながら、このようなオリビン型リチウム遷移金属酸化物は正極活物質として電池の極板に塗付したときに、充填性が低いのでエネルギー密度が低くなるだけでなく、正極活物質が極板から剥離する確率も高く、現状では使用が困難とされてきた。
そこで、本発明は、正極活物質として使用した際に充填性が高く、極板からの剥離が抑制されるオリビン型リチウム遷移金属酸化物を提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者らは、オリビン型リチウム遷移金属酸化物を製造する際に分散剤としてカルボン酸を添加することによって、活物質の充填性が向上し剥離率が低下することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、一般式Li(Fe1−y)PO(0.9<x<1.3、0≦y<1、MはMn、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種類の金属元素)で表されるオリビン型リチウム遷移金属酸化物の製造方法であって、
リチウム源と、リン酸源と、鉄源と、場合により金属元素M源と、炭素源と、分散剤としてのカルボン酸と、分散媒とを含む原料混合物を調製する混合工程と、
前記原料混合物を粉砕処理に付す粉砕工程と、
粉砕後の前記原料混合物を噴霧乾燥して前駆体とする乾燥工程と、
前記前駆体を焼成する焼成工程と
を含む方法に関する。
前記混合工程において、前記カルボン酸は遷移金属元素に対して0.3mol%〜30mol%の割合で添加されることが好ましい。
前記カルボン酸として、クエン酸、酒石酸またはグルコン酸を用いることができる。
本発明は更に、上述の方法を用いて製造されるオリビン型リチウム遷移金属酸化物に関する。
前記オリビン型リチウム遷移金属酸化物は、見掛け密度が1.4g/cm〜1.8g/cmであることが好ましい。
前記オリビン型リチウム遷移金属酸化物は、平均二次粒子径が好ましくは2μm〜15μmであり、より好ましくは4μm〜7μmである。
以上のように構成された本発明に係るオリビン型リチウム遷移金属酸化物をリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いると、正極活物質の充填性を高くすることができ、極板からの正極活物質の剥離を抑制することができる。
本発明を実施するための形態を説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのオリビン型リチウム遷移金属酸化物を例示するものであり、本発明は以下の形態に限定されない。
[オリビン型リチウム遷移金属酸化物]
先ず、本発明に係るオリビン型リチウム遷移金属酸化物について述べる。本発明に係るオリビン型リチウム遷移金属酸化物の組成は、一般式Li(Fe1−y)POで表され、式中のx、yは0.9<x<1.3、0≦y<1であり、MはMn、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種類の金属元素である。
ここで、xが0.9より小さいと、電池の理論容量が低下するので好ましくない。また、xが1.3より大きいと、不純物の量が増えることにより、電池特性が低下するので好ましくない。また、xのより好ましい範囲は1.0<x<1.1である。
本発明者らは、オリビン型リチウム遷移金属酸化物を正極活物質として用いた際に正極活物質が極板から剥離する原因が、オリビン型リチウム遷移金属酸化物の製造過程において原料混合物の分散が不十分であることにあると考えた。原料混合物の分散が不十分であると、その原料混合物を噴霧乾燥して得られる前駆体二次粒子の内部が疎となってしまう。そのため、このような前駆体を焼成して得られるオリビン型リチウム遷移金属酸化物粒子の内部も疎になってしまう。粒子内部が疎であることにより、このオリビン型リチウム遷移金属酸化物の見掛け密度は小さくなる。このようなオリビン型リチウム遷移金属酸化物を正極活物質として使用すると、正極スラリー中の結着剤が活物質粒子の内部に侵入し、それにより、正極スラリーを集電体に塗布する際に活物質粒子と集電体との接着に寄与する結着剤の量が相対的に減少してしまう。その結果、正極活物質が極板から剥離しやすくなると考えられる。
そこで、原料混合物に種々の分散剤を添加して、上述の組成のオリビン型リチウム遷移金属酸化物を作製し、原料混合物の分散性を検討した。その結果、特定の種類のカルボン酸をオリビン型リチウム遷移金属酸化物の原料混合物に添加することにより、オリビン型リチウム遷移金属酸化物の焼結性を向上させることができ、カルボン酸を添加しない場合と比較して焼成物の見掛け密度を高くし得ることを見出した。焼成物粒子の見掛け密度が高く、従って粒子内部が密になっていることにより、剥離率を低下させることができる。
カルボン酸はキレート剤としてはたらく。カルボン酸を添加することにより、原料混合物中の各成分が分散して存在し、凝集が抑制される。その結果、この低粘度の原料混合物を噴霧乾燥して得られる前駆体の内部は密になり、その前駆体を焼成することにより、従来よりも高密度のオリビン型リチウム遷移金属酸化物粒子を得ることができる。しかし、分散剤を添加しすぎると、噴霧乾燥時に二次粒子内部に存在している分散剤が揮発し空隙が生じることで、逆に疎な粒子になってしまう。
本発明の方法において分散剤として使用するカルボン酸は、キレート剤としてはたらくものであれは特定の種類のものに限定されないが、炭素数が4以上、または分子量が150以上のカルボン酸が、原料混合物中の各成分の分散性の向上に効果的にはたらくので好ましい。例えば、クエン酸(分子量192.13)、酒石酸(分子量150.09)、グルコン酸(分子量196.16)等のカルボン酸を本発明の方法に用いることができる。
カルボン酸の添加量が多いほど、得られるオリビン型リチウム遷移金属酸化物の見掛け密度は増加する。しかし、カルボン酸を添加しすぎると、噴霧乾燥時に二次粒子内部に存在している分散剤が揮発して二次粒子内部に空隙が生じることにより、かえって疎な粒子になってしまうので好ましくない。具体的には、カルボン酸の添加量は、オリビン型リチウム遷移金属酸化物の遷移金属元素に対して0.3mol%〜30mol%であることが好ましい。さらに好ましいカルボン酸の添加量は、0.5mol%〜10mol%である。
本発明の方法により、オリビン型リチウム遷移金属酸化物の見掛け密度を1.4g/cm以上とすることが可能である。見掛け密度が高くなりすぎるとLiの拡散性が低下して充放電特性が悪化するので、見掛け密度は1.8g/cm以下であることが好ましい。
なお、本明細書において、見掛け密度とは粉末を一定容積の容器の中に、一定状態で入れたときに、容器内に入る粉末の量を測定し、単位面積あたりの質量を測定することにより算出される。
正極活物質として用いる際の本発明に係るオリビン型リチウム遷移金属酸化物の平均二次粒子径は、2μm以上15μm以下であることが好ましい。平均二次粒子径が2μm未満であったり、15μmを越えたりする場合、正極活物質をリチウムイオン二次電池の極板に塗布する際に、その作業性が悪化するため好ましくない。さらに15μmを越える場合、充填密度が低下するため好ましくない。より好ましくは、オリビン型リチウム遷移金属酸化物の平均二次粒子径は4μm以上7μm以下である。
なお、本明細書において、オリビン型リチウム遷移金属酸化物の平均二次粒子径は、レーザー回折法で測定したメディアン径(d50)の値を意味する。
正極活物質として用いる際の本発明に係るオリビン型リチウム遷移金属酸化物の炭素含有量は、0.2重量%以上10重量%以下であり、二次粒子の内部や表面に存在することが好ましい。炭素含有量が0.2重量%未満の場合、電気抵抗が大きくなる。また、炭素含有量が10重量%を超える場合、重量当たりの放電容量が小さくなる。オリビン型リチウム遷移金属酸化物の炭素含有量は、好ましくは、0.5重量%以上5重量%以下である。
以下、本発明のオリビン型リチウム遷移金属酸化物およびそのオリビン型リチウム遷移金属酸化物を使用した正極活物質用の焼結体の製造方法の一例を説明する。
[混合工程]
目的とするオリビン型リチウム遷移金属酸化物の組成の化学量論比となるように各原料を秤量した後、リチウム源、リン酸源、鉄源、場合により金属元素M源、炭素源、分散剤としてのカルボン酸および分散媒を混合して原料混合物を調製する。
カルボン酸は他の原料と同時に混合して原料混合物としてもよく、他の原料を混合した後に、その混合物にカルボン酸を添加してもよい。
原料のリチウム源としては、リチウムを含有するものであれば如何なる材料でも使用することができる。例えば、リン酸リチウム、リン酸二水素リチウム、炭酸リチウム、酢酸リチウム、または水酸化リチウム、並びにこれらの混合物である。これらのうち、取り扱いが容易である点や環境への安全性を配慮すると、炭酸リチウムが好ましい。
原料のリン酸源は、リン酸化物(II)やリン酸化物(III)とすることができる。リン酸化物として、例えば、リン酸鉄(II)、リン酸鉄(III)、リン酸マンガン(II)、リン酸マンガン(III)、リン酸コバルト(II)等を挙げることができる。リン酸鉄、リン酸マンガンおよびリン酸コバルトは、鉄源および金属元素M源としても用いることができる。リン酸源の粒径は、製造工程における作業性を考慮して平均二次粒子径が5μm以上10μm以下であることが好ましい。原料のリン酸化物は、不純物を取り除くため、他の原料との混合前に洗浄処理しておくことが好ましい。
本発明の方法で使用可能な鉄源として、例えばリン酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄、シュウ酸鉄等が挙げられる。このうち、リン酸鉄はリン酸源としてもはたらく。
金属元素M源としては、マンガン、コバルトおよびニッケルの酸化物、リン酸塩または水酸化物を用いることができる。このうち、金属元素Mのリン酸塩はリン酸源としてもはたらく。
原料の炭素源としては、グルコース、ショ糖、ラクトースなどの糖類、グリセリン、アスコルビン酸、ラウリン酸、ステアリン酸などの有機化合物が使用できる。これらのうち、取り扱いが容易な点からショ糖が炭素源として好ましい。これらの炭素源は、オリビン型リチウム遷移金属酸化物に導電性を付与する炭素源としてだけでなく、原料中の金属元素を還元するための炭素源としても利用することができる。
分散媒としては、水ならびにアセトンおよびエタノール等の有機溶媒が使用できる。なかでも、取り扱いが容易で安価であることから、水が好ましい。
[粉砕工程]
混合工程で得られた原料混合物に含まれる粒子を粉砕処理して微細化する。
上述の原料は、通常、粒子状の原料として供給されるので、これらの粒子状の原料を細かく粉砕して混合する。粉砕処理の方法として、例えば、湿式粉砕混合が挙げられる。湿式粉砕混合は、粉砕する目的物を分散媒(例えば水)に入れ1mm前後のメディアを使用しローラー台で回すことによる粉砕する方法であり、乾式粉砕混合より細かく粉砕することができる。
[乾燥工程]
粉砕処理した原料混合物を噴霧乾燥して前駆体とする。
噴霧乾燥とは、乾燥させるべき原料混合物をシャワー状に噴霧して、この噴霧された原料混合物に熱風を吹きつけることにより乾燥させる方法である。これにより、一次粒子の集合体である二次粒子(球形)を前駆体として形成することができる。
[焼成工程]
噴霧乾燥した前駆体を不活性雰囲気または還元雰囲気の下で焼成する。
焼成工程は、窒素あるいは、水素またはアンモニアを含む還元雰囲気の下で行うことが好ましく、水素および窒素を含む雰囲気の下で行うことがより好ましい。焼成温度は、500℃以上800℃以下が好ましく、より好ましくは、600℃以上700℃以下である。
このようにして得られる本発明のオリビン型リチウム遷移金属酸化物は見掛け密度が高く、粒子内部が密になっている。それにより、本発明のオリビン型リチウム遷移金属酸化物を正極活物質として使用して正極極板を作製した場合に、極板からの活物質の剥離を抑制することができる。
以下、本発明に係る実施例について詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
[実施例1]
リン酸鉄(Fe(PO)179gと、リン酸リチウム(LiPO)61gと、ショ糖27g(鉄1gに対して0.325g)と、クエン酸(分子量192.13)4.2g(鉄1molに対して0.014mol)と、純水1700mlとを混合して原料混合物とした。その原料混合物を容量5000mlのボールミルに入れ、アルミナボールを用いて40時間粉砕処理して微細化した。
粉砕処理した原料混合物を、噴霧乾燥機を用いて噴霧乾燥し、前駆体である熱処理物を得た。その前駆体を窒素ガス雰囲気下で700℃にて10時間焼成して焼成物を得た。
X線回折装置を用いて、得られた焼成物の相同定を行った。X線としてCuKα線(波長:λ=1.54nm)を用いて分析した結果、組成式LiFePOで表されるオリビン型リチウム遷移金属酸化物が確認され、不純物のピークは見られなかった。この焼成物の見掛け密度は1.5g/cmであった。レーザー回折法を用いてこの焼成物のメディアン径を測定したところ、5.0μmであった。この値を、実施例1の焼成物の平均二次粒子径とした。
[実施例2]
クエン酸の添加量を8.4g(鉄1molに対して0.029mol)に変更した以外は実施例1と同様の手順で、オリビン型リチウム遷移金属酸化物を作製した。得られた焼成物の組成はLiFePOであり、見掛け密度は1.6g/cm、平均二次粒子径は4.8μmであった。
[実施例3]
クエン酸の添加量を12.6g(鉄1molに対して0.044mol)に変更した以外は実施例1と同様の手順で、オリビン型リチウム遷移金属酸化物を作製した。得られた焼成物の組成はLiFePOであり、見掛け密度は1.7g/cm、平均二次粒子径は4.8μmであった。
[実施例4]
クエン酸の添加量を21.0g(鉄1molに対して0.073mol)に変更した以外は実施例1と同様の手順で、オリビン型リチウム遷移金属酸化物を作製した。得られた焼成物の組成はLiFePOであり、見掛け密度は1.7g/cm、平均二次粒子径は4.8μmであった。
[実施例5]
クエン酸の添加量を73.5g(鉄1molに対して0.25mol)に変更した以外は実施例1と同様の手順で、オリビン型リチウム遷移金属酸化物を作製した。得られた焼成物の組成はLiFePOであり、見掛け密度は1.4g/cm、平均二次粒子径は4.8μmであった。
[実施例6]
クエン酸に替えてグルコン酸(分子量196.16)8.6g(鉄1molに対して0.029mol)を添加した以外は実施例1と同様の手順で、オリビン型リチウム遷移金属酸化物を作製した。得られた焼成物の組成はLiFePOであり、見掛け密度は1.6g/cm、平均二次粒子径は5.3μmであった。
[実施例7]
グルコン酸の添加量を12.9g(鉄1molに対して0.044mol)に変更した以外は実施例6と同様の手順で、オリビン型リチウム遷移金属酸化物を作製した。得られた焼成物の組成はLiFePOであり、見掛け密度は1.7g/cm、平均二次粒子径は5.2μmであった。
[実施例8]
クエン酸に替えて酒石酸(分子量150.09)6.6g(鉄1molに対して0.029mol)を添加した以外は実施例1と同様の手順で、オリビン型リチウム遷移金属酸化物を作製した。得られた焼成物の組成はLiFePOであり、見掛け密度は1.6g/cm、平均二次粒子径は5.5μmであった。
[実施例9]
酒石酸の添加量を9.8g(鉄1molに対して0.044mol)に変更した以外は実施例8と同様の手順で、オリビン型リチウム遷移金属酸化物を作製した。得られた焼成物の組成はLiFePOであり、見掛け密度は1.7g/cm、平均二次粒子径は5.2μmであった。
[比較例1]
クエン酸を添加しないこと以外は実施例1と同様の手順で、オリビン型リチウム鉄酸化物を作製した。得られた焼成物の組成はLiFePOであり、見掛け密度は1.3g/cm、平均二次粒子径は4.8μmであった。
[比較例2]
クエン酸の添加量を115.5g(鉄1molに対して0.40mol)に変更した以外は実施例1と同様の手順で、オリビン型リチウム遷移金属酸化物を作製した。得られた焼成物の組成はLiFePOであり、見掛け密度は1.2g/cm、平均二次粒子径は5.0μmであった。
実施例1〜5および比較例1および2における見掛け密度および平均二次粒子径の測定結果を下記の表1に示す。クエン酸を添加した実施例1〜5の各々において、カルボン酸を添加していない比較例1よりも見掛け密度が高い焼成物が得られた。ところが、クエン酸を40mol%添加した比較例2の焼成物は、比較例1よりも見掛け密度が低くなった。比較例2の結果より、カルボン酸添加量が多すぎると、得られる焼成物の見掛け密度が低くなってしまうことが分かる。また、グルコン酸、酒石酸を用いた実施例6〜9においても、カルボン酸を添加していない比較例1よりも見掛け密度が高い焼成物が得られた。
Figure 2013049583
[粘度測定]
実施例1〜9および比較例1の原料混合物の粘度を、B型粘度計を用いて回転速度60rpmで測定した。測定結果を表1に示す。カルボン酸を添加していない比較例1と比較して、カルボン酸を添加した実施例1〜9の原料混合物の粘度はいずれも低下した。また、カルボン酸の種類が同一の場合、カルボン酸の添加量が多いほど、原料混合物の粘度は低下した。
[剥離率の測定]
実施例1〜3ならびに比較例1および2の各々の正極極板について、正極活物質の剥離率を測定した。剥離率は、JIS K5400の碁盤目セロハンテープ剥離試験により評価した。すなわち、正極活物質の塗膜にカッターナイフで5mm間隔の碁盤目状の切込みを入れ、セロハンテープを貼り付けた後、剥離し、剥離前後の重量差から剥離率を算出した。結果を表1に示す。カルボン酸を添加していない比較例1および2の剥離率が100%であるのに対し、クエン酸を添加した実施例1〜3の剥離率は67%〜20%であった。表1の結果から、カルボン酸の添加により剥離率が低下し、カルボン酸添加量が多いほど剥離率が低下する傾向にあることがわかる。
本発明の正極活物質は、二次電池の正極活物質として、例えば、携帯電話を含む各種携帯機器の他、電気自動車、ハイブリッド電気自動車への利用が可能である。

Claims (7)

  1. 一般式Li(Fe1−y)PO(0.9<x<1.3、0≦y<1、MはMn、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種類の金属元素)で表されるオリビン型リチウム遷移金属酸化物の製造方法であって、
    リチウム源と、リン酸源と、鉄源と、場合により金属元素M源と、炭素源と、分散剤としてのカルボン酸と、分散媒とを含む原料混合物を調製する混合工程と、
    前記原料混合物を粉砕処理に付す粉砕工程と、
    粉砕後の前記原料混合物を噴霧乾燥して前駆体とする乾燥工程と、
    前記前駆体を焼成する焼成工程と
    を含む、方法。
  2. 前記混合工程において、前記カルボン酸は遷移金属元素に対して0.3mol%〜30mol%の割合で添加される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記カルボン酸は、クエン酸、酒石酸またはグルコン酸である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法を用いて製造される、オリビン型リチウム遷移金属酸化物。
  5. 見掛け密度が1.4g/cm〜1.8g/cmである、請求項4に記載のオリビン型リチウム遷移金属酸化物。
  6. 平均二次粒子径が2μm〜15μmである、請求項4または5に記載のオリビン型リチウム遷移金属酸化物。
  7. 平均二次粒子径が4μm〜7μmである、請求項6に記載のオリビン型リチウム遷移金属酸化物。
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