JP2013040376A - 耐結晶粒粗大化特性および加工性ならびに靱性に優れた浸炭部品用の機械構造用鋼 - Google Patents

耐結晶粒粗大化特性および加工性ならびに靱性に優れた浸炭部品用の機械構造用鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】浸炭処理を行った場合に、結晶粒粗大化を起こしぬくく、靱性に優れた機械構造用鋼を提供すること。
【解決手段】質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.10〜0.50%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:1.80〜3.00%、Al:0.005〜0.050%、Nb:0.02〜0.10%、N:0.0300%以下を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、冷間加工前の組織がフェライト・パーライト組織で、そのフェライト粒径の平均値が15μm以上であり、図1に示す熱処理を行った耐結晶粒粗大化特性および靱性に優れた機械構造用鋼。
【選択図】図1

Description

本発明は、自動車などの動力伝達装置の浸炭用部品に用いられる耐結晶粒粗大化特性および靱性に優れた機械構造用鋼に関する。
冷間鍛造や冷間加工といった冷間工法は自動車の駆動系部品などの部品製造コストダウンに対して有利な工法である。ところで、冷間加工後に直接的に浸炭処理を施して部品を製造する場合、冷間加工の影響により浸炭初期に微細なオーステナイト粒が形成されることにより、浸炭時にかえって結晶粒が粗大化しやすいという問題を有する。結晶粒が粗大化すると部品強度が低下する場合があるので、結晶粒粗大化を抑制することが不可欠である。この問題があるために、冷間工法のコストメリットを十分に活かすことができていないのが現状である。ところで、部品を冷間加工後に浸炭温度まで加熱する過程で、冷間加工時のひずみの影響によって、いったんフェライトが微細に再結晶する段階を経てからオーステナイトに変態することが浸炭初期の微細なオーステナイト粒の形成を促している。そこで、従来技術として冷間加工後に浸炭温度に加熱する過程で焼なましを行い、前述のフェライト再結晶の駆動力となるひずみエネルギーを解放させることを通じて、浸炭時の結晶粒粗大化を抑制する方法がある(例えば、非特許文献1参照)。しかし、これにより新たな工程が追加されるため、部品コストダウンの観点からは利用しにくい。
一方、発明者らは部品素材となる浸炭処理用途の機械構造用鋼に対して、冷間加工に先立って加工性向上を目的として実施する球状化焼鈍に関して、そのミクロ組織が不均一であることが浸炭時の結晶粒粗大化を促進していることを見出した。通常、浸炭処理用途の機械構造用鋼に球状化焼鈍を施すと部分的なラメラーパーライトの生成が避けられず、結果として得られる球状化焼鈍組織は不均一なものとなる。鋼中でラメラー状に炭化物が存在するパーライトの部分は硬く、母相の鋼に比べて変形しにくいことにより、部品を冷間鍛造する過程で、ラメラーパーライト周辺に局所的に不均一なひずみが集中しやすい。その結果、冷間鍛造もしくは冷間加工、および必要に応じた切削加工を行って所定の形状に加工してから浸炭温度まで加熱する際に、ラメラーパーライト周囲で特に微細にフェライトが再結晶する過程を経るので、浸炭初期のオーステナイト粒が特に微細に形成される。この影響により、浸炭中に結晶粒が成長して粗大化しやすくなってしまう。
そこで、本発明の出願人は、化学成分の限定、球状化焼鈍後のラメラーパーライト面積率の制限、球状化焼鈍条件の限定を加えることにより、冷間鍛造もしくは冷間加工、および必要に応じた切削加工を行って所定の形状に加工した後、浸炭処理を行った場合に、結晶粒粗大化を起こしにくい機械構造用鋼およびその製造方法を既に提案している(例えば、特許文献1参照。)。この提案の技術は、浸炭処理用途の機械構造用鋼に少なからず含有されている結晶粒界をピン止めする微細析出物、例えばAlN、NbC、Nb(CN)による結晶粒粗大化抑制作用によって、優れた耐結晶粒粗大化特性を発揮する機械構造用鋼とするものである。
特開2010−242209号公報
K.C.Evanson,G.Krauss and D.K.Matlock:Grain Growth in Policrystallin Materials III,ed.by H. Weiland,B.L.Adams and A.D.Rollet,TMS,Warrendale,PA(1993),599. J.JPN.Soc.Technol.Plast.22(1981),p.139.冷間鍛造分科会材料研究班編「鍛造分科会基準」
本発明が解決しようとする課題は、発明者の一部が本願と同一である特許文献1に記載の発明とは、化学成分の一部の元素量を変えることで、球状化焼鈍が行われず、かつベイナイトが析出しないフェライト・パーライト組織となる熱処理方法(焼準あるいは焼鈍)が行われた後、冷間加工の一つである冷間鍛造を行ない、さらに切削加工を行って、所定の形状に加工してから浸炭処理を行った場合に、結晶粒粗大化を起こしにくくし、かつ結晶粒界をピン止めするAlN、NbC、Nb(CN)による結晶粒粗大化抑制作用と相まって優れた耐結晶粒粗大化特性および靱性に優れた浸炭部品用の機械構造用鋼を提供することである。
上記の課題を解決するための手段では、請求項1の発明は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.10〜0.50%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:1.80〜3.00%、Al:0.005〜0.050%、Nb:0.02〜0.10%を含有し、さらに、N:0.0300%以下を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、冷間加工前の組織がフェライト・パーライト組織であり、そのフェライト粒径の平均値が15μm以上であることを特徴とする耐結晶粒粗大化特性および靱性に優れた浸炭部品用の機械構造用鋼である。
請求項2の発明は、請求項1の手段の鋼の化学成分において、質量%で、N:0.0300%以下に代えてN:0.010%未満とし、さらに、請求項1の手段の鋼の化学成分に加えて、Ti:0.050%未満、B:0.0010〜0.0050%を含有し、残部不可避不純物からなり、冷間加工前の組織がフェライト・パーライト組織であり、そのフェライト粒径の平均値が15μm以上であることを特徴とする耐結晶粒粗大化特性および靱性に優れた浸炭部品用の機械構造用鋼である。
次いで、本発明の機械構造用鋼の化学成分の限定理由並びに機械構造用鋼の熱処理条件について説明する。なお、成分の%は質量%である。
C:0.10〜0.30%
Cは機械構造用部品としての鋼材の浸炭処理後の芯部強度を確保するために必要な元素である。しかし、Cが0.10%未満ではその効果が十分に得られない。一方、Cが0.30%を超えると加工性を低下させ、かつ、靱性を低下させる。そこでCは0.10〜0.30%とする。
Si:0.05〜2.0%、望ましくは0.05〜1.0%
Siは脱酸に必要な元素である。しかし、Siが0.05%未満では脱酸が十分に行われない。一方、Siが2.0%を超えると加工性を低下させる。そこでSiは0.05〜2.0%とし、望ましくは0.05〜1.0%とする。
Mn:0.10〜0.50%、望ましくは0.20〜0.50%
Mnは焼入れ性を確保するために必要な元素である。しかし、Mnが0.10%未満では焼入れ性の効果は十分に得られない。また、Mnが0.50%を超えると焼準あるいは焼鈍により現れるフェライト・パーライト組織の結晶粒が15μmよりも小さくなる。そこでMnは0.10〜0.50%とし、より望ましくは0.20〜0.50%とする。
P:0.030%以下
Pはスクラップから含有される不可避な元素であり、オーステナイト粒界に偏析して衝撃強度や曲げ強度などの靱性を低下する。そこで、Pは0.030%以下とする。
S:0.030%以下
Sは被削性を向上させる元素である。しかし、SはMnと結合して非金属介在物であるMnSを生成して横方向の靱性および疲労強度を低下させる。そこでSは0.030%以下とする。
Cr:1.80〜3.00%
Crは鋼の焼入性を上昇させる元素であるが、1.80%未満ではその効果が十分得られない。また、Crが過剰に添加されると加工性を損なうだけでなく浸炭性を阻害する。そこで、Crは1.80〜3.0%とする。
Ni:0.25%未満
Niは鋼の焼入性や靱性を上昇させる元素であるが、Niを0.25%以上添加すると本発明においては結晶粒度特性に不利なベイナイトが析出し、ベイナイトを核として結晶粒が粗大化する。そのため合金添加による靱性向上の効果よりも結晶粒粗大化による靱性の低下の方が大きく靱性が低下する。そこで、ベイナイトの析出を回避するため、Niは不可避的不純物量レベルとして0.25%未満とする。
Mo:0.05%未満
Moは鋼の焼入性や靱性を上昇させる元素であるが、Moを0.05%以上添加すると本発明においては結晶粒度特性に不利なベイナイトが析出し、ベイナイトを核として結晶粒が粗大化する。そのため合金添加による靱性向上の効果よりも結晶粒粗大化による靱性の低下の方が大きく靱性が低下する。そこで、ベイナイトの析出を回避するため、Moは不可避的不純物量レベルとして0.05%未満とする。
Al:0.005〜0.050%、望ましくは0.015〜0.050%
Alは脱酸材として使用される元素であり、また後記するようにNと結合してAlNを析出してピン止め効果により結晶粒粗大化抑制効果をもたらす。この効果を得るためには、Alは0.005%以上を添加する必要がある。一方、Alは0.050%を超えるとアルミナ系酸化物が増加し、疲労特性および加工性を低下する。そこで、Alは0.005〜0.050%とし、望ましくは0.015〜0.050%とする。
N:0.0300%以下、望ましくはN:0.0250%以下、ただし、TiおよびBを1種又は2種を含む鋼ではN:0.0100%未満
Nは鋼中でAlNやNb窒化物あるいはNb炭窒化物として微細析出し、そのピン止め効果により結晶粒粗大化を防止する効果をもたらす。しかし、0.030%を超えると窒化物が増加し、疲労強度や加工性が低下する。そこで、請求鋼1の発明で、Nは0.0300%以下とし、望ましくは0.0250%以下とする。しかしながら、請求項2の手段のように、TiやBを含有する鋼では、Nが0.0100%以上含有されると、TiNが過剰に生成して加工性や疲労強度を損なう。また、Bは固溶Bとして存在することで鋼の焼入性の向上効果があるが、Nが0.0100%以上含有されると、化合物のBNが生成して固溶Bが減少し、Bによる焼入性の向上効果が阻害される。そこで、請求項2の発明のTiおよびBを含む場合は、Nは0.0100%未満とする。
Nb:0.02〜0.10%、望ましくは0.02〜0.08%
NbはNb炭化物やNb窒化物あるいはNb炭窒化物を形成して、それらのピン止め効果により、結晶粒粗大化防止効果をもたらす。特に鋼中に微細に分散したナノオーダーのNbC又はNb(CN)が結晶粒の成長を抑制する。Nbが0.02%未満ではその効果が得られず、0.10%を超えると析出物の量が過剰となり加工性を低下する。そこで、Nbは0.02〜0.10%、望ましくは0.02〜0.08%とする。
Ti:0.050%未満
Tiは鋼中のfree−Nを固定して、Bが化合物BNとなることを抑制することにより、Bを焼入性向上に寄与させることができる。その効果を得るためには、Tiを0.050%未満添加する必要がある。
B:0.0010〜0.0050%
Bは極少量の含有によって鋼の焼入性を著しく向上させる元素で選択的に含有される。その効果を得るためには、0.0010%未満では焼入性向上の効果が小さく、一方、0.0050%を超えると強度を低下する。そこで、Bは0.0010〜0.0050%とする。
本願の請求項に係る発明の鋼では、上記したようにMnの含有量を0.10〜0.50%との低Mnとしている。したがって、圧延後に、通常の焼準処理又は焼鈍処理を行うことで、フェライトおよびパーライトの結晶粒からなるミクロ組織の大きな鋼が得られ、この鋼を冷間鍛造または他の冷間加工を行い、さらに浸炭処理が施される場合、浸炭時に結晶粒粗大化の要因となる浸炭初期のオーステナイト粒径の微細化を抑制出来る。そこで上記したように、この鋼の化学成分のMn量は0.10〜0.50%とし、望ましくは0.20〜0.50%とする。
本発明の鋼はA3点以上の温度である、例えば925℃に十分な時間、例えば1時間保持した後、空冷して焼準を行うか、あるいは、この焼準に代えて、焼鈍条件として880〜930℃に加熱して所定時間保持した後に徐冷を行って、フェライトおよびパーライトの組織とする。このように、本発明の鋼成分に加えて、上記条件の焼準あるいは焼鈍を行うことにより、均質なフェライトおよびパーライトからなる結晶粒の大きなミクロ組織が得られる。その結果、冷間鍛造もしくは冷間加工が行われた後、必要に応じた形状の部品に切削加工してから浸炭処理を行った場合に、浸炭初期のオーステナイト粒径の微細化を抑制することで、結晶粒が粗大化することはない。
上記の本発明の手段において、鋼成分の限定、焼準もしくは焼鈍の熱処理条件の限定により、焼準もしくは焼鈍に続いて冷間鍛造その他の冷間加工および必要に応じた切削加工を行って所定の形状に加工してから浸炭処理を行った場合に、AlN、NbCあるいはNb(CN)からなる化合物のピン止め効果により、従来鋼よりも微細な結晶粒度特性を有するので、冷間工法を利用した自動車、建設機械、工作機械などのギヤ、シャフトなどの駆動系部品の製造コストを低減させることが可能となり、本発明は従来にない優れた効果を奏する。
本発明の熱処理条件を示す図で、(a)は焼きならし処理の温度パターンを示し、(b)は模擬浸炭処理の温度パターンを示す図である。 (a)は発明鋼の焼ならし処理した顕微鏡写真のミクロ組織のフェライト・パーライト粒を示す図で、(b)は比較鋼の焼ならし処理した顕微鏡写真のミクロ組織のフェライト・パーライト粒を示す図である。 (a)は発明鋼を950℃で疑似浸炭したミクロ組織を示し、(b)は比較鋼の950℃で疑似浸炭したミクロ組織を示す。 (a)は発明鋼の975℃で疑似浸炭したミクロ組織を示し、(b)は比較鋼の975℃で疑似浸炭したミクロ組織を示す。 (a)は浸炭焼入れ条件を示し、(b)はsの焼戻し条件を示す。 シャルピー衝撃試験片の大きさを示す図で(a)は正面図で、(b)は側面図である。
本願発明を実施するための形態について、表および図面を参照して以下に説明する。先ず、本願発明の表1に示す化学成分を有する鋼からなる鋼材はフェライト・パーライト組織からなっている。この鋼材は冷間鍛造やその他の冷間加工が施されて部品に形状化される。その後、この形状化された部品は浸炭されて結晶粒特性において優れた部品とされている。それは、この部品を形成する鋼材において、この鋼の化学成分のMnを、質量%で、0.50%以下とすることにより、フェライト・パーライト粒を15μmより大きな粒とし、さらに結晶粒のピン止め粒子であるAlNやNb(CN)を利用することで、この鋼からなる鋼材は冷間鍛造やその他の冷間加工が施されることで、その後に浸炭されるこの鋼材からなる部品は優れた結晶粒度特性を有するものとなっている。
上記の表1に示す本願発明の発明鋼および比較鋼を、真空誘導溶解炉で溶製して100kgの鋼塊とした。この鋼塊を1250℃で5時間加熱した後、直径65mmの棒鋼に鍛伸した。次に、図1の(a)に示すパターンにより、この棒鋼を加熱して925℃に1時間すなわち3.6ks保持した後に空冷して焼ならし処理した。この焼ならし処理した棒鋼から供試材を作製して鏡面研磨し、5%ナイタールで腐食した後、光学顕微鏡でミクロ組織を観察して、視野内のフェライト・パーライト粒の大きさを測定した。
上記の処理で得られた発明鋼および比較鋼のそれぞれの焼ならし処理した代表的な顕微鏡写真を図2に示している。この図2の(a)の発明鋼の焼ならし処理した組織は15μmより大きなフェライト・パーライトである。一方、図2の(b)の比較鋼の焼ならし処理した組織は15μm以下の大きさのフェライト・パーライトである。
次に、上記の焼ならし処理した直径30mmの棒鋼の中周部の付近から、切削加工によって直径14mmで長さ21mmの円柱型試験片を作製した。試験片の長さ方向は母材の鍛伸方向と一致させた。万能試験機を用いて試験片に高さ比で70%の冷間据え込み加工を施した。なお、本発明において冷間加工率は特に70%に限定されるものではない。ところで、試験片の形状や冷間据え込み方法は、上記した非特許文献2の日本塑性加工学会の冷間鍛造分科会基準に準じて行なった。
次に、浸炭時の結晶粒粗大化温度を確認するために擬似浸炭試験を行った。この試験は浸炭処理の温度パターンンのみを模擬し、実際には浸炭せずに結晶粒度観察を行なう慣用的な疑似浸炭方法である。Mnの含有量が質量%で0.50%以下である発明鋼と、Mnの含有量が質量%で0.50%を超えている比較鋼のそれぞれを、冷間据え込み加工して試験片に形成し、この試験片を4分割し、その1片を300℃/Hrで950℃に昇温して、この950℃に10.8ks保持した後に水冷して、図1の(b)に示す、疑似浸炭処理を行った。この疑似浸炭処理後に、試験片の断面を鏡面研磨し、これを飽和ピクリン酸溶液で腐食して、旧オーステナイト粒界を現出させた。この試験片を光学顕微鏡で観察して、図3にその結晶粒の組織を示す。図3の(a)は発明鋼の結晶粒で、図3の(b)は比較鋼の結晶粒である。図3の(a)に示す発明鋼の結晶粒は、結晶粒ピン止め粒子であるAlNやNbCやNb(CN)により、950℃における擬似浸炭処理をしても結晶粒の粗大化は見られず、図3の(b)の比較鋼に比して結晶粒が小さく、図3の(a)に示す発明鋼は優れた結晶粒特性を有していた。
さらに、上記と同様に慣用的は疑似浸炭方法で、Mnの含有量が質量%で0.50%以下である発明鋼と、Mnの含有量が質量%で0.50%を超えている比較鋼のそれぞれを、冷間据え込み加工して試験片に形成し、この試験片を4分割し、その1片を300℃/Hrで、上記の950℃に代えて975℃に昇温し、この975℃に10.8ks保持した後に水冷して、図1の(b)に示す疑似浸炭処理を実施した。この疑似浸炭処理後に、試験片の断面を鏡面研磨し、これを飽和ピクリン酸溶液で腐食して、旧オーステナイト粒界を現出させた。この試験片を光学顕微鏡で観察して、図4にその結晶粒の組織を示す。図4の(a)は発明鋼の結晶粒で、図4の(b)は比較鋼の結晶粒である。図4の(a)に示す発明鋼の結晶粒は、結晶粒ピン止め粒子であるAlNやNbCやNb(CN)により、975℃における擬似浸炭処理をしても結晶粒の粗大化は見られず、図4の(b)の比較鋼に比して結晶粒が小さく、図4の(a)に示す発明鋼は優れた結晶粒特性を有していた。
擬似浸炭試験における旧オーステナイト粒界の現出による結晶粒粗大化温度の測定結果を表2に示す。本発明鋼のフェライト粒径は全て15μm以上となっている。一方、本開発鋼に対する比較鋼のフェライト粒径は全て15μmより小さくなっている。さらに比較鋼のNo.16およびNo.17はNiが添加され、No.18〜No.20はMoが添加されているため、表2に見るようにベイナイト組織が析出している。なお、本発明鋼のNo.1〜10のNi量および、比較鋼のNo.11〜15、No.18〜20は不可避不純物量であり、さらに本発明鋼のNo.1〜10および比較鋼o.11〜17は不可避不純物量である。本発明鋼のNo.1〜4、No.7、No.8、1No.0はMnが0.5%以下に加えて結晶粒ピン止め粒子であるAlN、NbCおよびNb(CN)を利用していることで、結晶粒度特性は最も優れている。その他の発明鋼はピン止め粒子としてAlNを使用できないため、先述の発明鋼に比べるとやや劣るが、この場合でも、Mnが0.5%以下であるため、比較鋼より優れた結晶粒度特性を有している。比較鋼のNo.12、No.13、No.15の結晶粒粗大化温度がその他の比較鋼に比べて高いのはNbが添加されているためであるが、Mnが0.5%を超えているため、本発明鋼には及ばない結果となっている。また、比較鋼のNo.16〜20はMnが0.5%以下にも関わらず、NiあるいはMoの添加によるベイナイトの析出により結晶粒粗大化温度は本発明鋼に及ばない。
結晶粒度特性の異なる本発明鋼および比較鋼において、靭性を調査するため、シャルピー試験片の粗加工(幅14mm、高さ12mm、長さ55mm、10RCノッチ付与)を行い、図5の(a)に示す条件にて浸炭焼入を行い、次いで図5の(b)に示す焼戻しを行った。図5の浸炭条件は通常行われる一般的な条件であり、比較鋼では結晶粒の粗大化が起こる温度である。その後、図6の(a)、(b)に示すようにシャルピー試験片の仕上加工を行い、シャルピー試験を実施した。なお、試験は室温で行なった。表3にシャルピー衝撃試験結果を示す。本発明鋼のシャルピー衝撃値は比較鋼よりも優れており、結晶粒度特性に優れた本開発鋼は優れた靭性を有している。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.05〜2.0%、Mn:0.10〜0.50%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:1.80〜3.00%、Al:0.005〜0.050%、Nb:0.02〜0.10%、N:0.0300%以下を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、冷間加工前の組織がフェライト・パーライト組織であり、そのフェライト粒径の平均値が15μm以上であることを特徴とする耐結晶粒粗大化特性および靱性に優れた浸炭部品用の機械構造用鋼。
  2. 請求項1に記載の化学成分において、質量%で、N:0.0300%以下に代えてN:0.010%未満とし、さらに、請求項1に記載の化学成分に加えて、質量%で、Ti:0.050%未満、B:0.0010〜0.0050%を含有し、残部不可避不純物からなり、冷間加工前の組織がフェライト・パーライト組織であり、そのフェライト粒径の平均値が15μm以上であることを特徴とする耐結晶粒粗大化特性および靱性に優れた浸炭部品用の機械構造用鋼。
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