JP2007002292A - 軟窒化用非調質鋼 - Google Patents

軟窒化用非調質鋼 Download PDF

Info

Publication number
JP2007002292A
JP2007002292A JP2005183243A JP2005183243A JP2007002292A JP 2007002292 A JP2007002292 A JP 2007002292A JP 2005183243 A JP2005183243 A JP 2005183243A JP 2005183243 A JP2005183243 A JP 2005183243A JP 2007002292 A JP2007002292 A JP 2007002292A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel
less
soft nitriding
fatigue strength
content
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2005183243A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4450217B2 (ja
Inventor
Makoto Egashira
誠 江頭
Koji Watari
宏二 渡里
Taizo Makino
泰三 牧野
Takeshi Yoshino
健 吉野
Hiroaki Taira
裕章 多比良
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP2005183243A priority Critical patent/JP4450217B2/ja
Publication of JP2007002292A publication Critical patent/JP2007002292A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4450217B2 publication Critical patent/JP4450217B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Abstract

【課題】調質処理を省略しても高い疲労強度と良好な曲げ矯正性を有し、軟窒化機械部品の素材として好適な軟窒化用非調質鋼の提供。
【解決手段】C:0.30〜0.50%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.2〜0.8%、P:0.005〜0.05%、S:0.005〜0.1%、V:0.2%を超えて0.3%以下及びN:0.005〜0.030%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のCrが0.10%未満の軟窒化用非調質鋼。(1)Ti:0.02%以下及びMo:0.5%以下のうちの1種以上、(2)Ca:0.05%以下及び(3)Al:0.04%以下の3グループの元素の1種以上を含有していてもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、軟窒化用非調質鋼に関し、詳しくは、調質処理(焼入れ−焼戻し処理)を行わずに軟窒化処理を施しても、高い疲労強度と優れた曲げ矯正性を有する自動車、産業機械及び建設機械用などのクランクシャフトやコネクティングロッドなど軟窒化機械部品の素材となる軟窒化用非調質鋼に関する。
従来、自動車、産業機械及び建設機械用などのクランクシャフトやコネクティングロッドなどは、熱間鍛造などの方法で素材鋼片を所望の形状に熱間加工した後、調質処理を行って組織を微細化し、その後、主として疲労強度を高める目的で軟窒化処理を施して製造されてきた。
しかしながら、コスト削減や省エネルギーの観点から調質処理を省略することが望まれており、近年その要求は特に強まっている。
一般に、調質処理を省略すると、結晶粒径の調節がなされないため、熱間加工中及び熱間加工後の冷却工程で発達した結晶組織がそのまま最終製品に引き継がれてしまう。例えば、通常のクランクシャフトは、素材を1250℃程度というオーステナイト単相領域に保持した後、数回の熱間鍛造によって仕上げられるが、一般に、その鍛造終了温度は1000℃を超えている。この場合、上記のオーステナイト単相領域での保持により、オーステナイト粒径は粗大化し、その結果、冷却中のフェライトへの変態の際にフェライト核生成サイトが減少し、このため、低温へ持ちきたされるオーステナイトが増える。そして、上記のオーステナイトが共析変態すればパーライトになるが、旧オーステナイト粒径が大きいため、フェライトに囲まれたパーライトコロニー群を「パーライト粒」とした場合のいわゆる「パーライト粒径」が大きくなってしまう。このため、軟窒化処理しても高い疲労強度を確保できないことが多い。
なお、軟窒化処理を施すと歪みが発生して部品の寸法精度が低下する。したがって、特にクランクシャフト、コネクティングロッド等の部品においては、軟窒化処理後に曲げ矯正が行われることが多いので、軟窒化用鋼には軟窒化処理後の曲げ矯正性が優れていることも要求される。しかしながら、調質処理を省略した場合の曲げ矯正性は著しく劣っている。
このため、調質処理を省略しても高い疲労強度と優れた曲げ矯正性を備えた軟窒化用非調質鋼に対する要望が大きい。
ここで、上記の「優れた曲げ矯正性」とは、大きな曲げ変位量まで部品の表面に亀裂が入らないか、或いは、亀裂長さが十分に短いことを指す。具体的には、後述する直径20mmの試験片を用いた曲げ矯正試験で、亀裂が入らないか、或いは、亀裂長さが0.1mm以下であることを指す。
なお、「軟窒化処理」は、一般に、500〜600℃の温度域でNとCを同時に侵入・拡散させて表面を硬化させる手法である。主に耐摩耗性を向上させることを目的とする「窒化処理」に対して、「軟窒化処理」は特に疲労強度を向上させる手法として秀でており、急速に普及している。
前記した要望に応えるべく、特許文献1〜3に、種々の軟窒化用非調質鋼が提案されている。また、特許文献4には、窒化用非調質鋼が提案されている。
具体的には、特許文献1に、重量%で、C:0.10〜0.30%、Cr:0.70〜1.50%、V:0.05〜0.20%など、特定の元素からなる鋼組成を有し、熱間加工後冷却して、熱処理なしで、芯部硬さがHv200〜300、組織がベイナイト又はフェライト分率が80%未満のフェライト+ベイナイトの混合組織である「軟窒化用鋼」が開示されている。
特許文献2には、重量%で、C:0.15〜0.40%、Cr:0.20〜2.00%、V:0.05〜0.20%など、特定の元素からなる鋼組成を有し、熱間加工後冷却して、熱処理なしで、芯部硬さがHv200〜300、組織がフェライト+パーライト又はベイナイト分率が20%未満のフェライト+パーライト(+ベイナイト)の混合組織を有し、それに軟窒化処理を施す「軟窒化用鋼」が開示されている。
特許文献3には、C、Si、Mn、Cr、Mo、酸可溶Al及びNなど特定元素の含有量を適正化した「軟窒化用非調質鋼」が開示されている。
特許文献4には、C:0.30〜0.50%、Cr:0.1〜1.5%、V:0.09〜0.25%、原子%比でMn/S:0.6〜1.4など、特定の元素からなる鋼組成を有し、熱間加工後の調質処理を省略し、微細MnSを主成分とする硫化物系介在物を5000個/mm2以上含有する「窒化用高強度非調質鋼」が開示されている。
特開平7−157842号公報 特開平8−176733号公報 特開2000−309846号公報 特開2005−113163号公報
前述の特許文献1で開示された技術によれば、Cr及びVの添加により疲労強度を向上させ、軟窒化特性に優れた軟窒化用鋼が提供できる。しかし、主に歯車を対象としており、曲げ矯正性の向上を課題としたものではない。
特許文献2で開示された技術によれば、上記特許文献1と同様にCr及びVの添加により疲労強度を向上させ、軟窒化特性に優れた軟窒化用鋼が提供できる。しかしながら、この特許文献2で提案された鋼も主に歯車を対象とした熱処理歪みの低減を図るものであり、曲げ矯正を前提としたものではない。
特許文献3で開示された技術によれば、軟窒化処理後に矯正を行うことができる優れた曲げ矯正性を有し、かつ、軟窒化処理によって優れた疲労強度を示す「軟窒化用非調質鋼」を提供することができるとはいうものの、Mnの含有量が1.5〜3.0%と高いので、曲げ矯正性に対する評価条件が厳しい場合には不適である。
特許文献4で開示された技術によれば、Mn/S比を規定し鋼中の微細硫化物系介在物量を制御することで矯正時の亀裂深さが抑制されるとしている。しかしながら、この特許文献4で提案された鋼は窒化用鋼であり、軟窒化処理や疲労強度の検討がなされたものではない。
そこで、本発明の目的は、調質処理を行わずに軟窒化処理を施しても、高い疲労強度と優れた曲げ矯正性を有する、具体的には、図1に示す形状の試験片を用いて小野式回転曲げ疲労試験をした場合の500MPa以上の疲労強度及び、直径20mmの試験片を用いた後述の曲げ矯正試験で、亀裂が入らないか、或いは、亀裂長さが0.1mm以下の曲げ矯正性を有する軟窒化用非調質鋼を提供することである。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、種々の軟窒化用鋼を作製して軟窒化後の疲労強度と曲げ矯正性を調査するとともに、ミクロ組織についても詳細に研究を行い、疲労強度と曲げ矯正性に及ぼす影響を調査した。その結果、下記(a)〜(i)の知見を得た。
(a)非調質鋼には結晶粒径を調節するための熱処理が施されないため、熱間加工中及び熱間加工後の冷却工程で発達した結晶組織がそのまま最終製品に引き継がれてしまうので、高い疲労強度を確保できない。したがって、非調質鋼に高い疲労強度を確保させるためには、熱間加工時のオーステナイト粒の粗大化を抑制することが重要である。
(b)熱間加工時のオーステナイト粒の粗大化を抑制するためには、粒成長を抑制するピン止め粒子の活用が効果的である。
(c)オーステナイト粒径を小さく保っておけば、フェライトやパーライトの発生サイトが多くなるので、オーステナイトからの変態が促進される。
(d)オーステナイト粒内に核生成サイトが存在すれば、パーライト粒が分断されるので、微細な組織が形成される。
(e)ピン止め粒子としては、酸化物、炭化物、窒化物及び炭窒化物(以下、炭化物、窒化物及び炭窒化物をまとめて「炭窒化物」という。)などが利用でき、また、オーステナイト粒内の核生成サイトとしても酸化物及び炭窒化物などが利用できる。しかしながら、ピン止め粒子及びオーステナイト粒内の核生成サイトとして作用するためには、保持温度でマトリックス(母相)へ固溶しないことが必要である。
(f)質量%で、0.2%を超えるVを含む場合には、1000℃という高温でもV炭窒化物が析出して有効なピン止め粒子として働く。このため、オーステナイト粒の粗大化が抑制されて高い疲労強度を確保することができる。
(g)V炭窒化物は微細かつBaker-Nuttingの関係から有能なフェライト核生成サイトとなることができる。したがって、質量%で、0.2%を超えるVを含有させれば、V炭窒化物がオーステナイト粒内に析出してフェライト核生成サイトとなり、微細なフェライト−パーライト組織を得ることができるため、これによっても高い疲労強度を確保することが可能である。
(h)Vを添加すれば析出強化作用が得られるので、これによっても高い疲労強度を確保することができる。
(i)フェライト地が過度に強化されて表層部の硬さが高すぎる場合に曲げ矯正性の劣化が生じる。
なお、Vは従来、窒化物形成能が高いため、Crなどとともに軟窒化時に表層部に微細窒化物を形成し、曲げ矯正性を害すると考えられてきた。そこで、質量%で、0.2%を超える量を含有させた場合に、組織の微細化及び析出強化に寄与して疲労強度を向上させるVが実際に曲げ矯正性に悪影響を及ぼすか否かについて、ミクロ組織及び硬さプロファイルの観点からの詳細検討を行った。その結果、下記(j)及び(k)の重要な知見を得た。
(j)Vは、フェライト地を過度に強化することなく、表層部の硬さを適度に高める作用を有する。このため、0.2%を超える量のVを含有させても、曲げ矯正性が低下することはない。
(k)調質処理を省略して所望の高い疲労強度と優れた曲げ矯正性を兼ね備えた軟窒化鋼を得るためには、0.2%を超える量のVを含有させて、
(1)V炭窒化物によるオーステナイト粒のピン止め、
(2)V炭窒化物を核とするオーステナイト粒内フェライトの生成による組織の微細化、
及び、
(3)フェライト地を過度に強化しない適度な強化、
を組み合わせることが有効である。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(4)に示す軟窒化用非調質鋼にある。
(1)質量%で、C:0.30〜0.50%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.2〜0.8%、P:0.005〜0.05%、S:0.005〜0.1%、V:0.2%を超えて0.3%以下及びN:0.005〜0.030%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のCrが0.10%未満であることを特徴とする軟窒化用非調質鋼。
(2)Feの一部に代えて、Ti:0.02%以下及びMo:0.5%以下のうちの1種以上を含有する上記(1)に記載の軟窒化用非調質鋼。
(3)Feの一部に代えて、Ca:0.05%以下を含有する上記(1)又は(2)に記載の軟窒化用非調質鋼。
(4)Feの一部に代えて、Al:0.04%以下を含有する上記(1)から(3)までのいずれかに記載の軟窒化用非調質鋼。
以下、上記 (1)〜(4)の軟窒化用非調質鋼に係る発明を、それぞれ、「本発明(1)」〜「本発明(4)」という。また、総称して「本発明」ということがある。
本発明の軟窒化用非調質鋼は、調質処理を行わずに軟窒化処理を施しても、高い疲労強度と優れた曲げ矯正性を有するので、自動車、産業機械及び建設機械用などのクランクシャフトやコネクティングロッドなど軟窒化機械部品の素材として用いることができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
C:0.30〜0.50%
Cは、V及びNと結合して微細なV炭窒化物を形成し、組織の微細化及び析出強化に寄与して疲労強度を向上させる作用を有する。また、Cはクランクシャフトやコネクティングロッドなど機械部品に耐摩耗性を付与するのに有効な元素である。これらの効果を得るには、0.30%以上のC含有量が必要である。しかしながら、Cを過剰に添加するとパーライト量が増加して曲げ矯正性が損なわれ、特に、Cの含有量が0.50%を超えると曲げ矯正性の劣化が著しくなる。したがって、Cの含有量を0.30〜0.50%とした。
Si:0.05〜0.5%
Siは、脱酸作用を有するとともにフェライト中に固溶して固溶強化作用を有する。しかしながら、その含有量が0.05%未満では添加効果に乏しい。一方、Siを過剰に添加すると曲げ矯正性が損なわれ、特に、Siの含有量が0.5%を超えると曲げ矯正性の劣化が著しくなる。したがって、本発明においては、フェライトの固溶強化に必要かつ十分な0.5%をその含有量の上限とした。
Mn:0.2〜0.8%
Mnは、固溶強化元素であり、母材硬さを高めて疲労強度を向上させる作用を有する。この効果を得るには、0.2%以上のMn含有量が必要である。しかしながら、Mnを過剰に添加すると曲げ矯正性が損なわれ、特に、Mnの含有量が0.8%を超えると曲げ矯正性の劣化が著しくなる。したがって、Mnの含有量を0.2〜0.8%とした。
P:0.005〜0.05%
Pは、強化元素として有効であるため0.005%以上含有させる。しかしながら、過剰のPは粒界に偏析して粒界の脆化割れを助長し、特に、その含有量が0.05%を超えると粒界の脆化割れが著しくなる。したがって、Pの含有量を0.005〜0.05%とした。
S:0.005〜0.1%
Sは、鋼の被削性の向上に有効な元素であり、この効果を得るためには0.005%以上含有させる必要がある。しかし、Sの含有量が多すぎると熱間加工性や疲労強度の低下を招き、特に、その含有量が0.1%を超えると熱間加工性及び疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.005〜0.1%とした。
V:0.2%を超えて0.3%以下
Vは、本発明において最も重要な元素である。すなわち、V炭窒化物の母材組織の微細化作用及び析出強化作用を通じて高い疲労強度を確保することができるが、そのためには、0.2%を超える量のVを含有させる必要がある。しかしながら、Vの過度の添加はコスト増大につながるため、0.3%をV含有量の上限とした。
N:0.005〜0.030%
Nは、V及びCと結合して微細なV炭窒化物を形成し、組織の微細化及び析出強化に寄与して疲労強度を向上させる作用を有する。また、Tiを添加した場合には、NはTi及びCと結合して微細なTi炭窒化物を形成し、このTi炭窒化物も結晶粒のピン止め作用及びオーステナイト粒内のフェライト生成核としての作用を有するため、疲労強度を高めるのに有効である。前記の効果を得るには、0.005%以上のN含有量が必要である。しかしながら、Nを含有量で0.030%を超えて添加するのは工業的な困難を伴う上、例えば、インゴット中で気泡欠陥を生成して材質を損なうことがある。このため、Nの含有量を0.005〜0.030%とした。なお、Nの含有量は0.015〜0.025%とすることが好ましい。
本発明においては、不純物中のCrの含有量を次のとおり規定する。
Cr:0.10%未満
0.2%を超えるVを含む本発明に係る軟窒化用非調質鋼の場合、Crは曲げ矯正性の低下を招き、特に、その含有量が0.10%以上になると、曲げ矯正性の低下が著しくなる。したがって、不純物中のCrの含有量を0.10%未満とした。
上記の理由から、本発明(1)に係る軟窒化用非調質鋼の化学組成は、上述した範囲のCからNまでの元素を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のCrが0.10%未満であることと規定した。
なお、本発明に係る軟窒化用非調質鋼には、必要に応じて、Feの一部に代えて、
(i)Ti:0.02%以下及びMo:0.5%以下のうちの1種以上、
(ii)Ca:0.05%以下、
(iii)Al:0.04%以下、
の各グループの元素の1種以上を選択的に含有させることができる。すなわち、前記(i)〜(iii)の3グループの元素の1種以上を、Feの一部に代えて、任意添加元素として添加し、含有させてもよい。
以下、上記の任意添加元素に関して説明する。
(i)Ti:0.02%以下及びMo:0.5%以下
Ti及びMoは添加すれば、いずれも、疲労強度を高める作用を有する。
すなわち、Tiは、N及びCと結合して微細なTi炭窒化物を形成し、このTi炭窒化物が結晶粒のピン止め作用及びオーステナイト粒内のフェライト生成核としての作用を有するため、疲労強度を高めることができる。一方、Tiの含有量が0.02%を超えると、Ti炭窒化物が粗大化して曲げ矯正性の低下をきたすし、TiはNとの親和力が大きいので、微細なV炭窒化物の形成が阻害されるため、V炭窒化物による組織の微細化及び析出強化作用が得られず疲労強度も低下する。したがって、添加する場合のTiの含有量を0.02%以下とした。なお、十分な疲労強度向上効果を得るためには、Tiの含有量は0.005%以上とすることが好ましい。
また、Moは、固溶強化元素としてフェライトの強度を上げ、これによって疲労強度を高めることができる。一方、Moの過度の添加はコストの増大につながるため、0.5%をMo含有量の上限とした。なお、十分な疲労強度向上効果を得るためには、Moの含有量は0.01%以上とすることが好ましい。
上記の理由から、本発明(2)に係る軟窒化用非調質鋼の化学組成を、本発明(1)に係る軟窒化用非調質鋼のFeの一部に代えて、Ti:0.02%以下及びMo:0.5%以下のうちの1種以上を含有するものと規定した。
なお、上記のTi及びMoはいずれか1種のみ、又は2種の複合で添加することができる。
(ii)Ca:0.05%以下
Caは、鋼の被削性を高める作用を有する。一方、Caの過度の添加は熱間加工性及び疲労強度の低下をきたし、特に、Caの含有量が0.05%を超えると熱間加工性及び疲労強度の低下が著しくなる。したがって、添加する場合のCaの含有量を0.05%以下とした。なお、十分な被削性向上効果を得るためには、Caの含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
上記の理由から、本発明(3)に係る軟窒化用非調質鋼の化学組成を、本発明(1)又は本発明(2)に係る軟窒化用非調質鋼のFeの一部に代えて、Ca:0.05%以下を含有するものと規定した。
(iii)Al:0.04%以下
Alは溶製時に脱酸剤として作用する。但し、0.2%を超えるVを含む本発明に係る軟窒化用非調質鋼の場合には、Alの含有量が0.04%を超えると曲げ矯正性の劣化が著しくなる。したがって、添加する場合のAlの含有量を0.04%以下とした。
上記の理由から、本発明(4)に係る軟窒化用非調質鋼の化学組成を、本発明(1)から本発明(3)までのいずれかに係る軟窒化用非調質鋼のFeの一部に代えて、Al:0.04%以下を含有するものと規定した。
ここで、不純物中のCu、Ni及びNbの含有量は、それぞれ、次の範囲で許容できる。
Cu:0.3%以下
Cuは、その含有量が0.3%を超えると、粒界偏析に起因した熱間加工割れをきたすおそれがある。したがって、Cuの含有量は0.3%以下とすることが好ましい。
Ni:0.3%以下
Niは、その含有量が0.3%を超えると被削性が低下する。したがって、Niの含有量は0.3%以下とすることが好ましい。
Nb:0.003%以下
Nbは、特に0.2%を超えるVを含有する本発明に係る軟窒化用非調質鋼の場合、0.003%を超えて含有すると曲げ矯正性を阻害する。したがって、Nbの含有量は0.003%以下とすることが好ましい。
自動車、産業機械及び建設機械用などのクランクシャフトやコネクティングロッドなど軟窒化機械部品は、本発明の軟窒化用非調質鋼からなる鋼塊、或いは、その鋼塊から作製した鋼片を所望の形状に熱間加工した後、これに調質処理を行うことなく軟窒化処理を施すことによって得ることができる。なお、上記所望の形状への熱間加工条件は特に規定する必要はない。但し、所望の形状に熱間加工する前の加熱温度を1100〜1250℃とし、熱間加工後の冷却は大気中で放冷することが好ましい。
また、軟窒化処理条件も特に規定する必要はなく、ガス軟窒化、塩浴軟窒化やプラズマ軟窒化などを適宜用いればよい。いずれの処理であっても、表面に厚さほぼ20μmの化合物層とその直下の拡散層を安定かつ均質に形成させることができる。例えば、ガス軟窒化の場合には、通常行われるように、RXガスとアンモニアガスを1:1に混合した温度が570℃の雰囲気中で3時間程度処理すればよい。なお、上記の「RXガス」は変性ガスの1種で、ガスの商標名である。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼1〜21を真空炉溶製して180kg鋼塊を作製した。
表1中の鋼1〜12は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼である。一方、鋼13〜21は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。なお、比較例の鋼のうち鋼21は従来の調質鋼である。
Figure 2007002292
このようにして得た鋼塊を、1200℃に加熱した後、鋼材の温度が1000℃を下回らないように熱間鍛造して直径60mmの丸棒とした。熱間鍛造後の冷却は大気中での放冷とした。
鋼1〜20の上記直径60mmの各丸棒のR/2部(Rは半径)から、図1に示す小野式回転曲げ疲労試験片、断面が10mm×10mmで長さが50mmの角柱状試験片及び直径20mmの曲げ矯正性試験片を採取した。次いで、上記の各試験片を、RXガスとアンモニアガスを1:1に混合した温度が570℃の雰囲気中で3時間保持して軟窒化処理し、その後100℃の油中に冷却した。なお、図1に示す形状の試験片と断面が10mm×10mmで長さが50mmの角柱状試験片は同時に軟窒化処理した。
一方、鋼21の場合は、上記直径60mmの丸棒に、調質処理として850℃に昇温した後の水焼入れ及び610℃で1時間の焼戻しを施して空冷した後、R/2部から、上記鋼1〜20と同様の試験片を採取した。次いで、上記の各試験片を、前記したRXガスとアンモニアガスを1:1に混合した温度が570℃の雰囲気中で3時間保持して軟窒化処理し、その後100℃の油中に冷却した。なお、図1に示す形状の試験片と断面が10mm×10mmで長さが50mmの角柱状試験片は同時に軟窒化処理した。
軟窒化処理した図1に示す形状の試験片を用いて、室温、大気中で小野式回転曲げ疲労試験を行い、疲労強度を測定した。
また、軟窒化処理した直径20mmの試験片を用いて、曲げ矯正性試験を行い、曲げ矯正性を調査した。なお、曲げ矯正性試験は、三点曲げの手法で試験片の中央部に歪みゲージを貼付し、歪みゲージの読みが15000μ(曲げ矯正歪み1.5%に相当)になるところまで負荷をかけた後、亀裂長さを測定した。
更に、軟窒化処理した断面が10mm×10mmで長さが50mmの角柱状試験片を用いて、断面を光学顕微鏡にて観察しミクロ組織を調査した。また、マイクロビッカース硬度計を用いてビッカース硬さ(Hv硬さ)を測定した。
表2に、各供試鋼について、疲労強度、曲げ矯正性の評価基準としての亀裂長さ、芯部(軟窒化されていない部分)のHv硬さ及び表層から30μm位置のHv硬さ(以下、「表層部のHv硬さ」という。)をまとめて示す。
Figure 2007002292
表2から、鋼1〜12の本発明に係る軟窒化用非調質鋼はいずれも、曲げ矯正試験した場合の亀裂長さは0.1mm以下で、良好な曲げ矯正性を有することが明らかである。また疲労強度は調質鋼である鋼21の500MPaを超えており、耐疲労特性にも優れていることが明らかである。
これに対して、本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼は、疲労強度と曲げ矯正性のいずれかが劣っている。
すなわち、鋼13は、曲げ矯正性はあるがVが含まれていないため疲労強度が400MPaと極めて低い。
鋼14は、Vが含まれているものの0.2%に満たないので疲労強度は460MPaしかない。
鋼15は、Mnの含有量が本発明で規定する上限値を超えるため、曲げ矯正性が劣る。このため、曲げ矯正中に破断を生じた。
鋼16は、Siの含有量が本発明で規定する上限値を超えるため、曲げ矯正性が劣っている。
鋼17は、Cの含有量が本発明で規定する上限値を超えるため、曲げ矯正性が劣っている。
鋼18は、Nの含有量が本発明で規定する下限値を下回るものである。このため疲労強度が劣っている。
鋼19は、Alの含有量が本発明で規定する上限値を超えるため、曲げ矯正性が劣っている。
鋼20は、Crの含有量が本発明で規定する上限値を超えるため、曲げ矯正性が劣っている。
本発明の軟窒化用非調質鋼は、調質処理を行わずに軟窒化処理を施しても、高い疲労強度と優れた曲げ矯正性を有するので、自動車、産業機械及び建設機械用などのクランクシャフトやコネクティングロッドなど軟窒化機械部品の素材として用いることができる。
実施例で用いた小野式回転曲げ疲労試験片の形状を示す図である。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.30〜0.50%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.2〜0.8%、P:0.005〜0.05%、S:0.005〜0.1%、V:0.2%を超えて0.3%以下及びN:0.005〜0.030%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のCrが0.10%未満であることを特徴とする軟窒化用非調質鋼。
  2. Feの一部に代えて、Ti:0.02%以下及びMo:0.5%以下のうちの1種以上を含有する請求項1に記載の軟窒化用非調質鋼。
  3. Feの一部に代えて、Ca:0.05%以下を含有する請求項1又は2に記載の軟窒化用非調質鋼。
  4. Feの一部に代えて、Al:0.04%以下を含有する請求項1から3までのいずれかに記載の軟窒化用非調質鋼。
JP2005183243A 2005-06-23 2005-06-23 軟窒化用非調質鋼 Active JP4450217B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005183243A JP4450217B2 (ja) 2005-06-23 2005-06-23 軟窒化用非調質鋼

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005183243A JP4450217B2 (ja) 2005-06-23 2005-06-23 軟窒化用非調質鋼

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007002292A true JP2007002292A (ja) 2007-01-11
JP4450217B2 JP4450217B2 (ja) 2010-04-14

Family

ID=37688164

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005183243A Active JP4450217B2 (ja) 2005-06-23 2005-06-23 軟窒化用非調質鋼

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4450217B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009167505A (ja) * 2008-01-21 2009-07-30 Sumitomo Metal Ind Ltd 調質型軟窒化クランク軸用粗形品および調質型軟窒化クランク軸
JP2010090457A (ja) * 2008-10-10 2010-04-22 Sumitomo Metal Ind Ltd 軟窒化用非調質鋼
EP2264204A4 (en) * 2008-03-31 2016-06-08 Honda Motor Co Ltd MATERIAL FOR CRANKSHAFT NITRURED BY NITRURATION DOUCE AND METHOD FOR MANUFACTURING THE SAME

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009167505A (ja) * 2008-01-21 2009-07-30 Sumitomo Metal Ind Ltd 調質型軟窒化クランク軸用粗形品および調質型軟窒化クランク軸
EP2264204A4 (en) * 2008-03-31 2016-06-08 Honda Motor Co Ltd MATERIAL FOR CRANKSHAFT NITRURED BY NITRURATION DOUCE AND METHOD FOR MANUFACTURING THE SAME
JP2010090457A (ja) * 2008-10-10 2010-04-22 Sumitomo Metal Ind Ltd 軟窒化用非調質鋼

Also Published As

Publication number Publication date
JP4450217B2 (ja) 2010-04-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5927868B2 (ja) 冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼およびその製造方法
JP2007162128A (ja) 鍛造性と結晶粒粗大化防止特性に優れた肌焼鋼およびその製造方法並びに浸炭部品
JP4464862B2 (ja) 耐結晶粒粗大化特性と冷間加工性に優れた軟化焼鈍の省略可能な肌焼用鋼
JP4609585B2 (ja) 軟窒化用鋼、軟窒化用鋼材およびクランクシャフト
JP4448047B2 (ja) 耐結晶粒粗大化特性と冷間加工性に優れ、軟化焼鈍の省略可能な肌焼用鋼
JP4502126B2 (ja) 機械構造用鋼
JP2006161144A (ja) 高温浸炭特性と熱間鍛造性に優れた浸炭用圧延鋼材
JP5200552B2 (ja) 調質型軟窒化クランク軸用粗形品および調質型軟窒化クランク軸
JP2017133052A (ja) 浸炭時の粗大粒防止特性と疲労特性と被削性に優れた肌焼鋼およびその製造方法
JP2004027334A (ja) 高周波焼もどし用鋼およびその製造方法
JP4464861B2 (ja) 耐結晶粒粗大化特性と冷間加工性に優れた肌焼用鋼
JP5153221B2 (ja) 軟窒化非焼準機械部品の製造方法
JP4450217B2 (ja) 軟窒化用非調質鋼
JP4488228B2 (ja) 高周波焼入れ用鋼材
JP4752800B2 (ja) 非調質鋼材
JP3978111B2 (ja) 捻り疲労特性に優れた浸炭用鋼
JP6390685B2 (ja) 非調質鋼およびその製造方法
JP5131770B2 (ja) 軟窒化用非調質鋼
JP2008223083A (ja) クランクシャフト及びその製造方法
JP2004183065A (ja) 高強度高周波焼き入れ用鋼材及びその製造方法
JP4175276B2 (ja) 高周波焼入れ用鋼材及びこれを用いたクランク軸
JP2004124190A (ja) ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼
JP2006265703A (ja) 耐結晶粒粗大化特性と冷間加工性に優れた肌焼用鋼およびその製法
JP6551225B2 (ja) 高周波焼入れ歯車
JP2004300550A (ja) 高強度肌焼鋼

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20070620

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090723

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090805

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091002

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100106

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4450217

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100119

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130205

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130205

Year of fee payment: 3

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130205

Year of fee payment: 3

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140205

Year of fee payment: 4

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350