JP2013038944A - モータ - Google Patents

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Abstract

【課題】装置全体の小型化を図る。
【解決手段】モータは、ロータ部および電機子部を具備する基本ユニットを回転軸に沿って少なくとも2組以上設置し、隣接する基本ユニットがロータ部または電機子部の何れか一方において回転方向にある値の相対角だけ相対的にずらして連結されている。ロータ部は、回転軸を中心とした円盤の形状であり永久磁石を備えている。電機子部は、ロータ部の複数の面にそれぞれ対向配置された第一から第三磁極部を有する3極構成の電機子鉄心、および第一および第二環状コイルを備えている。第一磁極部と第二磁極部とがロータ部に対向配置して形成される全体として環状の中空域に第一環状コイルを配設し、かつ第一磁極部と第三磁極部とがロータ部に対向配置して形成される全体として環状の中空域に第二環状コイルを配設し、第一環状コイルと第二環状コイルには互いに逆向きの電流を印加する。
【選択図】図5

Description

この発明の実施形態は、電磁型モータに係り、特に、回転軸方向に沿って磁路を形成してなる横方向磁束型回転電動機(トランスバーサル・フラックス・モータ)に関する。
省エネやCO削減等の理由から、電磁モータには更なる高性能化が求められ、小型軽量化、高効率化、高トルク化、高出力化などに代表されるこれらの性能が日々飛躍的に向上している。電磁モータを磁束の方向で大別すると、(1)ラジアル・フラックス・モータ、(2)アキシャル・フラックス・モータ、(3)トランスバーサル・フラックス・モータに分類できる。この中で、ラジアル・フラックス・モータは特にコストパフォーマンスに優れ、汎用型アクチュエータの代表的な機械要素として産業界の様々な製品に従来から幅広く使用されている。また、アキシャル・フラックス・モータは、3次元方向の複雑な磁路構成に対応できる反面、従来から広く使用されている積層鋼鈑の使用が難しいと言った構造的特徴を有し、特に中型・大型用の薄型大口径モータ分野に適用されている。
さらに、トランスバーサル・フラックス・モータは、永久磁石を備えたロータと、このロータの回転軸を中心に形成された環状コイルおよび回転軸回りの円周上でかつ環状コイルを取り囲む様に複数個設けられた概ねU字形状の固定子鉄心(以下、U字固定子鉄心)からなる電機子(分割型トロイダルコアを構成)を基本ユニットとして、この基本ユニットを回転軸上に2段以上でかつ回転軸回りに所定の相対位相角を持って多段化して成る構成を特徴としており、多極化による高トルク化と分割型トロイダルコア構造による高効率磁場発生を比較的容易に実現できる。つまり、回転軸回りの円周上に複数のスロットを備えた固定子鉄心とこのスロット部に巻かれたコイルおよびコイル組立挿入等のためのデットスペースが必要なラジアル・フラックス・モータやアキシャル・フラックス・モータに比べ、トランスバーサル・フラックス・モータは、回転軸回りの円周上に複数のU字固定子鉄心を設けるだけで良いので、一般的に多極化が容易である。また、環状コイルとU字固定子鉄心(分割型トロイダルコア)からなる電機子は、コイルで発生する磁束が外部に漏れ難い構造であるため、コイルによる磁場発生効率が高く、コイルエンドを有するラジアル・フラックス・モータやアキシャル・フラックス・モータに比べて、小型化が期待できる。
従来モータとしては、例えば特許文献1がある。
特許第4085059号公報
しかしながら、従来のトランスバーサル・フラックス・モータにあっては、U字固定子鉄心を用い、このU字固定子鉄心における2つの磁極部が回転軸方向に沿って配置された構成を基本形態として、このU字固定子鉄心からなる電機子に対応した適切な位置のロータ部には、トルク発生のための少なくとも2組の永久磁石が回転軸方向に沿って更に設けられており、この結果、ロータの軸長は長く、基本ユニットの小型化を妨げている。
また、磁気的な干渉を防止する観点から、多段化した際の隣接する基本ユニットは所定の磁気空隙を持って配設する必要があり、その結果として更なるモータの大型化を招いている。
回転機械としてのロータの長軸化は、ロータ慣性の増加による高速度応答性の低下ならびにロータの機械振動特性に起因した回転安定性の劣化の観点から、性能面で必ずしも満足するものではない。さらに、モータ装置は大きく、高価なものとなっている。
そこで、発明が解決しようとする課題は、上記に鑑みてなされたものであって、従来型モータの課題を解決し、ロータの軸長が短く、基本ユニットの小型化が容易に達成でき、基本ユニットの多段化において磁気干渉防止のための磁気空隙が不要な構造であって、装置全体の小型化を図るモータを提供することにある。
実施形態によれば、モータは、ロータ部および電機子部を具備する基本ユニットを前記回転軸に沿って少なくとも2組以上設置し、隣接する基本ユニットがロータ部または電機子部の何れか一方において回転方向にある値の相対角だけ相対的にずらして連結されている。ロータ部は、回転軸に沿って回転自在に支持され、該回転軸を中心とした円盤の形状であり永久磁石を備えている。電機子部は、前記ロータ部との間にある空隙を有して前記ロータ部の複数の面にそれぞれ対向配置された第一から第三磁極部を有する3極構成の電機子鉄心、および前記回転軸を中心に形成された第一および第二環状コイルを備えている。電機子鉄心は前記回転軸回りの前記ロータ部の円周上に複数個配置されていると共に、前記第一磁極部と前記第二磁極部とが前記ロータ部に対向配置して形成される全体として環状の中空域に前記第一環状コイルを配設し、かつ前記第一磁極部と前記第三磁極部とが前記ロータ部に対向配置して形成される全体として環状の中空域に前記第二環状コイルを配設し、前記第一環状コイルと前記第二環状コイルには互いに逆向きの電流を印加する。
本実施形態のモータの基本ユニットを示す斜視図。 (a)は図1のロータ部を示す斜視図であり、(b)は図1の電機子部を示す斜視図であり、(c)は図1の電機子鉄心を示す斜視図であり、(d)は図1の第一および第二環状コイル示す斜視図。 (a)は回転軸zを通る基本ユニットの縦断面を含んだ斜視図であり、(b)は図3(a)のAの部分断面図であり第一環状コイルが作る磁束M1,M2を説明するための図であり、(c)は図3(a)のAの部分断面図であり第二環状コイルが作る磁束M3,M4を説明するための図であり、(d)は図3(a)のAの部分断面図であり第一および第二環状コイルが作る磁束M1,M3を説明するための図。 (a)は永久磁石11が作る磁束の磁路構成を示し回転軸zに垂直な面の断面図(左半分のみ図示)であり、(b)は図3(a)のAの部分断面図であり永久磁石11が作る磁束M5,M51,M52,M53を含む磁束を示す図。 本実施形態によるモータ20を示す斜視図。 (a)は図5のロータ部の斜視図であり、(b)は図5の電機子部を示す斜視図であり、(c)は図6(b)の電機子鉄心群24の斜視図。 (a)はケーシングを含むモータの斜視図であり、(b)は回転軸zを通るモータの縦断面を含んだ斜視図。 図7(b)の断面図における部分拡大図であり、永久磁石が作る磁束と第一および第二環状コイルが作る磁束の磁路構成を示す図。 本実施形態のモータ20の動作を説明するための図で、コイル全磁束の時刻暦を示す図。 (a)は図9の時刻t1における上段の基本ユニット(1段目)で発生されるトルクの様子を示す図であり、(b)は図9の時刻t1における下段の基本ユニット(2段目)で発生されるトルクの様子を示す図。 (a)は図9の時刻t2における上段の基本ユニット(1段目)で発生されるトルクの様子を示す図であり、(b)は図9の時刻t2における下段の基本ユニット(2段目)で発生されるトルクの様子を示す図。 本実施形態のモータ40を示す斜視図。 (a)は図12のロータ部を示す斜視図であり、(b)は図12の電機子部を示す斜視図。 本実施形態のモータ40の動作を説明するための図で、コイル全磁束の時刻暦を示す図。 (a)は図14の時刻t3における上段の基本ユニット(1段目)で発生されるトルクの様子を示す図であり、(b)は図14の時刻t3における中段の基本ユニット(2段目)で発生されるトルクの様子を示す図であり、(c)は図14の時刻t3における下段の基本ユニット(3段目)で発生されるトルクの様子を示す図。 モータ40を更に変形してなるモータ40Aの動作を説明するための図で、コイル全磁束の時刻暦を示す図。 (a)は図16の時刻t3における上段の基本ユニット(1段目)で発生されるトルクの様子を示す図であり、(b)は図16の時刻t3における中段の基本ユニット(2段目)で発生されるトルクの様子を示す図であり、(c)は図16の時刻t3における下段の基本ユニット(3段目)で発生されるトルクの様子を示す図。 基本ユニット1を更に変形してなる基本ユニット1Aを説明するための図。
以下、図面を参照しながら実施形態に係るモータについて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
本実施形態におけるモータの基本ユニット1について、図1から図4までを参照して説明する。
図1は、本実施形態によるモータの基本ユニット1の構成を示す斜視図である。基本ユニット1は、ロータ部2、および電機子部3を含み、電機子部3は、電機子鉄心4、第一環状コイル5、および第二環状コイル6を含んでいる。
図2は図1の基本ユニット1の構成要素を個々に示す斜視図である。また、図2(a)はロータ部2を示し、図2(b)は電機子部3を示し、図2(c)は電機子鉄心4を示し、図2(d)は第一および第二環状コイル5,6のそれぞれを示す。
ロータ部2は、回転軸zに沿って図示しない軸受により回転自在に支持されている。ロータ部2は円盤の形状であり永久磁石を備えている。電機子部3は、このロータ部2を全体として取り囲むように配置されている。
電機子鉄心4は、ロータ部2に所定の空隙を持って対向配置され、図1および図2では12個配置されている。
第一および第二環状コイル5,6は、図1、図2(b)、図2(d)に示されるように、回転軸zを中心に形成されたコイルである。
ロータ部2は、図2(a)に示されるように、回転軸zまわりの円周上に12個のロータ鉄心部10(12個の歯車形状を構成している)と12個の永久磁石11が30degの回転方向ピッチにて交互に配設されていると共に、回転軸zを中心にした環状のロータ鉄心部12を備えている。なお、ロータ鉄心部10とロータ鉄心部12は機械的および磁気的に一体化した構成で形成されている。またロータ鉄心部10とロータ鉄心部12は、機械的に分割されていて磁気的に連結されていてもよい。電機子鉄心4とロータ鉄心部10およびロータ鉄心部12は、強磁性体からなり、永久磁石11が作る磁束と第一および第二環状コイル5,6が作る磁束で形成される磁路を構成する役割を持っている。これらの鉄心部は、モータ回転時の鉄損を低減する目的からは、圧粉鉄心を用いることがさらに望ましい。圧粉鉄心の場合には、これらの鉄心部は一体形成でよい。また、12個のロータ鉄心部10と12個の永久磁石11で30degの回転方向ピッチを構成したが、これに限定する必要はなく、ロータ鉄心部10と永久磁石11の個数や回転方向ピッチは設計パラメータであり、所望の装置仕様から決定されるものである。
電機子鉄心4は、図2(c)に示すような形状である。第一磁極部4aは、ロータ部2の外周側面に対して所定の空隙を持って対向配置されている。第二磁極部4bは、回転軸zに垂直なロータ部2の上面に対して所定の空隙を持って対向配置されている。第三磁極部4cは、回転軸zに垂直なロータ部2の下面に対して所定の空隙を持って対向配置されている。第一環状コイル5は、第一磁極部4aと第二磁極部4bとがロータ部2に対向配置して形成される全体として環状の中空域7に配設されて、第二環状コイル6は、第一磁極部4aと第三磁極部4cがロータ部2に対向配置して形成される全体として環状の中空域8に配設される。
次に、基本ユニット1における第一および第二環状コイル5,6が作る磁束の磁路について図3(a)から図3(d)を参照して説明する。
図3に基本ユニット1における第一および第二環状コイル5,6が作る磁束の磁路構成を示す。図3(a)は回転軸zを通る基本ユニット1の縦断面を含んだ斜視図、図3(b)〜(d)は、図3(a)に示す記号A部の部分断面図である。図3(b)は第一環状コイル5が作る磁束M1,M2を説明するための図であり、図3(c)は第二環状コイル6が作る磁束M3,M4を説明するための図であり、図3(d)は第一および第二環状コイル5,6が作る磁束M1,M3を説明するための図である。ここで、第一環状コイル5と第二環状コイル6には互いに逆向きの電流が印加されている。
第一環状コイル5に電流が印加されると、電機子鉄心4の第一磁極部4aから第二磁極部4bを通り、ロータ部2の上面における所定の空隙を経てロータ鉄心部10に入り、かつロータ部2の外周面における所定の空隙を経て第一磁極部4aに戻る閉ループ磁束M1が形成される。また、電機子鉄心4の第二磁極部4bからロータ部2の上面における所定の空隙を経てロータ鉄心部10に入り、かつロータ部2の下面における所定の空隙を経て第三磁極部4cを介して第二磁極部4bに戻る閉ループ磁束M2が形成される。同様に、第二環状コイル6に電流が印加されると、電機子鉄心4の第一磁極部4aから第三磁極部4cを通って構成される閉ループ磁束M3が形成されると共に、第三磁極部4cから第二磁極部4bを通って構成される閉ループ磁束M4が形成される。
これにより、閉ループ磁束M2とM4は互いに逆向きの磁束なので打ち消し合うため、図3(d)に示すように、理想的な条件では閉ループ磁束M1とM3のみが残ることになる。この結果、ロータ部2の外周面と第一磁極部4aとの空隙部の磁束は、第二磁極部4bおよび第三磁極部4cにおける空隙部の磁束に比べて大きくなる。
次に、モータの基本ユニット1における永久磁石11が作る磁束の磁路について図4を参照して説明する。
図4にモータの基本ユニット1における永久磁石11が作る磁束の磁路構成を示す。図4(a)は回転軸zに垂直な面の断面図(左半分のみ図示)であり、永久磁石11が作る磁束M5,M53を説明するための図である。図4(b)は、図3(a)に示す記号A部の部分断面図であり、永久磁石11が作る磁束M5,M51,M52,M53を含む磁束を示す図である。
永久磁石11はラジアル方向(動径方向、半径方向と同義)に沿って放射状に着磁され、ロータ部2の外周面となる一端面をS極に、回転軸zに向かう方向の他端面をN極に形成されている。そして、N極からロータ鉄心部12を経てロータ鉄心部10を通り、ロータ部2の外周面における空隙部を介して第一磁極部4aに入り、電機子鉄心4の回転軸z回りの周方向側面から空間部を介して永久磁石11のS極を経てN極に戻る閉ループ磁束M5を形成している。この閉ループ磁束M5は、12個の永久磁石11のそれぞれにおいて形成され、環状のロータ鉄心部12で回転軸z回りの周方向の図4(a)に示す時計回りと反時計回りに分かれて、回転軸z回りの周方向で隣り合うロータ鉄心部10にそれぞれ形成される。このように、回転軸回りの円周上に複数のロータ鉄心部10と複数の永久磁石11が所定の回転方向ピッチにて交互に配設されていると共に、永久磁石11の着磁方向がロータ部2内においてラジアル方向で全て正方向に着磁されているか、または全て負方向に着磁されているかの何れかの構成としているので、複数異なる着磁方向を有した従来型モータの回転部に比べて、着磁作業が容易でかつ着磁性能の劣化を最小化できる。これにより、モータの駆動性能の劣化を抑え、製作費を含めた低コスト化の実現が期待できる。
さらに、永久磁石11は、ロータ磁極部10から所定の空隙を経て第二磁極部4bに入る磁束M51と、所定の空隙を経て第三磁極部4cに入る磁束M52を有し、これら磁束M51,M52はさらに第一磁極部4a近傍の電機子鉄心4で合流して磁束M53を形成する。そして、磁束M53は、磁束M5同様に電機子鉄心4の回転軸z回りの周方向側面から空間部を介して永久磁石11のS極を経てN極に戻る閉ループ磁束を形成している。この時、永久磁石11の磁束M51と、第一環状コイル5の磁束M1は互いに逆向きの磁束なので打ち消し合うため、理想的な条件では第二磁極部4bの磁束はゼロ若しくは非常に小さい値に定めることができ、この結果、第二磁極部4bの磁路を形成する鉄心面積を小さくので、電機子鉄心4の小型軽量化が図れる。
同様に、永久磁石11の磁束M52と、第二環状コイル6の磁束M3は互いに逆向きの磁束なので打ち消し合うため、理想的な条件では第三磁極部4cの磁束はゼロ若しくは非常に小さい値に定めることができ、この結果、第三磁極部4cの磁路を形成する鉄心面積を小さくできるので、電機子鉄心4の小型軽量化が図れる。
ロータ部の外周面に第一磁極部を、回転軸に垂直なロータ部の上下面に第二および第三磁極部を対向して配置した電機子鉄心からなる基本ユニットを用いた構成としているので、回転部の回転軸方向長さを更に短くでき、上述した回転機械としての作用と効果を更に高めることができる。
次に、本実施形態における基本ユニット1を用いて構成したモータ20について、図5から図11を参照して説明する。
図5は本実施形態によるモータ20の構成を示す斜視図で、図6は図5のモータ20の構成要素を個々に示す斜視図である。また、図6(a)はロータ部22の斜視図であり、図6(b)は電機子部23の斜視図であり、図6(c)は電機子鉄心群24の斜視図である。モータ20は、図1から図4に示した基本ユニット1を基に構成しているので、既に説明した細部の内容については割愛する。
このモータ20は、ロータ部22と電機子部23から構成されている。ロータ部22は、基本ユニット1のロータ部2が回転軸z方向に所定の間隔を経て2組固定された2段構成となっており、2組のロータ部2は回転方向に相対的なズレ角P1を持って共通のロータシャフト25に固定されている。ここで、相対角P1は、12個のロータ鉄心部10と12個の永久磁石11から定まる30degの回転方向ピッチから算出でき、7.5degとなる。また、電機子鉄心群24は、基本ユニット1の電機子鉄心4が回転軸z方向に所定の間隔を経て機能的に2組配置された2段構成となっており、上段の電機子鉄心4の第三磁極部4cを形成する磁路の一部が回転軸方向に隣接する下段の電機子鉄心4の第二磁極部4bを形成する磁路の一部と機械的にかつ磁気的に連結された共通磁気回路部24aを備えている。
基本ユニットを回転軸上に少なくとも2組以上配置した多段化構造による構成としているので、例えば、2段構成では永久磁石を備えた分割型2枚ディスク構造のロータ部を2段設置すればよく、回転軸方向に計4枚のディスク構造の回転子が必要となるU字電機子鉄心を用いた構成の従来型モータに比べて、ロータ部全体の軸方向長さを短くできる。これにより、ロータ部の慣性の増加による高速度応答性の低下ならびにロータ部の機械振動特性に起因した回転安定性の劣化に係る従来型モータの課題を改善でき、モータ駆動特性の向上と共に、モータ装置の小型軽量化ならびに低コスト化が期待できる。また、3段以上に段数を増加して高トルク化、高出力化を図った設計によれば、多段化した分だけのロータ部の軸長差がモータ駆動性能および小型軽量化、低コスト化の差として現れ、従来型モータとの大きな差異化技術となり得る。
図7(a)はケーシング26を含むモータ20の斜視図で、図7(b)は回転軸zを通るモータ20の縦断面を含んだ斜視図である。電機子部23はケーシング26内に配置され、軸受27によってロータ部22が回転軸z回りに回転自在に支持されている。図8は、図7(b)の断面図における部分拡大図で、永久磁石11が作る磁束と第一および第二環状コイルが作る磁束の磁路構成を示したものである。永久磁石11が作る磁束については図3で既に説明の通りで、第一および第二環状コイル5,6が作る磁束についても図4で既に説明の通りであるので、異なる部分についてのみを以下で説明する。
電機子鉄心群24の共通磁気回路部24aでは、上段の基本ユニットにおける磁束M3と下段の基本ユニットにおける磁束M1が同一方向で強め合う構成となるが、同時に、上段の基本ユニットにおける磁束M52と下段の基本ユニットにおける磁束M51が同一方向で強め合う構成となり、M3とM1およびM52とM51は互いに逆向きの磁束なので打ち消し合うため、理想的な条件では共通磁気回路部24aの磁束はゼロ若しくは非常に小さい値に定めることができ、この結果、共通磁気回路部24aの磁路を形成する鉄心面積を小さくできるので、ロータ部全体の軸方向長さを短くできる。これにより、多段化構成におけるロータ部の軸長の増加を最小限に抑え、ロータ部の慣性の増加による高速度応答性の低下ならびにロータ部の機械振動特性に起因した回転安定性の劣化などに係る課題を改善し、モータ駆動特性の向上とモータ装置の小型軽量化ならびに低コスト化の実現が期待できる。多段化数が大きいほど共通磁気回路部による効果は大きくなる。
次に、本実施形態によるモータ20の動作について図9から図11までを参照して説明する。
図9の上段は、基本ユニット(1段目)の第一および第二環状コイル5,6の交流電流印加によって発生するコイル全磁束φ21と、図9の下段は、基本ユニット(2段目)の第一および第二環状コイル5,6の交流電流印加によって発生するコイル全磁束φ22の時刻暦である。上記2つの交流電流は電気角で90degの相対位相角を有している。磁束φ21とφ22が正の値である時、各基本ユニット1の第一磁極部4aにはN極が形成される。また、磁束φ21とφ22が負の値である時、各基本ユニット1の第一磁極部4aにはS極が形成される。図10に図9の時刻t1における上段の基本ユニット(1段目)および下段の基本ユニット(2段目)で発生されるトルクの様子を示す。同様に、図11に図9の時刻t2における上段の基本ユニット(1段目)および下段の基本ユニット(2段目)で発生されるトルクの様子を示す。
ここで、ロータ部2の外周部には、ロータ鉄心部10にN極が、永久磁石11にS極が形成されており、これらロータ部2におけるロータ鉄心部10のN極と、永久磁石11のS極が、交流電流に伴って時間的に変化する第一磁極部4aの極性との磁気的な関係(作用)によって、吸引力に伴うトルクまたは反発力に伴うトルクをロータ部2に付与することになる。つまり、図10(a)に示す時刻t1における上段の基本ユニット(1段目)の場合、第一磁極部4aにはN極が形成されており、ロータ鉄心部10のN極との間に反発力が作用し、永久磁石11のS極との間に吸引力が作用し、ロータ部2にトルクを付与することができる。同時刻t1における下段の基本ユニット(2段目)では、図10(b)に示す通り、第一磁極部4aに極性が形成されないので、ロータ部2にトルクは発生しない。また、図11に示す時刻t2における上段および下段の基本ユニットの場合は、図10の場合と逆の作用により、上段の基本ユニット(1段目)にはトルクが発生しないが、下段の基本ユニット(2段目)にはトルクが発生される。この様に、上段の基本ユニット(1段目)と下段の基本ユニット(2段目)には交互にトルクが発生されるので、モータとして連続的な回転運動を実現できる。
さらに、本実施形態における基本ユニット1を用いた他の構成によるモータ40について、図12から図15を参照して説明する。
図12は本実施形態によるモータ40の構成を示す斜視図で、図13は図12のモータ40の構成要素を個々に示す斜視図である。図13(a)はロータ部42の斜視図である。図13(b)は電機子部43のそれぞれの斜視図である。モータ40は、図1から図4に示した基本ユニット1を基に構成し、図5から図11に示した基本ユニット1の2段構成からなるモータ20と多段化のための基本概念は同じであるので、既に説明した細部の内容については割愛する。
このモータ40は、ロータ部42と電機子部43から構成されている。ロータ部42は、基本ユニット1のロータ部2が回転軸z方向に所定の間隔を経て3組固定された3段構成となっており、3組のロータ部2は回転方向に相対的なズレ角P2とP3を持って共通のロータシャフト45に固定されている。ここで、相対角P2とP3は、12個のロータ鉄心部10と12個の永久磁石11から定まる30degの回転方向ピッチから算出でき、P2とP3はそれぞれ10degとなる。また、電機子鉄心群44は、基本ユニット1の電機子鉄心4が回転軸z方向に所定の間隔を経て機能的に3組配置された3段構成となっており、上段と中段および下段の電機子鉄心4が回転軸方向に隣接する電機子鉄心4と機械的にかつ磁気的に連結された共通磁気回路部を2箇所備えている。このモータ40は、モータ20の作用と効果は基本的に等しく、3段に段数を増加している分、2段構成のモータ20に比べて高トルク化、高出力化が期待できる。
また、2組以上のロータ部が隣り合うロータ部と回転方向に所定の相対的なズレ角を持ってロータシャフトに固定され、一体的に回動すると共に、電機子部が隣り合う電機子部と回転方向に相対的なズレ角のない位置関係にて全ての電機子部を一体的に固定してなるステータの構成としているので、ケーシングの製作加工が容易であり、かつケーシングと複数の電機子部または電機子鉄心群の組立作業も容易となる。特に、電機子鉄心群においては、複数の電機子部を機械的に一体化した構成であるので、組立作業の容易性と共に組立精度の向上が期待でき、この結果、モータ駆動特性の向上、例えば、回転時振動の抑制などが容易に実現できる。
さらに、第1共通磁気回路部および第2共通磁気回路部を備え、第1共通磁気回路部を備えた電機子鉄心群、または、第2共通磁気回路部を備えた電機子鉄心群、あるいは、第1共通磁気回路部と第2共通磁気回路部の両方を備えた電機子鉄心群を備えるとしているので、多段化構造における電機子鉄心の回転軸方向長さを短くでき、上述した回転機械としての作用と効果を得ることができる。
次に、本実施形態によるモータ40の動作について図14および図15を参照して説明する。
図14は、上段の基本ユニット(1段目)の第一および第二環状コイル5,6の交流電流印加によって発生するコイル全磁束φ31と、中段の基本ユニット(2段目)におけるコイル全磁束φ32と、下段の基本ユニット(3段目)におけるコイル全磁束φ33の時刻暦である。上記3つの交流電流は電気角で120degの相対位相角を有した3相駆動構成となっている。磁束φ31,φ32,φ33が正の値である時、各基本ユニット1の第一磁極部4aにはN極が形成される。また、磁束φ31,φ32,φ33が負の値である時、各基本ユニット1の第一磁極部4aにはS極が形成される。
図15に図14の時刻t3における上段(1段目)と中段(2段目)および下段(3段目)の各基本ユニットで発生されるトルクの様子を示す。図15(a)に示す時刻t3における上段の基本ユニット(1段目)の場合、第一磁極部4aには極性が形成されずトルクの発生はない。図15(b)に示す時刻t3における中段の基本ユニット(2段目)の場合、第一磁極部4aにはN極が形成されており、ロータ鉄心部10のN極との間に反発力が作用し、永久磁石11のS極との間に吸引力が作用し、ロータ部2にトルクを付与することができる。同時刻t3における下段の基本ユニット(3段目)では、図15(c)に示す通りで、第一磁極部4aにはS極が形成されており、ロータ部2にトルクを付与することができる。この様に、モータ40における時刻t3においては、中段(2段目)と下段(3段目)の各基本ユニットでトルクが発生されるので、モータ20に比べて高トルク化を実現できることがわかる。また、2段構成の基本ユニットが交互にトルクを発生するモータ20に比べて、3段構成のモータ40によれば、モータ回転動作中のトルク変動が低減されるので、より安定した回転動作の実現が期待できる。ロータ部における永久磁石の着磁方向が回転軸方向で隣り合うロータ部における永久磁石の着磁方向と同一方向であるので、回転軸方向で隣り合うロータ部同士の組立時における永久磁石の磁気吸引力を小さく抑えることができる。この結果、組立作業の安全性の確保が図られると共に、作業効率の低下防止が期待できる。
次に、本実施形態のモータ40を更に変形してなるモータ40Aを図16および図17を参照して説明する。図16は中段の基本ユニット(2段目)の第一および第二環状コイル5,6の交流電流印加によって発生するコイル全磁束φ32aがモータ40の磁束φ32と極性が異なっており、これに合わせて、ロータ部2の外周部には、ロータ鉄心部10にS極が、永久磁石11にN極が形成されている。駆動原理などの動作概念はモータ40と全く同じである。このモータ40Aの構成によれば、回転軸z方向で隣り合う基本ユニットの磁束の流れが相対的に逆方向に構成されている(換言すれば、ロータ部における永久磁石の着磁方向が回転軸方向で隣り合うロータ部における永久磁石の着磁方向と相対的に逆方向である)ので、回転軸z方向で隣り合う電機子鉄心4の磁束が互いに打ち消す方向に作用する。この結果、電機子鉄心4の磁束飽和、つまり、共通磁気回路部の磁束飽和が緩和され、図15の場合よりもモータ装置全体としてより一層の小型軽量化の実現に寄与できる。
次に、本実施形態の基本ユニット1を更に変形してなる基本ユニット1Aについて図18を参照して説明する。電機子鉄心4Aとロータ鉄心部10Aおよびロータ鉄心部12Aは積層鋼鈑からなり、基本ユニット1Aはロータ部2Aと電機子部3Aから構成されている。より詳しくは、以下の通りである。電機子鉄心4Aとロータ鉄心部10Aは、回転軸を含み回転軸が通る平面と略平行な一つの面を基準面(図示しない)として定め、この基準面を積層面として積層鋼鈑が形成されている。電機子鉄心4Aとロータ鉄心部10Aは、動径方向に延伸して積層面が形成され、積層面はロータ部2Aに垂直に積層鋼鈑が形成される。また、ロータ鉄心部12Aは回転軸zと垂直な平面と略平行な面を積層面として積層鋼鈑が形成されているものである。この基本ユニット1Aの構成によれば、電機子鉄心4Aと電機子鉄心群、およびロータ鉄心部10Aとロータ鉄心部12Aは積層鋼鈑からなる構成としているので、モータ回転に伴う鉄損、特に渦電流損を効果的に抑制できる。これにより、電機子磁束とロータ磁束が3次元方向の磁路構成であるにも係らず、ラジアル・フラックス・モータと同程度の低減効果を実現できるので、高トルク化、大出力化に加えて、高効率化の実現が期待できる。なお、ロータ鉄心部12に対応する部分とロータシャフトとは非磁性体でも構わない。
以上述べたように本実施形態によれば、ロータ部の軸長が短く、基本ユニットの小型化が容易に達成でき、基本ユニットの多段化において磁気干渉防止のための磁気空隙が不要な構造であって、装置全体の小型化を図ったモータを提供することができる。このモータは例えば、トランスバーサル・フラックス・モータであり、回転軸方向に沿って磁路を形成してなる横方向磁束型回転電動機である。特に、電機子鉄心の磁気飽和の緩和による基本ユニットの小型化とモータの高出力化を達成しつつ、隣接する基本ユニットにおける電機子鉄心の共用化による多段構造の小型化を実現する新構造のモータを提供することができる。
このように、従来型のモータでは実現が難しかった駆動性能、特に高出力化、高トルク化などの駆動性能を向上しつつ、装置全体の小型化を図ったモータであるので、極めて大きなトルクや出力密度が求められる分野、例えば、工作機械や船舶、自動車、ロボット、その他幅広い分野の高トルク高出力駆動源としての利用が期待できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1,1A・・・基本ユニット、2,22,42,2A・・・ロータ部、3,23,43,3A・・・電機子部、4,4A・・・電機子鉄心、4a・・・第一磁極部、4b・・・第二磁極部、4c・・・第三磁極部、5・・・第一環状コイル、6・・・第二環状コイル、7,8・・・中空域、10,10A,12A・・・ロータ鉄心部、11・・・永久磁石、12・・・ロータ鉄心部、20,40,40A・・・モータ、24,44・・・電機子鉄心群、24a・・・共通磁気回路部、25,45・・・ロータシャフト、26・・・ケーシング。

Claims (7)

  1. 回転軸に沿って回転自在に支持され、該回転軸を中心とした円盤の形状であり永久磁石を備えたロータ部と、
    前記ロータ部との間にある空隙を有して前記ロータ部の複数の面にそれぞれ対向配置された第一から第三磁極部を有する3極構成の電機子鉄心、および前記回転軸を中心に形成された第一および第二環状コイルを備えた電機子部と、を具備する基本ユニットを前記回転軸に沿って少なくとも2組以上設置し、隣接する基本ユニットがロータ部または電機子部の何れか一方において回転方向にある値の相対角だけ相対的にずらして連結され、
    前記電機子鉄心は前記回転軸回りの前記ロータ部の円周上に複数個配置されていると共に、前記第一磁極部と前記第二磁極部とが前記ロータ部に対向配置して形成される全体として環状の中空域に前記第一環状コイルを配設し、かつ前記第一磁極部と前記第三磁極部とが前記ロータ部に対向配置して形成される全体として環状の中空域に前記第二環状コイルを配設し、前記第一環状コイルと前記第二環状コイルには互いに逆向きの電流を印加することを特徴とするモータ。
  2. 前記第一磁極部は、空隙を有して、前記ロータ部の前記円盤の外側側面に対向配置され、
    前記第二磁極部および前記第三磁極部は、空隙を有して、前記回転軸に垂直な円盤面の上下面のそれぞれに対向配置されていることを特徴とする請求項1に記載のモータ。
  3. 前記モータを取り囲むケーシングをさらに具備し、
    隣接する前記基本ユニットでは、隣接するロータ部の間で回転方向に前記相対角だけ相対的なズレ角を有して、隣接するロータ部は一体として回動すると共に、前記ロータ部と同数の隣接する電機子部の間で回転方向に相対的なズレ角がなく、隣接する電機子部は一体として固定されていて、
    前記ケーシングは、隣接する電機子部を固定するか、もしくは回転方向に同位相の複数の電機子鉄心が全て機械的および磁気的に連結され一体的な電機子鉄心群を固定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ。
  4. 前記電機子鉄心群は、
    第1電機子鉄心の第二磁極部に形成される磁路の一部と、該第1電機子鉄心に隣接する第2電機子鉄心の第三磁極部に形成される磁路の一部とを磁気的に連結する第1共通磁気回路部、および
    第1電機子鉄心の第三磁極部に形成される磁路の一部と、該第1電機子鉄心に隣接する第3電機子鉄心の第二磁極部に形成される磁路の一部とを磁気的に連結する第2共通磁気回路部のうちの少なくともいずれか1つの回路部を備えることを特徴とする請求項3に記載のモータ。
  5. 前記ロータ部は、前記円盤の一部に複数の第1ロータ鉄心部と複数の永久磁石とを含み、該第1ロータ鉄心部と該永久磁石とは回転方向のある値のピッチにて交互に配置されていて、該永久磁石はラジアル方向に着磁されているか、または前記永久磁石のそれぞれで定めるラジアル方向の代表軸に平行に着磁されていて、かつ前記ロータ部内においては回転軸からロータ部外周に向うラジアル方向を正方向の着磁と定めた場合、全て正方向に着磁されているか、または全て負方向に着磁されているかの何れかであり、
    前記ロータ部は、回転軸回りの周方向に前記永久磁石の磁路を形成する環状の第2ロータ鉄心部をさらに備え、
    前記永久磁石と前記第1ロータ鉄心部は前記第2ロータ鉄心部を介して磁気的に連結する磁路を形成し、前記第1ロータ鉄心部と前記第2ロータ鉄心部は、機械的に分割されていて磁気的に連結されているか、または、機械的および磁気的に一体であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のモータ。
  6. 前記電機子鉄心および前記第1ロータ鉄心部は、前記回転軸を通る平面に平行なそれぞれ個々に定められる基準面を積層面として積層鋼鈑が形成され、
    前記第2ロータ鉄心部は、前記回転軸に垂直な平面に平行な基準面を積層面として積層鋼鈑が形成されることを特徴とする請求項5に記載のモータ。
  7. 前記永久磁石の着磁方向は、回転軸方向で隣り合うロータ部における永久磁石の着磁方向と同一方向であるか、または逆方向であることを特徴とする請求項5に記載のモータ。
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