JP2013034913A - 水素分離装置 - Google Patents

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昌弘 梶谷
Hideaki Hikosaka
英昭 彦坂
Yasuhiro Takagi
保宏 高木
Masaya Ito
正也 伊藤
Koya Izeki
孝弥 井関
Takao Kume
高生 久米
Yoichi Ikeda
陽一 池田
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Tokyo Gas Co Ltd
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Abstract

【課題】水素分離装置に供給される(ガス分離前の)被分離ガスが、装置外にリークすることを防止できる水素分離装置を提供すること。
【解決手段】水素分離装置1では、水素透過膜17と緻密質支持部13との間に、水素透過膜17の構成材料(Pd)と緻密質支持部13の構成材料(YSZ)とを共に含有し気密性を有する混合層15を備えている。従って、この混合層15と水素透過膜17及び緻密質支持部13とは強固に接合しているので、水素分離筒3の中心孔9に高い圧力の原料ガスを供給した場合でも、その接合部分から原料ガスがリークすることを防止できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、水素含有ガス等の被分離ガス(原料ガス)から、水素を選択して分離することにより、純度の高い所望の水素を分離することができる水素分離装置に関する。
従来より、例えば燃料電池に供給する水素を製造する装置として、下記特許文献1に記載の様に、例えば表面に水素透過膜(水素分離膜)を備えた水素分離筒を取付金具に固定した水素分離装置が開発されている。
例えば図10(a)に模式的に示す様に、この種の水素分離装置P1は、水素透過膜P2と、水素透過膜P2を支持する円筒有底形状の(中心孔P3を有する)支持体P4とから構成されていた。この支持体P4は、多孔質のセラミックからなる円筒有底形状の多孔質支持部P5と、多孔質支持体P5の開口端に連接された気密性を有しセラミックからなる円筒状の緻密質支持部P6とから構成されていた。
このうち、水素透過膜P2は、多孔質支持部P5の外周面の全表面と、緻密質支持部P6の先端側(同図右側)の外周面とを、一体に覆う様に形成されていた。
また、支持体P4の開口端側(基端側:同図左側)は、緻密質支持部P6上に設けられた(ロウ材等からなる)シール部P7を介して取付金具P8に固定されていた。
一方、例えば図10(b)に模式的に示す様に、他の水素分離装置P9においては、水素透過膜P10の支持体として、多孔質のセラミックからなる円筒有底形状の(中心孔P11を有する)多孔質支持部P12が用いられており、この多孔質支持部P12の開口端側の外周面上には、気密性を有しセラミックからなる筒状の緻密質層P13が形成されていた。
このうち、水素透過膜P10は、多孔質支持部P12の外周面の(緻密質層P13で覆われていない)露出した全表面と、緻密質層P13の先端側(同図右側)の外周面とを、一体に覆う様に形成されていた。
また、多孔質支持部P12の開口端側は、緻密質層P13と(その表面に配置された)シール部P14を介して取付金具P15に固定されていた。
なお、前記多孔質支持部P4、P12に改質触媒を含む場合には、多孔質支持部P4、P12と水素透過膜P2、P10との間に、それらが直接に接触しない様にバリア層(図示せず)が形成されていた。
特開2007−269600号公報
しかしながら、前記図10(a)に示す様に、単に多孔質支持部P5の露出部分や緻密質支持部P6の外周面の先端側を水素透過膜P2で覆っただけの場合には、水素分離装置P1の中心孔P3に供給された原料ガスは、同図の矢印で示す様に、多孔質支持部P5と緻密質支持部P6との境界部分などから外部に漏出(リーク)することがあった。
つまり、通常では、水素の分離を行うために、水素分離装置P1の内部は外部より高圧に設定されているので、水素分離装置P1の中心孔P3に供給された原料ガスは、多孔質支持部P5と緻密質支持部P6との境界部分を通るとともに、緻密質支持部P6と水素透過膜P2との境界部分を通って、外部にリークすることがあった。
同様に、前記図10(b)に示す水素分離装置P9においても、その中心孔P11に供給された原料ガスは、緻密質層P13と水素透過膜P10との境界部分を通って、外部にリークすることがあった。
特に、多孔質支持部P5、P12に改質触媒を含み、多孔質支持部P5、P12にて原料ガスの改質を行う場合には、上述した水素分離装置P1、P9よりも、高い圧力の原料ガスが供給されるので、水素透過膜P2、P10が剥離し易くなり、このガスのリークの問題は一層顕著になる。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、水素分離装置に供給される(ガス分離前の)被分離ガスが、装置外にリークすることを防止できる水素分離装置を提供することである。
(1)本発明は、第1態様として、ガスの通過が可能な筒状の多孔質支持部と、前記多孔質支持部の軸方向に沿って該多孔質支持部の端部から延びて気密性を有する筒状の緻密質支持部とを有する筒状の支持体と、前記支持体の外周の表面上において、前記多孔質支持部と前記緻密質支持部とに跨って、前記多孔質支持部の外周の全領域と、前記緻密質支持部の外周の前記多孔質支持部側の近傍領域とを一体に覆うように積層される水素分離膜と、を備える水素分離装置であって、前記積層方向において前記水素分離膜と前記緻密質支持部との間に配置され、前記水素分離膜の構成材料と前記緻密質支持部の構成材料とを共に含有し気密性を有する混合層を備えたことを特徴とする。
第1態様の水素分離装置は、多孔質支持部と緻密質支持部とからなる支持体を用いるとともに、その表面に形成された水素分離膜を用いて、被分離ガスから水素を分離する装置である。この水素分離装置では、水素分離膜と緻密質支持部との間に、水素分離膜の構成材料と緻密質支持部の構成材料とを共に含有し気密性を有する混合層を備えている。
従って、この混合層と水素分離膜とは強固に接合しているので、その接合部分から被分離ガスがリークすることを防止でき、同様に、混合層と緻密質支持部とは強固に接合しているので、その接合部分からも被分離ガスがリークすることを防止できる。
つまり、本第1態様では、混合層は、その両側の緻密質支持部と水素分離膜とに強固に接合し且つ気密性を有しているので、高い圧力の被分離ガスが供給された場合でも、ガスのリークが生じ難いという顕著な効果を奏する。
詳しくは、多孔質支持部の内部側(1次側)に被分離ガスを導入し、水素分離膜側(2次側)に水素のみ分離させる場合には、1次側の圧力(例えば、0.1MPaG)を2次側の圧力(例えば、0.0MPaG)よりも高くする必要がある。この場合には、水素分離膜に対して多孔質支持部から剥離する方向に負荷がかかるため、緻密質支持部上の水素分離膜の膜剥離による(被分離ガスの)ガスリークが起こり易くなるが、本第1態様の様な混合層を設けることにより、このようなガスリークを効果的に防止することができる。
また、本第1態様では、混合層が気密性を有するように、例えば緻密にすることにより、混合層上に形成された水素分離膜の一部にピンホールが形成されていても、ガスリークしないという利点がある。
(2)本発明は、第2態様として、ガスの通過が可能な筒状の多孔質支持部と、前記多孔質支持部の軸方向の端部において、前記多孔質支持部の外周の表面を覆うように積層され気密性を有する筒状の緻密質層と、前記多孔質支持部及び前記緻密質層の外周の表面上において、前記多孔質支持部と前記緻密質層とに跨って、前記緻密質層の外周の一部の領域と、前記多孔質支持部の外周の前記緻密質層が形成されていない領域とを一体に覆うように積層される水素分離膜と、を備える水素分離装置であって、前記積層方向において前記水素分離膜と前記緻密質層との間に配置され、前記水素分離膜の構成材料と前記緻密質層の構成材料を共に含有し気密性を有する混合層を備えたことを特徴とする。
本第2態様の水素分離装置は、表面の一部に緻密質層が形成された多孔質支持部を用いるとともに、多孔質支持部の表面に形成された水素分離膜を用いて、被分離ガスから水素を分離する装置である。この水素分離装置では、水素分離膜と緻密質層との間に、水素分離膜の構成材料と緻密質支持部の構成材料とを共に含有し気密性を有する混合層を備えている。
従って、この混合層と水素分離膜とは強固に接合しているので、その接合部分から被分離ガスがリークすることを防止でき、同様に、混合層と緻密質層とは強固に接合しているので、その接合部分からも被分離ガスがリークすることを防止できる。
つまり、本第2態様では、混合層は、その両側の緻密質層と水素分離膜とに強固に接合し且つ気密性を有しているので、高い圧力の被分離ガスが供給された場合でも、ガスのリークが生じ難いという顕著な効果を奏する。
また、本第2態様では、混合層が気密性を有するように、例えば緻密にすることにより、混合層上に形成された水素分離膜の一部にピンホールが形成されていても、ガスリークしないという利点がある。
(3)本発明は、第3態様として、前記多孔質支持部が、原料ガスを改質して水素を生成する改質触媒物質を有することを特徴とする。
多孔質支持部の内部に被分離ガス(例えば炭化水素ガス等の原料ガス)を導入し、多孔質支持部に含まれる改質触媒物質により改質反応を起こし、それによって生成した水素を分離する場合には、本構造は顕著に効果を発揮する。
何故ならば、例えば原料ガスを改質することにより生成した改質ガス中の水素の分圧は、例えば一酸化炭素や二酸化炭素など、未反応の原料ガスが共存するため、低い状態である。例えば水素分離膜に含まれる水素透過性金属中の水素透過現象は、圧力差を駆動力としているため、水素分離膜にて水素を透過させ分離するには、改質ガス中の水素分圧を高くする必要がある。そのため、改質ガスの全圧(例えば、0.8MPaG)をより高くしたり、2次側の圧力を負圧(例えば、−0.06MPaG)にしたりするため、水素分離膜が緻密質支持部から剥離し、ガスリークし易くなる。
従って、この様に、原料ガスの圧力を高めることが条件とされる場合(即ち多孔質支持部が改質触媒物質を有する場合)には、上述した混合層を設ける構成は、極めて有効である。
つまり、多孔質支持部が改質触媒物質を有する場合には、水素分離膜の内と外で大きな圧力差を設定する必要があるので、水素分離膜が剥離し易いが、上述した混合層を設けることにより、効果的に剥離を防止できる。
(4)本発明は、第4態様として、前記多孔質支持部と前記水素分離膜との間に、前記多孔質支持部の改質触媒物質の成分と前記水素分離膜の成分との反応を抑制する多孔質のバリア層を備えたことを特徴とする。
このバリア層により、改質触媒物質の成分や水素分離膜の成分が隣接する互いの部材に拡散することを防止できるので、成分の拡散による装置の性能の低下を防止できる。
(5)本発明は、第5態様として、前記水素分離膜の構成材料は、Pd又はPd系合金であって、前記混合層のPd又はPd系合金の体積比率は、30〜70体積%であることを特徴とする。
後述する実験例から明らかな様に、混合層のPd又はPd系合金の体積比率が、30〜70体積%である場合には、接合強度が高く、効果的にガスリークを防止できる。
以下に、本発明における各構成例について説明する。
前記多孔質支持部、緻密質支持部、緻密質層を構成する材料としては、セラミックスが挙げられるが、このセラミックスとしては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、安定化ジルコニア、アルミナ、マグネシア、セリア、ドープドセリアおよびこれらの混合物が挙げられる。
なお、多孔質支持部が改質触媒物質を有する場合としては、例えば、ニッケルとYSZの混合物を主成分とする多孔質焼結体(Ni−YSZサーメット)が挙げられる。なお、改質触媒物質としては、改質を行う対象のガスの種類に応じて、例えばニッケルなど適宜選択すればよい。
前記緻密質支持部、緻密質層、混合層の気密性は、被分離ガスを構成するガスの透過を防止できればよいものであり、その気密性を実現するための緻密の程度としては、例えばセラミックスの焼結体の場合には、相対密度70%以上の緻密さが挙げられる。
前記水素分離膜としては、例えば原料ガスから水素を分離して透過させる水素透過膜が挙げられる。この水素透過膜としては、Pd、Pd合金、V合金、Nb合金等が挙げられる。特に、Pd合金としては、例えばPdAg、PdCu、PdAu等が挙げられる。
また、以下に、前記混合層の定義について説明する。
混合層:混合層を厚み方向に破断した断面を電子顕微鏡にて観察する際に、電子顕微鏡の視野の全範囲において、混合層(断面)が観察視野全範囲の20%以上を占めるように調整し、かつ、水素分離膜断面及び混合層断面が全体と(水素分離膜を支持する多孔質支持部等の)支持体の断面の一部とが視野に入るように調整して観察する(SEM写真を撮影して観察する)。
なお、SEM写真撮影の際は、画像上辺(若しくは下辺)と水素分離膜の外側表面(混合層と反対側の表面)が平行になるように調整して撮影する。また、水素分離膜の外側表面に対して平行な線を引き、支持体材料の少なくとも1種類と水素分離膜材料とを含む領域を区画する2つの平行線の間の領域を混合層として定義し、平行線間の距離を混合層の厚みとする。
なお、混合層においては、その厚み方向の両側の部分に、混合層に隣接する部材(支持体及び水素分離膜)の成分が多い境界部分が存在するが、この境界部分には、「支持体材料の少なくとも1種と水素分離膜材料と」を含むので、この境界部分も含めて混合層とする。
混合比率:混合比率は上記の層(混合層)断面の観察方法にて、電子顕微鏡による断面SEM画像を撮影し計測を実施する。後述する図9に示すように、支持体及び混合層及び水素分離膜を厚み方向に破断した断面について、混合層の厚みに対して厚み方向に1/3又は1/5の厚み(例えば1/5の厚み:例えば10μm)を有し、且つ、画像(視野)の厚み方向に対して垂直の方向の幅(図9では左端から右端までの幅)が視野幅の80%以上100%未満を有する長方形の測定領域を、任意に選択する。
そして、選択された測定領域に対して2値化解析を行うことにより、支持体材料と水素分離膜材料との面積をそれぞれ算出し、2値化された両面積の合計を100%として各面積の割合を求め、この割合から混合比率を求める。
第1実施形態の水素分離装置を軸方向に沿って破断して模式的に示す断面図である。 第1実施形態の水素分離装置の一部を破断して拡大して模式的に示す説明図である。 第2実施形態の水素分離装置の一部を破断して拡大して模式的に示す説明図である。 第3実施形態の水素分離装置の一部を破断して拡大して模式的に示す説明図である。 第4実施形態の水素分離装置の一部を破断して拡大して模式的に示す説明図である。 第1比較例の水素分離装置の一部を破断して拡大して模式的に示す説明図である。 第2比較例の水素分離装置の一部を破断して拡大して模式的に示す説明図である。 第1実施形態の変形例の一部を破断して拡大して模式的に示す説明図である。 (a)は、第1実施形態の水素分離筒を中心軸に対して垂直に破断し研磨断面を電子顕微鏡で撮影したSEM写真、(b)は、そのSEM写真における測定領域の2値化前及び2値化後を示す写真である。 (a)は、従来技術の水素分離装置を軸方向に沿って破断して拡大して模式的に示す説明図、(b)は、他の従来技術の水素分離装置を軸方向に沿って破断して拡大して模式的に示す説明図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
ここでは、水素分離装置として、例えば燃料電池に燃料ガス(水素ガス)を供給するために、原料ガスから水素を分離する水素分離装置について説明する。
a)まず、本第1実施形態の水素分離装置の構成について説明する。
図1に模式的に示す様に、本第1実施形態の水素分離装置1は、原料ガスから水素を分離する部材として、一端が閉塞された円筒有底管形状(試験管状)の水素分離筒3を備えるとともに、水素分離筒3が取り付けられる筒状の取付金具5と、水素分離筒3と取付金具5とをシール(気密)して接合する筒状のシール部7とを備えている。以下、各構成について説明する。
まず、前記水素分離筒3は、その軸中心の中心孔9に導入された原料ガス(例えば水素以外に炭酸ガスや一酸化炭素などの雑ガスを含む水素含有ガス)から、水素を選択的に分離して、その外周側(外部)に供給する部材である。
この水素分離筒3は、先端側(同図右側)が閉塞されており、その閉塞された先端側に、ガス(原料ガス)の通過可能な円筒有底管形状の多孔質支持部11を備えるとともに、その開放された基端側(同図左側)に、ガス透過性が無い筒状の緻密質支持部13を備えている。更に、後述する様に、緻密質支持部13の外周面に混合層15が形成されるとともに、多孔質支持部11等の外周面に水素透過膜17が形成されている。なお、以下では、多孔質支持部11と緻密質支持部13とが一体に焼結された円筒有底管形状の部材をセラミック支持体19と称する。
このうち、前記多孔質支持部11は、例えばYSZ(イットリア安定化ジルコニア)からなる焼結体であり、後述する水素透過膜17を支持する役割を有する。
前記緻密質支持部13は、YSZからなる円筒形状の緻密質のセラミック焼結体であり、ガスの透過ができない程度に十分に緻密化され、その強度は多孔質支持部11よりも大きくされている。
特に本第1実施形態では、セラミック支持体19の外周面、詳しくは、緻密質支持部13の外周面の先端側を覆う様に、例えば厚さ約20μmの円筒状の混合層15が形成されている。なお、緻密質支持部13と多孔質支持部11の境界部分の外周面を覆う様に混合層15を形成してもよい。
この混合層15は、セラミック支持体19の構成材料(例えばYSZ)と水素透過膜17の構成材料(例えばPd)とを所定の割合で含んでおり、ガスが透過しない程度の緻密化された緻密質層(セラミック焼結体)である。この構成材料の割合としては、Pd体積比率が30〜70体積%(残りはYSZ)である範囲を採用できる。
前記水素透過膜17は、例えばPd−Ag合金からなり、多孔質支持部11を通過した水素含有ガスから水素を選択的に透過して精製する例えば厚さ約10μmの薄膜(水素分離膜)である。この水素透過膜17は、多孔質支持部11の露出している全表面と、混合層15の外周面の先端側とを覆うように形成されている。
また、前記取付金具5は、例えばSUS316、SUS430等のステンレスからなる段差のある円筒状の部材であり、原料ガスが導入されるガス導入孔21を有する円筒状の細径部23と、細径部23より径の大きな円筒状の大径部25と、細径部23と大径部25とをつなぐ円環状の円環部27とから構成されている。なお、大径部25と円環部27とにより、水素分離筒3の基端側(同図左側)が嵌め込まれるキャップ状の嵌合部29が構成されている。
前記シール部7は、取付金具5の大径部25の内周面と緻密質支持部13の外周面との間に配置されて、大径部25と緻密質支持部13とをシール(気密)して接合するロウ材である。このロウ材としては、Ag、Ni、Cu、Au、Pd又はこれらの合金を主成分とするロウを用いることができる。
なお、シール部7と混合層15とは緻密部支持部13の外周面上に配置されているが、シール部7と混合層15(従ってその上の水素透過膜17)とは接触しないように離れて配置されている。
前述したように、シール部7と混合層15及び水素透過膜17とは互いに接触しないように、離れて配置されていることから、シール部7と混合層15及び水素透過膜17とが接触若しくは反応することが無く、さまざまなシール接合の形態を実現することが出来る。例えば、コンプレッションシール材、ガラス、圧入、加締めなどのシールの形態が挙げられる。
b)次に、本第1実施形態の水素分離装置1の製造方法について説明する。
まず、セラミック支持体19の形状に対応したゴム型を用意し、そのゴム型に緻密質支持部13を形成するYSZの造粒粉を充填し、次に、その上に、多孔質支持部11を形成するYSZと造孔材との混合材料(造孔材として有機ビーズを50vol%添加した混合材料)からなる造粒粉を充填した。
そして、80MPaの圧力にてプレス成形を行うことにより、円筒有底管形状の成形体を得た。
次に、成形体の緻密質支持部13に対応する外表面(即ち混合層15の形成箇所)に、PdとYSZの体積比が50:50の混合粉末スラリーを塗布し乾燥した。
その後、成形体と(乾燥した)混合粉末スラリーとを1400℃にて同時焼成することにより、緻密質支持部13と多孔質支持部11とから成るとともに、表面に混合層15を備えた外径10mm×長さ300mmのセラミック支持体19を得た。
次に、得られた(混合層15を備えた)セラミック支持体19の外表面のうち、水素透過膜17を形成する箇所(即ち多孔質支持部11の全外周面と混合層の外周面の先端側)に、Pdの核付け処理を行った。
次に、めっき法により、Pd膜形成およびAg膜形成を行い、更に合金化熱処理することによって水素分離膜17を形成し、水素分離筒3を得た。
その後、水素分離筒3の外周面の後端側に例えばAgからなるロウ材を配置して、取付金具5の嵌合部29に嵌め込み、所定温度でロウ付けを行って、水素分離筒3と取付金具5とを接合して一体化し、水素分離装置1を得た。
c)この様に、本第1実施形態の水素分離装置1は、水素透過膜17と緻密質支持部13との間に、水素透過膜17の構成材料(Pd)と緻密質支持部13の構成材料(YSZ)とを共に含有し気密性を有する混合層15を備えている。
従って、この混合層15と水素透過膜17及び緻密質支持部13とは強固に接合しているので、水素分離筒3の中心孔9に所定の圧力の原料ガスを供給した場合でも、水素透過膜17が剥離し難く、その接合部分から原料ガスがリークすることを防止できる。
特に、本第1実施形態では、混合層15におけるPd体積比率が、30〜70体積%であるので、接合強度が高く、効果的にガスリークを防止できる。
また、本第1実施形態では、混合層15が気密性を有するように緻密に構成されているので、混合層15上に形成された水素透過膜17の一部にピンホールが形成されていても、ガスリークしないという利点がある。
更に、本第1実施形態では、緻密質支持部13の外周面においては、水素透過膜17とシール部7や取付金具5とは接触しないように配置されているので、水素透過膜17に含まれる水素透過性金属とシール部7や取付金具5との間で反応が起きない。よって、この反応による装置の劣化を防止できるという効果がある。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。
a)まず、本第2実施形態の水素分離装置の構成について説明する。
図3に要部を示す様に、本第2実施形態の水素分離装置31は、原料ガスから水素を分離する部材として、一端が閉塞された円筒有底管形状の水素分離筒33を備えるとともに、水素分離筒33が取り付けられる(第1実施形態と同様な)取付金具35と、水素分離筒33と取付金具35とをシールして接合する(第1実施形態と同様な)シール部37とを備えている。以下、本第2実施形態の特徴部分について説明する。
まず、前記水素分離筒33は、その軸中心の中心孔39に導入された原料ガス(例えばメタンなどの炭化水素ガスと水蒸気の混合ガス)を改質するとともに、水素を選択的に分離して、その外周側に供給する部材である。
この水素分離筒33は、前記第1実施形態と同様に、その閉塞された先端側(同図右側)に、ガスの通過可能な多孔質支持部41を備えるとともに、その開放された基端側(同図左側)に、ガス透過性が無く且つ(多孔質支持部41より)強度が高い緻密質支持部43を備えており、更に、混合層45、バリア層47、水素透過膜49も備えている。なお、多孔質支持部41と緻密質支持部43とからセラミック支持体51が構成されている。
このうち、前記多孔質支持部41は、改質触媒としての役割とバリア層47及び水素透過膜49を支持する役割とを有する通気性を有するセラミック焼結体である。具体的にはNiを含むYSZからなる多孔質セラミック(Ni−YSZサーメット)製の支持体であり、この多孔質支持部41では、原料ガスを水蒸気改質して改質ガス(水素を多く含むガス)を生成する。なお、ここで、Niが改質触媒物質である。
前記緻密質支持部43は、前記第1実施形態と同様に、YSZからなる円筒形状の気密性を有する緻密質のセラミック焼結体である。
また、前記第1実施形態と同様に、緻密質支持部43の外周面の先端側を覆う様に、セラミック支持体51の構成材料(例えばYSZ)と水素透過膜49の構成材料(例えばPd)とを所定の割合で含む(例えば50体積%づつ含む)混合層45が形成されている。
特に本第2実施形態では、多孔質支持部41の全表面と、混合層45の先端側の外周面とを覆うように、例えば厚さ約60μmのバリア層47が形成されている。
このバリア層47は、例えばYSZからなり、多孔質支持部41の金属成分(例えばNi)と水素透過膜49の成分(例えばPd)とが互いに交じり合う(拡散する)ことにより、水素透過膜49の水素透過性能が劣化することを防止するための多孔質層(相互拡散防止層)である。
前記水素透過膜49は、前記第1実施形態と同様であり、バリア層47の全表面と、混合層45のうちバリア層47で覆われていない外周面の一部(先端側)とを覆うように形成されている。
なお、前記取付金具35とシール部37は、前記第1実施形態と同様である。
b)次に、本第2実施形態の水素分離装置31の製造方法について説明する。
まず、セラミック支持体51の形状に対応したゴム型を用意し、そのゴム型に緻密質支持部43を形成するYSZの造粒粉を充填した後、改質触媒機能を有する多孔質支持部41を形成する材料として、NiOとYSZとを重量比で2:8の割合で用いるとともに、造孔材として有機ビーズを50vol%添加した混合材料の造粒粉を充填した。
その後、80MPaの圧力にてプレス成形を行うことにより、円筒有底管形状の成形体を得た。
次に、成形体の緻密質支持部43に対応する外周面(即ち混合層45の形成箇所)に、PdとYSZの体積比が50:50の混合粉末スラリーを塗布し乾燥した。
次に、成形体と(乾燥した)混合粉末スラリーとを1400℃にて同時焼成することにより、緻密質支持部43と改質触媒機能を有する多孔質支持部41とから成るとともに、混合層45を備えた外径10mm×長さ300mmのセラミック支持体51を得た。なお、この多孔質支持体41については、触媒として使用される前に、高温の水素で還元することにより、触媒作用を有するNi−YSZサーメットとされる。
次に、YSZ粉末を有機溶媒中に分散させたスラリーを調製し、前記(混合層45を備えた)セラミック支持体51の外周面のうち、バリア層47を形成する箇所に、ディップコーティング法により塗布層を形成した後、1300℃にて熱処理を行って、バリア層47を得た。
その後、バリア層47及び混合層45の外周面のうち、水素透過膜49を形成する箇所に、Pdの核付け処理を行った。
次に、めっき法によりPd膜形成およびAg膜形成を行い、更に合金化熱処理することにより水素透過膜49を形成し、水素分離筒33を得た。
なお、水素分離筒33を取付金具35に固定する方法は、前記第1実施形態と同様である。
c)本第2実施形態では、前記第1実施形態と同様な効果を奏するとともに、改質機能を有する多孔質支持部41によって原料ガス(炭化水素ガス)の改質ができるという利点がある。
特に、本第2実施形態の様に、多孔質支持部41にて原料ガスの改質を行う場合には、多孔質支持部41の内部(1次側)のガス圧を外部(2次側)より高くするので、水素透過膜49が剥離し易いが、本第2実施形態の様に、混合層45と多孔質支持部41及び水素透過膜49及びバリア層47とが強固に接合することにより、水素透過膜49の剥離によるガスリークを防止できるという顕著な効果を奏する。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。
a)まず、本第3実施形態の水素分離装置の構成について説明する。
図4に要部を示す様に、本第3実施形態の水素分離装置61は、水素含有ガスから水素を分離する部材として、一端が閉塞された円筒有底管形状の水素分離筒63を備えるとともに、この水素分離筒63が取り付けられる(第1実施形態と同様な)取付金具65と、水素分離筒63と取付金具65とをシールして接合する(第1実施形態と同様な)シール部67とを備えている。以下、本第3実施形態の特徴部分について説明する。
まず、前記水素分離筒63は、その基体として、多孔質セラミック(YSZ)からなり、ガスの通過可能な円筒有底管形状の多孔質支持部69を備えている。
この多孔質支持部69の外周面の基端側(同図左側)には、YSZからなり、円筒形状で気密性を有する例えば厚さ約10μmの緻密質層71が形成されている。
そして、この緻密質層71の外周面の先端側(同図右側)を覆う様に、多孔質支持部69の構成材料(例えばYSZ)と水素透過膜73の構成材料(例えばPd)とを所定の割合(第1実施形態と同様な割合)で含む混合層75が形成されている。
また、水素透過膜73は、前記第1実施形態と同様であり、多孔質支持部69の露出した全表面(即ち緻密質層71で覆われていない全表面)と、混合層75のうち外周面の先端側とを覆うように形成されている。
また、前記取付金具65とシール部67は、前記第1実施形態とほぼ同様であり、(緻密質層71を表面に備えた)水素分離筒63の基端側が、取付金具65の嵌合部77に嵌め込まれ、嵌合部77の内周面と緻密質層71の外周面との間に配置されたシール部67によって、取付金具65と水素分離筒63とがシールされて一体に接合される。
b)次に、本第3実施形態の水素分離装置61の製造方法について説明する。
まず、多孔質支持部69の形状に対応したゴム型を用意し、そのゴム型に、(多孔質支持部69を形成する)YSZに造孔材として有機ビーズを50vol%添加した混合材料の造粒粉を充填した。
次に、80MPaの圧力にてプレス成形を行うことにより、円筒有底管形状の成形体を得た。
次に、YSZ粉末を有機溶媒中に分散させたスラリーを調製し、成形体の外周面の端部(緻密質層71の形成箇所)に、そのスラリーをディップコーティング法により塗布し乾燥した後、その乾燥した層の外周面の端部(混合層75の形成箇所)に、PdとYSZの体積比が50:50の混合粉末スラリーを塗布し乾燥した。
次に、成形体と乾燥した各層とを1400℃にて同時焼成することにより、外径10mm×長さ300mmの(緻密質層71及び混合層75を備えた)多孔質支持部69を得た。
次に、多孔質支持部69及び混合層75の外周面のうち、水素透過膜73を形成する箇所に、Pdの核付け処理を行った。
次に、めっき法によりPd膜形成およびAg膜形成を行い、更に合金化熱処理する事により水素分離筒63を得た。
なお、水素分離筒63を取付金具65にシールして固定する場合には、取付金具35の嵌合部79の内周面と水素分離筒63の緻密質層71の外周面との間に、前記第1実施形態と同様なロウ材を配置して同様にロウ付けする。
c)本第3実施形態では、前記第1実施形態と同様な効果を奏するとともに、水素分離筒63の基体として、同一の構造の多孔質支持部69を用いるので、原料の充填作業等を簡易化できるという利点がある。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明するが、前記第3実施形態と同様な内容の説明は省略する。
a)まず、本第4実施形態の水素分離装置の構成について説明する。
図5に要部を示す様に、本第4実施形態の水素分離装置81は、原料ガスから水素を分離する部材として、一端が閉塞された円筒有底管形状の水素分離筒83を備えるとともに、この水素分離筒83が取り付けられる(第3実施形態と同様な)取付金具85と、水素分離筒83と取付金具85とをシールして接合する(第3実施形態と同様な)シール部87とを備えている。以下、本第4実施形態の特徴部分について説明する。
まず、前記水素分離筒83は、その基体として、多孔質セラミック(YSZ)からなり、ガスの通過可能な円筒有底管形状の多孔質支持部89を備えている。
この多孔質支持部89は、前記第2実施形態と同様に、改質触媒としての役割と水素透過膜91を支持する役割とを有する通気性を有するセラミック焼結体、具体的にはNiを含むYSZからなる多孔質セラミック(Ni−YSZサーメット)製の支持体であり、この多孔質支持部89では、原料ガスを水蒸気改質して改質ガス(水素を多く含むガス)を生成する。
この多孔質支持部89の外周面には、前記第3実施形態と同様な緻密質層93及び混合層95が形成されている。
また、多孔質支持部89の露出した外周面の全表面(緻密質層93で覆われていない部分)と、混合層95の先端側の外周面とを覆うように、例えば厚さ約60μmの例えばYSZからなる多孔質のバリア層97が形成されている。
前記水素透過膜91は、前記第3実施形態と同様であり、バリア層97の全表面と、混合層95のうちバリア層95で覆われていない外周面の一部(先端側)とを覆うように形成されている。
なお、前記取付金具85とシール部87は、前記第3実施形態と同様である。
b)次に、本第4実施形態の水素分離装置81の製造方法について説明する。
まず、多孔質支持部89の形状に対応したゴム型を用意し、そのゴム型に、(改質触媒機能を有する多孔質支持部89を形成する材料として)NiOとYSZとを重量比で2:8の割合で用いるとともに、造孔材として有機ビーズを50vol%添加した混合材料の造粒粉を充填した。
次に、80MPaの圧力にてプレス成形を行うことにより、円筒有底管形状の成形体を得た。
次に、YSZ粉末を有機溶媒中に分散させたスラリーを調製し、成形体の端部(緻密質層93の形成箇所)に、そのスラリーをディップコーティング法により塗布し乾燥した後、その乾燥した層の端部(混合層95の形成箇所)に、PdとYSZの体積比が50:50の混合粉末スラリーを塗布し乾燥した。
次に、成形体と乾燥した各層とを1400℃で同時焼成することにより、外径10mm×長さ300mmの(緻密質層93及び混合層95を備えた)多孔質支持部89を得た。
また、YSZ粉末を有機溶媒中に分散させたスラリーを調製し、ディップコーティング法により、そのスラリーを、多孔質支持部89及び混合層95の外周面のうちバリア層97の形成箇所に塗布し乾燥し、1300℃にて熱処理を行ってバリア層97を形成した。
次に、バリア層97や混合層95の外周面のうち、水素透過膜91を形成する箇所に、Pdの核付け処理を行った。
次に、めっき法によりPd膜形成およびAg膜形成を行い、更に合金化熱処理することにより水素分離筒83を得た。
c)本第4実施形態では、前記第3実施形態と同様な効果を奏するとともに、改質機能を有する多孔質支持部89によって炭化水素ガスの改質ができるという利点がある。
[第1比較例]
次に、後述する実験例に用いる本発明の範囲外の第1比較例について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。
a)まず、本第1比較例の水素分離装置の構成について説明する。
図6に示す様に、本第1比較例の水素分離装置101は、前記第1実施形態と同様な多孔質支持部103及び緻密質支持部105からなるセラミック支持体107と取付金具109とシール部111とを備えている。
この水素分離装置101では、多孔質支持部103の外周面の全表面と、緻密質支持部105の外周面の先端側(同図右側)とを覆う様に、前記第1実施形態と同様な水素透過膜113が形成されている。
b)次に、本第1比較例の水素分離装置101の製造方法について簡単に説明する。
まず、緻密質支持部105を形成するYSZの造粒粉をゴム型に充填した後、多孔質支持部103を形成するYSZと造孔材として有機ビーズを50vol%添加した混合材料の造粒粉を充填し、その後、80MPaの圧力にてプレス成形を行うことにより、円筒有底管形状の成形体を得た。
得られた成形体を1400℃にて焼成することにより、外径10mm×長さ300mmの緻密質支持部105と多孔質支持部103とから成るセラミック支持体107を得た。 得られたセラミック支持体107外表面にPdの核付け処理を行った後、めっき法によりPd膜形成およびAg膜形成を行い、更に合金化熱処理することより水素分離筒115を得た。
[第2比較例]
次に、後述する実験例に用いる本発明の範囲外の第2比較例について説明するが、前記第3実施形態と同様な内容の説明は省略する。
a)まず、本第2比較例の水素分離装置の構成について説明する。
図7に示す様に、本第2比較例の水素分離装置121は、前記第3実施形態と同様な多孔質支持部123と取付金具125とシール部127とを備えている。
この水素分離装置121では、多孔質支持部123の外周面の基端側(同図左側)に、第3実施形態と同様な緻密質層129が形成されるとともに、多孔質支持部123の外周面の露出部分と緻密質層129の外周面の先端側(同図右側)とを覆う様に、前記第3実施形態と同様な水素透過膜131が形成されている。
b)次に、本第2比較例の水素分離装置131の製造方法について簡単に説明する。
まず、多孔質支持部体123を形成するYSZと造孔材として有機ビーズを50vol%添加した混合材料の造粒粉をゴム型に充填した後、80MPaの圧力にてプレス成形を行うことにより、円筒有底管形状の成形体を得た。
また、YSZ粉末を有機溶媒中に分散させたスラリーを調製し、成形体の端部に、そのスラリーをディップコーティング法により塗布し乾燥した後、成形体と1400℃にて同時焼成することにより、外径10mm×長さ300mmの(緻密質層129を備えた)多孔質支持部123を得た。
得られた多孔質支持部123の外表面にPdの核付け処理を行った後、めっき法によりPd膜形成およびAg膜形成を行い、更に合金化熱処理することにより水素分離筒133を得た。
<<実験例>>
次に、本発明の効果を確認するために行った実験例について説明する。
(実験例1)
本実験例1では、実験に用いる試料として、前記第1〜4実施形態及び第1、2比較例の水素分離装置を製造した。そして、その試料を用いて、室温(25℃)、内圧1.0MPaGの条件にて、水中Heリーク試験を実施した。
このリーク試験とは、水槽の水に、水素分離装置の先端側を取付金具の先端が水面に接する直前まで漬け、詳しくは、(実施形態では)混合層を全て水に漬け、(比較例では)水素透過膜を全て水に漬けて、水素分離装置の軸中心のガス供給孔から前記圧力でHeガスを供給し、その際に、水素分離筒の表面から微気泡が発生するか否かを調べたものである。
その試験結果を下記表1に示す。なお、微気泡の発生が無い場合をリーク無しと、微気泡の発生が有る場合をリーク有りとした。
この実験結果から明らかな様に、混合層を備えている第1〜4実施形態はリークがなく好適であるが、混合層のない第1、2比較例は、リークがあり好ましくない。
(実験例2)
本実験例2は、混合層の組成による効果を検討したものである。
ここでは、下記の様にして水素分離装置の各試料を作製した。
まず、混合層の組成最適化の検討する為に、PdとYSZの体積比率が20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20の7組成のスラリーを調製した。
そして、前記第1実施形態の様に、プレス成形により(緻密質支持部と多孔質支持部から成るセラミック支持体に対応する)成形体の表面、詳しくは緻密質支持部の外周面の先端側に対応する箇所に、前記7組成の混合粉末スラリーをそれぞれ塗布し乾燥した後、成形体と1400℃にて同時焼成することにより、外径10mm×長さ300mmの緻密質支持部と多孔質支持部とからなる(混合層を備えた)7組のセラミック支持体を得た。
得られたセラミック支持体の外周面に、前記第1実施形態と同様に、Pdの核付け処理を行った後、めっき法によりPd膜形成およびAg膜形成を行い、更に合金化熱処理することにより水素分離筒を得た。得られた水素分離筒をロウ材を用いて取付金具に接合し、各試料を得た。
そして、各試料を、前記実験例1と同様に、室温、内圧1.0MPaGの条件において水中Heリーク試験を行い、ガスリークの有無を確認した。その結果を、下記に示す。
PdとYSZの体積割合が80:20の場合は、成形体との同時焼成後に混合層と緻密質支持部との界面で剥離し、水素分離膜を形成するに至らなかった。これは、混合層中のYSZの割合が少ないため、緻密質支持部と密着せず、混合層と緻密質支持部との界面で剥離したと考えられる。
PdとYSZの体積割合が20:80の場合、緻密質支持部と混合層とは強固に密着していたが、合金化熱処理後に混合層上の水素分離膜が剥離し、水中Heリーク試験の結果、混合層上の水素分離膜の端部からガスがリークした。これは、混合層中のPdの体積割合が少ないため、混合層と水素分離膜とが密着しなかったと考えられる。
一方、PdとYSZの体積割合が30:70、40:60、50:50、60:40、70:30の場合、水中Heリーク試験の結果、混合層上の水素分離膜からのガスリークは見られなかった。
(実験例3)
本実験例3は、混合層の材料の組成と製品における成分との関係を調べたものである。
前記第1実施形態における水素分離筒を中心軸に対して垂直に破断し、その研磨断面をSEM(倍率:2000)により撮影した。詳しくは、混合層を含む研磨断面を撮影した。そのSEM写真を図9(a)に示す。
水素透過膜の外側と内側の両表面に平行な線を引き、セラミック支持体材料の少なくとも1種類と水素透過膜材料とを含む領域を混合層とした。混合層の厚みは23μmであった。
次に、この画像をパソコンに読み取って、その所定の範囲を測定領域(図9(a)の黒枠の範囲)とした。この測定領域の範囲は縦10μm×横54μmである。
次に、図9(b)に示す様に、この測定領域の画像を2値化して、2値化画像を作成した。
そして、各測定領域におけるYSZ(濃い灰色部分)とPd(薄い灰色部分)とのそれぞれの画素(ピクセル)数を求め、そのピクセル数の割合から混合比率を求めた。その結果を下記表2に記す。
この表2から明らかな様に、第1実施形態における混合層のPdとYSZの割合は、所定の原料の体積比50:50とほぼ同じ配合率であることが、2値化解析により確認された。
<その他>
[第1実施形態の変形例]
次に、第1実施形態の変形例について説明するが、前記第1実施形態と同様な内容の説明は省略する。
本変形例の水素分離装置は、前記第1実施形態とはシールする構造が異なるだけなので、簡単に説明する。
図8に示す様に、本変形例の水素分離装置141は、前記第1実施形態と同様に、多孔質支持部143及び緻密質支持部145からなるセラミック支持体147と、緻密質支持部145上の混合層149と、多孔質支持部143等の表面を覆う水素透過膜151とを備えている。なお、セラミック支持体147と混合層149と水素透過膜151とにより、水素分離筒153が構成されている。
特に本変形例では、前記第1実施形態と同様な形状の取付金具155の嵌合部157に、水素分離筒153の基端側(同図左側)が嵌め込まれており、嵌合部157の内周面と水素分離筒153の外周面との間に、基端側より、円筒形状の(膨張黒鉛かならなる)シール材159と円筒形状の固定金具161とが配置されるとともに、固定金具161(従ってシール材159)を、同図左側に押圧する押圧金具163が取り付けられている。
この押圧金具163は、軸中心に貫通孔が開けられた円筒形のキャップ状の部材であり、嵌合部157に外周面に形成されたネジ部に(自身の内周面のネジ部が)螺合することによって、固定金具161を押圧して固定できるように構成されている。
本変形例によっても、前記第1実施形態と同様な効果を奏する。
尚、本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
1、31、61、81、101、121、141…水素分離装置
3、33、63、83、115、133、153…水素分離筒
5、35、65、85、109、125、155…取付金具
7、37、67、87、111、127、159…シール部
11、41、69、89、103、123、143…多孔質支持部
13、43、105、145…緻密質支持部
15、45、75、95、149…混合層
17、49、73、91、113、131、151…水素透過膜
19、51、107、147…セラミック支持体
47、97…バリア層
71、93、129…緻密質層

Claims (5)

  1. ガスの通過が可能な筒状の多孔質支持部と、前記多孔質支持部の軸方向に沿って該多孔質支持部の端部から延びて気密性を有する筒状の緻密質支持部とを有する筒状の支持体と、
    前記支持体の外周の表面上において、前記多孔質支持部と前記緻密質支持部とに跨って、前記多孔質支持部の外周の全領域と、前記緻密質支持部の外周の前記多孔質支持部側の近傍領域とを一体に覆うように積層される水素分離膜と、
    を備える水素分離装置であって、
    前記積層方向において前記水素分離膜と前記緻密質支持部との間に配置され、前記水素分離膜の構成材料と前記緻密質支持部の構成材料とを共に含有し気密性を有する混合層を備えたことを特徴とする水素分離装置。
  2. ガスの通過が可能な筒状の多孔質支持部と、
    前記多孔質支持部の軸方向の端部において、前記多孔質支持部の外周の表面を覆うように積層され気密性を有する筒状の緻密質層と、
    前記多孔質支持部及び前記緻密質層の外周の表面上において、前記多孔質支持部と前記緻密質層とに跨って、前記緻密質層の外周の一部の領域と、前記多孔質支持部の外周の前記緻密質層が形成されていない領域とを一体に覆うように積層される水素分離膜と、
    を備える水素分離装置であって、
    前記積層方向において前記水素分離膜と前記緻密質層との間に配置され、前記水素分離膜の構成材料と前記緻密質層の構成材料を共に含有し気密性を有する混合層を備えたことを特徴とする水素分離装置。
  3. 前記多孔質支持部が、原料ガスを改質して水素を生成する改質触媒物質を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の水素分離装置。
  4. 前記多孔質支持部と前記水素分離膜との間に、前記多孔質支持部の改質触媒物質の成分と前記水素分離膜の成分との反応を抑制する多孔質のバリア層を備えたことを特徴とする請求項3に記載の水素分離装置。
  5. 前記水素分離膜の構成材料は、Pd又はPd系合金であって、前記混合層のPd又はPd系合金の体積比率は、30〜70体積%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水素分離装置。
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