JP2005081246A - 酸素分離膜エレメント及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明によって提供される酸素分離膜エレメントにおいて、多孔質支持体は気孔率の異なる少なくとも2つの多孔質層が積層されて構成されており、積層された多孔質層の気孔率が酸素分離膜に向かって次第に減少するように構成されている。好ましくは互いに隣接する多孔質層間の気孔率差が20%以内であって、かつ酸素分離膜と該膜に隣接する多孔質層との気孔率差が5%以内である。このような気孔率の異なる層は、原料粉末の平均粒径を制御することにより製造することができる。
【選択図】 なし
Description
また、このような酸素イオン伝導体から形成されたセラミック材は、炭化水素の部分酸化反応等の酸化用反応装置にも利用することができる。例えば、このセラミック材を膜状(薄い層状のものを包含する。)に形成し、その一方の表面を酸素を含むガスに接触させ、他方の表面を炭化水素(メタン等)を含むガスに接触させる。これにより、膜状セラミック材の一方の表面からこのセラミック材を透過して供給される酸素イオンによって、セラミック材の他方の表面に接触した炭化水素を酸化させることができる。
そこで本発明は、上記課題を解決し、機械的強度及び酸素分離性能に優れた酸素分離膜エレメント及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、多孔質支持体の気孔率を高く、かつ酸素分離膜を薄くして酸素透過性を向上させつつ、酸素分離膜の剥離やクラック等の発生を防止可能な酸素分離膜エレメントの構造について鋭意検討した結果、多孔質支持体の気孔率を酸素分離膜に向けて次第に減少させることにより、上記目的を達成することに成功した。即ち、多孔質支持体は気孔率の異なる少なくとも2つの多孔質層を積層して構成し、酸素分離膜に向かって気孔率が次第に減少するように各層の気孔率を設定する。このことにより、多孔質支持体の気孔率を全体として大きくしつつも、酸素分離膜とその膜と隣接する多孔質層との間の気孔率差を縮小し、酸素分離膜に加わる応力を低減することができる。従って酸素分離膜の剥離やクラック等の発生を防止することができる。
多孔質層の気孔率及び平均細孔径のいずれかが上記所定の範囲よりも小さい場合には、酸素分離膜の支持体側におけるガス接触面積が小さいために結果として酸素イオン伝導性が低下する傾向にある。或いは、気孔率及び平均細孔径のいずれかが上記所定の範囲よりも大きい場合には、酸素分離膜の酸素イオン伝導性を高く維持し得るものの支持体自体の機械的強度に劣る傾向にある。即ち、気孔率及び平均細孔径のうち、いずれか一方が上記所定範囲を逸脱しても支持体としての性能が低下する傾向にある。従って、全ての多孔質層の気孔率及び平均細孔径が前記範囲内である場合には、機械的強度に優れ、酸素分離膜の支持体側のガス接触面積を充分に確保することができる。
また、本発明の酸素分離膜エレメントとしてさらに好ましいものは、前記多孔質支持体において、互いに隣接する前記多孔質層間の気孔率差が20%以内であって、かつ前記酸素分離膜と該膜に隣接する多孔質層との気孔率差が5%以内である。
多孔質層間の気孔率差が上記所定値以下となる酸素分離膜エレメントは、気孔率のギャップにより多孔質層間に起こり得る多孔質層の変形や湾曲等が起こり難い。また、気孔率のギャップによる酸素分離膜の剥離やクラック等の発生が防止されるという効果を有する。
上記各酸化物はいずれも酸素イオン伝導性に優れるとともに、強度及び耐熱性に優れる。このため、これら酸化物のうちのいずれか、あるいは、上記各酸化物のうちのいずれか2種以上の組み合わせを構成要素とする多孔質層及び酸素分離膜を備えることにより、高い強度とともに酸素分離性能の向上を実現することができる。
多孔質支持体を構成する各多孔質層と酸素分離膜とが全て同じ組成で構成されると、その化学的性質が同等となるために、焼成時や高温での使用時における多孔質層の変形、湾曲や膜の剥離、クラックの発生等がより効果的に防止され得る。このため、機械的強度及び耐久性に特に優れた酸素分離膜エレメントである。また、膜と支持体の反応により、膜の導電性が低下するという問題も解消し得る。
本発明者らは、多孔質支持体の気孔率を高く、かつ酸素分離膜を薄く形成して酸素透過性を向上させつつ、酸素分離膜の剥離やクラック等の発生を防止可能な酸素分離膜エレメントの製造方法について鋭意検討した結果、積層タイプのセラミック多孔質支持体を構成する各層(焼成前のセラミック前駆体及び/又はセラミック原料から成る層をいう。以下「前駆体層」と略称する。)の焼成収縮率を酸素分離膜に向けて次第に増加させることにより、上記目的を達成することに成功した。即ち、多孔質支持体を構成する前駆体として相互に焼成収縮率の異なる前駆体層を少なくとも2つ積層する。このとき、酸素分離膜に向かって焼成収縮率が次第に増加するように積層体を形成する。このことにより、多孔質支持体全体の気孔率を比較的大きくしつつも焼成後における酸素分離膜とその膜に隣接する部分(多孔質支持体)との間の焼成収縮率差による応力を縮小し、酸素分離膜の剥離やクラック等の発生を防止することができる。このため、歩留りも向上し得る。
尚、本明細書中において「焼成収縮率」とは、所定の焼成温度でのそのもの(ここでは前駆体層)の焼成前の体積に対する焼成後の体積変化(低下)率(%)を意味し、次式にて示される。
焼成収縮率(%)={1−(焼成後の体積)/(焼成前の体積)}×100
多孔質支持体を構成する前駆体層を少なくとも2つ積層し、それらについて酸素分離膜に向かって焼成後の気孔率を次第に減少させることにより、得られる多孔質支持体の気孔率を全体として大きくしつつも酸素分離膜とその膜に隣接する多孔質支持体との間の気孔率差を縮小することができる。このため、多孔質支持体と酸素分離膜との間の気孔率のギャップによる応力を低減し、酸素分離膜の剥離やクラック等の発生を防止することができる。
多孔質支持体を構成する各前駆体層間の焼成後の気孔率差を上記所定値以下に形成することにより、前駆体層間の気孔率のギャップにより起こりえる多孔質支持体の変形や湾曲等を防止することができる。また、気孔率のギャップによる酸素分離膜の剥離やクラック等の発生を防止することができる。このため、歩留まりが向上し、生産効率を高くすることが可能である。
本発明者らは、各前駆体層をそれぞれ異なる材料から形成するとともに、酸素分離膜に近い多孔質層(前駆体層)を形成する材料ほど当該材料に含まれるセラミック原料粉末の平均粒径を小さくすることにより、多孔質支持体の各前駆体層間及び酸素分離膜の前駆体層とそれに隣接する多孔質支持体の前駆体層間の焼成収縮率差を低減し、或いは気孔率差を低減することに成功した。即ち、セラミック原料粉末の形状が大きくなるにしたがい当該粉末からなる成形体(この場合は前駆体層)の焼成収縮率が低く、或いは焼成後の気孔率は高くなる傾向にある。換言すれば、原料粉末の粒径が小さくなるにしたがい当該粉末から成る成形体の焼成収縮率が高く、或いは焼成後の気孔率は低くなる傾向にあることを見出した。この知見に基づいて、酸素分離膜に近い前駆体層ほど、原料粉末の粒径が小さい材料によって形成することにより、酸素分離膜に向かって焼成収縮率を次第に増大させるとともに、焼成後の気孔率を次第に減少させることが容易に行える。このため、多孔質支持体の気孔率を全体として大きくしつつも、酸素分離膜とその膜に隣接する多孔質支持体との間の焼成収縮率及び気孔率差を低減し、酸素分離膜の剥離やクラック等の発生を防止することができる。
この方法で形成される上記各酸化物セラミックはいずれも酸素イオン伝導性に優れるとともに、機械的強度及び耐熱性に優れる。このため、多孔質支持体及び酸素分離膜を形成する各前駆体層材料に含まれるセラミック原料粉末が焼成後においてこれら酸化物セラミックのうちのいずれか、あるいは、上記各酸化物セラミックのうちのいずれか2種以上が形成されるように調合されたものとすることにより、特に高い強度とともに酸素分離性能を向上することが可能である。
多孔質支持体と酸素分離膜とが焼成後において全て同じ組成の酸化物セラミックとなるようにセラミック原料粉末を調製することにより、得られる焼成体の性質(典型的には化学的性質)を同等とすることができる。このため、焼成収縮率差を極めて近似させることができ、焼成時や高温での使用時における多孔質支持体の変形、湾曲や膜の剥離、クラック等の発生をより効果的に防止することができる。従って、機械的強度及び耐久性に特に優れた酸素分離膜エレメントを好適に製造することができる。また、膜と支持体の反応により、膜の導電性が低下するという問題も解消し得る。
前記多孔質支持体を構成する各前駆体層をシート状に予め形成することにより、少なくとも2つの前駆体層を同時に積層可能とし、製造工程が簡易化されるとともに、製造時間も短縮される。また、各前駆体層の厚さをそれぞれ所望の厚さに選択して形成することが容易である。
尚、本明細書において、「平均粒径」とは、レーザ回折式粒度分布計を用いて測定した「平均粒径(D50)」をいう。また、「平均細孔径」及び「気孔率」は、「BET法(例えば、窒素吸着法)」若しくは「水銀圧入法」に基づく。
式中、Aeとしては、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれるいずれであってもよく、これらのうちの1種又は2種以上の組み合わせであってもよく、特に制限されない。このうち、Sr又はCaあるいはSrとCaとの2種の組み合わせが好ましく、かかる元素の含有率の高い組成のものが好適である。特に、AeがSrであるか、あるいはSrの含有率が高いこと(例えば、Ae中においてSrが50モル%以上含まれること)が好適である。
次に、式中、Mとしては、Fe、Mn、Ga、Ti、Co、Ni、Al、In、Sn及びZrからなる群から選ばれるいずれであってもよく、これらのうちの1種又は2種以上の組み合わせであってもよく、特に制限されない。このうち、Fe、Mn、Ga、又はTiのうちのいずれか、あるいはこれらのいずれか2種の組み合わせが好ましく、特にGa及び/又はFe、又はTi及び/又はFeが好適である。
La1−xAexMO3としては、具体的にはLa1−xSrxMnO3、(La1−x,Srx)(Ga1−y,Fey)O3、(La1−x,Srx)(Ti1−y,Fey)O3が挙げられる。
また、式中のxとしては、0<x<1の範囲内であればいずれの数をとってもよく、即ち、本発明の目的に応じてLa(1−x)とAe(x)との組成比は適宜選択される。同様に、上記式中のyとしては、0<y<1の範囲内であればよい。
また、本発明の酸素分離膜エレメントに係る多孔質支持体として好ましい他の1例は、酸化セリウムである。
なお、本発明に係る多孔質支持体には、その性能(酸素イオン伝導性、電子伝導性、クラック発生防止性等)を顕著に損なわない範囲で、上記各酸化物以外の成分を含有することができる。また、上記各酸化物のいずれの2種以上の組み合わせとすることもできる。
多孔質層は、いずれの多孔質層も平均細孔径rが好ましくは0.1μm<r<20μmの範囲であり、より好ましくは1μm<r<20μmの範囲であり、さらに好ましくは1μm<r≦15μmの範囲であり、特に好ましくは1μm<r≦10μmの範囲である。また、気孔率pは、好ましくは5%≦p≦60%の範囲であり、さらに好ましくは5%≦p≦50%の範囲であり、より好ましくは5%≦p≦40%の範囲であり、特に好ましくは5%≦p≦35%の範囲である。多孔質層の好適例としては、平均細孔径rが0.1μm<r<20μmの範囲であり、かつ気孔率pが5%≦p≦60%の範囲であるもの、平均細孔径rが1μm<r<20μmの範囲であり、かつ気孔率pが5%≦p≦60%の範囲であるもの、平均細孔径rが1μm<r<20μmの範囲であり、かつ気孔率pが5%≦p≦50%の範囲であるもの、平均細孔径rが1μm<r<20μmの範囲であり、かつ気孔率pが5%≦p≦40%の範囲であるもの、平均細孔径rが1μm<r≦15μmの範囲であり、かつ気孔率pが5%≦p≦40%の範囲であるもの、平均細孔径rが5μm≦r≦15μmの範囲であり、気孔率pが5%≦p≦35%の範囲であるものが挙げられる。このような所定の範囲内の平均細孔径及び気孔率を両立して有することにより、機械的強度が高く、酸素イオン伝導性(即ち、酸素分離膜におけるガス接触面積の充分な確保)に優れる。
この最外多孔質層の厚さは、多孔質支持体全体の好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上、又は50%以上であり得る。多孔質支持体に対する最外多孔質層の割合をこのような所定範囲以上とすることにより、支持体の良好なガス透過性を得ることができる。
また、互いに隣接する多孔質層は、いずれかの層に対する他方の層の厚さの差が±70%以内、好ましくは50%以内、特に30%以内とすることが最適である。例えば、一方の層の厚さを100mmとした場合、隣接する他方の層は好ましくは30〜170mm、より好ましくは50〜150mm、さらに好ましくは70〜130mmの範囲とする。層の厚さの差を所定範囲内とすることにより、多孔質支持体の湾曲や変形等の発生をより効果的に防止する。
また、好ましい態様において、機械的強度は、JIS R1601に従い測定した三点曲げ強度が10MPa以上、特に20MPa以上である。
本発明に係る酸素分離膜は、酸素イオン伝導性を有する酸化物であればよく、特定のいくつかの化合物に限定されるものではなく、従来公知のいずれの酸素イオン伝導性を有する酸化物を使用可能である。このような酸化物のうち、好ましい酸化物は、本発明に係る多孔質支持体において説明した酸化物と同様なものが挙げられる。即ち、一般式:La1−xAexMO3で示される複合酸化物、安定化ジルコニア、及び酸化セリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種から構成されるものが挙げられる。このうち、特に好適なものについては、上記多孔質支持体と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
また、本発明に係る酸素分離膜には、その性能(酸素イオン伝導性、電子伝導性、クラック発生防止性等)を顕著に損なわない範囲で、上記各酸化物以外の成分を含有することができる。
酸素分離膜エレメントに係る酸素分離膜としては、用途に応じて適宜膜厚を選択することができるが、通常酸素イオン伝導性が良好である10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは10〜180μm、更に好ましくは10〜150μm、特に好ましくは10〜100μmである。
ここで開示される製造方法では、多孔質支持体を構成する複数の前駆体層及び酸素分離膜を構成する前駆体層を調製し、積層する。多孔質支持体を構成する前駆体層は、焼成後に多孔質支持体を構成する従来公知のセラミック原料を主体とする材料から形成することができる。また、酸素分離膜を構成する前駆体層は、焼成後に酸素イオン伝導性を有する酸化物であれば特に限定されず、従来公知のいずれの酸素イオン伝導性酸化物又は焼成後にこの酸化物となるものを用いることができる。
多孔質支持体を構成する各前駆体層のうち、酸素分離膜を構成する前駆体層と隣接する「隣接前駆体層」を形成する原料粉末は、上記最外前駆体層を形成する原料粉末と酸素分離膜を構成する原料粉末との間の平均粒径を有する。隣接前駆体層は、酸素分離膜を構成する前駆体層の原料粉末の平均粒径との差が、好ましくは50μm以下、特に30μm以下である。酸素分離膜を構成する前駆体の原料粉末との平均粒径差がこの範囲以下であると、特に焼成収縮率や気孔率差により焼成時や高温での使用時に酸素分離膜にかかる応力を低減し、酸素分離膜の剥離やクラック等の発生防止効果が高い。従って、この隣接多孔質層の原料粉末の平均粒径は、好ましくは、5〜50μm、より好ましくは10〜50μm、特に20〜40μmである。
また、酸素分離膜を構成する前駆体の原料粉末の平均粒径は、好ましくは1〜30μm、特に1〜15μmである。このような所定範囲の平均粒径を有することにより、特に緻密で酸素イオン伝導性に優れる酸素分離膜を得ることができる。
各前駆体層は、予め前駆体層ごとにシート状に形成し、これを積層して一体成形してもよい。シート状に形成する手段としては、上記と同様な成形手段が挙げられる。また、上記可塑性固形物をシート状に形成して用いてもよい。あるいは、最外前駆体層を予めシート状に形成し、これに各前駆体層を形成するための原料粉末を含むスラリー等を順に塗布・乾燥することによって積層することもできる。例えば、各前駆体層の原料粉末を有機溶剤等のバインダーに分散させたスラリーを用いたディップコーティング法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法が挙げられる。
特にディップコーティング法は、多孔質支持体の前駆体内部への浸透を抑制でき、さらには熱分解に伴うガス発生、キャピラリー圧力、焼成収縮等による微細構造の破壊を抑制するのに寄与し得る。このため、特にディップコーティング法は、実質的に欠陥の無い酸素分離膜を多孔質支持体表面部に直接的に形成するのに好適な方法である。
酸素分離膜としては、用途に応じて適宜膜厚を決定することができるが、通常酸素イオン伝導性が良好である10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは10〜180μm、更に好ましくは10〜150μm、特に好ましくは10〜100μmである。
尚、本発明では、前記触媒担持法に限定されるものではなく、例えば、支持体において空気側と反応側のいずれにも担持することができる。また、前記以外の従来公知のいずれの触媒材料を適用することも可能である。
本発明の酸素分離膜エレメントは、各種酸素イオン伝導性を発揮する用途、例えば、燃料電池等に好適に使用することができる。
市販の(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3粉末をバインダー及び分散剤と混合し、ボールミルを用いてよく混練した。その後、100℃にて24時間乾燥し、同組成の凝集体を得た。次に該凝集体を仮焼して解砕し、表1に示す粒径の各原料粉末を得た。尚、(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3原料粉末の粒径は、レーザ回折式粒度分布計を用いて測定し、あわせて平均粒径を求めた。
上記実施例1において得られたそれぞれの原料粉末について、1500℃における焼成収縮率を測定した。まず各原料粉末をバインダー及び分散剤とボールミルを用いてよく混練し可塑性固形物とし、100MPaの圧力下にプレス成形機において直径25mm、厚さ3mmの成形体にプレス成形した。この成形体の体積を外寸(外径及び厚み)により求めた。次いで、大気中において1℃/分の昇温速度で200〜500℃に昇温し、10時間保持して、有機物を分解除去した。さらに大気中において1℃/分の昇温速度で1500℃まで昇温し、3時間保持した。その後、同様に体積を測定した。得られた成形体及び焼成体の体積により、前記式から焼成収縮率を算出した。また、各原料粉末の1500℃における焼成後の得られた成形体の平均細孔径及び気孔率を水銀圧入法により測定した。結果を表1に示す。
表1の結果から、原料粉末の平均粒径が大きくなるに従い、焼成収縮率が低下する傾向にあることが判る。さらに、原料粉末の平均粒径が大きくなるに従い、得られた成形体の気孔率及び平均細孔径が増大する傾向にあることが判る。
実施例1により得られた各原料粉末をバインダー及び分散剤とボールミルを用いてよく混練し可塑性固形物とした。この各原料粉末による可塑性固形物を表2に示す各厚さで組み合わせて順にプレス型において多層状に積層して(即ち、膜の形成方向に対してほぼ直交する方向に)充填し、100MPaの圧力下にプレス成形機においてプレス成形した。さらに100℃で10時間乾燥して多孔質支持体前駆体を得た。
次いで得られたスラリー液中に、上記で得られた各多孔質支持体前駆体の一層目の表面部を20秒間ディップ(浸漬)しスラリーを多孔質支持体前駆体の一層目の表面部に均等に積層した。その後、多孔質支持体前駆体をスラリー液から引き上げ、60℃で4時間乾燥した。そして、大気中においてまず200〜500℃に昇温し、10時間保持して、有機物を分解除去した。さらに大気中において1500℃まで昇温し、3時間保持することにより、多孔質支持体前駆体及びスラリーを焼成し、その後放冷して多孔質支持体及びその一層目の表面部上に(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3酸素分離膜を形成した。尚、酸素分離膜の厚さは電子顕微鏡(SEM)により観察して測定したところ、50μmであった。
尚、本実施例においては、酸素分離膜形成用のスラリーをディップコートする前に、多孔質支持体前駆体をプレス成形している。しかし、多孔質支持体前駆体を積層後に酸素分離膜形成用のスラリーをコートしてから、プレス型において多孔質支持体前駆体及び酸素分離膜前駆体(スラリー)を同時にプレス成形することもできる。
上記実施例3と同様にして酸素分離膜エレメントを各20個製造し、その機械的強度、即ち、酸素分離膜の剥離やクラック、多孔質支持体の湾曲や変形等の発生頻度を観察した。結果を表3に示す。
実施例3において得られた酸素分離膜エレメントのサンプルNo.1に触媒を担持した。
まず、多孔質支持体中に酸素イオン透過促進触媒を担持した。
市販のLa0.6Sr0.4Co酸化物粉末(粒径;2μm)に、分散媒としての水、バインダー、及び分散剤を添加して混合し、ボールミルを用いてよく混練した。次いで得られたスラリー液を、エレメントの支持体内に3時間含浸させた後、100℃で5時間乾燥した。さらに大気中電気炉において1℃/分の昇温速度にて1000℃まで昇温し、この温度にて1時間保持することによりスラリーを焼成した。
酸化ニッケル粉末(粒径;5μm)を水に分散してスラリーを得た。このスラリーを酸素分離膜の表面部に均等に塗布した。その後、酸素分離膜を乾燥した。さらに大気中電気炉において1℃/分の昇温速度にて1000℃まで昇温し、この温度にて1時間保持することによりスラリーを焼成した。
尚、同様に、実施例3において得られた酸素分離膜エレメントのサンプルNo.2及び3についても、触媒を担持することができる。
上記実施例3及び実施例5において得られた酸素分離膜エレメントの酸素イオン伝導性について試験した。
図1にその説明図を示す。前記実施例3又は5の酸素分離膜エレメント円板1を、酸素分離膜3側を燃料側、支持体5側を空気側として配置した。そして、上下2個の燃料(反応)側のアルミナ製円筒管7及び空気側のアルミナ製円筒管9の間に挟んで配置した。これらアルミナ製円筒管7,9及び酸素分離膜エレメント円板1の接触部をガラス系シール11で密閉した。また、燃料側及び空気側のアルミナ製円筒管7,9には、ともにガス導入路としてアルミナ内管13,15を設置した。このように構成される酸素イオン伝導性評価用モジュール17を、例えばヒータ18により1000℃まで加熱した。実施例5の酸素分離膜エレメントにあっては、燃料側のアルミナ内管13から混合ガス(水素10%+アルゴン90%)を導入し、Ni酸化物を還元した。次いで、燃料側のアルミナ内管13から純メタンガスを20cc/分で導入し、空気側のアルミナ内管15からは空気を20cc/分で導入した。尚、実施例5の酸素分離膜エレメントにあっては、メタンガス流量を200cc/分とした。この試験を3時間連続して行った。この間にアルミナ製円筒管7から放出された合成ガスをガスクロマトグラフで測定した。合成ガス中の酸素及びメタンガスによる反応生成物中の酸素濃度と流量及び酸素分離膜エレメント円板1の酸素透過部面積より酸素透過速度を算出した。結果を表4に示す。
また、本明細書に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
3・・酸素分離膜
5・・支持体
7,9・・アルミナ製円筒管
13,15・・アルミナ内管
17・・酸素イオン伝導性評価用モジュール
Claims (12)
- 多孔質支持体表面部の少なくとも一部に、酸素イオン伝導性を有する酸素分離膜を形成した酸素分離膜エレメントであって、
前記多孔質支持体は、膜の形成方向に対してほぼ直交する方向に積層された、相互に気孔率の異なる少なくとも2つの多孔質層を有し、
該積層された多孔質層は、気孔率が前記酸素分離膜に向かって次第に減少するように構成されている、酸素分離膜エレメント。 - 前記多孔質層は、いずれも平均細孔径rが0.1μm<r<20μmの範囲であり、気孔率pが5%≦p≦60%の範囲である、請求項1記載の酸素分離膜エレメント。
- 前記多孔質支持体において、互いに隣接する前記多孔質層間の気孔率差が20%以内であって、前記酸素分離膜と該膜に隣接する多孔質層との気孔率差が5%以内である、請求項1又は2記載の酸素分離膜エレメント。
- 前記多孔質層及び前記酸素分離膜は、一般式:La1−xAexMO3
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Ni、Al、In、Sn及びZrからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物、安定化ジルコニア及び酸化セリウムからなる群からそれぞれ独立に選ばれる少なくとも1種の酸化物から実質的に構成されている、請求項1〜3のうちのいずれかに記載の酸素分離膜エレメント。 - 前記多孔質層と前記酸素分離膜とは、いずれも同じ組成の酸化物から実質的に構成されている、請求項1〜4のうちのいずれかに記載の酸素分離膜エレメント。
- セラミック製多孔質支持体表面部の少なくとも一部に、酸素イオン伝導性を有する酸素分離膜を備えた酸素分離膜エレメントの製造方法であって、
前記多孔質支持体を構成する相互に焼成収縮率の異なる少なくとも2つの前駆体層と、前記酸素分離膜を構成する前駆体層とを、前記酸素分離膜を構成する前駆体層に向かって焼成収縮率が次第に増加するように積層し、該積層体を一体成形する工程と、該成形体を焼成する工程と、を含む酸素分離膜エレメントの製造方法。 - 前記多孔質支持体を構成する各前駆体層と前記酸素分離膜を構成する前駆体層とを、焼成後の気孔率が前記酸素分離膜を構成する前駆体層に向かって次第に減少するように形成する、請求項6記載の製造方法。
- 前記多孔質支持体を構成する各前駆体層は、互いに隣接する前駆体層間の焼成後の気孔率差が20%以内であって、前記酸素分離膜と隣接する前駆体層と前記酸素分離膜を構成する前駆体層との焼成後の気孔率差が5%以内となるように形成する、請求項7記載の製造方法。
- 前記積層体の各前駆体層は、セラミック原料粉末を主体とする材料であって、該原料粉末の平均粒径が相互に異なる材料からそれぞれ形成されており、
これら材料は、前記酸素分離膜を構成する前駆体層形成用材料のセラミック原料粉末の平均粒径が最も小さく、該酸素分離膜から離れた前駆体層を形成する材料ほどセラミック原料粉末の平均粒径が大きいことを特徴とする、請求項6〜8のうちのいずれかに記載の製造方法。 - 前記積層体の各前駆体層はそれぞれセラミック原料粉末を主体とする材料から形成されており、各前駆体層を形成する材料に含まれるセラミック原料粉末は、焼成後において、一般式:La1−xAexMO3
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Ni、Al、In、Sn及びZrからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物、安定化ジルコニア及び酸化セリウムからなる群からそれぞれ独立して選ばれる少なくとも1種の酸化物セラミックとなるように調製されている、請求項6〜9のうちのいずれかに記載の製造方法。 - 前記積層体の各前駆体層はそれぞれセラミック原料粉末を主体とする材料から形成されており、各前駆体層を形成する材料に含まれるセラミック原料粉末は、焼成後において、同じ組成の酸化物セラミックとなるように調製されている、請求項6〜10のうちのいずれかに記載の製造方法。
- 前記多孔質支持体を構成する各前駆体層は、予めシート状に形成されている、請求項6〜11のうちのいずれかに記載の製造方法。
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