JP4356921B2 - 酸素分離膜用支持体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素分離膜用支持体及びその製造方法に関する。特に酸素イオン伝導性に優れた酸素分離膜用支持体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高温(例えば500℃以上)において酸素イオンを選択的に透過させる性質を有するセラミック(酸素イオン伝導体)が知られている。このような酸素イオン伝導体から形成されたセラミック材は、酸素を含有する混合ガスから酸素を分離する等の目的に利用することができる。例えば、酸素イオン伝導体として酸化ジルコニウムを用いる酸素分離方法が知られている。この種の技術としては、特許文献1〜3に開示されたもの等がある。
【0003】
一方、酸素イオン伝導体のなかには、酸素イオン伝導性とともに電子伝導性(ホール伝導性を含む意味である。)を示すものがある。このような酸素イオン伝導体は、電子−酸素イオン混合伝導体(以下、単に「混合伝導体」ともいう。)と呼ばれることもある。かかる混合伝導体からなる膜状セラミック材は、このセラミック材自体が電子伝導性を有することから、両面を短絡させるための外部電極や外部回路等を用いることなく、一方の面から他方の面へと連続して酸素イオンを透過させることができる。この種の技術としては、特許文献4〜22に開示されたもの等がある。
また、このような酸素イオン伝導体から形成されたセラミック材は、炭化水素の部分酸化反応等の酸化用反応装置にも利用することができる。例えば、このセラミック材を膜状(薄い層状のものを包含する。)に形成し、その一方の表面を酸素を含むガスに接触させ、他方の表面を炭化水素(メタン等)を含むガスに接触させる。これにより、膜状セラミック材の一方の表面からこのセラミック材を透過して供給される酸素イオンによって、セラミック材の他方の表面に接触した炭化水素を酸化させることができる。
【0004】
これらのうち代表的な酸素イオン伝導体として、ペロブスカイト型の複合酸化物、例えば、La−Sr−Co系複合酸化物やLa−Sr−Mn系複合酸化物等が知られている。これら複合酸化物は、高い酸素イオン伝導性と電子伝導性を有するため、上記用途に有用である。特に、多孔質支持体上に緻密な薄膜として形成した場合には、強度が向上されるとともに酸素イオンの透過距離が短縮されるために酸素イオン伝導性を向上することができ、分離能力に優れている。使用可能な多孔質支持体としては、強度及び耐熱性に優れるアルミナ多孔質支持体が一般的である。
ところが、アルミナ多孔質支持体では、上記複合酸化物等の酸素イオン伝導体から構成される膜との熱膨張率差により膜焼成時や高温での使用時において膜の剥離やクラックの生成が起こる場合がある。酸素分離膜用支持体ではないが、特許文献23には多孔質支持体が膜と同じ材料により構成されるセラミック体が開示されている。多孔質支持体と膜とを同じ材料により構成させると、熱膨張率差は同等となり、膜の剥離やクラックの発生を防止し得る。
【0005】
【特許文献1】
特許第3173724号公報
【特許文献2】
特開平9−299749号公報
【特許文献3】
特表平8−503193号公報
【特許文献4】
特開昭56−92103号公報
【特許文献5】
特開平10−114520号公報
【特許文献6】
特開平11−335164号公報
【特許文献7】
特開平11−335165号公報
【特許文献8】
特開2000−154060号公報
【特許文献9】
特開2001−93325号公報
【特許文献10】
特開2001−104741号公報
【特許文献11】
特開2001−104742号公報
【特許文献12】
特開2001−106532号公報
【特許文献13】
特開2001−269555号公報
【特許文献14】
特開2002−12472号公報
【特許文献15】
特開2002−97083号公報
【特許文献16】
特許第2533832号公報
【特許文献17】
特許第2813596号公報
【特許文献18】
特許第2966340号公報
【特許文献19】
特許第2966341号公報
【特許文献20】
特許第2993639号公報
【特許文献21】
米国特許第5,306,411号明細書
【特許文献22】
米国特許第5,356,728号明細書
【特許文献23】
特開平3−37172号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、酸素分離膜用支持体として、多孔質支持体を膜と同じ性状の材料により構成すると、膜の焼成温度、即ち、膜の緻密化温度において、多孔質支持体も同様に緻密化され、平均細孔径が小さくなり気孔率も低下する傾向にある。このような多孔質支持体の使用は、膜と被処理ガスとの接触効率が低下するため、結果的に酸素イオン伝導性が劣り、好ましくない。
そこで本発明は、上記課題を解決し、酸素分離膜と熱膨張率差が少なく、かつ高い酸素イオン伝導性を維持し得る酸素分離膜用支持体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
本発明によって提供される酸素分離膜用支持体の製造方法の好ましい一態様は、一般式:La1−xAexMO3
で示される複合酸化物粉末から構成される原料粉末であって、平均粒径が20〜100μmである原料粉末を用意する工程と、該原料粉末を用いて所定形状の成形体を成形する工程と、該成形体を1200〜1800℃にて、酸化性雰囲気又は不活性ガス雰囲気下で焼成する工程と、を有する。ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Ni、Al、In、Sn及びZrからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす。
【0008】
【0009】
【0010】
本発明者らは、高い酸素イオン伝導性を有する酸素分離膜として好適なLa1−xAexMO3複合酸化物の支持体として同じ組成の材料から構成される多孔質支持体の製造方法について鋭意検討した結果、原料粉末として所定粒径以上のものを限定して用いることにより、酸素分離膜の焼成温度、即ち膜の緻密化温度においても、緻密化を防止し、膜の高い酸素イオン伝導性を維持し得る気孔率と平均細孔径とを保持することができることに成功した。具体的には、平均粒径が10μm以上(好ましくは20〜100μm)の原料粉末を使用することにより、高温焼成時における緻密化が急激に抑制されることを見出した。また、膜焼成時と同等又はそれ以上の所定範囲の焼成温度において焼成することにより、膜焼成時における耐熱性に優れ、上記膜焼成時にも膜焼成前と同等な気孔率及び平均細孔径を保持することができる。
尚、ここで、平均粒径とは、レーザー回折式粒度分布計を用いて測定した「平均粒径(D50)」をいう。
【0011】
本発明の製造方法として、平均粒径が約50〜100μmの原料粉末を使用すると、高温焼成時における多孔質体の緻密化防止効果が高く、酸素分離膜用支持体として最適な気孔率と平均細孔径を実現した支持体を製造することができる。また、機械的強度に優れる支持体を製造することができる。
【0012】
また、本発明は、支持体と同じ組成の材料から構成される酸素分離膜用の支持体を提供する。好ましい一つの支持体は、本願製造方法によって得られた酸素分離膜用の多孔質支持体であって、一般式:La1−xAexMO3で示される複合酸化物から構成される多孔質体であり、平均細孔径が5μm以上20μm未満であり、気孔率が8%以上45%以下である。ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Ni、Al、In、Sn及びZrからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす。尚、本明細書中において、「平均細孔径」及び「気孔率」は、「BET法(例えば、窒素吸着法)」若しくは「水銀圧入法」に基づく。
【0013】
【0014】
本発明者らは、高い酸素イオン伝導性を有する酸素分離膜として好適なLa1−xAexMO3複合酸化物、安定化ジルコニア又は酸化セリウムの支持体として同じ組成の材料から構成される多孔質支持体それぞれについて鋭意検討した結果、所定の気孔率かつ所定の平均細孔径の多孔質体が酸素分離膜用支持体として好適であることを見出した。気孔率及び平均細孔径のいずれかが上記所定の範囲よりも小さい場合には、酸素分離膜の支持体側におけるガス接触面積が小さいために結果として酸素イオン伝導性が低下する傾向にあり、或いは、気孔率及び平均細孔径のいずれかが上記所定の範囲よりも大きい場合には、酸素分離膜の酸素イオン伝導性を高く維持し得るものの支持体自体の機械的強度に劣る傾向にある。即ち、気孔率及び平均細孔径のうち、いずれか一方が上記所定範囲を逸脱しても支持体としての性能が低下する傾向にある。本発明によって提供される酸素分離膜用支持体は、機械的強度に優れ、酸素分離膜の支持体側のガス接触面積を充分に確保している。また、支持体自身にも酸素イオン伝導性があるため、酸素分離膜用支持体として極めて有用である。
【0015】
上記平均細孔径が5μm以上20μm未満であり、また、上記気孔率が8%以上45%以下である態様の酸素分離膜用支持体によれば、特に酸素イオン伝導性に優れるとともに、高い機械的強度を実現することができる。
【0016】
ここで提供される酸素分離膜用支持体として好ましいものは、1300℃以上の高温条件下、例えば1300℃の大気中において、上記平均細孔径及び上記気孔率が上記平均細孔径及び上記気孔率の範囲内に保持される。
このような高温条件下、典型的には、膜の焼成温度と同等の条件下においても所定範囲の平均細孔径及び気孔率が保持されると、上記膜焼成時及び酸素分離膜使用時における耐熱性に優れる。具体的には、膜焼成後及び使用時にも同等な気孔率及び平均細孔径を保持し得る。
【0017】
好ましくは、ここに開示される酸素分離膜用支持体は、本発明の製造方法により製造することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば原料粉末の組成や平均粒径等)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば原料粉末の混合方法や押出成形等の成形技法、焼成の手順等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0019】
本発明の酸素分離膜用支持体の製造方法において用いられる原料粉末のうちの1種は、一般式:La1−xAexMO3で示される複合酸化物である。
式中、Aeとしては、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれるいずれであってもよく、これらのうちの1種又は2種以上の組み合わせであってもよく、特に制限されない。このうち、Sr又はCaあるいはSrとCaとの組み合わせが好ましく、かかる元素の含有率の高い組成のものが好適である。特に、AeがSrであるか、あるいはSrの含有率が高いこと、具体的にはAe中においてSrが50モル%以上含まれることが好適である。
次に、式中、Mとしては、Fe、Mn、Ga、Ti、Co、Ni、Al、In、Sn及びZrからなる群から選ばれるいずれであってもよく、これらのうちの1種又は2種以上の組み合わせであってもよく、特に制限されない。このうち、Fe、Mn、Ga、又はTiのうちのいずれか、あるいはこれらのいずれか2種の組み合わせが好ましく、特にGa及び/又はFe、又はTi及び/又はFeであることが好適である。
La1−xAexMO3としては、具体的にはLa1−xSrxMnO3、(La1−x,Srx)(Ga1−y,Fey)O3、(La1−x,Srx)(Ti1−y,Fey)O3が挙げられる。
また、式中のxとしては、0<x<1の範囲内であればいずれの数をとってもよく、即ち、本発明の目的に応じてLa(1-x)とAe(x)との組成比は適宜選択される。同様に、上記式中のyとしては、0<y<1の範囲内であればよい。
【0020】
ここで、上記一般式において酸素原子数は3であるように表示されているが、実際には酸素原子の数は3以下(典型的には3未満)である。ただし、この酸素原子数は複合酸化物構造の一部を置換する原子(ここではAeおよびM)の種類および置換割合その他の条件により変動するため、正確に表示することは困難である。そこで、本明細書中において複合酸化物を示す一般式では酸素原子の数を便宜的に3として表示するが、ここで教示する発明の技術的範囲を限定することを意図したものではない。したがって、この酸素原子の数を例えば3−zと書く(例えば、上記一般式をLa1−xAexMO3―zと表示する)こともできる。ここでzは、典型的には1を超えない正の数(0<z<1)である。
【0021】
また、上述した複合酸化物に代えて、あるいはこれらとともに、酸化セリウム粉末を用いることができる。
【0022】
使用する原料粉末は、上記平均粒径範囲に属する平均粒径を有する酸化物粉末であれば、いずれの入手可能な粉末を用いてもよい。市販品をそのまま用いてもよい。
或いは、平均粒径が上記所定の平均粒径範囲内にない酸化物を用いる場合、所定の粒径に造粒、仮焼して原料粉末とすることができる。その手段としては、いずれの手段であっても特に限定されない。例えば、上記酸化物を所定量のバインダー、分散剤等の添加剤と混合し、ボールミル等によりよく混練し、乾燥して凝集体を得る。次に該凝集体を仮焼して粒径を成長させ、所望により解砕することにより、所望の粒径の原料粉末を得ることができる。或いは、上記酸化物に所定量のバインダー、分散媒、分散剤等の添加剤を加えてスラリー状にした後、スプレードライヤー等により加熱乾燥及び仮焼して、所望の粒径の原料粉末を得ることができる。
【0023】
又は、焼成中に分解して酸化物になるもの、例えば、種々の水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、有機酸塩類等を大気中、好ましくは酸素雰囲気中において所定の温度域で焼成する。このことによっても所定の粒径の上記いずれかの原料粉末を得ることができる。若しくは上記La1−xAexMO3で示される複合酸化物の場合には、各組成成分となるLa、Ae、及びMの化合物(典型的には酸化物)を所定の比率(モル比)になるように混合し、同様に焼成することによっても所定の粒径の原料粉末を得ることができる。
なお、使用する原料粉末には、その性能(酸素イオン伝導性、電子伝導性、クラック発生防止性等)を顕著に損なわない範囲で、上記各酸化物以外の成分を含有することができる。
【0024】
本発明の製造方法によれば、原料粉末として上記所定範囲の平均粒径を有するものを使用することにより、酸素分離膜と同じ組成の支持体であっても膜焼成時にも緻密化を防止することができる、また、従来得ることが困難であった所定の気孔率及び平均細孔径を安定して保持させることができる。さらに酸素イオン伝導性を有する酸素分離膜用支持体を得ることができる。原料粉末の平均粒径は、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上、更に好ましくは50μm以上、特に好ましくは50〜100μmの範囲である。このような範囲であると、酸素分離膜用支持体として好適な気孔率及び平均細孔径を安定して容易に得ることができる。
【0025】
原料粉末を所定形状の成形体に成形する手段としては、従来公知のいずれの成形手段を採用することができる。例えば、一軸圧縮成形、静水圧プレス、押出し成形等の、従来公知の成形法を特に制限なく採用することができる。この成形のために従来公知のバインダー等を使用してもよい。
この成形体の形状は特に限定されない。具体的には、平面状、曲面状、管状(両端が開口した開管状のもの、一端が開口しており一端が閉じている閉管状のもの等を含む)、ハニカム状等の各種形状を含む。成形体の厚さは、特に限定されないが、例えば、平面状の場合、或いは管状の場合、0.5〜50mmとすることができ、好ましくは1〜20mm、より好ましくは2〜10mm、さらに好ましくは2〜5mmである。この範囲内の厚さに形成することにより、特に機械的強度に優れるとともに、膜のガス接触面積比率を向上させた多孔質体を提供することができる。
【0026】
得られた成形体を焼成する場合、焼成温度域(最高焼成温度)は酸素分離膜用支持体の組成により適宜決定されるが、酸素分離膜の焼成温度が1200〜1800℃である場合には、通常1200〜1800℃、好ましくは1300〜1700℃、特に1300〜1600℃、さらには1400〜1500℃程度が好適である。焼成温度が酸素分離膜の焼成温度域以下であると、酸素分離膜焼成時に多孔質支持体が焼結収縮して、気孔率低下の虞がある。また、焼成時間は、成形体の性状に応じて異なり得るが、1〜15時間程度、例えば1〜12時間、好適には3〜10時間、例えば3〜5時間程度行われる。尚、有機物添加剤、例えば、バインダーや分散剤等を予め分解除去して均一な細孔を得るために、本焼成前に予め一回以上の仮焼成を行っても良い。仮焼成は上記本焼成よりも低く有機物が分解可能な温度、例えば、100〜1000℃、好ましくは200〜500℃程度で3〜15時間、好ましくは8〜12時間程度行われる。仮焼成後に最高焼成温度まで昇温して本焼成を行う。ここで、昇温速度は特に限定されないが、通常1〜10℃/分、好ましくは1〜2℃/分である。焼成雰囲気としては、上記複合酸化物が焼結される酸化性雰囲気又は不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。
【0027】
次に、本発明の酸素分離膜用支持体について説明する。
本発明の酸素分離膜用支持体は、上述した一般式:La1−xAexMO3で示される複合酸化物から構成される多孔質体であり得る。或いは、酸化セリウムから構成される多孔質体であり得る。尚、各酸化物の組成等については上記製造方法において説明したものと同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0028】
ここに開示される酸素分離膜用支持体は、平均細孔径rが好ましくは0.1μm<r<20μmの範囲であり、より好ましくは1μm<r<20μmの範囲であり、さらに好ましくは5μm≦r<20μmの範囲であり、特に好ましくは5μm≦r≦15μmの範囲である。また、気孔率pは、好ましくは5%≦p≦60%の範囲であり、さらに好ましくは10%≦p≦50%の範囲であり、より好ましくは20%≦p≦45%の範囲であり、特に好ましくは20%≦p≦35%の範囲であり、最も好ましくは27%≦p≦35%の範囲である。ここで開示される支持体の好適例として、平均細孔径rが1μm<r<20μmの範囲であり、かつ気孔率pが5%≦p≦60%の範囲であるもの、平均細孔径rが5μm≦r<20μmの範囲であり、かつ気孔率pが10%≦p≦50%の範囲であるもの、平均細孔径rが5μm≦r<20μmの範囲であり、かつ気孔率pが20%≦p≦45%の範囲であるもの、平均細孔径rが5μm≦r≦15μmの範囲であり、かつ気孔率pが20%≦p≦45%の範囲であるもの、平均細孔径rが5μm≦r≦15μmの範囲であり、気孔率pが27%≦p≦35%の範囲であるものが挙げられる。また、平均細孔径が0.1μm<r<5μmであって、かつ気孔率が30%≦p≦50%であるものも好ましい。このような所定の範囲内の平均細孔径及び気孔率を両立して有することにより、従来得ることができなかった高い機械的強度と、優れた酸素イオン伝導性(即ち、酸素分離膜におけるガス接触面積の充分な確保)とを満足して両立することが可能となった。ここで開示される支持体自身も酸素イオン伝導性を有しており、酸素分離膜の支持体として有用である。
【0029】
ここで開示される酸素分離膜用支持体は、好ましい態様において、通常1200℃以上、好ましくは1300℃以上(例えば、1300〜1500℃)、特に好ましくは1500℃以上(例えば、1500〜1700℃)の高温条件下にも所定の平均細孔径及び気孔率を保持し得る。従って、ここで開示される支持体は、かかる高温条件下で使用される(例えば、燃料電池システムの改質器)酸素分離膜の支持体として好適に用いることができる。
また、好ましい態様において、機械的強度は、JIS R1601に従い測定した三点曲げ強度が10MPa以上であり得る。特に20MPa以上であり得る。
【0030】
酸素分離膜は、酸素分離膜用支持体の一方の表面にのみ形成してもよく、或いは酸素分離膜用支持体の両側に形成することもできる。本発明の酸素分離膜用支持体は、酸素分離膜を形成して、各種酸素イオン伝導性を発揮する用途、例えば、燃料電池等に好適に使用することができる。
【0031】
【実施例】
以下に説明する実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0032】
<実施例1及び比較例1:(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3から構成される支持体の製造>
市販の(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3粉末をバインダー及び分散剤と混合し、ボールミルを用いてよく混練した。その後、100℃にて24時間乾燥し、同組成の凝集体を得た。次に該凝集体を仮焼して解砕し、表1に示す粒径の各原料粉末を得た。尚、(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3原料粉末の粒径は、レーザ回折式粒度分布計を用いて測定し、あわせて平均粒径を求めた。
次いで、得られた(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3原料粉末をバインダー及び分散剤と混合し、ボールミルを用いてよく混練した。その後、100℃にて24時間乾燥し、同組成の凝集体を得た。これをボールミルを用いてそれぞれ解砕した。
これを100MPaの圧力下にプレス押出し機においてプレス押出しし、直径25mm、厚さ3mmの円板状に成形した。
得られた成形体を大気中においてまず200〜500℃に昇温し、10時間保持して、有機物を分解除去した。その後大気中において1500℃まで昇温し、3時間保持して成形体を焼成した。
【0033】
<実施例2及び比較例2:(La0.6,Sr0.4)(Ti0.3,Fe0.7)O3から構成される支持体の製造>
市販の(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3粉末の代わりに、市販の(La0.6,Sr0.4)(Ti0.3,Fe0.7)O3粉末を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして多孔質支持体を得た。
【0034】
<実施例3及び比較例3:安定化ジルコニアから構成される支持体の製造>
市販の(La0.7,Sr0.3)(Ga0.6,Fe0.4)O3粉末の代わりに、イットリア安定化ジルコニアを用いた以外は、上記実施例1と同様にして多孔質支持体を得た。
【0035】
<平均細孔径、気孔率及び三点曲げ強度の測定並びに電子顕微鏡による観察>
上記実施例1〜3において得られたそれぞれの支持体、及び比較例1〜3において得られたそれぞれの支持体について、平均細孔径及び気孔率をBET法(窒素吸着法)により測定した。また、三点曲げ強度をJIS R1601に従い、測定した。結果を表1に示す。
また、実施例1のNo.2の支持体については、電子顕微鏡(SEM)により観察した写真を図1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1の結果から明らかなように、比較例1〜3の支持体は、三点曲げ強度には優れるものの、平均細孔径が0.1μm以下であって、気孔率も2.5%以下であった。従って、酸素分離膜用支持体として好適ではない。
これに対して、実施例1〜3の支持体は、いずれも0.1μmを超える平均細孔径と5%以上の気孔率を有していた。特に、実施例1のNo.1及び2、実施例2のNo.1及び2、さらに実施例3のNo.1及び2では、平均細孔径が5μm以上20μm以下であって、かつ気孔率が20%以上45%以下であった。従って、酸素分離膜用支持体として好適である。この平均細孔径及び気孔率は、原料粉末の平均粒径に依存し、原料粉末の平均粒径が大きくなるに従い増大していることが判る。
また、図1から明らかなように、実施例1のNo.2の支持体は、緻密化されずに十分な大きさの平均細孔径及び気孔率を有することが観察される。
さらに、機械的強度を示す三点曲げ強度も全ての実施例において15MPa以上の強度を示し、支持体として十分な強度を有することが判る。
このため、実施例1〜3の支持体全ては、優れた気孔率とともに、高い機械的強度を有し、酸素分離膜用支持体として好適に使用可能である。
【0038】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上記実施例1と同様な手段により酸化セリウムで支持体を製造することもできる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施例に係る支持体の多孔質構造を示す電子顕微鏡(SEM)写真(測定倍率:500倍)である。
Claims (4)
- 一般式:La1−xAexMO3
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Ni、Al、In、Sn及びZrからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物粉末から構成される原料粉末であって、平均粒径が20〜100μmである原料粉末を用意する工程と、
該原料粉末を用いて所定形状の成形体を成形する工程と、
該成形体を1200〜1800℃にて、酸化性雰囲気又は不活性ガス雰囲気下で焼成する工程と、
を有する、酸素分離膜用支持体の製造方法。 - 前記焼成前に、前記成形体を200〜500℃で8〜12時間の仮焼成を行う、請求項1記載の酸素分離膜用支持体の製造方法。
- 請求項1又は2記載の製造方法によって得られた酸素分離膜用の多孔質支持体であって、
一般式:La1−xAexMO3
ここで式中、Aeは、Ba、Sr及びCaからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、MはFe、Mn、Ga、Ti、Co、Ni、Al、In、Sn及びZrからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり、xは0<x<1を満たす;
で示される複合酸化物から構成される多孔質体であって、
平均細孔径が5μm以上20μm未満であり、気孔率が8%以上45%以下である、前記支持体と同じ組成の材料から構成される酸素分離膜用の支持体。 - 1300℃の大気中において上記平均細孔径及び上記気孔率が上記平均細孔径及び上記気孔率の範囲内に保持される、請求項3記載の酸素分離膜用支持体。
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