JP2013032333A - 大豆米糠発酵組成物及びその製造方法、並びに、抗高血圧組成物及び飲食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも大豆蛋白質及び米糠を発酵させた発酵物をプロテアーゼで処理してなる大豆米糠発酵組成物及びその製造方法、並びに、抗高血圧組成物及び飲食品である。前記発酵物が、納豆菌、テンペ菌、乳酸菌、及び酵母菌の少なくともいずれかを用いて発酵された態様が好ましい。
【選択図】図4
Description
高血圧は、動脈硬化をはじめとして、脳、心臓、腎臓などに悪影響を及ぼし、重症になると、狭心症、心筋梗塞、心不全、脳卒中、腎不全などの病気をひきおこすことから、血圧の適切な制御は、予防医学の面からも重要な課題となっている。
前記ACEは、血圧の調整においてレニン−アンギオテンシン系に作用する酵素である。レニン−アンギオテンシン系では、肝臓から分泌されるアンギオテンシノーゲンが、腎臓から分泌されるレニンによってアンギオテンシンIに変換される。前記アンギオテンシンIは、更にACEによってアンギオテンシンIIに変換されるが、このアンギオテンシンIIは、血管の収縮、血管透過性の増大などの作用があり、血圧を上昇させる(非特許文献1参照)。したがって、ACE活性を阻害することにより効果的に血圧を低下させることができる。
したがって、ACEを阻害することにより、前記アンジオテンシンIIの生成を抑制すると共に、抗酸化物質により産生された活性酸素を除去することにより、NOの不活性化が低減されて血管内皮機能を改善することが期待される。
例えば、大豆を蛋白質分解酵素で処理して得られた新規なヘキサペプチドが、毒性が極めて低く、かつACE阻害作用を有し、生体内での血圧降下作用を有することが報告されている(特許文献1参照)。
また、大豆中の微量蛋白質である大豆ホエー蛋白質を基質にして、蛋白質分解酵素を用いて分解して得られた特定のトリペプチドが、ACE阻害作用を有し、血圧降下剤としての医薬品や、高血圧の予防や改善に適した特定保健用食品に用いることが報告されている(特許文献2参照)。
また、大豆蛋白原料をプロテアーゼで処理し、疎水性アミノ酸の豊富な未分解かつ不溶の高分子画分を除去した水溶液から調製されたペプチド組成物が、ACE阻害活性を有することが報告されている(特許文献3及び4参照)。
しかしながら、血圧抑制機序としては脂質酸化の抑制による血管の柔軟性の改善に起因していると考察されており、ACE活性の阻害については、記載も示唆もない。即ち、ACE阻害物質のような単回投与による投与直後からの血圧低下作用は期待できない。
<1> 少なくとも大豆蛋白質及び米糠を発酵させた発酵物をプロテアーゼで処理してなることを特徴とする大豆米糠発酵組成物である。
<2> 発酵物が、納豆菌、テンペ菌、乳酸菌、及び酵母菌の少なくともいずれかを用いて発酵された前記<1>に記載の大豆米糠発酵組成物である。
<3> プロテアーゼが中性プロテアーゼであり、pH4.5〜8.0で発酵物を処理してなる前記<1>から<2>のいずれかに記載の大豆米糠発酵組成物である。
<4> 更に熱水及びエタノールのいずれかで抽出されてなる前記<1>から<3>のいずれかに記載の大豆米糠発酵組成物である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の大豆米糠発酵組成物を含有することを特徴とするアンギオテンシン変換酵素阻害組成物である。
<6> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の大豆米糠発酵組成物を含有することを特徴とする抗高血圧組成物である。
<7> 前記<5>に記載のアンギオテンシン変換酵素阻害組成物、及び前記<6>に記載の抗高血圧組成物の少なくともいずれかを含有することを特徴とする飲食品である。
<8> 少なくとも大豆蛋白及び米糠を発酵させて発酵物を得る発酵工程と、
前記発酵物をプロテアーゼで処理するプロテアーゼ処理工程とを含むことを特徴とする大豆米糠発酵組成物の製造方法である。
<9> 発酵工程が、納豆菌、テンペ菌、乳酸菌、及び酵母菌の少なくともいずれかを用いて発酵物を得る工程である前記<8>に記載の大豆米糠発酵組成物の製造方法である。
<10> プロテアーゼ処理工程が、発酵物をpH4.5〜8.0において中性プロテアーゼで処理する工程である前記<8>から<9>のいずれかに記載の大豆米糠発酵組成物の製造方法である。
<11> 更に熱水及びエタノールのいずれかで抽出する抽出工程を含む前記<8>から<10>のいずれかに記載の大豆米糠発酵組成物の製造方法である。
本発明の大豆米糠発酵組成物は、少なくとも大豆蛋白質及び米糠を発酵させてなる発酵物をプロテアーゼで処理してなる組成物を含み、更に必要に応じてその他の成分を含む。
本発明の大豆米糠発酵組成物は、優れたアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性を有する。
前記発酵物は、少なくとも大豆蛋白質及び米糠を発酵させた発酵物である。前記発酵物は、必要に応じて更にその他の成分を前記大豆蛋白質及び前記米糠と共に発酵させた発酵物でもよく、その他の成分を前記大豆蛋白質及び前記米糠とは別に発酵させた発酵物を更に含んでいてもよい。
前記大豆蛋白質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分離大豆蛋白質、濃縮大豆蛋白質、脱脂豆乳、脱脂大豆などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記大豆蛋白質としては、適宜調製したものを用いても、市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、ニューフジプロSE、ニューフジプロ1700、フジプロE(以上、粉末状大豆蛋白質、不二製油株式会社製)、ニューフジニックP50、アペックス600(以上、粒状大豆蛋白質、不二製油株式会社製)などが挙げられる。
前記大豆固形画分の組成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、乾物における含有量が、粗蛋白質20質量%〜30質量%、粗脂肪10質量%〜15質量%、可溶無窒素物25質量%〜35質量%、粗繊維10質量%〜20質量%であることが好ましく、前記固形画分における水分含有量が、75質量%〜80質量%であることが好ましい。
前記米糠としては、米糠、脱脂米糠、米胚芽、及び脱脂米胚芽の少なくともいずれかを含む限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、玄米を白米に精米する過程で除去される米の果皮、種皮、糊粉層、胚芽等を含む通常の米糠をそのまま用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記米糠としては、適宜調製したものを用いても、市販品を用いてもよく、該市販品としては、例えば、オリザジャーム−DLP、オリザジャーム−DLS、オリザドリム、脱脂コメヌカ(以上、脱脂米糠、オリザ油化株式会社製)、脱脂糠(築野食品工業株式会社製)などが挙げられる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、茶カテキン、アントシアニン、ルチン、ヘスペリジン、ケルセチン、イソフラボン、タンニン、クロロゲン酸、エラグ酸、クルクミン、リグナン、サポニン、食物繊維、ビタミン類などが挙げられる。
前記茶カテキンの原料である茶の種類、抽出方法などとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有効成分であるポリフェノールを多く含むことが好ましく、前記茶カテキンにおける具体的な総ポリフェノール含量としては、60質量%以上が好ましい。
なお、前記納豆菌、テンペ菌、乳酸菌、及び酵母菌としては、安全性が保証されている限り、自然的に、又は人為的な変異手段により生成し、菌学的性質が変異した変異株も用いることができる。
前記振とうの条件としては、特に制限はなく、よく攪拌されていればよい。
本発明の大豆米糠発酵組成物は、前記発酵物をプロテアーゼで処理してなる組成物である。ここで、「プロテアーゼ」は、ペプチド結合加水分解酵素の総称であり、蛋白質分解酵素ともいう。また、本明細書においては、前記プロテアーゼによる処理を「プロテアーゼ消化」又は「蛋白質分解」とも呼ぶ。この処理は、前記発酵物に由来する蛋白質又はペプチドの分解を目的としたものである。
前記プロテアーゼの具体例としては、金属プロテアーゼ(サーモライシン等)、セリンプロテアーゼ(トリプシン、キモトリプシン、トロンビン、プラスミン、エラスターゼ、ズブチリシン等)、チオールプロテアーゼ(パパイン、フィシン、ブロメライン、カテプシンB等)、アスパラギン酸プロテアーゼ(ペプシン、キモシン、カテプシンD等)、アミノペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、酵素処理効率が高く、高い機能性を持った生成物が得られる点で、セリンプロテアーゼ及びアミノペプチダーゼを含むものが好ましい。
なお、これらのプロテアーゼは、精製されていても、或いは精製されていなくてもよく、また、それらの起源は、微生物由来、植物由来及び動物由来のいずれであってもよい。
pHの調整には、pH調整用の塩酸又は水酸化ナトリウムを使用してもよいし、pH調整用バッファーを使用してもよい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、脱脂米糠、米胚芽、茶カテキンなどが挙げられる。
これらの種類、含有量、及び好ましい範囲などは、前述したものと同様である。
また、本発明の大豆米糠発酵組成物は、安全性が高いため、例えば、飲食品、医薬品などに用いることができる。
本発明の大豆米糠組成物の製造方法は、発酵工程とプロテアーゼ処理工程とを含み、必要に応じて抽出工程、濾過工程などその他の工程を含む。
前記発酵工程は、少なくとも大豆蛋白及び米糠を発酵させて発酵物を得る工程である。
前記発酵工程において用いられる大豆蛋白質、米糠、及びその他の成分は、上述したものを使用することができる。また、発酵条件(例えば、発酵温度、発酵時間、発酵の形態、pH、通気条件等)も上述したとおりである。
前記発酵工程は、納豆菌、テンペ菌、乳酸菌、及び酵母菌の少なくともいずれかを用いて前記発酵物を得る工程であることが好ましい。
前記プロテアーゼ処理工程は、前記発酵物をプロテアーゼで処理する工程である。
本工程において用いられるプロテアーゼ及び処理条件は、上述したとおりである。
前記プロテアーゼ処理工程は、前記発酵物をpH4.5〜8.0において中性プロテアーゼで処理する工程であることが好ましい。
<<抽出工程>>
抽出工程は、前記大豆米糠発酵組成物を熱水及びエタノールのいずれかで抽出する工程である。効率的に活性物質を抽出できる点で、熱水による抽出が好ましい。
抽出の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、熱水及びエタノールのいずれかを前記大豆米糠発酵組成物に加え、攪拌して抽出後、遠心分離機により固液分離する方法などが挙げられる。前記遠心分離機としては、例えば、デカンター連続式横型遠心分離機、自動バスケット型遠心分離機などが挙げられ、これらは組み合わせて用いてもよい。
前記濾過工程は、前記大豆米糠発酵組成物を濾過する工程である。
前記濾過の方法としては、特に制限はなく、公知の濾過装置を用いることができ、例えば、フィルタープレス、ラインフィルターなどを用いることができる。なお、これらは併用してもよい。
前記濃縮工程は、前記大豆米糠発酵組成物を濃縮する工程である。前記濃縮の方法としては、特に制限はなく、公知の濃縮方法を用いることができる。
濃縮後の前記大豆米糠発酵組成物のBrix値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10〜12が好ましい。
本発明のアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害組成物は、本発明の前記大豆米糠発酵組成物を含み、必要に応じてその他の成分を含む。
また、本発明の抗高血圧組成物は、本発明の前記大豆米糠発酵組成物を含み、必要に応じてその他の成分を含む。
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ルチン、ヘスペリジン、タンニン、リコピン、テアニン、セサミン、ギャバなどが挙げられる。これらの成分は、抗高血圧作用を有することが知られており、本願発明の大豆米糠発酵組成物に対して、含有量を適宜調整して添加することができる。
本発明の飲食品は、本発明の大豆米糠発酵組成物、ACE阻害組成物及び抗高血圧組成物の少なくともいずれかを含有してなり、必要に応じてその他の成分を含有してなる。本発明の飲食品としては、例えば、本発明の大豆米糠発酵組成物、ACE阻害組成物及び抗高血圧組成物の少なくともいずれかをそのまま、或いはペレット、粉末、顆粒などの形態として使用してもよく、食品添加物、調味料、ふりかけとして使用してもよい。また、本発明の大豆米糠発酵組成物、ACE阻害組成物及び抗高血圧組成物を食材中に含有せしめて使用してもよい。これにより、機能性食品或いは健康食品を得ることができる。
図1に示した製造工程のフローチャートに従い、以下のようにして大豆米糠発酵物を製造した。
大豆を水で洗浄し、水に17時間浸漬して十分に吸水させた。大豆が吸水して十分に柔らかくなったことを確認し、豆挽機を用いて水とともに大豆を摩砕した。摩砕された大豆をタンクに移し、均一になるように攪拌した。その後、摩砕大豆懸濁液をよく撹拌しながら20分間、100℃で加熱した。加熱後、絞り器を用いて摩砕大豆懸濁液から液相を除去し、固相(大豆固形画分)を回収した。得られた大豆固形画分100kgを適度に加温し、十分に攪拌した後に、納豆菌(成瀬醗酵化学研究所から入手)0.2L(菌数1.0×1010個)を均一に添加した。納豆菌接種後の大豆固形画分をステンレス容器若しくはポリエチレン袋に移し、通気性を確保した状態で、40℃の恒温培養器若しくは恒温室内で18時間発酵を行った。得られた大豆固形画分発酵物(FSB−01)は、使用時まで冷凍保管した。
原料として、大豆蛋白質(ニューフジプロSE、不二製油株式会社製)、脱脂米糠及び米胚芽(以上、オリザ油化株式会社製)を用いた。ステンレス製のタンクに水3,000Lを入れ、続いて大豆蛋白質200kg、脱脂米糠50kg、米胚芽50kgを投入した。その後、90℃になるまで加温し、昇温後1時間攪拌した。攪拌終了後、42℃まで冷却し、得られた大豆米糠液に、前記工程1で用いたものと同じ納豆菌を1L(菌数1.0×1011個)添加した。納豆菌接種後、42℃で28時間撹拌し、大豆米糠発酵液を得た。
前記工程2で得られた大豆米糠発酵液に、前記工程1で得られたFSB−01 200kg、脱脂米糠50kg、米胚芽50kg、及び茶カテキン260gを投入した。
これを3時間攪拌しながら混合した後、50℃になるまで加温した。昇温後、Aspergillus oryzae由来中性プロテアーゼ(デナチームAP、ナガセケムテックス株式会社製)を10kg投入し、50℃で15時間撹拌してプロテアーゼ消化を行った。
その後、90℃で10分間加熱することによりプロテアーゼを失活させた。
以上のようにして、大豆米糠発酵組成物を得た。
<<菌の増殖>>
前記工程2において接種した納豆菌の増殖曲線を図2に示す。図2から、指数関数的な増殖曲線が得られ、順調な納豆菌の増殖が認められた。
前記工程2で得られた大豆米糠発酵液のACE阻害活性をACE kit−WST(株式会社同仁化学研究所製)を用い、キットの説明書に準じて測定した。
具体的には、各ウェルに(1)納豆菌を接種する前の大豆米糠液(発酵前)、(2)発酵開始後19時間の大豆米糠発酵液(発酵中期)、又は(3)発酵開始後28時間の大豆米糠発酵液(発酵終了後)をそれぞれ純水で100倍希釈したサンプル溶液(sample)、若しくは純水(blank1、blank2)を20μLずつ入れた。次いで、各ウェルにSubstrate bufferを20μLずつ加えた。blank2のウェルには、純水を20μLずつ加え、サンプル溶液を入れたウェルとblank1のウェルには、Enzyme working solutionを20μLずつ加えた。各ウェルを37℃で60分間インキュベートした後、各ウェルにIndicator working solutionを200μLずつ加えた。更に室温で10分間インキュベートし、プレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。ACE活性阻害率(%)は、下記の計算式により求めた。
ACE活性阻害率(%)={(Ablank1−Asample)/(Ablank1−Ablank2)}×100
Asample:サンプルの450nmの吸光度
Ablank1:blank1の450nmの吸光度
Ablank2:blank2の450nmの吸光度
前記工程3で得られた大豆米糠発酵組成物(発酵後プロテアーゼ処理)のACE活性阻害率(%)を上述したACE阻害活性の測定方法により測定した。ACE阻害活性について50%阻害濃度(IC50値)は、前記大豆米糠発酵組成物の希釈系列のサンプル溶液を作製して、それぞれのサンプル濃度に対して、測定されたACE阻害率(%)をプロットして求めた。
また、対照として、前記工程3でプロテアーゼ処理を行わなかったもの(発酵のみ)、及び前記工程2で発酵を行わなかったもの(プロテアーゼ処理のみ)についても同様に50%阻害濃度(IC50値)を求めた。結果を図4に示す。
<工程4:抽出>
実施例1(工程3)で得られた大豆米糠発酵組成物を2時間攪拌し、熱水抽出を行った。抽出後、遠心分離機を用いて固液分離を行った。液相のみを回収し、クエン酸ナトリウムを用いてpHを3.8に調整した。pH調整後、90℃で10分間加熱殺菌し、10℃で12時間静置させた。
その後、フィルタープレス及び0.5μmラインフィルターを組み合わせて濾過を行い、澄明な溶液を回収した。澄明濾液を減圧濃縮し、Brix 10〜12に調整した。Brix調整後、90℃で10分間加熱殺菌し、0.5μmラインフィルターを用いて精密濾過した。得られた澄明液を大豆米糠発酵組成物(大豆米糠発酵エキスOE−1)とした。
<<ACE阻害活性の測定>>
前記工程5より得られた大豆米糠発酵エキスOE−1のACE阻害活性について50%阻害濃度(IC50値)を前述したのと同様の方法により測定した。また、対照として、前記工程2で得られた大豆米糠発酵液、前記実施例1で得られた大豆米糠発酵組成物、及び特定保険食品に指定されているサーデンペプチドのACE阻害活性を測定した。結果を図5に示す。
本評価には、10週齢の雄性SHR/Hosラットを株式会社星野試験動物飼育所より入手して使用した。前記ラットを、室温23±1℃、相対湿度55±10%、照明時間12時間/日(8:00〜20:00)の条件で、日本クレア社の固形飼料CE−2を与えて飼育し、飲料水としては水道水を自由に摂取させた。入荷後、1週間の予備飼育を行い、健康状態に異常を認めない動物を試験に用いた。
ラットの収縮期血圧(systolic blood pressure、以下「SBP」と称する)及び心拍数(heart rate)の測定は、実験動物用ラット・マス非観血血圧測定装置(Softron BP−98A、株式会社ソフトロン製)を用い、ラットを39℃で保温して、非観血的にtail−cuff法にて行った。測定は、各測定点(本発明の大豆米糠発酵組成物の投与前、並びに投与後1時間、4時間、7時間、及び24時間)において少なくとも6回ずつ行い、その平均値をSBP及び心拍数とした。
試験に使用するラットは、予備飼育後、SBPが185mmHg以上を示す動物を用いた。各ラットを試験前日より一昼夜絶食させ、試験開始前の血圧及び体重を指標として、動物を1群あたり6匹〜7匹ずつに群分けした。大豆米糠発酵エキス(OE−1)は、1回100mg/kg及び300mg/kgの投与量でゾンデによる単回投与を行った。コントロール群には同量の精製水(10mL/kg)を投与した。対照薬群としては、ACE阻害剤の1つであるカプトプリルを用い、30mg/kgの投与量で経口投与した。
前記SBP値の変動について、投与開始前のSBP値と投与後各時間におけるSBP値を図6に示した。
以上の結果より、大豆米糠発酵エキス(OE−1)は、高血圧ラットに対して血圧降下作用を示し、また、心拍数に対して影響を及ぼさなかったことより、本発明の大豆米糠発酵組成物が高血圧治療に安全で有用であることが示唆された。
実施例1の工程3で得られた大豆米糠発酵組成物、及び実施例2の工程5で得られた大豆米糠発酵組成物(大豆米糠発酵エキスOE−1)の各検体についてDPPHラジカル消去活性の測定を行った。
具体的には、DPPH(1,1−Diphenyl−2−picrylhydrazy;ワコー社製)をエタノールで溶解し80μg/mLの濃度に調整した。純水で10倍希釈した各検体500μL、及びDPPH溶液500μLを混合し、室温で30分間静置した後、波長517nmの吸光度を測定した。
DPPHラジカル消去活性は、検体を添加しないコントロールの値に対する抑制率で示した。結果を図8に示す。
実施例1の工程3で得られた大豆米糠発酵組成物、及び実施例2の工程5で得られた大豆米糠発酵組成物(大豆米糠発酵エキスOE−1)の各検体についてORAC値の測定を行った。
具体的には、20mMのリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解した、10nMフルオロセイン(シグマ社製)溶液を150μLずつ96穴マイクロプレートの各穴に入れ、そこに純水で10倍希釈した前記各検体、又は標準物質であるトロロックス(カルビオケム社製)を25μL入れ、37℃のインキュベーター内で15分間静置した。
初期値として37℃で90秒間おきに3回、励起波長:485nm、測定波長:520nmで蛍光強度を測定した。測定後、20mMリン酸緩衝液に溶解した、240mMの2,2’−Azobis(2−amidinopropane)Dihydrochloride(AAPH;フナコシ株式会社製)溶液を25μL添加し、37℃で90秒間おきに60回、同波長で測定した。
AAPH添加後の各測定値をそれぞれの初期値で割った値の合計をAUCとして算出し、各検体、又は標準物質であるトロロックスのAUCからブランクのAUCを減じた値をnet−AUCとして算出した。前記トロロックスの濃度に対するnet−AUCの回帰直線を用いて各検体のトロロックス相当量とした値をORAC値(活性酸素吸収能力)として算出し、「μmol TE/g」の単位で表示した。結果を図9に示す。
Claims (7)
- 少なくとも大豆蛋白質及び米糠を発酵させた発酵物をプロテアーゼで処理してなることを特徴とする大豆米糠発酵組成物。
- 発酵物が、納豆菌、テンペ菌、乳酸菌、及び酵母菌の少なくともいずれかを用いて発酵された請求項1に記載の大豆米糠発酵組成物。
- プロテアーゼが中性プロテアーゼであり、pH4.5〜8.0で発酵物を処理してなる請求項1から2のいずれかに記載の大豆米糠発酵組成物。
- 更に熱水及びエタノールのいずれかで抽出されてなる請求項1から3のいずれかに記載の大豆米糠発酵組成物。
- 請求項1から4のいずれかに記載の大豆米糠発酵組成物を含有することを特徴とする抗高血圧組成物。
- 請求項5に記載の抗高血圧組成物を含有することを特徴とする飲食品。
- 少なくとも大豆蛋白及び米糠を発酵させて発酵物を得る発酵工程と、
前記発酵物をプロテアーゼで処理するプロテアーゼ処理工程とを含むことを特徴とする大豆米糠発酵組成物の製造方法。
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