JP2013030724A - 積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属層除去後の吸湿はんだ試験における絶縁基材間の剥離が抑制された積層体と、その製造方法の提供。
【解決手段】絶縁基材11、12、13及び14の表面を粗面化し、粗面化された表面同士を向かい合わせて、絶縁基材11、12、13及び14を重ねて加熱プレスし、絶縁基材11の表面に金属層15を、絶縁基材14の表面に金属層16をそれぞれ設けて、積層体1とする。金属層15及び16のいずれか一方は設けなくてもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数の絶縁基材が重ねられ、その表面に金属層が設けられた積層体と、その製造方法に関する。
携帯電話、パソコン、デジタル家電など種々の電子機器に組み込まれるプリント配線板(プリント基板、プリント回路基板)には、絶縁層上に金属層が設けられた積層体が用いられる。このときの絶縁層としては、例えば、無機クロスに樹脂が含浸された樹脂含浸基材等の絶縁基材が汎用されており、なかでも樹脂として液晶ポリエステルを用いた絶縁基材は、寸法安定性に優れるため、特に好適なものである(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第08/143455号パンフレット
しかし、樹脂含浸基材等の従来の絶縁基材をそのまま用いて、複数重ねて絶縁層とし、この絶縁層上に金属層を設けて積層体とした場合には、積層体から金属層をエッチング等で除去して吸湿はんだ試験を行うと、絶縁基材間に剥離(デラミネーション)が生じることがあり、耐熱性に劣るという問題点があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、金属層除去後の吸湿はんだ試験における絶縁基材間の剥離が抑制された積層体と、その製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、
本発明は、複数の絶縁基材が重ねられ、その表面に金属層が設けられた積層体の製造方法であって、複数の前記絶縁基材の表面を粗面化する工程と、粗面化された表面同士を向かい合わせて、複数の前記絶縁基材を重ねて加熱プレスする工程と、重ねたときに最も外側に位置する二つの前記絶縁基材のうち、少なくとも一方の表面に金属層を設ける工程と、を有することを特徴とする積層体の製造方法を提供する。
本発明の積層体の製造方法においては、前記粗面化する工程の前に、さらに、前記絶縁基材を加熱処理する工程を有することが好ましい。
本発明の積層体の製造方法においては、ウェットブラスト処理により、前記絶縁基材の表面を粗面化することが好ましい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記金属層が金属箔からなり、前記絶縁基材を加熱プレスする工程において、重ねたときに最も外側に位置する二つの前記絶縁基材のうち、少なくとも一方の表面に、さらに前記金属箔を重ねて、前記金属箔及び複数の前記絶縁基材を加熱プレスすることで、前記金属層を設ける工程を同時に行うことが好ましい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記絶縁基材が、無機クロスに、溶媒可溶性で且つ流動開始温度が250℃以上である液晶ポリエステルが含浸されたものであることが好ましい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記液晶ポリエステルが、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰返し単位を有することが好ましい。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar、Ar及びAr中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar−Z−Ar
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
本発明の積層体の製造方法においては、前記一般式(3)において、X及び/又はYがイミノ基であることが好ましい。
また、本発明は、上記本発明の製造方法で製造されたことを特徴とする積層体を提供する。
本発明によれば、金属層除去後の吸湿はんだ試験における絶縁基材間の剥離が抑制された積層体と、その製造方法を提供できる。
本発明に係る積層体の製造方法を説明するための概略断面図である。 図1に示す製造方法において、さらに金属箔を絶縁基材と共に同時に加熱プレス方法を説明するための概略断面図である。 図1に示す製造方法を適用して、複数の絶縁層を同時に形成する方法を説明するための概略断面図である。 図2に示す製造方法を適用して、複数の絶縁層を同時に形成する方法を説明するための概略断面図である。
<積層体及びその製造方法>
本発明に係る積層体の製造方法は、複数の絶縁基材が重ねられ、その表面に金属層が設けられた積層体の製造方法であって、複数の前記絶縁基材の表面を粗面化する工程(以下、「粗面化工程」ということがある。)と、粗面化された表面同士を向かい合わせて、複数の前記絶縁基材を重ねて加熱プレスする工程(以下、「加熱プレス工程」ということがある。)と、重ねたときに最も外側に位置する二つの前記絶縁基材のうち、少なくとも一方の表面に金属層を設ける工程(以下、「金属層形成工程」ということがある。)と、を有することを特徴とする。複数の前記絶縁基材は、加熱プレスによって融着し、このとき、粗面化された表面同士を向かい合わせて重ねて加熱プレスすることにより融着強度が向上する。その結果、得られる積層体は、吸湿はんだ試験における絶縁基材間の剥離(デラミネーション)が抑制されたものとなる。
以下、図面を参照しながら、本発明について工程ごとに詳細に説明する。図1は、本発明に係る積層体の製造方法を説明するための概略断面図である。
[粗面化工程]
前記粗面化工程においては、複数の前記絶縁基材の表面を粗面化する。
前記絶縁基材は、複数重ねられて絶縁層を構成するものであり、樹脂が含浸された基材(樹脂含浸基材)が好ましい。
図1(a)に示す絶縁基材11、12、13及び14は、両面、すなわち一方の面(以下、「第一の面」ということがある。)11a、12a、13a及び14aと、これらとは反対側の面(以下、「第二の面」ということがある。)11b、12b、13b及び14bが、いずれも粗面化されたものである。ここでは、代表して絶縁基材11の第一の面11aと、絶縁基材12の第二の面12bについては、粗面化されている様子を拡大して強調表示している。
これら絶縁基材の厚さは、好ましくは5〜200μmであり、より好ましくは10〜185μmである。
絶縁基材11、12、13及び14は、すべて同じでもよいし、一部が異なっていてもよく、すべて異なっていてもよい。
なお、ここでは、絶縁基材を4枚示しているが、本発明において用いる絶縁基材の数は2枚以上であればよく、目的に応じて任意に選択できる。
樹脂を含浸させる前記基材としては、無機繊維及び/又は炭素繊維からなるものが例示できる。
前記無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナ系繊維、ケイ素含有セラミック系繊維等のセラミック繊維が例示でき、この場合の前記基材としては、無機繊維からなるシート、すなわち無機クロスが好ましく、これらの中でも入手性が良好であることから、主としてガラス繊維からなるシート、すなわちガラスクロスが好ましい。
前記ガラスクロスとしては、含アルカリガラス繊維、無アルカリガラス繊維又は低誘電ガラス繊維からなるものが好ましい。また、ガラスクロスを構成する繊維は、その一部にガラス以外のセラミックからなるセラミック繊維又は炭素繊維が混入していてもよい。また、ガラスクロスを構成する繊維は、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理されていてもよい。
これら繊維からなるガラスクロスの製造方法としては、ガラスクロスを形成する繊維を水中に分散させ、必要に応じてアクリル樹脂等の糊剤を添加して、抄紙機にて抄造後、乾燥させることで不織布を得る方法や、公知の織成機を用いる方法が例示できる。
繊維の織り方としては、平織り、朱子織り、綾織り、ななこ織り等が利用できる。織り密度は、10〜100本/25mmであることが好ましい。
前記ガラスクロスの単位面積当たりの質量は、10〜300g/mであることが好ましい。
前記ガラスクロスの厚さは、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは10〜180μmである。
前記ガラスクロスは、市販品でもよい。容易に入手可能な市販品のガラスクロスとしては、電子部品の絶縁含浸基材用のものが例示でき、旭シュエーベル株式会社、日東紡績株式会社、有沢製作所株式会社等から入手できる。
なお、市販品のガラスクロスで好適な厚さのものとしては、IPC呼称で1035、1078、2116、7628のものが例示できる。
基材に含浸させる前記樹脂は、液晶ポリエステルであることが好ましい。すなわち、前記樹脂含浸基材は、液晶ポリエステル含浸基材であることが好ましい。
液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示す液晶ポリエステルであり、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよいし、液晶ポリエステルエーテルであってもよいし、液晶ポリエステルカーボネートであってもよいし、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
液晶ポリエステルの典型的な例としては、
(I)芳香族ヒドロキシカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合(重縮合)させてなるもの、
(II)複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、
(III)芳香族ジカルボン酸と、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を重合させてなるもの、
(IV)ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルと、芳香族ヒドロキシカルボン酸と、を重合させてなるもの
が挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部又は全部に代えて、その重合可能な誘導体が用いられてもよい。
芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、及びカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール及び芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
芳香族ヒドロキシアミン及び芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
液晶ポリエステルは、下記一般式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記一般式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)と、下記一般式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)とを有することがより好ましい。
(1)−O−Ar−CO−
(2)−CO−Ar−CO−
(3)−X−Ar−Y−
(式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar、Ar及びAr中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar−Z−Ar
(式中、Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar、Ar又はArで表される前記基毎に、それぞれ独立に2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基及び2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は1〜10であることが好ましい。
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、及びArが2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが1,3−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Arが2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、及びArがジフェニルエ−テル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエ−テル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミン又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Arが1,4−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノール又はp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、及びArが4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニル又は4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
繰返し単位(1)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは30〜80モル%、さらに好ましくは30〜60モル%、特に好ましくは30〜40モル%である。
繰返し単位(2)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは20〜35モル%、特に好ましくは30〜35モル%である。
繰返し単位(3)の含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは35モル%以下、より好ましくは10〜35モル%、さらに好ましくは20〜35モル%、特に好ましくは30〜35モル%である。
繰返し単位(1)の含有量が多いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり多いと、溶媒に対する溶解性が低くなり易い。
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、好ましくは0.9/1〜1/0.9、より好ましくは0.95/1〜1/0.95、さらに好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に二種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、液晶ポリエステルを構成する全繰返し単位の合計量に対して、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、X及び/又はYがイミノ基(−NH−)であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ヒドロキシルアミンに由来する繰返し単位及び/又は芳香族ジアミンに由来する繰返し単位を有することが好ましく、繰返し単位(3)として、X及び/又はYがイミノ基であるもののみを有することがより好ましい。このようにすることで、液晶ポリエステルは溶媒に対する溶解性がより優れたものとなる。
液晶ポリエステルは、これを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物(プレポリマー)を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下で行ってもよく、この場合の触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾール等の含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、好ましくは250℃以上、より好ましくは250℃〜350℃、さらに好ましくは260℃〜330℃である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、高過ぎると、溶媒に対する溶解性が低くなり易かったり、後述する液状組成物の粘度が高くなり易かったりする。
なお、流動開始温度は、フロー温度又は流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mm及び長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(小出直之編、「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」、株式会社シーエムシー、1987年6月5日、p.95参照)。
前記樹脂含浸基材は、液晶ポリエステル等の前記樹脂と溶媒とを含む液状組成物、好ましくは前記樹脂が溶媒に溶解された液状組成物(樹脂溶液)を基材に含浸させ、溶媒を除去することで製造できる。
以下、前記樹脂が液晶ポリエステルの場合について説明するが、液晶ポリエステル以外の樹脂も同様に用いることができる。
前記溶媒としては、用いる液晶ポリエステルが溶解可能なもの、具体的には50℃にて1質量%以上の濃度([液晶ポリエステル]/[液晶ポリエステル+溶媒]×100)で溶解可能なものが、適宜選択して用いられる。
前記溶媒の例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;p−クロロフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタフルオロフェノール等のハロゲン化フェノール;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル;アセトン、シクロヘキサノン等のケトン;酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート;トリエチルアミン等のアミン;ピリジン等の含窒素複素環芳香族化合物;アセトニトリル、スクシノニトリル等のニトリル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(N−メチル−2−ピロリドン)等のアミド系化合物(アミド結合を有する化合物);テトラメチル尿素等の尿素化合物;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の硫黄化合物;ヘキサメチルリン酸アミド、トリn−ブチルリン酸等のリン化合物が挙げられ、これらの二種以上を用いてもよい。
溶媒としては、腐食性が低く、取り扱い易いことから、非プロトン性化合物、特にハロゲン原子を有しない非プロトン性化合物を主成分とする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める非プロトン性化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%である。
また、前記非プロトン性化合物としては、液晶ポリエステルを溶解し易いことから、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系化合物を用いることが好ましい。
また、溶媒としては、液晶ポリエステルを溶解し易いことから、双極子モーメントが3〜5である化合物を主成分とする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める、双極子モーメントが3〜5である化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%であり、前記非プロトン性化合物として、双極子モーメントが3〜5である化合物を用いることが好ましい。
また、溶媒としては、除去し易いことから、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を主成分とするとする溶媒が好ましく、溶媒全体に占める、1気圧における沸点が220℃以下である化合物の割合は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%であり、前記非プロトン性化合物として、1気圧における沸点が220℃以下である化合物を用いることが好ましい。
液状組成物中の液晶ポリエステルの含有量は、液晶ポリエステル及び溶媒の合計量に対して、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは15〜45質量%であり、所望の粘度の液状組成物が得られるように、適宜調整される。
液状組成物は、充填材、添加剤、液晶ポリエステル以外の樹脂等の他の成分を一種以上含んでもよい。
前記充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機充填材;硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリル樹脂等の有機充填材が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜100質量部である。
前記添加剤の例としては、レべリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤及び着色剤が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜5質量部である。
前記液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、その含有量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0〜20質量部である。
液状組成物は、液晶ポリエステル、溶媒、及び必要に応じて用いられる他の成分を、一括で又は適当な順序で混合することにより調製することができる。他の成分として充填材を用いる場合は、液晶ポリエステルを溶媒に溶解させて、液晶ポリエステル溶液を得、この液晶ポリエステル溶液に充填材を分散させることにより調製することが好ましい。
基材に液状組成物を含浸させる方法としては、浸漬槽中の前記液状組成物に基材を浸漬する方法が例示できる。この方法においては、液状組成物の液晶ポリエステルの含有量、浸漬時間、浸漬した基材の液状組成物からの引き上げ速度を適宜調節することで、基材への液晶ポリエステルの付着量を容易に制御できる。
液状組成物を含浸させた基材から溶媒を除去する方法は、特に限定されないが、操作が簡便である点で、溶媒を蒸発させる方法が好ましく、加熱、減圧及び通風のいずれかを単独で、又は二つ以上を組み合わせて蒸発させる方法が例示できる。
溶媒を除去して得られた液晶ポリエステル含浸基材における液晶ポリエステルの付着量は、液晶ポリエステル含浸基材に対して30〜80質量%であることが好ましく、40〜70質量%であることがより好ましい。
前記絶縁基材の表面の粗面化とは、表面を物理的作用で粗くすることを意味し、その方法は特に限定されないが、ジェットスクラブ処理、ドライブラスト処理等が例示できる。特に、研磨粒子を容易に加速できるなどの利点から、粗面化の方法としては、ウェットブラスト処理(例えば、特開2010−155305参照)が好ましい。
ウェットブラスト処理で用いる研磨剤としては、アルミナや酸化セリウム等が例示できる。
ウェットブラスト処理は、例えば、0.05〜0.5MPaの空気圧で、研磨剤スラリーを絶縁基材の表面に噴射して行うことが好ましい。そして、このときの処理時間は、1秒〜1分間であることが好ましい。
粗面化の程度は、例えば、表面粗さで表すことができ、原子間力顕微鏡で絶縁基材の対象となる表面において測定した場合、表面粗さの平均値が0.1〜1μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。0.1μm以上であることで、絶縁基材の表面が十分に粗面化され、得られる積層体において絶縁基材同士の融着強度が向上し、より優れた絶縁基材間の剥離抑制効果が得られる。また、1μm以下であることで、絶縁基材の表面が過度に粗面化されず、重ね合わせた絶縁基材同士の間における隙間(空間)の発生が抑制されるので、同様に絶縁基材同士の融着強度が向上し、より優れた絶縁基材間の剥離抑制効果が得られる。
粗面化する領域の面積は、対象となる絶縁基材の一表面全面の面積に対して70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%であってもよい。下限値以上とすることで、得られる積層体において絶縁基材同士の融着強度が向上し、より優れた絶縁基材間の剥離抑制効果が得られる。
本発明においては、前記絶縁基材が液晶ポリエステル含浸基材等の樹脂含浸基材の場合、絶縁基材は粗面化する前に加熱処理することが好ましい。すなわち、本発明は、前記粗面化工程の前に、さらに、前記絶縁基材を加熱処理する工程(以下、「加熱処理工程」ということがある。)を有することが好ましい。絶縁基材を加熱処理することで、含浸されている樹脂をより高分子量化でき、耐熱性をより向上させることができる。
[加熱処理工程]
加熱処理工程は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。そして、加熱温度は、好ましくは240〜330℃、より好ましくは250〜330℃、さらに好ましくは260〜320℃である。下限値以上とすることで、得られる積層体の耐熱性がより向上する。加熱時間は、好ましくは1〜30時間、より好ましくは1〜10時間である。下限値以上とすることで、得られる積層体の耐熱性がより向上し、上限値以下とすることで、積層体の生産性がより向上する。
[加熱プレス工程]
加熱プレス工程においては、粗面化された表面同士を向かい合わせて、複数の前記絶縁基材を重ねて加熱プレスする。重ね合わせる一組(二つ)の絶縁基材においては、いずれも粗面化された表面が重ね合わせ面となる。
加熱プレス工程においては、例えば、図1(b)に示すように、絶縁基材11、12、13及び14をこの順に、これらの厚さ方向に配置する。なお、ここでは見易くするために、絶縁基材等を互いに離間させて示しているが、加熱プレス時にはすべて重ねて配置される。
そして、4枚の絶縁基材のうち、重ね合わせたときに最も外側に位置する(片面が絶縁基材と接触しない)絶縁基材11及び14に、それぞれ金属板91及びクッション材92をこの順に重ねて、4枚の絶縁基材をこれら金属板91及びクッション材92で挟み込み、矢印で示すようにクッション材92側から熱盤等でプレスすることで加熱プレスすることが好ましい。ここで、金属板91は、接触するプレス対象(ここでは、絶縁基材11及び14)の表面に傷を付けないために用いるものであり、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の材質からなり、プレス対象との接触面が滑らかなものであればよい。クッション材92としては、アラミド樹脂;カーボン繊維;アルミナ繊維等の無機繊維の不織布等、耐熱性を有する材質からなるものが好ましい。
加熱プレスは、真空条件下、例えば、0.5kPa以下等の減圧下で行うことが好ましい。
加熱プレスのその他の条件は、絶縁基材の種類等に応じて適宜調節すればよく、特に限定されないが、積層体の表面平滑性が良好となるように調節することが好ましい。
例えば、加熱温度は、前記絶縁基材の作製時に溶媒を除去した後、加熱処理工程を行っている場合には、この加熱処理時の温度に応じて調節することが好ましく、この加熱処理時の最高温度Tmax℃よりも高い温度であることが好ましく、Tmaxよりも5℃以上高い温度であることがより好ましい。加熱プレス時の加熱温度の上限値は、用いた液晶ポリエステルの分解温度を下回るように設定すればよいが、前記分解温度よりも30℃以上低い温度であることが好ましい。液晶ポリエステルの分解温度は、例えば、熱重量減少分析等の公知の手法で測定できる。
また、加熱プレス時の圧力は、1〜30MPaであることが好ましく、時間は5〜60分であることが好ましい。
絶縁基材11、12、13及び14は、加熱プレスによって互いに融着する。このとき、粗面化された表面同士(例えば、絶縁基材11及び12では、基材11の第一の面11aと、基材12の第二の面12b)が融着面となり、融着強度が向上する。その結果、得られる積層体は、吸湿はんだ試験における絶縁基材間の剥離が抑制されたものとなる。
[金属層形成工程]
金属層形成工程においては、重ねたときに最も外側に位置する二つの前記絶縁基材のうち、少なくとも一方の表面に金属層を設ける。金属層を設けることで、本発明に係る積層体が得られる。
図1(c)は、このようにして得られた積層体を例示するものである。ここに示す積層体1は、重ねられた絶縁基材のうち、最も外側に位置する絶縁基材11の第二の面11bに金属層15が設けられ、絶縁基材14の第一の面14aに、金属層16が設けられたものである。重ねられた絶縁基材11、12、13及び14は、絶縁層10を構成している。
金属層15及び16の材質は、銅、アルミ、銀又はこれらから選択される一種以上の金属を含む合金が好ましい。なかでも、より優れた導電性を有する点から、銅又は銅合金が好ましい。そして、金属層15及び16は、材料の取扱いが容易で、簡便に形成でき、経済性にも優れる点から、金属箔からなるものが好ましく、銅箔からなるものがより好ましい。金属層15及び16の材質は、同じでもよいし、異なっていてもよい。
金属層15及び16の厚さは、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは3〜70μmである。
金属層15及び16を設ける方法としては、金属箔を絶縁基材11及び14に融着させる方法、金属箔を絶縁基材11及び14に接着剤で接着させる方法、絶縁基材11の第二の面11bと、絶縁基材14の第一の面14aとを、めっき法、スクリーン印刷法又はスパッタリング法により、金属粉又は金属粒子で被覆する方法が例示できる。
金属箔を絶縁基材11及び14に融着させて、金属層15及び16を設ける場合には、図2に示すように、絶縁基材11の第二の面11bに向かい合わせて金属箔15’を配置し、絶縁基材14の第一の面14aに向かい合わせて金属箔16’を配置して、絶縁基材11、12、13及び14、並びに金属箔15’及び16’を同時に加熱プレスし、金属箔15’から金属層15を、金属箔16’から金属層16をそれぞれ形成することが好ましい。この場合、金属箔15’及び16’を配置すること以外は、図1を参照して説明した方法と同様の方法で加熱プレスすればよい。このように、絶縁基材を加熱プレスする工程において、重ねたときに最も外側に位置する二つの絶縁基材の表面に、さらに金属箔を重ねて、これら金属箔及び複数の絶縁基材を加熱プレスすることで、金属層を設ける工程を同時に行うことができる。
ここでは、絶縁基材11の第二の面11b、及び絶縁基材14の第一の面14aが、いずれも粗面化されており、この場合、金属箔15’の絶縁基材11と向かい合う面(第一の面)15’aと、金属箔16’の絶縁基材14と向かい合う面(第二の面)16’bは、マット面及びシャイン面のいずれでもよいが、マット面であることが好ましい。このようにすることで、これら絶縁基材と金属箔との融着強度が向上する。
また、絶縁基材11の第二の面11b、及び絶縁基材14の第一の面14aは、いずれか一方又は両方が粗面化されていなくてもよい。
絶縁基材11及び14を金属粉又は金属粒子で被覆して、金属層15及び16を設ける場合には、めっき法を適用することが好ましく、無電解めっき法又は電解めっき法を適用することがより好ましい。また、金属層15及び16の特性をさらに向上させるために、めっき法で形成した金属層15及び16を加熱処理することが好ましく、このときの加熱処理の条件は、前記加熱プレスの条件と同様でよい。
上記の説明のように、金属層形成工程は、加熱プレス工程と同時か、又はそれ以降に行う。
なお、ここでは積層体として、絶縁基材11の表面に金属層15が設けられ、絶縁基材14の表面に金属層16が設けられたものを示しているが、金属層15及び16のいずれか一方が設けられていない積層体でもよく、積層体の構成は、目的に応じて適宜選択すればよい。
加熱プレス工程においては、絶縁基材11、12、13及び14をこの順に、これらの厚さ方向に配置したものを一つの構成単位とし、金属板91を介して、この構成単位をさらに厚さ方向に複数配列させて、加熱プレスすることにより、複数の絶縁層(図1(c)に示す絶縁層10)を同時に形成できる。図3は、図1を参照して説明した方法を適用して、複数の絶縁層を同時に形成する方法を説明するための概略断面図であり、図4は、図2を参照して説明した方法を適用して、複数の絶縁層を同時に形成する方法を説明するための概略断面図である。金属箔も同時に加熱プレスする場合には、図4に示すように、金属箔15’、絶縁基材11、12、13及び14、並びに金属箔16’をこの順に、これらの厚さ方向に配置したものを一つの構成単位とし、金属板91を介して、この構成単位をさらに厚さ方向に複数配列させればよい。なお、図3及び4においては、前記構成単位の数が3である場合を例示しているが、前記構成単位の数はこれに限定されず、加熱プレス工程を行うのに支障が無い限り、2以上であればいくつでもよい。
上記製造方法で得られた積層体は、絶縁層を構成する絶縁基材同士の融着面が適度に粗くなっており、絶縁基材同士の融着強度が高く、吸湿はんだ試験における絶縁基材間の剥離が抑制されたものとなる。
そして、前記積層体の金属層を、エッチング等により所望の配線パターンにパターニングすることで、絶縁層の融着強度と耐熱性に優れたプリント配線板が得られる。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。なお、液晶ポリエステルの流動開始温度、液晶ポリエステル液状組成物の粘度は、それぞれ以下の方法で測定した。
(液晶ポリエステルの流動開始温度の測定)
フローテスター(島津製作所社製、CFT−500型)を用いて、液晶ポリエステル約2gを、内径1mm及び長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに充填し、9.8MPa(100kg/cm)の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、ノズルから押し出し、4800Pa・s(48000ポイズ)の粘度を示す温度を測定した。
(液晶ポリエステル液状組成物の粘度の測定)
液晶ポリエステル(28.2質量部)を、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(100質量部)に加え、100℃で2時間加熱して、試験用の液晶ポリエステル液状組成物(液晶ポリエステル溶液)とし、東機産業社製のB型粘度計「TVL−20型」(ローターNo.21、回転速度5rpm)を用いて、23℃において、この液晶ポリエステル液状組成物の粘度を測定した。
<液晶ポリエステル液状組成物の製造>
[製造例1]
(液晶ポリエステルの製造)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸(モル比10.5)、4−ヒドロキシアセトアニリド(モル比9.75)、イソフタル酸(モル比9.75)及び無水酢酸(モル比23.25)を仕込み、反応器内のガスを窒素ガスで十分に置換した後、窒素ガス気流下で攪拌しながら、15分間かけて室温から150℃まで昇温し、この温度(150℃)を保持して3時間還流させた。
次いで、留出する副生成物の酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、170分間かけて300℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了時点とみなし、反応器から内容物を取り出した。この内容物を室温まで冷却し、得られた固形物を粉砕機で粉砕し、比較的低分子量の液晶ポリエステルの粉末を得た。この液晶ポリエステル粉末の流動開始温度は235℃であった。この液晶ポリエステル粉末を窒素ガス雰囲気下において223℃で3時間加熱処理することにより、固相重合を行った。固相重合後の液晶ポリエステルの流動開始温度は270℃であった。また、上記方法で測定した液晶ポリエステル溶液の粘度は0.32Pa.s(320cP)であった。
(液晶ポリエステル液状組成物の製造)
得られた液晶ポリエステル(2200g)を、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(7800g)に加え、100℃で2時間加熱して、液晶ポリエステル溶液を得た。この液晶ポリエステル溶液に、球状シリカ(龍森社製)を、液晶ポリエステルに対して23℃において20体積%分散させて、液晶ポリエステル液状組成物を得た。
[製造例2]
球状シリカを20体積%に代えて30体積%分散させたこと以外は、製造例1と同様の方法で液晶ポリエステル液状組成物を得た。
<積層体の製造>
[実施例1]
図1及び2を参照して説明した製造方法により、積層体を製造した。より具体的には以下の通りである。
(無機クロスの表面処理)
純水(594g)に、酢酸(0.5g)及び3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業社製「KBM−502」)(6g)を加え、これを室温で30分間、200rpmで攪拌し、シラン化合物溶液を得た。このシラン化合物溶液に、Tガラスクロス(日東紡績社製、IPC呼称1078)を室温で30分間浸漬した後、通風乾燥機を用いて100℃で10分間乾燥させて、表面処理されたガラスクロスを得た。
(絶縁基材の製造)
製造例1で得られた液晶ポリエステル液状組成物に、表面処理されたガラスクロスを室温で1分間浸漬した後、乾燥機を用いて、溶媒を蒸発させて乾燥させ、樹脂含浸基材である絶縁基材を得た。
(絶縁基材の加熱処理)
熱風式乾燥機を用いて、得られた絶縁基材を、窒素ガス雰囲気下、290℃で3時間加熱処理した。
(絶縁基材の表面の粗面化)
加熱処理した絶縁基材の表面に対して、表1に示す条件でウェットブラスト処理を行うことにより、両面を全面に渡って粗面化した。粗面化後の絶縁基材の厚さは、65〜68μmであった。粗面化後の絶縁基材の表面について、原子間力顕微鏡を用いて、下記条件で算術平均粗さ(Ra)を算出した。
装置:走査型プローブ顕微鏡、三次元表面観察装置(SPM−9500)(島津製作所製)
試験条件:コンタクトモード
測定範囲:50μm×50μm
すなわち、カンチレバー先端及び試料間に働く斥力を、光てこ検出法により検出し、カンチレバーの垂直方向におけるたわみが一定となるように動作させ、試料のZ方向(試料表面に対して垂直な方向)における変位を取得した。そして、絶縁基材の表面2方向(X方向及びY方向)において、上記のZ方向の変位を表した粗さ曲線を求め、50μm×50μmの範囲において1μmのインターバルで取得した全てのX方向及びY方向の粗さ曲線を組み合わせ、算術平均粗さ(Ra)を算出した。
(積層体の製造)
アラミドクッション材(イチカワテクノファブリクス社製、厚さ3mm)の上に、SUS304板(厚さ5mm)、銅箔(三井金属鉱業社製「3EC−VLP」、厚さ18μm)、表面を粗面化した4枚の絶縁基材、銅箔(三井金属鉱業社製「3EC−VLP」、厚さ18μm)及びSUS304板(厚さ5mm)をこの順に重ね、その上にさらにアラミドクッション材(イチカワテクノファブリクス社製、厚さ3mm)を載せた。銅箔としては、一方の面がマット面で他方の面がシャイン面であるものを用いた。そして、4枚の絶縁基材は、これらの粗面化された表面同士を向かい合わせて重ね、最も外側(1枚目及び4枚目)の絶縁基材については、その粗面化された表面と、銅箔のマット面とを向かい合わせて銅箔を重ねた。そして、この状態で、高温真空プレス機(北川精機社製「KVHC−PRESS」、縦500mm、横500mm)を用いて、340℃、10MPaの条件で30分間加熱プレスすることにより、銅箔付き多層絶縁基材である積層体を得た。
[実施例2〜4]
ウェットブラスト処理の条件を表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
[実施例5〜6]
製造例1で得られた液晶ポリエステル液状組成物に代えて、製造例2で得られた液晶ポリエステル液状組成物を用い、ウェットブラスト処理の条件を表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
[比較例1]
表1に示すように、ウェットブラスト処理を行わなかった(加熱処理した絶縁基材の表面を粗面化しなかった)こと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
[比較例2]
製造例1で得られた液晶ポリエステル液状組成物に代えて、製造例2で得られた液晶ポリエステル液状組成物を用い、表1に示すように、ウェットブラスト処理を行わなかった(加熱処理した絶縁基材の表面を粗面化しなかった)こと以外は、実施例1と同様の方法で積層体を得た。
<積層体の評価>
(吸湿はんだ耐熱性の評価)
上記各実施例及び比較例で得られた積層体の銅箔をエッチング除去し、平面視にて一辺が5cmの正方形となるようにこれを切断して、それぞれ5つの試験片を作製した。次いで、PCTはんだ耐熱性試験(121℃、100%、2hで処理後、はんだに浸漬し260℃で30秒間処理)を行い、吸湿はんだ耐熱性を評価した。結果を表1に示す。なお、表1中、「剥離試験片数」とは、絶縁基材間に剥離(デラミネーション)が生じた試験片の数を、「正常試験片数」とは、絶縁基材間の剥離等が原因である、厚さ方向の膨れが生じなかった試験片の数を、それぞれ示す。
(ピール強度の測定)
上記各実施例及び比較例で得られた積層体について、オートグラフ(島津製作所社製)を用いて、試験速度50mm/分で銅箔及び絶縁基材間のピール強度を測定した。結果を表1に示す。なお、表1中、「MD」は縦方向(絶縁基材の流れ方向)を、「TD」は横方向(前記流れ方向に対して直交する方向)を意味する。
Figure 2013030724
上記評価結果から明らかなように、実施例1〜6では、絶縁基材間に剥離が生じた試験片がなく、外観にも異常がなく、絶縁層は融着強度に優れていた。また、銅箔及び絶縁基材間の融着強度(ピール強度)も良好であった。
これに対して、比較例1ではすべての試験片で、比較例2では2つの試験片で、それぞれ絶縁基材間に剥離が生じ、試験片の厚さ方向において膨れが生じており、外観が異常を呈していた。また、銅箔及び絶縁基材間の融着強度も、比較例1は実施例1〜4より劣り、比較例2は実施例5〜6より劣っており、ウェットブラスト処理を行わないことで、銅箔及び絶縁基材間の融着強度が低下した。
本発明は、電子機器に組み込まれるプリント配線板に利用可能である。
1・・・積層体、10・・・絶縁層、11,12,13,14・・・絶縁基材、11a,12a,13a,14a・・・絶縁基材の表面(第一の面)、11b,12b,13b,14b・・・絶縁基材の表面(第二の面)、15,16・・・金属層、15’,16’・・・金属箔、91・・・金属板、92・・・クッション材

Claims (8)

  1. 複数の絶縁基材が重ねられ、その表面に金属層が設けられた積層体の製造方法であって、
    複数の前記絶縁基材の表面を粗面化する工程と、
    粗面化された表面同士を向かい合わせて、複数の前記絶縁基材を重ねて加熱プレスする工程と、
    重ねたときに最も外側に位置する二つの前記絶縁基材のうち、少なくとも一方の表面に金属層を設ける工程と、を有することを特徴とする積層体の製造方法。
  2. 前記粗面化する工程の前に、さらに、前記絶縁基材を加熱処理する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法。
  3. ウェットブラスト処理により、前記絶縁基材の表面を粗面化することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
  4. 前記金属層が金属箔からなり、前記絶縁基材を加熱プレスする工程において、重ねたときに最も外側に位置する二つの前記絶縁基材のうち、少なくとも一方の表面に、さらに前記金属箔を重ねて、前記金属箔及び複数の前記絶縁基材を加熱プレスすることで、前記金属層を設ける工程を同時に行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
  5. 前記絶縁基材が、無機クロスに、溶媒可溶性で且つ流動開始温度が250℃以上である液晶ポリエステルが含浸されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
  6. 前記液晶ポリエステルが、下記一般式(1)、(2)及び(3)で表される繰返し単位を有することを特徴とする請求項5に記載の積層体の製造方法。
    (1)−O−Ar−CO−
    (2)−CO−Ar−CO−
    (3)−X−Ar−Y−
    (式中、Arは、フェニレン基、ナフチレン基又はビフェニリレン基であり;Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基又は下記一般式(4)で表される基であり;X及びYは、それぞれ独立に酸素原子又はイミノ基であり;前記Ar、Ar及びAr中の一つ以上の水素原子は、それぞれ独立にハロゲン原子、アルキル基又はアリール基で置換されていてもよい。)
    (4)−Ar−Z−Ar
    (式中、Ar及びArは、それぞれ独立にフェニレン基又はナフチレン基であり;Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基又はアルキリデン基である。)
  7. 前記一般式(3)において、X及び/又はYがイミノ基であることを特徴とする請求項6に記載の積層体の製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法で製造されたことを特徴とする積層体。
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