JP2013014794A - 外観均一性に優れた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、めっき原板の清浄度の均一性に関わらず、外観均一性に優れた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを目的としている。
【解決手段】 鋼板の表面に、Al:4〜22質量%、Mg:1〜6質量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層を有し、めっき原板表層の未再結晶率が30%以上であるような鋼板であって、めっき層の構成相のうち、Al/MgZn/Znの3元共晶相の平均径が10〜100μmであることを特徴とする、外観均一性に優れた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板である。
【選択図】図3

Description

本発明は、めっき鋼板に係わり、更に詳しくはめっき原板の清浄度の均一性に関わらず優れた外観均一性を有し、種々の用途、例えば家電用や自動車用、建材用鋼板として適用できる高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板に関するものである。
耐食性の良好な鋼板として使用されるものに溶融亜鉛めっき鋼板がある。この溶融亜鉛めっき鋼板は自動車、家電、建材分野など種々の製造業において広く使用されている。
溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法としては、冷間圧延鋼板をめっき原板とし、連続溶融亜鉛めっきライン(以下、CGLと称する)に通板して製造する方法が一般的である。CGLのプロセスとしては、入り側の洗浄セクションにおいて、めっき原板をアルカリスプレー脱脂した後にブラシ洗浄し、焼鈍セクションにおいて、還元雰囲気で焼鈍した後に、溶融亜鉛めっき浴に浸漬するという、全還元炉法を用いるのが一般的である。また、焼鈍セクションの前段に無酸化炉を有し、表面洗浄されためっき原板を、無酸化炉において予備加熱した後に還元炉において還元焼鈍し、その後溶融亜鉛めっき浴に浸漬する、ゼンジミア法を用いる場合もある。
上記のようなプロセスで製造される、溶融亜鉛めっき鋼板の耐食性をさらに向上させることを目的として、溶融亜鉛めっき層にAlやMgを添加した高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。例えば、特許文献1においては溶融Zn−Al−Mg−Siめっき鋼板が提案されている。また、特許文献2においては、この溶融Zn−Al−Mg−Siめっき鋼板にCa、Be、Ti、Cu、Ni、Co、Cr、Mnの一種または二種以上を添加することにより、さらに耐食性の優れた塗装鋼板が得られることが提案されている。
また、特許文献3においては、溶融Zn−Al−Mgめっき鋼板にTi、B、Siを添加することにより表面外観が良好になることが開示されている。
特許第3179446号公報 特許第3561421号公報 特開2001−295015号公報
しかしながら、上記及びその他これまで開示されためっき鋼板では、外観均一性が満足できるほど十分に確保されていなかった。
Zn−Al−Mgの3元系合金は3質量%Mg−4質量%Al−93質量%Znの組成に3元共晶点を有するため、それよりもAl濃度が高い組成のめっき浴を用いて溶融めっきした場合、めっき層は、Al相、MgZn相、Al/MgZn/Znの3元共晶相、の主に3種類の相から構成される。まためっき層がZn、Al、Mgに加えてSiを含有する場合は上記の3種類の相に加え、MgSi相を含めた、主に4種類の相から構成される。
上記のような構成相から成る、溶融Zn−Al−Mg−Siめっき層の断面組織の例を図1に示す。1がめっき原板、2がAl相、3がMgZn相、4がAl/MgZn/Znの3元共晶相、5がMgSi相である。
図1のような断面構造を有する溶融Zn−Al−Mg−Siめっき層の表面外観の例を図2に示す。6は表面にAl/MgZn/Znの3元共晶相が多い箇所であり、金属光沢を有している。7はAl相が表面に剥き出しになっている箇所であり、白色外観を有している。
溶融Zn−Al−Mgめっきにおいて、前述したような3元共晶点組成よりもAl濃度が高い場合、めっき浴から引き上げた後、まず最初に液相からAl相がデンドライト状に晶出する。続いてMgZn相が晶出し、最後にAl/MgZn/Znの3元共晶相が凝固して液相の凝固が完了する。初晶であるAl相のデンドライトの樹枝部分が、Al/MgZn/Znの3元共晶相の凝固時に、融液の表面を突き破ってめっき表面に剥き出した箇所が、図2の7で示された白色部分に相当する。また、めっき層の表層を、Al/MgZn/Znの3元共晶相が覆うように凝固した箇所が、図2の6に示された金属光沢部分に相当する。めっき層の表面に剥き出しになったAl相のデンドライトの樹枝部分が多いほど、めっき層全体の目視外観における光沢度は低下し、白色度は高まる。
前述したような溶融亜鉛めっき鋼板の製造プロセスにおいて、めっき原板表面の防錆油や圧延油が、CGL入り側の洗浄セクションで完全に除去された後に、CGLのその後のセクションで焼鈍、めっきを施された場合は、めっき原板全面において前述したような、Al相、MgZn相、Al/MgZn/Znの3元共晶相、の順序で液相からの凝固反応が均一に起こり、めっき層表面の全面において図2のような表面外観が均一に得られる。
ところが、CGL入り側の洗浄セクションにおいて、アルカリ脱脂液中に防錆油や圧延油が蓄積して脱脂液の脱脂能力が低下していたり、洗浄ブラシが偏摩耗して、洗浄が不十分であった場合、洗浄セクションを通過した後であっても、めっき原板上に局所的に油汚れが残存してしまうことがあった。
このような、局所的に油汚れが残存しためっき原板を用いて、CGLのその後のセクションにおいて焼鈍、めっきしたところ、油汚れ部直上のめっき表層では、正常部に比べめっき層の光沢度が極めて高くなることが判明した。このようなめっき原板の油汚れ残存部は局所的かつ不規則的に発生するため、正常部の中に不規則的に光沢度の高い箇所が混在したようなめっき外観となり、外観均一性が劣悪となるという問題があった。
しかし、前記特許文献1に開示される技術では、めっき原板に局所的に油汚れが残存している場合の外観均一性に関しては考慮されていない.また、前記特許文献2に開示される技術では、塗装後耐食性向上を目的としてCa、Be、Ti、Cu、Ni、Co、Cr、Mnの一種または二種以上を添加しているが、めっき原板の局所的な油汚れ残存によって外観均一性が悪化するという問題は考慮されていない。また、前記特許文献3に開示される技術では、表面外観を劣化させるZn11Mg相の生成・成長を抑制する目的としてTiとBを添加しているが、めっき原板の局所的な油汚れ残存に起因する外観均一性が悪化するという問題は考慮されていない。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、めっき原板の清浄度の均一性に関わらず、外観均一性に優れた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを目的としている。
本発明者らは、まず、めっき原板の油汚れ残存部において、めっき層の光沢度が高くなる原因を調査した。その結果、めっき原板の油汚れ残存部の直上では、めっき浴からの引き上げ後、液相からの凝固時に、初晶であるAl相のサイズは正常部と変わらないものの、最終凝固相であるAl/MgZn/Znの3元共晶相が微細化するために光沢度が増すことを突き止めた。次に、局所的に油汚れが残存するようなめっき原板であっても、外観均一性を確保できる方法について鋭意検討した結果、めっき原板表層に未再結晶粒を残存させることによって、めっき原板の油汚れ有無に関わらずAl/MgZn/Znの3元共晶相が微細化して、全体的にめっき層の光沢度が増すことで、外観均一性が向上するという新たな知見を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
(1) 鋼板の表面に、Al:4〜22質量%、Mg:1〜6質量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層を有し、めっき原板表層の未再結晶率が30%以上である鋼板であって、めっき層の構成相のうち、Al/MgZn/Znの3元共晶相の平均径が10〜100μmであることを特徴とする、外観均一性に優れた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板。
(2) 上記(1)に記載の溶融亜鉛めっき層が、さらにTi:0.0001〜0.01質量%を含有することを特徴とする、外観均一性に優れた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板。
(3) 上記(1)または(2)に記載の溶融亜鉛めっき層が、さらにSi:0.001〜1質量%を含有することを特徴とする、外観均一性に優れた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板。
(4) めっき層と鋼板の界面に存在するMgSiの密度が100μm当り10〜1000個であることを特徴とする、上記(3)に記載の外観および曲げ加工性に優れた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板。
本発明によれば、めっき原板の清浄度の均一性に関わらず外観均一性に優れた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板を提供できる。
溶融Zn−Al−Mg−Siめっき鋼板の断面組織の一例を示す図で、(a)は、めっき層の顕微鏡写真(倍率2000倍)であり、(b)は該写真中の各組織の分布状態を示した図である。 溶融Zn−Al−Mg−Siめっき鋼板の表面外観の一例を示す写真である。 本発明の溶融亜鉛めっき鋼板において、Al/MgZn/Znの3元共晶相の平均径を求めるためにEBSD測定を行い、粒界を実線で描いたデータの一例を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、上記(1)に記載の発明について説明する。本発明においてめっき層中のAlは平面部耐食性を確保するために必要な元素である。めっき層中のAlの含有量を4〜22質量%に限定したのは、4質量%未満では耐食性を向上させる効果が不十分であるためであり、22質量%を超えると耐食性を向上させる効果が飽和するためである。耐食性の観点から好ましくは5〜18質量%とすることであり、より好ましくは6〜16質量%とすることである。
本発明において、めっき層中のMgは、平面部耐食性および加工部耐食性を向上させるために必須の元素である。めっき層中のMgの含有量を1〜6質量%に限定した理由は、1質量%未満では加工部耐食性を向上させる効果が不十分であるためであり、6質量%を超えるとめっき浴でのドロス発生が著しくなり、安定的に溶融亜鉛めっき鋼板を製造するのが困難となるからである。耐食性とドロス発生のバランスの観点から、好ましくは1.5〜5質量%とすることであり、より好ましくは2〜4.5質量%の範囲とすることであり。
本発明において、めっき原板表層に未再結晶粒を残存させることは、外観均一性を確保するために必須である。本発明においてめっき原板表層の未再結晶率を30%以上と限定したのは、未再結晶率を30%以上とすることで、外観均一性を向上させる効果が発現するためである。より好ましくは未再結晶率を50%以上とすることである。
めっき原板表層の未再結晶率を求めるには、めっき層をインヒビタ入りの15%塩酸で溶解除去した後、鋼板母材表層をEBSD測定すればよい。隣接する測定点との角度差(以下、隣接角と称する)が15°以上の結晶粒界で囲まれた粒を1つの結晶粒と定義する。そして、1つの結晶粒内に、隣接角が15°未満の境界が、粒の面積の半分以上に渡って存在する場合、その粒を、未再結晶粒と定義する。測定した領域内に存在する全ての結晶粒の個数に対する、未再結晶粒の個数の割合を100分率で表した値を、未再結晶率と定義してこれを求めればよい。
即ち、未再結晶率=(未再結晶粒の個数/全ての結晶粒の個数)×100(%)で表すことができる。
めっき原板表層に未再結晶粒を残存させることにより外観均一性が向上するのは、前述したように、未再結晶粒を残存させることによりAl/MgZn/Znの3元共晶相が微細化するからである。Al/MgZn/Znの3元共晶相の微細化により、めっき層の光沢度が増し、めっき原板の油汚れ部直上のめっき層と類似の光沢外観となる結果、めっき原板の清浄度に関わらず外観均一性が向上する。Al/MgZn/Znの3元共晶相が微細化すると、初晶であるAl相のデンドライトの樹枝部分を、微細なAl/MgZn/Znの3元共晶相が埋め尽くすように凝固するため、Al相のデンドライト剥き出し部が減り、金属光沢を有したAl/MgZn/Znの3元共晶相がめっき表面を覆うと考えられる。
めっき原板表層に未再結晶を残存させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、CGLの焼鈍工程での焼鈍温度を再結晶温度以下に低下させる方法や、原板の熱間圧延時に仕上げ圧延温度をAr3点以下として原板表層の再結晶温度を上げる方法や、CGLの焼鈍工程において浸炭処理を行い原板表層の再結晶温度を上げる方法などが考えられる。また少なくともめっき原板表層を含む領域に未再結晶が残存していればよく、原板のバルク部分にわたって未再結晶粒が残存していても本発明を逸脱するものではない。
本発明ではめっき層構成相のうち、Al/MgZn/Znの3元共晶相の平均径を10〜100μmの範囲に限定している。Al/MgZn/Znの3元共晶相の平均径を10μm未満とすることはめっき層と鋼板の界面にCaを濃化させたとしても難しく、高コストとなる恐れがあるためであり、100μmを超えるとAl相のデンドライトの樹枝部分を、Al/MgZn/Znの3元共晶相が覆う効果が小さくなり、外観均一性を確保できないからである。外観均一性の観点から、3元共晶相の平均径を10〜70μmの範囲とすることが好ましく、さらに10〜50μmの範囲とすることがより好ましい。
Al/MgZn/Znの3元共晶相の測定方法としては、めっき層を表面方向からEBSD測定してデータ解析により求める方法が考えられる。EBSD測定は測定速度を向上させるため、Al/MgZn/Znの3元共晶相をZn相と仮定して測定する。Zn相として測定したAl/MgZn/Znの3元共晶相のデータについて、データ処理して平均径を計算すれば、Al/MgZn/Znの3元共晶相の平均径を求めることができる。図3に、Al/MgZn/Znの3元共晶相をZn相と仮定して、めっき層の表面方向からEBSD測定して得られたデータの一例を示す。隣接角が15°以上の境界を3元共晶相の粒界と定義し、実線で囲まれた粒が1つの3元共晶相に相当する。このようなデータからデータ処理によりAl/MgZn/Znの3元共晶相の平均径を求めたところ、46μmであった。
次に、上記(2)または(3)に記載した発明について説明する。
Tiは、めっき層に含有させることで、液相から最初に晶出するAl相のサイズを微細化する効果がある。その結果としてAl/MgZn/Znの3元共晶相をより微細にして外観均一性を高める効果があるため、めっき層中に0.0001〜0.1質量%含有させてもよい。0.0001質量%以上含有させることでAl/MgZn/Znの3元共晶相を微細化させる効果が発現するため、下限を0.0001質量%とした。また、0.1質量%を超えて含有させると、3元共晶相を微細化させる効果が飽和するばかりか、逆にめっき層の表面粗度を大きくして外観が悪くなるため、上限を0.1質量%とした。好ましくは0.001〜0.05質量%の範囲とすることであり、さらに好ましくは0.002〜0.01質量%の範囲とすることである。
Siは、めっき密着性を向上させるのに有効な元素であるため、めっき層中に0.001〜1質量%含有させてもよい。0.001質量%以上含有させることでめっき密着性を向上させる効果が発現するためこれを下限とする。また、1質量%を超えて含有させてもめっき密着性を向上させる効果が飽和するため、上限を1質量%とした。めっき密着性の観点からは、0.01〜0.8質量%の範囲とすることがより好ましい。
次に、上記(4)に記載した発明について説明する。
めっき層にSiを含有させた、溶融Zn−Al−Mg−Siめっき鋼板では、図1に示した通り、めっき層と鋼板の界面近傍を中心に、MgSi相が生成する。このMgSi相は、加工部耐食性向上に効果があるため、Si、Mgの添加量を多くし、めっき層と鋼板との界面にMgSi相が形成した金属組織を作製することが望ましい。また、MgSi相の生成密度を高めると、Al/MgZn/Znの3元共晶相をより微細化させる効果が発現する。加工部耐食性の向上効果は、MgSi相の密度によらず向上する。一方、、Al/MgZn/Znの3元共晶相を微細化させる効果は、密度が100μm当り10個未満でも若干の効果は有するものの、10個以上とすることにより特段に高い効果が発現するため、これを下限とした。また100μm当り1000個超としてもAl/MgZn/Znの3元共晶相を微細化させる効果が飽和するため、100μm当り1000個を上限とした。3元共晶相をより微細化させるために、MgSi相の密度を100μm当り20個〜1000個の範囲とすることがより好ましい。
めっき層と鋼板界面に存在するMgSi相の密度を高めることにより、Al/MgZn/Znの3元共晶相を微細化する効果が高まるのは、MgSi相が、Al/MgZn/Znの3元共晶相が凝固する起点となる効果を有するためと考えられる。すなわち、MgSi相の密度を高めることによって、Al/MgZn/Znの3元共晶相の生成数が増加し、結果として3元共晶相が微細化されるためと考えられる。
めっき層と鋼板の界面に存在するMgSi相の密度を測定するには、インヒビタ入りの0.5%塩酸でめっき層を溶解させることにより、めっき層構成相のうちMgSi相以外を溶解除去させることができるため、その後。表面からSEM観察して、残存するMgSi相の個数密度を計測すればよい。
本発明のめっき原板としては、一般的な冷間圧延鋼板が使用でき、鋼種もAlキルド鋼、Ti、Nb等を添加した極低炭素鋼板、および、これらにP、Si、Mn等の強化元素を添加した高強度鋼、ステンレス鋼等種々のものが適用できる。また、めっき原板の冷間圧延条件は鋼板の寸法、必要とする強度に応じて所定の条件を選択すれば良く、冷間圧延条件によって本発明鋼板の効果が損なわれるものではない。また、鋼板の板厚は特に限定されるものでなく、通常用いられている板厚であれば本発明を適用することが可能である。
めっき付着量については、特に制約は設けないが、耐食性の観点から片面付着量で10g/m以上であることが望ましい。また、加工性の観点からは、片面付着量で350g/mを超えないことが望ましい。本発明の溶融亜鉛めっき鋼板上に、塗装性、溶接性を改善する目的で、上層めっきを施すことや、各種の処理、例えば、クロメート処理、非クロメート処理、りん酸塩処理、潤滑性向上処理、溶接性向上処理等を施しても、本発明を逸脱するものではない。
本発明の製造方法については、特に限定することなく、めっき原板表層に未再結晶を残存させる以外は通常の鋼板の連続溶融亜鉛めっき方法が適用できる。CGLのライン構成についても特に限定されることなく、全還元炉方式、ゼンジミア方式など種々の構成のCGLにおいて本発明の鋼板を製造することが可能である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
(実施例)
まず、熱間圧延において仕上げ圧延温度を870〜930℃とし、その後酸洗、冷間圧延を施し、表面に冷間圧延油が付着した状態の厚さ1.6mmの冷延鋼板を準備し、めっき原板とした。これをアルカリスプレー脱脂、ブラシ洗浄して表面を完全に清浄化した原板を作製した。加えて、アルカリスプレー脱脂後、ブラシ洗浄を行なわず、表面に油汚れが残存した原板も作製した。その後、CGLの焼鈍炉において焼鈍温度を600〜800℃で焼鈍し、浴中のAl 量、Mg量、Si量、Ti量を変化させた450 ℃ の溶融亜鉛めっき浴で3 秒溶融めっきを行った後、Nガスワイピングで付着量を調整した。熱間圧延の仕上げ温度およびCGL焼鈍温度の条件一覧を表1に示す。
完全に清浄化しためっき原板を用いて作製しためっき鋼板について、めっき層組成、めっき原板表層の未再結晶率、Al/MgZn/Znの3元共晶相の平均径、めっき層と鋼板の界面に存在するMgSi相の密度、をそれぞれ評価した。
めっき原板表層の未再結晶率は、前述したように、めっき層をインヒビタ入りの15%塩酸で溶解した後に、EBSD測定することにより求めた。
Al/MgZn/Znの3元共晶相の平均径は、前述したように、めっき層の表面から、Al/MgZn/Znの3元共晶相をZnと仮定してEBSD測定を行い、得られた測定データをデータ処理することによって求めた。
めっき層と鋼板の界面に存在するMgSi相の密度は、前述したように、インヒビタ入りの0.5%塩酸でめっき層構成相のうちMgSi相以外の相を溶解除去した後、残存したMgSi相の個数を、表面から撮影したSEM写真を用いて計測し、100μmあたりの密度に換算して求めた。
めっき鋼板の外観均一性は、完全に清浄化した原板と油汚れが残存した原板についてめっき層の外観をそれぞれ目視確認し、外観の差を6段階で評点付けすることにより行なった。評価の詳細は、◎◎:外観の差が全く確認できないもの、◎○:外観の差がほとんど確認できないもの、◎:外観の差が僅かに確認できるが実使用上全く問題ないもの、○:外観の差が確認できるが実使用上全く問題ないもの、△:明確な外観の差が確認でき実使用上問題となるもの、×:明確な外観の差が確認でき実使用上の価値を著しく損ねるもの、とし、○以上を合格とした。
めっき鋼板の耐食性は、CCT試験後の腐食減量で評価した。めっき鋼板を150×70mmに切断し、JASO―M609に準拠したCCTを用いて、CCT30サイクル後の腐食減量を調査した。評価は、腐食減量30g/m未満を◎、腐食減量30g/m以上50g/m未満を○、腐食減量50g/m以上〜70g/m未満を△、腐食減量70g/m以上を×とし、○以上を合格とした。
以上の評価結果を表2に示す。表2より、本発明例は全て、外観均一性、および耐食性がともに優れている。これに対し、本発明範囲を逸脱する比較例は、本発明例に比較して外観均一性、耐食性に劣る。なお、表2中のめっき組成(質量%)の残部は、亜鉛および不可避的不純物である。
1 めっき原板
2 Al相
3 MgZn
4 Al/MgZn/Znの3元共晶相
5 MgSi相
6 表面にAl/MgZn/Znの3元共晶相が多い箇所
7 Al相が表面に剥き出しになっている箇所

Claims (4)

  1. 鋼板の表面に、Al:4〜22質量%、Mg:1〜6質量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層を有し、めっき原板表層の未再結晶率が30%以上である鋼板であって、めっき層の構成相のうち、Al/MgZn/Znの3元共晶相の平均径が10〜100μmであることを特徴とする、外観均一性に優れた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 請求項1に記載の溶融亜鉛めっき層が、さらにTi:0.0001〜0.01質量%を含有することを特徴とする、外観均一性に優れた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の溶融亜鉛めっき層が、さらにSi:0.001〜1質量%を含有することを特徴とする、外観均一性に優れた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. めっき層と鋼板の界面に存在するMgSiの密度が100μm当り10〜1000個であることを特徴とする、請求項3に記載の外観および曲げ加工性に優れた高耐食性溶融亜鉛めっき鋼板。
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