JP2013013599A - 医療用部品およびその製造方法、並びに医療機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ステンレス鋼で形成された管状の針管1は、内面3の表面粗さRaが1.0マイクロメートル以下であり、かつ内面の表面における、酸化被膜の鉄元素に対する酸素の割合が40%以上であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
また、研磨等により針管等の内面を滑らかにするアプローチも考えられる。しかしながら、詳細は後述するが、発明者は、単に針管等の内面を滑らかにするだけでは、挿入性や操作性を充分に向上させることは困難であることを見出した。
本発明の他の目的は、線状部品を好適に進退させることができる医療機器を提供することである。
本発明の医療用部品の製造方法は、前記引き抜き延伸工程の後に、前記パイプを前記ステンレス鋼の酸化温度以上の温度で所定時間保持する熱処理工程をさらに備えてもよい。
また、本発明の医療機器によれば、線状部品を好適に進退させることができる医療機器を提供することができる。
図1は、本実施形態における医療用部品である針管1の先端側を示す図である。針管1は、ステンレス鋼(SUS)で管状に形成されており、鋭利な先端2を有する。針管1の内面3は、挿通されるスタイレット等の線状部品がスムーズに進退されるよう、凹凸の少ない滑らかな状態となるよう処理されている。内面の表面粗さRaは、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下とされるのがより好ましい。
そこで、針管1においては、内面を滑らかにするとともに、研磨処理等により内面において酸化被膜の一部が失われている場合は、酸化被膜を回復させて金属材料をそのまま露出させないようにしている。酸化被膜の状態は、パイプ内面表面の鉄元素に対する酸素の割合を指標として判断することができ、酸素の割合が40%以上であると、内面における金属材料の露出を好適に抑制することができる。
まず、針管1の材料となるSUS製のパイプを、ダイスで外径を規制しながら引き抜き延伸加工を行って細くする。ダイスを徐々に内径の小さいものに交換しながら、所望の径になるまで引き抜き延伸加工を繰り返す(引き抜き延伸工程)。このとき、少なくとも最後の引き抜き延伸加工においては、パイプに芯金(プラグ)を通した状態で行う(芯引き。プラグ引きとも呼ばれる。)。引き抜き延伸加工により、パイプの内面には凹凸が発生し、荒れて不整になってくるが、パイプにプラグを通して引き抜き延伸加工を行うことにより、パイプの内面がプラグに押し付けられて凹凸の高低差が小さくなり、滑らかになる。
熱処理工程により、パイプの表面が酸化して酸化被膜が形成される。特にパイプの内面では、引き抜き延伸工程や追加された研磨処理等において失われた酸化被膜が好適に回復される。
熱処理工程後、先端を研磨して鋭利に加工すると、針管1が完成する。
外径4.0mm、内径3.6mmのSUS304製パイプを、外側にダイス、内側にプラグをセットした状態で、1回引き抜き延伸加工を行い、その後、熱処理を施し、加工硬化を低減した。ダイス、プラグの径を1工程ごとに徐々に細くしながら複数回引き抜き延伸加工を行った。すべての引き抜き延伸加工を、外側にダイス、内側にプラグをセットした状態で行ったが、加工硬化を除去する熱処理は、途中の引き抜き延伸加工後まで実施し、その後は行わなかった。以上の内容の引き抜き延伸工程により、外径1.0mm、内径0.5mm、長さ2mのパイプを得た。
引き抜き延伸工程後、大気中で300℃〜500℃で60分加熱することにより熱処理工程を行った。熱処理工程後、パイプの片端を回転砥石により針先加工を行い、針管を得た。
実施例イは、上述した本発明の医療用部品の製造方法により製造された針管である。
熱処理工程を行わなかった以外は、実施例イと同一の手順として針管を得た。
実施例ロの針管は、上述した医療用部品の製造方法のうち、熱処理工程を省略して製造された本発明の医療用部品である。
(実施例ハ)
引き抜き延伸工程はプラグを用いず、ダイスのみを用いて行った。熱処理工程、および針先加工は実施例イと同様に行い、引き抜き延伸工程と熱処理工程との間で、粒状の研磨剤を用いてパイプの内面を研磨加工した。
実施例ハの針管は、本発明の医療用部品の製造方法によらず製造された本発明の医療用部品である。
実施例イと同一のパイプを材料として用いた。引き抜き延伸加工はプラグを用いず、ダイスのみを用いて行い、熱処理工程は実施せずに外径1.0×内径0.5、長さ2mのパイプを得た後、実施例1と同様の針先加工を行い、針管を得た。
(比較例ロ)
引き抜き延伸加工後に、化学研磨によりパイプの内面を研磨した以外は、比較例イと同一の手順として針管を得た。
(比較例ハ)
引き抜き延伸加工を実施例イの引き抜き延伸工程と同様に行った以外は、比較例ロと同一の手順として針管を得た。
また、比較例ロおよびハでは、表面粗さRaが1.0μm以下であったため、当初、線状部材の進退時に引っ掛かりが生じなかったものの、挿入量を増やしていくと、ある時点で急に進退抵抗が増大し、進退操作が顕著に重くなるという現象が見られた。これは、針管内面の酸化被膜において、鉄元素に対する酸素の割合が40%未満であるため、初期の状態から金属素地が一部露出していたか、もしくは線状部材の進退操作により酸化被膜が失われて針管内面の金属素地が容易に露出し、針管と線状部材との間で金属材料の凝着が発生することによるものと推測された。この現象は、発明者が初めて見出したものであり、針管等の外側部材において、単に内面を滑らかにするように研磨等の加工を行うのみでは、必ずしもスタイレットの挿入性の恒常的な改善が得られないことがある可能性を示すものである。
本体52の肉厚は製造のし易さや強度不足による座屈防止といった点から0.02mm以上であることが望ましく、曲がりやすさによる挿入のしやすさといった観点から1.0mm以下であることが望ましい。さらに言えば挿入のしやすさを重視する場合には0.02〜0.6mmの範囲が望ましく、製造のしやすさ、座屈防止といった点を重視する場合には0.6〜1.0mm、両者のバランスを取る場合には0.05〜0.8mmの範囲を選択することが望ましい。
なお、先端部52bを溶融させる手段は、上述のYAGレーザーには限定されず、例えば、炭酸ガスレーザー等の他のレーザー、電子ビーム、TIG溶接等のアーク溶接等で使用される各種溶接用加熱手段が用いられてもよい。ここで、溶接用加熱手段を用いる場合は、先端部に他の部材を溶接するのではなく、あくまでも当該溶接の手法を用いて先端部を溶融させるだけである。
スタイレット51の本体52は、中空構造を有するため、同一外径を有する中実の部材と比較して、断面二次モーメントが小さい。その結果、挿通される針管1の湾曲や蛇行により本体52に作用する曲げモーメントに対して曲がりやすくなり、当該湾曲、蛇行等に好適に追従して変形するため、良好な挿入性を示す。
さらに、上述のように挿入性も良好であるため、押し出し性と挿入性とが高いレベルで両立されたスタイレットとなっている。
(実施例)
本体52の材料として、外径0.48mm、内径0.35mmのSUS製のパイプを用意した。当該パイプの一方の端部にYAGレーザーをパルス照射し、局所的かつ瞬間的に溶融および冷却固化させて略半球状の先端部53を形成した。レーザーの照射エネルギーは、0.5〜1.0J/パルスとし、1パルス照射した。他方の端部に樹脂性のツマミ60を取り付けてスタイレットを完成させた。
本体の材料として、Ni−Ti製超弾性合金からなる外径0.48mmの中実な線状部材を準備した。研磨加工により一方の端部を略半球状に加工して先端部を形成し、他方の端部にツマミ60を取り付けてスタイレットを完成させた。
(比較例2)
本体の材料として、SUS製で外径0.48mmの中実な線状部材を使用した以外は、比較例1と同様の手順でスタイレットを完成させた。
スタイレットを挿通する管状の医療用部品として、外径1.0mm、内径0.5mm(スタイレットとのクリアランスは両側合計で0.02mm)、長さ1.5mのSUS製パイプを準備した。図5に示すように、医療用部品10の長手方向中央付近を湾曲させ(曲率半径r 30mm、弧状部分の中心角θ 75度)、当該湾曲状態が保持されるように固定した。
固定された医療用部品10に実施例および各比較例のスタイレット(図5に符号Sで示す。)を挿入し、スタイレットSを外側部材50に対して進退させ、進退操作時の抵抗や、スタイレットの引っかかりの有無等を官能的に評価した。進退操作において、スタイレットSは、ツマミが外側部材10と接触するまで前進させ、先端部が湾曲部位を通過するように進退させた。
なお、本実施形態においては、針管1と好適に組み合わされる線状部品として、スタイレット51を示したが、針管1と組み合わされるスタイレットは、スタイレット51に限られず、例えば各比較例のスタイレットを組み合わせても、比較的良好な挿入性を得ることができる。
例えば、上述の実施形態では、医療用部品として、針管の例を説明したが、これ以外にも、シース管、カニューレ等が外側部材とされてもよい。また、組み合わされる線状部品も、スタイレットのほかに、例えばガイドワイヤ等であってもよい。また、線状部品は必ずしも単線である必要はなく、単線を複数撚りあわせたロープ、ワイヤー状のものであってもよい。
また、本発明の医療用部品の製造方法において、熱処理工程は必須ではない。すなわち、引き抜き延伸工程後、内面表面の酸素割合が充分保持されていれば、必ずしも熱処理工程を行わなくてもよい。
3 内面
41 医療機器
51 スタイレット(線状部品)
Claims (4)
- ステンレス鋼で形成された管状の医療用部品であって、
内面の表面粗さRaが1.0マイクロメートル以下であり、かつ前記内面の表面における、酸化被膜の鉄元素に対する酸素の割合が40%以上であることを特徴とする医療用部品。 - 管状に形成された医療用部品の製造方法であって、
ステンレス鋼で形成されたパイプを、ダイスを用いて引き抜き延伸加工する引き抜き延伸工程を備え、
最後に行われる前記引き抜き延伸加工は、前記パイプにプラグを挿通した状態で行われることを特徴とする医療用部品の製造方法。 - 前記引き抜き延伸工程の後に、前記パイプを前記ステンレス鋼の酸化温度以上の温度で所定時間保持する熱処理工程をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の医療用部品の製造方法。
- 請求項1に記載の医療用部品と、
前記医療用部品に進退可能に挿通される線状部品と、
を備えることを特徴とする医療機器。
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