JP2005013495A - 医療用チューブ - Google Patents
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Abstract
【課題】機械的強度に優れ、かつ低摩擦性ですべりのよい表面をもち、簡素な工程で得ることができる医療用チューブの提供。
【解決手段】樹脂と、該樹脂で構成されるマトリックス中に分散されたナノカーボンとからなる複合材料から形成される層を少なくとも含む医療用チューブ。該チューブは、上記複合材料の押出成形による単層チューブ、または他の材料との共押出成形による積層チューブとして容易に得ることができる。樹脂マトリックス中にナノカーボンが均質にかつランダム(非整列)に分散した複合材料層であって、微細な凹凸のある粗表面をもつ。
【選択図】図1
【解決手段】樹脂と、該樹脂で構成されるマトリックス中に分散されたナノカーボンとからなる複合材料から形成される層を少なくとも含む医療用チューブ。該チューブは、上記複合材料の押出成形による単層チューブ、または他の材料との共押出成形による積層チューブとして容易に得ることができる。樹脂マトリックス中にナノカーボンが均質にかつランダム(非整列)に分散した複合材料層であって、微細な凹凸のある粗表面をもつ。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血管用カテーテル、超音波カテーテル等の各種カテーテル、内視鏡用チューブ、イントロデューサのシースチューブなどに汎く用いることができる医療用チューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
気道、気管、消化管、尿道、血管、その他の体腔あるいは組織中に挿入されるカテーテル、内視鏡用チューブ、イントロデューサーのシースチューブ等の医療用チューブ、さらにはこれらに挿入されて体内に挿入されるガイドワイヤー、スタイレット、ダイレーダー等の医療用器具等の各種医療用具は、組織を損傷させず、また目的部位まで確実に挿入することを可能とする円滑性が要求され、さらには組織内に留置している間に摩擦によって粘膜を損傷したり、炎症を引き起こしたりすることを避けるために、外面が優れた低摩擦性を示すことが要求される。また、チューブ内に挿入されたガイドワイヤ等により生体内の目的部位まで誘導される医療用チューブにおいては、カテーテルとガイドワイヤとの摺動抵抗を低減し、ガイドワイヤの操作性を高めるために、チューブ内腔面の低摩擦性も要求される。
【0003】
さらに上記医療用チューブにおいては、血管等の内径が極めて狭い体腔や組織中への挿入を円滑に行うために外径はなるべく小さいこと(ロープロファイル性)や、生理食塩水や薬液等の円滑かつ迅速な注入やガイドワイヤの操作性を良好にするためにチューブ内腔は充分に確保されていること(薄肉性)が要求され、さらに、このように薄肉に形成しても、体腔内への挿入時あるいは体外への抜去時に外力等によりチューブの一部が破断する虞れのない高い機械的強度も要求される。
【0004】
これらの要求を満足するカテーテルチューブを製造するため、従来、様々な技術開発がなされている。
たとえば無水マレイン酸系共重合体やジメチルアクリルアミド系共重合体の水膨潤性高分子の溶液を医療用具に基材表面にコーティングし、溶媒を除去して低摩擦性被覆を形成する方法が開示されている(たとえば特許文献1〜2など参照)。また炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、テフロン(登録商標)粉末、ベントナイト等の無機または有機の微粉末を混合したシリコーンゴムの溶液をカテーテルチューブの内腔面にコーティングし、加硫固着することにより、カテーテルチューブの内腔面に低摩擦性を付与する開示がある(たとえば特許文献3参照)。エラストマー材料の基材上に無機または有機の微粉末(シリカ、酸化マグネシウム等)を含む滑り性のコーティングを施したカテーテル等の医療用物品を開示するものもある(たとえば特許文献4参照)。
【0005】
しかし上記方法では、基材となるチューブ等を形成した後、基材表面にコーティングを行う別工程を必要とするため、より簡素化した低摩擦性付与工程が望まれる。特に、上記医療用チューブの製造方法としては、押出成形機により成形する方法が一般的であるため、チューブの押出成形と同時に低摩擦性の表面を形成できることが望ましい。また、医療用チューブの内腔は、比較的狭いため、その内腔面にコーティング溶液を流し込むこと自体が実用上困難である。さらに、これらのコーティング自体は、機械的強度に乏しく、医療用チューブの機械的強度を担うものではない。
【0006】
補強材を含有させたポリマー材料を使用した医療用チューブの開示もある。たとえばバルーンカテーテルの引張強度および伸びを制御して耐圧性、寸法安定性を確保するために無機結晶を含有させたポリマー材料が提案されている(特許文献5参照)。ここでは、無機結晶のうちでも、インターカレーションを容易に行え、無機結晶が単分散しうるイオン交換性層状結晶、特にケイ酸塩が好ましいとして、多種例示される無機結晶のうちでもモンモリロナイト、合成マイカ、シリカなどを使用した実施例が示されている。またバルーンカテーテルの縦軸および横軸方向への拡張を最小限とすることができる押出成形材料として、液晶ポリマーまたは配向性ポリマーと、熱可塑性エラストマーとを組合わせたミクロコンポジット材料も提案されている(たとえば特許文献6参照)。ここでの液晶ポリマーまたは配向性ポリマーは、ミクロ繊維状で、バルーンの軸方向に対して平行または斜めに配置したそれらがらせん状に分散している。
【0007】
上記各文献には、カテーテルの表面すべり性については記載されていない。すべり性を開示するものとしては、熱可塑性樹脂ポリマーと、これと非混和性のすべり性ポリマーとのブレンド物の押出成形によるカテーテルシャフトがある(たとえば特許文献7参照)。ここでは、すべり性ポリマーを伸長 (細長い)繊維として分散させ、該繊維の存在によりカテーテルシャフトの表面全体におけるすべり性ポリマーが占める表面積を増大させ、その結果カテーテルシャフトのすべり性を向上させることが開示されている。上記繊維は、直径0.1−5μm、長さ1−20μmで、約10−100好ましくは約20の高アスペクト比を有する。上記カテーテルの具体的な製造方法としては、上記非混和性のすべり性ポリマーが上記熱可塑性ポリマー中で微小球状に存在するように上記ブレンドをチューブ状に押出成形し、冷却後、押出したチューブを長手方向に延伸し、上記すべり性チューブを繊維状にすることが開示されている。このような製造方法は、上記すべり性ポリマーを繊維状に延伸させることに高度な技術を要すると考えられ、実用的でない。
【0008】
【特許文献1】特公平1−33181号公報
【特許文献2】特開平8−24327号公報
【特許文献3】特許第2519542号公報
【特許文献4】特表平8−509134号公報
【特許文献5】特開平2000−325464号公報
【特許文献6】米国特許公開2001/0043998号公報
【特許文献7】米国特許第6165158号明細書
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、機械的強度に優れ、かつ低摩擦性ですべりのよい表面をもち、簡素な工程で得ることができる医療用チューブを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記のような課題は、以下の本発明の医療用チューブ(1)〜(8)により解決することができる。
(1)本発明に係る医療用チューブは、樹脂と、該樹脂で構成されるマトリックス中に分散されたナノカーボンとからなる複合材料から形成される層を少なくとも含む。
【0011】
(2)上記ナノカーボンは、アスペクト比が5以上の繊維状体であることが望ましい。該繊維状体の直径は、2000nm程度以下である。
【0012】
(3)上記複合材料は、上記ナノカーボンを、上記樹脂およびナノカーボンの合計量に対し、通常1ないし40重量%の量で含む。
【0013】
(4)上記複合材料からなる層を含む医療用チューブは、押出成形により容易に製造することができ、押出成形により積層チューブであっても簡素な工程で得ることができる。
したがって上記複合材料の単独または他の共押出成形材料との押出成形品である医療用チューブは、本発明の好ましい態様である。
複合材料は、樹脂とナノカーボンとのコンパウンディングにより調製された均質な組成物のペレットまたは粉末で押出成形に供されることが望ましい。この場合、複合材料のマトリックスは、通常、熱可塑性樹脂で形成される。
本発明において、上記ナノカーボンが繊維状体でかつ押出成形で形成される複合材料層においても、ナノカーボンは、樹脂マトリックス中に均質に、かつ非整列でランダムに配置して存在することができる。
ナノカーボンを含む複合材料層を有する医療用チューブは知られておらず、また補強材としてナノカーボン繊維状体を使用することにより、押出成形後も樹脂マトリックス層中にランダムに分布して存在する医療用チューブは知られていない。
【0014】
(5)本発明の医療用チューブは、上記複合材料からなる単層チューブであってもよい。
【0015】
(6)本発明の医療用チューブは、上記複合材料からなる層を少なくとも一層含む積層チューブであってもよい。
(7)本発明の医療用チューブは、チューブの最内層および/または最外層が上記複合材料からなる層で構成される態様が好ましい。
【0016】
(8)上記複合材料からなる層の表面は、表面全体に微細な凹凸を有する粗表面であり、本発明に係る医療用チューブは、このような複合材料からなる層の表面をチューブの内腔面および/または外表面に有する。
(9)上記粗表面を有するチューブにおいて、チューブを長手方向に切断した際の断面曲線より算出した前記粗表面の算術平均粗さが0.1μm以上であることが望ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に係る医療用チューブは、樹脂と、該樹脂で構成されるマトリックス中に分散されたナノカーボンとからなる複合材料から形成される層を少なくとも含む。本発明では、複合材料のマトリックスを構成する樹脂として、ある程度の可撓性を有するものであれば、熱可塑性であるか、熱硬化または熱架橋性であるかを問わず、一般的に医療用に使用しうるプラスチック材料を広く用いることができる。具体的には、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、それらをハードセグメントとして含むポリエステルエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、オレフィン系共重合体、ポリオレフィンエラストマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのビニル系ポリマー、ナイロンで総称されるポリアミド(PA)たとえばナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン60、ナイロン610、ナイロン612、ナイロンMXD6など、ポリアミドエラストマー(PAE)、ポリイミド、ポリスチレン、SEBS樹脂、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン(POM)、ポリビニルアルコール(PVA)、フッ素樹脂(ETFE、PFA、PTFE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニルケン化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、セルロースアセテート、ビニルポリスルホン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などの各種熱可塑性樹脂およびその誘導体、加硫ゴム、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンなどの熱硬化または架橋性樹脂が挙げられる。
【0018】
これらの1種を単独使用してもよく、2種以上を組合わせ併用してもよい。また、たとえば上記例示のうちのいずれかを含む樹脂を含むポリマーアロイも利用可能である。これらのうちでも、チューブを押出成形できる樹脂が好ましく使用される。
【0019】
本発明に用いられるナノカーボンは、炭素網面で輪郭形成される3次元中空構造体であり、ナノメートル(nm)サイズのものの総称である。なおこのナノメートルサイズとは、直径(D)が最大2000nm程度までのものをいい、繊維状体などにおいては、直径がナノメートルサイズであれば、繊維長さが数十マイクロメートル(μm)以上であってもよい。
【0020】
上記3次元構造体は、略(円)筒状、カゴ状、略球状などさまざまな形状で構成される中空粒子状体または繊維状体が知られている。たとえば球に近い粒子状のフラーレンが挙げられる。フラーレンは、C60(炭素原子数60の球状体:直径約0.7nm)、C70などの周知のもの以外にも、炭素原子数70より多いもの、C60の2量体、3量体など、多重構造のもの、さらには炭素原子数が60より少なく、球状に近い安定な小フラーレンなども知られている。
【0021】
また繊維状体としては、グラファイト単層シートを丸めた形状の1本の略円筒体、すなわち炭素網面が繊維軸に対して概ね平行に配向したカーボンナノチューブが挙げられ、具体的には直径(繊維径)約1〜10nmの単層カーボンナノチューブ(SWNT)、2本以上の(円)筒体が重なった入れ子構造の多層カーボンナノチューブ(MWNT) (最大直径数nm〜数十nm)、直径100nm以上の大径のカーボンナノチューブ(VGCF)などが挙げられる。また直径数十nm〜数百nmのカーボンナノファイバー(CNF)は、炭素網面が繊維軸に対して概ね平行に配向したものだけでなく、傾斜、垂直に配向していてもよく、たとえば直径約1nm〜数nmのカーボンナノホーン、カップスタック型と通称される形状のカーボンナノファイバーが挙げられる。
【0022】
本発明では、特に限定されないが、補強効果を充分とする観点から、上記ナノカーボンのうちでも繊維状体が好ましい。繊維長さ(L)は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは10μm以上であり、アスペクト比(L/D)が5以上、好ましくは10以上、より好ましくは150以上であるものが望ましい。
一方、マトリックス樹脂中への分散性を充分とする観点からは、最長繊維長さは1000μm程度までが好ましく、アスペクト比では、最大10000程度まで、好ましくは1000程度以下である。なお、上記アスペクト比はナノカーボン全体での平均値であり、使用されるナノカーボンがすべて個別に上記アスペクト比を満たさなくてもよい。したがって、ナノチューブ、ナノファイバーなどの繊維状体に制限されるものではなく、フラーレンなどの球状にちかい粒子が含まれていてもよい。
【0023】
上記のようなナノカーボンの製造方法は特に制限されず、公知のアーク法、レーザーアブレーション法など以外にも大量生産のための、あるいは所望構造を得るために提案された製造方法などによればよい。本発明では、ナノカーボンの既製品を使用することができ、たとえば経済産業省の炭素系高機能材料技術プロジェクトにおいて研究の進められている大量合成技術に基づき製造されたナノカーボンが当プロジェクトから入手可能であり、あるいは他の市販品を使用することができる。
【0024】
上記ナノカーボンは、ナノカーボンと樹脂との濡れ性や接着性などを向上させるために表面処理が施されていてもよい。たとえばナノカーボンの表面にあらかじめ脱脂処理あるいは洗浄処理を施したり、紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、イオン注入処理などの活性化処理が施されていてもよい。ナノカーボンを樹脂中に分散混合し易くするために、これらの処理後、さらにシラン系、チタン系、アルミニウム系などのカップリング剤で処理することも可能である。
【0025】
上記のような樹脂とナノカーボンとから複合材料を調製するに際して、樹脂およびナノカーボンの使用量比は、複合材料から形成される最終的なチューブの寸法、その用途、マトリックス樹脂の材質および/またはナノカーボンの種類などに応じて適宜に設定され、一概にはいえず、また特に限定されものではないが、樹脂マトリックス中にナノカーボンが分散した構造の複合材料とするためには、樹脂とナノカーボンとの合計重量に対するナノカーボン量が40重量%以下であることが好ましい。なお、ナノカーボン量が40重量%を超え多くなると、樹脂マトリックスの保持が困難になり、破断強度が低下する傾向にあり、また所望の低摩擦性が確保しにくくなる。上記ナノカーボン量は、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下である。一方、ナノカーボンによる補強効果を確保し、低摩擦性を得るため、上記ナノカーボン量は1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましい。
【0026】
本発明では、上記のような樹脂とナノカーボンとからなる複合材料の調製とチューブ成形とを連続して行うことも可能であるが、あらかじめ樹脂とナノカーボンとをコンパウンディングすることにより調製したペレットまたはパウダー形態の組成物をチューブ成形に供することができる。
【0027】
複合材料は、樹脂マトリックス中にナノカーボンが均質に分散した組成物を得ることができれば、公知のコンパウンディング手法を適宜に採用することができる。たとえば一軸または二軸のスクリュー式混練機、ゴムロール、石臼タイプの混練機などを用いて樹脂とナノカーボンとを混練する方法が挙げられる。
また適当な溶媒に溶解した樹脂溶液に、ナノカーボンを加えて混合する方法が挙げられる。
【0028】
さらに、本発明で使用されるナノカーボンのように微細な短繊維を樹脂中に分散させる方法として、in situ 重合により、樹脂の合成とナノカーボンの混合とを同時に行う方法も好ましく挙げられる。具体的には、複合材料のマトリックスを構成する樹脂の重合反応前の重合原料中、あるいは重合完結前の低粘度の樹脂(若しくはその前駆物質:重合モノマー、熱硬化性樹脂の主剤/硬化剤など)中にナノカーボンを分散させることにより、分散性を大幅に改善することができる。この方法は、溶融混練だけではナノカーボンの充分な分散性が得られない樹脂の場合に特に有効である。
【0029】
また、ナノカーボンの樹脂マトリックス中への分散性をより向上させるために超音波震蕩法を適用することが好ましい。すなわちナノカーボンと樹脂との混合物に、超音波による振動を一定時間加えれば、部分的に凝集しているナノカーボンをほぐして拡げつつ、ナノカーボン間に樹脂を浸透させ、ナノカーボンを樹脂マトリックス中に分散させることができる。
【0030】
超音波震蕩法は、溶融状態の樹脂に適用することもできるが、溶液状態の樹脂への適用が効果的である。樹脂溶液とナノカーボンとの混合は、超音波震蕩のみにより、あるいは撹拌翼を併用してナノカーボン中に樹脂溶液を浸透させ、ナノカーボンを樹脂中に分散させることができる。
また上記溶液状態の樹脂は、溶液重合による製造過程の樹脂であってもよく、重合開始前の重合原料溶液、重合中あるいは重合後の重合溶液中にナノカーボンを加え、超音波による振動を加える方法も好ましい。
【0031】
以上のような方法を適用することにより、樹脂マトリックス中にナノカーボンがランダムに分散した複合材料を得ることができ、またこのように分散させることにより、ナノカーボンと樹脂との界面接着力が向上する。
【0032】
本発明の医療用チューブは、上記のような複合材料から形成される層を少なくとも含むチューブであり、この複合材料層のみからなる単層チューブであっても、複合材料層と他の材料層との積層チューブであってもよい。
またチューブの成形方法も成形材料に応じて適宜に選択されるが、たとえば上記マトリックスを構成する樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、常法の押出成形法により複合材料の単独押出または複合材料と他の材料との共押出により、単層または積層チューブを作製することができる。
【0033】
本発明の医療用チューブの態様例を図に示す。図1は単層チューブの断面を模式的に示す図であり、チューブ1は、樹脂(マトリックス)11中にナノカーボン12が分散した複合材料層10からなる。
図2は積層チューブの例として3層チューブの断面を模式的に示し、(a)はチューブ1の最外層が複合材料層10であり、中間層20を介して他の材料からなる最内層30で構成される態様例を示す。図2(b)は、チューブ1の最内層が複合材料層10であり、中間層20を介して他の材料からなる最外層40で構成される態様例を示す。図2(c)は、中間層20を介して最外層および最内層の両方が複合材料層10で構成される態様例を示す。
これら図2(a)〜(c)に示される中間層20および他の層30、40は、たとえば上記複合材料のマトリックスを構成する樹脂として例示したうちから、それぞれ適宜に選択することができる。
【0034】
上記複合材料から形成される層は、ナノカーボンが樹脂マトリックス中に非整列状態でランダムに分散していることにより、ナノカーボンによる補強効果を発現して、チューブ表面層(複合材料層)そのものの機械的強度を向上させるだけでなく、チューブ全体の機械的強度も担う。また、複合材料層は、その表面全体に微細な凹凸を有し、ナノカーボンを含まない樹脂のみからなる層(たとえば図2(a)内層30)の成形表面に比して、表面全体に微細な凹凸のある粗表面を有する。このためチューブが複合材料層の単層チューブであるか、または最内層および/または最外層に複合材料層を有する積層チューブは、上記粗表面からなる内腔面および/または外表面のすべり性がよく、低摩擦性を発揮する。
【0035】
前記チューブ内腔面および/または外表面は、特に限定されるものではないが、前記チューブを長手方向に切断した際の断面曲線より算出した前記粗表面の算術平均粗さ0.1μm以上、より好ましくは0.12μm以上が好ましい。このようにすることにより、チューブ表面と、この表面と接触するガイドワイヤ等との接触面積が低減され、すべり性が向上する。
なお、上記粗さの上限値は、特に限定されるものではないが、当該表面が粗くなりすぎると逆にすべり性(低摩擦性)が低下すると考えられるため、1.0μm以下が好ましい。より好ましくは0.8μm以下、さらに好ましくは0.6μm以下である。
【0036】
本発明の医療用チューブは、血管用カテーテル、超音波カテーテル等の各種カテーテル、内視鏡用チューブ、イントロデューサのシースチューブなどとして広く利用することができる。チューブのサイズも使用目的に応じて設定すればよく、特に制限されないが、外径0.5〜1mm程度のカテーテルチューブの場合には、単層チューブの厚みは50〜100μm程度で、積層チューブの場合には、複合材料層10の厚みが10〜90μm程度で形成される。
【0037】
【実施例】
次に実施例および試験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例および試験例に限定されるものではない。
(実施例1)
<複合材料の調製>
二軸押出成形機に、ポリアミドエラストマー95重量部に対して5重量部のナノカーボン(平均外径:約150nm、平均長さ:約10〜20μmのカーボンナノファイバ(以下、CNF))を供給し、コンパウンディングして、押出・カットし、ナノカーボンを5重量%含む複合材料のペレットを作製した。
<単層チューブの成形>
上記で得られた複合材料ペレットを押出成形して、外径0.9mm×内径0.5mmのチューブを作製した。得られたチューブについて、低摩擦性の指標としての摺動抵抗および機械的強度の指標としての破断強度を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
(比較例1)
実施例1で使用したポリアミドエラストマーを押出成形して、実施例1と同サイズでナノカーボン(CNF)を含まないチューブを得た。摺動抵抗および破断強度の測定結果を表1に示す。
【0039】
(比較例2)
ナノカーボンに代えて、酸化ビスマス(平均粒径:1.5μnm)を35重量%含ませた以外は、実施例1と同様にして実施例1と同サイズのチューブを押出成形した。摺動抵抗および破断強度の測定結果を表1に示す。
また、チューブ内腔面のSEM観察(×500)による撮像を図6に示す。
【0040】
上記実施例1および比較例1〜2で得られた各チューブの摺動抵抗および破断強度を以下のようにして評価した。
<チューブ摺動抵抗>
図3に示す形状で湾曲させたポリエチレン製チューブ (内径1.05mm)内に、各試験チューブを挿入し、島津オートグラフ(AGS−100D)を用いて、引抜き速度100mm/min、測定温度25℃で引抜いた際の最大荷重を測定した。
【0041】
<チューブ破断強度>
島津オートグラフ(AGS−100D)を用いて、引張速度100mm/min、チャック間距離2cm、測定温度25℃で各試験チューブを引張り、測定した破断するまでの最大荷重を引張破断強度とした。
【0042】
表1
*1( )内はN換算
*2( )内はN/mm2 換算
【0043】
上記表に示されるように、比較例1および比較例2のチューブの摺動抵抗がそれぞれ240gf、190gfであるのに対し、実施例1のチューブの摺動抵抗は140gfと低減され、低摩擦性であることが確認された。また比較例1および比較例2のチューブの破断強度がそれぞれ4800gf/mm2 、4300gf/mm2 であるのに対し、実施例1のチューブの破断強度は5400gf/mm2 と格段に向上していることが確認された。
【0044】
(実施例2)
ポリアミドエラストマーをナイロン12に代え、かつナノカーボン(CNF)をナイロン12とナノカーボンとの合計量100重量%に対し、1重量%、5重量%、10重量%または15重量%となる量で配合した以外は、実施例1と同様にして作製した複合材料のペレットを用いて、実施例1と同サイズの単層チューブを押出成形した。
各チューブ断面および内腔面のSEM観察(×500)による撮像を図4(a)〜(d)に示す。
【0045】
(実施例3)
実施例2で調製したナノカーボン含量10重量%の複合材料を内層とし、実施例1と同じポリアミドエラストマーとを共押出して2層チューブを成形した。
チューブ断面および内腔面のSEM観察(×500)による撮像を図5(a)に示す。
【0046】
(比較例3)
ナノカーボン(CNF)を含まないナイロン12を内層とした以外は、実施例3と同様にして2層チューブを成形した。
チューブ断面および内腔面のSEM観察(×500)による撮像を図5(b)に示す。
【0047】
SEM観察像から明らかなように、複合材料層で形成される本発明のチューブの内腔面(図4および図5(a))は、ナノカーボンを含まず、ナイロン12のみからなるチューブの平坦な内腔面 (図5(b))および酸化ビスマスを含有するチューブの内腔面(図6)に比べ、内腔面表面全体に微細な凹凸が見られる。
これにより、チューブ内にガイドワイヤなどを通過させた際には、ガイドワイヤと内腔面との接触面積が少なくなり、摺動抵抗が小さく (すべりがよく)なる。
また本発明の積層チューブでは、ナノカーボンを含む複合材料層と、他の材料層とは、両者の界面が緊密に一体化して積層されていることが図5(a)に示されている。これにより、ナノカーボンによる補強効果は複合材料層だけでなく、チューブ全体に及ぶことができる。
【0048】
上記実施例2、3および比較例2〜3で得られた各チューブの内腔面の粗さについて、以下の通りにて評価した。
<算術平均粗さ評価>
実施例2のCNF1重量%、5重量%、10重量%および15重量%の単層チューブ、実施例3および比較例2、3のチューブのそれぞれを、チューブの長手方向に切断した。
切断した各チューブの内腔面につき、JIS B0601に基づき、レーザー顕微鏡(KEYENCE 社製VK−8500)を用い、チューブの断面曲線より算出した算術平均粗さを測定した。尚、チューブの切断面近傍ではレーザ顕微鏡による測定にノイズが生じることを考慮して、切断面より十分離間したチューブ中央部における45μm長の部分を測定した。
結果を表2に示す。
【0049】
表2
【0050】
表2に示す結果より、カーボンナノファイバを含有した場合には、算術平均粗さ0.1μm以上という、ナノファイバを含有しない表面に比べて4倍以上も粗い表面が形成されることがわかった。すなわち、カーボンナノファイバを含有しない場合よりもはるかに粗い凹凸が形成されることがわかった。
また、比較例2の酸化ビスマス入りチューブと比較しても、カーボンナノファイバを含有するチューブはいずれも粗い凹凸を有している。
これにより、カーボンナノファイバを含有するチューブにおいては、ガイドワイヤ等とチューブ内腔面との接触面積が小さくなり、摺動抵抗が低減されていると考えられる。
【0051】
【発明の効果】
本発明の医療用チューブは、樹脂マトリックス中にナノカーボンほぼ均質にかつランダムに分散した複合材料層を含み、特にナノカーボンが繊維状の場合には非整列状態で均質分散していることにより、チューブの軸方向および円周方向を含む全方向に対してナノカーボンによる補強効果を示す。このような複合材料層を有する本発明の医療用チューブは、チューブ全体の機械的強度が高い。また複合材料層の全体に微細な凹凸がある表面を、チューブ内腔面または外表面とすれば、摺動抵抗が軽減された低摩擦性のチューブが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の医療用チューブの単層態様例を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の医療用チューブの積層態様例を示す断面図である。
【図3】医療用チューブからガイドワイヤの引抜きを説明するための模式図である。
【図4】(a)〜(d)は、実施例2で作製した単層構造の医療用チューブ内腔面のSEM観察による撮像を示す図である。
【図5】(a)〜(b)は、比較例3および実施例3で作製した積層構造の医療用チューブの断面SEM観察による撮像を示す図である。
【図6】比較例2で作製した酸化ビスマスを含む単層構造の医療用チューブ内腔面のSEM観察による撮像を示す図である。
【符号の説明】
1:チューブ
10:複合材料層
11:樹脂(マトリックス)
12:ナノカーボン
20:中間層
30:他の材料からなる最内層
40:他の材料からなる最外層
【発明の属する技術分野】
本発明は、血管用カテーテル、超音波カテーテル等の各種カテーテル、内視鏡用チューブ、イントロデューサのシースチューブなどに汎く用いることができる医療用チューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
気道、気管、消化管、尿道、血管、その他の体腔あるいは組織中に挿入されるカテーテル、内視鏡用チューブ、イントロデューサーのシースチューブ等の医療用チューブ、さらにはこれらに挿入されて体内に挿入されるガイドワイヤー、スタイレット、ダイレーダー等の医療用器具等の各種医療用具は、組織を損傷させず、また目的部位まで確実に挿入することを可能とする円滑性が要求され、さらには組織内に留置している間に摩擦によって粘膜を損傷したり、炎症を引き起こしたりすることを避けるために、外面が優れた低摩擦性を示すことが要求される。また、チューブ内に挿入されたガイドワイヤ等により生体内の目的部位まで誘導される医療用チューブにおいては、カテーテルとガイドワイヤとの摺動抵抗を低減し、ガイドワイヤの操作性を高めるために、チューブ内腔面の低摩擦性も要求される。
【0003】
さらに上記医療用チューブにおいては、血管等の内径が極めて狭い体腔や組織中への挿入を円滑に行うために外径はなるべく小さいこと(ロープロファイル性)や、生理食塩水や薬液等の円滑かつ迅速な注入やガイドワイヤの操作性を良好にするためにチューブ内腔は充分に確保されていること(薄肉性)が要求され、さらに、このように薄肉に形成しても、体腔内への挿入時あるいは体外への抜去時に外力等によりチューブの一部が破断する虞れのない高い機械的強度も要求される。
【0004】
これらの要求を満足するカテーテルチューブを製造するため、従来、様々な技術開発がなされている。
たとえば無水マレイン酸系共重合体やジメチルアクリルアミド系共重合体の水膨潤性高分子の溶液を医療用具に基材表面にコーティングし、溶媒を除去して低摩擦性被覆を形成する方法が開示されている(たとえば特許文献1〜2など参照)。また炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、テフロン(登録商標)粉末、ベントナイト等の無機または有機の微粉末を混合したシリコーンゴムの溶液をカテーテルチューブの内腔面にコーティングし、加硫固着することにより、カテーテルチューブの内腔面に低摩擦性を付与する開示がある(たとえば特許文献3参照)。エラストマー材料の基材上に無機または有機の微粉末(シリカ、酸化マグネシウム等)を含む滑り性のコーティングを施したカテーテル等の医療用物品を開示するものもある(たとえば特許文献4参照)。
【0005】
しかし上記方法では、基材となるチューブ等を形成した後、基材表面にコーティングを行う別工程を必要とするため、より簡素化した低摩擦性付与工程が望まれる。特に、上記医療用チューブの製造方法としては、押出成形機により成形する方法が一般的であるため、チューブの押出成形と同時に低摩擦性の表面を形成できることが望ましい。また、医療用チューブの内腔は、比較的狭いため、その内腔面にコーティング溶液を流し込むこと自体が実用上困難である。さらに、これらのコーティング自体は、機械的強度に乏しく、医療用チューブの機械的強度を担うものではない。
【0006】
補強材を含有させたポリマー材料を使用した医療用チューブの開示もある。たとえばバルーンカテーテルの引張強度および伸びを制御して耐圧性、寸法安定性を確保するために無機結晶を含有させたポリマー材料が提案されている(特許文献5参照)。ここでは、無機結晶のうちでも、インターカレーションを容易に行え、無機結晶が単分散しうるイオン交換性層状結晶、特にケイ酸塩が好ましいとして、多種例示される無機結晶のうちでもモンモリロナイト、合成マイカ、シリカなどを使用した実施例が示されている。またバルーンカテーテルの縦軸および横軸方向への拡張を最小限とすることができる押出成形材料として、液晶ポリマーまたは配向性ポリマーと、熱可塑性エラストマーとを組合わせたミクロコンポジット材料も提案されている(たとえば特許文献6参照)。ここでの液晶ポリマーまたは配向性ポリマーは、ミクロ繊維状で、バルーンの軸方向に対して平行または斜めに配置したそれらがらせん状に分散している。
【0007】
上記各文献には、カテーテルの表面すべり性については記載されていない。すべり性を開示するものとしては、熱可塑性樹脂ポリマーと、これと非混和性のすべり性ポリマーとのブレンド物の押出成形によるカテーテルシャフトがある(たとえば特許文献7参照)。ここでは、すべり性ポリマーを伸長 (細長い)繊維として分散させ、該繊維の存在によりカテーテルシャフトの表面全体におけるすべり性ポリマーが占める表面積を増大させ、その結果カテーテルシャフトのすべり性を向上させることが開示されている。上記繊維は、直径0.1−5μm、長さ1−20μmで、約10−100好ましくは約20の高アスペクト比を有する。上記カテーテルの具体的な製造方法としては、上記非混和性のすべり性ポリマーが上記熱可塑性ポリマー中で微小球状に存在するように上記ブレンドをチューブ状に押出成形し、冷却後、押出したチューブを長手方向に延伸し、上記すべり性チューブを繊維状にすることが開示されている。このような製造方法は、上記すべり性ポリマーを繊維状に延伸させることに高度な技術を要すると考えられ、実用的でない。
【0008】
【特許文献1】特公平1−33181号公報
【特許文献2】特開平8−24327号公報
【特許文献3】特許第2519542号公報
【特許文献4】特表平8−509134号公報
【特許文献5】特開平2000−325464号公報
【特許文献6】米国特許公開2001/0043998号公報
【特許文献7】米国特許第6165158号明細書
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、機械的強度に優れ、かつ低摩擦性ですべりのよい表面をもち、簡素な工程で得ることができる医療用チューブを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記のような課題は、以下の本発明の医療用チューブ(1)〜(8)により解決することができる。
(1)本発明に係る医療用チューブは、樹脂と、該樹脂で構成されるマトリックス中に分散されたナノカーボンとからなる複合材料から形成される層を少なくとも含む。
【0011】
(2)上記ナノカーボンは、アスペクト比が5以上の繊維状体であることが望ましい。該繊維状体の直径は、2000nm程度以下である。
【0012】
(3)上記複合材料は、上記ナノカーボンを、上記樹脂およびナノカーボンの合計量に対し、通常1ないし40重量%の量で含む。
【0013】
(4)上記複合材料からなる層を含む医療用チューブは、押出成形により容易に製造することができ、押出成形により積層チューブであっても簡素な工程で得ることができる。
したがって上記複合材料の単独または他の共押出成形材料との押出成形品である医療用チューブは、本発明の好ましい態様である。
複合材料は、樹脂とナノカーボンとのコンパウンディングにより調製された均質な組成物のペレットまたは粉末で押出成形に供されることが望ましい。この場合、複合材料のマトリックスは、通常、熱可塑性樹脂で形成される。
本発明において、上記ナノカーボンが繊維状体でかつ押出成形で形成される複合材料層においても、ナノカーボンは、樹脂マトリックス中に均質に、かつ非整列でランダムに配置して存在することができる。
ナノカーボンを含む複合材料層を有する医療用チューブは知られておらず、また補強材としてナノカーボン繊維状体を使用することにより、押出成形後も樹脂マトリックス層中にランダムに分布して存在する医療用チューブは知られていない。
【0014】
(5)本発明の医療用チューブは、上記複合材料からなる単層チューブであってもよい。
【0015】
(6)本発明の医療用チューブは、上記複合材料からなる層を少なくとも一層含む積層チューブであってもよい。
(7)本発明の医療用チューブは、チューブの最内層および/または最外層が上記複合材料からなる層で構成される態様が好ましい。
【0016】
(8)上記複合材料からなる層の表面は、表面全体に微細な凹凸を有する粗表面であり、本発明に係る医療用チューブは、このような複合材料からなる層の表面をチューブの内腔面および/または外表面に有する。
(9)上記粗表面を有するチューブにおいて、チューブを長手方向に切断した際の断面曲線より算出した前記粗表面の算術平均粗さが0.1μm以上であることが望ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に係る医療用チューブは、樹脂と、該樹脂で構成されるマトリックス中に分散されたナノカーボンとからなる複合材料から形成される層を少なくとも含む。本発明では、複合材料のマトリックスを構成する樹脂として、ある程度の可撓性を有するものであれば、熱可塑性であるか、熱硬化または熱架橋性であるかを問わず、一般的に医療用に使用しうるプラスチック材料を広く用いることができる。具体的には、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、それらをハードセグメントとして含むポリエステルエラストマー、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、オレフィン系共重合体、ポリオレフィンエラストマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのビニル系ポリマー、ナイロンで総称されるポリアミド(PA)たとえばナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン60、ナイロン610、ナイロン612、ナイロンMXD6など、ポリアミドエラストマー(PAE)、ポリイミド、ポリスチレン、SEBS樹脂、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン(POM)、ポリビニルアルコール(PVA)、フッ素樹脂(ETFE、PFA、PTFE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニルケン化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、セルロースアセテート、ビニルポリスルホン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などの各種熱可塑性樹脂およびその誘導体、加硫ゴム、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンなどの熱硬化または架橋性樹脂が挙げられる。
【0018】
これらの1種を単独使用してもよく、2種以上を組合わせ併用してもよい。また、たとえば上記例示のうちのいずれかを含む樹脂を含むポリマーアロイも利用可能である。これらのうちでも、チューブを押出成形できる樹脂が好ましく使用される。
【0019】
本発明に用いられるナノカーボンは、炭素網面で輪郭形成される3次元中空構造体であり、ナノメートル(nm)サイズのものの総称である。なおこのナノメートルサイズとは、直径(D)が最大2000nm程度までのものをいい、繊維状体などにおいては、直径がナノメートルサイズであれば、繊維長さが数十マイクロメートル(μm)以上であってもよい。
【0020】
上記3次元構造体は、略(円)筒状、カゴ状、略球状などさまざまな形状で構成される中空粒子状体または繊維状体が知られている。たとえば球に近い粒子状のフラーレンが挙げられる。フラーレンは、C60(炭素原子数60の球状体:直径約0.7nm)、C70などの周知のもの以外にも、炭素原子数70より多いもの、C60の2量体、3量体など、多重構造のもの、さらには炭素原子数が60より少なく、球状に近い安定な小フラーレンなども知られている。
【0021】
また繊維状体としては、グラファイト単層シートを丸めた形状の1本の略円筒体、すなわち炭素網面が繊維軸に対して概ね平行に配向したカーボンナノチューブが挙げられ、具体的には直径(繊維径)約1〜10nmの単層カーボンナノチューブ(SWNT)、2本以上の(円)筒体が重なった入れ子構造の多層カーボンナノチューブ(MWNT) (最大直径数nm〜数十nm)、直径100nm以上の大径のカーボンナノチューブ(VGCF)などが挙げられる。また直径数十nm〜数百nmのカーボンナノファイバー(CNF)は、炭素網面が繊維軸に対して概ね平行に配向したものだけでなく、傾斜、垂直に配向していてもよく、たとえば直径約1nm〜数nmのカーボンナノホーン、カップスタック型と通称される形状のカーボンナノファイバーが挙げられる。
【0022】
本発明では、特に限定されないが、補強効果を充分とする観点から、上記ナノカーボンのうちでも繊維状体が好ましい。繊維長さ(L)は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは10μm以上であり、アスペクト比(L/D)が5以上、好ましくは10以上、より好ましくは150以上であるものが望ましい。
一方、マトリックス樹脂中への分散性を充分とする観点からは、最長繊維長さは1000μm程度までが好ましく、アスペクト比では、最大10000程度まで、好ましくは1000程度以下である。なお、上記アスペクト比はナノカーボン全体での平均値であり、使用されるナノカーボンがすべて個別に上記アスペクト比を満たさなくてもよい。したがって、ナノチューブ、ナノファイバーなどの繊維状体に制限されるものではなく、フラーレンなどの球状にちかい粒子が含まれていてもよい。
【0023】
上記のようなナノカーボンの製造方法は特に制限されず、公知のアーク法、レーザーアブレーション法など以外にも大量生産のための、あるいは所望構造を得るために提案された製造方法などによればよい。本発明では、ナノカーボンの既製品を使用することができ、たとえば経済産業省の炭素系高機能材料技術プロジェクトにおいて研究の進められている大量合成技術に基づき製造されたナノカーボンが当プロジェクトから入手可能であり、あるいは他の市販品を使用することができる。
【0024】
上記ナノカーボンは、ナノカーボンと樹脂との濡れ性や接着性などを向上させるために表面処理が施されていてもよい。たとえばナノカーボンの表面にあらかじめ脱脂処理あるいは洗浄処理を施したり、紫外線照射処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、イオン注入処理などの活性化処理が施されていてもよい。ナノカーボンを樹脂中に分散混合し易くするために、これらの処理後、さらにシラン系、チタン系、アルミニウム系などのカップリング剤で処理することも可能である。
【0025】
上記のような樹脂とナノカーボンとから複合材料を調製するに際して、樹脂およびナノカーボンの使用量比は、複合材料から形成される最終的なチューブの寸法、その用途、マトリックス樹脂の材質および/またはナノカーボンの種類などに応じて適宜に設定され、一概にはいえず、また特に限定されものではないが、樹脂マトリックス中にナノカーボンが分散した構造の複合材料とするためには、樹脂とナノカーボンとの合計重量に対するナノカーボン量が40重量%以下であることが好ましい。なお、ナノカーボン量が40重量%を超え多くなると、樹脂マトリックスの保持が困難になり、破断強度が低下する傾向にあり、また所望の低摩擦性が確保しにくくなる。上記ナノカーボン量は、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは8重量%以下である。一方、ナノカーボンによる補強効果を確保し、低摩擦性を得るため、上記ナノカーボン量は1重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましい。
【0026】
本発明では、上記のような樹脂とナノカーボンとからなる複合材料の調製とチューブ成形とを連続して行うことも可能であるが、あらかじめ樹脂とナノカーボンとをコンパウンディングすることにより調製したペレットまたはパウダー形態の組成物をチューブ成形に供することができる。
【0027】
複合材料は、樹脂マトリックス中にナノカーボンが均質に分散した組成物を得ることができれば、公知のコンパウンディング手法を適宜に採用することができる。たとえば一軸または二軸のスクリュー式混練機、ゴムロール、石臼タイプの混練機などを用いて樹脂とナノカーボンとを混練する方法が挙げられる。
また適当な溶媒に溶解した樹脂溶液に、ナノカーボンを加えて混合する方法が挙げられる。
【0028】
さらに、本発明で使用されるナノカーボンのように微細な短繊維を樹脂中に分散させる方法として、in situ 重合により、樹脂の合成とナノカーボンの混合とを同時に行う方法も好ましく挙げられる。具体的には、複合材料のマトリックスを構成する樹脂の重合反応前の重合原料中、あるいは重合完結前の低粘度の樹脂(若しくはその前駆物質:重合モノマー、熱硬化性樹脂の主剤/硬化剤など)中にナノカーボンを分散させることにより、分散性を大幅に改善することができる。この方法は、溶融混練だけではナノカーボンの充分な分散性が得られない樹脂の場合に特に有効である。
【0029】
また、ナノカーボンの樹脂マトリックス中への分散性をより向上させるために超音波震蕩法を適用することが好ましい。すなわちナノカーボンと樹脂との混合物に、超音波による振動を一定時間加えれば、部分的に凝集しているナノカーボンをほぐして拡げつつ、ナノカーボン間に樹脂を浸透させ、ナノカーボンを樹脂マトリックス中に分散させることができる。
【0030】
超音波震蕩法は、溶融状態の樹脂に適用することもできるが、溶液状態の樹脂への適用が効果的である。樹脂溶液とナノカーボンとの混合は、超音波震蕩のみにより、あるいは撹拌翼を併用してナノカーボン中に樹脂溶液を浸透させ、ナノカーボンを樹脂中に分散させることができる。
また上記溶液状態の樹脂は、溶液重合による製造過程の樹脂であってもよく、重合開始前の重合原料溶液、重合中あるいは重合後の重合溶液中にナノカーボンを加え、超音波による振動を加える方法も好ましい。
【0031】
以上のような方法を適用することにより、樹脂マトリックス中にナノカーボンがランダムに分散した複合材料を得ることができ、またこのように分散させることにより、ナノカーボンと樹脂との界面接着力が向上する。
【0032】
本発明の医療用チューブは、上記のような複合材料から形成される層を少なくとも含むチューブであり、この複合材料層のみからなる単層チューブであっても、複合材料層と他の材料層との積層チューブであってもよい。
またチューブの成形方法も成形材料に応じて適宜に選択されるが、たとえば上記マトリックスを構成する樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、常法の押出成形法により複合材料の単独押出または複合材料と他の材料との共押出により、単層または積層チューブを作製することができる。
【0033】
本発明の医療用チューブの態様例を図に示す。図1は単層チューブの断面を模式的に示す図であり、チューブ1は、樹脂(マトリックス)11中にナノカーボン12が分散した複合材料層10からなる。
図2は積層チューブの例として3層チューブの断面を模式的に示し、(a)はチューブ1の最外層が複合材料層10であり、中間層20を介して他の材料からなる最内層30で構成される態様例を示す。図2(b)は、チューブ1の最内層が複合材料層10であり、中間層20を介して他の材料からなる最外層40で構成される態様例を示す。図2(c)は、中間層20を介して最外層および最内層の両方が複合材料層10で構成される態様例を示す。
これら図2(a)〜(c)に示される中間層20および他の層30、40は、たとえば上記複合材料のマトリックスを構成する樹脂として例示したうちから、それぞれ適宜に選択することができる。
【0034】
上記複合材料から形成される層は、ナノカーボンが樹脂マトリックス中に非整列状態でランダムに分散していることにより、ナノカーボンによる補強効果を発現して、チューブ表面層(複合材料層)そのものの機械的強度を向上させるだけでなく、チューブ全体の機械的強度も担う。また、複合材料層は、その表面全体に微細な凹凸を有し、ナノカーボンを含まない樹脂のみからなる層(たとえば図2(a)内層30)の成形表面に比して、表面全体に微細な凹凸のある粗表面を有する。このためチューブが複合材料層の単層チューブであるか、または最内層および/または最外層に複合材料層を有する積層チューブは、上記粗表面からなる内腔面および/または外表面のすべり性がよく、低摩擦性を発揮する。
【0035】
前記チューブ内腔面および/または外表面は、特に限定されるものではないが、前記チューブを長手方向に切断した際の断面曲線より算出した前記粗表面の算術平均粗さ0.1μm以上、より好ましくは0.12μm以上が好ましい。このようにすることにより、チューブ表面と、この表面と接触するガイドワイヤ等との接触面積が低減され、すべり性が向上する。
なお、上記粗さの上限値は、特に限定されるものではないが、当該表面が粗くなりすぎると逆にすべり性(低摩擦性)が低下すると考えられるため、1.0μm以下が好ましい。より好ましくは0.8μm以下、さらに好ましくは0.6μm以下である。
【0036】
本発明の医療用チューブは、血管用カテーテル、超音波カテーテル等の各種カテーテル、内視鏡用チューブ、イントロデューサのシースチューブなどとして広く利用することができる。チューブのサイズも使用目的に応じて設定すればよく、特に制限されないが、外径0.5〜1mm程度のカテーテルチューブの場合には、単層チューブの厚みは50〜100μm程度で、積層チューブの場合には、複合材料層10の厚みが10〜90μm程度で形成される。
【0037】
【実施例】
次に実施例および試験例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例および試験例に限定されるものではない。
(実施例1)
<複合材料の調製>
二軸押出成形機に、ポリアミドエラストマー95重量部に対して5重量部のナノカーボン(平均外径:約150nm、平均長さ:約10〜20μmのカーボンナノファイバ(以下、CNF))を供給し、コンパウンディングして、押出・カットし、ナノカーボンを5重量%含む複合材料のペレットを作製した。
<単層チューブの成形>
上記で得られた複合材料ペレットを押出成形して、外径0.9mm×内径0.5mmのチューブを作製した。得られたチューブについて、低摩擦性の指標としての摺動抵抗および機械的強度の指標としての破断強度を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
(比較例1)
実施例1で使用したポリアミドエラストマーを押出成形して、実施例1と同サイズでナノカーボン(CNF)を含まないチューブを得た。摺動抵抗および破断強度の測定結果を表1に示す。
【0039】
(比較例2)
ナノカーボンに代えて、酸化ビスマス(平均粒径:1.5μnm)を35重量%含ませた以外は、実施例1と同様にして実施例1と同サイズのチューブを押出成形した。摺動抵抗および破断強度の測定結果を表1に示す。
また、チューブ内腔面のSEM観察(×500)による撮像を図6に示す。
【0040】
上記実施例1および比較例1〜2で得られた各チューブの摺動抵抗および破断強度を以下のようにして評価した。
<チューブ摺動抵抗>
図3に示す形状で湾曲させたポリエチレン製チューブ (内径1.05mm)内に、各試験チューブを挿入し、島津オートグラフ(AGS−100D)を用いて、引抜き速度100mm/min、測定温度25℃で引抜いた際の最大荷重を測定した。
【0041】
<チューブ破断強度>
島津オートグラフ(AGS−100D)を用いて、引張速度100mm/min、チャック間距離2cm、測定温度25℃で各試験チューブを引張り、測定した破断するまでの最大荷重を引張破断強度とした。
【0042】
表1
*1( )内はN換算
*2( )内はN/mm2 換算
【0043】
上記表に示されるように、比較例1および比較例2のチューブの摺動抵抗がそれぞれ240gf、190gfであるのに対し、実施例1のチューブの摺動抵抗は140gfと低減され、低摩擦性であることが確認された。また比較例1および比較例2のチューブの破断強度がそれぞれ4800gf/mm2 、4300gf/mm2 であるのに対し、実施例1のチューブの破断強度は5400gf/mm2 と格段に向上していることが確認された。
【0044】
(実施例2)
ポリアミドエラストマーをナイロン12に代え、かつナノカーボン(CNF)をナイロン12とナノカーボンとの合計量100重量%に対し、1重量%、5重量%、10重量%または15重量%となる量で配合した以外は、実施例1と同様にして作製した複合材料のペレットを用いて、実施例1と同サイズの単層チューブを押出成形した。
各チューブ断面および内腔面のSEM観察(×500)による撮像を図4(a)〜(d)に示す。
【0045】
(実施例3)
実施例2で調製したナノカーボン含量10重量%の複合材料を内層とし、実施例1と同じポリアミドエラストマーとを共押出して2層チューブを成形した。
チューブ断面および内腔面のSEM観察(×500)による撮像を図5(a)に示す。
【0046】
(比較例3)
ナノカーボン(CNF)を含まないナイロン12を内層とした以外は、実施例3と同様にして2層チューブを成形した。
チューブ断面および内腔面のSEM観察(×500)による撮像を図5(b)に示す。
【0047】
SEM観察像から明らかなように、複合材料層で形成される本発明のチューブの内腔面(図4および図5(a))は、ナノカーボンを含まず、ナイロン12のみからなるチューブの平坦な内腔面 (図5(b))および酸化ビスマスを含有するチューブの内腔面(図6)に比べ、内腔面表面全体に微細な凹凸が見られる。
これにより、チューブ内にガイドワイヤなどを通過させた際には、ガイドワイヤと内腔面との接触面積が少なくなり、摺動抵抗が小さく (すべりがよく)なる。
また本発明の積層チューブでは、ナノカーボンを含む複合材料層と、他の材料層とは、両者の界面が緊密に一体化して積層されていることが図5(a)に示されている。これにより、ナノカーボンによる補強効果は複合材料層だけでなく、チューブ全体に及ぶことができる。
【0048】
上記実施例2、3および比較例2〜3で得られた各チューブの内腔面の粗さについて、以下の通りにて評価した。
<算術平均粗さ評価>
実施例2のCNF1重量%、5重量%、10重量%および15重量%の単層チューブ、実施例3および比較例2、3のチューブのそれぞれを、チューブの長手方向に切断した。
切断した各チューブの内腔面につき、JIS B0601に基づき、レーザー顕微鏡(KEYENCE 社製VK−8500)を用い、チューブの断面曲線より算出した算術平均粗さを測定した。尚、チューブの切断面近傍ではレーザ顕微鏡による測定にノイズが生じることを考慮して、切断面より十分離間したチューブ中央部における45μm長の部分を測定した。
結果を表2に示す。
【0049】
表2
【0050】
表2に示す結果より、カーボンナノファイバを含有した場合には、算術平均粗さ0.1μm以上という、ナノファイバを含有しない表面に比べて4倍以上も粗い表面が形成されることがわかった。すなわち、カーボンナノファイバを含有しない場合よりもはるかに粗い凹凸が形成されることがわかった。
また、比較例2の酸化ビスマス入りチューブと比較しても、カーボンナノファイバを含有するチューブはいずれも粗い凹凸を有している。
これにより、カーボンナノファイバを含有するチューブにおいては、ガイドワイヤ等とチューブ内腔面との接触面積が小さくなり、摺動抵抗が低減されていると考えられる。
【0051】
【発明の効果】
本発明の医療用チューブは、樹脂マトリックス中にナノカーボンほぼ均質にかつランダムに分散した複合材料層を含み、特にナノカーボンが繊維状の場合には非整列状態で均質分散していることにより、チューブの軸方向および円周方向を含む全方向に対してナノカーボンによる補強効果を示す。このような複合材料層を有する本発明の医療用チューブは、チューブ全体の機械的強度が高い。また複合材料層の全体に微細な凹凸がある表面を、チューブ内腔面または外表面とすれば、摺動抵抗が軽減された低摩擦性のチューブが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の医療用チューブの単層態様例を示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の医療用チューブの積層態様例を示す断面図である。
【図3】医療用チューブからガイドワイヤの引抜きを説明するための模式図である。
【図4】(a)〜(d)は、実施例2で作製した単層構造の医療用チューブ内腔面のSEM観察による撮像を示す図である。
【図5】(a)〜(b)は、比較例3および実施例3で作製した積層構造の医療用チューブの断面SEM観察による撮像を示す図である。
【図6】比較例2で作製した酸化ビスマスを含む単層構造の医療用チューブ内腔面のSEM観察による撮像を示す図である。
【符号の説明】
1:チューブ
10:複合材料層
11:樹脂(マトリックス)
12:ナノカーボン
20:中間層
30:他の材料からなる最内層
40:他の材料からなる最外層
Claims (9)
- 樹脂と、該樹脂で構成されるマトリックス中に分散されたナノカーボンとからなる複合材料から形成される層を少なくとも含む医療用チューブ。
- 前記ナノカーボンが、直径2000nm以下でアスペクト比が5以上の繊維状体である請求項1に記載の医療用チューブ。
- 前記複合材料が、前記ナノカーボンを、前記樹脂およびナノカーボンの合計量に対して1ないし40重量%の量で含む請求項1または2に記載の医療用チューブ。
- 前記マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である複合材料の単独または他の共押出成形材料との押出成形品である請求項1ないし3のいずれかに記載の医療用チューブ。
- 前記チューブが、前記複合材料からなる単層チューブである請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用チューブ。
- 前記チューブが、前記複合材料からなる層を少なくとも一層含む積層チューブである請求項1ないし4のいずれかに記載の医療用チューブ。
- 前記複合材料からなる層が、チューブの最内層および/または最外層を構成する請求項1ないし6のいずれかに記載の医療用チューブ。
- 前記複合材料で構成される前記チューブの内腔面および/または外表面が、表面全体に微細な凹凸を有する粗表面である請求項7に記載の医療用チューブ。
- 前記チューブを長手方向に切断した際の断面曲線より算出した前記粗表面の算術平均粗さが0.1μm以上である請求項8記載の医療用チューブ。
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