JP2013006707A - 酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末 - Google Patents
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Abstract
【課題】 酸化ケイ素と酸化錫粉末を基材とし、アンチモン等を含有せずに優れた導電性を有し、導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む透明導電膜を1011Ω/□以下の表面抵抗値にすることができ、かつ環境汚染等を生じる虞がなく、環境への負担が少ない酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末を提供する。
【解決手段】 実質的にアンチモンを含まない酸化錫と、酸化ケイ素とを含み、酸化錫と酸化ケイ素の合計100質量部に対して、酸化ケイ素が4〜20質量部であることを特徴とする、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末である。好ましくは、BET値が90m2/g以上200m2/g以下である。
【選択図】 なし
【解決手段】 実質的にアンチモンを含まない酸化錫と、酸化ケイ素とを含み、酸化錫と酸化ケイ素の合計100質量部に対して、酸化ケイ素が4〜20質量部であることを特徴とする、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末である。好ましくは、BET値が90m2/g以上200m2/g以下である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、アンチモン等を含有せずに優れた導電性を有する酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末に関する。より詳しくは、本発明は、アンチモン等を含有せずに優れた導電性を有し、かつ環境汚染等を生じる虞のない酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末に関する。
導電粉末は帯電防止・帯電制御・静電防止・防塵等の用途に現在広く用いられている。従来、導電性を高めるために、アンチモン等をドープした導電粉末が使用されているが、近時、環境汚染防止等の観点から、アンチモンフリーの導電材料が求められている。
具体的には、従来、白色導電粉末として、例えば、酸化アルミニウムをドープした酸化亜鉛、二酸化チタン粉末等の表面に酸化アンチモンをドープした酸化錫膜を形成した白色導電粉末が知られている(特許文献1、特許文献2)。また、アンチモン成分を含有する酸化錫からなる導電被膜をチタン酸カリウム繊維に形成した白色導電繊維が知られている(特許文献3、特許文献4)。さらに、二酸化チタン粒子表面に酸化錫およびリンを含む導電層を形成した白色導電性二酸化チタン粉末が知られている(特許文献5)。しかし、これらは透明性を有しない。
透明導電粉末としては、アンチモンドープ酸化錫が知られている。また、これらのドープ成分を含有しない表面改質した透明導電性酸化錫粉末が知られている(特許文献6)。
しかしながら、酸化アンチモンをドープした導電性酸化錫粉末は、導電性が安定しているものの、環境汚染防止等の観点から、アンチモンフリーの導電粉末が求められている。アンチモンフリーの導電粉末としては、リンをドープしたものが知られているが、これは導電性が不安定であり、またリンの偏在性の問題があった。また、酸化第二錫を水素還元した粉末も知られているが(特許文献7)、水素還元では酸化第二錫が金属錫まで還元され、反応の制御が難しい。表面改質されたノンドープ酸化錫からなる透明導電性酸化錫粉末もあるが、カーボン残存等の問題がある。
また、従来、導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む透明導電膜には、1011Ω/□以下の表面抵抗値にする導電性酸化錫粉末は存在したが、導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む透明導電膜の表面抵抗値を1011Ω/□以下にすることができる導電性酸化錫粉末はなく、透明導電膜の透明性、密着性、低コスト化の観点から、導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む透明導電膜を1011Ω/□以下の表面抵抗値にすることができる導電性酸化錫粉末が求められている。
本発明は、従来の導電粉末における上記問題を解決したものであり、酸化ケイ素と酸化錫粉末を基材とし、アンチモン等を含有せずに優れた導電性を有し、導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む透明導電膜を1011Ω/□以下の表面抵抗値にすることができ、かつ環境汚染等を生じる虞がなく、環境への負担が少ない酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末を提供するものである。
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決した導電性酸化錫粉末に関する。
(1)実質的にアンチモンを含まない酸化錫と、酸化ケイ素とを含み、酸化錫と酸化ケイ素の合計100質量部に対して、酸化ケイ素が4〜20質量部であることを特徴とする、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末。
(2)BET値が、90m2/g以上200m2/g以下である、上記(1)記載の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末。
(3)酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む、厚さ1μmの透明導電膜の全透過率を85%以上、ヘーズ値を3%以下にし、かつ表面抵抗値を1011Ω/□以下にする、上記(1)または(2)に記載の導電性酸化錫粉末。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか記載の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末を分散してなる分散液。
(5)上記(1)〜(3)のいずれか記載の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末を含有する、透明導電膜用組成物。
(6)上記(1)〜(3)のいずれか記載の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末を含有する、透明導電膜。
(1)実質的にアンチモンを含まない酸化錫と、酸化ケイ素とを含み、酸化錫と酸化ケイ素の合計100質量部に対して、酸化ケイ素が4〜20質量部であることを特徴とする、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末。
(2)BET値が、90m2/g以上200m2/g以下である、上記(1)記載の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末。
(3)酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む、厚さ1μmの透明導電膜の全透過率を85%以上、ヘーズ値を3%以下にし、かつ表面抵抗値を1011Ω/□以下にする、上記(1)または(2)に記載の導電性酸化錫粉末。
(4)上記(1)〜(3)のいずれか記載の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末を分散してなる分散液。
(5)上記(1)〜(3)のいずれか記載の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末を含有する、透明導電膜用組成物。
(6)上記(1)〜(3)のいずれか記載の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末を含有する、透明導電膜。
本発明(1)の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末は、上記アンチモン等のドープ成分を含まずに高い導電性を有し、アンチモンを含まないので、製造が容易であり、環境汚染を生じる懸念がなく、かつ低コストである。また、本発明(3)によれば、導電性酸化錫粉末が特定量の酸化ケイ素を含有することにより、粉末同士の連続性が保たれ導電性が維持できるので、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比であっても透過率が高く、ヘーズ値が低く、かつ表面抵抗値が低い透明導電膜が容易に得られる。また、本発明(4)または(5)によれば、導電性の高い透明導電膜を容易に得ることができる。
以下本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量%である。
〔酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末〕
本発明の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末は、実質的にアンチモンを含まない酸化錫と、酸化ケイ素とを含み、酸化錫と酸化ケイ素の合計100質量部に対して、酸化ケイ素が4〜20質量部であることを特徴とする。ここで、実質的にアンチモンを含まないとは、原料および工程中でアンチモン源を使用せず、従って検出限界500ppmの標準的な測定装置によってアンチモン元素が検出されないことをいう。また、酸化錫と酸化ケイ素の分析は、ICP−MSでSn元素とSi元素を定量分析した後、錫は全てSnO2、ケイ素はすべてSiO2であると換算して行う。
本発明の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末は、実質的にアンチモンを含まない酸化錫と、酸化ケイ素とを含み、酸化錫と酸化ケイ素の合計100質量部に対して、酸化ケイ素が4〜20質量部であることを特徴とする。ここで、実質的にアンチモンを含まないとは、原料および工程中でアンチモン源を使用せず、従って検出限界500ppmの標準的な測定装置によってアンチモン元素が検出されないことをいう。また、酸化錫と酸化ケイ素の分析は、ICP−MSでSn元素とSi元素を定量分析した後、錫は全てSnO2、ケイ素はすべてSiO2であると換算して行う。
本発明の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末の酸化錫は、実質的に酸化第二錫からなり、水溶液中に溶解した第二錫塩をアルカリで沈殿させた水酸化物を不活性ガス雰囲気中で熱処理することにより得ることができる。好ましくは、溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩をアルカリで共沈させ、該共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をすることにより、酸化第二錫中に酸素欠陥が内部までほぼ均一に形成され、酸素欠陥により、酸化第二錫に導電性が付与される。ここで、「ほぼ均一」とは、酸化第二錫粉末の中心から表面までの粉末全体に酸素欠陥が形成されており、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末の表面もしくは表面近傍に酸素欠陥が偏在していないことをいう。なお、第一錫塩や原料に含まれ得る塩素、フッ素等の蒸気圧の高い成分は、酸化第二錫粉末内部より、表面近傍での濃度が低いことがあり得る。
溶液としては、第二錫塩を溶解可能なもの、第二錫塩と第一錫塩を共沈させる場合には第二錫塩と第一錫塩をともに溶解可能なものであればよく、水、アルコール等が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール等が挙げられる。なお、溶液に水を用いる場合には、第二錫塩を溶解した後、第二錫塩と第一錫塩を共沈させる場合には第二錫塩および第一錫塩を溶解した後、第二錫塩及び/又は第一錫塩が自発的に加水分解を始める前に、沈殿または共沈させることが好ましい。加水分解を抑えるために塩酸を加えてもよい。
第一錫塩としては、フッ化第一錫、塩化第一錫、ホウフッ化第一錫、硫酸第一錫、酸化第一錫、硝酸第一錫、ピロリン酸錫、スルファミン酸錫、亜錫酸塩等の無機系の塩、アルカノールスルホン酸第一錫、スルホコハク酸第一錫、脂肪族カルボン酸第一錫等の有機系の塩等が挙げられる。
第二錫塩としては、上記第一錫塩のそれぞれの第二錫塩が挙げられるが、気体であるもの、難溶性のもの等があるので、液体である塩化第二錫またはその水溶液が、一般的である。
水溶液中に溶解した第二錫塩を沈殿させた水酸化物を、中間体とする。また、第二錫塩と第一錫塩を共沈させる場合には、溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させた、共沈物を中間体とする。共沈は、第二錫塩および第一錫塩の加水分解反応等による。ここで、共沈物は、第二錫塩と第一錫塩がほぼ均一に混合されているものであることが好ましい。ここで、「ほぼ均一」とは、第二錫塩を第一錫塩で被覆しているいわゆるコアシェル構造や、第二錫塩マトリックス中に第一錫塩が分散している構造のように、第二錫塩と第一錫塩が明瞭に分離していないことをいう。
中間体である水酸化物を不活性ガス雰囲気中で熱処理する。また、第二錫塩と第一錫塩を共沈させる場合には、共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をすることにより、酸化第二錫中に、還元された酸素欠陥を形成された導電性酸化物粉末となる。ここで、第一錫塩の可溶性蒸気のための溶媒としては、水、アルコール、酢酸エチル、氷酢酸等が挙げられ、水またはアルコールが扱い易く、低コストであるので好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガス等が挙げられる。メカニズムは明確でないが、この熱処理中に、可溶性蒸気により、第一錫イオンが活性化され、酸素欠損が形成された酸化第二錫となる、と考えられる。なお、中間体が第二錫塩を沈殿させた水酸化物である場合にも、熱処理中に第二錫塩の一部が還元されて第一錫塩になるため、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をすることが好ましい。
また、第二錫塩への酸素欠損は、ハロゲン、例えば塩素による以下の反応式:
によっても形成され得、第二錫イオンへの酸素欠損の形成は、この反応によるものと上記第一錫イオンによるものとの相乗効果により、促進されるようである。
これらの処理による酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末は、酸化錫が実質的に酸化第二錫からなり、酸化第二錫中に酸素欠陥が形成されており、低抵抗である。
また、本発明の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末は、酸化錫が実質的に酸化第二錫からなり、酸化第二錫がフッ素を含み、1質量%以下のフッ素がドープされたものであることが好ましい。フッ素を1質量%より多くドープしても導電性が頭打ちになるので好ましくない。ここでフッ素ドープ量の分析は「管状炉燃焼(パイロハイドロリシス)−イオンクロマトグラフィー」により、具体的には試料1gを磁性ボートにサンプリングし、30分間反応させ、発生したフッ化水素を炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合液に吸収させた後、吸収液をイオンクロマトグラフで測定することにより行う。
フッ素がドープされた酸化第二錫は、(1)酸化錫粉末に、フッ化第一錫、ホウフッ化第一錫の少なくともいずれかを作用させてフッ素ドープしたもの、(2)水酸化第二錫に、フッ化第一錫、ホウフッ化第一錫の少なくともいずれかを作用させてフッ素ドープし、焼成してフッ素ドープ酸化錫としたもの、(3)第二錫イオンと水酸化アルカリを反応させて水酸化第二錫を沈殿させる際に、あるいは溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させる際に、フッ化第一錫、ホウフッ化第一錫の少なくともいずれかを加えて共沈させ後に、焼成してフッ素ドープ酸化第二錫としたもののいずれを用いてもよい。
次に、導電性酸化錫粉末に酸化ケイ素を含有させる方法について説明する。酸化ケイ素を含有させるために、酸化錫粉末と酸化ケイ素粉末を単に混合する方法では、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末の粒子径が、酸化錫粉末、酸化ケイ素粉末それぞれの粒子径に依存するので、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末のBET値を大きくすることができず、導電性酸化錫粉末に酸化ケイ素を含有させることにより得られる効果を発揮することが難しい。酸化ケイ素を含有させるには、好ましくは、錫塩を加水分解反応等により沈殿させた中間体(水酸化物または共沈物)を形成する際、同時に酸化ケイ素前駆体を析出させるか、更に好ましくは、錫塩を加水分解反応等により沈殿させた中間体を形成する際、酸化ケイ素成分を溶解したアルカリ水溶液を用いて同時に酸化ケイ素前駆体を析出させることにより、導電性酸化錫粉末に酸化ケイ素が取り込まれ、酸化錫粉末自体が微細化され、X線回折強度も低くなる。酸化ケイ素成分を溶解したアルカリ水溶液としては、ケイ酸ナトリウム水溶液が挙げられる。また、酸化ケイ素前駆体は、中間体の焼成時に、酸化ケイ素になる。
酸化ケイ素は、酸化錫と酸化ケイ素の合計100質量部に対して、酸化ケイ素が4〜20質量部、好ましくは5〜20質量部であり、酸化ケイ素が4質量部未満では、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末のBET値が低くなり、透明導電膜の表面抵抗値が高くなる。また、酸化ケイ素が2質量部未満では、透明導電膜のヘーズ値も高くなる。一方、酸化ケイ素が20質量部を超えると、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末の粉体体積抵抗値が高くなり、透明導電膜の表面抵抗値とヘーズ値が高くなる。
本発明の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末は、BET値が90m2/g以上200m2/g以下であると好ましく、100m2/g以上200m2/g以下であると、より好ましい。BET値が90m2/gより小さいと粉末同士の連続性が得られ難く、透明導電膜にしたときの導電性が悪くなり、200m2/gより大きいと粉末が小さくなり過ぎて接触抵抗が大きくなるので好ましくない。
本発明の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末は、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む厚さ1μmの透明導電膜の全透過率を85%以上、ヘーズ値を3%以下にし、かつ表面抵抗値を1011Ω/□以下にするものであると、好ましい。透明導電膜の表面抵抗は、市販の表面抵抗計(例えば、ダイアインスツルメンツ社製ロレスタGP)を用いて測定する。
本発明の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む透明導電膜を形成する方法は、一般的なものでよく、導電性酸化物粉末と樹脂分に溶剤を加えたスラリーを作製し、このスラリーをバーコーター等でフィルム上に塗布し、乾燥し、膜厚1μmの塗膜を作製する。ここで、溶剤としては、トルエン、アセトン、エタノール等が挙げられる。樹脂分と溶剤が予め混合されたアクリル塗料、ポリエステル塗料、ウレタン塗料等も好適に用いられる。市販製品としては、関西ペイント製アクリリック、DIC製アクリディック等が挙げられる。スラリー塗布後の乾燥は、透明導電膜中に残留する溶剤が1質量%以下になるまで行う。なお、乾燥後の透明導電膜の膜厚は、1±0.2μmであればよい。導電性酸化錫粉末に特定量の酸化ケイ素を含有させることにより粉末同士の連続性が保たれる詳細なメカニズムは解明されていないが、BET値で示されるように、粉末が適度に微細化されることによりチェーン状に繋がり易くなる、と考えられる。
本発明の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末は水やアルコール等の分散媒に分散可能であるので、分散液として水性塗料、油性塗料等の導電材料に用いることができる。
本発明の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末は、上記アンチモン等のドープ成分を含まずに高い導電性を有するので、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末として、ならびにこれを樹脂等と共に含有する透明導電膜用組成物として有用であり、安全な導電材料として各種の機器に広く用いることができる。具体的には、例えば、静電塗装プライマー、帯電防止効果を有する樹脂やタイル、導電性塗料、静電記録材料、複写機関連の帯電ローラー、感光ドラム、トナー、静電ブラシ等における透明導電膜として好適である。なお、透明導電膜を形成するための上記スラリーは、透明導電膜用組成物の1種である。
本発明の透明導電膜は、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末を含有し、分散液、透明導電膜用組成物を塗布、乾燥する等により、製造することができる。
以下に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例および比較例において、酸化錫と酸化ケイ素の分析値は、ICP−MSでSn元素とSi元素を定量分析した後、錫は全てSnO2、ケイ素はすべてSiO2であると換算して得た。粉体体積抵抗値は、試料粉末を圧力容器に入れて100kgf/cm2で圧縮し、この圧粉をデジタルマルチメーター(横河電機製:型式7561−02)によって測定した。併せて、理学電機株式会社製X線回折装置(型番:MiniFlex)を用いてX線回折を行い、(211)面の回折強度を測定した。透明導電膜の表面抵抗値は、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末14gを関西ペイント製アクリル塗料(商品名:アクリリック、樹脂含有量30%)20g、トルエン25gに加え、ビーズを入れた容器に入れ、ペイントシェーカーで16時間撹拌し、スラリーを作製、このスラリーをバーコーターでPETフィルムに塗布し、乾燥した膜厚1μmの透明導電膜の表面抵抗値を、表面抵抗計(ダイアインスツルメンツ社製ロレスタGP)を用いて測定した。また、形成した透明導電膜について、日立社製分光光度計(U−4000)を用い、ベースのPETフィルム込みの、全透過率、ヘーズ値を測定した。
〔実施例1〜9および比較例1〜8〕
酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末にフッ素をドープし、第二錫塩と塩化第一錫の共沈物を中間体とした実施例である。塩酸(17%):110gに、塩化第二錫55%水溶液:270cm3、フッ化第一錫:6.6gの順に溶解した(溶液1)。次いで、イオン交換水:4dm3に水酸化ナトリウム:162gを溶解し、更に、溶液1に溶解した塩化第二錫およびフッ化第一錫から理論的に得られる酸化第二錫に対して、酸化ケイ素が、0.0、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5,0、6.0、7.0、8.0、9.0.10.0、12.0、15.0、20.0、25.0、30.0質量%になるように、硅酸ナトリウムを溶解した(溶液2)。溶液2を60℃に保ち、撹拌しながら溶液1を40分で滴下した。得られた共沈物(中間体)を充分水洗した後、ろ過し、90℃で真空乾燥した。これを内径:約5cm、長さ:約60cmの石英管状炉に入れ、水を通して水蒸気を飽和させた窒素ガスを0.3dm3/分の割合で30分間炉内に流し、酸素を排除した後、室温から550℃まで20分で昇温し、550℃で60分間熱処理した。表1に、これらの酸化ケイ素含有量(仕込量および分析値)、粉体体積抵抗値、BET値、X線強度、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む透明導電膜の表面抵抗値、全透過率、ヘーズ値の結果を示す。
〔実施例10、11〕
酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末にフッ素をドープせず、第二錫塩と塩化第一錫の共沈物を中間体とした実施例である。塩酸(17%):14gに、塩化第二錫:55%水溶液:112g、塩化第一錫(二水和物):2.83gの順に溶解した(溶液3)。次いで、イオン交換水:1dm3に水酸化ナトリウム:21gを溶解し、更に、溶液3に溶解した塩化第二錫および塩化第一錫から理論的に得られる酸化第二錫に対して、酸化ケイ素が、10.0、15.0質量%になるように、硅酸ナトリウムを溶解した(溶液4)。溶液4を60℃に保ち、撹拌しながら溶液3を40分で滴下し、共沈物(中間体)を充分水洗した後、ろ過し、ケーキをそのままの状態で、上記実施例1〜9と同様、内径:約5cm、長さ:約60cmの石英管状炉に入れ、水を通して水蒸気を飽和させた窒素ガスを0.3dm3/分の割合で30分間炉内に流し、酸素を排除した後、室温から550℃まで20分で昇温し、550℃で60分間熱処理した。表2に、これらの酸化ケイ素含有量、粉体体積抵抗値、BET値、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む透明導電膜の表面抵抗値、全透過率、ヘーズ値の結果を示す。
酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末にフッ素をドープせず、第二錫塩と塩化第一錫の共沈物を中間体とした実施例である。塩酸(17%):14gに、塩化第二錫:55%水溶液:112g、塩化第一錫(二水和物):2.83gの順に溶解した(溶液3)。次いで、イオン交換水:1dm3に水酸化ナトリウム:21gを溶解し、更に、溶液3に溶解した塩化第二錫および塩化第一錫から理論的に得られる酸化第二錫に対して、酸化ケイ素が、10.0、15.0質量%になるように、硅酸ナトリウムを溶解した(溶液4)。溶液4を60℃に保ち、撹拌しながら溶液3を40分で滴下し、共沈物(中間体)を充分水洗した後、ろ過し、ケーキをそのままの状態で、上記実施例1〜9と同様、内径:約5cm、長さ:約60cmの石英管状炉に入れ、水を通して水蒸気を飽和させた窒素ガスを0.3dm3/分の割合で30分間炉内に流し、酸素を排除した後、室温から550℃まで20分で昇温し、550℃で60分間熱処理した。表2に、これらの酸化ケイ素含有量、粉体体積抵抗値、BET値、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む透明導電膜の表面抵抗値、全透過率、ヘーズ値の結果を示す。
〔実施例12、13〕
更に、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末にフッ素をドープせず、塩化第一錫を含まない第二錫塩の水酸化物を中間体とした実施例である。溶液3の代わりに、塩酸(17%):14gに、塩化第二錫55%水溶液:112gを溶解した溶液5を用い、溶液4の代わりに、溶液5に溶解した塩化第二錫から理論的に得られる酸化第二錫に対して、酸化ケイ素が、6.0、10.0質量%になるように、硅酸ナトリウムを溶解した溶液6を用い、滴下時間を30分にしたこと以外は上記実施例10と同様に反応させ、焼成を行った。表3に、これらの酸化ケイ素含有量、粉体体積抵抗値、BET値、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む透明導電膜の表面抵抗値、全透過率、ヘーズ値の結果を示す。
更に、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末にフッ素をドープせず、塩化第一錫を含まない第二錫塩の水酸化物を中間体とした実施例である。溶液3の代わりに、塩酸(17%):14gに、塩化第二錫55%水溶液:112gを溶解した溶液5を用い、溶液4の代わりに、溶液5に溶解した塩化第二錫から理論的に得られる酸化第二錫に対して、酸化ケイ素が、6.0、10.0質量%になるように、硅酸ナトリウムを溶解した溶液6を用い、滴下時間を30分にしたこと以外は上記実施例10と同様に反応させ、焼成を行った。表3に、これらの酸化ケイ素含有量、粉体体積抵抗値、BET値、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む透明導電膜の表面抵抗値、全透過率、ヘーズ値の結果を示す。
表1から明らかなように、酸化ケイ素を4.2〜18.3質量%含有し、フッ素をドープし、第二錫塩と第一錫塩の共沈物を中間体とした実施例1〜9では、BET値が90〜200m2/gの範囲内であり、粉体体積抵抗値、表面抵抗値、全透過率、ヘーズ値の全てで良好な結果であった。特に、酸化ケイ素分析値が5.0〜18.3の実施例2〜9では、BET値が100〜200m2/gの範囲内であり、表面抵抗値が3.9×109〜3.9×1010Ω/□と特に低かった。これに対して、酸化ケイ素含有量が0〜3.2質量%の比較例1〜6では、BET値が低く、表面抵抗値が高かった。また、酸化ケイ素含有量が0〜1.7質量%の比較例1〜4では、ヘーズ値も高かった。一方、酸化ケイ素含有量が20.8〜22.1質量%の比較例7と8では、粉体体積抵抗値、表面抵抗値およびヘーズ値が高かった。なお、実施例1〜9のX線強度は、比較例1〜6のX線強度より低く、酸化ケイ素含有量の増加に伴い、X線強度が低くなった。導電性酸化錫粉末に酸化ケイ素が取り込まれ、酸化錫粉末自体が微細化されたためであると、考えられる。
表2からわかるように、フッ素をドープせず、第二錫塩と第一錫塩の共沈物を中間体とした実施例10と11は、粉体体積抵抗値、表面抵抗値、全透過率、ヘーズ値の全てで良好な結果であった。しかし、実施例10と11は、酸化ケイ素含有量がほぼ同等である実施例6と8と比較すると、粉体体積抵抗値と表面抵抗値が高かった。また、表3からわかるように、フッ素をドープせず、第二錫塩の水酸化物を中間体とした実施例12と13も、粉体体積抵抗値、表面抵抗値、全透過率、ヘーズ値の全てで良好な結果であった。しかし、実施例12と13は、酸化ケイ素含有量がほぼ同等である実施例2と6と比較すると、粉体体積抵抗値と表面抵抗値が高かった。また、酸化ケイ素含有量がほぼ同等である実施例10と13を比較すると、実施例10の方が、表面抵抗値が低かった。
以上のように、本発明の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末は、アンチモンを含有せずに、高い伝導性を有し、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比であっても透過率が高く、ヘーズ値が低く、かつ表面抵抗値が低い透明導電膜を得ることができる。
Claims (6)
- 実質的にアンチモンを含まない酸化錫と、酸化ケイ素とを含み、酸化錫と酸化ケイ素の合計100質量部に対して、酸化ケイ素が4〜20質量部であることを特徴とする、酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末。
- BET値が、90m2/g以上200m2/g以下である、請求項1記載の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末。
- 酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末/樹脂分を7/3の質量比で含む、厚さ1μmの透明導電膜の全透過率を85%以上、ヘーズ値を3%以下にし、かつ表面抵抗値を1011Ω/□以下にする、請求項1または2記載の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末と、分散媒とを含む、分散液。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末を含有する、透明導電膜用組成物。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の酸化ケイ素含有導電性酸化錫粉末を含有する、透明導電膜。
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