JP2010111553A - 導電性酸化錫粉末およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 酸化第二錫粉末を基材とし、アンチモン等を含有せずに優れた導電性を有し、かつ環境汚染等を生じる虞がなく、環境への負担が少ない導電性酸化錫粉末を提供する。
【解決手段】 酸素欠陥がほぼ均一に形成された実質的に酸化第二錫からなる導電性酸化錫粉末であって、粉体体積抵抗が10Ω・cm以下であることを特徴とする導電性酸化錫粉末である。好ましくは、溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させ、共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をすることにより、酸化第二錫中に酸素欠陥を形成してなる、導電性酸化錫粉末である。
【選択図】 なし
【解決手段】 酸素欠陥がほぼ均一に形成された実質的に酸化第二錫からなる導電性酸化錫粉末であって、粉体体積抵抗が10Ω・cm以下であることを特徴とする導電性酸化錫粉末である。好ましくは、溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させ、共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をすることにより、酸化第二錫中に酸素欠陥を形成してなる、導電性酸化錫粉末である。
【選択図】 なし
Description
本発明は、アンチモン等を含有せずに優れた導電性を有する導電性酸化錫粉末に関する。より詳しくは、本発明は、アンチモン等を含有せずに優れた導電性を有し、かつ環境汚染等を生じる虞のない導電性酸化錫粉末に関する。
導電粉末は帯電防止・帯電制御・静電防止・防塵等の用途に現在広く用いられている。従来、導電性を高めるために、アンチモン等をドープした導電粉末が使用されているが、近時、環境汚染防止等の観点から、アンチモンフリーの導電材料が求められている。
具体的には、従来、白色導電粉末として、例えば、酸化アルミニウムをドープした酸化亜鉛、二酸化チタン粉末等の表面に酸化アンチモンをドープした酸化錫膜を形成した白色導電粉末が知られている(特許文献1、特許文献2)。また、アンチモン成分を含有する酸化錫からなる導電被膜をチタン酸カリウム繊維に形成した白色導電繊維が知られている(特許文献3、特許文献4)。さらに、二酸化チタン粒子表面に酸化錫およびリンを含む導電層を形成した白色導電性二酸化チタン粉末が知られている(特許文献5)。しかし、これらは透明性を有しない。
透明導電粉としては、アンチモンドープ酸化錫が知られている。また、これらのドープ成分を含有しない表面改質した透明導電性酸化錫粉末が知られている(特許文献6)。
しかしながら、酸化アンチモンをドープした導電粉末は、導電性が安定しているものの、環境汚染防止等の観点から、アンチモンフリーの導電粉末が求められている。アンチモンフリーの導電粉末としては、リンをドープしたものが知られているが、これは導電性が不安定であり、またリンの偏在性の問題があった。また、酸化第二錫を水素還元した粉末も知られているが(特許文献7)、水素還元では金属錫まで還元され、反応の制御が難しい。表面改質されたノンドープ酸化錫からなる透明導電性酸化錫粉末もあるが、カーボン残存等の問題がある。
本発明は、従来の導電粉末における上記問題を解決したものであり、酸化第二錫粉末を基材とし、アンチモン等を含有せずに優れた導電性を有し、かつ環境汚染等を生じる虞がなく、環境への負担が少ない導電性酸化錫粉末を提供するものである。
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決した導電性酸化錫粉末とその製造方法に関する。
(1)酸素欠陥がほぼ均一に形成された実質的に酸化第二錫からなる導電性酸化錫粉末であって、粉体体積抵抗が10Ω・cm以下であることを特徴とする、導電性酸化錫粉末。
(2)溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させ、共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をすることにより、酸化第二錫中に酸素欠陥を形成してなる、上記(1)記載の導電性酸化錫粉末。
(3)導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む厚さ1μmの透明樹脂塗膜の表面抵抗を105Ω/□以下にする、上記(1)または(2)に記載の導電性酸化錫粉末。
(4)溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させ、共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をして、酸化第二錫中に酸素欠陥を形成することを特徴とする、導電性酸化錫粉末の製造方法。
(5)第二錫塩に対して、第一錫塩が0.1mol%以上15mol%以下である、上記(4)に記載の導電性酸化錫粉末の製造方法。
(6)上記(1)〜(3)のいずれか記載の導電性酸化錫粉末を分散してなる分散液。
(7)上記(1)〜(3)のいずれか記載の導電性酸化錫粉末を含有する膜組成物。
(1)酸素欠陥がほぼ均一に形成された実質的に酸化第二錫からなる導電性酸化錫粉末であって、粉体体積抵抗が10Ω・cm以下であることを特徴とする、導電性酸化錫粉末。
(2)溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させ、共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をすることにより、酸化第二錫中に酸素欠陥を形成してなる、上記(1)記載の導電性酸化錫粉末。
(3)導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む厚さ1μmの透明樹脂塗膜の表面抵抗を105Ω/□以下にする、上記(1)または(2)に記載の導電性酸化錫粉末。
(4)溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させ、共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をして、酸化第二錫中に酸素欠陥を形成することを特徴とする、導電性酸化錫粉末の製造方法。
(5)第二錫塩に対して、第一錫塩が0.1mol%以上15mol%以下である、上記(4)に記載の導電性酸化錫粉末の製造方法。
(6)上記(1)〜(3)のいずれか記載の導電性酸化錫粉末を分散してなる分散液。
(7)上記(1)〜(3)のいずれか記載の導電性酸化錫粉末を含有する膜組成物。
本発明(1)の導電性酸化錫粉末は、上記アンチモン等のドープ成分を含まずに高い導電性を有し、アンチモン、リン、インジウムを何れも含まないので、製造が容易であり、環境汚染を生じる懸念がなく、かつ低コストである。この導電性酸化錫粉末は、内部までほぼ均一であるので、高い導電率を有するものが安定して得られる。さらに、この導電性酸化錫粉末により、表面抵抗が低い透明樹脂被膜が、容易に得られる。また、本発明(2)の導電性酸化錫粉末は、第二錫塩と第一錫塩の比率を変えることにより、導電性酸化錫粉末に所望の導電性を得るための制御を容易に行うことができるため、目的の導電性を有する粉末を容易に製造することができる。
本発明の導電性酸化錫粉末の製造方法により、アンチモン等のドープ成分を含まずに高い導電性を有する導電性酸化錫粉末を、極めて容易に製造することができる。
以下本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量%である。
〔導電性酸化錫粉末〕
本発明の導電性酸化錫粉末は、酸素欠陥がほぼ均一に形成された実質的に酸化第二錫からなる導電性酸化錫粉末であって、粉体体積抵抗が10Ω・cm以下であることを特徴とする。
本発明の導電性酸化錫粉末は、酸素欠陥がほぼ均一に形成された実質的に酸化第二錫からなる導電性酸化錫粉末であって、粉体体積抵抗が10Ω・cm以下であることを特徴とする。
本発明の導電性酸化錫粉末は、酸素欠陥が、内部までほぼ均一に形成され、酸素欠陥により、酸化第二錫に導電性が付与される。ここで、「ほぼ均一」とは、導電性酸化錫粉末の中心から表面までの粉末全体に酸素欠陥が形成されており、導電性酸化物粉末の表面もしくは表面近傍に酸素欠陥が偏在していないことをいう。なお、第一錫塩や原料に含まれ得る塩素、フッ素等の蒸気圧の高い成分は、導電酸化錫粉末内部より、表面近傍での濃度が低いことがあり得る。
本発明の導電性酸化錫粉末は、実質的に酸化第二錫からなる。ここで、「実質的に酸化第二錫」であるとは、錫、酸素以外の元素が、ICP分析で5質量%以下であり、X線回折でSnO2パターンのみが同定されることをいう。
本発明の導電性酸化錫粉末の導電性は、粉体体積抵抗が10Ω・cm以下であり、好ましくは5Ω・cm以下の導電性にすることができる。ここで、粉体体積抵抗は、試料粉末を圧力容器に入れて100kgf/cm2で圧縮し、この圧粉をデジタルマルチメーターによって測定する。
なお、粉体体積抵抗が10Ω・cmより大きいと、帯電防止効果を発揮する表面抵抗109Ω/□を得るために必要な樹脂への混入量が多くなり、樹脂の物性を劣化させてしまう。本発明の導電性酸化錫粉末は、粉体体積抵抗が小さいのでこのような問題がない。
本発明の導電性酸化錫粉末は、好ましくは、溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させ、該共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をすることにより、酸化第二錫中に酸素欠陥を形成してなるものである。
溶液としては、第二錫塩と第一錫塩をともに溶解可能なものであればよく、水、アルコール等が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール等が挙げられる。なお、溶液に水を用いる場合には、第二錫塩および第一錫塩を溶解した後、第二錫塩及び/又は第一錫塩が自発的に加水分解を始める前に、共沈させることが好ましい。
第一錫塩としては、フッ化第一錫、塩化第一錫、ホウフッ化第一錫、硫酸第一錫、酸化第一錫、硝酸第一錫、ピロリン酸錫、スルファミン酸錫、亜錫酸塩等の無機系の塩、アルカノールスルホン酸第一錫、スルホコハク酸第一錫、脂肪族カルボン酸第一錫等の有機系の塩等が挙げられる。
第二錫塩としては、上記第一錫塩のそれぞれの第二錫塩が挙げられるが、気体であるもの、難溶性のもの等があるので、液体である塩化第二錫またはその水溶液が、一般的である。
溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させた、共沈物を中間体とする。共沈は、第二錫塩、第一錫塩の加水分解反応等による。ここで、共沈物は、第二錫塩と第一錫塩がほぼ均一に混合されているものであることが好ましい。ここで、「ほぼ均一」とは、第二錫塩を第一錫塩で被覆しているいわゆるコアシェル構造や、第二錫塩マトリックス中に第一錫塩が分散している構造のように、第二錫塩と第一錫塩が明瞭に分離していないことをいう。
中間体である共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をすることにより、酸化第二錫中に、還元された酸素欠陥を形成された導電性酸化物粉末となる。ここで、第一錫塩の可溶性蒸気のための溶媒としては、水、アルコール、酢酸エチル、氷酢酸等が挙げられ、水またはアルコールが扱い易く、低コストであるので好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガスやアルゴンガス等が挙げられる。メカニズムは明確でないが、この熱処理中に、可溶性蒸気により、第一錫イオンが活性化され、酸素欠損が形成された酸化第二錫となる、と考えられる。
また、第二錫塩への酸素欠損は、ハロゲン、例えば塩素による以下の反応式:
によっても形成され得、第二錫イオンへの酸素欠損の形成は、この反応によるものと上記第一錫イオンによるものとの相乗効果により、促進されるようである。
これらの処理による導電性酸化物粉末は、酸化第二錫中に、酸素欠陥を形成したものであり、低抵抗である。
本発明の導電性酸化錫粉末の粒径は、特に限定されないが、0.005〜50μmが好ましく、0.01〜10μmが特に好ましい。ここで、粒径とは、比表面積より換算したBET径を指す。また、本発明の導電性酸化錫粉末の形状は、粒状が好ましい。
また、本発明の導電性酸化錫粉末は、淡黄褐色〜濃灰褐色であるとき、導電性が良好である。
本発明の導電性酸化錫粉末は、導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む厚さ1μmの透明樹脂塗膜の表面抵抗を105Ω/□以下にするものであると、より好ましい。透明樹脂塗膜の表面抵抗は、市販の表面抵抗計(例えば、ダイアインスツルメンツ社製ロレスタGP)を用いて測定する。ここで、樹脂分としては、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
本発明の導電性酸化錫粉末は、アンチモン、リン、インジウムを何れも含まないので環境汚染を生じる懸念がなく、かつ低コストである。なお、本発明において、アンチモン、リン、およびインジウムを含まないとは、原料および工程中でアンチモン、リン、およびインジウム源を使用せず、従って検出限界500ppmの標準的な測定装置によってこれらの元素が検出されないことをいう。
本発明の導電性酸化錫粉末の粒径は用途に応じて選択することができ、粒径を細かくすれば透明性が要求される用途、例えば、自動車ガラスや、帯電防止プレート、帯電防止シート、静電プライマー等における導電材料として好適である。
本発明の導電性酸化錫粉末は、上記アンチモン等のドープ成分を含まずに高い導電性を有するので、導電性酸化錫粉末として、ならびにこれを樹脂等と共に含有する膜組成物として有用であり、安全な導電材料として各種の機器に広く用いることができる。具体的には、例えば、静電塗装プライマー、帯電防止効果を有する樹脂やタイル、導電性塗料、静電記録材料、複写機関連の帯電ローラー、感光ドラム、トナー、静電ブラシ等における導電材料として好適である。
本発明の導電性酸化錫粉末は水に分散可能であるので、分散液として水性塗料等の導電材料に用いることができる。
〔製造方法〕
本発明の導電性酸化錫粉末は、溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させ、共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス中で熱処理をして、酸化第二錫中に酸素欠陥を形成することによって製造することができる。
本発明の導電性酸化錫粉末は、溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させ、共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス中で熱処理をして、酸化第二錫中に酸素欠陥を形成することによって製造することができる。
溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させる方法としては、(1)アルカリ溶液に、第一錫塩と第二錫塩の混合溶液を撹拌下に滴下する方法、(2)アルカリ溶液に、第一錫溶液、第二錫溶液それぞれを撹拌下に同時に滴下する方法、(3)水中に、アルカリ溶液と、第一錫塩と第二錫塩の混合溶液とを、撹拌下に同時に滴下する方法等、一般的な方法が用いられる。共沈は、加水分解反応等により起こるが、加水分解反応等を促進させるために加熱してもよい。この方法の種類、各方法での滴下速度等により、共沈物の一次粒子径を制御することができ、この一次粒子径は、導電性酸化錫粉末を用いた塗膜の導電性、色彩等に影響を与える。
共沈させる第二錫塩に対して、第一錫塩が0.1mol%以上15mol%以下であると好ましく、0.5mol%以上10mol%以下であるとより好ましく、1mol%以上8mol%以下であると特に好ましい。0.1mol%より少ないと導電性が不十分となり、逆に15mol%より多いとそれ以上の導電性を得ることが難しくなる。
共沈物は、残留する塩を除去するため、十分水洗することが好ましい。
次に、得られた共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をする。
不活性ガス雰囲気中に、第一錫イオンの可溶性蒸気を導入する方法は限定されない。熱処理炉の不活性ガス雰囲気中に可溶性蒸気を導入してもよく、また、共沈物のスラリーのまま、またはその乾燥を適度にして湿った状態にしてもよい。あるいは、不活性ガスを可溶性溶媒に通じてバブリングさせてもよい。
可溶性蒸気のための溶媒の蒸気圧は飽和蒸気圧30%以上であると、導電性酸化錫粉末の導電性向上の点で好ましい。この蒸気圧を保って熱処理をするには密閉型の熱処理炉を用いるのが好ましい。
また、不活性ガス雰囲気から酸素を排除して加熱する。従来、酸素を含む不活性ガス下で熱処理をする方法が知られているが、酸素が含まれていると、安定して低抵抗粉末が得られず、また導電性が不均一である。酸素は、不活性ガスに対して、1%以下が好ましい。
熱処理温度は、300℃以上800℃以下が好ましく、400℃以上700℃以下が特に好ましい。300℃以上であると、酸化第二錫の生成、酸化第二錫への酸素欠損の形成ができ、800℃以下であると導電性が高い。また、熱処理時間は、10分以上100分以下が好ましく、20分以上80分以下が特に好ましい。10分以上100分以下であると導電性が高くなる。
これらの処理により、酸化第二錫中に、ほぼ均一に酸素欠陥を形成することができ、低抵抗の導電性酸化錫粉末が得られる。
本発明の導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む透明樹脂塗膜を形成する方法は、一般的なものでよく、導電性酸化物粉末と樹脂分に溶剤を加えたスラリーを作製し、このスラリーをバーコーター等でフィルム上に塗布し、乾燥し、膜厚1μmの塗膜を作製する。ここで、溶剤としては、トルエン、アセトン、エタノール等が挙げられる。樹脂分と溶剤が予め混合されたアクリル塗料、ポリエステル塗料、ウレタン塗料等も好適に用いられる。市販製品としては、関西ペイント製アクリリック、DIC製アクリディック等が挙げられる。スラリー塗布後の乾燥は、透明性樹脂塗膜中に残留する溶剤が1質量%以下になるまで行う。なお、乾燥後の透明性樹脂塗膜の膜厚は、1±0.2μmであればよい。
以下に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例および比較例において、粉体体積抵抗は、試料粉末を圧力容器に入れて100kgf/cm2で圧縮し、この圧粉をデジタルマルチメーター(横河電機製:型式7561−02)によって測定した。塗膜の表面抵抗は導電性酸化錫粉末16gを関西ペイント製アクリル塗料(商品名:アクリリック、樹脂含有量30%)13.3g、トルエン30gに加え、ビーズを入れた容器に入れ、ペイントシェーカーで30分撹拌し、スラリーを作製した。このスラリーをバーコーターでPETフィルムに塗布し、乾燥した膜厚2μmの塗膜の表面抵抗を、表面抵抗計(ダイアインスツルメンツ社製ロレスタGP)を用いて測定した。なお、本実施例では、膜厚2μmの塗膜を作製したが、膜厚1μmの塗膜も同様にして作製することができる。
〔実施例1〕
〔実施例1〕
塩化第二錫50%水溶液100g(0.19mol)に塩化第一錫二水塩4.3g(0.019mol=10mol%)を溶解し、これを90℃に加温した1N水酸化ナトリウム溶液1Lに撹拌しながら15分で滴下した。得られた共沈物を充分水洗した後、ろ過し、90℃で乾燥した。これを内径約5cm、長さ約60cmの石英管状炉に入れ、水を通して水蒸気を飽和させた窒素ガスを0.3L/分の割合で30分間炉内に流し、酸素を排除した後、室温から500℃まで15分で昇温し、500℃で70分間熱処理した。同様に、塩化第一錫を2.1g(5mol%)、1.1g(2.5mol%)とし、共沈、水洗、ろ過、乾燥後、同条件で熱処理を行い、導電性酸化錫粉末を得た。これらの粉体体積抵抗と、導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む透明樹脂塗膜の表面抵抗を測定した結果を、表1に示す。
〔実施例2〕
塩化第二錫50%水溶液100g(0.19mol)に50%ホウフッ化第一錫溶液11.1g(0.019mol=10mol%)を溶解し、これを80℃に加温した1N水酸化ナトリウム溶液1Lに撹拌しながら15分で滴下した。得られた共沈物を充分水洗後、ろ過し、90℃で乾燥した。これを実施例1と同じ石英管状炉に入れ、水を通して水蒸気を飽和させた窒素ガスを0.3L/分の割合で30分間炉内に流し、酸素を排除した後、室温から600℃まで20分で昇温し、600℃で40分間熱処理した。同様に、50%ホウフッ化第一錫溶液を5.6g(5mol%)、2.8g(2.5mol%)とし、共沈、水洗、ろ過、乾燥後、同条件で熱処理を行い、導電性酸化錫粉末を得た。これらの粉体体積抵抗と、導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む透明樹脂塗膜の表面抵抗を測定した結果を、表2に示す。
塩化第二錫50%水溶液100g(0.19mol)に50%ホウフッ化第一錫溶液11.1g(0.019mol=10mol%)を溶解し、これを80℃に加温した1N水酸化ナトリウム溶液1Lに撹拌しながら15分で滴下した。得られた共沈物を充分水洗後、ろ過し、90℃で乾燥した。これを実施例1と同じ石英管状炉に入れ、水を通して水蒸気を飽和させた窒素ガスを0.3L/分の割合で30分間炉内に流し、酸素を排除した後、室温から600℃まで20分で昇温し、600℃で40分間熱処理した。同様に、50%ホウフッ化第一錫溶液を5.6g(5mol%)、2.8g(2.5mol%)とし、共沈、水洗、ろ過、乾燥後、同条件で熱処理を行い、導電性酸化錫粉末を得た。これらの粉体体積抵抗と、導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む透明樹脂塗膜の表面抵抗を測定した結果を、表2に示す。
〔実施例3〕
塩化第二錫50%水溶液100g(0.19mol)にフッ化第一錫3.0g(0.019mol=10mol%)を溶解し、これを50℃に加温した1N水酸化ナトリウム溶液1Lに撹拌しながら15分で滴下した。得られた共沈物を充分水洗した後、ろ過し、80℃で乾燥した。これを実施例1と同じ石英管状炉に入れ、水を通して水蒸気を飽和させた窒素ガスを0.3L/分の割合で30分間炉内に流し、酸素を排除した後、室温から600℃まで20分で昇温し、600℃で40分間熱処理した。同様に、フッ化第一錫を1.5g(5mol%)、0.7g(2.5mol%)とし、共沈、水洗、ろ過、乾燥後、同条件で熱処理を行い、導電性酸化錫粉末を得た。これらの粉体体積抵抗と、導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む透明樹脂塗膜の表面抵抗を測定した結果を、表3に示す。
塩化第二錫50%水溶液100g(0.19mol)にフッ化第一錫3.0g(0.019mol=10mol%)を溶解し、これを50℃に加温した1N水酸化ナトリウム溶液1Lに撹拌しながら15分で滴下した。得られた共沈物を充分水洗した後、ろ過し、80℃で乾燥した。これを実施例1と同じ石英管状炉に入れ、水を通して水蒸気を飽和させた窒素ガスを0.3L/分の割合で30分間炉内に流し、酸素を排除した後、室温から600℃まで20分で昇温し、600℃で40分間熱処理した。同様に、フッ化第一錫を1.5g(5mol%)、0.7g(2.5mol%)とし、共沈、水洗、ろ過、乾燥後、同条件で熱処理を行い、導電性酸化錫粉末を得た。これらの粉体体積抵抗と、導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む透明樹脂塗膜の表面抵抗を測定した結果を、表3に示す。
〔実施例4〕
塩化第二錫50%水溶液100g(0.19mol)に硫酸第一錫4.1g(0.019mol=10mol%)を溶解し、これを50℃に加温した1N水酸化ナトリウム溶液1Lに撹拌しながら15分で滴下した。得られた共沈物を充分水洗した後、ろ過し、80℃で乾燥した。これを実施例1と同じ石英管状炉に入れ、水を通して水蒸気を飽和させた窒素ガスを0.3L/分の割合で30分間炉内に流し、酸素を排除した後、室温から600℃まで20分で昇温し、600℃で40分間熱処理した。同様に、硫酸第一錫を2.0g(5mol%)、1.0g(2.5mol%)とし、共沈、水洗、ろ過、乾燥後、同条件で熱処理を行い、導電性酸化錫粉末を得た。これらの粉体体積抵抗と、導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む透明樹脂塗膜の表面抵抗を測定した結果を、表4に示す。
塩化第二錫50%水溶液100g(0.19mol)に硫酸第一錫4.1g(0.019mol=10mol%)を溶解し、これを50℃に加温した1N水酸化ナトリウム溶液1Lに撹拌しながら15分で滴下した。得られた共沈物を充分水洗した後、ろ過し、80℃で乾燥した。これを実施例1と同じ石英管状炉に入れ、水を通して水蒸気を飽和させた窒素ガスを0.3L/分の割合で30分間炉内に流し、酸素を排除した後、室温から600℃まで20分で昇温し、600℃で40分間熱処理した。同様に、硫酸第一錫を2.0g(5mol%)、1.0g(2.5mol%)とし、共沈、水洗、ろ過、乾燥後、同条件で熱処理を行い、導電性酸化錫粉末を得た。これらの粉体体積抵抗と、導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む透明樹脂塗膜の表面抵抗を測定した結果を、表4に示す。
〔比較例1〕
実施例1同様、塩化第二錫50%水溶液100g(0.19mol)に塩化第一錫二水塩4.3g(0.019mol=10mol%)を溶解し、これを90℃に加温した1N水酸化ナトリウム溶液1Lに撹拌しながら15分で滴下した。得られた共沈物を充分水洗した後、ろ過し、90℃で乾燥した。これを実施例1と同じ石英管状炉に入れ、水を通して水蒸気を飽和させた空気を0.3L/分の割合で30分間炉内に流した後、500℃まで15分で昇温し、500℃で70分間熱処理した。同様に、塩化第一錫を2.1g(5mol%)、1.1g(2.5mol%)とし、共沈、水洗、ろ過、乾燥後、同条件で熱処理を行い、酸化錫粉末を得た。これらの粉体体積抵抗と、導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む透明樹脂塗膜の表面抵抗を測定した結果を、表5に示す。
実施例1同様、塩化第二錫50%水溶液100g(0.19mol)に塩化第一錫二水塩4.3g(0.019mol=10mol%)を溶解し、これを90℃に加温した1N水酸化ナトリウム溶液1Lに撹拌しながら15分で滴下した。得られた共沈物を充分水洗した後、ろ過し、90℃で乾燥した。これを実施例1と同じ石英管状炉に入れ、水を通して水蒸気を飽和させた空気を0.3L/分の割合で30分間炉内に流した後、500℃まで15分で昇温し、500℃で70分間熱処理した。同様に、塩化第一錫を2.1g(5mol%)、1.1g(2.5mol%)とし、共沈、水洗、ろ過、乾燥後、同条件で熱処理を行い、酸化錫粉末を得た。これらの粉体体積抵抗と、導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む透明樹脂塗膜の表面抵抗を測定した結果を、表5に示す。
表1〜4から明らかなように、実施例1〜4の導電性酸化物粉末は、非常に低い粉体体積抵抗を示し、これらの導電性酸化錫粉末を用いた塗膜は、非常に低い塗膜表面抵抗を示した。これに対して、表5に示した共沈物を空気中で熱処理した比較例1の導電性酸化物粉末は、高い粉体体積抵抗を示し、この導電性酸化錫粉末を用いた塗膜は、高い塗膜表面抵抗を示した。
本発明は、実施例1〜4に示したように、アンチモン等を含有せずに優れた導電性を有し、かつ環境汚染等を生じる虞がなく、環境への負担が少ない導電性酸化錫粉末を提供するものである。
Claims (7)
- 酸素欠陥がほぼ均一に形成された実質的に酸化第二錫からなる導電性酸化錫粉末であって、粉体体積抵抗が10Ω・cm以下であることを特徴とする、導電性酸化錫粉末。
- 溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させ、共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をすることにより、酸化第二錫中に酸素欠陥を形成してなる、請求項1記載の導電性酸化錫粉末。
- 導電性酸化錫粉末/樹脂分を8/2の質量比で含む厚さ1μmの透明樹脂塗膜の表面抵抗を105Ω/□以下にする、請求項1または2記載の導電性酸化錫粉末。
- 溶液中に共存する第二錫塩と第一錫塩を共沈させ、共沈物を、第一錫塩の可溶性蒸気が存在し、かつ酸素を排除した不活性ガス雰囲気中で熱処理をして、酸化第二錫中に酸素欠陥を形成することを特徴とする、導電性酸化錫粉末の製造方法。
- 第二錫塩に対して、第一錫塩が0.1mol%以上15mol%以下である、請求項4記載の導電性酸化錫粉末の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の導電性酸化錫粉末を分散してなる分散液。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の導電性酸化錫粉末を含有する膜組成物。
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