JP2012519706A - 抗体製剤 - Google Patents

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Abstract

場合によっては先に凍結乾燥が施されていない、治療的有効量の抗体と、pHを約4.5〜約6.5の範囲に維持するバッファーと、任意成分の界面活性剤を含有してなる製剤を、このような製剤の用途と共に記載する。

Description

関連出願
この出願は、その明細書の全体が出典明示によりここに援用される2009年3月6日出願の米国仮出願第61/158331号について優先権及びその利益を主張するものである。
この発明は抗体を含有する製剤に関する。
過去何年かで、生物工学における進歩は、組換えDNA技術を使用する薬学的用途のための様々なタンパク質を製造することを可能にした。タンパク質は伝統的な有機及び無機薬剤よりも大きく、さらに複雑である(例えば、複雑な3次元構造に加えて、多数の官能基を有する)ため、このようなタンパク質の製剤化には特別な問題がある。タンパク質が生物学的に活性なままであるためには、タンパク質の多数の官能基を分解から保護すると同時に、タンパク質のアミノ酸の少なくともコア配列の立体構造の完全性をインタクトなままに保たなければならない。タンパク質の分解経路は、化学的不安定性(例えば、新規の化学物質を生じる結合形成又は切断によるタンパク質の修飾を含む任意のプロセス)、又は物理的不安定性(例えば、タンパク質の高次構造における変化)に関与しうる。化学的不安定性は、脱アミド化、ラセミ化、加水分解、酸化、ベータ脱離、又はジスルフィド交換から生じうる。物理的不安定性は、例えば変性、凝集、沈殿又は吸着から生じうる。3種の最も一般的なタンパク質分解経路は、タンパク質凝集、脱アミド化及び酸化である。Clelandら Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems 10(4): 307-377 (1993)。
薬学的用途に使用されるタンパク質に含まれるのは抗体である。治療に有用な抗体の例は酸化LDLに結合する抗体である。治療用途に適した抗体、例えば抗oxLDL抗体を含有する安定した水性薬学的製剤が当該分野において必要とされている。
本発明は、治療的有効量の抗体、約4.5〜約6.5の範囲にpHを維持するバッファー、及び場合によっては界面活性剤を含有する製剤を提供する。ある実施態様では、製剤は少なくとも12ヶ月、約2〜8℃の温度で安定している。典型的には、これにより、例えば薬学的用途に使用される水性製剤が得られる。本発明のある種の実施態様では、製剤は安定した水性製剤である。ある種の実施態様では、製剤は安定した水性薬学的製剤である。
ここでの発明は、少なくとも部分的には、モノクローナル抗体、特に凝集しやすい完全長抗体を製剤化するのに特に有用なバッファーとして、pH4.5〜6.5のヒスチジン及びアルギニンの組合せの特定に関する。該製剤はその中の抗体製品の分解を遅延させる。本発明のある種の実施態様では、ヒスチジンとアルギニンのバッファーは、pH5.0〜6.0の酢酸ヒスチジン及び酢酸アルギニンのバッファーである。本発明のある種の実施態様では、ヒスチジンとアルギニンのバッファーは、pH4.5〜6.5のコハク酸ヒスチジン及びコハク酸アルギニンのバッファーである。本発明のある種の実施態様では、製剤は滅菌されている。
ここでのバッファーの製剤は、4.5〜6.5のpH、例えば5.0〜6.0のpH、pH5.25〜5.75、又はpH5.3〜5.6を有する。本発明のある種の実施態様では、製剤は5.5又は約5.5のpHを有する。本発明のある種の実施態様では、製剤は5.6又は約5.6のpHを有する。
よって、一態様では、本発明は、pH4.5〜6.5の酢酸ヒスチジン及び酢酸アルギニンのバッファーにモノクローナル抗体を含有してなる製剤に関する。さらなる実施態様では、それは例えば安定な薬学的製剤である。
よって、一態様では、本発明は、pH4.5〜6.5のコハク酸ヒスチジン及びコハク酸アルギニンのバッファーにモノクローナル抗体を含有してなる製剤に関する。さらなる実施態様では、それは例えば安定な薬学的製剤である。
ある種の実施態様では、バッファー中の酢酸ヒスチジン又はコハク酸ヒスチジンの濃度は約5mM〜約100mMである。ある種の実施態様では、酢酸ヒスチジン又はコハク酸ヒスチジンの濃度は約20mMである。ある種の実施態様では、バッファー中の酢酸アルギニン又はコハク酸アルギニンの濃度は約50mM〜約500mMである。ある種の実施態様では、酢酸アルギニン又はコハク酸アルギニンの濃度は約150mMである。
ここでの製剤は、場合によっては界面活性剤を含有しうる。ある種の実施態様では、界面活性剤はポリソルベート(polysorbate)(例えば、ポリソルベート20)である。ある種の実施態様では、界面活性剤の濃度は0.0001%〜約1.0%である。ある種の実施態様では、界面活性剤の濃度は0.01%〜約0.1%である。一実施態様では、界面活性剤の濃度は0.02%である。製剤は、場合によってはメチオニン(例えば、約5mg/ml又は5mg/mlの濃度で)を含有可能である。製剤は場合によってはキレート剤、例えばEDTA、EGTA等を含有可能である。ある種の実施態様では、製剤におけるEDTAの濃度は1mM EDTAである。
製剤は、典型的には約10mg/ml〜約250mg/mlの抗体濃度である。ある種の実施態様では、抗体濃度は約100mg/ml〜250mg/mlである。ある種の実施態様では、抗体濃度は約150mg/ml〜約200mg/mlである。ある種の実施態様では、抗体濃度は約25mg/ml〜約200mg/mlである。
他の態様では、本発明は、(a)約10mg/mL〜約250mg/mLの量の脱アミド化又は凝集しやすい完全長IgG1抗体;(b)pH4.5〜6.5の酢酸ヒスチジン及び酢酸アルギニンのバッファー;及び(c)約0.01%〜約0.1%の量のポリソルベート20を含有する薬学的製剤に関する。
他の態様では、本発明は、(a)約10mg/mL〜約250mg/mLの量の凝集しやすい完全長IgG1抗体;(b)pH4.5〜6.5のコハク酸ヒスチジン及びコハク酸アルギニンのバッファー;及び(c)約0.01%〜約0.1%の量のポリソルベート20を含有する薬学的製剤に関する。
ある種の実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。ある種の実施態様では、モノクローナル抗体は完全長抗体(例えば、IgG1、IgG4等)である。ある種の実施態様では、モノクローナル抗体は抗体断片(例えば、抗原結合領域を含む)である。例えば、抗体断片はFab又はF(ab')2断片である。ある種の実施態様では、モノクローナル抗体はヒト化抗体である。ある種の実施態様では、モノクローナル抗体は凝集しやすい。ある種の実施態様では、抗体には先の凍結乾燥は施されない。
ある種の実施態様では、モノクローナル抗体はox-LDLに結合する。さらなる態様では、本発明は、界面活性剤及び約4.5〜約6.5のpHのヒスチジン及びアルギニンのバッファー中にox-LDLに結合する抗体を含有る薬学的製剤に関する。ある種の実施態様では、oxLDL抗体は、それぞれ図2の配列番号:3及び4の可変軽鎖及び可変重鎖アミノ酸配列、場合によってはそれぞれ図2の配列番号:6及び7の定常領域(H及びL)を有する。ある種の実施態様では、抗oxLDL抗体は、図1の核酸によりコードされるVH及びVLを有する(配列番号:1及び2)。
また本発明は、約10mg/mL〜約200mg/mLの量のox-LDL抗体、酢酸ヒスチジン及び酢酸アルギニンのバッファー、及びポリソルベート20を含有する薬学的製剤であって、そのpHが約4.5〜約6.5である製剤に関する。
さらに本発明は、約10mg/mL〜約200mg/mLの量のox-LDL抗体、コハク酸ヒスチジン及びコハク酸アルギニンのバッファー、及びポリソルベート20を含有する薬学的製剤であって、そのpHが約4.5〜約6.5である製剤に関する。
またさらに本発明は、治療的有効量の抗体、約4.5〜約6.5の範囲にpHを保持するバッファー、及び場合によっては界面活性剤を含有する、安定な水性薬学的製剤を収容する容器を含む製造品に関する。本発明のある種の実施態様では、バッファーは、pH5.0〜6.0の酢酸ヒスチジン及び酢酸アルギニンのバッファーである。本発明のある種の実施態様では、バッファーはpH5.0〜6.0のコハク酸ヒスチジン及びコハク酸アルギニンのバッファーである。ある種の実施態様では、バッファーのpHは5.5である。ある種の実施態様では、バッファーのpHは5.6である。また本発明は、場合によっては凍結された形態で、バイアル又はタンクの内部に製剤を含有する、シリンジにより貫通可能なストッパーを具備するバイアル又はタンク(例えば、ステンレス鋼製タンク)に関する。ある種の実施態様では、バイアル又はタンクは、約2〜8℃で保存される。ある種の実施態様では、バイアルは3cc、20cc又は50ccバイアルである。
さらに、本発明は、(a)モノクローナル抗体製剤を調製し;(b)製剤中のモノクローナル抗体の物理的安定性、化学的安定性、又は生物学的活性を評価することを含む、薬学的製剤の作製方法を提供する。
さらなる態様では、本発明は、治療的有効量の抗体、約4.5〜約6.5の範囲にpHを保持するバッファー、及び場合によっては界面活性剤を組合せることにより、水性薬学的製剤中の抗体を安定化させる方法に関する。本発明のある種の実施態様では、バッファーは酢酸ヒスチジン及び酢酸アルギニンのpH4.5〜6.5のバッファーである。本発明のある種の実施態様では、バッファーはコハク酸ヒスチジン及びコハク酸アルギニンのpH4.5〜6.5のバッファーである。
また本発明は、酢酸ヒスチジン及び酢酸アルギニンのpH4.5〜6.5のバッファー中で抗体を製剤化することを含む、治療用モノクローナル抗体の凝集を低減させる方法を提供する。さらに本発明は、コハク酸ヒスチジン及びコハク酸アルギニンのpH4.5〜6.5のバッファー中で抗体を製剤化することを含む、治療用モノクローナル抗体の凝集を低減させる方法を提供する。
ここでの製剤及び方法のある種の実施態様では、製剤は安定である。一実施態様では、製剤は、少なくとも12ヶ月、約25℃での保存において安定である。一実施態様では、製剤は、少なくとも12ヶ月、約5℃での保存において安定である。一実施態様では、製剤は、少なくとも12ヶ月、約−20℃での保存において安定である。一実施態様では、製剤は、少なくとも24ヶ月、約5℃での保存において安定である。一実施態様では、製剤は、少なくとも24ヶ月、約−20℃での保存において安定である。
ここでの製剤及び方法のある種の実施態様では、製剤は、静脈内(IV)、皮下(SQ)又は筋肉内(IM)投与用である。一例では、製剤はIV投与用であり、抗体濃度は約10mg/ml〜約250mg/mlである。他の例では、製剤はSQ投与用であり、抗体濃度は約80mg/ml〜約250mg/mlである。
さらに、本発明は、疾患又は疾病を処置するのに有効な量で、被験者に製剤を投与することを含む、被験者における疾患又は疾病を治療する方法に関する。
さらなる他の態様では、本発明は、哺乳動物に、ここに開示の水性薬学的製剤を治療的有効量投与することを含む、哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物が、製剤中の抗体での治療を必要とする疾病を患っている方法に関する。さらなる他の態様では、本発明は、アテローム性動脈硬化症を治療するのに有効な量の薬学的製剤を被験者に投与することを含む、被験者のアテローム性動脈硬化症を治療する方法を提供する。抗体がox-LDLに結合する場合、治療される疾患の例には、アテローム性動脈硬化症が含まれる。
本発明のこれら態様及びさらなる態様は当業者には明らかであろう。
図1は、抗oxLDL抗体の可変重鎖及び可変軽鎖をコードする核酸配列を示す。 図2は、抗oxLDL抗体の可変重鎖及び可変軽鎖及び定常領域H及びLのアミノ酸配列を示す。 図3は、実施例1のpH研究におけるpHの関数としてのicIEFによる抗oxLDL抗体の電荷変異体を示す。プロットは、T0(菱形)及び40℃で4週間インキュベートした後(四角)のデータを示す。 図4は、40℃でのpHの関数としての抗oxLDL抗体のサイズ変異を示す。プロットは、T0(菱形)、1週間(四角)、2週間(三角)、及び4週間(丸)でのデータを示す(pH研究)。 図5は、40℃で4週間インキュベートした抗oxLDL抗体の主要ピークパーセントを示すCE-SDS UV(非還元)データを例証する(賦形剤研究)。 図6は、40℃で4週間インキュベートした抗oxLDL抗体試料を示すELISA結合データを示す。 図7A及びBは、(A)SECを使用しての様々な濃度での抗oxLDL抗体の凝集体パーセント、及び(B)icIEFを使用しての様々な濃度での抗oxLDL抗体の酸性ピークパーセントを示す。 図8は、SECを使用しての様々な酸化剤を用いた抗oxLDL抗体の凝集体パーセントを示す。
I.定義
本発明を詳細に記載する前に、この発明は、特定の組成物及び生物システムに限定されるものではなく、もちろん様々でありうることは理解されなければならない。また、ここで使用される用語は、特定の実施態様を記載するためだけを目的としており、限定することを意図するものではないことが理解されなければならない。この明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が明らかに他の定義を示しているものでないならば、複数の指示対象を含む。よって、例えば「a molecule」なる記載は、場合によっては2又はそれ以上のそのような分子の組合せ等を含む。
「薬学的製剤」なる用語は、活性成分の生物学的活性を有効であるようにする形態であり、製剤が投与されるであろう被験者に許容できない毒性のある付加的な成分を含んでいない調製物を意味する。このような製剤は滅菌されている。「薬学的に許容可能な」賦形剤(ビヒクル、添加剤)は、用いられる活性成分の有効量をもたらすために被験哺乳動物に合理的に投与されうるものである。
「滅菌」製剤は、無菌的又は全ての生存している微生物及びそれらの胞子を含まないか又は本質的に含まない。
ここで、「凍結」製剤は、0℃以下の温度でのものである。一般的に、凍結製剤はフリーズドライされていなし、前に又は続いて凍結乾燥が施されていない。ある種の実施態様では、凍結製剤は、保存(ステンレス鋼製タンクで)のための凍結薬剤物質、又は凍結薬剤製品(最終的なバイアル形態で)を含む。
「安定な」製剤は、保存の際にその中のタンパク質がその物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を本質的に保持しているものである。好ましくは、製剤は、保存時にその物理的及び化学的安定性、並びにその生物学的活性を本質的に保持している。保存期間は、一般的に製剤の意図される有効期間に基づき選択される。タンパク質安定性を測定するための様々な分析技術が当該分野において利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee編, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Pubs. (1991) 及び Jones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29-90 (1993)に概説されている。安定性は、選択された期間、選択された温度で測定することができる。ある種の実施態様では、製剤は約40℃で少なくとも約2〜4週間安定しており、及び/又は約5℃で少なくとも3ヶ月安定しており、及び/又は約5℃で少なくとも6ヶ月安定しており、及び/又は約5℃で少なくとも12ヶ月安定しており、及び/又は約−20℃で少なくとも3ヶ月又は少なくとも1年安定している。ある種の実施態様では、製剤は約25℃で少なくとも6ヶ月安定しており、及び/又は約25℃で12ヶ月安定しており、及び/又は約5℃で6ヶ月安定しており、及び/又は約5℃で12ヶ月安定しており、及び/又は約−20℃で少なくとも6ヶ月安定しており、及び/又は約−20℃で少なくとも12ヶ月安定しており、及び/又は5℃又は−20℃で少なくとも2年安定している。ある種の実施態様では、製剤は、製剤の凍結(例えば−70℃に)及び解凍の後、例えば凍結及び解凍の1、2又は3サイクルの後でも安定している。安定性は、凝集体形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーの使用、濁度の測定、及び/又は目視検査);カチオン交換クロマトグラフィー、イメージキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)又はキャピラリーゾーン電気泳動を使用する電荷不均一性の評価;アミノ末端又はカルボキシ末端配列分析;質量分析;還元型及びインタクト抗体を比較するSDS-PAGE分析;ペプチドマップ(例えば、トリプシン又はLYS-C)分析;抗体の生物学的活性又は抗原結合機能の評価等を含む様々な異なる方法で定性的及び/又は定量的に評価することができる。不安定性は、凝集、脱アミド化(例えば、Asn脱アミド化)、酸化(例えば、Met酸化)、異性化(例えば、Asp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域断片化)、スクシンイミド形成、不対システイン(類)、N末端伸長、C末端プロセシング、グルコシル化差異等の何れか一又は複数を含みうる。
タンパク質が、色調及び/又は透明度の目視検査において、又はUV光散乱又はサイズ排除クロマトグラフィーで測定して、凝集、沈殿及び/又は変性の徴候を全く又はほとんど示さないならば、タンパク質は薬学的製剤中で「その物理的安定性を保持している」。
与えられた時間での化学的安定性が、タンパク質が以下に定めるような生物学的活性を尚も保持していると考えられるようならば、タンパク質は薬学的製剤中で「その化学的安定性を保持している」。化学的安定性は、タンパク質の化学的に変性した形態を検出し定量することにより評価することができる。化学的変化には、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGE、及び/又はマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)を使用して評価可能なサイズ修飾(例えば、クリッピング)が含まれうる。他の種類の化学的変化には、例えばイオン交換クロマトグラフィー又はicIEFにより評価することができる荷電変化(例えば、脱アミド化の結果生じる)が含まれる。
与えられた時間での抗体の生物学的活性が、例えば抗原結合アッセイにおいて測定される場合、薬学的製剤が調製された時点で示された生物学的活性の約10%以内(アッセイの誤差内)であるならば、抗体は薬学的製剤中において「その生物学的活性を保持している」。抗体についての他の「生物学的活性」アッセイは、以下にここで詳述される。
ここで、モノクローナル抗体の「生物学的活性」は、抗原に結合する抗体の能力を意味する。それは、抗体が抗原に結合し、インビトロ又はインビボで測定されうる測定可能な生物学的応答を生じる場合を含みうる。そのような活性はアンタゴニスト作用又はアゴニスト作用でありうる。
ここでの「脱アミド化した」モノクローナル抗体は、その一又は複数のアスパラギン残基が、例えばアスパラギン酸又はイソアスパラギン酸に誘導体化されたものである。
「脱アミド化しやすい」抗体は、脱アミド化する傾向にあることが見出されている一又は複数の残基を有するものである。
「凝集しやすい」抗体は、特に凍結及び/又は攪拌の際に、他の抗体分子(群)と凝集することが見出されているものである。
「断片化しやすい」抗体は、例えばそのヒンジ領域で、2又はそれ以上の断片に切断されることが見出されているものである。
「脱アミド、凝集、又は断片化を低減する」とは、様々なpH又は様々なバッファー中において製剤化されたモノクローナル抗体に対して、脱アミド化、凝集又は断片化の量を意図的に防止し又は低減するものである。
製剤化される抗体は、好ましくは本質的に純粋で、望ましくは本質的に均一(例えば、汚染タンパク質を含まない等)である。「本質的に純粋」な抗体とは、組成物の全重量に基づき、少なくとも約90重量%、好ましくは少なくとも95重量%の抗体を含む組成物を意味する。「本質的に均一な」抗体とは、組成物の全重量に基づき、少なくとも約99重量%の抗体を含む組成物を意味する。
「等張」とは、関心ある製剤が、ヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有していることを意味する。等張な製剤は、一般的に約250〜300mOsmの浸透圧を有するであろう。等張性は、例えば蒸気圧又は氷-凍結型浸透圧計を使用して測定することができる。
ここで使用される場合、「バッファー」とは、その酸性ベースのコンジュゲート成分の作用により、pHの変化に抗する緩衝液を意味する。この発明のバッファーは、約4.5〜約7.0、又は約4.5〜約6.5、又は約5.0〜約6.0の範囲のpHを有するか、又は約5.5のpHを有するか、又は5.5のpHを有するか、又は約5.6のpHを有するか、又は5.6のpHを有する。この範囲にpHをコントロールするバッファーの例には、アセテート、スクシネート、スクシネート、グルコネート、ヒスチジン、シトレート、グリシルグリシン、及び他の有機酸バッファーが含まれる。
「ヒスチジンバッファー」は、ヒスチジンイオンを含むバッファーである。ヒスチジンバッファーの例には、塩化ヒスチジン、酢酸ヒスチジン、リン酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジン、コハク酸ヒスチジン等が含まれる。一実施態様では、ここでの実施例で特定されたヒスチジンバッファーは、酢酸ヒスチジンであることが見出された。その一実施態様では、酢酸ヒスチジンバッファーは、酢酸(液体)でL-ヒスチジン(遊離塩基、固体)を滴定することにより調製される。ある種の実施態様では、ヒスチジンバッファー又は酢酸ヒスチジンバッファーは、pH4.5〜6.5である。一実施態様では、バッファーはpH5.5を有する。一実施態様では、ここでの実施例で特定されたヒスチジンバッファーは、コハク酸ヒスチジンであることが見出された。一実施態様では、コハク酸ヒスチジンバッファーはpH4.5〜6.5である。一実施態様では、バッファーはpH5.5を有する。一実施態様では、バッファーはpH5.6を有する。
「ヒスチジンアルギニンバッファー」は、ヒスチジンイオンとアルギニンイオンを含むバッファーである。ヒスチジンバッファーの例には、塩化ヒスチジン-塩化アルギニン、酢酸ヒスチジン-酢酸アルギニン、リン酸ヒスチジン-リン酸アルギニン、硫酸ヒスチジン-硫酸アルギニン、コハク酸ヒスチジン-コハク酸アルギニン等が含まれる。一実施態様では、ここでの実施例で特定されたヒスチジン-アルギニンバッファーは、酢酸ヒスチジン-酢酸アルギニンであることが見出された。その一実施態様では、酢酸ヒスチジンバッファーは、酢酸(液体)でL-ヒスチジン(遊離塩基、固体)を滴定することにより、また酢酸(液体)でL-アルギニン(遊離塩基、固体)を滴定することにより、調製される。一実施態様では、ヒスチジン-アルギニンバッファーは、pH4.5〜6.5である。一実施態様では、バッファーはpH5.5を有する。一実施態様では、ここでの実施例で特定されたヒスチジン-アルギニンバッファーは、コハク酸ヒスチジン-コハク酸アルギニンであることが見出された。一実施態様では、コハク酸ヒスチジン-コハク酸アルギニンバッファーは、pH4.5〜6.5である。一実施態様では、バッファーはpH5.5を有する。一実施態様では、バッファーはpH5.6を有する。
ここで、「界面活性剤」は、表面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤を意味する。ここで、界面活性剤の例には、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、及びポリソルベート80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);トリトン;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、又はステアリル-スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、又はステアリル-サルコシン;リノレイル-、ミリスチル-、又はセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノレアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、又はイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、又はイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;ナトリウムメチルココイル-、又はジナトリウムメチルオレイル-タウレート;及びMONAQUATTMシリーズ(Mona Industries, Inc., Paterson, N.J.);ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、及びエチレンとプロピレングリコールのコポリマー(例えば、Pluronics、PF68等)等が含まれる。一実施態様では、ここでの界面活性剤はポリソルベート20である。
薬理学的意味において、本発明の文脈中、抗体の「治療的有効量」とは、抗体が有効な疾患の予防又は治療において有効な量を意味する。「疾患」は、抗体での治療から恩恵をうる何らかの症状である。これには、当該疾患に哺乳動物を罹患させる病理状態を含む、慢性及び急性の疾患又は疾病が含まれる。
「保存料」は、場合によっては製剤に含有せしめられて、そこでの細菌の作用を本質的に低減させ、よって例えば多用途製剤の製造を容易にすることができる化合物である。可能ま保存料の例には、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム(アルキル基が長鎖化合物であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリドの混合物)、及び塩化ベンゼトニウムが含まれる。他の種類の保存料には、芳香族アルコール、例えばフェノール、ブチル及びベンジルアルコール、アルキルパラベン類、例えばメチル又はプロピルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、及びm-クレゾールが含まれる。一実施態様では、ここでの保存料はベンジルアルコールである。
「ポリオール」は複数のヒドロキシル基を有する物質であり、糖類(還元及び非還元糖)、糖アルコール類、及び糖酸が含まれる。ポリオールは、場合によっては製剤中に含まれうる。ある種の実施態様では、ここでのポリオールは約600kD未満(例えば、約120〜約400kDの範囲内)の分子量を有する。「還元糖」は、金属イオンを還元するか、又はタンパク質中のリジン及び他のアミノ基と共有的に反応しうるヘミアセタール基を含むものであり、「非還元糖」は還元糖のこれらの特性を有さないものである。還元糖の例はフルクトース、マンノース、マルトース、ラクトース、アラビノース、キシロース、リボース、ラムノース、ガラクトース及びグルコースである。非還元糖にはスクロース、トレハロース、ソルボース、メレジトース、及びラフィノースが含まれる。マンニトール、キシリトール、エリトリトール、スレイトール(threitol)、ソルビトール、及びグリセロールは、糖アルコールの例である。糖酸に関しては、これらにはL-グルコネート及びその金属塩が含まれる。製剤が凍結-解凍安定性であることが望まれる場合、製剤中の抗体を不安定化しないように、ポリオールは好ましくは凍結温度(例えば−20℃)で結晶化しないものである。ある種の実施態様では、非還元糖、例えばスクロース及びトレハロースはポリオールの例であり、トレハロースの溶液安定性のために、トレハロースがスクロースよりも好ましい。
ここで使用される抗OxLDL抗体は、(例えば、ApoB-100等の)LDL中のタンパク質抗原に結合する抗体である。例えば、IEI-E3、LDO-D4、KTT-B8、及び2-DO3(例えば、国際公開第2004/030607号)を参照。ApoB-100は、ヒト血清中におけるコレステロールの主要な担体であるLDLのタンパク質成分である。LDLの酸化は、アテローム生成粒子へのその転換における重要な工程であり、酸化的修飾により、最も早い可視可能な動脈硬化病変である脂肪線条の初期形成が促進される。
抗oxLDL抗体の例は、酸化LDLに対して産生される完全なヒトモノクローナルIgG1抗体である2-DO3である。抗体2DO3の可変重鎖及び可変軽鎖をコードするポリヌクレオチド配列を図1に与え、それぞれ配列番号:1及び配列番号:2を割り当てた。抗体2DO3の可変重鎖及び可変軽鎖のアミノ酸配列を図2に与え、それぞれ配列番号:3及び配列番号:4を割り当てた。定常領域H及びLには、図2のように、配列番号:6及び7を割り当てた。また、2-DO3は、国際公開第2004/030607号の図3に与えられたような少なくともVH及びVL配列を有し(又は米国特許第20040202653号の配列番号:27及び28)、及び国際公開第2007/025781号の表2に列挙された抗体のCDR配列を有する抗体を意味する。
抗oxLDL抗体の生物学的活性は、ox-LDLに結合し、場合によっては、例えばプラーク形成を阻害し、動脈硬化病変の発生を予防するであろう(例えば、Schiopuら, 2004の動物モデル;国際公開第2004/030607号;米国特許第6716410号に記載)。他の活性には、処置の数週間後、大動脈において、既存の確立された動脈硬化プラークの退縮を活発に誘導することを含む(例えば、国際公開第2007/025781号)。
アテローム性動脈硬化は、喫煙、高血圧、真性糖尿病、高コレステロール血症、高血漿低密度リポタンパク質(LDL)及びトリグリセリド、高フィブリノーゲン血症及び高血糖を含む、生化学的危険因子を呈する被験者に優先的に発病する多因子疾患である。アテローム性動脈硬化は、大及び中サイズの動脈の再内側層(内膜)の肥厚化を引き起こす慢性疾患である。それにより、血流量が減少し、罹患した血管から供給される器官において虚血及び組織破壊が引き起こされるかもしれない。動脈硬化病変は、ヒトにおいて数十年にわたって発達し、冠血管及び脳虚血及び血栓塞栓性疾患及び心筋及び大脳梗塞等の合併症に至る。
アテローム性動脈硬化は、急性心筋梗塞、脳卒中、及び末梢動脈疾患を含む循環器疾患の主要な原因である。該疾患は、血管の細胞外マトリックスに、リポタンパク質、主としてLDLが蓄積することにより開始される。これらのLDL粒子が凝集し、酸化的修飾を受ける。酸化LDLは毒性であり、血管損傷を引き起こす。多くの点で、アテローム性動脈硬化は、炎症及び線維症を含むこの損傷に対する応答である。
「治療(処置)」とは、治療的処置及び予防又は防止手段の両方を意味する。治療の必要があるものには、既に疾患を患っているもの、並びに疾患が予防されるべきものが含まれる。
治療目的での「哺乳動物」は、ヒト、家庭用動物及び家畜、及び動物園、スポーツ又はペット用動物、例えばイヌ、ウシ、ネコ、ウシ等を含む、哺乳動物として分類される任意の動物を意味する。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
ここでの「抗体」なる用語は、最も広義に使用され、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物学的活性を示す限り抗体断片を特に包含する。
「単離された」抗体とは、その自然環境の成分から同定され分離され及び/又は回収されたものである。その自然環境の汚染成分とは、抗体の研究、診断又は治療への使用に干渉する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれうる。いくつかの実施態様では、抗体は、(1)例えば、ローリー法で測定して抗体の95重量%を越え、いくつかの実施態様においては99重量%を超えるまで;(2)例えば、スピニングカップシークエネーターを使ったN末端又は内在するアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、又は(3)例えば、クーマシーブルー又は銀染色を用いた還元又は非還元状態の下でのSDS-PAGEにより均一になるまで、精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも一成分が存在しないことから、組換え細胞内のインサイツの抗体を含む。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一の精製段階によって調製されるであろう。
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる、約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つの共有ジスルフィド結合により重鎖に結合する一方、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。また各重鎖と軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(V)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列され、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列されている。特定のアミノ酸残基が、軽鎖及び重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。
「定常ドメイン」なる用語は、抗原結合部位を含む免疫グロブリンの他の部分、つまり可変ドメインと比較してより保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を意味する。定常ドメインは、重鎖のC1、C2及びC3ドメイン(集合的にCH)、及び軽鎖のCHL(又はCL)ドメインを含む。
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを意味する。重鎖の可変ドメインは「VH」と称されうる。軽鎖の可変ドメインは「VL」と称されうる。これらのドメインは、一般的に抗体の最も可変の部分であり、抗原結合部位を含む。
「可変」なる用語は、可変ドメインのある部分が、抗体間で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されるという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造に連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する、3つのHVRにより連結されたβシート配置を主にとる4つのFRをそれぞれ含んでいる。各鎖のHVRは、FR領域によって近接して保持され、他の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、様々なエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞傷害性への抗体の関与を示す。
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」には、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明確に区別される型の一つを割り当てることができる。
ここで使用されるIgG「アイソタイプ」又は「サブクラス」なる用語は、それらの定常領域の化学的及び抗原特性により定まる免疫グロブリンのサブクラスのいずれかを意味する。
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、抗体(免疫グロブリン)には異なるクラスを割り当てることができる。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、さらにこれらのいくつかは、例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IgA、及びIgA等のサブクラス(アイソタイプ)に分かれる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られており、一般に、例えばAbbasら Cellular and Mol. Immunology, 第4版.(W. B. Saunders, Co., 2000)に記載されている。抗体は、抗体と一又は複数の他のタンパク質又はペプチドとの共有又は非共有結合により形成される大きな融合分子の一部でありうる。
「完全長抗体」、「インタクト抗体」及び「全抗体」なる用語は、ここでは交換可能に使用され、以下に示すような抗体断片ではなく、その実質的にインタクトな形態にある抗体を意味する。本用語は、特にFc領域を含む重鎖を有する抗体を意味する。
ここでの目的に対して「ネイキッド抗体」とは、細胞傷害性部分又は放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
「抗体断片」は、無傷抗体の一部、好ましくはその抗原結合領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab')及びFv断片;ダイアボディ;線形抗体;単鎖抗体分子;及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれる。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々が、単一の抗原結合部位と、その名前が直ぐに結晶化するその能力を反映している残りの「Fc」断片を含む。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、尚も抗原に架橋することができるF(ab')断片を生じる。
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。一実施態様では、二本鎖Fv種は、堅固な非共有結合をなした一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、一つの重鎖及び一つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖と重鎖が、二本鎖Fv種のものに類似した「二量体」構造で結合可能なように、可動性ペプチドリンカーにより共有的に結合されうる。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用して、VH-VL二量体の表面に抗原結合部位を画成するのは、この配置においてである。集合的に、6つのHVRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、全結合部位よりも親和性が低くなるが、抗原を認識して結合する能力を有している。
Fab断片は、重鎖及び軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常ドメイン(CH1)をまた含む。Fab'断片は、抗体ヒンジ領域からの一又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に数個の残基が付加している点でFab断片とは異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基(群)が遊離チオール基を担持しているFab'に対するここでの命名である。F(ab')抗体断片は、間にヒンジシステインを有するFab'断片の対として元々は生産された。抗体断片の他の化学カップリングもまた知られている。
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般的に、scFvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含み、それはscFvが抗原結合に望まれる構造を形成するのを可能にする。scFvの概説については、Pluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg及びMoore編, (Springer-Verlag, New York:1994), pp. 269-315を参照のこと。
「ダイアボディ」なる用語は、二つの抗原結合部位を持つ抗体断片を意味し、その断片は同一のポリペプチド鎖(VH-VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に重鎖可変ドメイン(VH)が結合してなる。非常に短いために同一鎖上で二つのドメインの対形成ができないリンカーを使用して、ドメインを他の鎖の相補ドメインと強制的に対形成させ、二つの抗原結合部位を創製する。ダイアボディは、二価又は二重特異性であってもよい。ダイアボディは、欧州特許出願公開第404097号;国際公開第1993/01161号;Hudsonら, Nat.Med., 9:129-134(2003); 及びHollingerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448(1993)に、さらに詳細に記載されている。トリアボディ及びテトラボディは、Hudsonら, Nat. Med., 9:129-134(2003)に記載されている。
ここで使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、例えば、集団を構成する個々の抗体が、少量で存在しうる、例えば自然に生じる可能性がある突然変異を除いては同一である抗体を意味する。よって、「モノクローナル」との修飾語句は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。ある種の実施態様では、このようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、ここで、標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスにより得られた。例えば選択プロセスは、複数のクローン、例えばハイブリドーマクローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールからの独特のクローンの選択とすることができる。選択された標的結合配列は、例えば標的に対する親和性を改善するため、標的結合配列をヒト化するため、細胞培養におけるその生産性を改善するため、インビボにおけるその免疫原性を低下させるため、多重特異的抗体を産生させる等のために、さらに改変され得、また改変された標的結合配列を有する抗体も、この発明のモノクローナル抗体であることが理解されなければならない。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物と比べて、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、他の免疫グロブリンによって典型的には汚染されていない点で有利である。
「モノクローナル」との修飾詞は、実質的に均一な抗体集団から得られているという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産することを必要としていると解してはならない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein., Nature, 256:495-97(1975);Hongoら, Hybridoma, 14(3):253-260(1995), Harlowら, Antibodies: A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版. 1988);Hammerlingら: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, 563-681(Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号を参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら, Nature, 352: 624-628(1991);Marksら, J. Mol. Biol., 222:581-597(1992);Sidhuら, J. Mol. Biol., 338(2):299-310(2004);Leeら, J. Mol. Biol., 340(5):1073-1093(2004);Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 101(34):12467-12472(2004);及びLeeら, J. Immunol. Methods, 284(1-2):119-132(2004)、及びヒト免疫グロブリン座位又はヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部又は全部を有する動物においてヒト又はヒト様抗体を産生させるための技術(例えば、国際公開第1998/24893号;国際公開第1996/34096号;国際公開第1996/33735号;国際公開第1991/10741号;Jakobovitsら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 2551(1993);Jakobovitsら, Nature, 362: 255-258(1993);Bruggemannら, Year in Immunol., 7:33(1993);米国特許第5545807号;同5545806号;同5569825号;同5625126号;同5633425号;及び同5661016号;Marksら, Bio/Technology, 10: 779-783(1992);Lonbergら, Nature, 368:856-859(1994);Morrison, Nature, 368:812-813(1994);Fishwildら, Nature Biotechnol. 14:845-851(1996);Neuberger, Nature Biotechnol. 14:826(1996);及びLonberg及びHuszar, Intern. Rev. Immunol.13:65-93(1995)を参照)を含む様々な技術により作製することができる。
ここでのモノクローナル抗体は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の種由来の抗体、あるいは特定の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同であり、鎖の残りの部分が他の種由来かあるいは他の抗体クラスあるいはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一であるか相同である「キメラ」抗体、並びにそれが所望の生物的活性を有する限りそれら抗体の断片を特に含む(米国特許第4816567号;及びMorrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984))。キメラ抗体は、抗体の抗原結合領域が、例えば関心ある抗体を用いてマカクザルを免疫化することにより産生される抗体から誘導されたものであるPRIMATIZED(登録商標)抗体を含む。
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」型とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列をキメラ抗体である。一実施態様では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVRの残基が、マウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類のような所望の特異性、親和性及び/又は能力を有する非ヒト種(ドナー抗体)のHVRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するためになされうる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、全てあるいはほとんど全ての高度可変ループが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、全てあるいはほとんど全てのFRがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒトの免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細は、Jonesら, Nature 321, 522-525(1986);Reichmannら, Nature 332, 323-329(1988);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2, 593-596(1992)を参照。またさらに、例えばVaswani andHamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol., 1:105-115(1998);Harris, Biochem. Soc. Transactions, 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech., 5:428-433(1994);及び米国特許第6982321号及び米国特許第7087409号を参照。
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はここにおいて開示されたヒト抗体を作製するいずれかの技術を使用して製造されたものである。ヒト抗体のこの定義は、特に非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を除く。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む、当該分野で知られている様々な技術を使用して生産することができる。Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol., 227:381(1991);Marksら, J. Mol. Biol., 222:581(1991)。また、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用できるものは、Coleら, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R.Liss, p. 77(1985);Boernerら, J. Immunol., 147(1):86-95(1991)に記載の方法である。また、van Dijk及びvan de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol., 5: 368-74(2001)を参照。ヒト抗体は、抗原誘発に反応してそのような抗体を産生するように改変されているが、その内在性座位が無能にされている、例えば免疫化キセノマウスのようなトランスジェニック動物に抗原を投与することにより調製可能である(例えば、XENOMOUSETM技術に関し、米国特許第6075181号及び同6150584号を参照)。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して産生されるヒト抗体に関しては、例えばLiら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562(2006)を参照。
「種依存性抗体」は、第2の哺乳動物種からの抗原のホモログに対してよりも、第1の哺乳動物種からの抗原に対して、より強い結合親和性を有するものである。通常、種依存性抗体はヒト抗原に「特異的に結合する」(例えば、約1×10-7M以下、好ましくは約1×10-8M以下、及び最も好ましくは約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、第2の非ヒト哺乳動物種からの抗原のホモログに対しては、ヒト抗原に対する結合親和性よりも、少なくとも約50倍、又は少なくとも約500倍、又は少なくとも約1000倍弱い結合親和性を有する。種依存性抗体は、上述した様々な種類の抗体のいずれであってもよいが、好ましくはヒト化又はヒト抗体である。
ここで使用される「高頻度可変領域」、「HVR」又は「HV」なる用語は、配列において高頻度可変であり、及び/又は構造的に定まったループを形成する抗体可変ドメインの領域を意味する。一般に、抗体は6つのHVRを含む;つまり、VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)である。天然の抗体では、H3及びL3は6つのHVRの最大の多様性を示し、特にH3は抗体に良い特異性を付与するのに独特の役割を果たすと考えられている。例えばXuら, Immunity 13:37-45 (2000);Johnson及びWu, Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo編, Human Press, Totowa, NJ, 2003)を参照。確かに、重鎖のみからなる天然に生じるラクダ抗体は軽鎖の不存在下で機能的で安定である。例えば、Hamers-Castermanら, Nature 363:446-448 (1993)及びSheriffら, Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)を参照。
多数のHVRの描写がここで使用され、また包含される。カバット相補性決定領域(CDRs)は配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版 Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia及びLesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、カバットHVRとChothia構造的ループの間の妥協を表し、オックスフォード・分子AbM抗体モデリングソフトウェアにより使用されている。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の分析に基づいている。これらのHVRのそれぞれからの残基を以下に記す。
カバットループ AbM Chothia 接触
L1 L24-L34 L24-L34 L26-L32 L30-L36
L2 L50-L56 L50-L56 L50-L52 L46-L55
L3 L89-L97 L89-L97 L91-L96 L89-L96
H1 H31-H35B H26-H35B H26-H32 H30-H35B(カバット番号付け)
H1 H31-H35 H26-H35 H26-H32 H30-H35(Chothia番号付け)
H2 H50-H65 H50-H58 H53-H55 H47-H58
H3 H95-H102 H95-H102 H96-H101 H93-H101
HVRは次の通り「伸展HVR」を含みうる:VL中の24−36又は24−34(L1)、46−56又は50−56(L2)及び89−97又は89−96(L3)と、VH中の26−35(H1)、50−65又は49−65(H2)及び93−102、94−102又は95−102(H3)。これらの定義の各々に対して上掲のカバットらに従って、可変ドメイン残基を番号付けする。
「フレームワーク」又は「FR」残基は、ここで定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
「カバットにおける可変ドメイン残基番号付け」又は「カバットにおけるアミノ酸位置番号付け」及びその変形は、上掲のKabatらにおける抗体の編集の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインについて使用される番号付けシステムを意味する。この番号付けシステムを使用すると、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのHVR又はFRの短縮化か、又はそこへの挿入に対応するより少ないか又は付加的なアミノ酸を含みうる。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(カバットに従い残基52a)、及び重鎖FR残基82の後に挿入残基(例えば、カバットに従い残基82a、82b、及び82c等)を含む。残基のカバット番号付けは、「標準的な」カバット番号の配列を有する抗体の配列の相同領域で配列させることにより、与えられた抗体に対して決定されうる。
カバット番号付けシステムは、可変ドメイン中の残基(およそ軽鎖の残基1−107、及び重鎖の残基1−113)に言及する場合に一般的に使用される(例えば、Kabatら, Sequences of Immunological Interest. 第5版. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。「EU番号付けシステム」又は「EUインデクス」は、免疫グロブリン重鎖定常領域の残基を意味する場合に、一般的に使用される(例えば、上掲のカバットらにより報告されているEUインデクス)。「カバットのEUインデクス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを意味する。
「線形抗体」なる表現は、Zapataら(1995 Protein Eng. 8(10):1057-1062)に記載された抗体を意味する。簡潔に述べると、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと共に、一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデム型Fdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。線形抗体は二重特異性又は単一特異性でありうる。
ここで使用される場合、「ライブラリー」は、複数の抗体又は抗体断片配列(例えば、本発明のポリペプチド)、又はこれらの配列をコードする核酸を意味し、配列は、本発明の方法によりこれらの配列に導入される変異体アミノ酸の組合せにおいて異なっている。
「ファージディスプレイ」は、変異ポリペプチドが、例えば糸状ファージのようなファージ粒子の表面にコートタンパク質の少なくとも一部に対する融合タンパク質としてディスプレイされる技術である。ファージディスプレイの有用性は、ランダム化タンパク質変異体の大きなライブラリーが、高親和性をもって標的抗原に結合する配列に対して、素早くまた効率的に選別されうるという点にある。ファージ上でのペプチド及びタンパク質ライブラリーのディスプレイは、特異的な結合特性を有するものについて何百万ものポリペプチドをスクリーニングするために使用されている。多価ファージディスプレイ法は、糸状ファージの遺伝子III又は遺伝子VIIIの何れかに対する融合を介して小さいランダムなペプチド及び小さいタンパク質をディスプレイするために使用されている。Wells及びLowman (1992) Curr. Opin. Struct. Biol. 3:355-362及びそこに引用されている参考文献。一価ファージディスプレイにおいて、タンパク質又はペプチドライブラリーは遺伝子III又はその一部に融合しており、ファージ粒子が融合タンパク質の一つのコピーを示すか又は何れも示さないように野生型遺伝子IIIタンパク質の存在下で低レベルで発現される。結合活性効果は、選別が内因性のリガンド親和性に基づくように、多価ファージに対して低下し、ファージミドベクターが使用され、これがDNA操作を単純化する。Lowman及びWells (1991) Methods: A companion to Methods in Enzymology 3:205-0216。
「ファージミド」は、複製の細菌起点、例えばCo1E1、及びバクテリオファージの遺伝子間領域のコピーを有するプラスミドベクターである。ファージミドは、糸状バクテリオファージ及びラムダバクテリオファージを含む、任意の既知のバクテリオファージで使用されうる。またプラスミドは、抗生物質耐性のための選択可能なマーカーを一般的に含むであろう。これらのベクターにクローニングされるDNAのセグメントはプラスミドとして増殖されうる。これらのベクターを有する細胞に、ファージ粒子の生産に必要な全ての遺伝子が与えられると、プラスミドの複製態様はローリングサイクル複製に変化し、プラスミドDNAの一本鎖のコピーを生成し、ファージ粒子をパッケージする。ファージミドは、感染性及び非感染性ファージ粒子を形成しうる。この用語は、ファージコートタンパク質遺伝子、又は異種ポリペプチドがファージ粒子の表面でディスプレイされるように、遺伝子融合として異種ポリペプチド遺伝子に結合したその断片を含むファージミドを含む。
II.発明を実施するための形態
ここでの発明は抗体を含有する製剤に関する。製剤中の抗体は、抗体を製造するための当該分野で利用できる方法を使用して調製され、その例示的方法は次のセクションにさらに詳細に記載される。典型的には、製剤は安定な水性製剤である。ある種の実施態様では、それらは薬学的製剤である。
抗体は、関心ある抗原に対して産生される。好ましくは、抗原は生物学的に重要なポリペプチドであり、疾患を患っている哺乳動物への抗体の投与は、哺乳動物への治療的有益性をもたらしうる。しかしながら、非ポリペプチド抗原に対して産生される抗体もまた考慮される。
抗原がポリペプチドである場合、それは膜貫通分子(例えば、レセプター)又はリガンド、例えば増殖因子でありうる。例示的な抗原には、ox-LDL;ox-ApoB100;レニン;ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;濾胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、及びフォン・ウィルブランド因子などの凝固因子;プロテインC等の抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;プラスミノーゲン活性化剤、例えばウロキナーゼ又はヒト尿素又は組織型プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血成長因子;腫瘍壊死因子-α及びβ;エンケファリン分解酵素;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミン等の血清アルブミン;ミューラー阻害物質;リラキシンA-鎖;リラキシンB-鎖;プロレラキシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;β-ラクタマーゼ等の微生物タンパク質;DNアーゼ;IgE;CTLA-4等の細胞毒性Tリンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);VEGFRレセプター、ホルモン又は成長因子のレセプター;プロテインA又はD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又は神経成長因子、例えばNGF-β;血小板誘導増殖因子(PDGF);aFGF及びbFGF等の線維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);TGF-α、及びTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、又はTGF-β5を含む、TGF-β等のトランスフォーミング増殖因子(TGF);インシュリン様増殖因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インシュリン様増殖因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20等のCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β、及び-γ等のインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSF、及びG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1ないしIL-10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞レセプター;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス性抗原、例えばAIDSエンベロープの一部;輸送タンパク質;ホーミングレセプター;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えばHER2、HER3又はHER4レセプター;及び上に列挙したポリペプチドの何れかの断片が含まれる。
本発明のある種の実施態様では、本発明に包含される抗体についての分子標的には、ox-LDLが含まれる。一実施態様では、ここでの抗体は、ヒトox-LDLに結合するものである。一実施態様では、ここでの抗体は、ヒトox-ApoB100に結合するものである。
A.製剤の調製
関心ある抗体を調製後(ここで開示されるようにして製剤化されうる抗体を製造するための技術は以下に詳述され、当該分野で知られている)、それを含有する薬学的製剤が調製される。ある種の実施態様では、処方される抗体は事前の凍結乾燥にかけられておらず、ここで関心ある製剤は水性製剤である。ある種の実施態様では、抗体は完全長抗体である。一実施態様では、製剤中の抗体は抗体断片、例えばF(ab')2であり、その場合、完全長抗体では生じないであろう問題(例えば、Fabに対する抗体のクリッピング)に対処する必要がある場合がある。製剤中に存在する抗体の治療的有効量は、例えば、所望される用量ボリューム又は投与態様を考慮して決定される。約0.1mg/mL〜約250mg/mL、又は約10mg/mL〜約200mg/mL、又は約50mg/mL〜約175mg/mLが製剤中の例示的な抗体濃度である。
pH緩衝溶液に抗体を含有する水性製剤が調製される。この発明のバッファーは、約4.5〜約6.5の範囲のpHを有する。ある種の実施態様では、pHは、5.0〜6.0のpH範囲、又はpH5.25〜5.75の範囲、又はpH5.3〜5.6の範囲である。本発明のある種の実施態様では、製剤は5.5又は約5.5のpHを有する。この範囲にpHをコントロールするバッファーの例には、アセテート(例えば、酢酸ヒスチジン、酢酸アルギニン、酢酸ナトリウム)、スクシネート(例えば、コハク酸ヒスチジン、コハク酸アルギニン、コハク酸ナトリウム)、グルコネート、シトレート、及び他の有機酸バッファー、及びその組合せが含まれる。バッファー濃度は、例えばバッファー及び製剤の所望の等張性に応じて、約1mM〜約600mMとすることができる。ある種の実施態様においては、約5mM〜100mM濃度のヒスチジンを含み、アルギニンは50mM〜500mMの濃度である。一実施態様では、バッファーは、酢酸ヒスチジン(約20mM)−酢酸アルギニン(約150mM)、pH5.5である。ある種の実施態様では、バッファーは、コハク酸ヒスチジン(約20mM)−コハク酸アルギニン(約150mM)、pH5.5である。
界面活性剤が、場合によっては抗体製剤に添加されうる。例示的な界面活性剤には、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、80等)又はポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)が含まれる。添加される界面活性剤の量は、処方される抗体の凝集が低減し、及び/又は製剤中の粒子の形成が最小となり、及び/又は吸着が低減されるような量である。例えば、界面活性剤は、約0.001%〜約0.5%、好ましくは約0.005%〜約0.2%、さらに好ましくは約0.01%〜約0.1%の量で製剤に存在しうる。一実施態様では、製剤は界面活性剤を含有しない。
一実施態様では、製剤は、上で特定した薬剤(例えば、抗体、バッファー、及び/又は界面活性剤)を含んでおり、本質的に一又は複数の保存料、例えばベンジルアルコール、フェノール、m-クレゾール、クロロブタノール、及びベンゼトニウムClを含有しない。一実施態様では、製剤は保存料を含有しない。他の実施態様では、保存料は製剤中に含有せしめられてよく、特に製剤が複数用量製剤の場合にしかりである。保存料の濃度は約0.1%〜約2%、好ましくは約0.5%〜約1%の範囲でありうる。一又は複数の他の薬学的に許容可能な担体、賦形剤、又は安定剤、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences 第16版, Osol, A. Ed. (1980)に記載されているものも、それらが製剤の所望の特徴に悪影響を及ぼすものではない限り、製剤に含めることができる。許容可能な担体、賦形剤又は安定剤は、使用される用量及び濃度でレシピエントに対して無毒であり、付加的な緩衝剤;共溶媒;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;キレート剤、例えばEDTA;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);生物分解性ポリマー、例えばポリエステル類;及び/又は塩形成対イオンを含む。
ここでのキレート剤の様々な記載はしばしばEDTAに集中するが、他の金属イオンキレート剤も本発明の範囲に含まれることは理解されるであろう。金属イオンキレート剤は当業者によく知られており、アミノポリカルボキシレート、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、EGTA(エチレングリコール-ビス(ベータ-アミノエチルエーテル)-N,N,N',N'-四酢酸)、NTA(ニトリロ三酢酸)、EDDS(エチレンジアミンジスクシネート)、PDTA(1,3-プロピレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、ADA(ベータ-アラニン二酢酸)、MGCA(メチルグリシン二酢酸)等が含まれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。さらに、ここでのいくつかの実施態様には、ホスホネート類/ホスホン酸キレート剤も含まれる。ある種の実施態様では、製剤はメチオニンを含む。
ここでの製剤はまた処置される特定の兆候に対して、必要ならば一以上のタンパク質、好ましくは他のタンパク質に悪影響を与えない相補的活性を有するものを含みうる。例えば、抗体が抗oxLDL抗体である場合、他の薬剤(例えば、3-ヒドロキシ-3-メチリルグルタリル-コエンザイムA(HMG-CoA)レダクターゼのインヒビター、例えばスタチン)と組合せることができる。抗oxLDL抗体と組合せることのできる分子の例には、限定されるものではないが、例えばアトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、プロバスタチン、ロスバスタチン、シムバスタチン等が含まれる。このようなタンパク質は、適切には、意図する目的に有効な量が組合せられて存在する。典型的には、スタチンは経口投与用に製剤化される。
インビボ投与用に使用される製剤は滅菌されるべきである。これは、製剤の調製の前後に、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成される。
B.製剤の投与
製剤は、既知の方法に従い、例えばボーラスとして又は一定期間以上をかけて連続注入により静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下、関節内、滑膜内、包膜内、経口、局所、又は吸入経路により、抗体を用いた処置を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに投与される。一実施態様では、製剤は静脈内投与により、哺乳動物に投与される。このような目的では、製剤は、例えばシリンジを使用して、又はIVラインを介して注入されうる。一実施態様では、製剤は皮下投与により哺乳動物に投与される。
抗体の適切な用量(「治療的有効量」)は、処置される病状、病状の重篤度及び経過、抗体が予防又は治療目的で投与されるか、以前の治療、患者の臨床病歴及び抗体に対する反応性、使用される抗体のタイプ、及び主治医の裁量に依存するであろう。抗体は、一回で又は一連の処置にわたって、患者に適切に投与され、診断後の任意の時点で患者に投与されうる。抗体は単独処置として、又は当該病状の処置に有用な他の薬剤又は治療法と併用して投与されうる。
一般的な提案として、投与される抗体の治療的有効量は、一回又は複数回投与にかかわらず、患者の体重当たり約0.1〜約50mg/kgの範囲であり、使用される抗体の典型的な範囲は、例えば毎日、又は例えば毎週、又は例えば二ヶ月毎に、約0.3〜約20mg/kg、又は約0.3〜約15mg/kg、又は約0.3〜約25mg/kg、又は約0.3〜約30mg/kgである。しかしながら、他の投与レジメも有用でありうる。この治療法の進行は一般的な技術により、容易にモニターすることができる。
本発明のある種の実施態様では、投与される製剤は抗oxLDL抗体製剤である。動脈壁におけるほとんどのコレステロールの沈着は、LDLに由来する。LDLはヒト血清におけるコレステロールの主要キャリアであり、LDLの酸化はアテローム性粒子への転換における必須段階である。アテローム性動脈硬化の全ての段階で特徴的な炎症プロセスの活性化及び調節は、LDLの酸化形態に対する免疫応答に相関している。アテローム性動脈硬化は急性MI、脳卒中、及び末梢動脈疾患の主原因である。抗oxLDL抗体の場合、アテローム性動脈硬化を処置するために治療的有効量の抗体が投与される。例えば、抗oxLDL抗体は、ハイリスクの患者における心血管イベントの二次予防に、及び/又はアテローム性動脈硬化の致命的危険性を低減するために使用することができる。動脈壁におけるアテローム性付着物に直接起因するこれらの心血管イベントには、限定されるものではないが、急性心筋梗塞(MI)、脳卒中、及び末梢動脈疾患が含まれる。また、抗oxLDL抗体は、さらに他の活性に対しても使用することができる。例えば、抗oxLDL抗体は、プラーク形成を阻害し、動脈硬化病変の進行を防止することが示されており(例えば、Schiopuら, 2004の動物モデル;国際公開第2004/030607号;米国特許第6716410号に記載)、処置の数週間後、大動脈に既存の確立している動脈硬化プラークの退行も積極的に誘導する(例えば国際公開第2007/025781号)。
C.抗体の調製
(i)抗原の調製
場合によっては他の分子にコンジュゲートされていてもよい適切な抗原又はその断片を抗体を製造するための免疫原として使用することができる。レセプターのような膜貫通分子については、これらの断片(例えば、レセプターの細胞外ドメイン)を免疫源として使用することができる。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞も、免疫源として使用することができる。このような細胞は天然源(例えば、癌細胞株)から誘導することができ、又は膜貫通分子を発現するように組換え技術により形質転換された細胞であってもよい。抗体を調製するために有用な他の抗原及びその形態は、当業者には明らかであろう。
(ii)所定の抗体ベース法
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原とアジュバントを複数回皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射することにより動物において産生される。免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、又は大豆トリプシンインヒビターに、関連する抗原を、二官能性又は誘導体形成剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基によるコンジュゲート)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、又はRとRが異なったアルキル基であるRN=C=NRを使用してコンジュゲートさせることが有用でありうる。
動物を、例えばタンパク質又はコンジュゲート100μg又は5μg(それぞれウサギ又はマウスの場合)を完全フロイントアジュバント3容量と併せ、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート、又は誘導体に対して免疫化する。1ヶ月後、該動物に、完全フロイントアジュバントに入れた初回量の1/5ないし1/10のペプチド又はコンジュゲートを用いて複数部位に皮下注射することにより、追加免疫する。数日ないし14日後に動物を採血し、抗体価について血清を検定する。動物に、力価がプラトーに達するまで追加免疫する。好ましくは、動物に、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なったタンパク質にコンジュゲートさせた、及び/又は異なった架橋剤によってコンジュゲートさせたコンジュゲートで追加免疫する。コンジュゲートはまたタンパク融合物として組換え細胞培養中で作製することもできる。また、ミョウバンのような凝集化剤が、免疫反応の増強のために適切に使用される。
本発明のモノクローナル抗体は、Kohlerら, Nature, 256:495 (1975)に記載され、さらには、例えばHongoら, Hybridoma, 14 (3): 253-260 (1995), Harlowら, Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 第2版. 1988);Hammerlingら, :Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981), 及び Ni, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)で、ヒト-ヒトハイブリドーマに関するものに記載されているハイブリドーマ法を使用して、作製することができる。さらなる方法には、例えばハイブリドーマ細胞系からのモノクローナルヒト天然IgM抗体の生産に関する、米国特許第7189826号に記載されているものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers 及び Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005)、及びVollmers 及び Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
様々な他のハイブリドーマ技術については、例えば米国特許第2006/258841号;米国特許第2006/183887号(完全ヒト抗体)、米国特許第2006/059575号;米国特許第2005/287149号;米国特許第2005/100546号;米国特許第2005/026229号;及び米国特許第7078492号及び同7153507号を参照。ハイブリドーマ法を使用してモノクローナル抗体を生産するための例示的なプロトコルは次のように記載される。一実施態様では、マウス又はその他の適当な宿主動物、例えばハムスターを免疫化し、免疫化に用いられるタンパク質と特異的に結合する抗体を生産するか又は生産することのできるリンパ球を導き出す。抗体は、本発明のポリペプチド又はその断片、及びアジュバント、例えばモノホスホリル脂質A(MPL)/トレハロースジクリノマイコラート(dicrynomycolate)(TDM)(Ribi Immunochem. Research, Inc., Hamilton, MT)を、複数の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射により、動物内に生じさせる。本発明のポリペプチド(例えば、抗原)又はその断片は、当該技術でよく知られている方法、例えば組換え方法を使用して調製することができ、そのいくつかがここにさらに記載される。免疫化された動物からの血清を抗抗原抗体について分析し、場合によっては追加免疫を投与する。抗抗原抗体を生成する動物から、リンパ球を単離する。また、リンパ球はインビトロで免疫化することもできる。
次に、リンパ球を、ポリエチレングリコールのような適当な融剤を用いて骨髄腫細胞と融合させ、ハイブリドーマ細胞を形成させる。例えば、Goding, Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press, 1986)を参照。効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベルの生産を支援し、HAT培地のような培地に対して感受性である骨髄腫細胞が使用されうる。例示的な骨髄腫細胞には、限定されないが、マウス骨髄腫系、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューション・センター、サンディエゴ、カリフォルニア、USAから入手し得るMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍、及びアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド、USAから入手し得るSP-2又はX63-Ag8-653細胞から誘導されたものが含まれる。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞系もまたヒトモノクローナル抗体の産生のために記載されている(Kozbor, J.Immunol., 133:3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞を、適切な培養培地、例えば融合していない親の骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する一又は複数の物質を含有する培地に蒔き、増殖させる。例えば、親の骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニジンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠くならば、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的には、HGPRT欠失細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含有するであろう(HAT培地)。好ましくは、無血清ハイブリドーマ細胞培養法も、例えばEvenら, Trends in Biotechnology, 24(3), 105-108 (2006)に記載されているように、動物由来血清、例えばウシ胎児血清の使用を減らすために使用される。
ハイブリドーマ細胞培養の生産性を改善するためのツールとしてのオリゴペプチドは、Franek, Trends in Monoclonal Antibody Research, 111-122 (2005)に記載されている。すなわち、標準的な培養培地は、ある種のアミノ酸(アラニン、セリン、アスパラギン、プロリン)、又はタンパク質加水分解画分に富み、アポトーシスは、3〜6のアミノ酸残基から構成される合成オリゴペプチドにより、有意に抑制されうる。ペプチドはミリモル又はそれ以上の濃度で存在する。
ハイブリドーマ細胞が生育している培養培地を、本発明の抗体に結合するモノクローナル抗体の産生についてアッセイしうる。ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降又はインビトロ結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着検定(ELISA)によって測定することができる。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばスキャッチャード分析法によって測定することができる。例えば、Munsonら, Anal. Biochem., 107:220 (1980)を参照。
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、該クローンを限界希釈法によりサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる。例えば、上掲のGodingを参照。この目的に対して好適な培養培地には、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が包含される。加えて、該ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーのような一般的な免疫グロブリン精製法により、培養培地、腹水、又は血清から適切に分離される。ハイブリドーマ細胞からタンパク質を単離するための一手順は、米国特許出願公開第2005/176122号、及び米国特許第6919436号に記載されている。該方法は、結合過程において最少量の塩、例えば離液性塩を使用し、好ましくは溶出過程において少量の有機溶媒を使用することを含む。
(iii)ある種のライブラリースクリーニング法
本発明の抗体は、所望の活性又は活性群を有する抗体をスクリーニングするためにコンビナトリアルライブラリーを使用して作製することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作製し、所望の結合特性を有する抗体について、このようなライブラリをスクリーニングするための様々な方法が、当該分野で知られている。このような方法は、一般的にHoogenboomら Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brienら編, Human Press, Totowa, NJ, 2001)に記載されている。例えば、関心ある抗体を産生するための一方法は、Leeら, J. Mol. Biol. (2004), 340(5):1073-93に記載されているような、ファージ抗体ライブラリーの使用を介してなされる。
原理的には、合成抗体クローンは、ファージコートクローンに融合した抗体可変領域(Fv)の様々な断片をディスプレイするファージを含むファージライブラリーをスクリーニングすることによって選択される。このようなファージライブラリーは、所望の抗原に対するアフィニティークロマトグラフィーによりパニングされる。所望の抗原に結合可能なFv断片を発現するクローンを抗原に吸着させ、よってライブラリーにおける非結合クローンから分離される。ついで、結合クローンを抗原から溶出させ、抗原の吸着/溶出の付加的なサイクルにより、さらに濃縮されうる。本発明の抗体の何れも適切な抗原スクリーニング手順を設計し、続いて、Kabatら, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版, NIH Publication 91-3242, Bethesda MD (1991), vols. 1-3に記載された、適切な定常領域(Fc)配列と、関心あるファージクローンからのFv配列を使用して、完全長抗体クローンの構築により得ることができる。
ある種の実施態様では、抗体の抗原-結合ドメインは、各々軽鎖(VL)及び重鎖(VH)からのものであり、双方に3つの高頻度可変ループ(HVR)又は相補性決定領域(CDR)を呈する、約110のアミノ酸の2つの可変(V)領域から形成される。可変ドメインは、VH及びVLが短くて可動性のペプチドを介して共有結合している単鎖Fv(scFv)として、又はFab断片として、ファージに機能的に表示可能であり、Winterら, Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994)に記載されているように、それらは、それぞれ定常ドメインに融合し、非共有的に相互作用する。ここで使用される場合、scFvコード化ファージクローン及びFabコード化ファージクローンは、「Fvファージクローン」又は「Fvクローン」と集合的に称される。
VH及びVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別々にクローニングされ、またファージライブラリーにおいてランダムに組換され得、これがついで、Winterら, Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994)に記載されているようにして、抗原-結合クローンについて検索されうる。免疫化源からのライブラリーにより、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対して高親和性抗体が提供される。あるいは、天然レパートリーは、Griffithsら, EMBO J, 12: 725-734 (1993)に記載されているように、何らの免疫化をすることなく、広範囲の非自己及び自己抗原に対するヒト抗体の単一供給源を提供するためにクローニングされうる。最後に、天然レパートリーを、幹細胞からの再配置されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを使用することで合成的に作製することができ、高頻度可変CDR3領域をコードし、Hoogenboom 及び Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992)により記載されているような、インビトロ再配置が達成される。
ある種の実施態様では、糸状ファージは、少量のコートタンパク質pIIIに融合することにより、抗体断片をディスプレイするのに使用される。抗体断片は、例えばMarksら, J. Mol. Biol., 222: 581-597 (1991)に記載されているように、VH及びVLドメインが可動性ポリペプチドスペーサーにより同じポリペプチド鎖に結合している単鎖Fv断片として、又は例えばHoogenboomら, Nucl. Acids Res., 19: 4133-4137 (1991)に記載されているように、一方の鎖がpIIIに融合し、他方が、細菌性宿主細胞ペリプラズムに分泌されるFab断片としてディスプレイされ得、Fabコートタンパク質構造のアセンブリが、野生型コートタンパク質のいくつかをディスプレイすることによってファージ表面にディスプレイされるようになる。
一般的に、抗体遺伝子断片をコードする核酸は、ヒト又は動物から収集された免疫細胞から得られる。抗抗原クローンにバイアスしたライブラリーが所望されるならば、被験者を抗原で免疫化して抗体反応を生じせしめ、ライブラリー構築のために、脾臓細胞及び/又は循環B細胞、他の末梢血リンパ球(PBL)を回収する。一実施態様では、抗抗原クローンにバイアスされたヒト抗体遺伝子断片ライブラリーが、抗原免疫化が抗原に対してB細胞産生ヒト抗体が生じるように、機能的ヒト免疫グロブリン遺伝子アレイを担持する(及び機能的内在性抗体産生系を欠く)トランスジェニックマウスにおいて、抗抗原抗体反応を生じせしめることによって得られる。ヒト抗体産生トランスジェニックマウスの生成を以下に記載する。
抗抗原反応性細胞集団についてのさらなる濃縮は、適切なスクリーニング手順を使用して、例えば抗原アフィニティークロマトグラフィーを使用する細胞分離又は蛍光色素標識抗原への細胞の吸着と、続いての蛍光標示式細胞分取(FACS)によって、抗原特異性膜結合抗体を発現するB細胞を単離することによって、得ることができる。
あるいは、免疫化されていないドナーからの脾臓細胞及び/又はB細胞又は他のPBLを使用することにより、可能な抗体レパートリーのより良好な標示が提供され、抗原が抗原性ではない任意の動物(ヒト又は非ヒト)種を使用する抗体ライブラリーの構築が可能となる。インビトロ抗体遺伝子構築を導入するライブラリーについては、幹細胞を被験者から収集し、再配置されていない抗体遺伝子セグメントをコードする核酸が提供される。関心ある免疫細胞は様々な動物種、例えばヒト、マウス、ラット、ウサギ目、ルプリン(luprine)、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ、及びトリ種等から得ることができる。
抗体可変遺伝子セグメント(VH及びVLセグメントを含む)をコードする核酸を、興味ある細胞から回収して増幅する。再配列したVH及びVL遺伝子ライブラリーの場合、所望されるDNAは、Orlandi等,Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 86: 3833-3837 (1989)に記載されているように、リンパ球からのゲノムDNA又はmRNAを単離し、再配列したVH及びVL遺伝子の5’及び3’末端と一致するプライマーによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことによって得ることが可能であり、これによって発現のための多様なV遺伝子レパートリーを作製することができる。該V遺伝子は、Orlandi等, (1989)及びWard等,Nature, 341: 544-546(1989)に記載のように、成熟Vドメインをコードするエクソンの5’末端のバックプライマーとJセグメントに基づいた順方向プライマーにより、cDNA及びゲノムDNAから増幅することが可能である。しかしながら、cDNAからの増幅のためには、バックプライマーは、また、Jones等,Biotechnol., 9:88-89(1991)に記載のようにリーダーエクソンに、順方向プライマーは、Sastry等,Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 86:5728-5732(1989)に記載のように定常領域内に基づくことが可能である。相補性を最大にするために、Orlandi等(1989)又はSastry等(1989)に記載のように、縮重をプライマーへ取り込むことが可能である。ある実施態様では、例えば、Marks等,J. Mol. Biol., 222: 581-597(1991)の方法に記載のように、又はOrum等,Nucleic Acids Res., 21: 4491-4498(1993)の方法に記載のように、免疫細胞の核酸試料に存在する全ての入手可能なVH及びVL配置を増幅するために、各V遺伝子ファミリーを標的にしたPCRプライマーを用いて、そのライブラリーの多様性を最大にする。発現ベクターへの増幅DNAのクローニングに関しては、希な制限部位を、Orlandi等(1989)に記載のようにPCRプライマー内の一端へタグとして、又はClackson等,Nature, 352: 624-628(1991)に記載のようにタグプライマーを用いた更なるPCR増幅によって、導入することができる。
合成的に再配列したV遺伝子のレパートリーは、V遺伝子セグメントからインビトロで誘導することができる。殆どのヒトVH遺伝子セグメントはクローニングされ、配列決定され(Tomlinsonら, J. Mol. Biol. 227: 776-798(1992)に報告されている)、マッピングがされている(Matsudaら,Nature Genet., 3: 88-94(1993));これらのクローニングされたセグメント(H1及びH2ループの全ての主要なコンホメーションを含む)は、Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol. 227: 381-388(1992)に記載のように、多様な配列と長さのH3ループをコードするPCRプライマーによる多様なVH遺伝子レパートリーを作製するのに用いられる。VHレパートリーは、また、Barbasら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4457-4461(1992)に記載されているように、単一の長さの長いH3ループに焦点を合わせた全ての配列多様性を伴って作製することができる。ヒトVκ及びVλセグメントはクローニング及び配列決定がなされており(Williams及びWinter, Eur. J. Immunol., 23: 1456-1461(1993)に報告)、合成軽鎖レパートリーを作製するのに使用することができる。VH及びVLフォールドの範囲及びL3及びH3の長さに基づく合成的V遺伝子レパートリーは、かなりの構造的多様性を有する抗体をコードするであろう。DNAをコードするV遺伝子の増幅に続いて、生殖系のV遺伝子セグメントを、Hoogenboom及びWinter, J. Mol. Biol. 227: 381-388(1992)の方法に従ってインビトロで再配列することができる。
抗体断片のレパートリーは、幾つかの方法でVH及びVL遺伝子レパートリーを一緒に組み合わせることによって構築することができる。各レパートリーを異なるベクターで作製し、そのベクターを、例えばHogrefe等, Gene, 128: 119-126(1993)に記載のようにインビトロで、又はコンビナトリアル・インフェクション、例えばWaterhouse等, Nucl. Acids Res., 21: 2265-2266(1993)に記載のloxP系によってインビボで作製することが可能である。このインビボの組換え手法では、大腸菌の形質転換効率によって強いられるライブラリーの大きさの限界を克服するために、二本鎖種のFab断片が利用される。ナイーブVH及びVLレパートリーは、一方はファージミドへ、他方はファージベクターへと別々にクローニングされる。この2つのライブラリーは、その後、各細胞が異なる組み合わせを有し、そのライブラリーの大きさが、存在する細胞の数(約1012クローン)によってのみ限定されるように、ファージミド含有細菌のファージ感染によって組合わせられる。双方のベクターは、VH及びVL遺伝子が単一のレプリコンへ組換えられ、ファージビリオンへ共にパッケージされるように、インビボの組換えシグナルを有する。これら巨大なライブラリーは、良好な親和性(約10−8MのKd−1)の多くの多様な抗体を提供する。
別法として、該レパートリーは、例えばBarbasら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 7978-7982(1991)に記載のように同じベクターへ連続してクローニングし、又はClaksonら, Nature, 352: 624-628(1991)に記載のようにPCRによってアセンブリした後にクローニングすることができる。PCRアセンブリは、また、可動ペプチドスペーサーをコードしているDNAとVH及びVL DNAを連結させて、単鎖のFv(scFv)レパートリーを形成することに使用することができる。さらに他の技術では、「細胞内PCRアセンブリ」が、Embletonら, Nucl. Acids Res., 20: 3831-3837(1992)に記載のように、PCRによってリンパ球内のVH及びVL遺伝子を組み合わせて、その後、連結した遺伝子のレパートリーをクローニングするのに使用される。
ナイーブライブラリー(天然又は合成のいずれか)によって産生された抗体は中程度の親和性(約10〜10−1のK −1)である可能性があるが、上掲のWinterら(1994)に記載のように二次ライブラリーから構築して再選択することによって、親和性成熟をもインビトロで模倣することが可能である。例えば、Hawkinsら, J. Mol. Biol. 226: 889-896(1992)の方法、又はGramら, Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89: 3576-3580(1992)の方法においてエラー・プローンポリメラーゼ(Leungら, Technique, 1:11-15(1989)で報告されている)を利用することによって、突然変異をインビトロでランダムに導入することができる。さらには、一又は複数のCDRをランダムに変異させることによって、例えば、選択した個々のFvクローンにおいて、対象のCDRまで及ぶランダム配列を有するプライマーによるPCRを利用して、より高い親和性クローンをスクリーニングすることで親和性成熟を行うことが可能である。国際公開第9607754号(1996年3月14日に公開)は、免疫グロブリン軽鎖の相補性決定領域へ突然変異生成を誘導して軽鎖遺伝子のライブラリーを作製する方法を記載している。その他の有効な手法は、Marksら, Biotechnol. 10: 779-783(1992)に記載のように、非免疫化ドナーから得られた天然に生じるVドメイン変異体のレパートリーによるファージディスプレイによって選択されたVH又はVLドメインを組換えること、及び数回のチェーン・リシャッフリングにおいてより高い親和性についてスクリーニングすることである。この技術は、約10−9M又はそれ未満の親和性の抗体及び抗体断片の産生を可能にする。
ライブラリーのスクリーニングは当該分野で知られている様々な技術によって達成することができる。例えば、抗原を使用して吸着プレートのウェルをコーティングし、吸着プレートへ付着させた宿主細胞上で発現させるか又はセルソーティングで利用し、又はストレプトアビジンでコーティングしたビーズでの捕獲のためにビオチンにコンジュゲートさせ、又はファージディスプレイライブラリーをパニングするための任意の他の当該分野の方法において使用することが可能である。
ファージ粒子の少なくとも一部分を吸着剤に結合させるのに適した条件下で、ファージライブラリーの試料を固定化抗原と接触させる。通常は、pH、イオン強度、温度等を含む条件を選択して、生理学的条件を模倣する。固相と結合したファージを洗浄し、その後、例えばBarbasら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88: 7978-7982(1991)に記載されているように、酸で、又は例えばMarksら, J. Mol. Biol. 222: 581-597(1991)に記載にされているように、アルカリで、又は例えばClacksonら, Nature, 352: 624-628(1991)の抗原競合法に類似の手法である抗原競合によって溶出させる。ファージは、一回の選択で20〜1000倍に濃縮することが可能である。さらに、この濃縮されたファージを細菌培養液で増殖させ、さらなる回の選択に供することが可能である。
選択の効率は、洗浄の間の解離の動態、及び単一のファージ上の複数の抗体断片が同時に抗原と関われるかどうかを含む多くの要因に依存する。速い解離動態(及び弱い結合親和性)を有する抗体は、短い洗浄、多価ファージディスプレイ及び固相の抗原の高いコーティング密度の使用によって保持することが可能である。高い密度は、多価相互作用を介してファージを安定化するだけでなく、解離したファージの再結合に有利に作用する。遅い解離動態(及び良好な結合親和性)を有する抗体の選択は、Bassら, Proteins, 8: 309-314(1990)及び国際公開第92/09690号に記載されているような長い洗浄と一価ファージディスプレイの利用、及びMarksら, Biotechnol., 10: 779-783(1992)に記載されているような抗原の低コーティング密度によって促進することが可能である。
親和性に僅かな違いがあったとしても、抗原に対する異なる親和性のファージ抗体の中で選択することは可能である。しかしながら、選択した抗体のランダム変異(例えば、幾つかの親和性成熟の技術で行われているような)は、多くの変異体を生じやすく、その殆どが抗原と結合し、僅かがより高い親和性である。抗原を限定すると、希な高い親和性のファージが競合して除かれることが可能である。全てのより高い親和性の変異体を保持するため、ファージを、過剰のビオチン化抗原とインキュベートすることが可能であるが、抗原の標的モル濃度親和定数よりも低いモル濃度のビオチン化抗原と共にインキュベーションできる。ついで、高親和性結合ファージをストレプトアビジンでコーティングした常磁性体ビーズによって捕獲することが可能である。そのような「平衡捕獲」は、結合の親和性に従い、親和性の低い大過剰のファージから、僅かに2倍高い親和性の変異体クローンの単離を可能にする感度で抗体を選択することを可能にする。固相と結合したファージを洗浄するのに用いる条件を操作して、解離定数に基づいて識別することも可能である。
抗抗原クローンは活性に基づいて選択されうる。ある種の実施態様では、本発明は、抗原を自然に発現する生存細胞に結合するか、又は遊離の浮遊抗原又は他の細胞構造に付着している抗原に結合している抗抗原抗体を提供する。このような抗抗原抗体に対応するFvクローンは、(1)上述したようなファージライブラリーから抗抗原クローンを単離し、場合によっては、適切な細菌宿主中で集団を増殖させることにより、ファージクローンの単離された集団を増幅し;(2)ブロック活性及び非ブロック活性がそれぞれ望まれる抗原及び第二タンパク質を選択し;(3)固定された抗原に抗抗原ファージクローンを吸着させ;(4)過剰の第二タンパク質を使用し、第二タンパク質の結合決定基とオーバラップするか又は共有される抗原結合決定基を認識する任意の望ましくないクローンを溶出させ;(5)工程(4)の後に吸着されたまま残ったクローンを溶出することにより選別することができる。場合によっては、所望のブロック及び/又は非ブロック特性を有するクローンを、ここに記載の選別手順を、一又は複数回繰り返すことによって、さらに濃縮することができる。
本発明のファージディスプレイFvクローン又はハイブリドーマ誘導モノクローナル抗体をコードするDNAは、常法を用いて(例えば、ハイブリドーマの対象の領域をコードする重鎖及び軽鎖又はファージDNA鋳型を特異的に増幅するように設計したオリゴヌクレオチドプライマーを用いることにより)即座に分離されて、配列決定される。ひとたび分離されたならば、DNAを発現ベクター中に入れ、ついでこれを、この状況以外では抗体タンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞のような宿主細胞中に形質移入し、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を達成することができる。抗体をコードするDNAの細菌での組換え発現に関する概説論文には、Skerraら, Curr. Opinion in Immunol., 5:256-262(1993)及びPluckthun, Immunol. Revs. 130: 151-188(1992)が含まれる。
本発明のFvクローンをコードするDNAは、重鎖及び/又は軽鎖定常領域をコードする既知のDNA配列(例えば好適なDNA配列は上掲のカバット等から得ることができる)と組み合わせて、完全長ないし部分長の重鎖及び/又は軽鎖をコードするクローンを形成できる。このために、何れかのアイソタイプの定常領域、例えばIgG、IgM、IgA、IgD及びIgE定常領域を用いることができ、このような定常領域は任意のヒト又は動物種から得ることができることが理解されるであろう。ある動物(例えばヒト)種の可変ドメインDNAから得て、ついで「ハイブリッド」である完全長重鎖及び/又は軽鎖のコード配列を形成するために他の動物種の定常領域DNAに融合したFvクローンは、ここで用いられる「キメラ」及び「ハイブリッド」抗体の定義に含まれる。ある実施態様では、ヒト可変DNAから得たFvクローンをヒト定常領域DNAに融合して、完全長又は部分長のヒト重鎖及び/又は軽鎖のコード配列を形成する。
また、本発明のハイブリドーマ由来の抗抗原抗体をコードするDNAは、例えば、ハイブリドーマクローン由来の相同的マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード化配列を置換すること(例えばMorrisonら, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 81:6851(1984)の方法)によって修飾することができる。ハイブリドーマ又はFvクローン由来の抗体又は断片をコードするDNAは、免疫グロブリンコード化配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード化配列の全て又は一部を共有結合させることによってさらに修飾することができる。このようにして、本発明のFvクローン又はハイブリドーマクローン由来の抗体の結合特異性を有する「キメラ」又は「ハイブリッド」抗体が調製される。
(iv)ヒト化及びヒト抗体
非ヒト抗体をヒト化するための様々な方法が、当該分野で知られている。例えば、ヒト化抗体は非ヒトである供給源からその中に導入される一又は複数のアミノ酸残基を有している。これら非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は、ヒト抗体の該当する配列を齧歯類CDRs又はCDR配列で置換することにより、Winter及び共同研究者(Jonesら Nature, 321:522-525(1986);Riechmannら Nature, 332:323-327(1988);Verhoeyenら Science, 239:1534-1536(1988))の方法に従って本質的に実施できる。従って、このような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に少ない分が非ヒト種由来の対応する配列で置換されたキメラ抗体(米国特許第4816567号)である。実際には、ヒト化抗体は典型的には幾つかのCDR残基及び場合によっては幾つかのFR残基が齧歯類抗体の類似する部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
ヒト化抗体を作るのに使用されるヒト可変ドメインの選択は、軽鎖でも重鎖でも、抗原性を低減させるために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット(best-fit)」法によれば、齧歯類抗体の可変ドメインの配列は、既知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーからスクリーニングされる。齧歯類の配列に最も近いヒト配列は、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として受容される(Simsら J. Immunol., 151:2296 (1993) ;Chothiaら J. Mol. Biol. 196:901 (1987))。別の方法は、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループの全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来した特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、幾つかの異なるヒト化抗体のために使用することができる(Carterら Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Prestaら J.Immunol, 151:2623を (1993))。
抗体は抗原への高親和性及び他の好ましい生物学的性質を保持したままヒト化されることがさらに重要である。この目標を達成するために、本方法の一実施態様では、ヒト化抗体は、親及びヒト化配列の三次元モデルを用いて、親配列及び様々な概念的ヒト化産物の分析プロセスによって調製される。三次元の免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能で、当業者にはなじみが深い。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元立体構造を例証し表示するコンピュータプログラムを利用することができる。これらの表示の検査により、候補免疫グロブリン配列の機能中で残基の可能な役割の分析、つまり、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、標的抗原に対する親和性の増大のような、所望の抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選び、組み合わせることができる。一般に、高頻度可変領域残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接的かつ最も実質的に関与している。
本発明のヒト抗体は、上述したような、既知のヒト定常ドメイン配列(群)と、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列(群)とを組合せることにより構成することができる。また、本発明のヒトモノクローナル抗体はハイブリドーマ法によっても作製することができる。ヒトモノクローナル抗体を生産するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞系は、例えばKozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);及び Boernerら, J. Immunol., 147: 86 (1991)により記載されている。
内因性の免疫グロブリン産生がなくともヒト抗体の全レパートリーを免疫化することで産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作ることが可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異体マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子の同型接合除去が内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列突然変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の転移は、抗原投与時にヒト抗体の産生をもたらす。例えば、Jakobovitsら, Proc. Natl. Acad.Sci.USA, 90:2551 (1993);Jakobovitsら, Nature 362:255-258 (1993);Bruggermanら, Year in Immuno., 7:33 (1993);及びDuchosalら Nature 355:258 (1992)を参照。
また、非ヒト、例えば齧歯類抗体から、ヒト抗体を誘導するために、遺伝子シャフリングを使用することもでき、ここでヒト抗体は、出発する非ヒト抗体に類似した親和性及び特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも称されるこの方法に従えば、ここに記載したようなファージディスプレイ技術により得られた非ヒト抗体断片の重又は軽鎖可変領域のいずれかがヒトVドメイン遺伝子のレパートリーと置き換えられ、非ヒト鎖/ヒト鎖scFv又はFabキメラの個体群を生じる。抗原を用いた選択は、非ヒト鎖/ヒト鎖キメラscFv又はFabの単離を生じ、ここで、ヒト鎖は、初代ファージディスプレイクローンにおける、対応の非ヒト鎖の除去時に破壊される抗原結合部位を回復させる、すなわち、エピトープはヒト鎖パートナーの選択を支配(インプリント)する。残った非ヒト鎖を置き換えるために、プロセスが繰り返されると、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日に公開された国際公開第93/06213号を参照)。CDRグラフトによる非ヒト抗体の伝統的なヒト化とは異なり、この技術により、非ヒト由来のFR又はCDR残基を有さない完全なヒト抗体が得られる。
(v)抗体断片
抗体断片は伝統的な手段、例えば酵素消化、又は組換え技術により産生可能である。ある状況では、全抗体よりも抗体断片を使用する方が有利な場合もある。より小さいサイズの断片は、急速なクリアランスが可能であり、固形腫瘍への改善されたアクセスに至る可能性がある。ある種の抗体断片の概説については、Hudsonら (2003) Nat. Med. 9:129-134を参照。
抗体断片を生産するための様々な技術が開発されている。伝統的には、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク分解性消化を介して誘導されていた(例えば、Morimotoら, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992);及びBrennanら, Science, 229:81 (1985)を参照)。しかし、これらの断片は現在は組換え宿主細胞により直接生産することができる。Fab、Fv及びScFv抗体断片は、全て大腸菌において発現せしめられ、分泌せしめられ得、よって多量のこれらの断片を容易に生産することが可能である。抗体断片は上で検討した抗体ファージライブラリーから単離することができる。別法として、Fab'-SH断片は大腸菌から直接回収することができ、化学的にカップリングさせてF(ab')2断片を形成することができる(Carter等, Bio/Technology 10:163-167(1992))。他のアプローチ法では、F(ab')断片を組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。サルベージレセプター結合エピトープ残基を含むインビボ半減期が増加したFab及びF(ab')断片は、米国特許第5869046号に記載されている。抗体断片の生産のための他の技術は当業者には明らかであろう。ある種の実施態様では、抗体は単鎖Fv断片(scFV)である。国際公開第93/16185号;米国特許第5571894号;及び米国特許第5587458号を参照。Fv及びscFvは、定常ドメインを欠く、インタクトな結合部位を有する唯一の種である;よって、それらはインビボ使用での間の、非特異的結合を低減させるのに適している。scFv融合タンパク質は、scFvのアミノ又はカルボキシ末端のいずれかにエフェクタータンパク質の融合を生じるように構築することができる。上掲のAntibody Engineering, Borrebaeck編を参照。また、抗体断片は、例えば米国特許第5641870号に記載されているような「線形抗体」であってもよい。このような線形抗体は単一特異性又は二重特異性でありうる。
(vi)多重特異性抗体
多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有し、ここでエピトープは、通常異なる抗原からのものである。そのような分子は通常2つの異なるエピトープに結合するだけであるが(つまり二重特異性抗体、BsAbs)、ここで使用される場合、三重特異性抗体のような更なる特異性を備えた抗体もこの表現に包含される。二重特異性抗体は完全長抗体又は抗体断片(例えばF(ab')二重特異性抗体)として調製することができる。
二重特異性抗体を作製する方法は当該分野において知られている。伝統的には、完全長二重特異性抗体の生産は、二つの鎖が異なる特異性を持つ二つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の同時発現に基づく(Milsteinら, Nature, 305:537-539(1983))。免疫グロブリンの重鎖と軽鎖を無作為に取り揃えるため、これらハイブリドーマ(クアドローマ)は10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生成し、その内一種のみが正しい二重特異性構造を有する。正しい分子の精製は、アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常なされるが、むしろ煩雑で、産生物収率は低い。同様の手順が国際公開第93/08829号、及びTrauneckerら, EMBO J.,10:3655 (1991)に開示されている。
異なるアプローチに従えば、所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合できる。融合は、例えばヒンジ部、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。少なくとも一の融合には軽鎖結合に必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CH1)が存在するのが典型的である。免疫グロブリン重鎖融合をコードするDNA、及び望むのであれば免疫グロブリン軽鎖を、別々の発現ベクターに挿入し、適当な宿主生物に同時形質移入する。これにより、構築に使用される3つのポリペプチド鎖の不均一な比率が、最適収率をもたらす場合の実施態様では、3つのポリペプチド断片の相互割合の調節に、かなりの順応性が提供される。しかしながら、均一な比率で少なくとも2のポリペプチド鎖の発現が高収率でなされる場合、又は比率が特に重要でない場合は、一つの発現ベクターに、2つ又は3つ全てのポリペプチド鎖のコード化配列を挿入することができる。
このアプローチ法の一実施態様では、二重特異性抗体は、一方のアームの第一の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームのハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分にしか免疫グロブリン軽鎖がないと容易な分離法が提供されるため、この非対称的構造は、所望の二重特異性化合物を不要な免疫グロブリン鎖の組み合わせから分離することを容易にすることが分かった。このアプローチ法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を産生するさらなる詳細については、例えばSureshら, Methods in Enzymology, 121:210 (1986)を参照。
国際公開第96/27011号に記載された他のアプローチ法によれば、一対の抗体分子間の界面を操作して、組換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体のパーセントを最大にすることができる。界面は抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の界面からの一又は複数の小さいアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。大きな側鎖と同じ又は類似のサイズの相補的「キャビティ」を、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第2の抗体分子の界面に作り出す。これにより、ホモ二量体のような不要の他の最終産物以上に、ヘテロ二量体の収量を増大させるメカニズムが提供される。
二重特異性抗体は、架橋した又は「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの抗体の一方はアビジンにカップリングし、他方はビオチンにカップリングする。そのような抗体は、例えば、不要の細胞に対する免疫系細胞をターゲティングするために(米国特許第4676980号)、またHIV感染の治療のために提案されている(国際公開1991/00360号、国際公開第1992/00373号、及び欧州特許出願公開第03089号)。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋法を用いて作製することができる。好適な架橋剤は当該分野においてよく知られており、多くの架橋技術と共に米国特許第4676980号に開示されている。
抗体断片から二重特異性抗体を産生する技術もまた文献に記載されている。例えば、化学結合を使用して二重特異性抗体を調製することができる。Brennanら, Science,229:81 (1985) はインタクトな抗体をタンパク分解性に切断してF(ab')断片を産生する手順を記述している。これらの断片は、ジチオール錯体形成剤亜砒酸ナトリウムの存在下で還元して近接ジチオールを安定化させ、分子間ジスルヒド形成を防止する。産生されたFab'断片はついでチオニトロベンゾアート(TNB)誘導体に転換される。Fab'-TNB誘導体の一つをついでメルカプトエチルアミンでの還元によりFab'-チオールに再転換し、他のFab'-TNB誘導体の等モル量と混合して二重特異性抗体を形成する。生産された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用することができる。
最近の進歩により、化学的にカップリングさせて二重特異性抗体を形成することができるFab'-SH断片を大腸菌から直接回収することが容易になった。Shalabyら, J. Exp. Med., 175:217-225 (1992)は完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab')分子の生産を記述している。各Fab'断片は大腸菌から別個に分泌され、インビトロで定方向化学カップリングを受けて二重特異性抗体を形成する。
組換え細胞培養から直接的に二重特異性抗体断片を作成し分離する様々な技術もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体はロイシンジッパーを使用して生成されている。Kostelnyら, J.Immunol. 148(5):1547-1553 (1992)。Fos及びJunタンパク質からのロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合により二つの異なった抗体のFab'部分に結合させる。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元してモノマーを形成し、ついで再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成する。この方法はまた抗体ホモ二量体の生成に対して使用することができる。Hollingerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)により記述された「ダイアボディ」技術は二重特異性抗体断片を作成する別のメカニズムを提供する。断片は、あまりに短くて同一鎖上の2つのドメイン間の対形成できないリンカーにより、軽鎖可変ドメイン(V)に重鎖可変ドメイン(V)を結合してなる。従って、一つの断片のV及びVドメインは他の断片の相補的VL及びVHドメインと強制的に対形成させられ、よって2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性抗体断片を製造する他の方策もまた報告されている。Gruberら, J.Immunol. 152:5368 (1994)を参照。
二価より多い抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tuftら J.Immunol. 147:60(1991)。
(vii)単一ドメイン抗体
いくつかの実施態様では、本発明の抗体は単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部、もしくは軽鎖可変ドメインの全て又は一部を含む、単一のポリペプチド鎖である。ある実施態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6248516B1号を参照)。一実施態様では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部からなる。
(viii)抗体変異体
いくつかの実施態様では、ここに記載された抗体のアミノ酸配列の修飾が考慮される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は生物学的特性を改善することが望ましい。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチドに適切な変化を導入して、又はペプチド合成により調製することができる。そのような修飾は、抗体のアミノ酸配列内の残基の、例えば、欠失型、及び/又は挿入及び/又は置換を含む。最終構成物が所望する特徴を有していれば、欠失、挿入及び置換をどのように組合せてもよい。アミノ酸変化は、配列が作製されるときに、対象となる抗体アミノ酸配列に導入することができる。
(ix)抗体誘導体
本発明の抗体は、当該分野で知られ、直ぐに利用できる付加的な非タンパク質部分を含むようにさらに修飾することができる。ある種の実施態様では、抗体の誘導体化に適切な部分は水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的例には、限定されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸のコポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマー)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリルプロピレンオキシド/エチレンオキシドのコポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール類(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が含まれる。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中におけるその安定性のために、製造においては有利でありうる。ポリマーは任意の分子量であってよく、分枝状又は非分枝状でありうる。抗体に結合するポリマーの数は変化し得、1を越えるポリマーが結合されるならば、それらは同じ又は異なる分子でありうる。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、限定されるものではないが、抗体誘導体が定められた条件下で治療に使用されるかどうか等に関わらず、改善される抗体の特定の特性又は機能を含む考慮に基づき、決定することができる。
(x)ベクター、宿主細胞、及び組換え方法
抗体は、組換え方法を使用して産生することもできる。抗抗原抗体の組換え生産では、抗体をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター内に挿入される。抗体をコードするDNAは容易に単離され、一般的な手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、配列決定される。多くのベクターが利用可能である。ベクター成分としては、一般に、限定されるものではないが、次のものの一又は複数が含まれる:シグナル配列、複製開始点、一又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。
シグナル配列成分
本発明の抗体は、直接的に組換え的に生産されるだけではなく、好ましくはシグナル配列あるいは成熟タンパク質あるいはポリペプチドのN末端に特異的な切断部位を有する他のポリペプチドである異種性ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても生産されうる。選択された異種シグナル配列は、好ましくは宿主細胞により認識され、プロセシング(すなわち、シグナルペプチターゼによる切断)されるものである。天然抗体シグナル配列を認識せず、プロセシングしない原核生物宿主細胞では、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lppあるいは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核生物シグナル配列により置き換えられる。酵母菌の分泌では、天然シグナル配列は、例えば酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダー(酵母菌属(Saccharomyces)及びクルイベロマイシス(Kluyveromyces)α因子リーダーを含む)、又は酸ホスフォターゼリーダー、白体(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー、又は国際公開第90/13646号に記載されているシグナルにより置き換えられうる。哺乳動物細胞の発現では、哺乳動物シグナル配列並びにウイルス分泌リーダー、例えば単純ヘルペスgDシグナルが利用可能である。
(b)複製開始点
発現及びクローニングベクターは双方とも一又は複数の選択された宿主細胞においてベクターの複製を可能にする核酸配列を含む。一般的に、クローニングベクター中において、この配列は、染色体DNAとは独立してベクターの複製を可能にするものであり、複製開始点又は自己複製配列を含む。そのような配列は、様々な細菌、酵母菌及びウイルスに対してよく知られている。プラスミドpBR322からの複製開始点は大部分のグラム陰性細菌に適しており、2μプラスミド開始点は酵母に適しており、様々なウイルス開始点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般的に、複製開始点の成分は哺乳動物発現ベクターに必要ではない(SV40開始点は、それが初期プロモーターを含むためだけから、典型的に使用されうる)。
(c)選択遺伝子成分
発現及びクローニングベクターは、選択可能なマーカーとも称される選択遺伝子を含みうる。典型的な選択遺伝子は、(a)アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートあるいはテトラサイクリンのような抗生物質あるいは他の毒素に耐性を与え、(b)栄養要求性欠陥を補い、又は(c)例えばバシリに対する遺伝子コードD-アラニンラセマーゼのような、複合培地から得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
選択スキームの一例では、宿主細胞の増殖を停止させる薬剤を利用する。異種遺伝子を用いて成功裏に形質転換されたそれらの細胞は、薬剤耐性が付与されたタンパク質を生成し、よって、選択レジメを生存する。このような優性選択の例では、薬剤ネオマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンが使用される。
哺乳動物細胞に適切な選択可能なマーカーの他の例は、DHFR、グルタミンシンセターゼ(GS)、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン-I及び-II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼ等、抗体をコードする核酸を取り込む細胞成分を同定することのできるものである。
例えば、DHFR遺伝子を用いて形質転換された細胞は、メトトレキサート(Mtx)、DHFRの競合アンタゴニストを含む培養培地において、形質転換体を培養することにより同定される。これらの条件下、DHFR遺伝子は、任意の他の同時形質転換された核酸と共に増幅される。内在性DHFR活性に欠けるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(例えば、ATCC CRL-9096)を使用することができる。
あるいは、GS遺伝子で形質転換された細胞は、GSのインヒビターのL-メチオニンスルホキシイミン(Msx)を含む培養培地中で形質転換体を培養することにより同定される。これらの条件下、GS遺伝子は、任意の他の同時形質転換された核酸と共に増幅される。GS選択/増幅系は、上述したDHFR選択/増幅系と組合せて使用することができる。
あるいは、関心ある抗体をコードするDNA配列、野生型DHFR遺伝子、及び他の選択可能なマーカー、例えばアミノグリコシド 3'-ホスホトランスフェラーゼ(APH)で形質転換した又は同時形質転換した宿主細胞(特に、内在性DHFRを含む野生型宿主)を、例えばアミノグリコシド抗生物質、特にカナマイシン、ネオマイシン、又はG418等、選択可能なマーカーに対する選択剤を含む培地において細胞増殖させることによって選択することができる。米国特許第4965199号を参照。
酵母での使用に適した選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcombら, Nature, 282:39(1979))。trp1遺伝子は、例えば、ATCC番号44076あるいはPEP4-1のようなトリプトファン内で成長する能力を欠く酵母菌の突然変異株に対する選択マーカーを提供する。Jones, Genetics, 85:12 (1977)。ついで、酵母宿主細胞ゲノムにおけるtrp1破壊の存在により、トリプトファンの不在下での増殖による、形質転換の検出に効果的な環境が提供される。同様に、Leu2-欠失酵母菌株(ATCC 20622又は38626)は、Leu2遺伝子を担持する既知のプラスミドによって補完される。
さらに、1.6μmの環状プラスミドpKD1から誘導されたベクターは、クルイベロマイシス酵母の形質転換に使用することができる。あるいは、組換え仔ウシキモシンの大規模産生用の発現系は、クルイベロマイシス・ラクチスについて報告されている。Van den Berg, Bio/Technology, 8:135 (1990)。クルイベロマイシスの工業用菌株による成熟した組換えヒト血清アルブミンの分泌のための安定したマルチコピー発現ベクターもまた開示されている。Fleerら, Bio/Technology, 9:968-975 (1991)。
(d)プロモーター成分
発現及びクローニングベクターは、一般的に、宿主生物によって認識され、抗体をコードする核酸に作用可能に結合したプロモーターを含む。原核生物宿主での使用に好適なプロモーターには、phoAプロモーター、β-ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼプロモーター、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーターが含まれる。しかしながら、他の既知の細菌プロモーターも適している。細菌系で使用するプロモータもまた抗体をコードするDNAと作用可能に結合したシャイン-ダルガーノ(S.D.)配列を含むであろう。
真核生物についてもプロモーター配列が知られている。事実上、全ての真核生物遺伝子は、転写が開始される部位から約25から30塩基対上流に位置してAT-リッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から、70から80塩基対上流に見出される他の配列はCNCAAT領域であり、ここでNは任意のヌクレオチドとすることができる。多くの真核生物遺伝子の3'末端には、コード化配列の3'末端への、ポリA末尾の付加のためのシグナルであってよいAATAAA配列である。これら全ての配列は、真核生物発現ベクター中に適切に挿入される。
酵母宿主と共に用いて好適なプロモーター配列の例には、3-ホスホグリセラートキナーゼ、又は他の糖分解酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオセリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼが含まれる。
他の酵母プロモーターとしては、増殖条件によって転写が制御される付加的効果を有する誘導性プロモーターであり、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソチトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解性酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びマルトース及びガラクトースを利用する酵素のプロモーター領域がある。酵母菌での発現に用いられる適切なベクターとプロモータは欧州特許出願公開第73657号にさらに記載されている。また、酵母エンハンサーは、酵母プロモーターと共に有利に使用される。
哺乳動物の宿主細胞におけるベクターからの抗体転写は、例えば、ポリオーマウィルス、伝染性上皮腫ウィルス、アデノウィルス(例えばアデノウィルス2)、ウシ乳頭腫ウィルス、トリ肉腫ウィルス、サイトメガロウィルス、レトロウィルス、B型肝炎ウィルス、サルウィルス40(SV40)のようなウィルスのゲノム、又は異種性哺乳動物プロモーター、例えばアクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター、及び熱衝撃プロモーターから得られるプロモーターによって、このようなプロモーターが宿主細胞株に適合し得る限り制御されうる。
SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、SV40ウイルスの複製開始点をさらに含むSV40制限断片として、簡便に得られる。ヒトサイトメガロウィルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に得られる。ベクターとしてウシ乳頭腫ウィルスを使用する哺乳動物宿主においてDNAを発現する系は、米国特許第4419446号に開示されている。この系の修飾は米国特許第4601978号に記載されている。また、単純ヘルペスからのチミジンキナーゼプロモーターのコントロール下での、マウス細胞におけるヒトβ-インターフェロンcDNAの発現については、Reyesら, Nature 297:598-601 (1982)を参照。また、プロモーターとして、ラウス肉腫ウイルスの長い末端リピートを使用することもできる。
(e)エンハンサーエレメント成分
より高等な真核生物によるこの発明の抗体をコードするDNAの転写は、しばしば、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによって増強される。哺乳動物遺伝子由来の多くのエンハンサー配列が現在知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェトプロテイン及びインスリン)。しかしながら、典型的には、真核細胞ウィルス由来のエンハンサーが用いられるであろう。例としては、複製開始点の後期側のSV40エンハンサー(100−270塩基対)、サイトメガロウィルス初期プロモーターエンハンサー、複製開始点の後期側のポリオーマエンハンサー及びアデノウィルスエンハンサーが含まれる。真核生物プロモーターの活性化のためのエレメントの増強については、Yaniv, Nature 297:17-18 (1982)を参照。エンハンサーは、抗体をコードする配列の5'又は3'位でベクター中にスプライシングされ得るが、好ましくはプロモーターから5'位に位置している。
(f)転写終結成分
また真核生物宿主細胞(酵母菌、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、又は他の多細胞生物由来の有核細胞)に用いられる発現ベクターは、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は、真核生物又はウィルスのDNA又はcDNAの通常は5'、時には3'の非翻訳領域から取得できる。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分にポリアデニル化断片として転写されるヌクレオチドセグメントを含む。他の有用な転写終結成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。国際公開第94/11026号及びそこに開示された発現ベクターを参照。
(g)宿主細胞の選択及び形質転換
ここのベクターにDNAをクローニングあるいは発現するために適切な宿主細胞は、上述した原核生物、酵母菌、又は高等真核生物細胞である。この目的にとって適切な原核生物は、真正細菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物、特に大腸菌類、例えば大腸菌、エンテロバクター、エルウィニア、クレブシエラ、プロテウス(Proteus)、サルモネラ、例えばネズミチフス菌、セラチア、例えば、セラチア・マルセサンス(Serratia marcescans) 、及び赤痢菌、並びに桿菌、例えばバシリ・スブチリス(B. subtilis)及びバシリ・リチェニフォルミス(B. licheniformis)(例えば、1989年4月12日公開のDD266710に記載されたバシリリチェニフォルミス41P)、シュードモナス、例えば緑膿菌及びストレプトマイセスなどの腸内細菌科を含む。好ましい大腸菌クローニング宿主は大腸菌294(ATCC 31446)であるが、他の菌株、例えば大腸菌B、大腸菌X1776(ATCC 31537)、及び大腸菌株W3110(ATCC 27325)も適している。これらの例は限定というよりは、例示的なものである。
完全長抗体、抗体融合タンパク質、及び抗体断片は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要でない場合、例えば治療用抗体が、腫瘍細胞破壊において、それ自体で有効性を示すことにより、細胞傷害剤(例えば毒素)にコンジュゲートする場合、細菌内で産生させることができる。全長抗体は、より長い循環半減期を有する。大腸菌では、より速く、より費用効果のよく産生される。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば最適な発現及び分泌についての翻訳開始領域(TIR)及びシグナル配列を記載した、米国特許第5648237号 (Carterら)、米国特許第5789199号 (Jolyら)、米国特許第5840523号 (Simmonsら)を参照。また、大腸菌における抗体断片の発現を記載した、Charlton, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo編, Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp. 245-254も参照。発現後、抗体は、可溶性画分において、大腸菌細胞ペーストから単離され、アイソタイプに応じて、例えばプロテインA又はGカラムを通して精製することができる。最終的な精製は、例えばCHO細胞において発現する抗体を精製するためのプロセスに類似した形で実施することができる。
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母菌のような真核微生物は、抗体をコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。サッカロミセス・セレヴィシア、又は一般的なパン酵母は、通常用いられる下等真核生物宿主微生物である。しかしながら、他の多くの属、種及び菌株、例えばシゾサッカロミセス・プロンブ(Schizosaccharomyces pombe);クルベロミセス・ホスツ(Kluveromyces hosts)、例えばケーラクチス(K. lactis)、ケーフラギリス(K. fragilis)(ATCC 12424)、ケーブルガリクス(K. bulgaricus)(ATCC 16045)、ケーウィケラミイ(K. wickeramii)(ATCC 24178)、ケーワルチイ(K. waltii)(ATCC 56500)、ケードロソフィラルム(K. drosophilarum)(ATCC 36906)、ケーテルモトレランス(K. thermotolerans)及びケーマルキシアナス(K. marxianus);ヤロウィア(yarrowia)(欧州特許出願公開第402226号);ピッチャ・パストリス(Pichia pastoris)(欧州特許出願公開第183070号);カンジダ;トリコデルマレーシア(reesia)(欧州特許出願公開第244234号);アカパンカビ;シュワニオマイセス(Schwanniomyces)、例えばシュワニオマイセス・オクシデンタリス(occidentalis);及び糸状真菌、例えば、ニューロスポラ、ペニシリウム、トリポクラジウム(Tolypocladium)、及びコウジ菌、例えば偽巣性コウジ菌及びクロコウジカビも、ここでは一般的に入手可能で有用である。治療用タンパク質の生成のための、酵母及び糸状菌の使用を論議する概説について、例えばGerngross, Nat. Biotech. 22:1409-1414 (2004)を参照。
ある種の真菌及び酵母菌株が選択され、グリコシル化経路で「ヒト化」され、部分的又は全体的なヒトグリコシル化パターンを有する抗体が生成される。例えば、Liら, Nat. Biotech. 24:210-215 (2006)(ピキア・パストリスにおけるグリコシル化経路のヒト化を記載);及び上掲のGerngross等を参照。
グリコシル化抗体の発現に適切な宿主細胞は多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)から誘導される。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。多くのバキュロウイルスの菌株及び変異体、及び宿主、例えばヨトウガ(イモムシ)、ネッタイシマカ(蚊)、ヒトスジシマカ(蚊)、キイロショウショウバエ(ショウジョウバエ)、及びカイコからの対応する許容的昆虫宿主細胞が同定されている。形質移入用の様々なウイルス株、例えばオートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL-1変異体、及びカイコNPVのBm-5株も公に入手可能であり、このようなウイルスは、本発明では、特にヨウトガ細胞の形質移入用のウイルスとして使用されうる。
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、ウキクサ(ウキクサ科)、アルファルファ(M. truncatula)及びタバコの植物細胞培養体も、宿主として利用可能である。例えば、米国特許第5959177号、同6040498号、同6420548号、同7125978号、及び同6417429号 (トランスジェニック植物での抗体生産のためのPLANTIBODIESTM技術を記載)を参照。
脊椎動物細胞も宿主として使用可能であり、培養体(組織培養)における脊椎動物細胞の増殖は常套的な手順でなされる。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株 (COS-7, ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓細胞(293又は懸濁培養での増殖のためにサブクローン化された293細胞、Grahamら, J. Gen Virol., 36:59 (1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10);マウスのセルトリ細胞(TM4, Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 (1980));サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76,ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA,ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファロラット肝臓細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75); ヒト肝細胞(Hep G2,HB 8065); マウス乳房腫瘍(MMT 060562,ATTCCCL51);TRI細胞(Matherら, Annals N.Y. Acad. Sci. 383:44-68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞腫(Hep G2)である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaubら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4216 (1980));及び骨髄腫細胞株、例えばNS0及びSp2/0が含まれる。抗体生成に適したある種の哺乳動物宿主細胞の概説について、例えばYazaki 及び Wu, Methods in Molecular Biology, Vol. 248 (B.K.C. Lo編, Humana Press, Totowa, NJ, 2003), pp. 255-268を参照。
宿主細胞は、上述した、抗体生成用の発現又はクローニングベクターを用いて形質転換され、プロモーターを含むように適切に修飾された一般的な栄養培地において培養され、形質転換体を選択するか、又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅させる。
(h)宿主細胞の培養
この発明の抗体の生成に使用される宿主細胞は、様々な培地で培養されてよい。商業的に入手可能な培地、例えばハム(Ham)のF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)及びダルベッコの改良イーグル培地((DMEM)、Sigma)が、宿主細胞の培養に適している。さらに、Hamら, Meth. Enz. 58:44(1979)、Barnesら, Anal. Biochem.102:255(1980)、米国特許第4767704号;同4657866号;同4927762号;同4560655号;又は同5122469号;国際公開第90/03430号;国際公開第87/00195号;又は米国再発行特許第30985号に記載されている任意の培地も、宿主細胞用の培養培地として使用可能である。これらの培地はいずれも、ホルモン及び/又は他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は表皮増殖因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、バッファー(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えばゲンタマイシンTM剤)、微量元素(最終濃度がマイクロモル範囲で通常存在する無機化合物として定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源を必要に応じて補充することができる。任意の他の必要な補充物質もまた当業者に知られている適当な濃度で含むことができる。培養条件、例えば温度、pH等々は、発現のために選ばれた宿主細胞について以前から用いられているものであり、当業者には明らかであろう。
(xi)抗体の精製
組換え技術を使用する場合、抗体は細胞膜周辺腔で細胞内で産生されるか、あるいは直接培地へ分泌されるかである。第1の工程として、抗体が細胞内で産生される場合、粒子状デブリ、宿主細胞又は溶菌断片のいずれかは、例えば、遠心分離又は限外濾過によって除去される。Carterら, Bio/Technology 10:163-167 (1992)には、大腸菌の細胞膜周辺腔に分泌される、単離された抗体のための手順が記載されている。簡単には、細胞ペーストは、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下、約30分以上かけて解凍される。細胞片は遠心分離により除去することができる。抗体が培地に分泌される場合、このような発現システムからの上清は、一般的に商業的に入手可能なタンパク質濃縮フィルター、例えばAmicon又はMillipore Pellicon 限外濾過ユニットを使用して濃縮される。プロテアーゼインヒビター、例えばPMSFは、タンパク質分解を阻害するために、先の工程のいずれかに含めることができ、抗生物質は不定汚染物質の増殖を防止するために含めることができる。
細胞から調製された抗体組成物は、例えばヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及びアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製可能であり、アフィニティークロマトグラフィーは典型的には、好ましい精製工程の一つである。親和性リガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、ヒトγ2、又はヒトγ4の重鎖(Lindmarkら, J. Immunol. Meth. 62:1-13 (1983))をベースにした抗体を精製するのに使用可能である。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプ及びヒトγ3について推奨されている(Gussら, EMBO J. 5:15671575 (1986))。親和性リガンドが結合するマトリックスは最も多くはアガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。機械的に安定したマトリックス、例えば制御多孔質ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンにより、アガロースで達成されるよりも、流速がより速くなり、プロセシング時間が短縮される。抗体がCH3ドメインを含有している箇所においては、BAKERBOND ABXTM樹脂(J. T. Baker, Phillipsburg, N.J.)が精製に有用である。タンパク質を精製するための他の技術、例えばイオン交換カラムにおける分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカにおけるクロマトグラフィー、ヘパリンセファロース(SEPHAROSE)TMにおけるクロマトグラフィー、アニオン又はカチオン交換樹脂におけるクロマトグラフィー(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿も、回収される抗体に応じて利用可能である。
一般的に、研究、試験及び臨床で使用される抗体を調製するための様々な方法が、当該分野で確立され、上述した方法と一致しており、及び/又は関心ある特定の抗体に対して当業者によって適切と思われている。
D.生物学的に活性な抗体の選択
上に記載されたようにして製造された抗体に、治療的観点から有益な特性を有する抗体を選択するために、一又は複数の「生物学的活性」アッセイを施すことができる。抗体は、それを生じさせる抗原に結合する能力についてスクリーニングすることができる。例えば、以下の実施例に示されるように、抗oxLDL抗体では、抗体の抗原結合特性を、MDA-ApoB100に結合する能力を検出するアッセイにおいて評価することができる。ある種の実施態様では、抗体の抗原結合特性は、oxペプチドIEIGLEGKGFEPTLEALFGK(配列番号:5)に結合する能力を検出するアッセイにおいて評価することができる。また、抗oxLDL抗体は、プラーク形成を阻害し、動物モデルにおいて動脈硬化病変の進行を防止するものについてスクリーニングすることもできる(例えば、Schiopuら, 2004; 国際公開第2004/030607号;米国特許第6716410号)。他の活性は、処置の数週間後、大動脈における既存の確立された動脈硬化プラークの退縮を活発に誘導することを含む。
他の実施態様では、抗体の親和性は、例えば飽和結合;ELISA;及び/又は競合アッセイ(例えば、RIA's)により測定することができる。
また、抗体には、治療剤としてのその効能を評価するために、他の生物学的活性アッセイを施すことができる。このようなアッセイは当該分野で知られており、標的抗原及び抗体の意図された用途に依存する。
関心ある抗原上の特定のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために(例えば、oxLDLへの実施例の抗oxLDL抗体の結合をブロックするもの等)、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Ed Harlow及びDavid Lane (1988) に記載されているような常套的な交差ブロッキングアッセイを実施することができる。あるいは、例えばChampeら, J. Biol. Chem. 270:1388-1394 (1995) に記載されているようなエピトープマッピングを実施して、抗体が関心あるエピトープに結合するかとうかを決定することができる。
E.製造品
本発明の他の実施態様では、本発明の水性薬学的製剤を収容し、場合によっては、その使用のための使用説明書を提供する容器を具備する製造品が提供される。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、及びシリンジが含まれる。容器は、ガラス又はプラスチック等の様々な材料から形成されうる。例示的な容器は3−20ccの使い捨てガラスバイアルである。あるいは、多用量製剤用には、容器は3−100ccのガラスバイアルでありうる。容器は製剤を収容し、容器上の又はそれに付随したラベルは使用についての指示を示しうる。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書を含むパッケージ挿入物を含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含みうる。
本発明は、次の実施例を参照することにより、さらに十分に理解されるであろう。しかしながら、それらは本発明の範囲を限定すると解してはならない。全ての文献及び特許引用文献は出典明示によりここに援用される。
本明細書は、当業者が本発明を実施するには十分であると考えられる。ここに示し記載したものに加えて、本発明の様々な変形例が、前記の記載から当業者には明らかになり、添付の特許請求の範囲に入るものである。ここで引用される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、全ての目的に対して、それらの全体が出典明示によりここに援用される。
ここに記載の実施例及び実施態様は例示目的のみのためであり、それに鑑みた様々な変更又は変形が当業者に示唆され、この出願の要旨及び範囲、及び添付の特許請求の範囲に含まれる。
実施例1:安定な抗oxLDL抗体の液体製剤,pH研究
これらの実施例は、約10mg/mL−200mg/mLの範囲のタンパク質濃度で、抗oxLDL抗体(図2に見出されるアミノ酸配列を有する)を含有する安定な液体製剤の開発及び安定性試験を記載する。抗体を、ヒトApoB-100から誘導された酸化ペプチドに対して産生させたn-CoDeR(登録商標)と呼ばれる組換え抗体断片ライブラリーから開発した(例えば、国際公開第02/080954号)。抗oxLDL抗体の安定性(例えば、凝集体形成、電荷変異体等)を、4.5〜6.5のpHの範囲内で、ヒスチジン、アルギニン、アセテート、塩化ナトリウム等からなる様々な液体製剤において研究した。抗oxLDL抗体の安定性を、(濃度及び濁度については)UV、サイズ変異分析についてはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、電荷変異体分析についてはイメージキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)、及び結合性を含むいくつかのアッセイによりモニターした。安定性試験の6ヶ月後、我々の結果は、抗oxLDL抗体が、アルギニン含有バッファー中でpH4.5とpH6.5の間で安定であることを示している。
抗oxLDL抗体を、表1に列挙する様々な濃度を達成するために、Slide-a-Lyzerカセットを使用する透析により、様々なバッファーで製剤化した。各製剤を0.22μmのSterifilpフィルターユニットを用いて滅菌濾過し、オートクレーブされたバイアルに無菌的に充填し、栓をし、アルミニウム製の押上式シールで密封した。試料を−20℃、2〜8℃、25℃、30℃、40℃バイアル、及び−70℃のコントロールバイアルに配し、選択された温度で6ヶ月まで安定性研究を実施した。
Figure 2012519706
方法
pH: 200μL容量の各試料を、周囲温度で1.5mlのエッペンドルフチューブに配し、それらのpHを、Rossセミマイクロ電極を具備するThermo OrionのpHメーターを使用して測定した。Thermo Orionのバッファー標準液pH4.0、5.0及び7.0を使用し、pHメーターを較正した。
目視検査: 試料を、色、外観及び透明性(CAC)について、周囲温度で白色及び黒色背景を用い、蛍光下で視覚的に分析した。
濁度: 製剤試料の濁度を、SpectraMax M2eプレートリーダーを使用し、360nmと450nmの吸光度により測定した。100μLの未希釈試料を96ウェルマイクロタイタープレートに充填し、水ブランクに対して濁度を測定した。異なるタンパク質濃度の製剤を比較するために、360nmと450nmの吸光度をタンパク質濃度で割り、存在するタンパク質量のみに起因する任意の影響に対して正規化した。
浸透圧: 50mOsm/kg及び850mOsm/kgの較正溶液を使用し、使用者用マニュアルに従い、浸透圧計を較正した。製剤を流す前に、Clinitrol290参照溶液を流すことにより、較正を確認した。
タンパク質濃度-容積測定: 全ての製剤についての濃度を、Milli-Q水を用いて試料を0.5mg/mLまで希釈した後、2回測定した。希釈した試料を96ウェルプレート(BD bioscience)に移し、吸光度スペクトルを、SpectraMaxプレートリーダーを使用して読み取った(Molecular Devices M2e)。読み取りはDI水に対してブランクとし、平均化した。タンパク質濃度は、次の式に従い算出した:
濃度(mg/mL)={(Amax−A320)×希釈因子(mL/mL)}/{ε×セル光路長(cm)}
抗oxLDL抗体の測定された吸光係数(ε)は1.62(mg/mL)−1cm−1である。
粘度: 粘度を、Physica MCR 300 Modular Compact Rheometer, Anton Paarを使用することによって測定した。75μLの試料を、周囲温度で25mmの円錐平板レオメーター(角度1°;CP25-1)に充填した。測定を1000sec−1の一定の剪断速度で行った。
活性: 抗oxLDL抗体の生物学的活性を、ELISAにおいて、ox-LDLへのその結合能力を測定することにより決定した。ELISA-結合アッセイは、抗oxLDL抗体のマロンジアルデヒド(MDA)酸化LDLペプチドに結合する能力を定量する。
サイズ排除-高速液体クロマトグラフィー(SEC): サイズ排除クロマトグラフィーを、凝集体及び断片を定量するために使用した。このアッセイは、TSK G3000 SWXLTM、7.8×300mmカラムを利用しており、25℃でHP 1100TMHPLCシステムにおいて動作させた。移動相を用いて試料を2mg/mLに希釈し、注入量は25μLであった。移動相は0.2MのKHPO、0.25MのKCl、pH6.2であり、タンパク質は、30分、0.5mL/分の定常流量で溶出させた。溶出液の吸光度を280nmでモニターした。積分をHP CHEMSTATIONMTMソフトウェアを使用して実施した。
イメージキャピラリー等電点電気泳動(icIEF): 40℃で保存された安定性試料と参照試料を、抗oxLDL抗体安定性試料の電荷(酸性及び塩基性)変異体を定量するためにicIEFを使用してアッセイした。この技術は、Princeオートサンプラーを具備するFAST IEF分析器でフルオロカーボンコーティングされたキャピラリーを使用する。
イオン交換クロマトグラフィー(IEX): カチオン交換クロマトグラフィーを用いて、電荷変異体における変化を測定した。このアッセイは、HP 1100TMHPLCシステムでDIONEX PROPAC WCX-10TMカラムを利用する。50mMのHEPES、pH7.5を含む移動相Aを用いて、試料を2mg/mLまで希釈した。ついで、25μlの希釈試料を、周囲温度(40℃)に保持されたカラムに充填した。50mMのHEPES、100mMの硫酸ナトリウム,pH7.5を含む移動相Bを使用し、ピークを溶出させた。溶出液を280nmでモニターした。HP CHEMSTATION(登録商標)ソフトウエアを使用して、データを分析した。
結果及び検討
この製剤pH研究では、抗oxLDL抗体の安定性に対するタンパク質濃度、イオン強度及び溶液pHの影響を調査した。SEC、IEC、icIEF及び濁度アッセイを使用し、リアルタイム及び促進保存条件での抗oxLDL抗体の安定性をモニターした。タンパク質濃度、浸透圧、粘度、結合性及びCE-SDSアッセイは、選択された時点で実施した。この研究は、pH4.5〜pH6.5のpH範囲にわたって、アルギニンベースの製剤における様々な濃度の抗oxLDL抗体の安定性(例えば、凝集体形成、電荷変異体等)を調査した。L-アルギニンを使用し、高イオン強度のバッファーを処方した。浸透圧、pH、タンパク質濃度、及び粘度を測定し、以下に示す(表2)。
Figure 2012519706
全ての製剤を、−20℃又は−70℃のいずれかでの3回の凍結サイクルに暴露し、続いて周囲温度で冷却した。表1に列挙された製剤について、凍結が、−70℃及び−20℃での抗oxLDL抗体の物理的特性を有意には変化させなかったことを、SECで確認した(表2を参照)。
40℃での全製剤の結合活性: 試料の結合活性を、oxLDLに対するELISA-結合アッセイで測定した。アッセイにより、40℃での4週間のインキュベーション後に試験した全製剤が、コントロール試料(@T0)の〜20%まで低下していることが示された(表3)。
Figure 2012519706
pHの影響: サイズ、電荷変異体、及び濁度アッセイを使用し、様々な温度での抗oxLDL抗体の経時的な安定性をモニターした。SECを使用して、生じた凝集体、モノマー及び断片の量を測定する一方、IECを使用して、安定性研究中に生じた酸性変異体、主要な変異体及び塩基性変異体を定量した(図3)。使用したIEC法は、試験された全ての抗oxLDL抗体製剤についての安定性を示すアッセイではなく、よって、我々は、異なるメカニズムで電荷を分離させるicIEFを使用した。溶液pH4.5で、抗oxLDL抗体はより多くの塩基性変異体を形成したが、より多くの酸性変異体がpH6.5で形成された(図3)。
これらの結果は、40℃では抗oxLDL抗体がpH6.5で直ぐに凝集し、pH4.5で断片化することを示したSEC研究で補足した(図4)。SEC及びIcIEFデータは双方とも、40℃で、抗oxLDL抗体が、試験されたpH4.5及びpH6.5の試料と比較して、pH5.5でより安定していることを示唆している。
試料の濁度を360nm及び450nmの波長で測定し、タンパク質濃度に対して正規化させた。観察された正規化された試料濁度は、30℃及び40℃の時点でわずかに増加した;しかしながら、沈殿は観察されなかった。
賦形剤及びイオン強度の影響: 抗oxLDL抗体の安定性に対する様々な賦形剤の影響を調査した。調査した賦形剤の列挙には、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸ヒスチジン、及び酢酸アルギニンが含まれる。我々の結果は、塩化ナトリウムを含む製剤が、全ての他の製剤より速く凝集することを示している。
抗oxLDL抗体濃度の影響: タンパク質濃度は、サイズ及び電荷変異体アッセイにより示唆されるように、抗oxLDL抗体の安定性に対して強い効果を有していなかった。凝集は、99mg/mlと189mg/mlの間の濃度にわずかに依存するように思われ、より高い濃度はわずかに凝集が多い。SECを使用して、生じた凝集体、モノマー及び断片の量を定量する一方、icIECを使用して、安定性研究中に生じた酸性変異体、主要な変異体及び塩基性変異体を定量した。
抗oxLDL抗体の安定性を、様々なバッファー条件で評価した。製剤のスクリーニング研究から得られたデータは、抗oxLDL抗体が、pH4.5とpH6.5の間で酢酸ヒスチジン及び酢酸アルギニンバッファーにおいてより安定していることを示している。
実施例2.安定な抗oxLDL抗体液体製剤,賦形剤の研究
抗oxLDL抗体の安定性を、様々な液体(酢酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジン、コハク酸ヒスチジン、クエン酸ヒスチジン、及びPBS)製剤(表A)において評価した。3ccのガラスバイアルに各製剤を1ミリリットル入れたものを、6ヶ月間の期間まで、−70、−20、5、25、30及び40℃で保存し、安定性を1、2、4、6、8、12及び24週間で評価した。抗oxLDL抗体の安定性は、(濃度及び濁度については)UV、サイズ変異分析についてはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、電荷変異体分析についてはイメージキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)、サイズ分布についてはCE-SDS、及び活性については結合アッセイを含むいくつかのアッセイによりモニターした。6ヶ月の安定性試験後、我々の結果は、抗oxLDL抗体が、20mMの酢酸ヒスチジン、150mMの酢酸アルギニン、0.02%のポリソルベート20,pH5.5において安定していることを示した。
試料の調製: 抗oxLDL抗体を、標的濃度を達成するために、Slide-a-Lyzerカセットを使用して透析し、ついでAmicon Ultra-15遠心分離器を使用してタンパク質を濃縮することにより、様々なバッファー中に製剤化した。ポリソルベート20、ポリソルベート80、メチオニン、及びEDTAを添加し、表Aに列挙した最終濃度を達成した。各製剤を0.22μmのSterifilpフィルターユニットを用いて滅菌濾過し、オートクレーブされたバイアルに無菌的に充填し、栓をし、アルミニウムの押上式シールで密封した。以下の製剤の全試料を液体として保持した。試料を−20℃、2〜8℃、25℃、30℃、40℃バイアル、及び−70℃のコントロールバイアルに配し、選択温度で6ヶ月まで、安定性研究を実施した。
Figure 2012519706
方法
pH: 200μLの各試料を、周囲温度で、1.5mlのエッペンドルフチューブに配し、それらのpHを、Rossセミマイクロ電極を具備するThermo OrionのpHメーターを使用して測定した。Thermo Orionのバッファー標準液pH4.0、5.0及び7.0を使用し、pHメーターを較正した。
目視検査: 試料を、色、外観及び透明性(CAC)について、周囲温度で白色及び黒色背景を用い、蛍光下で視覚的に分析した。
濁度: 製剤試料の濁度を、SpectraMax M2eプレートリーダーを使用し、360nmと450nmの吸光度により測定した。100μLの未希釈試料と水(ブランク用)を96ウェルマイクロタイタープレートに充填し、濁度を測定した。異なるタンパク質濃度の製剤を比較するために、360nmと450nmの吸光度をタンパク質濃度で割り、存在するタンパク質量のみに起因する任意の影響に対して正規化した。
浸透圧: 50mOsm/kg及び850mOsm/kgの較正溶液を使用し、使用者用マニュアルに従い、浸透圧計を較正した。製剤試料を流す前に、Clinitrol290参照溶液を流すことにより、較正を確認した。
タンパク質濃度-容積測定: 全ての製剤についての濃度を、Milli-Q水を用いて試料を0.5mg/mLまで希釈した後、2回測定した。希釈した試料を96ウェルプレート(BD bioscience カタログ番号353261)に移し、濃度をSpectraMaxプレートリーダーを使用して読み取った(Molecular Devices M2e)。読み取りはDI水に対してブランクとし、平均化した。タンパク質濃度は、次の式に従い算出した:
濃度(mg/mL)={(Amax−A320)×希釈因子(mL/mL)}/{ε×セル光路長(cm)}
抗oxLDL抗体の測定された吸光係数(ε)は1.62(mg/mL)−1cm−1である。
粘度: 粘度を、Physica MCR 300 Modular Compact Rheometer, Anton Paarを使用することによって測定した。75μLの試料を、周囲温度で25mmの円錐平板レオメーター(角度1°;CP25-1)に充填した。測定を1000sec−1の一定の剪断速度で行った。
結合アッセイ: 40℃で保存した4週間安定試料を、Milli-Q水を用いて0.5mg/mLまで希釈し、ELISAにおいてoxLDL結合について試験した。熱分解過程を受けていない試料をアッセイコントロールとして使用した。
CE-SDS UV(非還元): 40℃で保存した4週間安定試料及び参照試料を、CE-SDS UV非還元法を使用してアッセイし、抗oxLDL抗体安定試料のサイズ分布を評価した。
サイズ排除-高速液体クロマトグラフィー(SEC): サイズ排除クロマトグラフィーを、凝集体及び断片を定量するために使用した。このアッセイは、TSK G3000 SWXLTM、7.8×300mmカラムを利用しており、HP 1100TMHPLCシステムにおいて動作させた。移動相を用いて試料を2mg/mLに希釈し、注入量は25μLであった。移動相は0.2MのKHPO、0.25MのKCl、pH6.2であり、タンパク質は、30分、0.5mL/分の定常流量で溶出させた。溶出液の吸光度を280nmでモニターした。積分をHP CHEMSTATIONMTMソフトウェアを使用して実施した。
イメージキャピラリー等電点電気泳動(icIEF): 40℃で保存された安定試料と参照試料を、抗oxLDL抗体安定試料の電荷(酸性及び塩基性)変異体を定量するために、icIEFを使用してアッセイした。この技術は、Princeオートサンプラーを具備するFAST IEF分析器において、フルオロカーボンコーティングされたキャピラリーを使用する。
結果及び議論
この製剤賦形剤研究では、抗oxLDL抗体の安定性に対する様々なバッファー対イオン、界面活性剤及び抗酸化剤の影響を調査した。SEC、icIEF及び濁度アッセイを使用し、研究全体を通した抗oxLDL抗体の安定性をモニターした。タンパク質濃度、浸透圧、粘度、効能、及びCE-SDSアッセイを、選択された安定性試料及び時点で実施した。20mM濃度で約pH5.5のバッファーを、先のpH研究の結果に基づき選択した。全液体製剤のpHをバッファー交換後に測定した(表A)。浸透圧、pH、タンパク質濃度、及び粘度を測定し、以下に示す(表B)。目視検査アッセイからの結果は、全ての試料が淡黄色の色調で透明に見えることを示している。
Figure 2012519706
−20℃及び−70℃で保存された製剤のセットに、1週間にわたって3回の凍結解凍サイクルを施した。試料をそれぞれ−20℃及び−70℃で凍結させ、ついで周囲温度で解凍した。凍結解凍サイクルを受けた試料の物理特性を、サイズ排除クロマトグラフィーにより評価した。SECアッセイは、凍結解凍が、試験された試料の凝集体又は断片の割合に影響を及ぼさないことを確認した。
試料の濁度を360nm及び450nmの波長で測定し、5℃で保存されたほとんどの製剤の濁度が経時的に実質的に変化しなかったことが示された。製剤試料の濁度は、温度(25℃、30℃及び40℃)及び時間と共にわずかに増加した。
CE-SDS UVは、タンパク質の共有結合性凝集体、断片及びモノマー、例えば抗体調製物中の遊離の軽鎖又は重鎖の見かけの分子量を推定するために使用される定量アッセイである。CE-SDSアッセイを、40℃で4週間保存した安定性試料を使用する非還元条件で動作させた。結果は、試験された全試料に対する主要なピークの割合が、許容可能なアッセイ範囲内にあることを示している(図5)。
試料の結合活性を、ELISA-結合アッセイを使用して測定した。ELISA-結合アッセイは、抗oxLDL抗体のマロンジアルデヒド(MDA)酸化LDLペプチドに結合する能力を定量する。該アッセイの結果は、40℃で4週間のインキュベーション後に試験した全製剤が、+/−25%の許容可能なアッセイ範囲内にあることを示している(図6)。
抗oxLDL抗体濃度の影響: 20mMの酢酸ヒスチジン、150mMの酢酸アルギニン、0.02%のPS20,pH5.5において製剤化され、40℃で4週間まで保存された3通りの濃度(25mg/mL(1)、50mg/mL(2)、及び150mg/mL(3))をアッセイし、抗oxLDL抗体の安定性に対する濃度の影響を調査した。結果は、25mg/mL及び50mg/mLの製剤では、時間及び温度に凝集体形成が有意には依存しないが、150mg/mLの製剤試料では凝集体形成の増加があることを示している。icIEFアッセイの結果は、研究した3つ全ての濃度について、酸性変異体の増加が時間及び温度に依存していることを示している(図7A及びB)。
賦形剤の影響: 抗oxLDL抗体の安定性に対する様々な賦形剤の影響を調査した。調査した賦形剤の列挙には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ヒスチジン塩酸塩、及びアルギニンに対する対イオン(アセテート、サルフェート、スクシネート、及びシトレート)が含まれる。結果は、その対イオンにかかわらず、アルギニン含有製剤について凝集体、断片化、及び塩基性変異体において有意な変化がないことを示している。PBSの存在下、研究した全ての温度において、凝集、断片化、及び酸性変異体が経時的に有意に増加した。
界面活性剤: 界面活性剤は、攪拌誘発性凝集並びにタンパク質の吸着誘発性損失に対する保護を提供する。抗oxLDL抗体の安定性に対する非イオン性界面活性剤の影響は、ポリソルベート20(0.02%及び0.2%)、及びポリソルベート80(0.05%)を使用することにより軽減された。結果は、0.02%のポリソルベート20がタンパク質を安定に保つのに十分であることを示している。ポリソルベート濃度を0.2%まで増加させるか、又は高分子量の界面活性剤のポリソルベート80を使用しても、抗oxLDL抗体に対して何らの安定性の利点がもたらされなかった(図8)。
抗酸化剤: メチオニン(5mg/mL)とEDTA(1mM)を、製剤9及び11のそれぞれに、抗酸化剤として使用した。EDTAは金属イオンをキレートし、よって金属誘発性酸化を防止する一方、メチオニンは、酸化種を除去する能力を有している。SECアッセイの結果は、EDTA及びメチオニンが、2〜8℃で、抗oxLDL抗体の安定性をほんのわずかに改善することを示している(図8)。
抗oxLDL抗体の安定性を、様々なバッファー条件で評価した。製剤スクリーニング研究から得られたデータは、抗oxLDL抗体が、20mMの酢酸ヒスチジン、150mMの酢酸アルギニン、0.02%のポリソルベート20,約pH5.5において、150mg/mLのタンパク質濃度で安定であることを示している。
真核生物についてもプロモーター配列が知られている。事実上、全ての真核生物遺伝子は、転写が開始される部位から約25から30塩基対上流に位置してAT-リッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から、70から80塩基対上流に見出される他の配列はCNCAAT(配列番号:8)領域であり、ここでNは任意のヌクレオチドとすることができる。多くの真核生物遺伝子の3'末端には、コード化配列の3'末端への、ポリA末尾の付加のためのシグナルであってよいAATAAA(配列番号:9)配列である。これら全ての配列は、真核生物発現ベクター中に適切に挿入される。

Claims (28)

  1. pH4.5〜6.5のヒスチジン-アルギニンバッファー中に治療的有効量の抗体を含有してなる製剤。
  2. バッファーがpH5.0〜6.0の酢酸ヒスチジン-酢酸アルギニンバッファーであるか、又はバッファーがコハク酸ヒスチジン-コハク酸アルギニンのバッファーであり、pHが5.0〜6.0である請求項1に記載の製剤。
  3. バッファー中の酢酸ヒスチジン又はコハク酸ヒスチジンの濃度が約5mM〜約100mMである請求項2に記載の製剤。
  4. 酢酸ヒスチジン又はコハク酸ヒスチジンの濃度が約20mMである請求項2に記載の製剤。
  5. バッファー中の酢酸アルギニン又はコハク酸アルギニンの濃度が約50mM〜約500mMである請求項2に記載の製剤。
  6. 酢酸アルギニン又はコハク酸アルギニンの濃度が約150mMである請求項2に記載の製剤。
  7. 界面活性剤をさらに含有する請求項1に記載の製剤。
  8. 界面活性剤がポリソルベートである請求項7に記載の製剤。
  9. ポリソルベートがポリソルベート20である請求項8に記載の製剤。
  10. 界面活性剤の濃度が0.0001%〜約1.0%である請求項9に記載の製剤。
  11. 界面活性剤の濃度が0.01%〜約0.1%である請求項10に記載の製剤。
  12. 界面活性剤の濃度が0.02%である請求項11に記載の製剤。
  13. 抗体濃度が約10mg/ml〜約250mg/mlである請求項1に記載の製剤。
  14. 抗体濃度が約100mg/ml〜250mg/mlである請求項1に記載の製剤。
  15. 抗体濃度が約150mg/ml〜約200mg/mlである請求項1に記載の製剤。
  16. 抗体濃度が約25mg/ml〜約200mg/mlである請求項1に記載の製剤。
  17. 抗体に事前の凍結乾燥が施されない請求項1に記載の製剤。
  18. メチオニンをさらに含有する請求項1に記載の製剤。
  19. メチオニン濃度が5mg/mlである請求項18に記載の製剤。
  20. EDTAをさらに含有する請求項1に記載の製剤。
  21. EDTA濃度が1mM EDTAである請求項20に記載の製剤。
  22. バッファーが20mMの酢酸ヒスチジン及び150mMの酢酸アルギニン、pH5.5であり、界面活性剤が約0.01〜0.1%v/v量のポリソルベートであり、製剤が約2〜8℃の温度で少なくとも12ヶ月安定しているか、又はバッファーが20mMのコハク酸ヒスチジン及び150mMのコハク酸アルギニン、pH5.5であり、界面活性剤が約0.01〜0.1%v/v量のポリソルベートであり、製剤が約2〜8℃の温度で少なくとも12ヶ月安定している請求項7に記載の製剤。
  23. 製剤が薬学的製剤である請求項1に記載の製剤。
  24. 製剤が約25℃での保存時に少なくとも12ヶ月安定しているか、又は製剤が約5℃での保存時に少なくとも12ヶ月安定しているか、又は製剤が約−20℃での保存時に少なくとも12ヶ月安定している請求項1に記載の製剤。
  25. 治療的有効量の抗体、約pH5.0〜約6.0の酢酸ヒスチジン-酢酸アルギニンのバッファー、及び界面活性剤を含有する水性薬学的製剤を収容する容器、又は治療的有効量の抗体、約pH5.0〜約6.0のコハク酸ヒスチジン-コハク酸アルギニンのバッファー、及び界面活性剤を含有する水性薬学的製剤を収容する容器を含む製造品。
  26. 治療的有効量の抗体、約pH5.0〜約6.0の酢酸ヒスチジン-酢酸アルギニンのバッファー、及び界面活性剤を組合せることにより、又は治療的有効量の抗体、約pH5.0〜約6.0のコハク酸ヒスチジン-コハク酸アルギニンのバッファー、及び界面活性剤を組合せることにより、水性薬学的製剤中において抗体を安定化させる方法。
  27. (a)約10mg/mL〜約250mg/mLの量の脱アミド化又は凝集しやすい完全長IgG1抗体;(b)酢酸ヒスチジン-酢酸アルギニンのバッファー、pH5.0〜6.0;及び(c)約0.01%〜約0.1%の量のポリソルベート20を含有する薬学的製剤。
  28. (a)約10mg/mL〜約250mg/mLの量の脱アミド化又は凝集しやすい完全長IgG1抗体;(b)コハク酸ヒスチジン-コハク酸アルギニンのバッファー、pH5.0〜6.0;及び(c)約0.01%〜約0.1%の量のポリソルベート20を含有する薬学的製剤。
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