JP2012250978A - 植物の生長を促進する方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]下記式(1)
[式中、R1、R2、R3及びR4のいずれか一がトリフルオロメチル基を、その他は水素原子を表し、R5は、メチル基又はエチル基を表す。]
で示される化合物(以下、本化合物と記すことがある。)を、植物に処理することを特徴とする植物の生長促進方法(以下、本発明方法と記すことがある。)。
[2]式(1)で示される化合物が、下記の化合物群Aから選ばれる化合物である前項[1]に記載の方法。
<化合物群A>
(1)5-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(2)6-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(3)4-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(4)7-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
[3]植物が、非生物的ストレスに暴露された又は暴露されるであろう植物である前項[1]又は[2]に記載の植物の生長促進方法。
[4]植物への処理が、散布処理、土壌処理、種子処理又は水耕処理である前項[1]から[3]のいずれか一に記載の方法。
[5]植物への処理が、種子処理である前項[1]から[3]のいずれか一に記載の方法。
[6]植物がイネ、トウモロコシ、又はコムギである前項[1]から[5]のいずれか一に記載の方法。
[7]植物が遺伝子組換え植物である前項[1]から[6]のいずれか一に記載の方法。
[8]非生物的ストレスが高温ストレスである前項[3]から[7]のいずれか一に記載の方法。
[9]非生物的ストレスが低温ストレスである前項[3]から[7]のいずれか一に記載の方法。
[10]非生物的ストレスが乾燥ストレスである前項[3]から[7]のいずれか一に記載の方法。
[11]植物の生長を促進するための、前記式(1)で示される化合物の使用。
[12]前記式(1)で示される化合物及び不活性成分を含有することを特徴とする植物生長促進組成物。
(1)苗立ち率
植物の種子を、例えば土壌中、ろ紙上、寒天培地上、砂上などに播種し、一定期間栽培する。栽培の全ての期間中あるいは一部の期間中に非生物的ストレスを負荷した後、生き残った幼植物の割合を調査する。
(2)健全葉数又は健全葉率
各植物について健全な葉の枚数を数え、総健全葉数を調査する。あるいは植物の全ての葉数に対する健全葉数の割合を調査する。
(3)草丈
各植物について地上部分の茎の根元から先端の枝葉までの長さを測定する。
(4)植物体重量
各植物の地上部を切り取り、重量を測定して、植物新鮮重量を求める、あるいは切り取ったサンプルを乾燥させた後に重量を測定して、植物乾燥重量を求める。
(5)葉面積
植物をデジタルカメラで撮影し、写真の緑色の部分の面積を画像解析ソフト例えばWin ROOF(三谷商事社製)で定量することにより、あるいは目視による評価によって、植物の葉面積を求める。
(6)葉色
植物の葉をサンプリングし、葉緑素計(例えばSPAD−502、コニカミノルタ製)を用いて葉緑素量を測定することにより、葉色を求める。また、植物をデジタルカメラで撮影し、写真の緑色の部分の面積を画像解析ソフト例えばWin ROOF(三谷商事社製)で色抽出を行い定量することにより、植物の葉の緑色部分の面積を求める。
(7)種子あるいは果実の数又は重量
植物を種子あるいは果実が結実あるいは登熟するまで栽培した後、植物当りの果実数を計測あるいは植物当りの総果実重量を測定する。また、種子が登熟するまで栽培した後、例えば穂数、登熟歩合、千粒重などの収量構成要素を調査する。
(8)着花率、着果率、結実率、又は種子充填率
植物を着果するまで栽培した後、着花数と着果数を数え着果率%(着果数/着花数×100)を求める。種子登熟後に結実数と種子充填数を数え結実率(結実数/着花数×100)、種子充填率%(種子充填数/結実数×100)を求める。
(9)根部生長の増加
植物を土壌あるいは水耕にて栽培し、その根部の長さを計測する、あるいは根部を切り取りその新鮮重量等を測定する。
[式中、R1、R2、R3、及びR4のいずれか一がトリフルオロメチル基を、その他は水素原子を表し、R5は、メチル基又はエチル基を表す。]
で示される化合物は、公知の方法で製造することができ、又は試薬として購入することができる。
その他:花卉類(バラ、カーネーション、キク、トルコギキョウ、カスミソウ、ガーベラ、マリーゴールド、サルビア、ペチュニア、バーベナ、チューリップ、アスター、リンドウ、ユリ、パンジー、シクラメン、ラン、スズラン、ラベンダー、ストック、ハボタン、プリムラ、ポインセチア、グラジオラス、カトレア、デージー、シンビジューム、ベゴニア等)、バイオ燃料植物(ヤトロファ、ベニバナ、アマナズナ類、スイッチグラス、ミスカンサス、クサヨシ、ダンチク、ケナフ、キャッサバ、ヤナギ等)、観葉植物等。
R=0.082(L・atm/mol・K)
T=絶対温度(K)
c=イオンモル濃度(mol/L)
1atm=0.1MPa
2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド5.0g、チオグリコール酸メチル3.3g、炭酸カリウム4.0gおよびDMF50mlの混合物を60℃で2時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した。反応混合物に水を加え、tert−ブチルメチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮した。残渣をメタノールから再結晶し、5−(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル(本化合物1)6.3gを得た。
[本化合物1]
1H-NMR(CDCl3) δ: 8.16(s, 1H), 8.13(s, 1H), 7.99(d, J=8.7Hz, 1H), 7.67(d, J=8.7Hz, 1H), 3.98(s, 3H)
2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド1.11g、チオグリコール酸メチル739mg、炭酸カリウム1.3gおよびDMF20mlの混合物を140℃で2時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した。反応混合物に水を加え、tert−ブチルメチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、6−(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル(本化合物2)848mgを得た。
[本化合物2]
1H-NMR(CDCl3) δ: 8.17(s, 1H), 8.11(s, 1H), 8.01-7.97(m, 1H), 7.66-7.62(m, 1H), 3.98(s, 3H)
2−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド1.00g、チオグリコール酸メチル633mg、炭酸カリウム1.21gおよびDMF15mlの混合物を130℃で2時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した。反応混合物に水を加え、tert−ブチルメチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、4−(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル(本化合物3)480mgを得た。
[本化合物3]
1H-NMR(CDCl3) δ: 8.27(s, 1H), 8.08-8.04(m, 1H), 7.76-7.72(m, 1H), 7.57-7.51(m, 1H), 3.98(s, 3H)
2−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド1.10g、チオグリコール酸メチル663mg、炭酸カリウム1.03gおよびDMF15mlの混合物を60℃で2時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した。反応混合物に水を加え、tert−ブチルメチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、7−(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル(本化合物4)1.34gを得た。
[本化合物4]
1H-NMR(CDCl3) δ: 8.13(s, 1H), 8.08-8.04(m, 1H), 7.79-7.75(m, 1H), 7.54-7.50(m, 1H), 3.97(s, 3H)
製造例1に記載の方法に準じた方法で、チオグリコール酸メチルに代えてチオグリコール酸エチルを使用し、5−(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチル(本化合物5)を得る。
製造例1に記載の方法に準じた方法で、2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドに代えて2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドを使用し、チオグリコール酸メチルに代えてチオグリコール酸エチルを使用して、6−(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチル(本化合物6)を得る。
製造例1に記載の方法に準じた方法で、2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドに代えて2−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドを使用し、チオグリコール酸メチルに代えてチオグリコール酸エチルを使用して、4−(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチル(本化合物7)を得る。
製造例1に記載の方法に準じた方法で、2−フルオロ−5−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドに代えて2−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドを使用し、チオグリコール酸メチルに代えてチオグリコール酸エチルを使用して、7−(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチル(本化合物8)を得る。
5−(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル10.0g、水酸化リチウム一水和物1.80g、水30mlおよびメタノール90mlの混合物を75℃で1時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、減圧下濃縮した。残渣に水を加え、tert−ブチルメチルエーテルで3回洗浄した。水層に濃塩酸を加えた後、tert−ブチルメチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、5−(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸9.10gを得た。
5−(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸400mgおよびエタノール20mlの混合物に、氷冷下で塩化オキサリル254mgを加えた後、還流下で6時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却した後、減圧下濃縮した。残渣にクロロホルムを加え、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下濃縮し、5−(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸エチル(本化合物5)330mgを得た。
[本化合物5]
1H-NMR(CDCl3) δ: 8.15(s, 1H), 8.12(s, 1H), 7.98(d, J=8.5Hz, 1H), 7.67(d, J=8.5Hz, 1H), 4.43(q, J=7.3Hz, 2H), 1.43(t, J=7.3Hz, 3H)
本化合物1〜8のいずれかひとつの10部を、キシレン35部とN,N−ジメチルホルムアミド35部との混合物に溶解し、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル14部およびドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム6部を加え、良く攪拌混合して各々の10%乳剤を得る。
本化合物1〜8のいずれかひとつの20部を、ラウリル硫酸ナトリウム4部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、合成含水酸化珪素微粉末20部および珪藻土54部を混合した中に加え、良く攪拌混合して各々の20%水和剤を得る。
本化合物1〜8のいずれかひとつの2部に、合成含水酸化珪素微粉末1部、リグニンスルホン酸カルシウム2部、ベントナイト30部およびカオリンクレー65部を加え充分攪拌混合する。ついでこれらの混合物に適当量の水を加え、さらに攪拌し、増粒機で製粒し、通風乾燥して各々の2%粒剤を得る。
本化合物1〜8のいずれかひとつの1部を適当量のアセトンに溶解し、これに合成含水酸化珪素微粉末5部、PAP0.3部およびフバサミクレー93.7部を加え、充分攪拌混合し、アセトンを蒸発除去して各々の1%粉剤を得る。
本化合物1〜8のいずれかひとつの10部;ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩50部を含むホワイトカーボン35部;および水55部を混合し、湿式粉砕法で微粉砕することにより、各々の10%フロアブル剤を得る。
本化合物1〜8のいずれかひとつの0.1部をキシレン5部およびトリクロロエタン5部に溶解し、これを脱臭灯油89.9部に混合して各々の0.1%油剤を得る。
(供試植物)
イネ(品種:日本晴)
(栽培、化合物処理)
1/4倍濃度のホグランド水耕栽培液(Hoagland and Arnon, California Agricultural Experiment Station 1950 Circular 347 pp.34)に、本化合物1〜本化合物4のいずれかひとつを10,000ppmの濃度で含むDMSO溶液を1/10,000容添加し、本化合物1〜本化合物4のいずれかひとつを1ppm含む水耕栽培液をそれぞれ調製した。無処理区としては、1/4倍濃度のホグランド水耕栽培液にDMSOを1/10,000容添加した水耕栽培液を使用した。
イネ種子を、1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液に10分間浸漬し、次いで、70%エタノール溶液に浸漬して表面消毒し、その後、蒸留水で洗浄した。消毒後の種子を、前記の供試化合物を1ppm含む水耕栽培液に浸し、暗黒下、温度28℃で3日間インキュベートし催芽処理を行った。
その後、供試化合物を1ppm含む水耕栽培液30mlを、側面をボール紙で覆って遮光したプラスチック製のチューブ(直径:20mm×高さ:113mm)に分注し、スチレンボードとビニール製メッシュを用いて作製したフロートを浮かべ、水耕栽培液水面にそのフロート上に、催芽処理後の当該イネ種子を置いて、チューブ上面の照度4,000ルクス、温度26℃、湿度50%、日長16時間で3日間栽培した。
(評価方法)
栽培後の当該イネ実生を、WinRHIZOシステム(REGENT INSTRUMENTS社製)で種子根長を測定した。各試験区での、4個体又は5個体の種子根長の測定値の平均値を求めた結果、本化合物1、本化合物2、本化合物3又は本化合物4(いずれも濃度1ppm)で処理した試験区は、無処理区と比較して、明らかに種子根が長かった。
(供試植物)
トウモロコシ(品種黒もち)
(種子処理)
10% (V/V) color coat red (Becker Underwood, Inc.)、10% (V/V) CF-Clear (Becker Underwood, Inc.)、1.66% Maxim4FS (Syngenta)を含むブランクスラリー溶液を調製した。トウモロコシ種子100キログラム当り50グラムの化合物処理量となるように本化合物1をブランクスラリーに溶解し、スラリー溶液とした。50ml遠沈管(日本BD社製)に、種子14.4グラム当り0.35mlのスラリー溶液を入れ、スラリー溶液が乾くまで攪拌し、当該種子をコーティングした。また、ブランクスラリーを用いてコーティングした種子を無処理区用種子とした。
(栽培)
種子処理後の当該種子をポット(φ55 mm×高さ58mm)中の培土(愛菜)に1粒ずつ播種し、温度27℃、照度5,000ルクス、日長16時間で18日間栽培した。
(評価方法)
栽培後、生育した植物の地上部新鮮重量を秤量した。各処理条件で3反復をとり、それらを平均して1個体あたりの平均重量を求めた。
その結果、化合物1を50グラム/100キログラム種子の処理量で処理した区では、無処理区と比較して明らかに地上部新鮮重量が大きかった。
(供試植物)
トウモロコシ(品種:黒もち)
(種子処理)
10% (V/V) color coat red (Becker Underwood, Inc.)、10% (V/V) CF-Clear (Becker Underwood, Inc.)、1.66% Maxim4FS(Syngenta)を含むブランクスラリー溶液を調製した。トウモロコシ種子100キログラム当り0.5グラム、5グラム又は50グラムの化合物処理量となるように本化合物1をそれぞれブランクスラリーに溶解しスラリー溶液とした。50mL遠沈管(日本BD社製)に、トウモロコシ種子14.4g当り0.35mlのスラリー溶液を入れ、スラリー溶液が乾くまで攪拌し、当該種子をコーティングした。また、ブランクスラリーを用いてコーティングした種子を無処理区用種子とした。
(栽培)
種子処理後のトウモロコシ種子をポット(φ55 mm×高さ58mm)中の培土(愛菜)に1粒ずつ播種し、温度27℃、照度5,000ルクス、日長16時間の条件下で10日間栽培し、生育した実生を供試した。
(低温ストレス処理方法)
下記の温度条件に設定した人工気象室(VHT-2-15P-NC2-S、日本医化器械製作所製)に、播種後10日目のポットを入れ、以下の条件で、4日間栽培した。
「条件;温度2.5±1℃、日長16時間、照度5,000ルクス」
(評価)
低温ストレス処理後に、温度27℃、照度5,000ルクス、日長16時間で、4日間栽培した後、当該植物の地上部新鮮重量を秤量した。各処理条件で5反復をとり、それらを平均して1個体あたりの平均重量を求めた。
その結果、本化合物1を種子100キログラム当り0.5グラムで処理した区、5グラムで処理した区及び50グラムで処理した区では、いずれも無処理区と比べて明らかに地上部新鮮重量が大きかった。
(供試植物)
イネ(品種:日本晴)
(栽培)
必要量のイネ種子を1,000ppm ベンレ−ト水溶液に浸け、30℃で一晩暗黒下で培養した。ベンレ−ト水溶液を蒸留水に置換して、30℃でさらに一晩暗黒下で培養し、催芽処理を行った。
406穴プラグトレーの穴にろ紙を載せ、催芽処理後のイネ種子をろ紙上に播種した。これに1/2倍濃度の木村B水耕栽培液(Plant Science 119:39-47 (1996)参照)を加え、人工気象室内で以下の条件で5日間栽培した。
(化合物処理)
本化合物1の1,000ppm濃度のDMSO溶液を調製し、1/2倍濃度の木村B水耕栽培液にて希釈した。化合物を含む当該水耕栽培液を24穴プレートの各ウェルに2mlずつ分注し、生育したイネ実生を1ウェルに1個体ずつ移し、以下の条件下、照明培養棚で2日間栽培した。
「条件:温度25℃、照度5,000ルクス、日長12時間」
また、0.1%DMSOを含む水耕栽培液を用いて同様に栽培したイネ実生を無処理区とした。
(低温ストレス処理)
当該イネ実生を、24穴プレートごと保冷庫(MPR-1411、三洋電機製)内に移し、冷陰極管照明を用いて以下の条件で5日間栽培した。
「条件:温度4℃、照度3,500ルクス、日長12時間」
(評価)
低温ストレス処理後に、低温ストレス処理後のイネ実生を照明培養棚に移し、以下の条件で、さらに4日間栽培した。
「条件:温度25℃、照度5,000ルクス、日長12時間」
4日後、各処理区のイネ実生個体の地上部を写真撮影し、得られた画像データの緑色部分の面積を、画像解析ソフトWin ROOF(三谷商事社製)で定量して、植物の地上部の当該各個体の緑色面積を求めた。処理区毎に、2反復の緑色面積の1個体あたりの平均値を求めた。
その結果、本化合物1を1ppmの処理濃度で処理した区において、無処理区と比べて明らかに植物体緑色面積が大きかった。
(供試植物)
イネ(品種:日本晴)
(種子処理)
5% (V/V) color coat red (Becker Underwood, Inc.)、5% (V/V) CF-Clear (Becker Underwood, Inc.)、1% Maxim XL (Syngenta社製)を含むブランクスラリー溶液を調製した。イネ種子100キログラム当り5グラム又は50グラムとなるように本化合物1をそれぞれブランクスラリー溶液に溶解しスラリー溶液とした。15ml遠沈管(AGCテクノグラス社製)に、イネ種子3グラム当り0.1mlのスラリー溶液を入れ、スラリー溶液が乾くまで攪拌し、種子コーティングさせた。又、ブランクスラリー溶液を用いてコーティングした種子を無処理区用種子とした。
(栽培方法)
406穴プラグトレーの底にろ紙を敷き、種子処理後のイネ種子を播種した。これに1/2倍濃度の木村B水耕栽培液(Plant Science 119:39-47 (1996))を加え、人工気象室内で、以下の条件下10日間栽培した。
「条件:温度 昼28℃/夜23℃、湿度70%、照度8,500ルクス、日長12時間」
(低温ストレス処理)
10日間栽培後の生じたイネ実生を、プラグトレーごと保冷庫(MPR-1411、三洋電機製)内に移し、以下の条件で、冷陰極管照明下、5日間栽培した。
「条件:温度4℃、照度3,500ルクス、日長12時間」
(評価)
低温ストレス処理後の同一処理区のイネ実生4個体を、ホグランド水耕栽培液(Hoagland and Arnon, California Agricultural Experiment Station 1950 Circular 347 pp.34)60mlが入ったカップ(C-AP角カップ88、SHINGI社製)に移し、照明培養棚で以下の条件で12日間栽培した。
「条件:温度25℃、照度5,000ルクス、日長12時間」
12日後、各植物個体の地上部新鮮重量を秤量した。各処理区で4個体それぞれの地上部新鮮重量の平均値を求めた。
その結果、本化合物1を、5グラム/100キログラム種子で処理した区及び50グラム/100キログラム種子で処理した区において、無処理区と比較して明らかに地上部新鮮重量が大きかった。
(供試植物)
イネ(品種:日本晴)
(栽培)
必要量のイネ種子を1,000ppmのベンレ−ト水溶液に浸け、30℃暗黒下で一晩培養した。ベンレ−ト水溶液を捨てて蒸留水に置換し、30℃暗黒下でさらに一晩培養した。
(乾燥ストレス処理)
生育したイネ実生を5株ずつ空の35ml平底テストチューブ(アシスト/Sarstedt製)に入れ、ふたをせずに、温度 昼28℃/夜23℃、湿度:60%、照度8,500ルクス、日長12時間で、2日間静置した。
(評価)
乾燥ストレス処理後の植物をホグランド水耕栽培液(Hoagland and Arnon, California Agricultural Experiment Station 1950 Circular 347 pp.34参照)100mlが入った遠沈管(AGCテクノグラス)に入れ、温度 昼28℃/夜23℃、湿度60%、照度8,500ルクス、日長12時間で、14日間栽培した。
14日後、各試験区の供試植物5個体をまとめて地上部新鮮重量を測定し、各試験区の3反復の平均値を求めた。その結果、本化合物1を10ppmの濃度で処理したイネは、無処理区と比べて明らかに地上部新鮮重量が大きかった。
(供試植物)
コムギ(品種:アポジー)
(散布処理)
コムギ種子をプラスチックポット中の培土(愛菜)に5粒ずつ播種し、温度 昼18℃/夜15℃、照度7,000ルクスの人工気象室にて28日間栽培した。ストレス試験前に1ポット当り3個体に間引きした。
0.5ミリグラムの本化合物1に、ホワイトカーボンとポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩との混合物(重量割合1:1)を120ミリグラム、水を300μl添加し、湿式粉砕法で微粉砕することにより、化合物1のフロアブル製剤を得た。このフロアブル製剤を水50mlで希釈しこれに展着剤として、リノー(日本農薬株式会社製)を5000倍希釈になるように添加して、本化合物1を100ppmの濃度で含有する散布液を得た。自動散布機を用いて散布液の十分量を前記コムギ実生に散布した。また、本化合物1を含まないフロアブル製剤を散布処理し、無処理区とした。
(高温ストレス処理)
播種後28日目の当該供試植物を、人工気象室内で、温度 昼36℃/夜32℃、湿度 昼50%/夜60%、照度 7,000ルクス、日長12時間の条件にて7日間栽培した。
(評価)
高温ストレス処理後に、人工気象室内で、温度 昼18℃/夜15℃、照度7,000ルクスで栽培した。播種後60日目に、7ポットないしは8ポットの供試植物の穂の新鮮重量を測定し、1ポット(3個体)あたりの穂新鮮重量の平均値を求めた。その結果、本化合物1を100ppmの濃度で処理したコムギは、本化合物1を処理しなかったコムギ(無処理区)に比べて、明らかに穂新鮮重量が大きかった。
(供試植物)
イネ(品種:日本晴)
(栽培、化合物処理)
1/4倍濃度のホグランド水耕栽培液(Hoagland and Arnon, California Agricultural Experiment Station 1950 Circular 347 pp.34)に、本化合物5を10,000ppmの濃度で含むDMSO溶液を1/10,000容添加し、本化合物5を1ppm含む水耕栽培液を調製した。無処理区としては、1/4倍濃度のホグランド水耕栽培液にDMSOを1/10,000容添加した水耕栽培液を使用した。
イネ種子を、1%次亜塩素酸ナトリウム水溶液に10分間浸漬し、次いで、70%エタノール溶液に浸漬して表面消毒し、その後、蒸留水で洗浄した。消毒後の種子を、前記の試験濃度の供試化合物を含む水耕栽培液に浸し、暗黒下、温度28℃で3日間インキュベートし催芽処理を行った。
その後、各試験濃度の供試化合物を含む水耕栽培液30mlを、側面をボール紙で覆って遮光したプラスチック製のチューブ(直径:20 mm×高さ:113 mm)に分注し、スチレンボードとビニール製メッシュを用いて作製したフロートを浮かべ、水耕栽培液水面にそのフロート上に、催芽処理後の当該イネ種子を置いて、チューブ上面の照度4,000ルクス、温度26℃、湿度50%、日長16時間で3日間栽培した。
(評価方法)
栽培後の当該イネ実生を、WinRHIZOシステム(REGENT INSTRUMENTS社製)で種子根長を測定した。各試験区での、4個体又は5個体の種子根長の測定値の平均値を求めた結果、本化合物5(濃度1ppm)で処理した試験区は、無処理区と比較して、明らかに種子根が長かった。
(供試植物)
ベンサミアナタバコ(Nicotiana benthamiana)
(栽培、化合物処理)
本化合物1、本化合物4、又は本化合物5のいずれかひとつを濃度100ppmで含むDMSO溶液を調製し、1/2倍濃度のムラシゲ・スクーグ培地(水1L当たり、ムラシゲ・スクーグ培地用混合塩類(和光純薬社製)を2.3 g、ミオイノシトール(シグマアルドリッチ社製)を200 mg、ニコチン酸(和光純薬社製)を2 mg、ピリドキシン塩酸塩(和光純薬社製)を2 mg、チアミン塩酸塩(和光純薬社製)を20 mg、ショ糖(和光純薬社製)を 20 g 、MES(同仁化学研究所社製)を1 g含み、pH5.8に調整された培地)に、上記の本化合物DMSO溶液を1/1,000容添加し、本化合物を濃度10ppmで含む当該培地を作製した。無処理区としては、1/2倍濃度のムラシゲ・スクーグ培地にDMSOを1/1,000容添加した培地を使用した。
ベンサミアナタバコの種子を5μLの当該培地に播種し、22℃で一晩培養した。その後、本化合物を濃度0.1ppmで含む当該培地を45μL添加して照度4,000ルクス、温度22℃、日長16時間、で7日間栽培し、ベンサミアナタバコの実生を化合物で処理した。無処理区には1/2倍濃度のムラシゲ・スクーグ培地にDMSOを1/1,000容添加した培地を45μL添加して、同様に化合物処理を行った。
(低温ストレス処理)
化合物処理したベンサミアナタバコの実生を、照度2,000ルクス、温度1.5±1.0℃、日長16時間、で7日間栽培して低温処理を行った。
(評価)
低温ストレス処理したベンサミアナタバコの実生を、照度4,000ルクス、温度22℃、日長16時間、で3日間栽培した後、緑色の葉面積を目視評価した。完全に枯死した植物体を0、低温処理を行っていない植物体を5として、緑色面積を1/5刻みで6段階で評価し、1以上のものを軽減効果ありとした。目視評価の結果、無処理区の緑色葉面積に対して、本化合物1、本化合物4、又は本化合物5で処理した試験区は明らかに緑色葉面積が増加した。
(供試植物)
コムギ(品種:アポジー)
(散布処理)
コムギ種子をプラスチックポット中の培土(愛菜)に5粒ずつ播種し、温度 昼18℃/夜15℃、照度7,000ルクスの人工気象室にて28日間栽培した。ストレス試験前に1ポット当り3個体に間引きした。
0.5ミリグラムの本化合物1に、ホワイトカーボンとポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩との混合物(重量割合1:1)を120ミリグラム、水を300μL添加し、湿式粉砕法で微粉砕することにより、化合物1のフロアブル製剤を得た。このフロアブル製剤を水500mlで希釈しこれに展着剤として、リノー(日本農薬株式会社製)を5,000倍希釈になるように添加して、本化合物1を1ppmの濃度で含有する散布液を得た。自動散布機を用いて散布液の十分量を前記コムギ実生に散布した。また、本化合物1を含まないフロアブル製剤を散布処理し、無処理区とした。
(高温ストレス処理)
播種後28日目の当該供試植物を、人工気象室内で、温度 昼36℃/夜32℃、湿度 昼50%/夜60%、照度 7,000ルクス、日長12時間の条件にて7日間栽培した。
(評価)
高温ストレス処理後に、人工気象室内で、温度 昼18℃/夜15℃、照度7,000ルクスで栽培した。高温ストレス処理90日目に、7ポットないしは8ポットの供試植物の穂の種子粒数および種子重量を測定し、一穂あたりの種子粒数および種子重量の平均値を求めた。その結果、本化合物1で処理したコムギは、本化合物1を処理しなかったコムギ(無処理区)に比べて、明らかに種子粒数および種子重量が大きかった。
(供試植物)
イネ(品種:日本晴)
(種子処理)
5% (V/V) color coat red (Becker Underwood, Inc.)、5% (V/V) CF-Clear (Becker Underwood, Inc.)、1% Maxim XL (Syngenta社製)を含むブランクスラリー溶液を調製した。イネ種子100キログラム当り100グラムとなるように本化合物1をそれぞれブランクスラリー溶液に溶解しスラリー溶液とした。50ml遠沈管(AGCテクノグラス社製)に、イネ種子10グラム当り0.3mlのスラリー溶液を入れ、スラリー溶液が乾くまで攪拌し、種子をコーティングした。又、ブランクスラリー溶液を用いてコーティングした種子を無処理区用種子とした。
(栽培)
406穴プラグトレーの穴にろ紙を載せ、上記のように種子処理したイネ種子をろ紙上に播種して、1/2倍濃度の木村B水耕栽培液(Plant Science 119:39-47 (1996)参照)を添加し、温度 昼28℃/夜23℃、湿度60%、照度8500ルクス、日長12時間の条件で、17日間栽培した。
(乾燥ストレス処理)
生育したイネ実生を5株ずつ空の35ml平底テストチューブ(アシスト/Sarstedt製)に入れ、ふたをせずに、温度 昼28℃/夜23℃、湿度:60%、照度8,500ルクス、日長12時間で、2日間静置した。
(評価)
乾燥ストレス処理後の植物をホグランド水耕栽培液(Hoagland and Arnon, California Agricultural Experiment Station 1950 Circular 347 pp.34参照)100mlが入った遠沈管(AGCテクノグラス)に入れ、温度 昼28℃/夜23℃、湿度60%、照度8,500ルクス、日長12時間で、14日間栽培した。
14日後、各試験区の供試植物5個体をまとめて地上部新鮮重量を測定し、各試験区の3反復の平均値を求めた。その結果、本化合物1を、100グラム/100キログラム種子で処理した区において、無処理区と比べて明らかに地上部新鮮重量が大きかった。
Claims (12)
- 式(1)で示される化合物が、下記の化合物群Aから選ばれる化合物である請求項1に記載の方法。
<化合物群A>
(1)5-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(2)6-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(3)4-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル
(4)7-(トリフルオロメチル)ベンゾ[b]チオフェン−2−カルボン酸メチル - 植物が、非生物的ストレスに暴露された又は暴露されるであろう植物である請求項1又は請求項2に記載の植物の生長促進方法。
- 植物への処理が、散布処理、土壌処理、種子処理又は水耕処理である請求項1から請求項3のいずれか一に記載の方法。
- 植物への処理が、種子処理である請求項1から請求項3のいずれか一に記載の方法。
- 植物がイネ、トウモロコシ、又はコムギである請求項1から請求項5のいずれか一に記載の方法。
- 植物が遺伝子組換え植物である請求項1から請求項6のいずれか一に記載の方法。
- 非生物的ストレスが高温ストレスである請求項3から請求項7のいずれか一に記載の方法。
- 非生物的ストレスが低温ストレスである請求項3から請求項7のいずれか一に記載の方法。
- 非生物的ストレスが乾燥ストレスである請求項3から請求項7のいずれか一に記載の方法。
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