JP2012224659A - 蛍光体薄膜の形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Euが光学的に活性化したZnO:Eu膜に十分な水素が存在する状態が得られるようにする。
【解決手段】第1工程S101で、基板101の上にEuがドープされたZnOからなる薄膜102を形成する。次に、第2工程S102で、水素が存在する雰囲気の加熱により薄膜102の中に水素が含まれた状態として薄膜102のEuを活性化する。例えば、第1工程では、H2Oガスを導入するスパッタ法で、薄膜102を形成すればよい。この場合、Euを含有するZnOからなるターゲットを用いた電子サイクロトロン共鳴スパッタ法を用いればよい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、発光ダイオードや無機ELに用いられる蛍光体薄膜の製造方法に関する。
半導体中に希土類元素をドープした発光材料の薄膜は、半導体プロセスを使って形成することができるため、発光ダイオードや無機EL(Electro Luminescence)への応用が期待されている。例えば、GaN中にEu原子をドープした膜を発光層とする発光ダイオードが作製されており、Eu3+イオンからのf−f遷移に基づく純度の高い赤色発光が観測されている。発光スペクトルは、ホスト結晶の種類や、Eu3+イオンを取り囲む化学的,構造的な環境によって変化するが、メインピークは、通常617−620nm付近に存在する。
一方、ZnOはGaNと並ぶ典型的なワイドバンドギャップ半導体であり、ホスト結晶として用いた場合、発光強度の温度消光が小さいことが期待される。またZnOに導電性を持たせることが可能なため、電流注入による発光への展開も検討されている。
ところが、これまで多くの研究がなされてきたにも関わらず、ZnO:Eu膜は実用に至っていない。これは、Eu3+イオンを直接励起できる光を用いた場合には、Eu3+からの比較的強い発光が観測されるものの、ZnOを励起しての間接励起では、発光の効率は大変低いことが最大の理由である(非特許文献1,2参照)。
電流励起の場合も、ZnOホスト結晶の励起が最初に起きるため、実用上は間接励起によるEu3+からの発光を実現することが必要である。この電流励起の場合のEu3+の発光が弱い理由としては、Zn2+とEu3+の価数の違いや、Zn2+とEu3+の間のイオン半径の差が大きすぎて、Eu3+がZn原子位置に入りにくいことが指摘されている。
間接励起によりEu3+が発光するためには、ZnOからEu3+へのエネルギー移動が効率的に起きなければならないが、この効率が低いということであれば、ZnO結晶とEu3+イオンの間の相互作用が小さいことが原因として考えられている。これに関連し、ZnO:Eu膜を形成する際の原材料として、FやClなどのハロゲン原子が結合した前駆体を用いると、間接励起であってもEu3+イオンからの発光が観測されやすくなることが報告されている(非特許文献3〜5参照)。
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しかしながら、イオン半径の比較的大きなF-やCl-イオンが結晶格子中に存在すると、膜の特性や構造、電気伝導性に影響を与えるため、上述したFやClなどのハロゲン原子が結合した前駆体を用いる技術は、あまり有利な選択ではない。また、この技術は、有機金属を原材料にするCVD法やゾルゲル法により形成する膜に限定されたものであり、汎用性の高いスパッタ法には適用できないという問題点があった。
ZnO結晶とEu3+イオンの間の相互作用を大きくする他の方法としては、膜中に水素原子を導入する方法がある。水素原子は原子半径が小さいことから、格子を乱さないで結晶中に存在することができる。このように結晶中に水素を存在させることで、エネルギー移動の効率を高めることが期待される。しかしながら、希土類(Eu)イオンを光学的に活性化するためには、形成したZnO:Eu膜を加熱処理することになるが、この加熱により膜中の水素原子が膜の外に脱離し、膜中に十分な量の水素原子を確保できないという問題点があった。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、Euが光学的に活性化したZnO:Eu膜に十分な水素が存在する状態が得られるようにすることを目的とする。
本発明に係る蛍光体薄膜の形成方法は、基板の上にEuがドープされたZnOからなる薄膜を形成する第1工程と、水素が存在する雰囲気の加熱により薄膜の中に水素が含まれた状態として薄膜のEuを活性化する第2工程とを少なくとも備える。
上記蛍光体薄膜の形成方法において、第1工程では、H2Oガスを導入するスパッタ法で薄膜を形成すればよい。この場合、Euを含有するZnOからなるターゲットを用いた電子サイクロトロン共鳴スパッタ法により、薄膜を形成するとよい。また、H2Oガスの圧力を1×10-2Pa〜1×10-1Paの範囲として薄膜を形成するとよい。また、第2工程では、300℃〜400℃の範囲で加熱を行えばよい。
上記蛍光体薄膜の形成方法において、第1工程では、Euを含有するZnOからなるターゲットを用いた酸素ガスを導入する電子サイクロトロン共鳴スパッタ法で薄膜を形成してもよい。この場合、酸素ガスの圧力を2.7×10-2Pa〜5.3×10-2Paの範囲として薄膜を形成すればよい。また、第2工程では、450℃〜500℃の範囲で加熱を行えばよい。
以上説明したように、本発明によれば、EuがドープされたZnOからなる薄膜を、水素が存在する雰囲気で加熱することで、薄膜の中に水素が含まれた状態として薄膜のEuを活性化するようにしたので、Euが光学的に活性化したZnO:Eu膜に十分な水素が存在する状態が得られるようになる。
図1は、本発明の実施の形態における蛍光体薄膜の形成方法を説明するための説明図である。 図2は、ECRスパッタ装置の構成を示す構成図である。 図3は、4×10-2Paの条件でH2Oガスを導入して成膜したZnO:Eu膜を、水素ガス中にて300℃、400℃、450℃で加熱処理した後のPLスペクトルを示す特性図である。 図4は、1×10-2Paの条件でH2Oガスを導入して成膜したZnO:Eu膜を、水素ガス中にて300℃、400℃、430℃で加熱処理した後のPLスペクトルを示す特性図である。 図5は、4×10-3Paの条件でH2Oガスを導入して成膜したZnO:Eu膜を、水素ガス中にて300℃、400℃、470℃で加熱処理した後のPLスペクトルを示す特性図である。 図6は、基板温度450℃の条件で2.7×10-2Paの酸素ガス中でスパッタ成膜したZnO:Eu膜を、300℃、400℃、450℃、500℃で水素ガス中加熱処理した後のPLスペクトルを示す特性図である。 図7は、基板温度450℃の条件で5.3×10-2Paの酸素ガス中で成膜したZnO:Eu膜を、400℃、450℃、500℃で水素ガス中加熱処理した後のPLスペクトルを示す特性図である。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における蛍光体薄膜の形成方法を説明するための説明図である。この方法は、第1工程S101で、基板101の上にEuがドープされたZnOからなる薄膜102を形成する。次に、第2工程S102で、水素が存在する雰囲気の加熱により薄膜102の中に水素が含まれた状態として薄膜102のEuを活性化する。
例えば、第1工程では、H2Oガスを導入するスパッタ法で、薄膜102を形成すればよい。Euを含有するZnOからなるターゲットを用いた電子サイクロトロン共鳴(ECR)スパッタ法を用いればよい。この場合、水素が含まれた状態で薄膜102が形成されるようになる。また、第1工程では、Euを含有するZnOからなるターゲットを用いた酸素ガスを導入する電子サイクロトロン共鳴スパッタ法で薄膜102を形成してもよい。この場合、形成した薄膜102には、水素が含まれていない状態となる。
上述した実施の形態によれば、Euの活性化の加熱工程では、薄膜102が水素雰囲気中にあるので、薄膜中に十分な水素が存在する状態が得られるようになる。薄膜102が水素雰囲気に置かれていれば、薄膜102より出ていく水素分子と、外部から侵入する水素分子の間で平衡状態が実現する。特に、基板温度を上げると、水素原子の動きが促進される。平衡の考え方からすれば、水素分圧が高い程、膜中に留まる水素の濃度は高くなる。例えば、水素が含まれている薄膜102のEu活性化の熱処理の場合、水素雰囲気に置かれていれば、含まれている水素の脱離が抑制できるようになる。また、水素が含まれていない薄膜102のEu活性化の熱処理の場合、水素雰囲気に置くことで、水素が薄膜102に侵入するようになる。このように、本実施の形態によれば、Euが光学的に活性化したZnO:Eu膜に十分な水素が存在する状態が得られる
基板温度に関しては、ある一定以上であれば、水素の拡散速度も高くなると同時に、水素分子が解離して結晶内のダングリングボンドを終端する確率も上がる。しかし加熱温度が高くなるにつれて、水素原子どうしの会合熱脱離速度が増大するため、逆に、膜中の(膜中に取り込まれる)水素原子の量も減少する。
もう一つの重要な観点は、Eu3+イオンの活性化である。Eu3+イオンが発光するサイトへ収まるためには、ある一定以上の温度が必要である。加熱温度が低いと、Eu3+イオンが十分に活性化されず、ZnO結晶からの発光しか観測されない。従って、水素分子の熱脱離との関連から、最適な加熱温度範囲が存在する。また加熱時間を極力短くすることで、水素原子が薄膜102より脱離するのを防止することができる。
ここで、Euを含有するZnOからなるターゲットを用いた電子サイクロトロン共鳴スパッタ法による、EuがドープされたZnOからなる薄膜102の形成について、ECRスパッタ装置の構成とともに説明する。
ECRスパッタ装置は、図2に示すように、成膜室201と、成膜室201に連通するプラズマ生成室203とを備える。プラズマ生成室203には、マイクロ波供給源204により例えば2.45GHzのマイクロ波が供給可能とされている。また、プラズマ生成室203の周囲には、例えば、0.0875T(テスラ)の磁場をプラズマ生成室203内に発生させる磁気コイル205が備えられている。
また、成膜室201には、プラズマ生成室203の出口近傍を取り巻くリング状のターゲット202が配置されている。ターゲット202は、例えば、Eu23を1%含むZnO:Eu結晶体から構成され、所定のターゲットバイアス(高周波電力)が印加可能とされている。また、成膜室201内に載置される基板Wは、ヒータ206により加熱可能とされている。
上述したように構成されたECRスパッタ装置の成膜室201の内部に、ターゲット202と約20cm離間させて基板Wを載置した後、よく知られた排気機構(不図示)により、成膜室201の内部を所定の圧力にまで真空排気する。例えば、成膜室201の内部を、10-4〜10-5Pa台の高真空状態の圧力に減圧する。
次に、ECRスパッタ装置の処理室、例えばプラズマ生成室203に、アルゴンなどの不活性ガスおよびH2Oガスを導入して所定の真空度(圧力)とし、この状態で、磁気コイル205により2.45GHzのマイクロ波(500W程度)と0.0875Tの磁場とを供給して電子サイクロトロン共鳴条件とすることで、プラズマ生成室203内にECRプラズマを形成させる。また、アルゴンなどの不活性ガスとともに、O2ガスを導入してもよい。
上述したことにより生成されたECRプラズマは、ECRスパッタ装置の磁気コイルの発散磁場により、プラズマ生成室203から、これに連通する成膜室201の側に放出される。この状態で、プラズマ生成室203の出口に配置されたターゲット202に、例えば、13.56MHz・500Wの高周波電力(ターゲットバイアス)を供給(印加)する。このことにより、生成されているECRプラズマにより発生した粒子が、ターゲット202に衝突してスパッタリング現象が起こり、ターゲット202を構成している粒子が飛び出す状態となる。
以上のようにしてECRプラズマを生成してスパッタ状態にすることで、ターゲット202よりスパッタされている粒子(Zn原子,O原子,Eu原子)が、基板101の上に堆積し、基板101の上に薄膜102(EuドープZnO膜)が形成される。また、H2Oを導入する場合は、形成される膜には、水素も導入されるようになる。
以下、実施例を用いてより詳細に説明する。
[実施例1]
はじめに、実施例1について説明する。実施例1では、上述したECRスパッタ法により、EuがドープされたZnOからなるZnO:Eu膜を、H2Oガスを導入して形成した場合について説明する。まず、基板温度は、室温(20〜25℃)とした。ここで、成膜時の基板温度を室温より高くすると、「ZnO+H2O→Zn(OH)2↑・・・(1)」の反応により、基板の表面に一旦導入されたZnOが再蒸発してしまい、膜が形成されなかった。
以上のように、ECRスパッタ法によりH2Oガスを導入してZnO:Eu膜を形成した後、大気圧の水素ガス(水素ガスのみ)の中で加熱した。このようにして形成したZnO:Eu膜について、波長325nmのHe−Cdレーザにより室温状態で励起し、分光器で分光した後、光電子増倍管によりフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを検出した。ZnO:Eu膜からの光には1次光の反射成分も含まれるが、これは発光スペクトルの650nmの位置にピークを出現させる。この1次光を取り除くために、分光器の前にフィルターを挿入したが、このフィルターでも除き切れなかった光が650nmに重畳した。
この測定結果を図3,4,5に示す、図3は、4×10-2Paの条件でH2Oガスを導入して成膜したZnO:Eu膜を、水素ガス中にて300℃、400℃、450℃で加熱処理した後のPLスペクトルを示す特性図である。300℃、400℃の加熱処理の場合は、612nmに鋭いピークを持つ発光スペクトルが得られている。このピークは、Eu3+イオンの50準位と72準位との間の遷移である。特に、400℃加熱処理のスペクトルには、さらに5071間、5073間遷移による発光が、微弱ではあるものの、肩構造として見えている。また、617nmに分布する頂上を有するブロードな発光が重畳しているが、617nmに近い波長における強度は、結晶中の存在位置により発光波長が異なる5072間遷移に起因する成分と考えられる。これ以外は、ZnOからの発光と考えられる。
450℃で加熱処理すると、一転して500−700nm間の発光は消滅し、360−400nmにおけるZnOのバンド端発光と750nmにおけるZnO内の欠陥からの発光が趨勢となっている。この場合、膜中への水素の拡散よりも膜外への水素の脱出の方が勝り、膜中から水素がなくなった結果、ZnOホスト結晶からの発光に励起エネルギーが取られていることを示している。
次に、H2Oガス圧力を1×10-2Paとして成膜した場合について示す。図4は、1×10-2Paの条件でH2Oガスを導入して成膜したZnO:Eu膜を、水素ガス中にて300℃、400℃、430℃で加熱処理した後のPLスペクトルを示す特性図である。図3に示した結果に比較すると、ZnO:Eu膜を形成するときのH2Oガス圧が低いため、膜中の酸素量、水素量ともに少なく、5072遷移のピーク強度も小さくなっている。また、430℃で加熱処理した場合、5072遷移のピークは消滅しているが、ZnOのバンド端発光強度は、ほとんど増大していない。これは、430℃で水素は脱離してしまうが、ZnOの結晶性の改善がまだ不十分なことを物語っている。
次に、H2Oガス圧力を4×10-3Paとさらに低くして成膜した場合について示す。図5は、4×10-3Paの条件でH2Oガスを導入して成膜したZnO:Eu膜を、水素ガス中にて300℃、400℃、470℃で加熱処理した後のPLスペクトルを示す特性図である。この場合には、加熱処理温度300℃と400℃においてさえ、Eu3+イオンからの発光は見られていない。これは、膜中の水素量が足らないことが原因と考えられる。
以上の結果から、ECRスパッタ法により、H2Oガスを導入してZnO:Eu膜を形成する場合、Eu3+イオンからの発光を強く観測するためには、成膜時に1×10-2Pa以上のH2Oガス圧力が必要であることが分かった。H2Oガス圧がさらに高くなると、ターゲットの絶縁性が悪くなり、電圧印加ができなくなるので、安定に成膜できるH2Oガス圧の限界は、1×10-1Pa以下である。よって、H2Oガス圧は1×10-2Paから1×10-1Paの間に設定することが求められる。
[実施例2]
次に、実施例2について説明する。実施例2では、上述したECRスパッタ法により、O2ガスを導入してZnO:Eu膜を形成した場合について説明する。まず、基板温度は、450℃としてZnO:Eu膜を形成した。ZnO:Eu膜を形成した後、大気圧の水素ガス(水素ガスのみ)の中で加熱した。このようにして形成したZnO:Eu膜について、波長325nmのHe−Cdレーザにより室温状態で励起し、分光器で分光した後、光電子増倍管によりPLスペクトルを検出した。ZnO:Eu膜からの光には1次光の反射成分も含まれるが、これは発光スペクトルの650nmの位置にピークを出現させる。この1次光を取り除くために、分光器の前にフィルターを挿入したが、このフィルターでも除き切れなかった光が650nmに重畳した。
この測定結果を、図6,図7に示す。図6は、基板温度450℃の条件で2.7×10-2Paの酸素ガス中でスパッタ成膜したZnO:Eu膜を、300℃、400℃、450℃、500℃で水素ガス中加熱処理した後のPLスペクトルを示す特性図である。本実施例2におけるZnO:Eu膜中には、水素が存在しないので、300℃や400℃といった低温加熱処理では、膜中への水素侵入があまり起こらず、500−700nmの波長域に発光ピークは出現しない。しかし450℃で加熱処理することにより、水素ガス雰囲気の水素がZnO:Eu膜内に侵入し、部分的に水素終端することで、614nmにピークを有するEu3+からの発光が観測されている。
しかし、さらに高温の500℃で加熱処理すると、全体的に発光は弱くなっている。これは、500℃という高温では、「ZnO+H2→Zn+H2O↑・・・(2)」という反応により酸素が奪われ、ZnO結晶を構成する酸素原子が足らなくなるからである。
次に、酸素ガス圧力を5.3×10-2Paとして成膜した場合について示す。図7は、基板温度450℃の条件で5.3×10-2Paの酸素ガス中で成膜したZnO:Eu膜を、400℃、450℃、500℃で水素ガス中加熱処理した後のPLスペクトルを示す特性図である。
図6に示した結果に比較し、スパッタ成膜時に膜中に取り込まれた酸素原子の数が多いため、最初の状態がより酸化状態にある。このため、Eu3+からの発光が観測される加熱処理温度は500℃と、図6に示した結果よりも50℃高くなっている。しかし、500℃においては、前述したように反応式(2)の影響でZnO膜の膜厚自体が減るため、Eu3+からの発光はごく弱いものとなっている。
以上の結果から、酸素ガス中で成膜したZnO:Euを水素ガス中で加熱処理してEu3+からの発光を得るためには、酸素ガスの圧力として2.7×10-2Pa以上、5.3×10-2Pa以下にすることが望ましい。この場合の最適な加熱処理温度は、成膜時の酸素ガス圧力によって変わってくるが、450℃以上500℃以下であることが望ましい。
以上に説明したように、本発明によれば、水素ガス中加熱処理を行うことで、Eu3+イオンの活性化と、十分な量の水素原子をZnO:Eu膜中に留まらせることとを両立させるのが可能になった。この結果、ZnOの間接励起によるEu3+イオンからの強い発光を実現することができた。これは同時に、電流注入によってEu3+からの発光が得られることをも意味する。成膜後のポスト加熱処理時における水素分圧を変えることは容易なため、どのような成膜手法によりZnO:Eu膜を形成した場合でも、水素ガス中加熱処理という後工程を通すことで、Eu3+イオンからの発光を実現することができる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。例えば、上述では、EuがドープされたZnOからなる薄膜のEuを活性化する加熱工程を、水素ガスのみで行うようにしたが、これに限るものではない。例えば、水素とともにアルゴンなどの不活性なガスが存在する雰囲気で、加熱処理を行うようにしてもよい。この加熱処理において、EuがドープされたZnOからなる薄膜の中に水素を存在させることを阻害するガスでなければ、水素ガスとともに存在していてもよい。例えば、酸素ガスが同時に存在すると、EuがドープされたZnOからなる薄膜の中の水素の量が低下するので、好ましくない。
101…基板、102…薄膜。

Claims (8)

  1. 基板の上にEuがドープされたZnOからなる薄膜を形成する第1工程と、
    水素が存在する雰囲気の加熱により前記薄膜の中に水素が含まれた状態として前記薄膜のEuを活性化する第2工程と
    を少なくとも備えることを特徴とする蛍光体薄膜の形成方法。
  2. 請求項1記載の蛍光体薄膜の形成方法において、
    前記第1工程では、H2Oガスを導入するスパッタ法で前記薄膜を形成することを特徴とする蛍光体薄膜の形成方法。
  3. 請求項2記載の蛍光体薄膜の形成方法において、
    Euを含有するZnOからなるターゲットを用いた電子サイクロトロン共鳴スパッタ法により、前記薄膜を形成することを特徴とする蛍光体薄膜の形成方法。
  4. 請求項3記載の蛍光体薄膜の形成方法において、
    前記H2Oガスの圧力を1×10-2Pa〜1×10-1Paの範囲として前記薄膜を形成することを特徴とする蛍光体薄膜の形成方法。
  5. 請求項2〜4のいずれか1項に記載の蛍光体薄膜の形成方法において、
    前記第2工程では、300℃〜400℃の範囲で加熱を行うことを特徴とする蛍光体薄膜の形成方法。
  6. 請求項1記載の蛍光体薄膜の形成方法において、
    前記第1工程では、Euを含有するZnOからなるターゲットを用いた酸素ガスを導入する電子サイクロトロン共鳴スパッタ法で前記薄膜を形成することを特徴とする蛍光体薄膜の形成方法。
  7. 請求項6記載の蛍光体薄膜の形成方法において、
    前記酸素ガスの圧力を2.7×10-2Pa〜5.3×10-2Paの範囲として前記薄膜を形成することを特徴とする蛍光体薄膜の形成方法。
  8. 請求項6または7記載の蛍光体薄膜の形成方法において、
    前記第2工程では、450℃〜500℃の範囲で加熱を行うことを特徴とする蛍光体薄膜の形成方法。
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