JP2011236305A - ZnO蛍光体薄膜およびその製造方法 - Google Patents

ZnO蛍光体薄膜およびその製造方法 Download PDF

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【課題】ZnO:Euを用いてより広い波長域でより強く発光させることができるようにする。
【解決手段】EuがドープされたZnOからなる薄膜を基板の上にスパッタ法で形成する。次に、加熱の条件を選択する(ステップS102)。ここで、酸素が存在する雰囲気で加熱する条件が選択されれば、薄膜を形成した基板を、酸素の存在する雰囲気で900〜1000℃に加熱する(ステップS103)。この処理により、青緑色の発光が得られるZnO:EuからなるZnO蛍光体薄膜が形成される。一方、酸素が除去された雰囲気で加熱する条件が選択されれば、薄膜を形成した基板を、例えば真空排気中などの酸素が除去された雰囲気で900〜1000℃に加熱する(ステップS104)。この処理により、赤色の発光が得られるZnO:EuからなるZnO蛍光体薄膜が形成される。
【選択図】 図1

Description

本発明は、EuがドープされたZnOからなるZnO蛍光体薄膜およびその製造方法に関する。
ユウロピウム(Eu)は、可視域発光を得るための代表的な希土類ドープ材料として広く研究され、以前から実際にデバイスにおいて使用されている。赤、緑、青の三原色の発光が得られる蛍光物質をより短波長の光で励起し、得られる発光を組み合わせることで任意の色を作り出すことができる。Euは、これを包含するホスト材料に応じ、発光波長が大きく変化することが知られている。
例えば、CaS:Eu2+およびMgCa24:Eu2+は赤色の発光が得られる蛍光材料である。また、CaGa24:Eu2+は、黄色の発光が得られる蛍光材料である。また、SrGa24:Eu2+、ZnGa24:Eu2+、SrGa24:Eu2+は、緑色の発光が得られる蛍光材料である。また、BaAl24:Eu2+、SrAl24:Eu2+、BaGa24:Eu2+は、青色の発光が得られる蛍光材料である。このような蛍光材料において、産業的には、資源的に安価で透明な材料が求められている。また、より高い発光強度が得られるホスト材料が求められている。
上に述べたような多元材料ではなく、二元系材料をホスト材料とする蛍光体薄膜についても検討されている。一般に、発光強度は、温度が高くなるにつれて低くなる温度消光と呼ばれる現象がある。この温度の影響は、ホスト材料のバンドギャップが広いほど小さいため、バンドギャップの大きなホスト材料の中に、Euをドープすることが試みられている。
これまで、ZnO,TiO2,AlNなどの薄膜形成中にEuをドープし、また、これらの結晶を形成した後でEuをイオン注入してドープした蛍光材料が開発されている。これらの蛍光材料においては、材料中におけるEu3+イオンの4f準位間のf−f遷移による、波長617nmの赤色発光が観測されている(非特許文献1,2参照)。
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ところで、f−f遷移は希土類原子の電子軌道の同一殻内の遷移であり、本来は禁制遷移である。しかし、結晶中では結晶場や格子振動電場の影響を受けて、部分的に許容された電気双極子遷移により、光吸収や発光がf−f遷移で起きる。このため、f−f遷移では吸収強度は小さく、輻射遷移の確率も小さい。
また、f電子は外側のs殻とp殻の電子により遮蔽されているので、結晶場の影響をあまり受けない。このため、f−f遷移に関しては、発光波長の単色性の面からは、波長域の狭い純度の高い発光が得られるという特徴がある。しかしながら、量子遷移確率は小さいため、f−f遷移による発光の強度は低いという問題がある。これは、f−f遷移により発光するEu3+の場合も同様である。
一方、4f(n)と4f(n−1)5dの電子状態の間のf−d遷移による光吸収や発光も観測される。f−d遷移は、許容遷移であるため、一般に遷移確率はf−f遷移に比べて4桁以上大きい。このため、f−d遷移は、様々なエネルギーにより起こり、ブロードなスペクトルが得られる。また、f−d遷移のスペクトルは、格子振動とのカップリングが強い。また、5d電子は、結晶場の影響を受けやすいため、f−d遷移のエネルギーはホストの結晶によって大きく変化する。従って、f−d遷移による発光では、ホスト結晶を代えることで、異なる発光波長が得られる。
ところで、ZnO:Euについては、ZnO格子とEuの相互作用がそれほど大きくないため、ZnOからEu3+へのエネルギー移動の効率が悪い。このため、ZnO:EuでEu3+による強い発光を得るためには、Eu3+の電子準位間の遷移をEu3+イオンの直接励起によって行うことが必要になる。しかし、この発光では、前述したように励起波長が限られてしまい、実用的ではないという問題がある。
一方、Eu2+イオンのf−d電子遷移に関しては、d電子状態と格子の相互作用が影響するため、ホスト材料を励起すれば、エネルギー移動により間接的にEu2+イオンを励起できることが予測できる。実際、いわゆる無機ELにおけるEuドープ蛍光体は、多くの場合、Eu2+からの発光を使っている。しかしながら、ZnO:Euについてf−d遷移の発光を誘起させ、広い波長域にわたって強い発光を得ることは実現していなかった。
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、ZnO:Euを用いてより広い波長域でより強く発光させることができるようにすることを目的とする。
本発明に係るZnO蛍光体薄膜の製造方法は、EuがドープされたZnOからなる薄膜を基板の上にスパッタ法で形成する第1工程と、薄膜を酸素の存在する雰囲気および酸素が除去された雰囲気の中の選択された条件で900〜1000℃に加熱する第2工程とを少なくとも備える。
上記ZnO蛍光体薄膜の製造方法において、スパッタ法は、電子サイクロトロン共鳴スパッタ法であればよい。また、電子サイクロトロン共鳴スパッタ法による薄膜の形成時の酸素分圧は、4×10-3Pa以上4×10-2Pa以下とすればよい。
本発明に係るZnO蛍光体薄膜は、基板の上にスパッタ法で形成されたEuがドープされたZnOからなるZnO蛍光体薄膜であり、ZnO蛍光体薄膜は、酸素の存在する雰囲気および酸素が除去された雰囲気の中の選択された条件で900〜1000℃に加熱されて形成されたものである。
上記ZnO蛍光体薄膜において、スパッタ法は、電子サイクロトロン共鳴スパッタ法であればよい。また、電子サイクロトロン共鳴スパッタ法による薄膜の形成時の酸素分圧は4×10-3Pa以上4×10-2Pa以下とされていればよい。
以上説明したように、本発明によれば、EuがドープされたZnOからなる薄膜を基板の上にスパッタ法で形成した後、薄膜を酸素の存在する雰囲気および酸素が除去された雰囲気の中の選択された条件で900〜1000℃に加熱するようにしたので、ZnO:Euを用いてより広い波長域でより強く発光させることができるようになるという優れた効果が得られる。
図1は、本発明の実施の形態におけるZnO蛍光体薄膜の製造方法を説明するためのフローチャートである。 図2は、ECRスパッタ法により形成したZnO:Eu膜を、真空中において800℃でポストアニールしたときのω/2θスキャンX線回折パタンを示す特性図である。 図3は、酸素流量を10sccmとして作製し、成膜後に、真空(1Pa程度)にすることで酸素が除去された雰囲気でアニール処理をした場合のPLスペクトルを示す特性図である。 図4は、酸素流量を10sccmとして作製し、成膜後に、酸素雰囲気でアニール処理をした場合のPLスペクトルを示す特性図である。 図5は、酸素流量を3sccmとして作製し、成膜後に真空(1Pa程度)にすることで酸素が除去された雰囲気でアニール処理をした場合のPLスペクトルを示す特性図である。 図6は、酸素流量を3sccmとして作製し、成膜後に、酸素雰囲気でアニール処理をした場合のPLスペクトルを示す特性図である。 図7は、酸素流量を1sccmとして作製し、成膜後に真空(1Pa程度)にすることで酸素が除去された雰囲気でアニール処理をした場合のPLスペクトルを示す特性図である。 図8は、酸素流量を1sccmとして作製し、成膜後に、酸素雰囲気でアニール処理をした場合のPLスペクトルを示す特性図である。
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるZnO蛍光体薄膜の製造方法を説明するためのフローチャートである。この製造方法は、まず、ステップS101で、EuがドープされたZnOからなる薄膜を基板の上にスパッタ法で形成する。例えば、ZnOにEuが添加されたターゲットを用いたスパッタ法により、EuがドープされたZnOからなる薄膜を形成する。次に、加熱の条件を選択する(ステップS102)。
ここで、酸素が存在する雰囲気で加熱する条件が選択されれば(ステップS102のY)、薄膜を形成した基板を、酸素の存在する雰囲気で900〜1000℃に加熱する(ステップS103)。この処理により、青緑色の発光が得られるZnO:EuからなるZnO蛍光体薄膜が形成される。言い換えると、青緑色の発光が得られるZnO:EuからなるZnO蛍光体薄膜を形成するためには、酸素の存在する雰囲気で900〜1000℃に加熱する条件とすればよい。
一方、ステップS102で、酸素が除去された雰囲気で加熱する条件が選択されれば(ステップS102のN)、薄膜を形成した基板を、例えば真空排気中などの酸素が除去された雰囲気で900〜1000℃に加熱する(ステップS104)。この処理により、赤色の発光が得られるZnO:EuからなるZnO蛍光体薄膜が形成される。言い換えると、赤色の発光が得られるZnO:EuからなるZnO蛍光体薄膜を形成するためには、酸素が除去された雰囲気で900〜1000℃に加熱する条件とすればよい。
以下、本実施の形態におけるZnO蛍光体薄膜の製造方法について、より詳細に説明する。まず、前述した無機ELにおけるEuドープ蛍光体が、多くの場合Eu3+からの発光となっていることについて説明する。これまで報告されている、TiO2,ZnO,およびAlNなどにEuドープした蛍光体材料は、有機金属気相成長法(MOCVD法)、レーザーアブレーション法(PLD法)、ゾルゲル法などで作製されている。このような製造方法では、酸化的環境下に置かれるため、Euイオンの存在状態が主にEu3+となる。このため、Euからの発光がf−f遷移によるものとなる。
これらに対し、スパッタ法のようなプラズマ雰囲気下で成膜する手法を用いれば、プラズマが酸素を再スパッタし、また酸素を脱離させる効果を有するために、Eu2+からなる発光中心を効果的に形成することができるようになる。特に、ECRスパッタ法にあっては、円筒型ターゲットの中央を通ったプラズマ流が成膜中に基板上へ照射されるため、上述した効果が得られやすい。ECRスパッタでは、プラズマ流に含まれるイオンエネルギーは10−30eVと低いため、大きな損傷を与えることなく上述した効果が得られる。また、例えば、プラズマガスとしてアルゴンを用いる場合、アルゴンのプラズマが作用することになり、アルゴン原子が結晶中に留まった状態で存在することになる。これをアニールすれば、アルゴン原子が脱離した後は、この欠陥に変わってEu2+が入り込み、発光中心となりうる。
また、スパッタ法では、ZnO結晶を、Znリッチな状態、およびOリッチな状態に作り分けることができる。Oリッチな状態では、ZnとOが1:1の割合でZnO格子を形成し、さらに余った酸素原子が格子間位置に存在する。一方、Znリッチな状態では、本来なら酸素原子が占めるべき格子点位置に多くの空孔が存在する。この空孔によりZnO格子が歪められ、結晶ドメインが小さくなる場合もある。Euの発光は、ZnO格子場に強く影響を受けるので、ZnOの結晶性が悪いと、励起エネルギーが粒界へ散逸して発光も弱くなる。このため、ZnOの格子は比較的良好な結晶性にすることが求められる。
ZnOにEuが添加されたターゲットを用いたスパッタ法によりZnO:Eu膜を形成し、形成されたZnO:Eu膜を還元雰囲気でアニールすると、ZnOの深い準位からの発光が主になって赤色に光らせることができる。一方、ZnOにEuが添加されたターゲットを用いたスパッタ法により形成したZnO:Eu膜を、酸素雰囲気下で格子中の酸素を保ったまま900℃以上の高温でアニールすることにより、Eu3+がEu2+の還元状態に変化して 青色発光を付与することができる。これらのように、広い波長域にわたっての発光が得られれば、赤、緑、青の光を混合することなく、白色光源としての利用が可能になる。
以下、実施例を用いて説明する。
[実施例]
まず、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマスパッタ法を用いてZnO:Eu薄膜を形成する。ターゲットは、ZnO粉末にEu粉末を1mol%混合した材料(ZnO:Eu)を用い、円筒型に成型したものを用いる。希土類であるEuの添加量は、1mol%程度の場合に、最も発光効率が高くなることが経験的に知られている。また、スパッタ成膜時の条件は、アルゴンガス流量を8sccm、マイクロ波パワーを500W、ターゲットへ印加するRFパワーを500Wとする。また、基板温度は、室温あるいは450℃に設定する。
また、酸素ガス流量は10、6、3、1、0.5、0sccmのいずれかとする。1sccmのときの酸素分圧は4×10-3Paである。酸素流量が10sccm(酸素分圧4×10-2Pa)を超えると、ECRの放電が不安定になるため、酸素流量の上限はこの値となる。また、希フッ酸処理したSi(100)基板の上に、ZnO:Eu薄膜を形成する。なお、なお、sccmは流量の単位であり、0℃・1気圧の流体が1分間に1cm3流れることを示す。
次に、上述したスパッタ法により形成したZnO:Eu膜の加熱(アニール)は、よく知られた急速アニール(RTA)装置を用いる。アニールは、1Pa程度の減圧環境(真空)の状態、および、1気圧の酸素ガス雰囲気の状態のいずれかの条件とする。1Pa程度の真空状態が、「酸素が除去された雰囲気」であり、1気圧の酸素ガス雰囲気の状態が、「酸素の存在する雰囲気」である。
また、作製した試料(ZnO:Eu膜)からの発光(PL)の測定では、励起源として波長325nmのHe−Cdレーザーを用い、試料からの発光は、レンズによりスリットへ集光して分光器で分光した後、光電子増倍管により検出する。スリットへ入る前にフィルターを置き、試料から反射したレーザー光を98%以上カットする。また、この測定における試料温度は、室温(20℃程度)とする。
図2は、上述したECRスパッタ法により形成したZnO:Eu膜を、真空中において800℃でポストアニールしたときのω/2θスキャンX線回折パタンである。図2の(a)および(b)に示すように、基板加熱温度450℃で成膜した試料では、(002)ピークが一番強く、c軸方向に優先配向していることが分かる。一方、基板加熱をせずに室温状態で成膜した試料では、図2の(c)に示すように、固相成長により(100)優先配向のZnO:Eu膜が形成されている。Euの濃度は1%であるが、Euの存在が固相成長機構に関与して、結晶としてのエネルギーの低い(100)配向になっている。これらのように、成膜時は、基板加熱温度を450℃とした方が、結晶の状態がよいことが分かる。
また、成膜中の酸素流量が0.5sccmと不足した状態では、図2の(d)に見られるように、良好なZnO結晶格子が形成されず、回折ピークも弱い。よって、酸素流量は1sccm以上が適当で、酸素分圧は4×10-3Pa以上が、重要になることがわかる。
次に、成膜時の酸素量と、成膜後のアニール条件とについて説明する。以下では、全て、成膜時の基板加熱温度は450℃としている。まず、図3は、酸素流量を10sccmとして作製し、成膜後に、真空(1Pa程度)にすることで酸素が除去された雰囲気でアニール処理をした場合のPLスペクトルを示している。また、図4は、酸素流量を10sccmとして作製し、成膜後に、酸素雰囲気でアニール処理をした場合のPLスペクトルを示している。
また、図5は、酸素流量を3sccmとして作製し、成膜後に真空(1Pa程度)にすることで酸素が除去された雰囲気でアニール処理をした場合のPLスペクトルを示している。また、図6は、酸素流量を3sccmとして作製し、成膜後に、酸素雰囲気でアニール処理をした場合のPLスペクトルを示している。
また、図7は、酸素流量を1sccmとして作製し、成膜後に真空(1Pa程度)にすることで酸素が除去された雰囲気でアニール処理をした場合のPLスペクトルを示している。また、図8は、酸素流量を1sccmとして作製し、成膜後に、酸素雰囲気でアニール処理をした場合のPLスペクトルを示している。
ここで、図3〜8において、波長650nmの鋭いピークは、325nmの1次光がフィルターにより除き切れないで分光器へ入り、倍波の位置に観測されるために生じているものである。また、370−400nmに見られるピークは、ZnOのバンド端発光である。ポストアニール温度が高くなるほど、バンド端発光の強度が増大するのは、結晶性が向上するからである。その他のピークに関しても、一般的にポストアニール温度の上昇とともに、発光強度は増大している。とりわけ顕著なのは、900℃におけるアニールの場合である。
真空下でアニールした場合(図3,図5,図7)には、720nmから800nmにかけての赤色発光が最も強く観測され、650−670nmの発光が次に強く観測される。400nmよりも短波長の光は肉眼で見えないので、この両者を併せると、真空でアニールしたZnO:Eu膜は、赤色発光することが分かる。実際、肉眼では、深紅発光が観測される。この波長領域の発光は、ZnOの欠陥に由来するものと思われる。720nmから800nmにかけての赤色発光強度は、成膜時の酸素流量が1−10sccmの範囲にあれば、則ち、普通にZnとOで結晶が構成されていれば、大きな差はない。
一方、酸素ガス雰囲気下でアニールした場合(図4,図6,図8)には、特に900℃において、青緑色の発光が趨勢になる。図4では、470nm、520nm、580nm、675nm、750nmの発光ピークの強度がほぼ同等であるため、全体として発光は白色に見える。図6では485nmと530nmのピークが突出して強いので、青緑色の発光である。図8では500nmと570nmのピークが強いので、青緑色の発光である。500−600nmにかけてブロードな発光が観測される場合には、ZnOの酸素欠陥に由来すると言われているが、本例の場合には酸素ガス雰囲気下でのアニールのため、定かではない。しかし、450nmにピークを持つ短波長の発光は、Eu2+からの発光である。
以上の結果から明らかなように、スパッタ法で作製したZnO:Eu膜を、真空中において900℃でポストアニールすると、赤色発光するZnO:Eu膜が得られ、酸素ガス雰囲気下において900℃でポストアニールすると青緑色発光するZnO:Eu膜が得られることが示されている。なお、アニール温度が1000℃を超えると、ZnO膜が一部揮発するので、アニール温度は1000℃以下とした方がよく、従って、アニール温度は、900〜1000℃とすればよい。
なお、酸素ガス流量が0.5sccm、あるいは全く導入せずにZnO:Eu膜を形成した場合は、発光は非常に弱かった。このように形成すると多くの酸素空孔が形成されることになり、このように、多くの酸素空孔が存在すると、無放射遷移の確率が高まるためと考えられる。
以上に説明したように、単にアニールするだけで、発光に寄与するZnOやEu2+の還元状態を作ることができるのは、スパッタ中にZnO膜内にアルゴンなどのスパッタガスの原子が取り込まれることを起因としているものと考えられる。これは、ECRスパッタ法を用いていることの特徴であると考えられる。
これまで多くの蛍光体のホストには多元材料が用いられてきたが、上述した本発明により、ZnOという安価で単純な組成のホスト材料を使いながら、プロセスの条件を変えるだけで、赤色、青色、白色と発光波長を任意に選択することが分かる。本発明では、これらの発光波長の選択を、ZnOというありふれた材料で可能としている。また基板は、Siにようなエピタキシャル基板でなくてもよいので、実用上のメリットがある。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。上述では、ECRスパッタ法を例に説明したが、これに限るものではなく、他のスパッタ法でZnO:Eu膜を形成してもよい。また、上述では、ZnO粉末にEu粉末混合した(ZnOにEuが添加された)ターゲットを用いるようにしたが、これに限るものではない。例えば、ZnOターゲットとEuターゲットとを用いたスパッタ法でZnO:Eu膜を形成してもよい。また、酸素の存在する雰囲気の加熱としては、酸素雰囲気に限るものではなく、大気(空気)中で行うようにしてもよい。

Claims (6)

  1. EuがドープされたZnOからなる薄膜を基板の上にスパッタ法で形成する第1工程と、
    前記薄膜を酸素の存在する雰囲気および酸素が除去された雰囲気の中の選択された条件で900〜1000℃に加熱する第2工程と
    を少なくとも備えることを特徴とするZnO蛍光体薄膜の製造方法。
  2. 請求項1記載のZnO蛍光体薄膜の製造方法において、
    前記スパッタ法は、電子サイクロトロン共鳴スパッタ法であることを特徴とするZnO蛍光体薄膜の製造方法。
  3. 請求項2記載のZnO蛍光体薄膜の製造方法において、
    電子サイクロトロン共鳴スパッタ法による前記薄膜の形成時の酸素分圧は、4×10-3Pa以上4×10-2Pa以下とすることを特徴とするZnO蛍光体薄膜の製造方法。
  4. 基板の上にスパッタ法で形成されたEuがドープされたZnOからなるZnO蛍光体薄膜であって、
    前記ZnO蛍光体薄膜は、酸素の存在する雰囲気および酸素が除去された雰囲気の中の選択された条件で900〜1000℃に加熱されて形成されたものである
    ことを特徴とするZnO蛍光体薄膜。
  5. 請求項4記載のZnO蛍光体薄膜において、
    前記スパッタ法は、電子サイクロトロン共鳴スパッタ法であることを特徴とするZnO蛍光体薄膜。
  6. 請求項5記載のZnO蛍光体薄膜において、
    電子サイクロトロン共鳴スパッタ法による前記薄膜の形成時の酸素分圧は、4×10-3Pa以上4×10-2Pa以下とされていることを特徴とするZnO蛍光体薄膜。
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