JP5099820B2 - 赤色発光蛍光体、fed装置およびeld装置 - Google Patents

赤色発光蛍光体、fed装置およびeld装置 Download PDF

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Description

本発明は、表示装置および照明装置等に使用される蛍光体に関し、特に、赤色発光蛍光体に関する。また本発明は、そのような赤色発光蛍光体を有するFED装置およびELD装置に関する。
従来より、希土類元素を使用した粉末または薄膜状の蛍光体は、例えば、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等のディスプレイ装置および照明装置の分野において広く使用されている。
特に、MII III(ここで、MIIは、Mg、Ca、Sr、Baのいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga、Inのいずれか、またはこれらの組み合わせである)を母体材料とし、これに希土類イオンを添加した材料は、フォトルミネッセンス、エレクトロルミネッセンスおよびカソードルミネッセンスなど、多くの発光用の蛍光体として使用されている。例えば、SrGaおよびCaGaを母体材料とする蛍光体では、発光中心としてCe3+イオンを添加することにより、青色領域(波長420nm〜460nm程度)で発光する青色発光蛍光体を製作することができる。また、前述の母体材料に、Eu2+イオンを添加すると、緑色領域(波長530nm〜570nm程度)で発光する緑色発光蛍光体を製作することができる(例えば、特許文献1)。
一方、赤色の領域である波長600nm〜750nm程度で発光する蛍光体としては、BaIn:Eu、CaIn:EuおよびSrIn:Eu等について、一部研究が行われているが(非特許文献1)、この材料には、発光輝度が低い、色純度が劣るなど、解決すべき課題が多く、今のところ実用には至っていない。そのため、一般に、赤色の発光を得る際には、Y:EuまたはCaS:Eu系等のMII III系以外の蛍光体が使用されている。
特開2006−124552号公報 Georgobiani AN、Dzhabbrarov RB、Izzatov BMら、INORGANIC MATERIALS、33(2)、p148−152、1997年 三浦、日高、滝沢、「MnとCeを二重添加したSrGa2S4の発光スペクトル」、第67回応用物理学会学術講演会予稿p29−H6、p.1311
ここで、例えば、FED装置用の蛍光体を製造する場合には、光の三原色、すなわち青、緑および赤の各色の発光が必要となるため、MII III系材料とそれ以外の材料とを混合して蛍光体を構成する必要が生じるが、そのような蛍光体では、母体材料が異なることに起因した以下のような問題が生じ得る。
FED装置では、各色の蛍光体に励起エネルギー源として照射される電子線の強度は一定であるため、赤色とその他の色の蛍光体とでは、電子線によるチャージアップの挙動が異なる。またこの影響により、各蛍光体の発光のバランスが崩れ、発色を適正に維持するためには、赤色とその他の色との間で色調整が必要になる。また、母体材料が異なるため、各色の蛍光体で寿命が異なり、いずれか一方の色の蛍光体が劣化すると、残りの色の蛍光体の特性が劣化していなくても、装置が使用できない。さらには、蛍光体の製造工程が複雑となり、製造コストが増大する。
なお、最近になって、SrGa母体材料にCeとMnイオンを同時に添加した蛍光体が、赤色に発光することが報告されている(非特許文献2)。しかしながら、この材料の発光は、700nm付近にピーク波長を有し、この領域では、視感度が極めて低く、輝度が低いという問題がある。
本発明では、前述のようなチャージアップの差異による色調整の問題、寿命の差異および製造コストの問題を解消するため、母体材料の一般式がMII IIIで表される赤色発光蛍光体を提供することを課題とする。特に、本発明による赤色発光蛍光体は、視感度の高い赤色領域に、高輝度の発光が得られる。また、本発明では、そのような赤色発光蛍光体を使用したFED装置およびELD装置を提供する。
本発明では、MII III(ここで、MIIは、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)のいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga(ガリウム)、In(インジウム)のいずれか、またはこれらの組み合わせである)で表される母体材料に、Al(アルミニウム)、Mn(マンガン)が添加され、さらに、元素周期律表の第IIIa族内の少なくとも一つの元素が共添加剤として添加された赤色発光蛍光体が提供される。
ここで、前記共添加剤は、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジウム)、Nd(ネオジウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテリビウム)、Y(イットリウム)、Sc(スカンジウム)、La(ランタン)のうちの少なくとも一つであっても良い。
また、本発明では、
陰極層上に設置され、開口部に複数の電子放出体が設置された冷陰極素子と、
当該冷陰極素子と対向する面側に、蛍光体層が設置された陽極と、
を有し、
前記冷陰極素子から放出される電子によって、蛍光体が発光するフィールドエミッションディスプレイ(FED)装置であって、
前記蛍光体層は、前述のような赤色発光蛍光体を含むことを特徴とするFED装置が提供される。
さらに本発明では、
蛍光体層の片面あるいは両面に、絶縁層を有し、さらに該絶縁層の両側に、電圧を印加することが可能な電極を有するエレクトロルミネッセントディスプレイ(ELD)装置であって、
前記蛍光体層は、前述のような赤色発光蛍光体を含むことを特徴とするELD装置が提供される。
本発明では、母体材料の一般式がMII IIIで表される赤色発光蛍光体であって、高輝度の発光を示す赤色発光蛍光体を得ることができる。また、そのような赤色発光蛍光体を含むFED装置およびELD装置を提供することが可能となる。
以下、本発明の特徴について、より詳しく説明する。
本発明では、MII III(ここでMIIは、Mg、Ca、Sr、Baのいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga、Inのいずれか、またはこれらの組み合わせである)を母体材料とし、これにMnおよびAlを含み、さらに共添加剤を含む赤色発光蛍光体が提供される。
ここで、「赤色発光蛍光体」という用語は、励起された際に、赤色、すなわち波長600nm〜750nmの範囲に発光強度のピークを有する蛍光体を意味する。
通常の場合、Mnは、MII IIIを母体材料とする蛍光体に添加しても、発光しないことが知られている。また、最近になって、MII III母体材料に、MnとCeを添加することにより、赤色の発光が得られることが報告されているが、この蛍光体は、視感度の低い領域(波長700nm近傍)でしか発光が生じないため、輝度が低く、実用化は難しいという問題がある。
これに対して、本願発明者らは、このMII III+Mn系に、さらにAlおよび共添加剤を添加することによって、視感度の高くなる領域に、色純度が良好でかつ高輝度の赤色の発光が得られることを見出した。
ここで共添加剤とは、元素の周期律表の第IIIa族に位置するいずれかの元素、またはそれらの組み合わせであり、例えば、Sc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、ランタノイドのいずれか一つまたはそれらの組み合わせが含まれる。なお、ランタノイドとしては、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジミウム)、Nd(ネオジミウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)およびYb(イッテリビウム)が含まれる。
なお、MII III系に、Mn、Al、および前述の種類の共添加剤を添加することによって、高輝度の赤色の発光が生じる明確な原因は、今のところ不明である。ただし、Mn単独の添加では、赤色領域の発光が生じないことから、共添加剤が本材料系の発光中心であるMnの発光を助長する役割を果たしていると考えられる。例えば、SrGa母体材料にMnが添加された場合、蛍光体の母体材料中のGa原子は、ドーパントであるMn原子と置換されると考えられる。ただし、この置換だけでは、電子線等の励起エネルギー源が投入されても、Mnが発光する程の活性は、得られない。これに対して、SrGaに、さらに前述の共添加剤を添加した場合、蛍光体の母体材料中のSr原子が共添加剤原子と置換され、これにより、Mnがより活性化されやすくなると考えられる。さらに、Alを添加した場合、Mnの結晶場を弱める効果が生じ、視感度が高くなる領域で、赤色発光を生じさせることができると考えられる。
なお、本発明に係る蛍光体は、例えば、以下の方法により製作することができる。
まず、MII III母体材料粉末(ここでMIIは、Mg、Ca、Sr、Baのいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga、Inのいずれか、またはこれらの組み合わせである)と、所定量のAl源用粉末と、Mn源用粉末と、所定量の共添加剤源用粉末との混合粉末を調製する。なお、MII III母体材料粉末の代わりに、MII、MIIIのそれぞれの硫化物、酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩などの粉末を使用しても良い。MII III母体材料粉末の平均直径は、特に限られないが、例えば0.1μm〜20μmの範囲である。また、Al源用粉末には、金属Alの他、硫化物、酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩など硫化水素ガスで硫化できるものであればいずれの形態のものも使用できる。また、Mn源用粉末には、金属Mnの他、硫化物、酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩など硫化水素ガスで硫化できるものであればいずれの形態のものも使用できる。MnおよびAl源用粉末の粒径は、例えば0.1μm〜20μmの範囲である。同様に共添加剤源用粉末は、金属の他、硫化物、酸化物、炭酸塩、シュウ酸塩など硫化水素ガスで硫化できるものであればいずれの形態であっても良い。共添加剤源用粉末の平均直径は、例えば0.1μm〜20μmの範囲である。粉末混合には、乾式、湿式のいずれの方法を利用しても良く、乾式の場合は、例えば、ボールミル等を行って粉砕混合しても良い。
次に得られた混合粉末を焼成する。焼成は、例えば、前述の混合粉末を石英ボートに入れ、これを電気炉で熱処理後、急冷させることにより行われる。通常の場合、熱処理雰囲気は、アルゴン等の不活性ガス雰囲気、またはこれに5vol%程度のHS(硫化水素)ガスを含む混合雰囲気で行われる。通常の場合、焼成温度は、600℃〜1200℃程度であり、1000℃〜1050℃程度であることが好ましい。また焼成時間は、例えば、30分から3時間程度である。
焼成処理によって得られた焼成体は、そのまま使用しても、粉砕により粉末状にして使用しても良い。
一方、本発明の赤色発光蛍光体は、粉末の他、薄膜としても提供することができる。
本発明の赤色発光蛍光体を薄膜状の蛍光体として製作する場合、この蛍光体は、CVD(化学気相蒸着法)、PVD(物理気相蒸着法)および電子線蒸着法を含む蒸着法、あるいはスパッタ法等によって形成することができる。
例えば、SrGaを母体材料とし、これにAlと、発光中心としてのMnと、共添加剤としてのCeとが添加された赤色発光蛍光体を、蒸着法を用いて製作する場合、蒸着源として、金属Sr、Ga、Al、金属Mn、CeClのそれぞれの材料が調製される。次に、基板温度を500℃以上に保持した状態で、これらの蒸発源を基板上に蒸着させることにより、本発明に係る蛍光体を成膜することができる。薄膜の厚さは、蒸着時間を変えることにより、自由に調節することができる。
また、SrGaを母体材料とし、これにAlと、発光中心としてのMnと、共添加剤としてのCeとが添加された赤色発光蛍光体を、電子線蒸着法で製作する場合には、SrSにMn化合物およびCe化合物を混合して加圧成形した蒸発源と、Alを含むGa蒸発源との、2種類の蒸発源が使用される。すなわち、これらの蒸発源を同時に蒸発させて、500℃以上の温度に保った基板上に供給することにより、本発明に係る蛍光体を薄膜状に成膜することができる。この場合も、薄膜の厚さは、蒸着時間を変えることにより、自由に調節することができる。
成膜後に、さらに後熱処理として、不活性ガス雰囲気または不活性ガスと硫化水素(例えば、5vol%)の混合ガス雰囲気で、ランプ加熱あるいはレーザ加熱を行っても良い。これにより、薄膜蛍光体の特性を向上させることが可能になる。
一方、スパッタ法では、MII IIIの母体材料に、Al、Mnおよび前述の共添加剤を添加した混合材料がターゲットとして使用される。また、アルゴンガスまたはアルゴンガスと硫化水素ガス(5vol%)の混合ガスがスパッタガス源として使用される。すなわち、室温〜600℃程度の範囲に加熱された基板に対して、このスパッタガスを0.1〜数Paのガス圧力でスパッタさせることにより、基板上に薄膜蛍光体が形成される。薄膜の厚さは、スパッタ時間を変えることにより、自由に調節することができる。その後、さらに後熱処理として、不活性ガス雰囲気または不活性ガスと硫化水素(例えば、5%)の混合ガス雰囲気で、ランプ加熱あるいはレーザ加熱を行っても良い。これにより、薄膜蛍光体の特性を向上させることが可能になる。
このような本発明に係る蛍光体は、例えば、赤色領域の発光蛍光体として、FED(フィールドエミッションディスプレイ)装置用の蛍光体に使用することができる。
図1には、本発明の赤色発光蛍光体が適用され得るFED装置の例を示す。
図1に示すFED装置100は、所定の間隔を開けて、相互に実質的に平行に配置された2枚のガラス基板10Aおよび10Bを有し、これらのガラス基板の間には、真空室が形成されている。
一方のガラス基板10Aの内表面(すなわち真空側表面)には、陰極層20と冷陰極素子30とがこの順に積層されている。冷陰極素子30は、シリコン基板60と、このシリコン基板60上に設置された絶縁層50と、この絶縁層50上に設置されたゲート電極40とを有する。なお、この絶縁層50には、所定の周期間隔で開口80が設けられており、この開口80には、絶縁層50およびゲート電極40は、存在しない。代わりに開口80には、コーン状の電子放出体70が、先端が絶縁層50の高さレベル位置から突出するように形成されている。ただし、電子放出体70の先端は、ゲート電極40の高さレベルと同等の高さレベルであり、開口80から突出してはいない。電子放出体70の底面は、シリコン基板60の表面と接している。
他方のガラス基板10Bの内面(すなわち真空側)には、陽極層90と、蛍光体層120とがこの順に積層されている。蛍光体層120は、青、緑および赤の各領域で発光する3種類の蛍光体を含み、これらの蛍光体が、規則的な配列で、すなわち各画素に対応するように、陽極層90上に設置されている。
このように構成されたFED装置100において、陰極層20とゲート電極40の間に電位V1が印加されると、電子放出体70の先端に強い電界が生じ、これにより電子放出体70の先端から、ガラス基板10Bの方に向かって電子が放出される。
さらに、陽極層90と陰極層20との間にも電位V2が印加されており、放出された電子eは、この電位V2により生じた電界によって加速され、青、緑および赤の各色の発光を示す蛍光体が設置された蛍光体層120に衝突する。この電子衝突によって、蛍光体層120に含まれる蛍光体が発光して、各画素に対応した青、緑および赤の発光が生じるため、これにより、カラー画像を得ることができる。
ここで、従来のFED装置では、蛍光体層は、青色、緑色および赤色の各の領域の発光蛍光体として、それぞれ、MII III:Ce、MII III:Eu(ここで、MIIは、Mg、Ca、Sr、Baのいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga、Inのいずれか、またはこれらの組み合わせである)、およびY:EuまたはCaS:Euを有する。
しかしながら、蛍光体層がこのような母体材料の異なる材料系で構成された場合、同じ条件で電子線を蛍光体層に照射しても、蛍光体のチャージアップの挙動が異なるため、これにより、時間とともに色バランスがシフトする現象が生じる。従って、適宜、このような色バランスのずれをモニターするとともに、この色バランスのずれを調節する必要が生じる。また、材料系が異なるため、各色の蛍光体毎に耐用寿命が大きく異なる場合が生じ得る。そのような場合、仮に、ある色の発光を示す蛍光体が劣化していない場合であっても、一つの材料の劣化によって、蛍光体層全体が使用できなくなり、結局、装置寿命が短くなるという問題が生じる。さらに、蛍光体層の製造の際に複数の材料を個別に調整する必要が生じ、蛍光体層さらにはFED装置の蛍光体の製造コストが増大するという問題が生じる。
これに対して、本発明のFED装置では、蛍光体層120は、青色、緑色および赤色の各領域の発光蛍光体として、それぞれ、MII III:Ce、MII III:Eu、およびMII IIIを母体材料とし、これにAlとMnが添加され、さらに、元素周期律表の第IIIa族内の少なくとも一つの元素が共添加剤として添加された赤色発光蛍光体を有する(ここで、MIIは、Mg、Ca、Sr、Baのいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga、Inのいずれか、またはこれらの組み合わせである)。
この場合、各色の発光の蛍光体層120は、同一の母体材料、すなわちMII III系の材料で構成されているため、各色の蛍光体のチャージアップの程度がほぼ等しくなるとともに、各色の蛍光体の寿命をほぼ同様の時期に揃えることができる。従って、従来のFED装置の蛍光体装置において生じる、チャージアップによる色バランスの調整の問題、および蛍光体毎に寿命の差異が大きくなるという問題が生じにくくなる。さらに本蛍光体層120の製作の際には、同一の母体材料をベースとし、添加する元素を変更するだけで、容易に三原色用の蛍光体が得られるため、製造コストを著しく抑制することができる。
なお、前述の例では、本発明に係る赤色発光蛍光体を蛍光体層に含むFED装置を例として、本発明の適用例を説明した。しかしながら、本発明に係る赤色発光蛍光体は、この他の表示装置、例えばELD(エレクトロルミネッセントディスプレイ)装置、および照明装置等にも適用できることは、当業者には明らかである。
なお当業者には公知なように、通常のELD装置は、図2に示すように、透明基板210上に、透明電極220、絶縁層230、蛍光体層240、絶縁層250および金属電極260をこの順に積層することにより構成される。ただし、本発明によるELD装置200では、蛍光体層240に、本発明による赤色発光蛍光体が設置される。図において、270は、エレクトロルミネッセント発光を表している。
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、以下の方法により、SrGaを母体材料とし、これにAlと発光中心としてMnを含み、共添加剤としてCeを含む蛍光体を作製した。
まず、平均粒子直径が1μmのSrGa粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)に、平均粒子直径が1μmのAlF粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)1mol%と、平均粒子直径が1μmのMn金属粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)6mol%と、平均粒子直径が1μmのCe粉末(99.9%、高純度化学(株)社製)0.2mol%とを添加して、ミル混合器(型番8000:スペックス社製)で30分間粉砕撹拌し、混合原料粉末を得た。Ce粉末は、全粉末量に対してCe濃度が0.1mol%となるように添加した。
次に、この混合原料粉末約4gを石英ボートに入れ、これを電気炉内に設置した。次に、電気炉内の雰囲気をアルゴン+5vol%硫化水素雰囲気とし、1200℃で1時間、石英ボートを保持し、混合原料粉末を焼成した。
得られた粉末を乳鉢を用いて、平均粒径1μm程度に粉砕して、実施例1に係る蛍光体粉末を得た。
(実施例2)
実施例2では、SrGaを母体材料とし、これにAlと発光中心としてMnを含み、共添加剤としてLaを含む蛍光体を作製した。
まず、平均粒子直径が1μmのSrGa粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)に、平均粒子直径が1μmのAlF粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)1mol%と、平均粒子直径が1μmのMn粉末(純度99.99%、高純度化学(株)社製)6mol%と、平均粒子直径が1μmのLa粉末(99.9%、高純度化学(株)社製)とを添加して、ミル混合器で30分間粉砕撹拌し、混合原料粉末を得た。La粉末は、全粉末量に対してLa濃度が0.1mol%となるように添加した。
次に、この混合原料粉末約4gを石英ボートに入れ、これを電気炉内に設置した。次に、電気炉内の雰囲気をアルゴン+5vol%硫化水素雰囲気とし、1200℃で1時間、石英ボートを保持し、混合原料粉末を焼成した。
得られた粉末を乳鉢を用いて、平均粒径1μm程度に粉砕して、実施例2に係る蛍光体粉末を得た。
(実施例3〜15)
前述の実施例1と同様の方法により、SrGaを母体材料とし、これにAlと発光中心としてMnを含み、さらに共添加剤Rを含む蛍光体作製した。ただし共添加剤Rは、Gd、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、YまたはScのいずれかとした(それぞれ、実施例3〜15とする)。また、Al、Mn、および共添加剤Rの添加濃度は、粉末の全量に対してそれぞれ、1mol%、6mol%および0.1mol%とした。
(比較例1)
前述の実施例1と同様の方法により、SrGaを母体材料とし、これに発光中心としてMnを含む蛍光体を作製した。なお、比較例1では、Mn(6mol%)のみを添加し、Alは添加していない。共添加剤は、Ce(0.1mol%)とした。
(比較例2)
前述の実施例1と同様の方法により、ZnGaを母体材料とし、これに発光中心としてMnを含む蛍光体を作製した。ただしこの実施例では、ドーパントとしてMn(6mol%)のみを添加し、Alおよび共添加剤は添加していない。
(蛍光体の特性評価)
前述の方法で製作された実施例1〜15および比較例1、2の粉末蛍光体に紫外線(波長約365nm)を照射して、発光特性を評価した。
図3には、実施例1に係る蛍光体の発光ピークを示す(A線)。なおこの図には、B線として、比較例1に係る蛍光体の発光特性、およびC線として、比較例2に係る蛍光体の発光特性が同時に示されている。また、図4には、実施例2に係る蛍光体の発光ピークを示す(D線)。
図3および図4から明らかなように、実施例1(A線)および実施例2(D線)に係る粉末状蛍光体では、波長約650nmの領域に、赤色の発光ピークが得られた。これらの発光色の色座標(x,y)は、約(0.69,0.30)である。一方、比較例1に係る粉末状蛍光体では、波長700nmに発光ピークが得られた。
また、比較例2、すなわちバックグラウンドの600nm〜800nmの領域の発光強度の積分値に対する、実施例1および2に係る蛍光体の同積分強度の比は、それぞれ、13および10となり、Al、Mnおよび共添加剤をともに添加することにより、極めて良好な赤色の発光ピークが得られることがわかった。
表1には、実施例1〜15に係る各蛍光体の発光ピーク波長を示す。また同表には、比較例2に係る蛍光体(すなわち、共添加剤を含まない蛍光体)の600nm〜800nmの領域のバックグラウンド発光強度の積分値に対する、実施例1〜15に係る各蛍光体の同領域でのピーク強度の積分値の比を示す。
Figure 0005099820
この表から、実施例1〜15に係る蛍光体では、Mnのみを添加した比較例2に係る蛍光体に比べて、赤色領域の発光が1.2倍から45倍も増大していることがわかる。このように、AlおよびMnとともに第IIIa族元素を0.1mol%添加した蛍光体では、波長約650nmの領域に、バックグラウンドピークを越える有意な発光ピークが得られることがわかった。
本発明の赤色発光蛍光体は、電子線、紫外線、X線、電界等の励起エネルギー源を蛍光体に照射して発光させる、例えば、FEDやEL等の表示装置または照明用の赤色発光蛍光体として使用することができる。
本発明に係る赤色発光蛍光体が蛍光体層の一部として設置されたFED装置の一例である。 本発明に係る赤色発光蛍光体が発光層の一部として設置されたELD装置の一例である。 本発明に係る赤色発光蛍光体(実施例1)の発光ピークを示す図である。 本発明に係る別の赤色発光蛍光体(実施例2)の発光ピークを示す図である。
符号の説明
10A、10B ガラス基板
20 陰極層
30 冷陰極素子
40 ゲート電極
50 絶縁層
60 シリコン基板
70 電子放出体
80 開口
90 陽極層
100 FED装置
120 蛍光体層
200 ELD装置
210 透明基板
220 透明電極
230 絶縁層
240 蛍光体層
250 絶縁層
260 金属電極
A 実施例1に係る蛍光体材料の発光特性
B 比較例1に係る蛍光体材料の発光特性
C 比較例2に係る蛍光体材料の発光特性
D 実施例2に係る蛍光体材料の発光特性。

Claims (4)

  1. II III(ここで、MIIは、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)のいずれか、またはこれらの組み合わせであり、MIIIは、Ga(ガリウム)、In(インジウム)のいずれか、またはこれらの組み合わせである)で表される母体材料に、Al(アルミニウム)、Mn(マンガン)が添加され、さらに、元素周期律表の第IIIa族内の少なくとも一つの元素が共添加剤として添加された赤色発光蛍光体。
  2. 前記共添加剤は、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジウム)、Nd(ネオジウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユーロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテリビウム)、Y(イットリウム)、Sc(スカンジウム)、La(ランタン)のうちの少なくとも一つを有することを特徴とする請求項1に記載の赤色発光蛍光体。
  3. 陰極層上に設置され、開口部に複数の電子放出体が設置された冷陰極素子と、
    当該冷陰極素子と対向する面側に、蛍光体層が設置された陽極と、
    を有し、
    前記冷陰極素子から放出される電子によって、蛍光体が発光するフィールドエミッションディスプレイ(FED)装置であって、
    前記蛍光体層は、前記請求項1または2に記載の赤色発光蛍光体を含むことを特徴とするFED装置。
  4. 蛍光体層の片面あるいは両面に、絶縁層を有し、さらに該絶縁層の両側に、電圧を印加することが可能な電極を有するエレクトロルミネッセントディスプレイ(ELD)装置であって、
    前記蛍光体層は、前記請求項1または2に記載の赤色発光蛍光体を含むことを特徴とするELD装置。
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