JP2019099770A - 蛍光体、発光装置、照明装置および画像表示装置 - Google Patents

蛍光体、発光装置、照明装置および画像表示装置 Download PDF

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炳哲 洪
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Abstract

【課題】赤色の視感度が高い短波長領域(590nm以上、650nm以下)の発光成分が多く、耐久性に優れた狭帯域赤色蛍光体とその製造方法、該蛍光体を含む高品質の発光装置、並びに照明装置および画像表示装置の提供。【解決手段】所定の式で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体であって、該蛍光体1gを、室温から550℃までに加熱した際に発生する水分(H2O)の総量が0.20mg以下であり、CuKα線(1.5418Å)を用いて測定された粉末X線回折パターンにおいて2θ=18.0〜20.0°におけるピーク強度I1と2θ=29.0〜30.5°におけるピーク強度I2との関係で、I2/I1で示される比が0.020以下であることを特徴とする蛍光体。【選択図】図3

Description

本発明は、蛍光体、発光装置、照明装置および画像表示装置に関する。
近紫外または短波長可視域で発光する励起用光源と蛍光体とを併用することにより白色発光する発光装置(以下、適宜「LED」という。)が一般化し、近年、画像表示装置や照明装置に実用化されている。特に赤色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「赤色蛍光体」という。)は、画像表示装置や照明装置用の発光装置に使用されており、その発光特性は様々に改良されている。このうち効率と演色性の両立のために、特定の波長帯で半値幅が狭く、耐久性および効率が高い蛍光体の開発が重要視される。
画像表示装置や照明装置の高効率化と演色性の両立を実現するためには、例えば、発光スペクトルの発光ピーク波長が590nm以上650nm以下で、かつ発光スペクトルの半値幅が1nm以上80nm以下である赤色蛍光体を用いることが有効である。そのため上記の発光特性を有する高耐久性で高効率な赤色蛍光体の開発が行われている。
このような蛍光体として、特許文献1および特許文献2には、KSiF:Mn4+などのMn4+付活フッ化物蛍光体とその改良方法が開示されている。
特表2016−517464号公報 特開2017−95677号公報
特許文献1には、高温で気体状態の含フッ素酸化剤と接触させて得られる色安定Mn4+ドープ蛍光体が記載されているが、本発明者らの検討に拠れば、引用文献1に記載の含フッ素酸化剤を用いた高温での処理によって、蛍光体の結晶相とは異なる結晶相が生成して、得られる蛍光体に異相が含まれる傾向にあり、その結果、発光装置に使用する蛍光体の使用量が多くなり耐久性が低くなるという問題が生じることが明らかとなった。
また、特許文献2に記載の蛍光体は、異相を含んでいることから、内部量子効率が低く、発光装置に使用する際に発光装置の効率が下がる傾向にある。
本発明は、上記課題を鑑みて、赤色の視感度が高い短波長領域(590nm以上、650nm以下)の発光成分が多く、耐久性に優れた狭帯域赤色蛍光体とその製造方法、該蛍光体を含む高品質の発光装置、並びに照明装置および画像表示装置を提供する。
本発明者等は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、加熱時に発生する水分を少なくし、かつ、粉末X線回折パターンにおける特定のピーク強度比をできるだけ小さい蛍光体を用いることで上記課題を解決しうることを見出して本発明に到達した。また、所定の組成を有する結晶相を含むMn付活フッ化物を2種以上のフッ素含有物質を用いて加熱するという製造方法を採用することで、上記課題を解決しうることを見出して本発明に到達した。
即ち本発明は、以下の(1)〜(15)に存する。
(1)下記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体であって、
該蛍光体1gを、室温から550℃までに加熱した際に発生する水分(HO)の総量が0.20mg以下であり、
CuKα線(1.5418Å)を用いて測定された粉末X線回折パターンにおいて2θ=18.0〜20.0°におけるピーク強度Iと2θ=29.0〜30.5°におけるピーク強度Iとの関係で、I/Iで示される比が0.020以下であることを特徴とする蛍光体。
Mn [1]
(式[1]中、
A元素は、Li、Na、K、Rb、Csからなる群から選ばれる1種以上の元素を表し、
D元素は、Si、Ge、Tiからなる群から選ばれる1種以上の元素を表す。
x、y、z、wは、各々独立に、下記式を満たす値である。
1.5≦x≦2.5
0.5≦y<1
y+z=1
5.0≦w≦7.0)
(2)455nmの波長を有する光を照射したときの内部量子効率が80.0%以上である、(1)に記載の蛍光体。
(3)A元素が、少なくともKを含む、(1)又は(2)に記載の蛍光体。
(4)D元素が、少なくともSiを含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の蛍光体。
(5)第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、該第2の発光体が(1)〜(4)のいずれかに記載の蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
(6)(5)に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。
(7)(5)に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
(8)下記式[2]で表される組成を有する結晶相を含むMn付活フッ化物を加熱処理して蛍光体を得る蛍光体の製造方法であって、
前記加熱処理が、2種以上のフッ素含有物質を用いて前記Mn付活フッ化物を加熱する加熱工程を含むことを特徴とする、蛍光体の製造方法。
Mn [2]
(式[2]中、
A元素は、Li、Na、K、Rb、Csからなる群から選ばれる1種以上の元素を表し、
D元素は、Si、Ge、Tiからなる群から選ばれる1種以上の元素を表す。
x、y、z、wは、各々独立に、下記式を満たす値である。
1.5≦x≦2.5
0.5≦y<1
y+z=1
5.0≦w≦7.0)
(9)前記加熱工程が、第1フッ素含有物質の存在下で前記Mn付活フッ化物を加熱する第一加熱工程と、前記第1フッ素含有物質と異なる第2フッ素含有物質の存在下で前記Mn付活フッ化物を加熱する第二加熱工程とを含む、(8)に記載の蛍光体の製造方法。
(10)前記第一加熱工程が、前記Mn付活フッ化物を300℃以上に加熱する工程であり、
前記第二加熱工程が、前記Mn付活フッ化物を前記第一加熱工程の加熱温度よりも低い温度に加熱する工程である、(9)に記載の蛍光体の製造方法。
(11)前記フッ素含有物質がガスである、(8)〜(10)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(12)前記2種以上のフッ素含有物質のうちの第1フッ素含有物質が、1種以上のフッ素含有酸化性物質である、(8)〜(11)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(13)前記2種以上のフッ素含有物質のうちの第2フッ素含有物質が、F、NF、SiF、HF、SF、NHHF、NHF、SbF、ClF、BrF、B
rF、XeF、CF、C、CHF、CHF、BFおよびPFからなる群から選ばれる1種以上である、(8)〜(12)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(14)前記第一加熱工程の加熱温度は、500℃以上550℃以下である、(8)〜(13)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
(15)前記第二加熱工程の加熱温度は、100℃以上300℃以下である、(8)〜(14)のいずれかに記載の蛍光体の製造方法。
本発明によれば、赤色の視感度が高い短波長領域(590nm以上、650nm以下)の発光成分が多く、耐久性に優れた高効率の狭帯域赤色蛍光体とその製造方法を提供することが可能となる。好ましくは、該製造方法により、発光効率、耐久性、使用量等の蛍光体の特性を低下させる特定の異相が低減された狭帯域赤色蛍光体や、該異相が目的の蛍光体に戻された狭帯域赤色蛍光体を提供することが可能となる。
さらに本発明によれば、該蛍光体を含む高品質の発光装置、並びに照明装置および画像表示装置を提供することが可能となる。
参考例1で得られた蛍光体のXRDパターンを示す図である。縦軸は強度(a.u.)を示す。 比較例1で得られた蛍光体のXRDパターンを示す図である。縦軸は強度(a.u.)を示す。 実施例1で得られた蛍光体のXRDパターンを示す図である。縦軸は強度(a.u.)を示す。 実施例2で得られた蛍光体のXRDパターンを示す図である。縦軸は強度(a.u.)を示す。 実施例3で得られた蛍光体のXRDパターンを示す図である。縦軸は強度(a.u.)を示す。
以下、本発明について実施形態や例示物を示して説明するが、本発明は以下の実施形態や例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表わす。また、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち一種又は二種以上を任意の組み合わせおよび組成で含有していてもよいことを示している。例えば、「(Ca,Sr,Ba)Al:Eu」という組成式は、「CaAl:Eu」と、「SrAl:Eu」と、「BaAl:Eu」と、「Ca1−xSrAl:Eu」と、「Sr1−xBaAl:Eu」と、「Ca1−xBaAl:Eu」と、「Ca1−x−ySrBaAl:Eu」(但し、式中、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1である。)とを全て包括的に示しているものとする。
また、本明細書中、「Mn4+」と「4価のマンガン」とは、同義である。
本発明は、蛍光体(第一の実施態様)、蛍光体の製造方法(第二の実施態様)、発光装置(第三の実施態様)、照明装置(第四の実施態様)、および画像表示装置(第五の実施態様)を含む。
{蛍光体について}
[式[1]について]
本発明の第一の実施態様に係る蛍光体は、下記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む。
Mn [1]
(式[1]中、
A元素は、Li、Na、K、Rb、Csからなる群から選ばれる1種以上の元素を表し、
D元素は、Si、Ge、Tiからなる群から選ばれる1種以上の元素を表す。
x、y、z、wは、各々独立に、下記式を満たす値である。
1.5≦x≦2.5
0.5≦y<1
y+z=1
5.0≦w≦7.0)
式[1]中、A(A元素)は、Li(リチウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Rb(ルビジウム)、Cs(セシウム)からなる群から選ばれる1種以上の元素を表す。中でも、混合物ではなく単相の化合物になりやすく均質に発光する点で、A元素は、少なくともKを含むことが好ましく、Kであることがより好ましい。
尚、A元素は、本実施態様の効果を損なわない範囲でその他の元素で一部置換されていてもよい。その他の元素としては、例えば、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)などが挙げられる。
式[1]中、D(D元素)は、Si、Ge、Tiからなる群から選ばれる1種以上の元素を表す。中でも、発光イオンであるMn4+が付活されやすい点で、D元素は、少なくともSi及び/又はTiを含むことが好ましく、少なくともSiを含むことがより好ましく、Siであることがさらに好ましい。
尚、D元素は、本実施態様の効果を損なわない範囲でその他の元素で一部置換されていてもよい。その他の元素としては、Sn(スズ)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)などが挙げられる。
式[1]中、Mnは、マンガンを表す。本実施態様の効果を損なわない限り、Mnは、その他の付活元素、例えば、Eu(ユーロピウム)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジム)、Nd(ネオジム)、Sm(サマリウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホルミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)、Yb(イッテルビウム)の1種以上で一部置換されていてもよい。
式[1]中、Fは、フッ素を表す。Fは、その他のハロゲン元素、例えば、Cl(塩素)、Br(臭素)、I(ヨウ素)、および酸素などで一部置換されていてもよい。
xは、A元素の含有量を表し、その範囲は、通常1.5≦x≦2.5であり、下限値は、好ましくは1.7、より好ましくは1.9、また上限値は、好ましくは2.3、より好ましくは2.1である。
yは、D元素の含有量を表し、その範囲は、通常0.5≦y<1であり、下限は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上、また上限は、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.98以下である。
zは、Mnの含有量を表す。
yとzの相互関係は、通常、y+z=1を満たす。
wは、Fの含有量を表し、その範囲は、通常5.0≦w≦7.0であり、下限値は、好ましくは5.5、より好ましくは5.8、また上限値は、好ましくは6.5、より好ましくは6.2である。
蛍光体の組成は、一般的に知られる手法で確認することができる。例えば、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−OES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)、原子吸光分析法(AAS)、イオンクロマトグラフ法(IC)、蛍光X線分析法(XRF)、エネルギー分散型X線分光法(EDX)、波長分散型X線分光法(WDX)、電子線マイクロアナライザー分析法(EPMA)などがある。
[水分含有量について]
本実施態様に係る蛍光体は、室温(例えば、25℃)から550℃まで加熱した際に発生する水分(HO)の総量が、蛍光体1gに対して、通常0.20mg以下であって、好ましくは0.15mg以下、より好ましくは0.10mg以下である。水分の総量は、少ない方が好ましいため下限は特に設定はないが、通常0mgより大きい値となる。
蛍光体を室温(例えば、25℃)から550℃まで加熱した際に検出した水分の総量が上記範囲内にある、つまり蛍光体内部に含まれる水分の総量が少ない場合、蛍光体に含まれるMnが水分と反応して、価数が下がって発光中心として機能しなくなることに起因する蛍光体特性の低下を防ぐことができるため、好ましい。また、蛍光体に含まれるMnが水分と反応してMn水和物となって、蛍光体粒子が黒変することに起因する蛍光体特性の低下を防ぐことができるため、好ましい。
[粉末X線回折(XRD)パターン]
本実施態様に係る蛍光体は、CuKα線(1.5418Å)を用いて測定された粉末X線回折パターンにおいて2θ=18.0〜20.0°におけるピーク強度Iと2θ=29.0〜30.5°におけるピーク強度Iとの関係で、I/Iで示される比が、通常0.020以下である。好ましくは0.010以下、より好ましくは0.005以下、さらに好ましくは0.003以下である。2θ=29.0〜30.5°におけるピーク強度Iが限りなく小さくなることが好ましいが、粉末X線回折パターンにおける検出限界を考慮した場合、Iが検出されない場合にはI/Iの値は0.001未満であると考えられる。その場合の下限値は特に設定されない。尚、各領域内に複数のピークが存在する場合には、各領域内の最強ピーク強度をそれぞれ、I、Iとする。
本実施形態の蛍光体は、上記水分含有量の特徴を有するため、通常、加熱工程を経て得られる。その際に、式[1]で表される組成を有する結晶相の一部が分解、変性等を起こすことにより異相が発生し、粉末X線回折パターンにおいて2θ=29.0〜30.5°に式[1]で表される組成を有する結晶相が有さないピークが観察される。例えば、図1に示される参考例1の蛍光体と図2に示される比較例1の蛍光体の粉末X線回折パターンを比較すると、図2に示される比較例1の蛍光体では、2θ=29.865°に異相に由来するピークが観察される。2θ=29.0〜30.5°のピークで規定される異相の具体的な組成は特定されていないものの、K(Mn,Si)F、K(Mn,Si)Fであることが推察される。本発明者らの検討に拠れば、この特定の異相の出現は蛍光体母体成分であるSiが抜けることに起因し、この特定の異相の出現を減らすことは、発光に寄与しない成分をなくすだけではなく蛍光体中のSiの抜けを補うので、有効な蛍光体成分を増やしながら耐久性の高い蛍光体が得られるという効果が得られることを見出し、本発明に至った。つまり、2θ=29.0〜30.5°におけるピーク強度Iは加熱工程などで生じる異相含有量を反映することから、これに着目した。
一方で、粉末X線回折パターンにおいて、KSiF(PDF#01−075−0694)の最強線である(111)に帰属する18.881°付近のピークを異相含有量との比較対象とするため、2θ=18.0〜20.0°におけるピーク強度Iに着目した。
よって、I/Iで示される比が上記範囲にあることは、特定の異相が低減されていることを意味しており、これによって本実施形態の蛍光体は、発光装置とする際の使用量を低減させ、効率が高く、耐久性に優れた発光装置を作製することができる。
[発光スペクトル]
本実施態様の蛍光体は、励起ピーク波長350nm以上、460nm以下の光で励起して発光スペクトルを測定した場合に、以下の特徴を有することが好ましい。
上述の発光スペクトルにおける発光ピーク波長は、通常590nm以上、より好ましくは600nm以上、更に好ましくは610nm以上、また通常650nm以下である。
上記範囲内であると、好適な赤色の発光を有する点で好ましい。
また、本実施態様の蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅が、通常80nm以下、好ましくは50nm以下、より好ましくは40nm以下、更に好ましくは20nm以下、特に好ましくは10nm以下、また通常1nm以上の範囲である。
上述の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅が、上記範囲内であると色純度が高く、また発光強度も高い傾向にあるため好ましい。
なお、上記の蛍光体を励起ピーク波長の光で励起するには、例えば、キセノン光源を用いることができる。また、発光スペクトルの測定は、例えば、蛍光分光光度計F−7000(日立製作所製)や蛍光測定装置(日本分光社製)等を用いて行うことができる。発光ピークおよび発光ピークの半値幅は、得られる発光スペクトルから算出することができる。
[内部量子効率]
本実施形態の蛍光体は、455nmの波長を有する光を照射したときの内部量子効率が80.0%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。なお、このとき発せられる赤色の光は、上述の発光スペクトルの範囲内である。
{蛍光体の製造方法}
本発明の第二の実施態様は、蛍光体の製造方法である。
本実施形態に係る蛍光体の製造方法は、下記式[2]で表される組成を有する結晶相を含むMn付活フッ化物を加熱処理して蛍光体を得る蛍光体の製造方法であって、前記加熱処理が、2種以上のフッ素含有物質を用いて前記Mn付活フッ化物を加熱する加熱工程を含むことを特徴とする。
Mn [2]
(式[2]中、
A元素は、Li、Na、K、Rb、Csからなる群から選ばれる1種以上の元素を表し、
D元素は、Si、Ge、Tiからなる群から選ばれる1種以上の元素を表す。
x、y、z、wは、各々独立に、下記式を満たす値である。
1.5≦x≦2.5
0.5≦y<1
y+z=1
5.0≦w≦7.0)
[Mn付活フッ化物]
本実施態様の製造方法では、前記式[2]で表される組成を有する結晶相を含むMn付活フッ化物を用いる。
本実施態様の製造方法で用いるMn付活フッ化物は、前記式[2]の組成となるように
、各蛍光体原料をフッ化水素酸(以下、「HF酸」と称する場合がある。)中に溶解し、得られた蛍光体原料溶液をHF酸中で混合することにより製造することが可能である。
式[2]中の各元素の具体例および好ましい範囲などは前述の式[1]の対応する元素と同様である。
Mn付活フッ化物の原料としては、金属化合物や金属などを用いる。例えば、前記式[2]で表される組成を有する蛍光体を製造する場合、A元素の原料(以下、適宜「A源」という。)、D元素の原料(以下、適宜「D源」という。)、Mn元素の原料(以下、適宜「Mn源」という。)、F元素の原料(以下、適宜「F源」という。)から必要な組み合わせを用いる。また、以下では、例えば、元素Aの原料を「A源」、元素Dの原料を「D源」などということがある。
本実施態様の製造方法は、上記原料の組み合わせをHF酸中に溶解し(溶解工程)、得られた原料溶液をHF酸中で混合し反応させMn付活フッ化物含有スラリーを生成する工程(沈澱工程)を含み、必要に応じて、得られたMn付活フッ化物含有スラリーを熱する工程(水熱処理工程)、洗浄する工程(洗浄工程)、分散・分級する工程(分散・分級工程)、乾燥工程を含むことが好ましい。また、後述する通り、本実施態様の製造方法は、加熱工程(フッ素含有物質のガスによるガス処理工程を含む。)を含む。
以下に、本実施態様の製造方法で用いるMn付活フッ化物の製造方法の一例を示すが、本実施態様はこれらに限定されるものではない。
(Mn付活フッ化物の原料)
本実施態様の製造方法において使用されるMn付活フッ化物の原料としては、公知のものを用いることができる。
上記A源におけるK源としては、Kを含んでいれば特に制限は無いが、具体例として、K(カリウム)、KF、KHF、KCl、KOH、KCOなどが挙げられ、その中でもFを含んでいるKF、KHFが好ましい。
また、Li源、Na源、Rb源、Cs源の具体例としては、K源の具体例として挙げた各化合物においてKをそれぞれLi、Na、Rb、Csに置き換えた化合物が挙げられる。
上記D源におけるSi源の具体例としては、ヘキサフルオロ珪酸(HSiF)、ヘキ、酸化ケイ素(SiO)、ケイ素(Si)などが挙げられるが、Fを含有しているHSiFが好ましい。
また、Ge源、Ti源の原料の具体例としては、Si源の具体例として挙げた各化合物において、SiをそれぞれGe、Tiに置き換えた化合物が挙げられる。
上記Mn源としては、過マンガン酸カリウム(KMnO)、ヘキサクロロマンガン酸カリウム(KMnCl)、ヘキサフルオロマンガン酸カリウム(KMnF)、などが挙げられる。中でも、ヘキサフルオロマンガン酸カリウム(KMnF)が好ましい。
また、Eu源、Ce源等のその他の付活元素の原料の具体例としては、EuまたはCeを含有する塩化物、フッ化物、酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の化合物が挙げられる。
上記F源の具体例としては、フッ化水素酸(HF)、フッ素(F)などが挙げられる。
更には、これらの炭酸塩や酸化物、蓚酸塩、金属、塩化物などHF酸中に溶解した後に
フッ化物になりうる化合物であれば原料として用いることができる。
なお、前記式[2]におけるF源(フッ素)は、A源、D源、Mn源から供給されてもよいし、反応溶液であるHF酸から供給されてもよい。また、各原料には、不可避的不純物が含まれていてもよい。
[溶解工程]
本実施態様の製造方法は、目的組成が得られるようにMn付活フッ化物原料を必要な組み合わせで攪拌機等を用いてHF酸中に充分に溶解し、Mn付活フッ化物原料溶液を得る工程(溶解工程)を含む。
原料の溶解に使用するHF酸の濃度は、原料を溶解し、溶解した後にフッ化物を形成できる濃度を適宜設計すればよい。HF酸の濃度が低くなると、水酸化物等のフッ化物以外の化合物の生成する可能性が高まるため、HF酸の濃度は高い方が好ましい。しかしながら、HF酸の取扱いの観点から、HF酸の濃度は40〜55%程度が好ましい。
[沈澱工程]
本実施態様の製造方法は、得られた原料溶液をHF酸中で混合し反応させMn付活フッ化物含有スラリーを生成する工程(沈澱工程)を含む。
原料溶解液を混合し反応させてMn付活フッ化物含有スラリーを生成する方法は、例えば、HF酸とK源からなる原料溶解液をHF酸とSi源とMn源からなる原料溶解液に添加して、Mn付活フッ化物含有スラリーを生成させる方法、あるいはその逆の添加方法;HF酸とK源からなる原料溶解液と、HF酸とSi源からなる原料溶解液と、HF酸とMn源からなる原料溶解液とを、HF酸溶解液に添加反応させてMn付活フッ化物含有スラリーを生成させる方法;K源とSi源とMn源が溶解しているHF酸溶解液に、貧溶媒を添加する方法;K源とSi源とMn源が溶解しているHF酸溶解液を加熱してHF酸溶解液を蒸発させる方法;またはSi源とMn源が溶解しているHF酸溶解液にK源を含む液体または固体を添加する方法;など、反応してMn付活フッ化物含有スラリーが生成すれば、任意の方法で反応させてもよい。
原料反応液を混合し、Mn付活フッ化物含有スラリーを生成させる際に使用するHF酸の濃度は、原料溶液が反応し、反応後に得られる沈澱物がフッ化物になりうるものであれば特に制限されない。HF酸の濃度が低くなると、水酸化物等のフッ化物以外の化合物の生成する可能性が高まるため、HF酸の濃度は高い方が好ましいが、HF酸の取扱いの観点、またMn付活フッ化物含有スラリーのHF酸への溶解度が高まり収率が低くなったりするため、HF酸の濃度は30〜55%程度が好ましい。
[水熱処理工程]
本実施態様の製造方法は、Mn付活フッ化物含有スラリーをより均質化させるために、テフロン(登録商標)製の容器にMn付活フッ化物含有スラリーを入れて、密封した後、所定の温度で加熱処理する工程(水熱処理工程)を含むことが好ましい。使用する容器は、テフロン製に限らず、HF酸に対する耐性や所定の温度における耐熱性があればよい。密封したテフロン製容器の内圧は温度増加とともに高くなるので、テフロン製の容器をSUS製の容器で囲い耐圧性を持たせてもよい。
より均質化させるために、水熱処理工程中に、Mn付活フッ化物含有スラリーを撹拌子で撹拌する、または処理容器全体を回転させてもよい。
水熱処理温度は、低すぎると均質化が十分進まず、高すぎると発光イオンであるMnイオンの価数が変わり発光特性が低下する傾向にあることから、40〜200℃の範囲が好ましい。
水熱処理工程時、Mn付活フッ化物含有スラリー溶液にHF酸以外に塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等を必要に応じて添加してもよい。
[洗浄工程]
本実施態様の製造方法は、前記Mn付活フッ化物含有スラリーを製造した後、該Mn付活フッ化物含有スラリーをろ過分離する前に、洗浄する工程(洗浄工程)を含むのが好ましい。
Mn付活フッ化物含有スラリーを製造する際に用いた、HF酸やK源、Si源、Mn源、あるいはHF酸に溶解した際に生成したフッ化物などにより、未反応の残留分を主とする不純物や原料の未反応分がMn付活フッ化物含有スラリー中に残留したり、副反応分などがMn付活フッ化物含有スラリー中に生成する傾向にある。
蛍光体の特性向上のためには、原料の残留分や溶解時に生成した不純物をできる限り除去する必要がある。不純物を除去することができれば洗浄方法に特に制限はない。例えば、HF酸やフッ化水素カリウムとHF酸の混合液、あるいはヘキサフルオロ珪酸とHF酸の混合液など、生成したMn付活フッ化物含有スラリーが水酸化物等のフッ化物以外の化合物にならなければ、任意の液で洗浄することができる。
特に未反応のMnやSi、Kの除去を考慮すると、HF酸が含まれた溶液を用いて洗浄するのがよい。前記HF酸の濃度が低くなると、水酸化物等のフッ化物以外の化合物の生成する可能性が高まり、発光特性の低下を引き起こすため、HF酸の濃度は高い方が好ましいが、HF酸の取扱いの観点、またMn付活フッ化物含有スラリーのHFへの溶解度が高まり収率が低くなることがあるため、HF酸の濃度は40〜50%程度が好ましい。
Mn付活フッ化物含有スラリーの洗浄を行う際のHF酸の重量は、Mn付活フッ化物含有スラリー重量の通常0.1倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上、また通常100倍以下、好ましくは50倍以下である。
HF酸にMn付活フッ化物含有スラリーを浸漬する時間は、攪拌条件等によっても異なるが、通常10分以上、好ましくは1時間以上であり、また、通常24時間以下、好ましくは12時間以下である。またHF酸を用いて複数回洗浄を行ってもよいし、洗浄する液の種類や濃度を変えてもよい。
洗浄工程において、HF酸を含む洗浄液にMn付活フッ化物含有スラリーを浸漬して洗浄する作業を行った後に、ろ過を行い、乾燥させることによってMn付活フッ化物含有スラリーを製造することができる。また、エタノールあるいはアセトン、メタノールなどを用いた洗浄を中間に入れてもよい。
[分散・分級工程]
本実施態様の製造方法は、蛍光体を分散・分級する工程を含むことが好ましい。分散・分級工程は、後述する加熱工程の前に実施しても後に実施してもよく、第1加熱工程の前に実施しても、第2加熱工程の後に実施してもよい。
本実施態様で製造される蛍光体は、その重量メジアン径D50が、通常3μm以上、中でも10μm以上、また、通常50μm以下、中でも30μm以下の範囲であることが好ましい。重量メジアン径D50が小さすぎると、輝度が低下する場合や蛍光体粒子が凝集してしまう場合がある。一方、重量メジアン径D50が大きすぎると、塗布ムラやディスペンサー等の閉塞が生じる傾向がある。
なお、本実施態様で製造される蛍光体の重量メジアン径D50は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置等の装置を用いて測定することができる。
[乾燥工程]
本実施態様の製造方法は、蛍光体を乾燥する工程を含むことが好ましい。乾燥工程の雰囲気としては、大気中、ドライ大気中、窒素中;アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、ヘリウム(He)などの希ガス中が挙げられる。乾燥温度は、50℃以上300℃以下で実施した方がよい。乾燥温度が低すぎると、水分を除去できない傾向があり、高すぎると蛍光体の発光特性が下がる傾向がある。
本実施態様で用いるMn付活フッ化物の製造方法については、本実施態様の効果を損なわない限り特に制限はなく、例えば、国際公開第2009/099211号パンフレット、特開2015−028148号公報、特表2009−528429号公報などの各公報に記載の方法を適宜参照できる。
[加熱工程]
本実施態様の製造方法は、上記Mn付活フッ化物を処理室内で加熱処理する際に、2種以上のフッ素含有物質を用いて前記Mn付活フッ化物を加熱する加熱工程を含むことを特徴とする。
(フッ素含有物質)
加熱工程で用いることができるフッ素含有物質としては、特に限定されないが、F、NF、SiF、HF、SF、NHHF、NHF、SbF、ClF、BrF、BrF、XeF、XeF、CF、C、CHF、CHF、BFおよびPFからなる群から選ばれる2種以上を選択して、適宜、用いればよい。
用いるフッ素含有物質は、固体、液体、または気体(ガス)のいずれであってもよく、導入する際の形態と加熱処理中の形態が異なっていてもよい。たとえば、常温で固体であるフッ素含有物質を前記Mn付活フッ化物に供給したのちに、加熱によって該フッ素含有物質を気化させることによりフッ素含有ガス雰囲気下で加熱工程を実施してもよい。または、前記Mn付活フッ化物を配置した加熱炉内に気体のフッ素含有ガスを供給しながら加熱工程を実施してもよい。フッ素含有物質の形態としては、供給の容易さから、ガスであることが好ましい。
2種以上のフッ素含有物質は、加熱工程において、混合して用いてもよいし、後述するように加熱工程を、第一加熱工程と第二加熱工程の2段階に分けて別々に用いてもよい。
(加熱工程)
加熱工程における処理室内の雰囲気は、特に限定されないが、不活性ガスを導入して実施してもよい。上述のフッ素含有物質が固体または液体である場合には、処理室内に予め不活性ガスを導入してから加熱工程を実施してもよいし、上述のフッ素含有物質が気体(フッ素含有ガス)である場合には、処理室内に予め又は加熱工程の途中で不活性ガス及び/又はフッ素含有ガスを導入してもよい。
<フッ素含有ガスの導入方法>
フッ素含有ガスおよび不活性ガスの導入では、処理室内が所定の圧力になるように導入する。フッ素含有ガスおよび不活性ガスを導入する順序は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、同時に処理室内に導入してもよく、フッ素含有ガスと不活性ガスを交互に導入してもよく、また予めフッ素含有ガスと不活性ガスとを混合してから処理室内に導入してもよい。また、ガス導入前に、処理室内を1Torr未満に真空排気しておいてもよいし、フッ素含有ガス雰囲気にしておいてもよい。
不活性ガスとしては、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、窒素(N)のうちから少なくとも1種類以上が選択されることが好ましい。
前記ガス導入において、2種類以上混合して導入する場合、特に限定されるものではないが、混合手法として例えば、混合ガスを容器に充填したものを処理室内に導入する方法、処理室の上流側で2種類以上のガスを予め混合し処理室内に導入する方法、各ガス種を個別に導入し処理室内で混合する方法の中から少なくとも1種類以上選択されるのが好ましい。
<加熱温度等の条件>
加熱工程における昇温速度は、通常20℃/min以下、好ましくは10℃/min以下、また通常1℃/min以上、好ましくは3℃/min以上の範囲内で制御する。
加熱工程では、処理室内またはMn付活フッ化物を加熱して一定以上の加熱温度に保持することにより、加熱処理を行う。本明細書における加熱温度とは、加熱により変化した分の温度を指すのではなく、到達温度を指し、通常、100℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは300℃以上であって、上限は、通常700℃以下、好ましくは650℃以下、より好ましくは600℃以下である。加熱工程の間、加熱温度は一定に保持していてもよいし、適宜温度を変化させていてもよい。
加熱温度での保持時間は、通常10分以上、好ましくは30分以上、また通常50時間以下、好ましくは20時間以下である。
加熱工程では、処理室内の圧力を一定に保持した状態で、フッ素含有物質を含むガスを流通させることが好ましい。ただし、加熱工程の間に、適宜、圧力を変えることも可能であり、また別の実施形態として、処理室内にフッ素含有ガスを封入した状態で加熱処理を行うことも可能である。
また、加熱工程中の処理室内の圧力は、通常500kPa以下、好ましくは250kPa以下、より好ましくは150kPa以下、また好ましくは10kPa以上、より好ましくは30kPa以上である。
加熱工程は、上記の条件を適宜組み合わせて実施すればよいが、好ましくは第1フッ素含有物質の存在下でMn付活フッ化物を加熱する第一加熱工程と、前記第1フッ素含有物質と異なる第2フッ素含有物質の存在下で前記Mn付活フッ化物を加熱する第二加熱工程とを含む、2段階で実施することが好ましい。第一加熱工程と第二加熱工程は、用いるフッ素含有物質を変更すれば、その他の条件は同一であっても、異なっていてもよいが、以下に詳述する条件でそれぞれ実施することが好ましい。
(第一加熱工程)
本実施態様の製造方法において、第一加熱工程は、第1フッ素含有物質の存在下でMn付活フッ化物を加熱する工程である。
第1フッ素含有物質は、前記「加熱工程」欄に記載したフッ素含有物質から適宜選択することができるが、1種以上のフッ素含有酸化性物質であることが好ましい。フッ素含有酸化性物質としては、例えば、F、NF、HF、ClF、BrF、BrFおよびXeFからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。また、第1フッ素含有物質がガスの場合には不活性ガスを混合してもよい。フッ素含有物質が酸化性である場合には、後述する水分や酸素元素などを除去する間に還元されたMnを酸化し、発光中心となる4価のMnとして維持できるため好ましい。
不活性ガスは、窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、およびキセノン(Xe)からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
なお、2種以上の第1フッ素含有物質を用いる場合のその混合比率は、特に限定されないが、それぞれ10体積%以上が好ましい。それ以下になると、フッ素含有酸化性物質を用いる場合には、その酸化力の効果が弱くなるため、不適切である。
<加熱温度等の条件>
第一加熱工程における昇温速度は、本実施態様の効果を損なわない限り特に制限はないが、処理室内の温度を制御しながら一定にしてもよく、しなくてもよい。例えば、500℃から550℃まで多段階的に昇温し保持してもよい。
第一加熱工程における加熱温度は、例えば、前記「加熱工程」欄に記載した加熱温度が挙げられるが、これに限定されない。下限は、好ましくは300℃以上、より好ましくは400℃以上、さらに好ましくは450℃以上、特に好ましくは500℃以上であって、上限は、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下である。上記範囲とする
ことで、Mn付活フッ化物内に含まれる水分や酸素などの不純物元素を除去することでき、得られる蛍光体の発光特性が向上したり、耐久性が向上するため好ましい。
加熱温度での保持時間は、通常10分間以上、好ましくは30分間以上、また通常50時間以下、好ましくは20時間以下である。
処理室内の圧力については後述する。
前記加熱温度および保持時間の範囲内であれば、Mn付活フッ化物が含有する酸素などの不純物元素が除去されることで、蛍光体の発光特性が向上するため好ましく、また粉体としてのハンドリングが著しく困難になるほど蛍光体が大きく成長しないため、好ましい。さらに、フッ素含有物質としてフッ素含有酸化性物質を用いた場合には、蛍光体に含まれるMnが酸化され、発光特性が向上するためさらに好ましい。
上記加熱温度範囲が300℃未満の場合は、Mn付活フッ化物内の水分や不純物元素を除去することが難しく、発光特性の低下要因となるため、不適切である。一方で、下限値よりも高い温度とすることで、フッ素含有物質としてフッ素含有酸化性物質を用いた場合に、該フッ素含有酸化性物質による酸化力が高まるため好ましい。また、600℃を超えた場合は、Mn付活フッ化物の分解量が多くなり、前記式[2]で表される蛍光体が得られにくくなるため、不適切である。
<第1フッ素含有ガスの導入方法>
本実施態様の製造方法は、第1フッ素含有物質が気体(ガス)の場合には、処理室内に第1フッ素含有ガスを導入する第1フッ素含有ガス導入工程を含む。
第1フッ素含有ガスは、活性化状態で処理室内に導入することも可能である。第1フッ素含有ガスを活性化させる方法として、例えば、プラズマ、マイクロ波、紫外線、触媒を用いた方法などから選択される1種以上の方法が好ましい。
第1フッ素含有ガス導入では、処理室内が所定の圧力になるように導入する。第1フッ素含有ガスの導入方法は、本実施態様の効果を損なわない限り特に制限はない。例えば、第1フッ素含有ガスと不活性ガスなど2種以上のガスを導入する場合、同時に処理室内に導入してもよく、第1フッ素含有ガスと不活性ガスを交互に1回ずつまたは複数回導入してもよく、また予め第1フッ素含有ガスと不活性ガスを混合してから処理室内に導入してもよい。また、ガス導入前に、処理室内を1Torr未満に真空排気しておいてもよいし、第1フッ素含有ガス雰囲気にしておいてもよい。
第1フッ素含有ガス導入工程において、2種以上混合して導入する場合、混合方法は特に限定されないが、例えば、混合ガスを容器に充填したものを処理室内に導入する方法、処理室の上流側で2種類以上のガスを予め混合して処理室内に導入する方法、および各ガス種を個別に導入して処理室内で混合する方法から選択される1種以上の方法が好ましい。
第一加熱工程における第1フッ素含有ガスの導入時期は、本実施態様の効果を損なわない限り特に制限はなく、第一加熱工程前または第一加熱工程中のいずれかに導入してよい。具体的には、第一加熱工程前であれば室温時に導入すること、第一加熱工程中であれば昇温中に導入することが挙げられる。
(第二加熱工程)
本実施態様の製造方法において、第二加熱工程は、前記第1フッ素含有物質と異なる第2フッ素含有物質の存在下で前記Mn付活フッ化物を加熱する工程である。
第二加熱工程は、前記第一加熱工程の後処理として実施される工程であることが好ましい。
第2フッ素含有物質は、前記「加熱工程」欄に記載したフッ素含有物質が好ましく、少なくともSiFを含むことが好ましい。特定の第2フッ素含有物質を用いることにより
、発光効率、耐久性、使用量などの蛍光体の特性を低下させる特定の異相を低減させることができるため好ましい。特に、SiFを含む第2フッ素含有物質を用いることにより、前記特定の異相を除去するだけではなく、異相を目的の蛍光体に戻すことができるため好ましい。
また、第2フッ素含有物質と不活性ガスを混合してもよい。
不活性ガスは、窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、およびキセノン(Xe)からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
なお、2種以上の第2フッ素含有物質を用いる場合のその混合比率は、特に限定されないが、それぞれ10体積%以上が好ましい。それ以下になると、蛍光体の特定の異相を低減させる第2フッ素含有物質の効果が弱くなるため、不適切である。
<加熱温度等の条件>
第二加熱工程の加熱温度は、例えば、前記「加熱工程」欄に記載した加熱温度が挙げられるが、これに限定されないが、前記第一加熱工程の加熱温度よりも低い温度であることが好ましい。具体的には、下限は、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは200℃以上であって、上限は、好ましくは500℃以下、好ましくは300℃以下である。上記範囲とすることで、得られる蛍光体を分解することなく、特定の異相を低減させることができる。
加熱温度での保持時間は、通常10分間以上、好ましくは30分間以上、また通常50時間以下、好ましくは20時間以下である。
第二加熱工程は、該処理室内またはMn付活フッ化物の温度を500℃以下で合計10分間以上継続することが好ましく、例えば500℃から室温まで冷却しながら降温してもよいし、200℃を一定に保持し続けてもよい。また、前記処理室内を一旦冷却した後(例えば、25℃)、再度昇温してもよい。処理室内の降温方法は、本実施態様の効果を損なわない限り特に制限はないが、該処理室内の温度を制御しながら降温してもよく、自然冷却によって降温してもよい。
処理室内の圧力については後述する。
<第2フッ素含有ガスの導入方法>
本実施態様の製造方法は、第2フッ素含有物質が気体(ガス)の場合には、処理室内に第2フッ素含有ガスを導入する第2フッ素含有ガス導入工程を含む。
第2フッ素含有ガスは、活性化状態で処理室内に導入することも可能である。第2フッ素含有ガスを活性化させる方法として、例えば、プラズマ、マイクロ波、紫外線、触媒を用いた方法などから選択される1種以上の方法が好ましい。
第2フッ素含有ガス導入では、処理室内が所定の圧力になるように導入する。第2フッ素含有ガスの導入方法は、本実施態様の効果を損なわない限り特に制限はない。第1フッ素含有ガスが前記処理室内に残留している状態で、第2フッ素含有ガスを導入してもよいし、残留第1フッ素含有ガスを除去するため処理室内を真空排気した後、第2フッ素含有ガスを導入してもよい。また、例えば、第2フッ素含有ガスと不活性ガスなど2種以上のガスを導入する場合、同時に処理室内に導入してもよく、第2フッ素含有ガスと不活性ガスを交互に1回ずつまたは複数回導入してもよく、また予め第2フッ素含有ガスと不活性ガスを混合してから処理室内に導入してもよい。
第2フッ素含有ガス導入工程において、2種以上混合して導入する場合、混合方法は特に限定されないが、例えば、混合ガスを容器に充填したものを処理室内に導入する方法、処理室の上流側で2種類以上のガスを予め混合して処理室内に導入する方法、および各ガス種を個別に導入して処理室内で混合する方法から選択される1種以上の方法が好ましい。
第二加熱工程における第2フッ素含有ガスの導入時期は、本実施態様の効果を損なわない限り特に制限はなく、第一加熱工程後、第二加熱工程前、または第二加熱工程前および工程中に導入してよい。
(第一加熱工程と第二加熱工程における処理室内の圧力)
前記第一加熱工程及び第二加熱工程における処理室内の圧力は、本実施態様の効果を損なわない限り特に制限はないが、一定に保持することにより、品質が向上するため好ましい。
前記第一加熱工程では、少なくとも第1フッ素含有物質が含まれている状態で前記処理室内の圧力を一定に保持することが好ましい。
前記第二加熱工程では、少なくとも第2フッ素含有物質を含み、第1フッ素含有物質が含まれていてもよい状態で前記処理室内の圧力を一定に保持することが好ましい。
前記第一加熱工程および第二加熱工程では、いずれの工程でも、処理室内の圧力を一定に保持した状態で処理室内に第1フッ素含有ガスまたは第2フッ素含有ガスを流通することが好ましいが、適宜圧力を多段階的に変えることも可能である。また、処理室内の圧力を一定に保持した状態で処理室内に第1フッ素含有ガスまたは第2フッ素含有ガスを封入することも好ましい。
尚、「流通」とは、処理室内へのガスの導入と排出が同時に行われることであり、処理室内の圧力を一定に保持する場合には、例えば、ガスの導入量と排出量とを同量にすればよい。また、「封入」とは、処理室内へガスを導入後にその導入を停止し、処理室内を封じることである。
前記第一加熱工程および第二加熱工程における前記処理室内の圧力は、通常500kPa以下、好ましくは200kPa以下、より好ましくは150kPa以下、また好ましくは10kPa以上、より好ましくは30kPa以上である。
{蛍光体含有組成物}
本発明の第一の実施態様に係る蛍光体、第二の実施態様に係る製造方法で製造された蛍光体は、液体媒体と混合して用いることもできる。特に、該蛍光体を発光装置等の用途に使用する場合、これを液体媒体中に分散させた形態で用いることが好ましい。該蛍光体を液体媒体中に分散させたものを、適宜「本発明の一実施態様に係る蛍光体含有組成物」などと呼ぶものとする。
[蛍光体]
本実施態様の蛍光体含有組成物に含有させる前記蛍光体の種類に制限は無く、上述したものから任意に選択することができる。また、本実施態様の蛍光体含有組成物に含有させる前記蛍光体は、1種のみであってもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。更に、本実施態様の蛍光体含有組成物には、本実施態様の効果を著しく損なわない限り、前記蛍光体以外の蛍光体を含有させてもよい。
[液体媒体]
本実施態様の蛍光体含有組成物に使用される液体媒体としては、前記蛍光体の効果を目的の範囲で損なわない限りにおいて特に限定されない。例えば、所望の使用条件下において液状の性質を示し、前記蛍光体を好適に分散させるとともに、好ましくない反応を生じないものであれば、任意の無機系材料および/又は有機系材料が使用でき、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂などが挙げられる。
[液体媒体および蛍光体の含有率]
本実施態様の蛍光体含有組成物中の前記蛍光体および液体媒体の含有率は、本実施態様の効果を著しく損なわない限り任意であるが、液体媒体については、本実施態様の蛍光体含有組成物全体に対して、通常50重量%以上、好ましくは75重量%以上であり、通常
99重量%以下、好ましくは95重量%以下である。
[その他の成分]
本実施態様の蛍光体含有組成物には、本実施態様の効果を著しく損なわない限り、前記蛍光体および液体媒体以外に、その他の成分を含有させてもよい。また、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
{発光装置}
本発明の第三の実施態様は、第1の発光体(励起光源)と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、該第2の発光体が本発明の第一の実施態様に係る蛍光体または第二の実施態様に係る製造方法で製造された蛍光体を含む発光装置である。ここで、該蛍光体は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
蛍光体としては、例えば、励起光源からの光の照射下において、緑色領域ないし赤色領域の蛍光を発する蛍光体を使用する。具体的には、緑色ないしは黄色蛍光体としては、500nm〜600nmの波長範囲に発光ピークを有するものが好ましく、赤色蛍光体としては、590〜650nmの波長範囲に発光ピークを有するものである。
尚、励起源については、350nmから500nm以下の波長範囲の発光ピークを有するものを用いる。
以下、本発明の第一の実施態様に係る蛍光体または第二の実施態様に係る製造方法で製造された蛍光体が、590nm以上650nm以下の波長範囲に発光ピークを有し、且つ第一の発光体が350nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用いる場合の発光装置の態様について記載するが、本実施態様はこれらに限定されるものではない。
上記の場合、本実施態様の発光装置は、例えば、次の(A)又は(B)の態様とすることができる。
(A)第1の発光体として、350nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用い、第2の発光体の第1の蛍光体として、560nm以上600nm未満の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体(黄色蛍光体)を、第2の発光体の第2の蛍光体として、本発明の第一の実施態様に係る蛍光体または第二の実施態様に係る製造方法で製造された蛍光体を用いる態様。
(B)第1の発光体として、350nm以上500nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用い、第2の発光体の第1の蛍光体として、500nm以上560nm未満の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体(緑色蛍光体)を、第2の発光体の第2の蛍光体として、本発明の第一の実施態様に係る蛍光体または第二の実施態様に係る製造方法で製造された蛍光体を用いる態様。
(黄色蛍光体)
上記の態様における黄色蛍光体としては、例えば、下記の蛍光体が好適に用いられる。
ガーネット系蛍光体としては、例えば、(Y,Gd,Lu,Tb,La)(Al,Ga)12:(Ce,Eu,Nd)、
オルソシリケートとしては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:(Eu,Ce)、
(酸)窒化物蛍光体としては、例えば、(Ba,Ca,Mg)Si:Eu(SION系蛍光体)、(Li,Ca)(Si,Al)12(O,N)16:(Ce,Eu)(α‐サイアロン蛍光体)、(Ca,Sr)AlSi(O,N):(Ce,Eu)(1147蛍光体)、(La,Ca,Y)(Al,Si)11:Ce(LSN蛍光体)
などが挙げられる。
尚、上記蛍光体においては、ガーネット系蛍光体が好ましく、中でも、YAl12:Ceで表されるYAG系蛍光体がより好ましい。
また、LSN蛍光体も好ましく、中でもLaSi11:Ceで表されるLSN蛍光体がより好ましい。
(緑色蛍光体)
上記の態様における緑色蛍光体としては、例えば、下記の蛍光体が好適に用いられる。
ガーネット系蛍光体としては、例えば、(Y,Gd,Lu,Tb,La)(Al,Ga)12:(Ce,Eu,Nd)、Ca(Sc,Mg)Si12:(Ce,Eu)(CSMS蛍光体)、
シリケート系蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO10:(Eu,Ce)、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:(Ce,Eu)(BSS蛍光体)、
酸化物蛍光体としては、例えば、(Ca,Sr,Ba,Mg)(Sc,Zn):(Ce,Eu)(CASO蛍光体)、
(酸)窒化物蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)Si:(Eu,Ce)、Si6−zAl8−z:(Eu,Ce)(β‐サイアロン蛍光体)(0<z≦1)、(Ba,Sr,Ca,Mg,La)(Si,Al)12:(Eu,Ce)(BSON蛍光体)、
アルミネート蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)Al1017:(Eu,Mn)(GBAM系蛍光体)
などが挙げられる。
(赤色蛍光体)
本実施態様の発光装置においては、第一の実施態様に係る蛍光体または第二の実施態様に係る製造方法で製造された蛍光体の他に、その他の赤色蛍光体を併用してもよい。例えば、下記の蛍光体が好適に用いられる。
硫化物蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca)S:Eu(CAS蛍光体)、LaS:Eu(LOS蛍光体)、
ガーネット系蛍光体としては、例えば、(Y,Lu,Gd,Tb)MgAlSi12:Ce、
ナノ粒子としては、例えば、CdSe、
窒化物または酸窒化物蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Eu(S/CASN蛍光体)、(CaAlSiN1−x・(SiO:Eu(CASON蛍光体)、(La,Ca)(Al,Si)11:Eu(LSN蛍光体)、(Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu(258蛍光体)、(Sr,Ca)Al1+xSi4−x7−x:Eu(1147蛍光体)、M(Si,Al)12(O,N)16:Eu(Mは、Ca、Srなど)(α‐サイアロン蛍光体)、Li(Sr,Ba)Al:Eu(上記のxは、いずれも0<x<1)などが挙げられる。
[発光装置の構成]
本実施態様の発光装置は、第1の発光体(励起光源)を有し、且つ、第2の発光体として少なくとも本発明の第一の実施態様に係る蛍光体または第二の実施態様に係る製造方法で製造された蛍光体を使用している他は、その構成は制限されず、公知の装置構成を任意にとることが可能である。
装置構成および発光装置の実施形態としては、例えば、特開2007−291352号公報に記載のものが挙げられる。
その他、発光装置の形態としては、砲弾型、カップ型、チップオンボード、リモートフォスファー等が挙げられる。
{発光装置の用途}
本実施態様に係る発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、色再現範囲が広く、且つ、演色性も高いことから、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いられる。
[照明装置]
本発明の第四の実施態様は、本発明の第三の実施態様に係る発光装置を光源として備える照明装置である。
本発明の第三の実施態様に係る発光装置を照明装置に適用する場合には、前述のような発光装置を公知の照明装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、保持ケースの底面に多数の発光装置を並べた面発光照明装置等を挙げることができる。
[画像表示装置]
本発明の第五の実施態様は、本発明の第三の実施態様に係る発光装置を光源として備える画像表示装置である。
本発明の第三の実施態様に係る発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、その画像表示装置の具体的構成に制限は無いが、カラーフィルタとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルタとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
{測定方法}
[発光特性の測定]
蛍光体の発光スペクトルの測定は、励起光源として150Wキセノンランプを、スペクトル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いた。発光ピーク波長、および発光ピークの半値幅は、得られる発光スペクトルから算出した。
[粉末X線回折測定]
粉末X線回折は、粉末X線回折装置D8 ADVANCE ECO(BRUKER社製)にて精密測定した。
測定条件は以下の通りである。
CuKα管球使用
X線出力=40kV、25mA
発散スリット=自動
検出器=半導体アレイ検出器 LYNXEYE、Cuフィルター使用
走査範囲 2θ=5〜65度
読み込み幅=0.025度
[加熱時発生水分分析]
放出ガス量の分析は、昇温脱離質量分析法で行った後、質量分析を行った。質量分析計としては、Q−1500(日本電子社製)を使用した。
試料を白金ボートに秤量し、測定容器(石英管)にセットし、純Heを流通させながら昇温し、発生ガスを質量分析計に引き込み観測した。定量値は、シュウ酸カルシウム1水和物の昇温脱離により得られる分子量18の積分値と比較した値である。
{蛍光体の製造}
(参考例1)
K:Si:Mn=2:0.9:0.1となるように、HSiF(33wt%)とKMnFとKHFとをフッ化水素酸内で反応させることによって参考例1の蛍光体を得た。
図1に、参考例1の蛍光体のXRDパターンを示した。
(比較例1)
参考例1で得た蛍光体に対し、下記の工程を行って比較例1の蛍光体を得た。
<第一加熱工程>
参考例1の蛍光体を設置した処理室内に、FとNの混合ガス(F濃度:20体積%、N濃度:80体積%)を供給し、処理室内をフッ素含有ガス雰囲気下にした。
処理室内の温度を66分間ほどかけて540℃まで制御しながら昇温した。
処理室内の温度を540℃に保持した状態で、FとNの混合ガス(F濃度:20体積%、N濃度:80体積%)を10sccmにて処理室内に流通させ、4時間、加熱処理した。なお、第一加熱工程中の処理室内圧力は80kPaに保持した。
<後処理>
第二加熱工程を行わず、処理室内の温度を室温まで冷却した。サンプルを取り出し、比較例1の蛍光体を得た。
図2に、比較例1の蛍光体のXRDパターンを示した。
(実施例1)
参考例1で得た蛍光体に対し、下記の工程を行って実施例1の蛍光体を得た。
<第一加熱工程>
比較例1と同様にして第一加熱工程を実施した。
<第二加熱工程>
次いで、第一加熱工程と同じFとNの混合ガス(F濃度:20体積%、N濃度:80体積%)を10sccmにて処理室内に流通させ、圧力を80kPaに保持した状態で、処理室内の温度を20分間ほどかけて500℃まで降温した。
供給していたFとNの混合ガス(F濃度:20体積%、N濃度:80体積%)を停止し、処理室内にFとNの混合ガスが残留した状態で、SiFを供給した。
処理室内の温度を500℃に保持した状態で、SiFを10sccmにて処理室内に流通させ、4時間、加熱処理した。なお、第二加熱工程中の処理室内圧力は80kPaに保持した。
<後処理>
処理室内の温度を室温まで冷却した。サンプルを取り出し、実施例1の蛍光体を得た。
図3に、実施例1の蛍光体のXRDパターンを示した。
(実施例2)
参考例1で得た蛍光体に対し、下記の工程を行って実施例2の蛍光体を得た。
<第一加熱工程>
比較例1と同様にして第一加熱工程を実施した。
<第二加熱工程>
次いで、第一加熱工程と同じFとNの混合ガス(F濃度:20体積%、N濃度:80体積%)を10sccmにて処理室内に流通させ、圧力を80kPaに保持した状態で、処理室内の温度を20分間ほどかけて500℃まで降温した。
供給していたFとNの混合ガス(F濃度:20体積%、N濃度:80体積%)を停止し、残留Fガスを1Torr未満まで真空排気した。処理室内にSiFとFとNの混合ガス(SiF濃度:50体積%、F濃度:10体積%、N濃度:40
体積%)を供給し、処理室内をフッ素含有ガス雰囲気下にした。
処理室内の温度を500℃に保持した状態で、SiFとFとNの混合ガス(SiF濃度:50体積%、F濃度:10体積%、N濃度:40体積%)を10sccmにて処理室内に流通させ、1時間、加熱処理した。なお、第二加熱工程中の処理室内圧力は80kPaに保持した。
<後処理>
処理室内の温度を室温まで冷却した。サンプルを取り出し、実施例2の蛍光体を得た。
図4に、実施例2の蛍光体のXRDパターンを示した。
(実施例3)
参考例1で得た蛍光体に対し、下記の工程を行って実施例3の蛍光体を得た。
<第一加熱工程>
比較例1と同様にして第一加熱工程を実施した。
<第二加熱工程>
次いで、第一加熱工程と同じFとNの混合ガス(F濃度:20体積%、N濃度:80体積%)を10sccmにて処理室内に流通させ、圧力を80kPaに保持した状態で、処理室内の温度を3時間ほどかけて200℃まで降温した。
前工程で供給していたFとNの混合ガス(F濃度:20体積%、N濃度:80体積%)を停止し、残留Fガスを1Torr未満まで真空排気した。処理室内にSiFとFとNの混合ガス(SiF濃度:50体積%、F濃度:10体積%、N濃度:40体積%)を供給し、処理室内をフッ素含有ガス雰囲気下にした。
処理室内の温度を200℃に保持した状態で、SiFとFとNの混合ガス(SiF濃度:50体積%、F濃度:10体積%、N濃度:40体積%)を10sccmにて処理室内に流通させ、4時間、加熱処理した。なお、第二加熱工程中の処理室内圧力は80kPaに保持した。
<後処理>
処理室内の温度を室温まで冷却した。サンプルを取り出し、実施例3の蛍光体を得た。
図5に、実施例3の蛍光体のXRDパターンを示した。
表1に、各蛍光体に対して455nmの光で励起させた際の内部量子効率と、CuKα線(1.5418Å)を用いて測定された粉末X線回折パターンにおいて2θ=18.0〜20.0°におけるピーク強度I1に対する2θ=29.0〜30.5°におけるピー
ク強度Iの強度比I/Iを示す。比較例1は、参考例1と比較するとI/I強度比が大きくなり、蛍光体特有の異相を検出した。一方、実施例1〜3は、比較例1と比較するとI/I強度比が小さくなり、蛍光体特有の異相が低減した。
Figure 2019099770
表2に、各蛍光体を、室温から550℃まで加熱した際に検出した水分(HO)量を示す。
Figure 2019099770
続いて耐久性試験(点灯試験)は下記の通り行った。
発光装置の点灯開始前(この時点を以下「0時間」という。)に、発光スペクトルを測定した。比較例1の蛍光体を使った発光装置の輝度を100とし、実施例1〜3の各蛍光体を使った際の発光装置の輝度と、比較例1の蛍光体の使用量を100とし、同じ色度を実現するために使用した実施例1〜3の各蛍光体の使用量を表3に示す。表3に示すが如く、実施例1〜3の各蛍光体は発光装置にした際の輝度が高く、同じ色度を実現するために使用される蛍光体の使用量が著しく減少していることがわかる。
Figure 2019099770
次いで、85℃の条件下、半導体発光装置を駆動電流150mAで連続通電し、通電開始から200時間経過後に、前記0時間の場合と同様にして発光スペクトルを測定した。
200時間後に得られた発光スペクトルより色度座標CIExを算出し、0時間に得られた色度座標CIExからのずれ(ΔCx)を評価した。
各蛍光体を用いた発光装置の耐久性試験の結果を表4に示す。
Figure 2019099770
表4に示すが如く、実施例1〜3の各蛍光体は、比較例1の蛍光体に比べて発光装置にした際の輝度は向上し、耐久性試験における色度変化が小さく、耐久性が著しく向上していることがわかる。

Claims (15)

  1. 下記式[1]で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体であって、
    該蛍光体1gを、室温から550℃までに加熱した際に発生する水分(HO)の総量が0.20mg以下であり、
    CuKα線(1.5418Å)を用いて測定された粉末X線回折パターンにおいて2θ=18.0〜20.0°におけるピーク強度Iと2θ=29.0〜30.5°におけるピーク強度Iとの関係で、I/Iで示される比が0.020以下であることを特徴とする蛍光体。
    Mn [1]
    (式[1]中、
    A元素は、Li、Na、K、Rb、Csからなる群から選ばれる1種以上の元素を表し、
    D元素は、Si、Ge、Tiからなる群から選ばれる1種以上の元素を表す。
    x、y、z、wは、各々独立に、下記式を満たす値である。
    1.5≦x≦2.5
    0.5≦y<1
    y+z=1
    5.0≦w≦7.0)
  2. 455nmの波長を有する光を照射したときの内部量子効率が80.0%以上である、請求項1に記載の蛍光体。
  3. A元素が、少なくともKを含む、請求項1又は2に記載の蛍光体。
  4. D元素が、少なくともSiを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光体。
  5. 第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体とを備え、該第2の発光体が請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
  6. 請求項5に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。
  7. 請求項5に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
  8. 下記式[2]で表される組成を有する結晶相を含むMn付活フッ化物を加熱処理して蛍光体を得る蛍光体の製造方法であって、
    前記加熱処理が、2種以上のフッ素含有物質を用いて前記Mn付活フッ化物を加熱する加熱工程を含むことを特徴とする、蛍光体の製造方法。
    Mn [2]
    (式[2]中、
    A元素は、Li、Na、K、Rb、Csからなる群から選ばれる1種以上の元素を表し、
    D元素は、Si、Ge、Tiからなる群から選ばれる1種以上の元素を表す。
    x、y、z、wは、各々独立に、下記式を満たす値である。
    1.5≦x≦2.5
    0.5≦y<1
    y+z=1
    5.0≦w≦7.0)
  9. 前記加熱工程が、第1フッ素含有物質の存在下で前記Mn付活フッ化物を加熱する第一加熱工程と、前記第1フッ素含有物質と異なる第2フッ素含有物質の存在下で前記Mn付活フッ化物を加熱する第二加熱工程とを含む、請求項8に記載の蛍光体の製造方法。
  10. 前記第一加熱工程が、前記Mn付活フッ化物を300℃以上に加熱する工程であり、
    前記第二加熱工程が、前記Mn付活フッ化物を前記第一加熱工程の加熱温度よりも低い温度に加熱する工程である、請求項9に記載の蛍光体の製造方法。
  11. 前記フッ素含有物質がガスである、請求項8〜10のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法。
  12. 前記2種以上のフッ素含有物質のうちの第1フッ素含有物質が、1種以上のフッ素含有酸化性物質である、請求項8〜11のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法。
  13. 前記2種以上のフッ素含有物質のうちの第2フッ素含有物質が、F、NF、SiF、HF、SF、NHHF、NHF、SbF、ClF、BrF、BrF、XeF、CF、C、CHF、CHF、BFおよびPFからなる群から選ばれる1種以上である、請求項8〜12のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法。
  14. 前記第一加熱工程の加熱温度は、500℃以上550℃以下である、請求項8〜13のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法。
  15. 前記第二加熱工程の加熱温度は、100℃以上300℃以下である、請求項8〜14のいずれか一項に記載の蛍光体の製造方法。
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WO2021241376A1 (ja) * 2020-05-29 2021-12-02 日亜化学工業株式会社 無機フッ化物発光材料の製造方法
WO2021241375A1 (ja) * 2020-05-29 2021-12-02 日亜化学工業株式会社 無機フッ化物発光材料の製造方法

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