JP2019065147A - 蛍光体、発光装置、照明装置及び画像表示装置 - Google Patents

蛍光体、発光装置、照明装置及び画像表示装置 Download PDF

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礼治 大塚
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Abstract

【課題】本発明は、耐久性に優れたMn付活フッ化物蛍光体を提供する。また本発明は、発光効率に優れ、発光色の経時変化が少ない発光装置、ならびに高品質の照明装置及び画像表示装置を提供する。【解決手段】Mn、アルカリ金属元素からなる群から選ばれる1種以上の元素を表すA元素、Si、Ge、Sn、Ti、Zrからなる群から選ばれる1種以上の元素を表すD元素、フッ素(F)を有する結晶相を含む蛍光体であって、TPD−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チャートにおいて390℃以上、430℃以下の範囲にピーク(ピークa)を有する蛍光体。【選択図】なし

Description

本発明は、蛍光体、発光装置、照明装置及び画像表示装置に関する。
近紫外または短波長可視域で発光する励起用光源と蛍光体とを併用することにより白色
発光する発光装置(以下、適宜「LED」という)が一般化し、画像表示装置や照明装置
に実用化されている。特に、赤色の蛍光を発する蛍光体(以下、適宜「赤色蛍光体」とい
う)は、画像表示装置や照明装置用の発光装置に使用されており、その発光特性は様々に
改良されている。このうち発光装置の効率と色再現性または演色性とを両立するために、
特定の波長帯で半値幅が狭い蛍光体の開発が重要視される。
画像表示装置や照明装置の高効率化と色再現性または演色性との両立を実現するために
は、例えば、発光スペクトルの発光ピーク波長が590nm以上780nm未満で、かつ
発光スペクトルの半値幅が1nm以上130nm以下である赤色蛍光体を用いることが有
効である。そのため上記の発光特性を有する赤色蛍光体の開発が行われている。
このような蛍光体として、例えば特許文献1には、フルオロジャーマネイト蛍光体やK
SiF:Mn4+(KSF蛍光体)などのMn付活フッ化物蛍光体が開示されている
KSF蛍光体については更なる開発が行われており、例えば特許文献2には、Mnなど
の付活元素を含まない母体で蛍光体表面を被覆したKSF蛍光体が開示されている。
また特許文献3には、Mn4+の濃度を蛍光体の内部領域よりも低くした表面領域を有
するKSF蛍光体について開示されている。
米国特許第8710487号明細書 特表2014−514388号公報 特開2015−28148号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載の蛍光体では、蛍光体の耐久性が十分でない場合
があった。蛍光体の耐久性が十分でないと、発光装置として使用する際に経過時間ととも
に発光効率や発光色が変化してしまう場合がある。
蛍光体の耐久性は、前記特許文献2〜3のように蛍光体に表面処理を施す他に、発光装
置の構造を工夫する等も検討されているが、更に性能の優れた発光装置が要求されている
。そのため、蛍光体においてもより優れた耐久性のものが望まれている。加えて、耐久性
を向上させる処理を施した際に、発光効率を低下させることなく、耐久性に優れた蛍光体
であることが特に好ましい。
本発明は、上記課題に鑑みて、耐久性に優れたMn付活フッ化物蛍光体を提供する。ま
た本発明は、発光効率に優れ、発光色の経時変化が少ない発光装置、ならびに高品質の照
明装置及び画像表示装置を提供する。
本発明者等は鋭意検討した結果、蛍光体に含まれる水分のうち、特定の元素と結合する
と考えられる水分量が存在する蛍光体とすることで、上記課題を解決しうることを見出し
て本発明に到達した。
即ち本発明は、以下の(1)〜(10)に存する。
(1)Mn、アルカリ金属元素からなる群から選ばれる1種以上の元素を表すA元素、S
i、Ge、Sn、Ti、Zrからなる群から選ばれる1種以上の元素を表すD元素、フッ
素(F)を有する結晶相を含む蛍光体であって、TPD−MS分析で測定した分子量(m
/z)18の検出チャートにおいて390℃以上、430℃以下の範囲にピーク(ピーク
a)を有する、蛍光体。
(2)TPD−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チャートにおいて、43
0℃以上、510℃以下の範囲にピーク(ピークb)を有し、前記ピークaにおけるピー
クトップのイオン強度の値をA、前記ピークbにおけるピークトップのイオン強度の値を
Bとした際、A/Bの値が0.5以上である、(1)に記載の蛍光体。
(3)TPD−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チャートにおいて、43
0℃以上、510℃以下の範囲にピーク(ピークb)がない、(1)に記載の蛍光体。
(4)前記結晶相が、下記式[1]で表される結晶相である、(1)〜(3)のいずれか
に記載の蛍光体。
Mn [1]
(上記式[1]中、
A元素は、アルカリ金属元素からなる群から選ばれる1種以上の元素を表し、
D元素は、Si、Ge、Tiからなる群から選ばれる1種以上の元素を表す。
m、a、b、cは、各々独立に、下記式を満たす値である。
0<m≦0.2
1.6≦a≦2.4
m+b=1
4.8≦c≦7.2)
(5)A元素が、Li、Na、K、Rb、Csからなる群から選ばれる1種以上の元素を
含む、(1)〜(4)のいずれかに記載の蛍光体。
(6)350nm以上、460nm以下の波長を有する励起光を照射することにより、6
00nm以上、650nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する、(1)〜(5)のいず
れかに記載の蛍光体。
(7)350nm以上、460nm以下の波長を有する励起光を照射することで得られる
発光スペクトルの半値幅が、50nm以下である、(1)〜(6)のいずれかに記載の蛍
光体。
(8)第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発
光体とを備え、該第2の発光体が(1)〜(7)のいずれか一項に記載の蛍光体を含むこ
とを特徴とする発光装置。
(9)(8)に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。
(10)(8)に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
本発明は、耐久性に優れたMn付活フッ化物蛍光体を提供することが可能となる。また
本発明は、発光効率に優れ、発光色の経時変化が少ない発光装置、ならびに高品質の照明
装置及び画像表示装置を提供することが可能となる。
実施例1および比較例1で得られた蛍光体における、TPD−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チャートである。 実施例3〜5および比較例2、3で得られた蛍光体における、TPD−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チャートである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限
定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値
を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表す
。また、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち
一種又は二種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。
例えば、「(Ca,Sr,Ba)Al:Eu」という組成式は、「CaAl
:Eu」と、「SrAl:Eu」と、「BaAl:Eu」と、「Ca1−x
SrAl:Eu」と、「Sr1−xBaAl:Eu」と、「Ca1−x
BaAl:Eu」と、「Ca1−x−ySrBaAl:Eu」とを全
て包括的に示しているものとする(但し、前記式中、0<x<1、0<y<1、0<x+
y<1)。
{蛍光体について}
本発明の蛍光体は、Mn、A元素、D元素、フッ素(F)を有する結晶相を含む。
Mnは、マンガンを表す。本発明の効果を損なわない限り、Mnは、その他の付活元素
、例えば、ユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム
(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミ
ウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)から
成る群から選択される1種又は2種以上で一部置換されていてもよい。
A元素は、アルカリ金属元素から選ばれる1種以上の元素を表し、例えば、リチウム(
Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)
などが挙げられる。本発明の効果が良好に得られる点で、A元素はKまたはNaであるこ
とが好ましく、Kであることがより好ましい。
D元素は、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、チタン(Ti)及
びジルコニウム(Zr)からなる群から選ばれる1種以上の元素を表す。本発明の効果が
良好に得られる点で、D元素は、Si、Ge、Tiであることが好ましく、Siであるこ
とがより好ましい。
Fは、フッ素を表す。Fは、酸素やその他のハロゲン元素、例えば、塩素(Cl)、臭
素(Br)、ヨウ素(I)などで一部置換されていてもよい。
[式[1]について]
本発明の蛍光体は、更に下記式[1]で表される結晶相を含むことが好ましい。
Mn [1]
(上記式[1]中、
A元素は、アルカリ金属元素からなる群から選ばれる1種以上の元素を表し、
D元素は、Si、Ge、Tiからなる群から選ばれる1種以上の元素を表す。
m、a、b、cは、各々独立に、下記式を満たす値である。
0<m≦0.2
1.6≦a≦2.4
m+b=1
4.8≦c≦7.2)
Mn、A元素、D元素、Fは、前記したものと同様である。具体例および好ましい態様
も同様である。
mは、Mnの含有量を表し、その範囲は、通常0<m≦0.2であり、下限値は、好ま
しくは0.01、より好ましくは0.02、また上限値は、好ましくは0.15、より好
ましくは0.1である。
上記範囲内であると、濃度消光が起きにくく、更に本発明に係る蛍光体以外の化学組成
を示す異相が生じにくく、発光特性が良好である点で好ましい。
aは、A元素の含有量を表し、その範囲は、通常1.6≦a≦2.4であり、下限値は
、好ましくは1.8、より好ましくは1.85、また上限値は、好ましくは2.2、より
好ましくは2.15である。
bは、D元素の含有量を表す。
m及びb相互の関係は通常、m+b=1を満足する。
cは、フッ素(F)の含有量を表し、その範囲は、通常4.8≦c≦7.2であり、下
限値は、好ましくは5.2、より好ましくは5.6、また上限値は、好ましくは6.8、
より好ましくは6.4である。
[TPD−MS分析]
本発明の蛍光体は、TPD−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チャート
において390℃以上、430℃以下の範囲にピーク(以下、「ピークa」と称する場合
がある)を有することを特徴とする。
なお、本明細書において、「ピークを有する」とは、イオン強度のチャートにおいて、
任意の範囲に極大値を有することを意味し、その極大値をピークトップとするピークを指
す。
本発明の蛍光体においては、ピークaが存在することに特徴があり、例えば、図1の実
施例1の蛍光体の当該チャートにおいては、415℃にピークトップを有するピークaが
観察されている。一方で、図1の比較例1の蛍光体の当該チャートにおいては、これに対
応するピークは観察されない。
また、TPD−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チャートにおいて、4
30℃以上、510℃以下の範囲にピーク(以下、「ピークb」と称する場合がある)を
有している場合、前記ピークaにおけるピークトップのイオン強度の値をA、前記ピーク
bにおけるピークトップのイオン強度の値をBとした際、A/Bの値が0.5以上である
ことが好ましい。耐久性に加えて発光効率が向上することから、より好ましくは0.7以
上、更に好ましくは0.9以上である。
一方で、上述の通り、ピークbはピークaに比べて小さいほど好ましいことから、ピー
クbが観察されない蛍光体であることも好ましい。
なお、放出ガスのうち分子量(m/z)18のガスを分析するのは、蛍光体中に含まれ
る特定の水分量を観測するためである。
(TPD−MS分析方法)
TPD−MS分析測定において、分析された放出ガスのうち分子量(m/z)18の積
分値を算出する。
放出ガス量の分析は昇温脱離質量分析法で行った。質量分析計としては、分子量(m/
z)18の積分値を得られるものであれば特に制限はないが、例えば、AGS‐7000
(Anelva社製)、M−400(Anelva社製)、Q‐1500(日本電子社製)など
のガスクロマトグラフ質量分析計が用いられる。
測定は、蛍光体を20mg程度使用して、高純度ヘリウムを流通させながら(即ち、酸
素濃度5ppm以下となるようにしながら)、昇温速度20〜40℃/分、好ましくは2
0℃/分で600℃まで昇温して測定する。ここで、サンプルの温度と放出されるガスに
含まれる分子量(m/z)18の質量分析計の強度を同時に測定することにより、TPD
−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チャートを得る。
尚、放出される分子量(m/z)18のガスの定量については、シュウ酸カルシウム1
水和物の昇温脱離により得られる分子量(m/z)18の積分値と比較して行う。
上記の測定においては、200℃から600℃の温度範囲で放出される分子量(m/z
)18のガスを定量した。
本発明では、200℃〜600℃の温度範囲で放出される水分量に注目した理由は下記
の通りである。200℃未満で検出される水分は、蛍光体の表面に吸着または付着した水
分が放出されたものである。これらの水分は、蛍光体から容易に脱離するため、蛍光体と
反応して劣化を引き起こしにくい。また200℃未満では、蛍光体が後述の水酸基やFの
結合を切断する温度には低い。つまり、温度の面でも蛍光体に劣化を引き起こす原因にな
りにくい。
一方、600℃を超える温度で検出される水分は、蛍光体の内部に存在する安定した不
活性な水分が放出されるものである。そのため、600℃を超える温度で検出される水分
は、蛍光体と反応して劣化を引き起こしにくい。なお、LEDを連続点灯しても600℃
を超える温度には現実には到達することがない。そのため、温度の面でも蛍光体に劣化を
引き起こす原因になりにくい。
従って、LEDが点灯時に到達しうる温度域で、かつ蛍光体を熱加水分解するような水
分量が少ない蛍光体とすることで耐久性が向上するものと考えて、200℃〜600℃の
温度範囲で放出される水分量に着目し、分子量(m/z)18の検出チャートを得ている
(効果を奏する理由)
本発明の蛍光体とすることで耐久性が向上するとの効果を奏する理由について、下記の
通り推測するが、本発明における作用や効果はこれに限定されない。尚、Mn付活フッ化
物蛍光体の中で、KSF蛍光体を例に挙げて説明する。
KSF蛍光体は、作製時に雰囲気中の水分を取り込む場合が多く、通常、その組成中に
若干の水を取り込んでいる。蛍光体組成中に取り込まれた水は、KSF蛍光体の一部のF
をOHが置換する形で結合水として存在していると考えられ、以下の組成式となっている
(Si1−xMn)F6−n(OH)
ただし、x=0〜1、n=0〜1
この水酸基にはSiに配位しているものとMnに配位しているものが存在する。
SiF6−p(OH)
MnF6−q(OH)
ただし、pおよびqは n=p(1−x)+qxの関係である。
これらの結合水は、KSF蛍光体をTPD−MS分析で測定した分子量(m/z)18
の検出チャートにおいて2つのピークとして現れることから、その含有量を確認すること
ができる。上述したピークaがSiに配位する水酸基に由来しており、ピークbがMnに
配位する水酸基に由来することから、ピークa、bがそれぞれSi−OH結合およびMn
−OH結合の含有量を示している。
LEDは点灯時に光とともに熱も発する。通常、KSF蛍光体が含む結合水に由来する
水酸基やFは、熱および光により結合が切断される。その一部は脱離して水を生成したり
、一部は電荷補償のために結晶内を移動して水酸基の欠陥を修復したりする。このことで
、SiまたはMnの状態が経時的に変化してKSF蛍光体の発光効率が低下すると考えら
れている。赤色発光するKSF蛍光体の発光効率が低下すると、赤青緑の発光強度のバラ
ンスが崩れて、色度座標上のx値が下がり、耐久性の低い発光装置となる。
上記の機構から、発光装置に用いる前の蛍光体について蛍光体中に含まれる結合水を除
去しておけば、信頼性の高い蛍光体が得られると推察されたが、本発明者らの検討に拠れ
ば、単に結合水を除去するだけでは、発光効率および信頼性共に不十分であることが明ら
かとなった。
Mnに配位している水酸基は比較的高温で脱離するので、ピークbが高温側で観察され
る。Mn−OH結合が切れて水酸基が脱離した場合、以下の式のように電荷補償でMnが
4価から3価に還元される。Mnは3価であっても安定に存在するので、KSF蛍光体と
しては4価のMnと3価のMnが混在することとなるが、3価のMnは赤色発光しないの
で発光効率は低下する。LED点灯中に上記反応が進むと信頼性低下につながる。ただし
、Mnに配位している水酸基が発光装置点灯前にすでに離脱している場合には、LED点
灯中に蛍光体が経時的に変化することはないので信頼性は向上する。
Mn(IV)F6−q(OH)→KMn(III)Mn(IV)1−q6−q
一方、Siに配位している水酸基は比較的低温で脱離するので、ピークaが低温側で観
察される。よって、KSF蛍光体を低温で加熱した場合であっても、Si−OH結合が切
れて容易に水酸基が脱離し、以下の式のように欠陥となる。なお、□は欠陥を表す。
SiF6−p(OH) → KSiF6−p
しかし、Siは4価安定で価数変化しないので、欠陥は不安定になる。そのため、Si
の電荷補償のために、欠陥近傍のMnに配位している水酸基やFがSiに移動し配位する
と考えられる。その際、水酸基やFを失ったMnは価数が4価から3価に変化し、3価の
Mnを有するKSF蛍光体が混在するために発光効率は低下すると考えられる。
SiF6−p+ KMn(IV)F
→ KSiF + KMn(III)Mn(IV)1−pMnF6−p
つまり、Si−OH結合を十分に有する本発明の蛍光体では、Si周辺の不安定な欠陥
が少ないと考えられるため、LED点灯により発生した熱でFや水酸基などの配位子が移
動しやすい状態になったとしても、信頼性が低下するようなMn価数の変化を引き起こす
ことがない。特にMn−OH結合の含有量に対するSi−OH結合の含有量が一定以上あ
る場合に、特に効果が顕著であり好ましい。
[蛍光体の特性]
(発光スペクトル)
本発明の蛍光体は、ピーク波長455nmの光で励起して発光スペクトルを測定した場
合、以下の特徴を有することが好ましい。
上記の発光スペクトルにおけるピーク波長λp(nm)が、通常600nm以上、好ま
しくは610nm以上、さらに好ましくは620nm以上、また、通常650nm以下で
ある。
上記範囲内であると、好適な橙色ないし赤色の発光を有する点で好ましい。
また、本発明の蛍光体は、上述の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅が、通常
50nm未満、好ましくは40nm以下、更に好ましくは20nm以下、特に好ましくは
10nm以下また、通常1nm以上の範囲である。
上記範囲内であると、色純度や発光強度が優れるため好ましい。
なお、上記の蛍光体をピーク波長の光で励起するには、例えば、キセノン光源を用いる
ことができる。また、本発明の蛍光体の発光スペクトルの測定は、例えば、蛍光分光光度
計F−4500(日立製作所製)等を用いて行うことができる。発光ピーク波長、及び発
光ピークの半値幅は、得られる発光スペクトルから算出することができる。
{蛍光体の製造方法}
本発明の蛍光体は、Mn、A元素、D元素、Fを含むように、各蛍光体原料をHF中に
溶解し、得られた蛍光体原料溶液をHF中で混合することによって製造することが可能で
ある。
ここで、本発明の蛍光体とするための製法上の技術思想としては、例えば、沈殿工程で
蛍光体原料溶液を混合する際に、K源にSi源及びMn源を添加する方法によって蛍光体
を合成する方法や、沈殿工程で得られた蛍光体に特定範囲の温度で加熱処理を行うことに
より蛍光体を作製する方法、または沈殿工程で得られた蛍光体にF元素を含む化合物の存
在下で加熱処理を行うことにより蛍光体を作製する方法などが挙げられる。
蛍光体原料としては、金属化合物、金属などを用いる。本発明の蛍光体を製造する場合
、Mnの原料(以下適宜「Mn源」という)、A元素の原料(以下適宜「A源」という)
、D元素の原料(以下適宜「D源」という)、Fの原料(以下適宜「F源」という)から
必要な組み合わせをHF中に溶解し(溶解工程)、得られた原料溶液をHF中で混合し反
応させ蛍光体含有スラリーを生成し(沈澱工程)、得られた蛍光体スラリーを必要に応じ
て、洗浄(洗浄工程)や分散・分級(分散・分級工程)することにより製造することがで
きる。
以下に、本発明の蛍光体の製造方法の一例を示すが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。
[蛍光体原料]
本発明における蛍光体の製造において使用される蛍光体原料としては、公知のものを用
いることができる。
(Mn源)
Mn源としては、過マンガン酸カリウム(KMnO)、二酸化マンガン(MnO
、炭酸マンガン(MnCO)、テトラフルオロマンガン酸カリウム(KMnF)、
塩化マンガン(MnCl)などが挙げられる。
(A源)
A源中、例えばK源の具体例としては、フッ化水素カリウム(KHF)、フッ化カリ
ウム(KF)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸水素カリウム(KHCO)、蓚酸カ
リウム一水和物(K・HO)、塩化カリウム(KCl)などが挙げられる。
中でも、フッ化水素カリウム(KHF)が好ましい。
その他のアルカリ金属元素の具体例としては、K源の具体例として挙げた上記各化合物
において、KをLi、Na、Rbなどに置き換えた化合物が挙げられる。
(D源)
D源中、例えばSi源の具体例としては、ヘキサフルオロ珪酸(HSiF)、ヘキ
サフルオロ珪酸カリウム(KSiF)、ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム(NaSi
)、ヘキサフルオロ珪酸アンモニウム(NHSiF、ヘキサフルオロ珪酸ル
ビジウム(RbSiF)、ヘキサフルオロ珪酸セシウム(CsSiF)、酸化ケ
イ素(SiO)、ケイ素(Si)などが挙げられる。
その他の元素の具体例としては、Si源の具体例として挙げた上記各化合物において、
SiをGe、Sn、Tiなどに置き換えた化合物が挙げられる。
尚、上記したように、Mn源、A源、D源は、それぞれ別々の原料を用いてもよく、一
つの原料中に、例えばMn源とA源とを含む原料を用いてもよい。
(F源)
F源の具体例としては、フッ化水素酸(HF)、フッ化水素カリウム(KHF)、フ
ッ化カリウム(KF)、ヘキサフルオロ珪酸(HSiF)、テトラフルオロマンガン
酸カリウム(KMnF)、ヘキサフルオロ珪酸カリウム(KSiF)、フッ素(
)などが挙げられる。
更に、これらの炭酸塩や酸化物、蓚酸塩、金属、塩化物などHF中に溶解した後にフッ
化物になりうる化合物であれば原料として用いることができる。
なお、本発明の蛍光体におけるF源は、Mn源、A源、D源から供給されてもよいし、
反応溶液であるHFから供給されてもよい。また、各原料には、不可避的不純物が含まれ
ていてもよい。
(溶解工程)
本発明の蛍光体の製造においては、通常、目的組成が得られるように蛍光体原料を必要
な組み合わせで攪拌機等を用いてHF中に充分に溶解し、蛍光体原料溶液を得る(溶解工
程)。
組み合わせて溶解する蛍光体原料としては、HFとA源、HFとD源、HFとMnの組
み合わせで蛍光体原料溶液を3種としても、HFとK源、HFとSi源とMn源の組み合
わせで蛍光体原料溶液を2種としても、あるいはHFとK源とSi源、HFとK源とMn
源との組み合わせで蛍光体原料溶液を2種としても、原料の組み合わせでHFに不溶解性
の塩を生じない組み合わせであれば、任意の組み合わせで原料を溶解してもよい。
原料を溶解するのに使用するフッ化水素酸(HF)の濃度は、原料を溶解し、溶解した
後にフッ化物になりうる範囲であればよいが、水酸化物やフッ化物以外の化合物の生成が
抑制でき、また取扱いが容易である点で、40〜55重量%程度が好ましい。
尚、エタノールやアセトンなど蛍光体の溶解度が低い溶媒をフッ化水素酸と混合して予
め上記原料溶液に混合すると、本発明の蛍光体が得られやすい点で好ましい。蛍光体の溶
解度が低い溶媒は、0.1〜30体積%で含むことが好ましく、より好ましくは5体積%
以上であって、15体積%以下である。
(沈澱工程)
本発明の蛍光体の製造においては、得られた蛍光体原料溶液をHF中で混合し反応させ
蛍光体含有スラリーを生成する工程(沈澱工程)を有する。
蛍光体原料溶液を混合し反応させて蛍光体含有スラリーを生成する方法は、例えば、H
FとK源からなる蛍光体原料溶液、とHFとSi源からなる蛍光体原料溶液と、HFとM
n源からなる蛍光体原料溶液とを、HF溶液に添加し反応させて蛍光体含有スラリーを生
成させる方法や、HFとK源とMn源からなる蛍光体原料溶液にHFとK源とSi源から
なる蛍光体原料溶液を添加し反応させる蛍光体含有スラリーを生成させる方法、HFとS
i源とMn源からなる蛍光体原料溶液にHFとK源からなる蛍光体原料溶液を添加し反応
させる蛍光体含有スラリーを生成させる方法、あるいはそれらの逆の添加方法など、混合
後に反応して蛍光体含有スラリーを生成すれば任意の方法で反応させてもよい。なかでも
、耐久性の向上が顕著であることから、HFとK源とSi源からなる蛍光体原料溶液にH
FとK源とMn源からなる蛍光体原料溶液を添加し反応させる蛍光体含有スラリーを生成
させる方法、HFとK源からなる蛍光体原料溶液にHFとSi源とMn源からなる蛍光体
原料溶液を添加し反応させる蛍光体含有スラリーを生成させる方法が好ましく、HFとK
源からなる蛍光体原料溶液にHFとSi源とMn源からなる蛍光体原料溶液を添加し反応
させる蛍光体含有スラリーを生成させる方法がより好ましい。
蛍光体原料溶液を混合し蛍光体含有スラリーを生成させる際に使用するフッ化水素酸(
HF)の濃度は、蛍光体原料溶液が反応して沈澱物がフッ化物になりうる範囲であればよ
いが、水酸化物やフッ化物以外の化合物の生成が抑制でき、また取扱いが容易である点で
、40〜55重量%程度が好ましい。
エタノールやアセトンなどKSFの溶解度が低い溶媒を、原料反応液を混合し蛍光体含
有スラリーを生成させる際に混合してもよい。エタノールや水、アセトンなどを含む溶液
はそのまま用いてもよいしフッ化水素酸と混合して使用してもよい。また予め上記蛍光体
原料溶液に混合しておいてもよい。
蛍光体原料溶液を添加する速度には特に制限はなく、たとえば、毎分1Lでも毎時1L
でもよい。これは、本発明の蛍光体の生成速度が速いためである。また反応温度も特に制
限はないが、液温が低い方がKSF蛍光体の溶解度が低いため収率が高くなるので好まし
い。
(洗浄工程)
前記蛍光体スラリーを生成した後、蛍光体をろ過分離する前に、沈澱生成した蛍光体を
洗浄する工程(洗浄工程)を有するのが好ましい。
本発明の蛍光体を合成する場合、原料の残留物や溶解時に生成した不純物が蛍光体中に
残留する傾向にある。得られる蛍光体の特性向上のためには、これらの不純物をできる限
り除去することが好ましい。本発明においては、不純物を除去することができれば洗浄方
法に特に制限はない。例えばフッ化水素酸やフッ化水素カリウムとフッ化水素酸の混合液
、あるいはヘキサフルオロ珪酸とフッ化水素酸の混合液など、生成した蛍光体が水酸化物
等フッ化物の以外の化合物にならなければ任意の液で洗浄することができる。
特に原料の残留物や不純物を除去しやすい点で、フッ化水素酸を用いて洗浄することが
よい。洗浄に用いるフッ化水素酸の濃度は、水酸化物やフッ化物以外の化合物の生成が抑
制でき、また取扱いが容易である点で、40〜55重量%程度が好ましい。
蛍光体を洗浄するのに用いるフッ化水素酸の重量は、蛍光体重量に対して、通常1倍以
上、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍以上、また通常100倍以下好ましくは5
0倍以下である。
蛍光体を洗浄液に浸漬している間、静置でもよいが、作業効率の点や洗浄により蛍光体
の品質を低下するのを防ぐ点で、洗浄時間を短縮することができる程度に攪拌することが
好ましい。また、洗浄温度は、通常室温であるが、必要に応じて水溶液を加熱してもよい
。さらに過酸化水素水(H)などの酸化剤や還元剤を洗浄液に添加してもよい。
蛍光体をフッ化水素酸に浸漬する時間は、攪拌条件等によっても異なるが、通常10分
以上、好ましくは1時間以上であり、また、通常24時間以下、好ましくは12時間以下
である。また洗浄を複数回行ってもよいし、洗浄液の種類や濃度を変えてもよい。
洗浄工程において、洗浄液に蛍光体を浸漬する作業を行った後、エタノールあるいはア
セトン、メタノールなどを用いて沈澱反応液を置換しつつろ過を行うことが好ましい。
なお、本工程は、後述の熱処理工程や分散・分級工程の前および/または後に実施して
もよく、特に順序は問わない。また、本工程は他の工程の前後で複数回実施してもよい。
(熱処理工程)
前記洗浄工程で得られた蛍光体(以下、熱処理工程に供する前の蛍光体を「蛍光体前駆
体」と称する場合がある)を、特定温度にて加熱する工程(熱処理工程)を実施すると、
更に耐久性が向上するため好ましい。具体的には、280℃以下の低温域、または400
℃以上の高温域にて加熱することで、輝度が高く、信頼性の高い蛍光体を得ることができ
る。
蛍光体前駆体を坩堝またはトレイ等の容器に充填し、雰囲気制御が可能な加熱炉に納め
て、加熱を行うことで熱処理工程を実施できる。
この際、容器の材質としては、例えば、窒化硼素、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素
などのセラミックス材質、モリブデン若しくはタングステンのような金属材質、または窒
化硼素るつぼの内側にモリブデン等のペーストを塗布した複合材質などが使用できる。な
お、上記の材質は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで併用しても
よい。
加熱炉としては、本発明の効果が得られる限り任意であるが、装置内の雰囲気を制御で
きる装置が好ましく、さらに圧力も制御できる装置が好ましい。例えば、熱間等方加圧装
置(HIP)、真空加圧雰囲気熱処理炉等が好ましい。
熱処理工程における加熱温度は、低温域での加熱の場合には、200℃以上であること
が好ましく、より好ましくは210℃以上、さらに好ましくは230℃以上であって、2
80℃以下であることが好ましい。低温域での加熱を実施した場合には、蛍光体中に結合
水として含まれる水の一部を除去しつつ、Si元素に配位した水に由来するSi−OH結
合の一部を維持することができ、発光効率を維持しながらも耐久性をさらに向上させるこ
とができるため好ましい。よって、下限値よりも低温の場合には、水を除去することがで
きず耐久性の向上が不十分であり、上限値よりも高い範囲(中温域)では、Si−OH結
合の大部分を切断して水を除去してしまうため、Siに配位している水酸基脱離した欠陥
が不安定な状態となり、発光装置として使用した場合に信頼性が低下する傾向がある。
また、高温域での加熱の場合には、380℃以上であることが好ましく、より好ましく
は400℃以上であって、通常600℃以下である。高温域での加熱を実施した場合には
、蛍光体中に結合水として含まれる水の大部分を除去することができ、Mn元素に配位し
た水に由来するMn−OH結合まで十分取り除くことができるため、耐久性を低温域での
加熱よりもさらに向上させることができるため好ましい。ただし、Mn−OH結合を切断
するため、Mnの一部が3価のMnとして存在してしまうことから、発光効率は低減して
しまう恐れがある。
熱処理工程における加熱時間は、1時間以上であることが好ましく、より好ましくは2
時間以上、さらに好ましくは3時間以上であって、60時間以下であることが好ましく、
より好ましくは20時間以下である。
加熱炉内の雰囲気は、含有酸素量が10000ppm以下であれば十分であり、好まし
くは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。
加熱炉内の雰囲気を含有酸素量が10000ppm以下となるように調製する方法として
は、窒素ガス、アルゴン(Ar)やヘリウム(He)などの希ガスやフッ素などのハロゲ
ン含有ガスを加熱炉内に供給する方法;加熱炉内が真空となるように減圧する方法;酸素
を吸着するゲッターを用いる方法等が挙げられる。
フッ素含有ガスとしては、特に限定されないが、例えば、F、HF、NF、SiF
、SF、NHHF、NHF、SbF、ClF、BrF、XeF、CF
、C、CHF、CHF、BF、PF、およびCから1以上選択さ
れることが好ましい。これらを用いることにより、Mnを4価の状態に維持することが可
能となり、耐久性及び発光効率を向上させることができる。
なお、加熱炉内の含有酸素量は、ガルバニ式やジルコニア式の酸素濃度測定器で測定す
ることができる。加熱炉内を直接測定しても構わないが、高温になりセンサーの消耗が激
しいことから、供給ガスや排気ガスを測定する方法もある。
さらに、熱処理工程においては、フッ素含有化合物を固体および/または液体の状態で
共存させて実施することが好ましい。フッ素含有ガスを用いない場合であっても、Mn−
OHが切断されて水が除去された際に、Mnを4価の状態に維持することが可能となり、
耐久性及び発光効率を向上させることができる。フッ素含有化合物としては、フッ化水素
アンモニウム(NHHF)、フッ化水素ナトリウム(NaHF)、フッ化水素カリ
ウム(KHF)等が挙げられる。
(分散・分級工程)
得られる蛍光体は、粒状又は塊状となる。これをボールミルや振動ミル、ジェットミル
等の一般的な分散機を使用して分散すると、蛍光体の発光特性が低下する傾向にある。こ
れは本発明の蛍光体が機械的な力に対して弱く、分散の力が強い上記の一般的な分散方法
では粉砕されるためである。
そのため得られた蛍光体は、分散工程を経ずに、目開きの異なる篩で分散・分級処理し
、篩を通過した粉末、あるいは篩上に残留した粉末を次工程に回すことが好ましい。
なお、本工程は、上述の洗浄工程や熱処理工程の前および/または後に実施してもよく
、特に順序は問わない。また、本工程は他の工程の前後で複数回実施してもよい。
{蛍光体含有組成物}
本発明の蛍光体は、液体媒体と混合して用いることもできる。特に、本発明の蛍光体を
発光装置等の用途に使用する場合には、これを液体媒体中に分散させた形態で用いること
が好ましい。本発明の蛍光体を液体媒体中に分散させたものを、適宜「本発明における蛍
光体含有組成物」などと呼ぶものとする。
[蛍光体]
本発明における蛍光体含有組成物に含まれる本発明の蛍光体の種類に制限は無く、上記
したものから任意に選択することができる。また、本発明における蛍光体含有組成物に含
まれる本発明の蛍光体は、1種のみであってもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比
率で併用してもよい。更に、本発明における蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著し
く損なわない限り、本発明の蛍光体以外の蛍光体を含有させてもよい。
[液体媒体]
本発明における蛍光体含有組成物に使用される液体媒体としては、該蛍光体の性能を目
的の範囲で損なわない限り特に限定されない。例えば、所望の使用条件下において液状の
性質を示し、本発明の蛍光体を好適に分散させるとともに、好ましくない反応を生じない
ものであれば、任意の無機系材料及び/又は有機系材料が使用でき、例えば、シリコーン
樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドシリコーン樹脂などが挙げられる。
[液体媒体及び蛍光体の含有率]
本発明における蛍光体含有組成物中の蛍光体及び液体媒体の含有率は、本発明の効果を
著しく損なわない限り任意であるが、蛍光体含有組成物全体に対して、通常1重量%以上
、好ましくは20重量%以上、より好ましくは40重量%以上であり、通常99重量%以
下、好ましくは95重量%以下である。
[その他の成分]
なお、本発明における蛍光体含有組成物には、本発明の効果を著しく損なわない限り、
蛍光体及び液体媒体以外に、その他の成分を含有させてもよい。また、その他の成分は、
1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
{発光装置}
本発明の蛍光体は、第1の発光体(励起光源)と、当該第1の発光体からの光の照射に
よって可視光を発する第2の発光体とを含む発光装置であって、該第2の発光体は本発明
の蛍光体を含有するものである。ここで、本発明の蛍光体は、何れか1種を単独で使用し
てもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の発光装置に含まれる蛍光体は、例えば、励起光源からの光の照射下において、
橙色ないし赤色領域の蛍光を発する蛍光体を使用する。具体的には、発光装置を構成する
場合、橙色ないし赤色蛍光体としては、600nm以上650nm以下の波長範囲を有す
る。
尚、励起源については、455nm未満の波長範囲に発光ピークを有するものを用いて
もよい。
以下、本発明の蛍光体が、600nm以上650nm以下の波長範囲に発光ピークを有
し、且つ第一の発光体が455nmの波長範囲に発光ピークを有するものを用いる場合の
、発光装置の態様について記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
上記の場合、本発明の発光装置は、例えば、次の(A)又は(B)の態様とすることが
できる。
(A)第1の発光体として、455nmに発光ピークを有するものを用い、第2の発光体
の第1の蛍光体として、560nm以上600nm未満の波長範囲に発光ピークを有する
少なくとも1種の蛍光体(黄色蛍光体)、及び、第2の発光体の第2の蛍光体として、本
発明の蛍光体を用いる態様。
(B)第1の発光体として、455nmに発光ピークを有するものを用い、第2の発光体
の第1の蛍光体として、500nm以上560nm未満の波長範囲に発光ピークを有する
少なくとも1種の蛍光体(緑色蛍光体)、及び第2の発光体の第2の蛍光体として、本発
明の蛍光体を用いる態様。
(黄色蛍光体)
黄色蛍光体としては、例えば、下記の蛍光体が好適に用いられる。
ガーネット系蛍光体としては、例えば、(Y,Gd,Lu,Tb,La)(Al,G
a)12:(Ce,Eu,Nd)、
オルソシリケートとしては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:(Eu
,Ce)、
(酸)窒化物蛍光体としては、例えば、(Ba,Ca,Mg)Si:Eu(
SION系蛍光体)、(Li,Ca)(Si,Al)12(O,N)16:(Ce,E
u)(α−サイアロン蛍光体)、(Ca,Sr)AlSi(O,N):(Ce,Eu
)(1147蛍光体)、(La,Ca,Y)(Al,Si)11:Ce(LSN蛍
光体)
などが挙げられる。
尚、上記蛍光体においては、ガーネット系蛍光体が好ましく、中でも、YAl
:Ceで表されるYAG系蛍光体が最も好ましい。
(緑色蛍光体)
緑色蛍光体としては、例えば、下記の蛍光体が好適に用いられる。
ガーネット系蛍光体としては、例えば、(Y,Gd,Lu,Tb,La)(Al,G
a)12:(Ce,Eu,Nd)、Ca(Sc,Mg)Si12:(Ce,
Eu)(CSMS蛍光体)、
シリケート系蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:(E
u,Ce)、(Ba,Sr,Ca,Mg)SiO:(Ce,Eu)(BSS蛍光体)

酸化物蛍光体としては、例えば、(Ca,Sr,Ba,Mg)(Sc,Zn)
(Ce,Eu)(CASO蛍光体)、
(酸)窒化物蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)Si
(Eu,Ce)、Si6−zAl8−z:(Eu,Ce)(β−サイアロン蛍光
体)(0<z≦1)、(Ba,Sr,Ca,Mg,La)(Si,Al)12
:(Eu,Ce)(BSON蛍光体)、
アルミネート蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)Al1017
:(Eu,Mn)(GBAM系蛍光体)
などが挙げられる。
(赤色蛍光体)
本発明の発光装置においては、本発明の蛍光体の他に、その他の赤色蛍光体を併用して
もよい。その他の赤色蛍光体としては、例えば、下記の蛍光体が好適に用いられる。
硫化物蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca)S:Eu(CAS蛍光体)、La
S:Eu(LOS蛍光体)、
ガーネット系蛍光体としては、例えば、(Y,Lu,Gd,Tb)MgAlSi
12:Ce、
ナノ粒子としては、例えば、CdSe、
窒化物または酸窒化物蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Eu(
S/CASN蛍光体)、(CaAlSiN1−x・(SiO:Eu(CA
SON蛍光体)、(La,Ca)(Al,Si)11:Eu(LSN蛍光体)、(
Ca,Sr,Ba)Si(N,O):Eu(258蛍光体)、(Sr,Ca)Al
1+xSi4−x7−x:Eu(1147蛍光体)、M(Si,Al)12(O
,N)16:Eu(Mは、Ca、Srなど)(αサイアロン蛍光体)、Li(Sr,Ba
)Al:Eu(上記のxは、いずれも0<x<1)などが挙げられる。
[発光装置の構成]
本発明の発光装置は、第1の発光体(励起光源)を有し、且つ、第2の発光体として少
なくとも本発明の蛍光体を使用している他は、その構成は制限されず、公知の装置構成を
任意にとることが可能である。
装置構成及び発光装置の実施形態としては、例えば、特開2007−291352号公
報に記載のものが挙げられる。
その他、発光装置の形態としては、砲弾型、カップ型、チップオンボード、リモートフ
ォスファー等が挙げられる。
本発明の発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に
使用することが可能であるが、色再現範囲が広く、且つ、演色性も高いことから、中でも
照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いられる。
{照明装置}
本発明の照明装置は、本発明の発光装置を光源として備える。
本発明の発光装置を照明装置に適用する場合には、前述のような発光装置を公知の照明
装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、保持ケースの底面に多数の発光装置を並べ
た面発光照明装置等を挙げることができる。
{画像表示装置}
本発明の画像表示装置は、本発明の発光装置を光源として備えることを特徴とする。
本発明の発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合には、その画像表示装置の具
体的構成に制限は無いが、カラーフィルタとともに用いることが好ましい。例えば、画像
表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、上記
発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有する
カラーフィルタとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しな
い限り、下記の実施例に限定されるものではない。
{測定方法}
[発光特性の測定]
蛍光体の発光スペクトルの測定は、励起光源として150Wキセノンランプを、スペク
トル測定装置としてマルチチャンネルCCD検出器C7041(浜松フォトニクス社製)
を備える蛍光測定装置(日本分光社製)を用いた。発光ピーク波長、および発光ピークの
半値幅は、得られる発光スペクトルから算出した。
[TPD−MS分析]
放出ガス量の分析は、昇温脱離質量分析法で行った。質量分析計としては、Q−150
0(日本電子社製)を使用した。
測定は、蛍光体を約20mg用いて、高純度ヘリウムを流通させながら、昇温速度20
℃/分で600℃まで昇温させて測定した。ここで、サンプルの温度と放出されるガスに
含まれる分子量(m/z)18の質量分析計の強度を同時に測定することにより、TPD
−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チャートを得た。
尚、放出される分子量(m/z)18のガスの定量については、シュウ酸カルシウム1
水和物の昇温脱離により得られる分子量(m/z)18の積分値と比較して行った。上記
の測定においては、200℃から600℃の温度範囲で放出される分子量(m/z)18
のガスを定量した。
{蛍光体の製造}
(比較例1)
下記の方法で蛍光体を合成した。
MnF 24.1gと、Si:Mnのモル比率が0.91:0.09となるよう
に秤量したHSiFを47重量%HF3100ml中で溶解混合して得た溶液Aに、
Si+Mn:Kのモル比が1:2.5となるように秤量したKHFを47重量%HF4
70ml中に溶解し、さらにエタノール150mlを加えて得た溶液Bを混合して、K
SiF:Mn4+を含有する蛍光体含有スラリーを得た。
次いでKSiF:Mn4+を含有する蛍光体含有スラリーを静置して蛍光体を沈降
させた後、未反応のMnやKやSiが残留する上澄み液を捨て、さらに蛍光体重量の1倍
の47重量%HF溶液を加えて30分撹拌しその後静置し蛍光体を沈降させ上澄み液を捨
てて洗浄し、ろ過し、エタノールで洗浄した後、100℃で15時間乾燥させて比較例1
の蛍光体を得た。
尚、比較例1の蛍光体の発光ピーク波長は631nm、主発光ピークの半値幅は6nm
であった。
比較例1の蛍光体についてTPD−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チ
ャートを、図1に示す。390℃以上、430℃以下の範囲にピークは観察されずピーク
aを有していなかった。一方、ピークbとして460℃をピークトップとするピークが観
察された。
(実施例1)
MnF 24.1gと、Si:Mnのモル比率が0.91:0.09となるよう
に秤量したHSiFを47重量%HF1600ml中で溶解混合して得た溶液Aを、
Si+Mn:Kのモル比が1:2.5となるように秤量したKHFを47重量%HF2
350ml中に溶解し、さらにエタノール530mlを加えて得た溶液Bに混合して、K
SiF:Mn4+を含有する蛍光体含有スラリーを得た。
次いで比較例1と同様にして洗浄し、ろ過し、エタノールで洗浄した後、100℃で1
5時間乾燥させて実施例1の蛍光体を得た。
また、実施例1の蛍光体の発光ピーク波長は631nm、主発光ピークの半値幅は6n
mであった。
実施例1の蛍光体についてTPD−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チ
ャートを、図1に示す。ピークaとして415℃をピークトップとするピーク、ピークb
として470℃をピークトップとするピークが観察された。また、A/Bの値は0.78
であった。
(実施例2)
MnF 24.1gと、Si:Mnのモル比率が0.91:0.09となるよう
に秤量したHSiFを47重量%HF1600ml中で溶解混合して得た溶液Aを、
Si+Mn:Kのモル比が1:2.5となるように秤量したKHFを47重量%HF2
350ml中に溶解し、さらにエタノール230mlを加えて得た溶液Bに混合して、K
SiF:Mn4+を含有する蛍光体含有スラリーを得た。
次いで比較例1と同様にして洗浄し、ろ過し、エタノールで洗浄した後、100℃で1
5時間乾燥させて実施例2の蛍光体を得た。
また、実施例2の蛍光体の発光ピーク波長は631nm、主発光ピークの半値幅は6n
mであった。
実施例2の蛍光体はピークaとして425℃をピークトップとするピーク、ピークbと
して480℃をピークトップとするピークが観察された。また、A/Bの値は1.0であ
った。
(実施例3〜5、比較例2〜3)
実施例1の蛍光体を窒素雰囲気で昇温時間2時間、保持時間3時間を含め15時間で熱
処理を行い、実施例3〜5、比較例2〜3の蛍光体を得た。熱処理の保持時間における加
熱温度は、実施例3の蛍光体は200℃、実施例4の蛍光体は250℃、実施例5の蛍光
体は400℃、比較例2の蛍光体は300℃、比較例3の蛍光体は350℃であった。
実施例3、4、5、比較例2、3の蛍光体についてTPD−MS分析で測定した分子量
(m/z)18の検出チャートを、図2に示す。ピークaおよびピークbの有無、A/B
の値は表2にまとめて示す。
(実施例6)
実施例2の蛍光体にKHFを混合したのち、窒素雰囲気で昇温時間2時間、保持時間
3時間を含め15時間で熱処理を行った。熱処理の保持時間における加熱温度は400℃
とした。
熱処理後の蛍光体に蛍光体重量の4倍の47重量%HF溶液を加えて30分撹拌し、そ
の後静置して蛍光体を沈降させ、上澄み液を捨てて洗浄し、ろ過し、エタノールで洗浄し
た後、100℃で15時間乾燥させて実施例6の蛍光体を得た。
実施例6の蛍光体はピークaとして420℃をピークトップとするピークが観察され、
430℃以上、510℃以下の範囲にピークは観察されずピークbを有していなかった。
{発光装置}
実施例1〜6の蛍光体、比較例1〜3の蛍光体をそれぞれ用いた発光装置を下記の通り
作成して、LED発光効率およびLED耐久性(Δx)の測定を行った。
(発光装置の作製)
実施例1の蛍光体と、緑色蛍光体としてβ-SiAlON蛍光体BG−601/E(三
菱ケミカル社製)を所定混合比で混合してなる混合物を、増粘剤としてアエロジル(RX
200)を5%含むシリコーン樹脂KER−2500(信越化学社製)に添加し分散させ
た蛍光体含有組成物を調製した。次いで、810μm角のInGaN系の青色LEDチッ
プ1個を5050SMD型セラミックパッケージに実装し、上記蛍光体含有組成物で封止
することにより実施例1の蛍光体を含む白色LEDを得た。
作製した白色LEDにおける青色LEDチップの発光ピーク波長は452.5〜455
nmで、作製した白色LEDに350mAの電流を印加して発光させた。
なお白色LEDはその発光色度(x,y)がx=0.276、y=0.263になるよ
うに、実施例1の蛍光体とβ-SiAlON蛍光体との混合比、および蛍光体を分散した
シリコーン樹脂での封止量を調製した。
上記と同様にして、実施例2〜6の蛍光体および比較例1〜3の蛍光体を含む発光装置
を作製した。
(光束の測定およびLED耐久性試験)
上記で得られた発光装置について、下記の耐久性試験を行った。
発光装置に350mAの電流を通電し、積分球を備えた分光測定装置で通電0時間にお
けるLED光束と発光スペクトルを測定した。
次いで、85℃設定の恒温槽内で発光装置を駆動電流150mAで連続通電し、通電開
始から200時間の時点において恒温槽から発光装置を取り出し、時刻0の場合と同様に
して発光スペクトルを測定した。
200時間経過後に得られた発光スペクトルより算出された色度座標xと時刻0の色度
座標xとの差(Δx)で、実施例1〜6の蛍光体、比較例1〜3の蛍光体の蛍光体の耐久
性を評価した。
この結果を表1および表2に示した。
表1に示すが如く、ピークaを有する本発明の蛍光体を含む発光装置は、Δxの値が
小さい。ピークaとピークbとの比率であるA/Bが0.5以上である本発明の蛍光体を
含む発光装置は、LED効率が高い傾向にある。
表2および図2に示すが如く、実施例3、4、5の蛍光体ではピークaのイオン強度が
小さくなっているが、ピークaを有し、ピークbとの比率であるA/Bが0.5以上であ
る本発明の蛍光体を含む発光装置は、Δxの値が小さい。特にピークbがない実施例5の
蛍光体を含む発光装置は、Δxの値が特に小さいが、LED効率が若干低下している。一
方で、実施例6の蛍光体を含む発光装置は、Δxの値が小さく、LED効率も他の実施例
同等である。
即ち、本発明の蛍光体を含む発光装置は、発光色の経時変化が少ない。そのため、本発
明の発光装置を含む照明装置及び画像表示装置は高品質である。

Claims (10)

  1. Mn、アルカリ金属元素からなる群から選ばれる1種以上の元素を表すA元素、Si、
    Ge、Sn、Ti、Zrからなる群から選ばれる1種以上の元素を表すD元素、フッ素(
    F)を有する結晶相を含む蛍光体であって、
    TPD−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チャートにおいて390℃以
    上、430℃以下の範囲にピーク(ピークa)を有することを特徴とする、蛍光体。
  2. TPD−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チャートにおいて、430℃
    以上、510℃以下の範囲にピーク(ピークb)を有し、前記ピークaにおけるピークト
    ップのイオン強度の値をA、前記ピークbにおけるピークトップのイオン強度の値をBと
    した際、A/Bの値が0.5以上である、請求項1に記載の蛍光体。
  3. TPD−MS分析で測定した分子量(m/z)18の検出チャートにおいて、430℃
    以上、510℃以下の範囲にピーク(ピークb)がない、請求項1に記載の蛍光体。
  4. 前記結晶相が、下記式[1]で表される結晶相である、請求項1〜3のいずれか1項に
    記載の蛍光体。
    Mn [1]
    (上記式[1]中、
    A元素は、アルカリ金属元素からなる群から選ばれる1種以上の元素を表し、
    D元素は、Si、Ge、Tiからなる群から選ばれる1種以上の元素を表す。
    m、a、b、cは、各々独立に、下記式を満たす値である。
    0<m≦0.2
    1.6≦a≦2.4
    m+b=1
    4.8≦c≦7.2)
  5. A元素が、Li、Na、K、Rb、Csからなる群から選ばれる1種以上の元素を含む
    、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蛍光体。
  6. 350nm以上、460nm以下の波長を有する励起光を照射することにより、600
    nm以上、650nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する、請求項1〜5のいずれか一
    項に記載の蛍光体。
  7. 350nm以上、460nm以下の波長を有する励起光を照射することで得られる発光
    スペクトルの半値幅が、50nm以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の蛍光
    体。
  8. 第1の発光体と、該第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する第2の発光体
    とを備え、該第2の発光体が請求項1〜7のいずれか一項に記載の蛍光体を含むことを特
    徴とする発光装置。
  9. 請求項8に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする照明装置。
  10. 請求項8に記載の発光装置を光源として備えることを特徴とする画像表示装置。
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